JP2007194411A - スイッチ集積回路装置およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高周波スイッチMMICにおいてD型HEMTとE型HEMTを同一基板に形成し、D型HEMTのゲート電極をInGaP層にPtを埋め込んだ埋め込みゲート構造とする場合、埋め込まれたPtがInGaP層表面において横方向に異常拡散するため耐圧が低くなるという問題があった。
【解決手段】AlGaAs層とInGaP層を繰り返し積層した第1〜第3ノンドープ層と安定層を有するエピタキシャル構造とし、D型HEMTの第2ゲート電極を第3ノンドープ層(AlGaAs層)上に設け、E型HEMTの第1ゲート電極を第1ノンドープ層上に設ける。第2ゲート電極をPt埋め込みゲート構造とし、埋め込まれたPtの底部を第3ノンドープ層中に留まらせ、InGaP層(第2ノンドープ層)にPtが達しないようにする。これによりInGaP層表面におけるPtの横方向異常拡散を防止し、大幅に耐圧を向上させることができる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、スイッチ集積回路装置およびその製造方法に関わり、特に同一基板にディプレッション型HEMTとエンハンスメント型HEMTを集積化するスイッチ集積回路装置及びその製造方法に関する。
HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)の形成に使用する基板においては、エッチングストップ層等の用途でInGaP層を含む場合がある。
図19は、従来のHEMTを示す断面図である。
図19(A)は、ディプレッション型(以下D型と称する)HEMT310と、エンハンスメント型(以下E型と称する)HEMT320を同一基板に集積化したものである。
半絶縁性GaAs基板301、バッファ層302、チャネル層303、電子供給(AlGaAs)層305、InGaP層307、コンタクト層308を積層した基板300を水素注入領域309で分離し、D型HEMT310およびE型HEMT320を形成している。D型HEMT310のゲート電極311およびE型HEMT320のゲート電極321は、それぞれInGaP層307、電子供給層305とコンタクトしている(特許文献1参照)。
図19(B)は、半絶縁性GaAs基板301、バッファ層302、チャネル層303、スペーサ層304、電子供給(AlGaAs)層305、AlGaAs層306、被覆(InGaP)層307、コンタクト層308を積層し、被覆(InGaP)層307表面に形成されたゲート電極311が埋め込まれ、被覆(InGaP)層307およびAlGaAs層306にコンタクトしている(特許文献2参照)。
図19(C)も同様であり、半絶縁性GaAs基板301、バッファ層302a、302b、チャネル層303、スペーサ層304、電子供給(AlGaAs)層305、AlGaAs層306、InGaP層307、コンタクト層308を積層し、InGaP層307表面に形成されたゲート電極311は埋め込まれ、InGaP層307およびAlGaAs層306にコンタクトする(特許文献3参照)。
特開平10−173137号公報 特開2003−7726号公報 特開2004−158772号公報
HEMTの形成に使用する基板300においてエッチングストップ層などの用途としてInGaP層を含んでいる場合が多い。そしてこのような場合には、上記の如くInGaP層307にゲート電極311をコンタクトさせている。
例えば、図19(A)においては、InGaP層307の表面にゲート電極311が形成されている。このようなゲート構造はオン抵抗が大きく、これを改善するために、図19(B)、(C)の如く、ゲート電極311の一部を基板300表面に埋め込んだ、埋め込みゲート電極構造が採用される。ゲート電極311の一部の金属が基板300に拡散した埋め込み部311bを、例えばInGaP層307を貫通してその下層のAlGaAs層306まで到達させる。埋め込み部311bはゲート電極311として機能するため、AlGaAs層306をノンドープ層とすることによりゲート電極311から電子供給層305に至るまでノンドープ層を連続させることができる。これにより所定の耐圧を確保した上でオン抵抗を低減できる。
つまり、従来は酸化されにくく化学的に安定であるInGaP層307の性質を利用すべく、ゲート電極311を図19(A)(B)(C)の如くInGaP層307表面に形成していた。これにより、ゲート電極311の両脇に露出する層がInGaP層307となるため、これをゲート電極311両脇の動作領域表面を保護するパッシベーション層としてそのまま利用できる。
更に、拡散領域である埋め込み部311bはその断面形状が図19(C)の如く所定の曲率を有するため、これにより耐圧を向上させることができるとされていた。
ところが、実際には上記の如き埋め込みゲート電極構造においては、所定の耐圧が確保できないことがわかった。
図20は、埋め込みゲート電極構造の拡大断面図である。埋め込みゲート電極構造を採用する場合、ゲート電極311は最下層金属にPtを採用した複数の金属多層膜からなる。そして金属多層膜をノンドープInGaP層307に蒸着し、Ptを熱拡散して埋め込み部311bを形成する。
埋め込み部311bは拡散領域であるため、本来であれば半導体層表面から所定の曲率で外側に向かって湾曲した形状に形成され、耐圧の向上に寄与できる。
しかし、InGaP層307表面にゲート電極311のPtを拡散させたものを実際に観察すると、図20(A)の如くPtがInGaP層307表面で横方向に異常拡散し、端部(X点)が尖った形状となっていることが判明した。すなわち、埋め込み部311bは、実際には外側に向かって湾曲した形状にはなっていない。
また、20(B)には、AlGaAs層315、317とInGaP層316を交互に積層し、AlGaAs層317表面にゲート電極311を形成する構造を示す。このように、InGaP層316表面にゲート電極311を形成しない場合であっても、AlGaAs層317を貫通して拡散したPtがInGaP層316に到達すると、その表面で横方向に異常拡散を起こす。
尚、所定のピンチオフ電圧と所定のレベル以上の耐圧を確保し尚かつできる限り低いオン抵抗が得られるよう、ゲート電極311(埋め込み部311b)の底部から電子供給層305までの距離やその間の不純物濃度を決定する。従って、図20に図示した構造に限らず、埋め込み部311bの底部の位置がどの半導体層であっても、InGaP層表面でのPtの異常拡散は発生する。
すなわち、InGaP層にPtが拡散すると、何れの場合もその異常拡散によりX点で電界集中が発生し、所定の耐圧を確保することができない問題となる。
本発明は上述した諸々の事情に鑑み成されたもので、第1に、半絶縁性基板上に複数の半導体層を積層し、ディプレッション型HEMTにより高周波アナログ信号をスイッチングするスイッチ回路を構成し、前記ディプレッション型HEMTおよび該ディプレッション型HEMTと同一基板に集積化されたエンハンスメント型HEMTによりロジック回路を構成したスイッチ集積回路装置であって、前記半導体層は、バッファ層、第1電子供給層、チャネル層、第2電子供給層、該第2電子供給層と格子整合する第1ノンドープ層、該第1ノンドープ層と格子整合する第2ノンドープ層、該第2ノンドープ層と格子整合する第3ノンドープ層、該第3ノンドープ層と格子整合する安定層、該安定層と格子整合するキャップ層を含み、前記半導体層に設けられ、ソース領域およびドレイン領域を有する動作領域と、前記ソース領域およびドレイン領域とそれぞれコンタクトする第1ソース電極および第1ドレイン電極と、前記第1ソース電極および前記第1ドレイン電極とコンタクトする第2ソース電極および第2ドレイン電極と、前記動作領域の前記第1ノンドープ層の表面に設けられた第1ゲート電極と、前記動作領域の前記第3ノンドープ層の表面に設けられ、一部が該第3ノンドープ層内に埋め込まれた第2ゲート電極と、前記第1ゲート電極および該第1ゲート電極周囲に露出する第1ノンドープ層と、前記第2ゲート電極と該第2ゲート電極の周囲に露出する第3ノンドープ層とを被覆する絶縁膜と、を具備することにより解決するものである。
第2に、半導体基板上に、ディプレッション型HEMTにより高周波アナログ信号をスイッチングするスイッチ回路を形成し、前記ディプレッション型HEMTと同一基板に集積化されたエンハンスメント型HEMTによりロジック回路を形成する、スイッチ集積回路装置の製造方法であって、前記基板上にバッファ層、第1電子供給層、チャネル層、第2電子供給層、該第2電子供給層と格子整合する第1ノンドープ層、該第1ノンドープ層と格子整合する第2ノンドープ層、該第2ノンドープ層と格子整合する第3ノンドープ層、該第3ノンドープ層と格子整合する安定層、該安定層と格子整合するキャップ層を含む複数の半導体層を積層し、絶縁化領域により動作領域を分離する工程と、前記キャップ層の一部にコンタクトする第1ソース電極および第1ドレイン電極を形成する工程と、前記動作領域の前記第1ノンドープ層の表面に第1ゲート電極を形成する工程と、前記動作領域の前記第3ノンドープ層の表面に第2ゲート電極を形成する工程と、前記第2ゲート電極の最下層金属の一部を熱処理により前記第3ノンドープ層の内部に埋め込む工程と、前記第1ソース電極および第1ドレイン電極とコンタクトする第2ソース電極および第2ドレイン電極を形成する工程と、を具備することにより解決するものである。
第3に、半導体基板上に、ディプレッション型HEMTにより高周波アナログ信号をスイッチングするスイッチ回路を形成し、前記ディプレッション型HEMTと同一基板に集積化されたエンハンスメント型HEMTによりロジック回路を形成するスイッチ集積回路装置の製造方法であって、前記基板上にバッファ層、第1電子供給層、チャネル層、第2電子供給層、該第2電子供給層と格子整合する第1ノンドープ層、該第1ノンドープ層と格子整合する第2ノンドープ層、該第2ノンドープ層と格子整合する第3ノンドープ層、該第3ノンドープ層と格子整合する安定層、該安定層と格子整合するキャップ層を含む複数の半導体層を積層し、絶縁化領域により動作領域を分離する工程と、前記動作領域の前記キャップ層の一部にコンタクトする第1ソース電極および第1ドレイン電極を形成する工程と、第1絶縁膜を形成し、前記動作領域の第1の領域の前記第1ノンドープ層を露出する工程と、露出した前記第1ノンドープ層の表面に第1ゲート電極を形成する工程と、前記第1ゲート電極と、該第1ゲート電極の周囲に露出した前記第1ノンドープ層を被覆する第2絶縁膜を形成する工程と、前記動作領域の第2の領域の前記第3ノンドープ層を露出する工程と、露出した前記第3ノンドープ層の表面に第2ゲート電極を形成する工程と、前記第2ゲート電極の最下層金属の一部を熱処理により前記第3ノンドープ層の内部に埋め込む工程と、前記第2ゲート電極と、該第2ゲート電極の周囲に露出した前記第3ノンドープ層を被覆する第3絶縁膜を形成する工程と、前記第1ソース電極および第1ドレイン電極とコンタクトする第2ソース電極および第2ドレイン電極を形成する工程と、を具備することにより解決するものである。
本発明の構造に依れば、第1に、InGaP層表面でのPtの横方向への異常拡散を防止できる。これにより、埋め込みゲート電極構造の埋め込み部の端部が、所定の曲率を有する連続した湾曲形状となるため、耐圧を大幅に向上させることができる。
第2に、第1ゲート電極および第2ゲート電極を清浄なノンドープ層表面に形成でき、これによっても耐圧の劣化を抑制できる。製造工程においてゲート電極を形成する際のエッチングマスクとなる窒化膜の一部を、プラズマエッチングする必要がある。その際、D型HEMTの第2ゲート電極を形成するために露出させたInGaP層にプラズマダメージを与え、結晶性が悪化する。そのInGaP層表面に第2ゲート電極を形成すると、第2ゲート電極の最下層のPtを埋め込む熱処理を行う際、安定したピンチオフ電圧Vpの値を得るためのPtの埋め込み時間が40分と非常に長くかかってしまう。そこで、ノンドープ層を、第1ノンドープ層(AlGaAs層)、第2ノンドープ層(InGaP層)、第3ノンドープ層(AlGaAs層)、安定層(InGaP層)の積層構造とし、プラズマダメージを受けた安定層を除去した後、清浄な第3ノンドープ層に第2ゲート電極を形成する。Ptは、清浄な第3ノンドープ層中に埋め込まれ、埋め込み部は第3ノンドープ層内に位置する。従って埋め込み部は所定の曲率で外側に向かって湾曲した形状となるため電界集中が発生せず、耐圧を劣化させることはない。また、第1ゲート電極も清浄な第1ノンドープ層41に形成されるため第2ゲート電極と同様である。
第3に、Vpばらつきを低減できる。すなわち、第3ノンドープ層(AlGaAs層)上に第2ゲート電極を形成してD型HEMTを形成し、第1ノンドープ層(AlGaAs層)上に第1ゲート電極を形成することによりE型HEMTを形成する。第1乃至第3ノンドープ層となるそれぞれのInGaP層およびAlGaAs層は、ピンチオフ電圧Vpに応じて所定の厚みに設けられる。そしてE型HEMTおよびD型HEMTのゲート電極形成の際のエッチングは、それぞれInGaP層とAlGaAs層の選択エッチングを行う。InGaP層とAlGaAs層は互いにエッチングの選択性がよく、再現性のよいエッチングが可能となり、正確なVpの制御が容易に行える。
またゲート電極の蒸着膜厚は40Å〜60Åとする。この範囲であれば蒸着膜厚と埋め込み深さの関係が線形の特性となり、蒸着膜厚のみによって埋め込み深さ(ゲート電極底部の位置)の制御が容易となる。更に、蒸着膜厚が薄くなるので、蒸着膜厚の生産ばらつきも低減でき、結果としてVpばらつきが低減できる。また、膜厚設定の幅を±10Åで変動させることにより埋め込み部底部の位置を変動させ、Vpの微調整が可能となる。
蒸着膜厚設定は最大でも60Åで、そのときのVpばらつきは±0.096〜0.144Vとなり、この幅が最大のばらつき幅である。つまり最大のばらつき幅を、HEMTに要求されるVpの許容ばらつき(最大で±0.2V)の範囲内に十分収めることができる。
第4に、第1ソース電極および第1ドレイン電極と、キャップ層の段差を被覆する第1絶縁膜を設けることにより、従来、第1ソース電極および第1ドレイン電極の両端に形成されていた隙間を塞ぎ、ガルバニック効果の発生を防止できる。
これにより、第1ソース電極および第1ドレイン電極の端部のキャップ層のエッチングを防止し、電流経路の狭さく化を防ぐことができるので、オン抵抗Ronの増大を抑制できる。
また、第1ソース電極および第1ドレイン電極の両端におけるパッシベーション用の第2絶縁膜の成膜密度を十分確保でき、ウェハ完成後においても外部から滲入する水分や薬剤などから基板表面を十分保護することができる。従って、ウェハ完成後におけるガルバニック効果の発生を防止し、オン抵抗Ronの増大を抑制できる。
第5に、本発明の製造方法によれば、ノンドープのInGaP層とノンドープのAlGaAs層の厚みおよびゲート金属層の蒸着膜厚を最適な値に選択し、ノンドープのInGaP層とノンドープのAlGaAs層を選択エッチングすることにより、所定のピンチオフ電圧Vpを有するD型HEMTの第2ゲート電極およびE型HEMTの第1ゲート電極を容易に形成できる。
また、第1ノンドープ層から第3ノンドープ層まで3つのノンドープ層を積層する構造であっても、InGaP層とAlGaAs層を繰り返して積層することにより選択エッチングで容易に所望のノンドープ層を露出させることができる。
第6に、プラズマエッチングのダメージを受けた安定層(InGaP層)を塩酸で除去し、清浄な第3ノンドープ層(AlGaAs層)表面に第2ゲート電極を形成する。そして埋め込み部を第3ノンドープ層内に位置させる。これにより、埋め込み部がInGaP層表面において横方向に異常拡散することを防止する。これにより、電界集中が発生することよる耐圧の劣化を防止する製造方法を提供できる。またプラズメダメージを受けたInGaP層ではなく清浄なAlGaAs層表面に第2ゲート電極を形成し、第2ゲート電極最下層のPtを埋め込むため、埋め込みのための熱処理時間を5分と短くできる。
第7に、初期窒化膜を全面除去した後、オーミック金属層を堆積し、第1ソース電極および第1ドレイン電極を形成する。そしてその後、第1窒化膜で第1ソース電極および第1ドレイン電極上を覆うため、第1ソース電極と第1ドレイン電極、およびキャップ層の段差を第1窒化膜により完全に被複し、ガルバニック効果を防止することができる。
第8に、ゲートのリセスエッチングのマスクとなる窒化膜のひさし部を除去する際、動作領域の表面を安定なInGaP層で覆った状態でプラズマエッチングできる。これにより、動作領域表面をプラズマのダメージから保護することができる。
以下に図1から図18を用いて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1から図3は、本実施形態のHEMTを説明する図である。本実施形態のHEMTは、例えばロジック回路を内蔵するスイッチ集積回路(MMIC)に採用される。
図1は、本実施形態のHEMTにより構成されるロジック回路を示す図であり、一例としてインバータ回路を示す。図1(A)(B)は等価回路図、図1(C)は回路記号である。
図1(A)のごとく負荷となるD型FET(HEMT)と、スイッチングを行うE型FET(HEMT)を直列に接続し、E型FETのゲート電極が入力端子Iに接続し、D型FETのゲート電極がE型FETのドレイン電極(ソース電極)、D型FETのドレイン電極(ソース電極)に接続して出力端子Oに接続する。尚、以下記載は省略するがソース電極及びドレイン電極は入れ替えても等価である。この回路はE/D型DCFL(Direct Coupled FET Logic)と呼ばれる。
D型FETのソース電極は電源端子Vddに接続し、E型FETのソース電極は接地端子GNDに接続する。
また、インバータ回路は図1(B)の如く、負荷として抵抗を用いる場合も含む。つまり負荷となる抵抗と、スイッチングを行うE型HEMTを直列に接続したものである。
何れも電源電圧を3Vとし、入力端子Iが3V(Hレベル)の場合出力端子Oは0V(Lレベル)となり、入力端子Iが0V(Lレベル)の場合出力端子Oは3V(Hレベル)となる。すなわち、図1(C)に示す如くD型FETや負荷抵抗およびE型FETによりインバータ回路が構成される。以下本明細書において、この回路記号でインバータ回路を表す。
図2は、図1のロジック回路L(破線)を内蔵するハイパワーSPDT(Single Pole Double Throw)スイッチMMICであり、図2(A)は等価回路図、図2(B)は回路ブロックダイアグラムである。
スイッチ回路を構成する第1FET群F1および第2FET群F2には、それぞれ4つのD型FET(HEMT)が直列に接続する。そして第1FET群F1および第2FET群F2の一端に接続されたD型FETのソース電極(あるいはドレイン電極)が共通入力端子INに接続し、第1FET群F1のD型FETのゲート電極が抵抗R11〜R14を介してスイッチ回路の制御端子Ctlに接続し、同時にロジック回路(インバータ回路)の入力端子となるE型FET(HEMT)のゲート電極に接続する。一方第2FET群F2のD型FETのゲート電極は抵抗R21〜R24を介してロジック回路(インバータ回路)の出力端子となるD型FETのゲート電極、E型FETのドレイン電極(ソース電極)およびD型FETのドレイン電極(ソース電極)に接続する。そして第1FET群F1および第2FET群F2の他端に接続されたD型FETのドレイン電極(あるいはソース電極)がそれぞれ第1と第2の出力端子OUT1、OUT2に接続される。また、インバータ回路の両端は、電源端子Vddおよび接地端子GNDにそれぞれ接続する。
制御端子CtlにHレベルの信号が印加されると第1FET群F1がオンし、共通入力端子INに印加された入力信号を第1出力端子OUT1に伝達する。このとき第2FET群F2はオフとなる。制御端子CtlにLレベルの信号が印可されると第1FET群F1がオフ、第2FET群F2がオンとなり、共通入力端子INに印加された入力信号を第2出力端子OUT2に伝達する。抵抗R11〜R14、R21〜R24は、交流接地となる制御端子Ctlやロジック回路(インバータ回路)の出力端子の直流電位に対してゲート電極を介して高周波信号が漏出することを防止する目的で配置されている。
このように、ハイパワーSPDTスイッチでは、ロジック回路(E/D型DCFLインバータ)Lを内蔵することにより1つの制御端子でSPDTスイッチMMICを動作できる。すなわち、ロジック回路を内蔵しない場合には制御端子数が2つ必要であったものを1つに減らすことができる。また図示は省略するが、SP3T(Single Pole Three Throw )スイッチMMICの場合はロジック回路を内蔵することにより、ロジック回路を内蔵しない場合と比較して制御端子数を3から2に減らすことができる。
携帯電話方式で世界最大のシェアを持つGSM方式では近年Dual−Band、Tri−BandからQuad−Band(GSM850/900/1800/1900)へとマルチバンド化が進んで来ており使用するスイッチMMICもSPDTからSP3T、SP4T ・ ・ ・ SP7Tへとポート数のマルチ化が進んで来ている。しかし携帯電話に内蔵されるベースバンドLSIがスイッチMMICに供給できる制御信号数にも数に限りが有り、スイッチMMICのポート数が増えるにつれロジック回路の内蔵が必須となって来ている。
ここで、スイッチMMICにおいてスイッチ回路を構成するD型HEMTのVpばらつきの最大値がスイッチMMICのリニアリティ特性に影響することは良く知られている。一方で、ロジック回路を構成するE型HEMTのVpばらつきの最大値もスイッチMMICのリニアリティ特性に影響する。
すなわちE型HEMTのVpが大きくなり過ぎるとIDSMAX(ドレイン−ソース間電流の最大)が小さくオン抵抗Ronが大きくなる。これによりロジック回路であるインバータの入力電圧がオン時(例えば3V時)に出力電圧が0V付近まで十分に下がらなくなる。つまりスイッチ回路のオフ側FETが十分オフしないためリニアリティ特性が悪化する。
またE型HEMTのVpが小さくなり過ぎると、Vpがマイナス電位となりE型HEMTがエンハンスメントではなくややディプレッションタイプとなる。その場合インバータの入力電圧がオフ時(0V時)もE型HEMTには電流が流れオン抵抗Ronが小さくなる。従ってインバータの出力電圧が十分上昇しきれず、スイッチ回路のオン側FETが十分オンしないためやはりリニアリティ特性が悪くなってしまう。すなわちE型HEMTのVpばらつきもD型HEMTと同様に小さい方が望ましい。
図3および図4を参照し、本実施形態のスイッチ集積回路装置に採用されるHEMTの構造について説明する。
本実施形態のスイッチ集積回路装置は、半導体基板に複数の半導体層を積層し、D型HEMTとE型HEMTを1チップに集積化したものである。
すなわち、図2(A)のごとく、D型HEMTにより構成される高周波アナログ信号をスイッチングするスイッチ回路と、ロジック回路を同一基板に集積化することにより構成される。ロジック回路は、E型HEMTおよびスイッチ回路のD型HEMTと同じ構造のD型HEMTを集積化した例えばインバータである。D型HEMTは、動作領域と、第1ソース電極および第1ドレイン電極、第2ソース電極および第2ドレイン電極と、第2ゲート電極を有し、E型HEMTは、動作領域と、第1ソース電極および第1ドレイン電極、第2ソース電極および第2ドレイン電極と、第1ゲート電極とを有する。
図3(A)は、図1のE/D型DCFLの平面パターン図であり、図3(B)は図3(A)のa−a線断面図である。尚、高周波アナログ信号をスイッチングするスイッチ回路は、図3のD型HEMT150を複数組配置したFETにより構成され(図2参照)、断面構造はD型HEMT150部分と同様であるので図示は省略する。
D型HEMT150はパッド金属層よりなる第2ソース電極135と第2ドレイン電極136間に第2ゲート電極128が配置される。第2ソース電極135および第2ドレイン電極136の下方にはオーミック金属層よりなる第1ソース電極115及び第1ドレイン電極116が配置され、破線で示す動作領域100内のソース領域37sおよびドレイン領域37dとコンタクトする。第2ゲート電極128は第2ソース電極135および第2ドレイン電極136間に配置され、動作領域100外で第2ドレイン電極136に接続する。
E型HEMT160はパッド金属層よりなる第2ソース電極135と第2ドレイン電極136が交互に配置され、その間に第1ゲート電極127が配置される。E型HEMT160の端部の第2ドレイン電極136(第1ドレイン電極116も同様)はD型HEMT150と共用している。
図3(B)のごとく、HEMTの基板は、半絶縁性GaAs基板31上に複数の半導体層を積層してなる。複数の半導体層は、ノンドープのバッファ層32、電子供給層33、チャネル(電子走行)層35、第1ノンドープ層41、第2ノンドープ層42、第3ノンドープ層43、安定層44、キャップ層37である。
電子供給層33は第1電子供給層33aおよび第2電子供給層33bの2層があり、それぞれチャネル層35の上下に配置される。また、チャネル層35と各電子供給層33間にはスペーサ層34が配置される。キャップ層となるn+型GaAs層37は、最上層に積層される。
バッファ層32は、不純物が添加されていない高抵抗層であり、その厚みは、数千Å程度である。
電子供給層33(第1電子供給層33a、第2電子供給層33b)は、チャネル層35よりバンドギャップが大きい材料が用いられる。また、電子供給層33のn+型AlGaAs層のn型不純物(例えばSi)の不純物濃度は、ピンチオフ電圧Vp、オン抵抗Ron、耐圧に関係し、本実施形態では3.3×1018cm−3とする。
このような構造により、電子供給層33であるn+型AlGaAs層のドナー不純物から発生した電子が、チャネル層35側へ移動し、電流パスとなるチャネルが形成される。この結果、電子とドナー・イオンは、ヘテロ接合界面を境として空間的に分離されることになる。電子はチャネル層35を走行するが、チャネル層35にはドナー・イオンが存在しないためクーロン散乱の影響が非常に少なく、高電子移動度を持つことができる。
また、本実施形態では、チャネル層35の上下に、第1電子供給層33aおよび第2電子供給層33bを配置する。このようなダブルへテロ接合構造とすることにより、キャリア密度が増えオン抵抗Ronを非常に小さくできる。
第1ノンドープ層41は、第2電子供給層33bと当接してその上に設けられ、第1ゲート電極127をその表面に形成する。第1ノンドープ層41の厚みはE型HEMT160の所定のピンチオフ電圧Vpを確保できるよう設計されている。また、第1ノンドープ層41は第2電子供給層33bと格子整合する。第1ノンドープ層41はノンドープのAlGaAs層であり厚みは85Åである。チャネル層35に近い部分に結晶歪みが少しでも発生する場合があると、良好なHEMTの特性を再現性良く得ることができない。しかし第1ノンドープ層41は、チャネル層35に近い第2電子供給層33bと同じAlGaAs層のため、チャネル層35に近い部分に結晶歪みが発生する要素を完全に無くすことができる。
第2ノンドープ層42は、第1ノンドープ層41と当接してその上に設けられ、第1ノンドープ層と格子整合する。第2ノンドープ層42はノンドープのInGaP層であり厚みは20Åである。又、第2ノンドープ層42は、その上に当接する第3ノンドープ層43のエッチングストップ層として機能する。
第3ノンドープ層43は、第2ノンドープ層42と当接してその上に設けられ、第2ノンドープ層と格子整合する。第3ノンドープ層43はノンドープのAlGaAs層であり厚みは145Åである。第3ノンドープ層43表面にD型HEMT150のゲート電極を形成する。またAlGaAs層はInGaP層と比較して結晶成長が安定している。従ってAlGaAs層にゲート電極を形成することにより、D型HEMTの特性を安定して得られる効果もある。
第1乃至第3ノンドープ層のトータル厚みはD型HEMT150の所定のピンチオフ電圧Vpが得られるよう設計されている。
安定層44は、第3ノンドープ層43と当接してその上に設けられ、第3ノンドープ層と格子整合する。また、安定層44はその上層のキャップ層37とも格子整合する。安定層44は、酸化しにくいため外部からの化学的ストレスに強く信頼性上安定なノンドープInGaP層またはドープドInGaP層であり、厚みは100Åである。後に詳述するが、キャップ層37のエッチングマスクとして使用した窒化膜をプラズマエッチングする際、動作領域100表面は安定層44で覆われている。安定層44は化学的に安定なInGaP層のため動作領域100がプラズマダメージを受けないよう動作領域100を保護することができる。安定層44の厚みは100Åあればプラズマダメージから動作領域100を十分保護できる。又、安定層44は、GaAs層であるキャップ層37のエッチングストップ層としても機能する。
本実施形態では、エッチングストップ層となるInGaP層とAlGaAs層を繰り返し積層した構造とすることにより、所定のVpを容易に且つ再現性よく実現することができる。
また、InGaP層をGaAs層およびノンドープAlGaAs層と格子整合させることにより、結晶の歪みを回避し、スリットなどの結晶欠陥を防止できる。
キャップ層37の厚みは600Å以上、不純物濃度は、2×1018cm−3以上であり、好適には厚みが1000Å程度、不純物濃度が3×1018cm−3以上である。
キャップ層37は所望の形状にパターンニングされ、第1ソース電極115および第1ドレイン電極116がそれぞれコンタクトするソース領域37s、ドレイン領域37dとなる。第1ソース電極115および第1ドレイン電極116上には、パッド金属層130で形成される第2ソース電極135、第2ドレイン電極136がそれぞれコンタクトする。
第2ゲート電極128および第1ゲート電極127は、ソース領域37s、ドレイン領域37d間に配置される。
安定層44は、その上層のキャップ層37と同じパターンでエッチングされている。またE型HEMT160においては第2ノンドープ層42、第3ノンドープ層43も、キャップ層37と同じパターンでエッチングされている。
HEMTの動作領域100は、バッファ層32に達する絶縁化領域60で、例えば抵抗などのスイッチ回路装置の他の素子と分離される。以下、動作領域100とは、絶縁化領域60で分離され、HEMTのソース電極115、135、ドレイン電極116、136およびゲート電極127、128が配置される領域の半導体層をいう。すなわち電子供給層33、チャネル(電子走行)層35、スペーサ層34、第1〜安定層41〜44、キャップ層37などのHEMTを構成する各半導体層をすべて含んだトータルとしての領域が動作領域100となる。
第1ゲート電極127は、ソース領域37sおよびドレイン領域37d間に露出した動作領域100の第1ノンドープ層41表面にゲート金属層120aの蒸着により形成され、蒸着金属の最下層金属(Pt)の一部は熱処理により動作領域100表面に埋め込まれる。埋め込まれたPt(以下この領域を第1埋め込み部127bと称する)も第1ゲート電極127として機能する。第1埋め込み部127bの底部が例えば第2電子供給層33bに位置する場合、第1ゲート電極127および第1埋め込み部127bは、第1ノンドープ層41および第2電子供給層33bとショットキー接合を形成する。
第2ゲート電極128は、ソース領域37sおよびドレイン領域37d間の動作領域100の第3ノンドープ層43表面にゲート金属層120bの蒸着により形成される。そして、蒸着金属の最下層金属(Pt:白金)の一部は熱処理により動作領域100表面に埋め込まれる。埋め込まれたPt(以下この領域を第2埋め込み部128bと称する)も第2ゲート電極128として機能する。
本実施形態では、後に詳述するが安定層44が製造工程中にプラズマエッチングのダメージを受ける。そこで、ダメージを受けた安定層44を除去し、清浄な第3ノンドープ層43表面に、第2ゲート電極128を形成する。そして第2埋め込み部128bの底部は、第3ノンドープ層43内に位置する。第2ゲート電極128および第2埋め込み部128bは、第3ノンドープ層43のみとショットキー接合を形成する。
このような埋め込みゲート構造の場合、動作領域100に拡散したPtの端部が所定の曲率半径を持つ外側に湾曲した形状となるため、電界集中を緩和し耐圧を向上させる効果がある。
そして、第1ゲート電極127と、その両側のソース領域37s、第1ソース電極115、第2ソース電極135およびドレイン領域37d、第1ドレイン電極116、第2ドレイン領域136によりE型HEMT160が構成される。そして、第2ゲート電極128と、その両側のソース領域37s、第1ソース電極115、第2ソース電極135およびドレイン領域37d、第1ドレイン電極116、第2ドレイン領域136によりD型HEMT150が構成される。
E型HEMT160の第1ゲート電極127は、例えばPt/Moのゲート金属層120aを蒸着してなり、これらの蒸着膜厚はPtが50Å、Moが50Åである。そして、埋め込第1埋め込み部127bの深さは120Åであり、その底部は第2電子供給層33b内に位置する。これにより、Vp=+0.25Vを実現している。
D型HEMT150の第2ゲート電極128は、例えばPt/Mo(モリブデン)のゲート金属層120bを蒸着してなり、これらの蒸着膜厚はPtが50Å、Moが50Åである。そして、第2埋め込み部128bの深さは120Åであり、その底部は第3ノンドープ層43内に位置する。これにより、ピンチオフ電圧Vp=−0.8Vを実現している。
上記の如くゲート金属層は、Ptに引き続き連続してMoなどの、Pt埋め込み熱処理においてGaAsと反応しない金属を蒸着することが望ましい。ゲート電極をPtのみで形成すると、Pt蒸着後、Pt埋め込み熱処理までの間にPt表面に異物が付着した場合、その異物までPt埋め込み熱処理反応に関与することになり、HEMTの特性が劣化する。従って熱によりGaAsと反応しないMoでPtの上を覆うことによりMo上に同様の異物が付着したとしても、Moがバリアとなりその異物がPt埋め込み熱処理反応に関与することは無い。
またウエハ完成後においても実装時に半田付けの熱が加わることなどが有る。この場合、ゲート電極をPtのみで形成するとPtの上に異物が付着している場合、その異物が半田付けの熱などによってGaAsと反応しHEMTの特性が劣化する場合がある。その際にもMoでPtの上を覆うことによりMo上に異物があってもMoがバリアとなりその異物が半田付けの熱などによってGaAsと反応することは無い。Moの厚みはあまり厚くするとPtとの間でストレスが発生するため、最大でもPtの厚みと同程度とすることが望ましい。
尚、熱によりGaAsと反応しない金属としてMoの替わりにW(タングステン)も考えられるが、Wは融点が高いため一般にはスパッタで形成しており蒸着では形成できない。従ってPtの蒸着と連続してWは形成できず、またスパッタの場合高熱が発生するためレジストが耐えられずリフトオフによる形成も不可能である。
Ptはその蒸着膜厚が約110Å以下の場合、Ptの埋め込み深さ(埋め込み部の深さ)は常に蒸着膜厚の2.4倍となり、リニアな特性を示す。したがって、蒸着膜厚が約110Å以下であれば、Ptの蒸着膜厚のみで一義的に埋め込み部の深さを制御することができ、すなわちVpの制御が可能となる。
本実施形態では、ゲート電極にPt埋め込み構造を採用し、生産ばらつきも考慮してPt蒸着膜厚設定を100Å以下とした。Vpばらつきは蒸着膜厚ばらつきに比例するので、蒸着膜厚を薄くする程Vpばらつきの低減に有利となる。
一方で、EB蒸着機での蒸着においてPt蒸着はかなり大きなパワーを必要とする。これは、Ptの蒸着膜厚が薄過ぎると膜厚の制御性が悪いことを意味する。つまりPt蒸着膜厚を40Åより薄くすると、蒸着そのものが数秒で終わってしまう。蒸着開始直後は蒸着膜厚のレート(1秒間に蒸着される膜厚)が不安定なため、逆に蒸着膜厚のばらつきが大きくなってしまう。
すなわち、Pt蒸着膜厚が40Å以上100Å以下であれば、Pt蒸着膜厚で埋め込み部の底部の位置を制御することができ、ピンチオフ電圧Vpを一義的にかつ再現性良く制御することが可能となる。
また、E型HEMT160とD型HEMT150のピンチオフ電圧Vpに応じて、それぞれ所望の深さに第1埋め込み部127b、128bの底部が位置するように、第1ノンドープ層41、第2ノンドープ層42、第3ノンドープ層43の厚みとゲート金属層120の蒸着膜厚を設定する。
第1ノンドープ層41、第3ノンドープ層43はAlGaAs層であり、第2ノンドープ層42、安定層44はInGaP層である。InGaP層とAlGaAs層はウェットエッチングでのエッチングの選択比が高いため、ウェットエッチングで容易に所望の層を露出させることができる。また、上記の如く、Pt蒸着膜厚は40Å以上100Å以下であれば、Pt蒸着膜厚で埋め込み部の底部の位置を制御することができる。埋め込み部はゲート電極として作用するため、実質的に蒸着金属よりなる第1ゲート電極127および第2ゲート電極128の底部をそれぞれの第1埋め込み部127b、128bの厚み分だけ深い位置に設けたことと同等となる。
例えば、D型HEMT160において、第2埋め込み部128bの深さは、所定のピンチオフ電圧Vpが得られるよう設計される。詳しくはピンチオフ電圧Vpは第2ゲート電極128の底部(第2埋め込み部128bの底部)から第2電子供給層33bの表面までの距離dやその間の半導体層の不純物濃度で決定される。つまり第2ゲート電極128(第2埋め込み部128b)の底部の材料(半導体層)はどの層であっても良く、第2埋め込み部128bの深さは、ピンチオフ電圧Vpを決める距離dが、所定の値(具体的には130Å)になるように決定する。
また、同じピンチオフ電圧Vp=−0.8Vであっても、第2電子供給層33bの不純物濃度を変えることにより、必要な第2ゲート電極128の底部から第2電子供給層33bまでの距離dが変化する。すなわち、第2電子供給層33bの不純物濃度が高くなるとその分、距離dの値を小さくしないと所定のピンチオフ電圧Vpが得られない。ところで第2電子供給層33bの不純物濃度の設定方法については、所定の耐圧が得られる限り、不純物濃度をできるだけ高くし、チャネル層35に流れるキャリア密度を上げることにより、よりオン抵抗Ronを小さくする方法が採用される。尚、E型HEMT160については、D型HEMTの設計において決定された不純物濃度を持つ第2電子供給層33b上に、所定のピンチオフ電圧Vp=+0.25Vが得られる距離d’となるよう、第1ノンドープ層41の厚みおよび第1埋め込み部127b深さを決定する。ここでは第1埋め込み部127bの底部が第2電子供給層33b中に位置するため距離d’はマイナスの値(具体的には−35Å)となる。
つまり、例えば第1埋め込み部127bの底部を第2電子供給層33b内に位置させ、第2埋め込み部128bの底部を、第3ノンドープ層43内に位置させることによりエンハンスメント、ディプレッションのそれぞれ目標としてのピンチオフ電圧Vpを実現させることができる。そして、この場合、第1ゲート電極127および第2ゲート電極128(ゲート金属層)を形成する半導体層表面を露出するプロセスは、ウェットエッチングにより制御が容易であり、第1埋め込み部127b、第2埋め込み部128bの深さはPt蒸着膜厚で一義的に制御できる。すなわち、本実施形態ではE型HEMT160およびD型HEMT150のそれぞれ所定のVpを容易に且つ再現性よく実現することができる。
スイッチMMICの場合、ゲート電極から制御端子までの間に10KΩ程度以上の抵抗が挿入されるため、ゲート電極自体の抵抗値は高くても問題ない。従って、例えばPt40〜60Å/Mo50Åというゲート金属構造が好適である。
また、電子供給層33はスイッチ回路を構成するD型HEMT150が最大限の特性が得られるよう設計されている。このため、上記のゲート金属構造を採用し、ノンドープのAlGaAs層(第1ノンドープ層)41の膜みを最適化することで、同一基板に集積化されるE型HEMT160について所定のピンチオフ電圧Vpの値を確保している。そして第1ノンドープ層41〜第3ノンドープ層43のトータル厚みを最適化することでD型HEMT150の所定のピンチオフ電圧Vpを確保している。
以下、ゲート金属の蒸着膜厚と、第1ノンドープ層41〜第3ノンドープ層43の厚みについて更に説明する。
スイッチMMICを構成するD型HEMT150のピンチオフ電圧Vpは−0.8V程度に設計することが一般的であり、E型HEMTのピンチオフ電圧Vpは+0.25V程度に設計することが多い。
また、HEMTのゲート電極底部の高さのばらつきの約10〜15ÅがHEMTのVpばらつき0.1Vに相当する。ここで、埋め込みゲート電極構造の場合、埋め込み部の底部がゲート電極底部に相当する。以下ゲート電極底部の高さのばらつきを、埋め込み部のばらつきGDと称する。
例えば、蒸着膜厚が60Åの場合、最大で±10%の生産ばらつきによって蒸着膜厚は±6Åばらつく。このとき、埋め込み深さのばらつき、すなわち埋め込み部のばらつきGDはその2.4倍で、14.4[Å]となる。そして、既述の如く、埋め込み部のばらつきGDの約10〜15ÅがVpばらつき0.1Vに相当する。
つまり、埋め込み部のばらつきGDが15ÅでVpが0.1V変化する比率であれば、Vpが±0.096V(=(0.1[V]/15[Å])×14.4[Å])ばらつくことになる。また、埋め込み部のばらつきGDが10ÅでVpが0.1V変化する比率であれば、Vpは±0.144V(=(0.1[V]/10[Å])×14.4[Å])ばらつく。つまり蒸着膜厚が上限の60Åの場合であってもVpばらつきは±0.096〜0.144Vとなる。
したがって、蒸着膜厚が60Å以下であれば、Vpばらつきの要求規格である最大で±0.2Vを達成できる。
あるいは、次のように説明することもできる。埋め込み部のばらつきGDの約10Å〜15ÅがVpばらつき0.1Vに相当し、Vpばらつきの要求規格である最大で±0.2Vを達成するには、埋め込み部のばらつきGDの要求規格は、最大で±20〜30Å程度となる。そして蒸着膜厚が60Å以下であれば、埋め込み部のばらつきGDは最大で14.4[Å]であるので、GDの要求規格である最大で±20Å〜30Å程度を十分満たすことができる。
Ptの埋め込み深さは最低でも40×2.4=96Å、最大で60×2.4=144Å、すなわち96Å〜144Åの深さが必要となる。埋め込みゲート構造の場合にはその分ゲート電極の底部が表面から下がる。従って、表面から下がる深さを考慮して、埋め込み部の底部が位置するエピタキシャル層の厚みを設計する必要がある。すなわちE型HEMT160の所定のピンチオフ電圧Vpを得るため第1ノンドープ層41の厚みを設計し、D型HEMT150の所定のピンチオフ電圧Vpを得るため第1乃至第3ノンドープ層のトータルの厚みを設計する。
本実施形態では、D型HEMT150およびE型HEMT160のVpをそれぞれ−0.8V、+0.25Vに設定する。更に、後述するがD型HEMT150の第2埋め込み部128bを、第3ノンドープ層43内に位置させる必要がある。従って、第3ノンドープ層43の厚みを145Åとする。そして第2ノンドープ層42の厚みを20Åとし、第1ノンドープ層41の厚みを85Åとしている。更に、AlGaAs層とInGaP層の選択エッチングにより、第1ゲート電極127および第2ゲート電極128の形成位置を決定している。
このとき、Pt蒸着膜厚がある値に固定されていると設計に制限が加わる。具体的には例えばD型HEMTの第2ゲート電極128の底部(第2埋め込み部128b)の位置が決まってしまう。
しかし、40Å〜60Åの範囲の蒸着膜厚設定によりピンチオフ電圧Vpを微調整することができる。そして、このときのVpばらつきは最大でも±0.096V〜0.144Vとなる。つまりD型HEMT、E型HEMT共に要求されるVpばらつきの最大で±0.2V程度に十分収めることができる。つまり、Ptの蒸着膜厚に20Å程度の幅の自由度があるため、D型HEMT150においては、第2埋め込み部128bの底部を、第3ノンドープ層43中のいずれの深さに位置させるかをある程度自由に設定することができる。
換言すれば第1ノンドープ層41、第2ノンドープ層42および第3ノンドープ層43の厚みを最適化することにより、ピンチオフ電圧Vpの基本設計はエピタキシャル層の厚み設定で行い、Pt蒸着厚み設定によってピンチオフ電圧Vpの微調整が可能である。
また、D型HEMT150はE型HEMT160に比べピンチオフ電圧Vpがマイナスで絶対値が大きいので、ゲート電極を形成する位置をE型HEMT160のゲート電極形成位置より上方に持っていく必要がある。つまり、E型HEMT160の第1ゲート電極127を形成する第1ノンドープ層41上に、AlGaAsとの選択エッチングが可能な第2ノンドープ層(InGaP層)42を所定の厚みに積層する。さらに、本実施形態では第2ノンドープ層42上にInGaP層との選択エッチングが可能な第3ノンドープ層43(AlGaAs層)を積層し、第3ノンドープ層43表面にD型HEMT150の第2ゲート電極128を形成する。
第2ノンドープ層42は第3ノンドープ層43をエッチングする際のエッチングストップ層である。また、第3ノンドープ層43は、第1ゲート電極127より高い位置に第2ゲート電極128を設けると共に、プラズマダメージを受けた安定層44を選択エッチングにより除去し、清浄なノンドープ層に第2ゲート電極128を形成するために設けられる。
第1ノンドープ層41〜第3ノンドープ層の具体的な厚みは上記の通りであるが、それぞれの半導体層の厚みの設計の一例について更に説明する。
既述の如く、第2電子供給層33bはD型HEMT150が最大限の特性が得られるよう設計され、本実施形態では第2電子供給層33bの不純物濃度は3.3×1018cm−3とする。
まずE型HEMT160を設計し、第1ノンドープ層41の厚みを決定する。E型HEMT160のピンチオフ電圧Vpは+0.25Vとする。このとき第1ゲート電極127の底部が第2電子供給層33b中で第2電子供給層33b表面から35Åの深さに位置する必要がある。第1ゲート電極127のPt蒸着厚みを50Åとすると、第1埋め込み部127bの深さはPt蒸着厚みの2.4倍、すなわち120Åである。従って第1ノンドープ層41の厚みは第1埋め込み部127bの深さ120Åから第2電子供給層33b中への埋め込み深さ35Åを減じた値となる85Åに決定される。
次にD型HEMT150を設計し、第2ノンドープ層42および第3ノンドープ層43の厚みを決定する。D型HEMT150のピンチオフ電圧Vpは−0.8Vとする。このとき第2ゲート電極128の底部から第2電子供給層33bまでの距離を130Åにする必要がある。第2ゲート電極128のPtの蒸着厚みを50Åとすると、第2埋め込み部128bの深さはPt蒸着厚みの2.4倍、すなわち120Åである。従って第1ノンドープ層41〜第3ノンドープ層43の厚みのトータルは、第2ゲート電極128の底部から第2電子供給層33bまでの距離(130Å)に第2埋め込み部128bの深さ(120Å)を加えた厚みである250Åに決定される。ここで、Ptの異常拡散防止のため、ゲート電極128の底部を第3ノンドープ層43中に留める必要がある。従って、第3ノンドープ層43の厚みはPtの埋め込み深さ(第2埋め込み部128bの深さ)である120Åより大きくする必要がある。すなわち第3ノンドープ層43の厚みはPtの蒸着厚みのばらつきなどを考慮して25Åの余裕を持って145Åとする。
従って第2ノンドープ層42の厚みは第1ノンドープ層41〜第3ノンドープ層43のトータルの厚み(250Å)から第1ノンドープ層41の厚み(85Å)と第3ノンドープ層43の厚み(145Å)を減じた20Åに決定される。第2ノンドープ層(InGaP層)42の厚みは、20Åあればエッチングストップ層として十分機能する。
ここで、上記の値は一例である。すなわち距離dが一定であっても、距離dの値を実現するためのPtの蒸着膜厚と、Pt蒸着膜厚に応じた第1ノンドープ層41〜第3ノンドープ層43のトータル厚みは、適宜選択可能である。これは既述の如くPtの蒸着膜厚が40Å〜60Åの範囲で設定可能だからである。さらに、Ptの蒸着膜厚を決定することにより、それに応じた第1ノンドープ層41〜第3ノンドープ層43のトータル厚みは一義的に決定した場合であっても、トータル厚みさえ設定値に合致すればよく、第1ノンドープ層41〜第3ノンドープ層43のそれぞれの厚みは、上記の値に限らず選択可能である。但し、本実施形態では、トータル厚みが設定値に合致することに加えて、異常拡散を防止するために、第2埋め込み部128bがInGaP層(第2ノンドープ層42)に達しないことが必要である。すなわち、この条件満たす範囲内で、第1ノンドープ層41〜第3ノンドープ層の厚みを適宜選択することができる。尚、E型HEMT160の第1埋め込み部127は、InGaP層に形成されることはないため、その底部が何れの半導体層に形成されてもよい。
また、本実施形態では、第1ゲート電極127および第2ゲート電極128を共にAlGaAs層に形成(蒸着)する。AlGaAs層はInGaP層と比較して結晶成長が安定しており、HEMTの特性の再現性が良好となる効果も得られる。
更に、本実施形態ではチャネル層35の上下に電子供給層33を配置したダブルへテロ接合構造を採用しており、更に電子供給層33の上に第1ノンドープ層41〜第3ノンドープ層43が設けられる。
第2ゲート電極128は、第3ノンドープ層43表面に形成するが、第2ゲート電極128から第2電子供給層33bに至るまでの間に不純物が添加された層が配置されず、実質的に電子供給層33に連続する第1ノンドープ層41内に、第2ゲート電極128が設けられたことと等価となる。
このように、ダブルへテロ接合構造で、電子供給層33に連続するノンドープ層にゲート電極が設けられた構造により、D型HEMT150は所定の耐圧を確保しながら非常に低いオン抵抗を実現することができる。すなわち19Vのゲート耐圧を有しながら、Pt埋め込みゲート構造、ダブルへテロ接合構造、電子供給層からゲート電極までをすべてノンドープ層とする構造、を採用することにより、電子供給層の濃度を3.3×1018cm−3まで上げることができる。この結果Vp=−0.8Vにおいてゲート幅1mmあたりのオン抵抗としてゲート電圧Vg=0Vでオン抵抗Ron=1.3Ω/mmを実現した。このオン抵抗の値はスイッチ用HEMTとしては極めて低いといえる。
一方、ロジック回路を構成するE型HEMTも、Ptを埋め込んだ埋め込みゲート構造を採用する。埋め込みゲート構造とすることでAlGaAs層表面に多く分布する表面欠陥準位の影響を大幅に減らすことができる。
更に本実施形態では、D型HEMT150の第2ゲート電極128は安定層44をエッチングした後の第3ノンドープ層43上に設けられ、更に第2埋め込み部128bが第3ノンドープ層43内に配置される。これにより耐圧を大幅に向上できる。
図4は、第2ゲート電極128部分の拡大図である。図4(A)は、本実施形態の場合を示し、図4(B)は比較のために第2ゲート電極128を安定層44上に設けた場合を示す。
図4(A)の如く、第2ゲート電極128を構成するゲート金属層120bは、Pt/Moの金属多層膜である。そして、第3ノンドープ層43表面にゲート金属層120bを蒸着、リフトオフして第2ゲート電極128を形成し、最下層金属のPtを第3ノンドープ層43表面に拡散し、第2埋め込み部128bを形成している。
ここで既述の如く、ゲート金属層をInGaP層表面に形成するかしないかにかかわらず、拡散するPtがInGaP層に達する場合はすべて、InGaP層表面でPtが異常拡散する(図20参照)。そこで、本実施形態では、第3ノンドープ層43表面に第2ゲート電極128を形成し、更に第2埋め込み部128bの底部も第3ノンドープ層43内に位置させる。第3ノンドープ層43の厚みは145Åであり、第2埋め込み部128bの深さは120Åであるので、PtのInGaP層への拡散を回避できる。
更に、第2ゲート電極128を清浄な第3ノンドープ層43表面に形成できる。製造工程は後に詳述するが、第2ゲート電極128の形成前に、キャップ層37のエッチングマスクとなった窒化膜51の一部を、プラズマエッチングにより除去する工程がある。従って、本実施形態では、動作領域100をプラズマダメージから保護するため、およびキャップ層37との選択エッチングを可能にするため、キャップ層37の下層に安定層として化学的に安定なInGaP層を配置する。
プラズマエッチングは、安定層44の一部が露出した状態で行う。すなわち安定層44表面はプラズマエッチングのダメージを受けている。
ここで、安定層44(InGaP層)44上に第2ゲート電極128(ゲート金属層120b)を蒸着し、第2埋め込み部128b’を形成すると、第2ゲート電極128の最下層のPtを埋め込む熱処理を行う際、安定したピンチオフ電圧Vpを得るためのPtの埋め込み時間が40分と非常に長くかかってしまう。これは、プラズマダメージにより結晶性が悪くなった安定層(InGaP層)44表面にPtが埋め込まれるため、Pt埋め込みが終了するのに非常に時間がかかるためである。つまりPt埋め込みは40分経った時点で終了し、それ以上熱処理を続行してもピンチオフ電圧Vpの値が変化することはない。
また図20(A)と同様に安定層(InGaP層)44にもPtが拡散するため、安定層44表面において横方向(基板水平方向)の拡散が異常に速くなり、第2埋め込み部128b’の形状は外側に湾曲した形状にならず、表面において尖った形状となってしまう。
埋め込み部を設けない場合(埋め込みゲート構造でない場合)、ゲート電極と基板表面の界面の端部(Y点)に電界集中が発生する。一方、埋め込みゲート構造の埋め込み部は、本来その端部の形状が所定の曲率半径を有する連続した曲線で外側に向かって湾曲した形状となり、ゲート電極に逆バイアスが印加される際、電界強度が分散される。つまり、電界集中の緩和により最大電界強度が弱まり、大きな耐圧を得ることができる。
しかし、埋め込み部128b’の端部が所定の曲率で外側に向かって湾曲した形状ではなく、表面において尖った形状となってしまうと、その尖った部分(Z点)に電界が集中しゲート耐圧が劣化してしまう問題がある。
そこで、本実施形態では図4(A)の如く、プラズマダメージを受けた安定層(InGaP層)44を除去し、清浄な第3ノンドープ層(AlGaA層)43にPt埋め込みを行うこととし、第2埋め込み部128bは第2ノンドープ層(InGaP層)42に達しない深さに形成することとした。
安定層44は塩酸でウエットエッチングされる。またその下層の第3ノンドープ層43はAlGaAs層であり、塩酸ではエッチングされず、そのエッチング選択比は大きい。従って、ウェットエッチングで容易に、清浄なAlGaAs層を露出させることができる。
この状態で、第2ゲート電極128(ゲート金属層120b)を蒸着し、Ptを埋め込む熱処理を施す。第3ノンドープ層43はAlGaAs層であるため、Ptは深さ方向および横方向とも均一に(正常に)拡散する。すなわち第2埋め込み部128bは図の如く所定の曲率半径を有する連続した曲線形状で外側に向かって湾曲した形状となるため、第2埋め込み部128bにより電界集中を抑制できる。これにより、所定のゲート耐圧を確保することができる。具体的には、図4(B)の場合6.5Vであったゲート耐圧が、図4(A)の構造にすることにより19Vとなり、大幅に向上した。
また、プラズマダメージを受けていない清浄な第3ノンドープ層(AlGaAs層)43にPt埋め込みを行なう場合は、5分で熱処理が終了する。またそれ以上熱処理を続行してもピンチオフ電圧Vpは変化しないため、Pt埋め込みのための熱処理時間が5分と、大幅に短縮できる。
更に、第2ゲート電極128をAlGaAs層に形成(蒸着)できる。AlGaAs層はInGaP層と比較して結晶成長が安定しており、HEMTの特性の再現性が良好となる効果もある。
尚、図示は省略するが、第1ゲート電極127および第1埋め込み部127bについても同様である。すなわち、第1ゲート電極127を構成するPtは、InGaP層に拡散することなく埋め込み部127bを形成できる。また、第1ゲート電極127の蒸着直前まで第1ノンドープ層41は上層のノンドープ層により保護されているので、清浄な第1ノンドープ層41に第1ゲート電極127を形成できる。
次に、本実施形態の窒化膜について説明する。
図3(B)の如く、第2ゲート電極128、第1ゲート電極127、第1ソース電極115および第2ソース電極135、第1ドレイン電極116および第2ドレイン電極136は、その周囲に密着する窒化膜51で被覆される。本実施形態の窒化膜51は第1窒化膜511、第2窒化膜512、第3窒化膜513からなるが、窒化膜51の構成内容の種類は部分的に異なり、これら3層がすべて存在する個所もあるが、これらのいずれか2層の組み合わせの個所、あるいはこれらのうち1つの窒化膜から構成される個所もある。
第1窒化膜511は、ソース領域37sおよび第1ソース電極115上を連続して覆う。また、ドレイン領域37dおよび第1ドレイン電極116上を連続して覆う。これにより、ソース領域37sと第1ソース電極115の段差および、ドレイン領域37dと第1ドレイン電極116の段差は、第1窒化膜511により完全に被覆され、第1ソース電極115(第1ドレイン電極116も同様)の端部は、第1窒化膜511と密着している。また、第1窒化膜511の端部は、ソース領域37sおよびドレイン領域37dとなるキャップ層37の端部と一致している。また、E型HEMTの場合は、第1窒化膜511の端部が、安定層44、第3ノンドープ層43および第2ノンドープ層42の端部とも一致している。さらにD型HEMTの場合は、第1窒化膜511の端部が、安定層44の端部とも一致している。以下、ソース側とドレイン側は同様であるので、ソース側について説明する。
このように本実施形態では、第1窒化膜511がソース領域37sとなるキャップ層37と第1ソース電極115の段差に完全に密着して被覆している。 ガルバニック効果は、オーミック電極である第1ソース電極115等の金属電極が半導体に接している場所に製造プロセス中の水分または薬剤が滲入することにより発生する。すなわち、水分または薬剤などによりオーミック電極の端部でオーミック電極と半導体の間に電流が発生し、半導体が電気化学的腐食を起こす。半導体の不純物濃度が高いなど、導電性が増せば増すほど大きな電流が流れるためガルバニック効果が激しくなり、その部分の半導体が大きくエッチングされてしまう。つまり、キャップ層がエッチングされることによりHEMTのソース−ドレイン間の電流経路が狭められ、オン抵抗Ronが増大してしまう問題がある。
そこで、本実施形態では、キャップ層37と第1ソース電極115の段差を連続して完全に被覆する第1窒化膜511を設け、第1ソース電極115等の金属電極が半導体に接している場所に水分又は薬剤が滲入することを防止している。
また、第1窒化膜511および第2窒化膜512はそれぞれ500Å、1500Å程度で、ほぼ均一な厚みで、第1ソース電極115およびキャップ層37をまんべんなく覆っている。これらの窒化膜はCVDにより堆積を行う。CVDにおいては装置のチャンバー内において雪が降り積もる如く窒化膜が堆積されていく。つまり、キャップ層37がエッチングされない本実施形態では第1ソース電極115の側面でも上面(平面)の70%程度以上の膜厚が確保できる。従って、ウェハ完成後においても水分や薬剤などの滲入を完全に保護することができ、ガルバニック効果の発生を防止できる。
尚、D型HEMT150の第2ゲート電極128とその周囲に露出した第3ノンドープ層43は、第3窒化膜513で被覆される。一方、E型HEMT160の第1ゲート電極127およびその周囲に露出した第1ノンドープ層41は、第2窒化膜512および第3窒化膜513で被覆される。
上記の如きスイッチ回路装置などに採用されるHEMTの製造方法について、以下図5〜図18を参照して説明する。以下の断面図は、図3(A)のa−a線断面に相当する。
第1工程(図5):基板上にバッファ層、第1電子供給層、チャネル層、第2電子供給層、第2電子供給層と格子整合する第1ノンドープ層、第1ノンドープ層と格子整合する第2ノンドープ層、第2ノンドープ層と格子整合する第3ノンドープ層、第3ノンドープ層と格子整合する安定層、安定層と格子整合するキャップ層を含む複数の半導体層を積層し、絶縁化領域により動作領域を分離する工程。
ノンドープのバッファ層32は、不純物が添加されていない高抵抗層であり、その厚みは、数千Å程度で、複数の層で形成される場合が多い。
バッファ層32上に、第1電子供給層のn+型AlGaAs層33a、スペーサ層34、チャネル層のノンドープInGaAs層35、スペーサ層34、第2電子供給層のn+型AlGaAs層33bを順次形成する。第1および第2電子供給層33a、33bは、チャネル層35よりバンドギャップが大きい材料が用いられ、n型不純物(例えばSi)が2×1018cm−3〜4×1018cm−3程度(例えば3.3×1018cm−3)に添加されている。
第1ノンドープ層41は、所定の耐圧とピンチオフ電圧Vpを確保するため、電子供給層33上に積層され、電子供給層33と格子整合するノンドープAlGaAs層である。その上層に第1ノンドープ層41と格子整合する第2ノンドープ層42を設ける。第2ノンドープ層42は、ノンドープInGaP層である。更に第2ノンドープ層42と格子整合する第3ノンドープ層43、第3ノンドープ層43と格子整合する安定層44を順次積層する。第3ノンドープ層43はノンドープAlGaAs層であり、安定層44はノンドープInGaP層またはドープドInGaP層である。
InGaP層は、酸化しにくいため外部からの化学的ストレスに強く信頼性上安定な層であり、AlGaAs層またはGaAs層とのエッチング選択比が高いためエッチングストップ層としても機能する。
更にキャップ層となるn+GaAs層37を最上層に積層する。安定層44はキャップ層37とも格子整合する。キャップ層37は、1000Åであり、不純物濃度は、3×1018cm−3以上である。
第1ノンドープ層41の厚みは85Åである。第2ノンドープ層42の厚みは20Åであり、第3ノンドープ層43は145Åの厚みを有する。また安定層44は100Åの膜みを有する。100Åあればプラズマダメージから動作領域を十分保護することができる。
そして、基板全面に、初期窒化膜50を堆積する。初期窒化膜50は、ウェハ投入後の基板表面の保護膜となる。または、後の工程で絶縁化領域を形成する際に注入される不純物の活性化アニールの保護膜となる。あるいは、これらの両方に共用される。
レジスト(不図示)を設けてフォトリソグラフィプロセスによりアライメントマークのパターンが開口されたマスクを形成する。このマスクにより初期窒化膜50およびキャップ層37の一部をエッチングしてアライメントマーク(不図示)を形成する。
レジスト除去後新たなレジスト(不図示)を設けてフォトリソグラフィプロセスにより絶縁化領域を形成するためのマスクを形成する。初期窒化膜50上からボロン(B+)をイオン注入し、レジストを除去した後、500℃、30秒程度のアニールを行う。これにより、バッファ層32に達する絶縁化領域60が形成される。
絶縁化領域60は、電気的に完全な絶縁ではなく、不純物(B+)をイオン注入することによりエピタキシャル層にキャリアトラップを設け、絶縁化した領域である。つまり、絶縁化領域60にもエピタキシャル層として不純物は存在しているが、絶縁化のためのB+注入により不活性化されている。
すなわち、所定のパターンに絶縁化領域60を形成することにより、HEMTの動作領域と抵抗など他の構成要素とを分離する。
ここで、動作領域100とは、絶縁化領域60で分離され、HEMTの第1ソース電極115、第2ソース電極135、第1ドレイン電極116、第2ドレイン電極136およびゲート電極128、127が配置される領域の半導体層をいう。第1ソース電極115および第1ドレイン電極116がコンタクトするキャップ層37は、後の工程で分離されてソース領域37s、ドレイン領域37dとなる。
すなわち電子供給層33、チャネル(電子走行)層35、スペーサ層34、第1〜安定層41〜44、キャップ層37などのHEMTを構成する各半導体層をすべて含んだトータルとしての領域を動作領域100とする(図5(A))。
その後、全面の初期窒化膜50を除去する。表面には、キャップ層37が露出する。本工程で、ウェハ投入後表面の保護のために堆積した初期窒化膜50および/又は絶縁化領域60のイオン注入の活性化アニールの際の保護膜として堆積した初期窒化膜50が除去される。従来は、この窒化膜をゲート電極形成のリセスエッチングのためのマスクとして利用していたが、本実施形態では後の工程で新たにゲートのリセスエッチングのためのマスクとなる窒化膜を堆積する。本工程で初期窒化膜50を全面除去することにより、後の窒化膜を均一な膜厚に形成することができる(図5(B))。
第2工程(図6):動作領域のキャップ層の一部にコンタクトする第1ソース電極および第1ドレイン電極を形成する工程。
新たなレジストPRを全面に塗布し、フォトリソグラフィプロセスによりオーミック電極を形成するためのマスクを形成する。そして全面にオーミック金属層110(AuGe/Ni/Au)を蒸着する。
その後、リフトオフし、アロイする。これにより、HEMTの動作領域100の一部にコンタクトする第1ソース電極115および第1ドレイン電極116が形成される。
第3工程(図7から図9):第1絶縁膜を形成し、動作領域の第1の領域の第1ノンドープ層を露出する工程。
全面に、第1窒化膜511を形成する。この第1窒化膜511は、ゲートのリセスエッチングのマスクとなる。第1窒化膜511は、ほぼ均一な膜厚および膜質で、第1ソース電極115および第1ドレイン電極116の表面および側面と、これらの付近のキャップ層37に密着して被覆する。すなわち第1ソース電極115(第1ドレイン電極116も同様)とキャップ層37の段差はまんべんなく覆われる。 従って、以降の製造工程中、またはウェハ完成後において薬液及び水分から、第1ソース電極115および第1ドレイン電極116電極の付近のキャップ層37表面を完全に保護することができる。これによりガルバニック効果の発生を防止できる。
また、第1窒化膜511は、最終構造(図3(B))において第1ソース電極115および第2ソース電極135(ドレイン電極も同様)の周囲を被覆する窒化膜51を構成する(図7)。
E型HEMTの第1ゲート電極形成のために新たなレジストPRを設ける。フォトリソグラフィプロセスにより第1ゲート電極の形成領域がパターンニングされたマスクを形成する。そして、マスクの開口部分に露出した第1窒化膜511を除去して開口部OPを形成する。この開口部OPの開口幅がゲート長Lgとなる(図8(A))。
その後、第1ゲート電極の形成領域のリセスエッチングを行う。すなわち第1窒化膜511の開口部OPに露出したキャップ層37を更にウェットエッチングにより除去する。開口部OPには安定層であるノンドープInGaP層44が露出する。
また、キャップ層37は耐圧を確保するため、開口部OPより大きい所定の寸法にサイドエッチングされる。所定の寸法とは、例えば後に形成されるゲート電極から0.3μmの距離である。このときキャップ層37のGaAs層とその下の安定層44のInGaP層とは選択エッチングされるため、サイドエッチングの際にInGaP層44がエッチングされることは無い。キャップ層37のエッチングにより動作領域100のキャップ層37が分離される。また、キャップ層37のサイドエッチングにより、キャップ層37の端部から張り出した開口部OP付近の第1窒化膜511は、ひさし部Eとなる(図8(B))。
キャップ層37から張り出した第1窒化膜511のひさし部Eは表面にレジストが密着しているため、裏側からプラズマエッチングにより除去する。すなわち、サイドエッチにより第1窒化膜511の開口部OPより後退したキャップ層37、安定層44、第1窒化膜511、およびレジストにより形成される袋状の部分にフッ素ラジカルを滞留させることにより、ひさし部Eを裏側からプラズマエッチングし、これを除去する(図9(A))。
ひさし部を除去する際ドライエッチングのプラズマにさらされる動作領域100表面は安定なInGaP層44で覆われているため、動作領域100にダメージを与えずに、エッチングができる。また、ドライエッチングであるので、ひさし部Eのみ除去することができ、第1窒化膜511はオーバエッチングされることはない。
その後、レジストPRをそのままに、プラズマのダメージを受けた安定層44を塩酸によりウェットエッチングする。これにより第3ノンドープ層43が露出する。更に、第3ノンドープ層43(AlGaAs層)をリン酸でエッチングし、引き続き第2ノンドープ層42(InGaP層)を塩酸でエッチングして、第1ゲート電極形成領域の第1ノンドープ層41を露出させる。
このとき、InGaP層と、AlGaAs層は、エッチングの選択性がよい。従来ではE型HEMTの第1ゲート電極を形成するため、ノンドープAlGaAs層を所定の深さまでエッチングしていたが、これは数nmの精度を必要とするため非常に難しく、歩留りが悪かった。しかし本実施形態では選択エッチングにより第1ノンドープ層41を再現性よく露出させることができる(図9(B))。
第4工程(図10および図11):露出した第1ノンドープ層の表面に第1ゲート電極を形成する工程。
次に、全面にゲート金属層120aを蒸着する。ゲート金属層120aは、例えばPt/Moであり、蒸着膜厚は、Ptが50Å、Moが50Åである(図10(A))。
その後、リフトオフし、電子供給層33に連続する清浄な第1ノンドープ層41表面にE型HEMT160を構成する第1ゲート電極127を形成する(図10(B))。
その後、第1ゲート電極127の最下層金属のPtを埋め込む熱処理を施す。これにより、第1ゲート電極127のPtは第1ノンドープ層41とショットキー接合を保ったまま一部が第1ノンドープ層41内に埋め込まれ、第1埋め込み部127bが形成される。
ここで、既述の如くPtの蒸着膜厚が約110Å以下の場合、埋め込み部の深さは常に蒸着膜厚の2.4倍とリニアな関係を保つ。従って、第1ゲート電極127の第1埋め込み部127b深さは120Åとなる。そして第1埋め込み部127bの底部は第2電子供給層33bに達する。
第5工程(図12):第1ゲート電極と、第1ゲート電極の周囲に露出した第1ノンドープ層を被覆する第2絶縁膜を形成する工程。
全面に第2窒化膜512を堆積し、第1ゲート電極127とその周囲に露出した第1ノンドープ層41を保護する。E型HEMTの第1ゲート電極127が設けられる第1ノンドープ層41はAlGaAs層であるため、酸化されやすく後の工程の影響を受けやすい。従って、第1ゲート電極127および第1埋め込み部127b形成直後に第2絶縁膜512で覆い、第1ゲート電極127周囲に露出した第1ノンドープ層41を保護する。
このとき、第1窒化膜511はほぼ均一な厚みで、第1ソース電極115(第1ドレイン電極116)とその端部周辺のキャップ層37を覆っている。従って、第1窒化膜511上層に形成する第2窒化膜512も、成膜の密度が均一となり、これらをまんべんなく被覆することができる。これにより、ウェハ完成後においても水分または薬剤などの滲入を防ぎ、ガルバニック効果を防止できる。また、第2窒化膜512も、最終構造(図3(B))で、各電極周囲を被覆する窒化膜51を構成する。
第6工程(図13および図14):動作領域の第2の領域の第3ノンドープ層を露出する工程。
D型HEMTの第2ゲート電極形成のために新たなレジストPRを設ける。フォトリソグラフィプロセスにより第2ゲート電極の形成領域がパターンニングされたマスクを形成する。そして、マスクの開口部分に露出した第2窒化膜512および第1窒化膜511を除去して開口部OPを形成する。開口部OPの開口幅がゲート長Lgとなる(図13(A))。
その後、第2ゲート電極の形成領域のリセスエッチングを行う。すなわち開口部OPに露出したキャップ層37を更にウェットエッチングにより除去する。開口部OPには安定層44が露出する。
また、キャップ層37は耐圧を確保するため、開口部OPより大きい所定の寸法にサイドエッチングされる。所定の寸法とは、例えば後に形成されるゲート電極から0.3μmの距離である。このときキャップ層のGaAs層とその下のInGaP層とは選択エッチングされるため、サイドエッチングの際InGaP層がエッチングされることは無い。キャップ層37のエッチングにより動作領域100のキャップ層37が分離され、第1ソース電極115にコンタクトするソース領域37s、および第1ドレイン電極116にコンタクトするドレイン領域37dとなる。また、キャップ層37のサイドエッチングにより、キャップ層37の端部から張り出した開口部OP付近の第1窒化膜511および第2窒化膜512は、ひさし部Eとなる(図13(B))。
更に、キャップ層37から張り出した第1窒化膜511および第2窒化膜512のひさし部Eを、裏側からプラズマエッチングにより除去する(図13(C))。ひさし部Eを除去する際ドライエッチングのプラズマにさらされる動作領域100表面はInGaP層44で覆われている。従って、動作領域100にダメージを与えずに、エッチングができ、またドライエッチングであるため第1窒化膜511および第2窒化膜512がオーバエッチングされることはない。
その後、レジスト膜によるマスクをそのままに、塩酸によるウェットエッチングを行う。これにより、プラズマダメージを受けた安定層44が除去され、第2ゲート電極の形成領域に清浄な第3ノンドープ層(AlGaAs層)43が露出する(図14)。InGaP層は化学的に安定した層であり、動作領域100をプラズマエッチングのダメージから保護している。しかし、InGaP層自体はダメージを受けており、その表面の結晶性は悪化している。そこで、本実施形態ではダメージを受けた安定層44を除去することとした。
第7工程(図15):露出した第3ノンドープ層の表面に第2ゲート電極を形成する工程。
次に、全面にゲート金属層120bを蒸着する。ゲート金属層120bは、例えばPt/Moであり、蒸着膜厚は、Ptが50Å、Moが50Åである(図15(A))。
その後、リフトオフし、第3ノンドープ層43表面にD型HEMTを構成する第2ゲート電極128を形成する(図15(B))。
第8工程(図16参照):第2ゲート電極の最下層金属の一部を熱処理により第3ノンドープ層の内部に埋め込む工程。
第2ゲート電極128の最下層金属のPtを埋め込む熱処理を施す。これにより、第2ゲート電極128のPtは、第3ノンドープ層43とショットキー接合を保ったまま一部が動作領域100に埋め込まれ、第2埋め込み部128bが形成される。
ここで、既述の如くPtの蒸着膜厚が約110Å以下の場合、埋め込み部の深さは常に蒸着膜厚の2.4倍とリニアな関係を保つ。従って、本工程によって第2ゲート電極128の埋め込まれたPt(第2埋め込み部128b)深さは120Åとなり、底部は第3ノンドープ層43に位置する。
Ptは、InGaP層内に拡散することなく第2埋め込み部128bが形成される。従って、Ptの異常拡散は起こらず、第2埋め込み部128bが形成される。
また、第6工程(図13(C))の、第1窒化膜511および第2窒化膜512のプラズマエッチングにより安定層44表面はダメージを受ける。結晶性が悪化した安定層44にPtを埋め込んだ場合、Pt埋め込みの熱処理に40分もの長時間を要する。また安定層44はInGaP層であるためPtがInGaP層44表面において横方向に異常拡散するため、第2埋め込み部128bの形状がInGaP層44表面において尖った形状となる。すなわち埋め込みゲート電極構造の本来の目的である耐圧の向上が達成できない(図4(B)参照)。
しかし、本実施形態では安定層44を除去した清浄な第3ノンドープ層43にゲート金属層120bを蒸着して熱処理を施すため、Ptは第3ノンドープ層43内で深さ方向および横方向とも均一に(正常に)拡散し、第2埋め込み部128bが形成される(図4(A)参照)。
従って、第2埋め込み部128bの端部の形状は所定の曲率半径を有する連続した曲線で外側に向かって湾曲した形状となり、電界集中を緩和できる。これにより所定のゲート耐圧(例えば19V)を確保できる。またPt埋め込みの熱処理はわずか5分で終了する。
第9工程(図17参照):第2ゲート電極と、第2ゲート電極の周囲に露出した第3ノンドープ層を被覆する第3絶縁膜を形成する工程。
全面に第3窒化膜513を堆積する。これにより、第2ゲート電極128と、第2ゲート電極128周囲に露出した第3ノンドープ層43が第3窒化膜513で被覆される。また、第1ゲート電極127上は第2窒化膜512および第3窒化膜513で被覆される。
更に、第1ソース電極115および第1ドレイン電極116は、第1窒化膜511、第2窒化膜512、第3窒化膜513の3層で被覆される。また、第3窒化膜513も、最終構造(図3(B))で、各電極周囲を被覆する窒化膜51を構成する。
第11工程(図18参照):第1ソース電極および第1ドレイン電極とコンタクトする第2ソース電極および第2ドレイン電極を形成する工程。
その後、新たなレジスト(不図示)を設けてコンタクトホール形成のためのマスクを形成し、第1ソース電極115、第1ドレイン電極116上の第1窒化膜511、第2窒化膜512、第3窒化膜513をエッチングする。これにより、第1ソース電極115、第2ドレイン電極116(および他の所定の領域)上にコンタクトホールCHが形成される(図18)。
新たなレジスト(不図示)を設けてマスクを形成し、パッド金属層(Ti/Pt/Au)130を蒸着、リフトオフする。これにより、第1ソース電極115および第1ドレイン電極116にそれぞれコンタクトし、また一部が第3窒化膜513上に配置される第2ソース電極135および第2ドレイン電極136を形成する。また、スイッチ回路装置の配線や電極パッドなどもパッド金属層130により所望のパターンに形成される。
これにより、第1ゲート電極127両側の第1ソース電極115、第2ソース電極135および第1ドレイン電極116、第2ドレイン電極136によりE型HEMT160が構成される。また第2ゲート電極128両側の第1ソース電極115、第2ソース電極135および第1ドレイン電極116、第2ドレイン電極136によりD型HEMT160が構成される(図3(B))。
上記の如く本実施形態では、まずE型HEMT160の第1ゲート電極127を形成し、次にD型HEMT150の第2ゲート電極128を形成する。また第1ゲート電極127の形成直後にPt埋め込みの熱処理を行い、第2窒化膜512で第1ゲート電極127とその周囲を被覆する。その後、第2ゲート電極128を形成するためのフォトリソグラフィプロセスを行う。
スイッチングに使用するD型HEMT150は、電子供給層33の不純物濃度設定において、耐圧とオン抵抗Ronのトレードオフがある。すなわち所定の耐圧が得られる範囲で最小のオン抵抗Ronを得るため、電子供給層33の不純物濃度を最大に設定する。一方、E型HEMT160はインバータが動作しさえすれば良く、耐圧に大きな余裕がある。
E型HEMT160の第1ゲート電極127とD型HEMT150の第2ゲート電極128を比較した場合、先に形成した方が後のゲート形成プロセスの影響を受けてそのFET特性が劣化しやすい。従って、本実施形態ではよりデリケートなD型HEMT150の第2ゲート電極128の形成は、特性に余裕のあるE型HEMT160の第1ゲート電極127を形成した後に行うこととした。
また第1ゲート電極127は第1ノンドープ層41(AlGaAs層)に形成するため、第1ゲート電極127の両脇のAlGaAs層表面が酸化されやすく後の工程の影響を受けやすい。従って、第1ゲート電極127を形成後、Pt埋め込みの熱処理と、保護用の第2窒化膜512を形成した後、第2ゲート電極128を形成するためのフォトリソグラフィプロセスを行うこととした。
以上、本実施形態では第1ゲート電極127も埋め込みゲート電極構造の場合を例に説明したが、第1ゲート電極127については埋め込みゲート電極構造でなくてもよい。
本発明を説明するための(A)回路概要図、(B)回路概要図、(C)回路記号である。 本発明を説明するための(A)等価回路図、(B)ブロックダイアグラムである。 本発明を説明するための(A)平面図、(B)断面図である。 本発明を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の製造方法を説明するための断面図である。 従来技術を説明するための断面図である。 従来技術を説明するための断面図である。
符号の説明
31 GaAs基板
32 バッファ層
33 電子供給層
33a 第1電子供給層
33b 第2電子供給層
34 スペーサ層
35 電子走行層
37 キャップ層
37s ソース領域
37d ドレイン領域
41 第1ノンドープ層
42 第2ノンドープ層
43 第3ノンドープ層
44 安定層
60 絶縁化領域
50 初期窒化膜
51 窒化膜
511 第1窒化膜
512 第2窒化膜
513 第3窒化膜
100 動作領域
110 オーミック金属層
115、135 ソース電極
116、136 ドレイン電極
120、120b、120a ゲート金属層
127 第1ゲート電極
127b 第1埋め込み部
128 第2ゲート電極
128b、128b’ 第2埋め込み部
130 パッド金属層
150 D型HEMT
160 E型HEMT
300 基板
301 半絶縁性GaAs基板
302 バッファ層
303 チャネル層
304 スペーサ層
305 電子供給層
306 AlGaAs層
307 InGaP層
308 コンタクト層
309 分離領域
315 AlGaAs層
316 InGaP層
317 AlGaAs層
310 D型HEMT
311 D型HEMTのゲート電極
311b D型HEMTのゲート電極埋め込み部
320 E型HEMT
321 E型HEMTのゲート電極
OP 開口部
CH コンタクトホール
E ひさし部
PR レジスト
GD ゲート電極底部の高さ(埋め込み部)のばらつき
IN 共通入力端子
I 入力端子
Ctl 制御端子
O、OUT1、OUT2 出力端子

Claims (16)

  1. 半絶縁性基板上に複数の半導体層を積層し、ディプレッション型HEMTにより高周波アナログ信号をスイッチングするスイッチ回路を構成し、前記ディプレッション型HEMTおよび該ディプレッション型HEMTと同一基板に集積化されたエンハンスメント型HEMTによりロジック回路を構成したスイッチ集積回路装置であって、
    前記半導体層は、バッファ層、第1電子供給層、チャネル層、第2電子供給層、該第2電子供給層と格子整合する第1ノンドープ層、該第1ノンドープ層と格子整合する第2ノンドープ層、該第2ノンドープ層と格子整合する第3ノンドープ層、該第3ノンドープ層と格子整合する安定層、該安定層と格子整合するキャップ層を含み、
    前記半導体層に設けられ、ソース領域およびドレイン領域を有する動作領域と、
    前記ソース領域およびドレイン領域とそれぞれコンタクトする第1ソース電極および第1ドレイン電極と、
    前記第1ソース電極および前記第1ドレイン電極とコンタクトする第2ソース電極および第2ドレイン電極と、
    前記動作領域の前記第1ノンドープ層の表面に設けられた第1ゲート電極と、
    前記動作領域の前記第3ノンドープ層の表面に設けられ、一部が該第3ノンドープ層内に埋め込まれた第2ゲート電極と、
    前記第1ゲート電極および該第1ゲート電極周囲に露出する第1ノンドープ層と、前記第2ゲート電極と該第2ゲート電極の周囲に露出する第3ノンドープ層とを被覆する絶縁膜と、
    を具備することを特徴とするスイッチ集積回路装置。
  2. 前記第3ノンドープ層は、前記第1ノンドープ層、第2ノンドープ層および安定層より厚みが厚いことを特徴とする請求項1に記載のスイッチ集積回路装置。
  3. 前記第1ノンドープ層および前記第3ノンドープ層は、ノンドープAlGaAs層であることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ集積回路装置。
  4. 前記2ノンドープ層および安定層は、InGaP層であることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ集積回路装置。
  5. 前記第1ゲート電極および第2ゲート電極の最下層金属はPtであり、該Ptの一部を前記動作領域に埋め込むことを特徴とする請求項1に記載のスイッチ集積回路装置。
  6. 前記第1ゲート電極および第2ゲート電極を構成するゲート金属層は、Pt/Moであることを特徴とする請求項4に記載のスイッチ集積回路装置。
  7. 前記電子供給層、チャネル層、およびキャップ層は、それぞれn+型AlGaAs層、ノンドープInGaAs層、およびn+型GaAs層であることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ集積回路装置。
  8. 前記第1ソース電極とその周囲に露出する前記キャップ層、及び前記第1ドレイン電極とその周囲に露出する前記キャップ層をそれぞれ被覆する他の絶縁膜を有することを特徴とする請求項1に記載のスイッチ集積回路装置。
  9. 半導体基板上に、ディプレッション型HEMTにより高周波アナログ信号をスイッチングするスイッチ回路を形成し、前記ディプレッション型HEMTと同一基板に集積化されたエンハンスメント型HEMTによりロジック回路を形成する、スイッチ集積回路装置の製造方法であって、
    前記基板上にバッファ層、第1電子供給層、チャネル層、第2電子供給層、該第2電子供給層と格子整合する第1ノンドープ層、該第1ノンドープ層と格子整合する第2ノンドープ層、該第2ノンドープ層と格子整合する第3ノンドープ層、該第3ノンドープ層と格子整合する安定層、該安定層と格子整合するキャップ層を含む複数の半導体層を積層し、絶縁化領域により動作領域を分離する工程と、
    前記キャップ層の一部にコンタクトする第1ソース電極および第1ドレイン電極を形成する工程と、
    前記動作領域の前記第1ノンドープ層の表面に第1ゲート電極を形成する工程と、
    前記動作領域の前記第3ノンドープ層の表面に第2ゲート電極を形成する工程と、
    前記第2ゲート電極の最下層金属の一部を熱処理により前記第3ノンドープ層の内部に埋め込む工程と、
    前記第1ソース電極および第1ドレイン電極とコンタクトする第2ソース電極および第2ドレイン電極を形成する工程と、
    を具備することを特徴とするスイッチ集積回路装置の製造方法。
  10. 半導体基板上に、ディプレッション型HEMTにより高周波アナログ信号をスイッチングするスイッチ回路を形成し、前記ディプレッション型HEMTと同一基板に集積化されたエンハンスメント型HEMTによりロジック回路を形成するスイッチ集積回路装置の製造方法であって、
    前記基板上にバッファ層、第1電子供給層、チャネル層、第2電子供給層、該第2電子供給層と格子整合する第1ノンドープ層、該第1ノンドープ層と格子整合する第2ノンドープ層、該第2ノンドープ層と格子整合する第3ノンドープ層、該第3ノンドープ層と格子整合する安定層、該安定層と格子整合するキャップ層を含む複数の半導体層を積層し、絶縁化領域により動作領域を分離する工程と、
    前記動作領域の前記キャップ層の一部にコンタクトする第1ソース電極および第1ドレイン電極を形成する工程と、
    第1絶縁膜を形成し、前記動作領域の第1の領域の前記第1ノンドープ層を露出する工程と、
    露出した前記第1ノンドープ層の表面に第1ゲート電極を形成する工程と、
    前記第1ゲート電極と、該第1ゲート電極の周囲に露出した前記第1ノンドープ層を被覆する第2絶縁膜を形成する工程と、
    前記動作領域の第2の領域の前記第3ノンドープ層を露出する工程と、
    露出した前記第3ノンドープ層の表面に第2ゲート電極を形成する工程と、
    前記第2ゲート電極の最下層金属の一部を熱処理により前記第3ノンドープ層の内部に埋め込む工程と、
    前記第2ゲート電極と、該第2ゲート電極の周囲に露出した前記第3ノンドープ層を被覆する第3絶縁膜を形成する工程と、
    前記第1ソース電極および第1ドレイン電極とコンタクトする第2ソース電極および第2ドレイン電極を形成する工程と、
    を具備することを特徴とするスイッチ集積回路装置の製造方法。
  11. 前記第3ノンドープ層は、前記第1ノンドープ層、第2ノンドープ層および安定層より厚みが厚いことを特徴とする請求項9または請求項10に記載のスイッチ集積回路装置の製造方法。
  12. 前記第2ゲート電極の最下層金属はPtであり、該Ptの一部が前記第3ノンドープ層に埋め込まれることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のスイッチ集積回路装置の製造方法。
  13. 前記第2ゲート電極の前記Ptは60Å以下の膜厚に蒸着することを特徴とする請求項12に記載のスイッチ集積回路装置の製造方法。
  14. 前記絶縁化領域形成前に全面に初期絶縁膜を形成し、該初期絶縁膜を除去した後、前記第1絶縁膜を形成することを特徴とする請求項10に記載のスイッチ集積回路装置の製造方法。
  15. 前記第1ノンドープ層および前記第3ノンドープ層は、ノンドープAlGaAs層であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のスイッチ集積回路装置の製造方法。
  16. 前記2ノンドープ層および前記安定層は、InGaP層であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のスイッチ集積回路装置の製造方法。
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