JP2007192163A - 筒内噴射式火花点火エンジン及びその燃料噴射弁 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来技術におけるよりも燃料噴霧の全体をシリンダ上方へと持ち上げることが可能なエンジン及び燃料噴射弁を提供する。
【解決手段】1つのシリンダに対して複数の吸気バルブ(9a、9b)を備え、シリンダの上方側に相対的に偏った第1の噴霧部(13a)と、シリンダの中心線と直交する方向より、燃料噴射弁の軸を含むシリンダ上下方向の面を中心として左右対称的に所定角度(θa、θb)、シリンダ下方に傾いた方向に扁った第2、第3の噴霧部(12b、13c)とを合成した燃料噴霧(13)を燃料噴射弁によりシリンダ内に噴射可能とすると共に、第1の噴霧部(13a)を、吸気行程においてシリンダ内に突出する複数の吸気バルブ(9a、9b)の隙間に位置させ、かつ第2、第3の噴霧部(13b、13c)を、同じく吸気行程においてシリンダ内に突出する複数の吸気バルブ(9a、9b)と衝突しない範囲でシリンダ上方に位置させる。
【選択図】図3
【解決手段】1つのシリンダに対して複数の吸気バルブ(9a、9b)を備え、シリンダの上方側に相対的に偏った第1の噴霧部(13a)と、シリンダの中心線と直交する方向より、燃料噴射弁の軸を含むシリンダ上下方向の面を中心として左右対称的に所定角度(θa、θb)、シリンダ下方に傾いた方向に扁った第2、第3の噴霧部(12b、13c)とを合成した燃料噴霧(13)を燃料噴射弁によりシリンダ内に噴射可能とすると共に、第1の噴霧部(13a)を、吸気行程においてシリンダ内に突出する複数の吸気バルブ(9a、9b)の隙間に位置させ、かつ第2、第3の噴霧部(13b、13c)を、同じく吸気行程においてシリンダ内に突出する複数の吸気バルブ(9a、9b)と衝突しない範囲でシリンダ上方に位置させる。
【選択図】図3
Description
本発明は、筒内に燃料を直接噴射する火花点火エンジン(内燃機関)及びその燃料噴射弁に関する。
燃料噴射弁からの燃料噴霧の形状として複数の噴霧部を合成したものがある(特許文献1参照)。
特開2004−28078公報
ところで、上記の従来技術によれば、第1の扁平な噴霧部が吸気バルブに直撃することがないような角度に設定されているため、シリンダ下方を向いており燃料噴霧の行程距離が短くなってしまう。
これについてさらに説明すると、従来技術では、図7に示したように、1つのシリンダに対して複数の吸気バルブ9a、9bを備え、シリンダの中心線と直交する方向に扁平な第1の噴霧部12aと、第1の噴霧部12aに対してシリンダの上方側に相対的に偏った第2の噴霧部12bとを合成した燃料噴霧12をシリンダ内に噴射可能としている。
このため、吸気行程においてシリンダ内に吸気バルブ9a、9bが最大に突出した状態でも、第1の扁平な噴霧部12aが吸気バルブ9a、9bに直撃することがないような角度に設定する必要がある。このため、吸気バルブ9a、9bの最大リフト時に、燃料噴射弁の噴射位置Pinとの相対位置関係によっては、図6(a)に示したように、第1の噴霧部12aがピストン4頂面に向かわざるを得なくなり、ピストン4頂面までの行程距離が短くなる。燃料噴霧の行程距離が短くなると、燃料噴霧が気化する時間が減少し、燃料噴霧のピストン4頂面へ付着量を十分に低減できず、結果として気化潜熱による吸気温度の低下とそれに伴う充填効率の向上という筒内噴射の効果が損なわれる。
また、第1の噴霧部12aがシリンダ3下方を向いていることから、シリンダ3内におけるタンブル(ガス流動)を阻害し、シリンダ内の乱れを低減する恐れがある。
そこで本発明は、従来技術におけるよりも燃料噴霧の全体をシリンダ上方へと持ち上げることが可能なエンジン及び燃料噴射弁を提供することを目的とする。
本発明は、1つのシリンダ(3)に対して複数の吸気バルブ(9a、9b)を備え、シリンダ(3)の上方側に相対的に偏った第1の噴霧部(13a)と、シリンダ(3)の中心線と直交する方向より、燃料噴射弁(11)の軸を含むシリンダ(3)上下方向の面を中心として左右対称的に所定角度、シリンダ(3)下方に傾いた方向に扁った第2、第3の噴霧部(12b、13c)とを合成した燃料噴霧(13)を燃料噴射弁(11)によりシリンダ(3)内に噴射可能とすると共に、前記第1の噴霧部(13a)を、吸気行程においてシリンダ(3)内に突出する前記複数の吸気バルブ(9a、9b)の隙間に位置させ、かつ前記第2、第3の噴霧部(13b、13c)を、同じく吸気行程においてシリンダ(3)内に突出する前記複数の吸気バルブ(9a、9b)と衝突しない範囲でシリンダ(3)上方に位置させる。
また、本発明は、3つの特定方向に偏った燃料噴霧を形成する第1、第2、第3の噴孔部(26、27、28)を備え、前記3つの特定方向のうちの1つがシリンダ(3)の中心線の方向と一致するように、かつ、残り2つの特定方向がシリンダ(3)の中心線と直交する方向より、燃料噴射弁(11)の軸を含むシリンダ(3)上下方向の面を中心として左右対称的に所定角度、シリンダ(3)下方に傾いた2つの方向と一致するように前記3つの噴孔部(26、27、28)とシリンダ(3)との位置関係を調整する。
本発明によれば、1つのシリンダに対して複数の吸気バルブを備え、シリンダの上方側に相対的に偏った第1の噴霧部と、シリンダの中心線と直交する方向より、燃料噴射弁の軸を含むシリンダ上下方向の面を中心として左右対称的に所定角度、シリンダ下方に傾いた方向に扁った第2、第3の噴霧部とを合成した燃料噴霧を燃料噴射弁によりシリンダ内に噴射可能とすると共に、前記第1の噴霧部を、吸気行程においてシリンダ内に突出する前記複数の吸気バルブの隙間に位置させ、かつ前記第2、第3の噴霧部を、同じく吸気行程においてシリンダ内に突出する前記複数の吸気バルブと衝突しない範囲でシリンダ上方に位置させるので、従来技術における場合よりも、燃料噴霧を全体としてシリンダ上方に持ち上げることが可能となり、この結果、燃料噴霧はシリンダ内に突出する複数の吸気バルブに付着することなく長い行程距離が保たれることから、燃料噴霧の行程距離が増加する分、燃料噴霧の蒸発が促進され、ピストン頂面への燃料付着を従来技術における場合より低減することができる。
また、本発明によれば、3つの特定方向に偏った燃料噴霧を形成する第1、第2、第3の噴孔部を備え、3つの特定方向のうちの1つがシリンダの中心線の方向と一致するように、かつ、残り2つの特定方向がシリンダ3の中心線と直交する方向より、燃料噴射弁11の軸を含むシリンダ上下方向の面を中心として左右対称的に所定角度、シリンダ下方に傾いた2つの方向と一致するように前記3つの噴孔部とシリンダとの位置関係を調整するので、燃料噴霧はシリンダ内に突出する複数の吸気バルブに付着することなく長い行程距離が保たれることから、燃料噴霧の行程距離が増加する分、蒸発が促進され、ピストン頂面への燃料付着を従来装置の場合より低減することができる。本発明によれば、3つの噴孔部を従来のスリット加工技術によって実現できるため、生産コストを増加させることなく性能の向上が図れる。本発明によれば、第2、第3の噴霧部を独立して設計することができるため、付着する可能性のある複数の吸気バルブが独立の動作をする場合にも対応することができる。
なお、本発明において「シリンダ上方」はシリンダヘッド側に、「シリンダ下方」はクランク室側にそれぞれ対応する。すなわち、本発明において、「シリンダ上方」及び「シリンダ下方」の用語はシリンダの向きを区別するために使用される概念であって、エンジンを車両に搭載した状態における鉛直方向とシリンダの向きとの対応関係を限定するものではない。例えば、シリンダの中心線が鉛直方向に対して斜めに傾けられ、又は水平方向に向けられている場合も本発明の範囲に含まれる。また、「横方向」とは、「シリンダ上下方向」に直交する方向のことである。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。なお、シリンダ内に噴射される燃料噴霧の特徴について先に説明し、次いでそのような燃料噴霧を実現するための燃料噴射弁を説明する。
図1は本発明が適用されるエンジンの一実施形態のシリンダ上端部付近の縦断面図、図2はシリンダ内を下方からシリンダ軸線の方向に沿って上方をみた図、図3はシリンダ内に噴射される燃料噴霧13と複数の吸気バルブ9a、9bとの関係を示す図である。
図1において、エンジン1は4サイクルガソリンエンジンとして構成されており、シリンダブロック2には複数のシリンダ3が紙面に直交する方向に連続して形成され(図1では一つのみ示す。)、各シリンダ3にピストン4が上下動自在に挿入される。
各シリンダ3の上方開口部はシリンダヘッド5にて閉じられ、シリンダヘッド5には点火プラグ6がその電極部(スパーク形成部)を各シリンダ3の略中心線上に位置させて取付けられている。
シリンダヘッド5には、点火プラグ6を挟むようにして、図で上方よりシリンダ3に向けて開口する吸気通路7及び排気通路8がシリンダ3毎に形成され、図2にも示したように、吸気通路7を開閉する2本の吸気バルブ9a、9bと、排気通路8を開閉する2本の排気バルブ10a、10bとが1つのシリンダ3に対して取付けられている。ただし、図1では手前側の吸気バルブ9b及び排気バルブ10bのみを示している。
吸気通路7はポート近くで隔壁7cによって上部通路7aと下部通路7bとに分割され、下部通路7bには下部通路7bの開口面積を変化させ得るガス流動制御弁7dが設けられている。ガス流動制御弁7dを閉じたときには専ら上部通路7aからシリンダ3の中心付近に吸気が導入され、図1に矢印で示したように、シリンダ3内をシリンダ3の中心線と平行な面に沿って旋回するタンブル(ガス流動)が形成される。ガス流動制御弁7dを開くと上部通路7aと下部通路7bの両方からシリンダ3内に均等に吸気が導入され、タンブルが相対的に弱められる。このように、ガス流動制御弁7dはシリンダ3内のタンブルの強弱を制御する手段として機能する。ただし、ガス流動制御弁7dは下部通路7bに代えて上部通路7aに設けられてもよい。ガス流動制御弁7dとは異なる手段によりタンブルを制御してもよい。なお、図1においてピストン4の頂面にはタンブルを損なわないように凹部4aが形成されている。ただし、ピストン4の頂面は凹部4aを有しないフラットな形状であってもよい。
燃料噴射弁11は、吸気バルブ9a、9bよりもシリンダ3の外周側においてそのノズル部11aをシリンダ3の中心線側に向けた状態で、かつ、燃料噴射弁11からの燃料噴射方向が図1において右斜め下方となるようにシリンダ3の中心線に直交する線より所定角度傾けてシリンダヘッド5に取り付けられている。
図3に示すように、燃料噴射弁11から、第1の噴射部13a、第2の噴射部12b及び第3の噴射部13cの3つの噴射部を合成した燃料噴霧13をシリンダ3内に噴射可能である。すなわち、第1の噴射部13aは、シリンダ3の上方側(シリンダヘッド5側)に相対的に偏って配置され、かつ、シリンダ3の中心線の方向に扁平な噴霧部となっている。これに対して、第2、第3の噴射部13b、13cは、シリンダ3の中心線と直交する方向(図3においてZで示す方向)より、燃料噴射弁11の軸を含むシリンダ3上下方向の面(図2で基準線Xを含んで紙面に直交する面)を中心として左右対称的に所定角度θa、θb、シリンダ3下方に傾いた方向に扁平な噴霧部となっている。
図6(b)に示すように、第1の噴霧部13aのシリンダ3の上下方向拡がり角をθv1、第2、第3の噴霧部13b、13cを合わせた噴霧部のシリンダ3の上下方向拡がり角をθv2、図2に示すように、第1の噴霧部13aの横方向拡がり角をθh1、第2、第3の噴霧部13b、13cを合わせた噴霧部の横方向拡がり角をθh2とすれば、シリンダ3の上下方向拡がり角θv1のほうがシリンダ3の上下方向拡がり角θv2より小さくなるように、横方向拡がり角θH1より横方向拡がり角θH2のほうが大きくなるように定められている。上記の「横方向」とは、シリンダ3の上下方向に直交する方向のことである。上記図6(b)は図2のB−B線断面図である。
このようにして、3つの各噴射部13a、13b、13cはいずれも扁平円錐状であり、これら3つの噴射部13a、13b、13cを合成した燃料噴霧13をシリンダ3内に噴射可能としている。
本発明における「扁平」の概念は、各噴霧部13a、13b、13cの横断面形状(円錐状燃料噴霧の中心線の方向と直交する方向の断面形状)が、楕円状、長円状のように特定方向に長くその特定方向と直交する方向には幅が狭い形状であれば「扁平」の範疇に含まれる。
図2あるいは図5(b)に示すように、燃料噴霧13は燃料噴射弁11の軸を含むシリンダ上下方向の面に関して左右対称な形状を有している。さらに、図3、図5(b)に示すように、シリンダ3内に突出する吸気バルブ9a,9bと第1の噴霧部13aとが衝突しない程度に、第1の噴霧部13aの横方向拡がり角θh1が制限されている。これにより、吸気行程中に燃料を噴射しても第1の噴霧部13aはシリンダ3内に突出した2つの吸気バルブ9a,9bの隙間を介して、ノズル11aが位置するのとは反対側のシリンダ3のへと向かうようになる。また、第2、第3の噴霧部13b、13cを合わせた噴霧部の横方向拡がり角θh2は、同一方向に関する第1の噴霧部13aの横方向拡がり角θh1よりも大きく、排気バルブ10a、10bの下方まで達したとき、図5(b)に示すように2つの排気バルブ10a,10bのエリアと十分に重なり合う程度に、第2、第3の噴霧部13b、13cを合わせた噴霧部が拡大されている。上記図5(b)は図2のA−A線断面図である。
図6(b)に示すように、シリンダ3の中心線の方向(シリンダ上下方向)に関しては、第1の噴霧部13aはその上端がシリンダヘッド5の下面、つまりは燃焼室の上側の壁面に接しない範囲で可能な限り点火プラグ6側に寄せて配置されている。これは、シリンダヘッド5とシリンダ3とにより画成される燃焼室はペントルーフ型であり、シリンダヘッド5の下面壁の最もへこんだ位置に点火プラグ6が設けられているため、この点火プラグ6に燃料噴霧が到達し易くするためである。
他方、第2、第3の噴霧部13b、13cを合わせた噴霧部は、シリンダ3内に突出する吸気バルブ9a,9bと衝突しない範囲でシリンダ3上方側に寄せて配置されている。結果として、第2、第3の噴霧部13b、13cの横断面の長手方向の各上端側母線が第1の噴霧部13aの横断面の長手方向の下端側母線と接し、燃料噴霧13は全体としてほぼ三ツ葉状の横断面形状を呈している。そして、全体としてほぼ三ツ葉状の横断面形状を有するこの燃料噴霧13が、シリンダ3内に突出する吸気バルブ9a,9bと衝突することのない空間を貫通することとなる。
なお、吸気行程における吸気バルブ9a、9bと各噴霧部13a、13b、13cとの関係については、燃料噴射時期における吸気バルブ9a、9bのシリンダ3内への突出量(リフト量)を特定し、その特定された突出量を与えたときの吸気バルブ9a、9bの位置を基準として各噴霧部13a、13b、13cの形状や配置を定めればよい。吸気行程における燃料噴射の開始時期、継続時間が可変であるときは、最も早い開始時期から最も遅い終了時期までの吸気バルブ9a、9bの突出範囲を特定し、その突出範囲を避けて3つの各噴霧部13a、13b、13cを形成すればよい。
燃料噴霧の貫徹力については、図6(b)に示すように3つの各噴霧部13a、13b、13cの貫徹力がノズル11aが位置するのとは反対側のシリンダ3の近くまで達するように設定することが好ましい。吸気行程時には均質混合気を早期に形成する必要から、シリンダ3内に燃料噴霧を十分に拡散させ得る貫徹力が求められるからである。
次に、本発明の燃料噴霧13を実現するための燃料噴射弁11を説明する。
燃料噴射弁11は、公知(特開224−28078公報参照)のようにバルブボディと、そのバルブボディの中空部に摺動自在に挿入されたニードル弁と、ニードル弁を先端側に押し付けるコイルばねと、コイルばねに抗してニードル弁を後方に駆動する磁力を発生する電磁コイルとを備えている。コイルばねによって押されたニードル弁がバルブボディ内の弁座と密着することにより、ニードル弁の内部流路から中空部を介して噴孔に至る燃料の供給経路が遮断される。電磁コイルが励磁されるとニードル弁が弁座から離れ、燃料の供給経路が連通して燃料が噴孔から霧状に噴射される。
図4(a)は、図3に示した燃料噴霧13を形成するための燃料噴射弁11のノズル部11a先端の噴孔25を示している。噴孔25は、ニードル弁21(図4(b)参照)の中心より図で上方向に延びる縦長のスリット状の第1の噴孔部26と、ニードル弁21の中心より図で左下方向に延びる横長のスリット状の第2の噴孔部27と、ニードル弁21の中心より図で右下方向に延びる横長のスリット状の第3の噴孔部28とを備えている。第1の噴孔部26の長手方向に沿った断面形状を図4(b)に、第2の噴孔部27の長手方向に沿った断面形状を図4(c)に、第3の噴孔部28の長手方向に沿った断面形状を図4(d)にそれぞれ示す。これら図4(b)、図4(c)、図4(d)の図から明らかなように、3つの各噴孔部26、27、28はノズル部11aの内側から外側に向かって徐々に拡大する扇状に形成されている。
このように噴孔25は、第1の噴孔部26の下端で第2の噴孔部27の右上端と第3の噴孔部28の左上端とが交差して全体で逆Y字状の単一の噴孔25を形成しているので、第1の噴孔部26からの燃料噴霧によって第1の噴霧部13aを、第2の噴孔部27からの燃料噴霧によって第2の噴霧部13bを、第3の噴孔部28からの燃料噴霧によって第3の噴霧部13cをそれぞれ形成することができる。
3つの各噴孔部26、27、28の長さL1、L2、L3、幅W1、W2、W3、角度θ1、θ2及び図4(b)、図4(c)、図4(d)に示した角度θA、θB、θCは、求められる燃料噴霧13の形状、貫徹力、燃料量に応じて適宜に調整すればよい。例えば、第1と第3の噴孔部の間の角度θ1、第1と第2の噴孔部の間の角度θ2や3つの各噴孔部の長さL1、L2、L3を変化させることにより、3つの各噴霧部13a、13b、13cの横断面の長手方向の拡がり角を調整することができる。一方、3つの各噴孔部26、27の幅W1、W2、W3を変化させることにより、各噴霧部13a、13b、13cの横断面の長手方向と直交する方向の拡がり角を調整することができる。
燃料噴霧の貫徹力については3つの各噴孔部の幅W1、W2、W3と相関し、幅W1、W2、W3を大きくするほど貫徹力を増加させることができる。また、燃料量は3つの各噴孔部26、27、28の開口面積と相関関係があり、開口面積が大きいほど燃料量も増加する。本発明において、3つの各噴霧部13a,13b、13cの貫徹力(燃料噴霧の到達距離)及び燃料量は3つの各噴霧部13a、13b、13cに要求される特性に応じて適宜に設定してよい。
このように、本発明では燃料噴射弁11のノズル部11a先端の噴孔25を逆Y字型にスリット加工することによって、図3や図5(b)に示したように、3つの噴霧部13a、13b、13cを有する燃料噴霧13を実現する。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
従来技術において、2つの吸気バルブ9a、9bヘの燃料付着を避けようとすれば、図6(a)に示したように、第1の噴霧部12aを最大リフト時の吸気バルブ9a、9bの下端よりもシリンダ3上方には位置させることができないのであるが、本実施形態では、第2の噴霧部13b及び第3の噴霧部13cがそれぞれ独立に生成されるので、第2の噴霧部13b及び第3の噴霧部13cを合わせた噴霧部は図3に示したように横断面形状がへの字状に折れ曲がっているため、第2、第3の噴霧部13b、13cを合わせた噴霧部の一部が最大リフト時の吸気バルブ9a、9bの下端よりもシリンダ3上方に位置することとなる。この結果、燃料噴霧13は、全体でみれば従来技術におけるよりもシリンダ3上方に位置することになり、そのぶん第2、第3の噴霧部13b、13cを合わせた噴霧部の行程距離が、図6(b)に示したように長くなり、ピストン4頂面への燃料付着量を低減することができる。
また、吸気バルブ9a、9b、ピストン4等への燃料付着量が低減されると、均質度の高い混合気がシリンダ3内に形成されると共に、気化潜熱による吸気温度の低下とそれに伴う充填効率の向上を図ることができる。
このように本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、1つのシリンダ3に対して複数の吸気バルブ9a、9bを備え、シリンダ3の上方側に相対的に偏った第1の噴霧部13aと、シリンダ3の中心線と直交する方向より、燃料噴射弁11の軸を含むシリンダ3上下方向の面を中心として左右対称的に所定角度θa、θb、シリンダ3下方に傾いた方向に扁った第2、第3の噴霧部12b、13cとを合成した燃料噴霧13を燃料噴射弁11によりシリンダ3内に噴射可能とすると共に、第1の噴霧部13aを、吸気行程においてシリンダ3内に突出する複数の吸気バルブ9a、9bの隙間に位置させ、かつ第2、第3の噴霧部13b、13cを、同じく吸気行程においてシリンダ3内に突出する複数の吸気バルブ9a、9bと衝突しない範囲でシリンダ3上方に位置させているので、従来技術における場合よりも、燃料噴霧13を全体としてシリンダ3上方に持ち上げることが可能となり、この結果、燃料噴霧13はシリンダ3内に突出する複数の吸気バルブ9a、9bに付着することなく長い行程距離が保たれることから、燃料噴霧13の行程距離が増加する分、燃料噴霧13の蒸発が促進され、ピストン4頂面への燃料付着を従来技術における場合より低減することができる。
特に、吸気バルブ9a、9bとピストン4との間の隙間が狭くなる吸気上死点付近の燃料噴射時においても、その隙間に適合するように3つの各噴霧部13a、13b、13cを形成してピストン4への燃料付着を抑え、燃料の気化潜熱による充填効率の向上効果を十分に発揮させることができる。このため、全負荷均質燃焼時、特には吸気上死点付近で燃料を噴射する中高速域において均質度の高い燃料混合気を形成することができる。
本実施形態(請求項2に記載の発明)によれば、第1の噴霧部13aはシリンダ3の中心線の方向に扁平な円錐状であるので、シリンダ3内に突出する複数の吸気バルブ9a、9bと第1の噴霧部13aとの衝突をさらに避けることができる。
本実施形態(請求項3に記載の発明)によれば、第2、第3の噴霧部13b、13cは所定角度θa、θb下方に傾いた方向に扁平な円錐状であるので、シリンダ3内に突出する複数の吸気バルブ9a、9bと第1、第2の噴霧部13b、13cとの衝突をさらに避けることができる。
本実施形態(請求項6に記載の発明)によれば、ガス流動制御弁7dを備え、タンブルが必要となる運転域でガス流動制御弁7dを働かせてシリンダ内にタンブルを生じさせるのであるが、本実施形態の燃料噴霧は、上記のように従来技術における場合よりも全体としてシリンダ3上方に持ち上がっているので、従来技術に比べてタンブルを阻害する要素が軽減され、シリンダ3内での乱れの悪化が軽減されると期待できる。
本実施形態(請求項7に記載の発明)によれば、燃料噴射弁11のノズル部11a先端に3つの特定方向に偏った燃料噴霧13を形成する第1、第2、第3の噴孔部26、27、28を備え、3つの特定方向のうちの1つがシリンダ3の中心線の方向と一致するように、かつ、残り2つの特定方向がシリンダ3の中心線と直交する方向より、燃料噴射弁11の軸を含むシリンダ上下方向の面を中心として左右対称的に所定角度θa、θb、シリンダ下方に傾いた2つの方向と一致するように3つの噴孔部26、27、28とシリンダ3との位置関係を調整するので、燃料噴霧13はシリンダ3内に突出する複数の吸気バルブ9a、9bに付着することなく長い行程距離が保たれることから、燃料噴霧13の行程距離が増加する分、蒸発が促進され、ピストン4頂面への燃料付着を従来技術における場合より低減することができる。
本実施形態(請求項7に記載の発明)によれば、3つの噴孔部26、27、28を従来のスリット加工技術によって実現できるため、生産コストを増加させることなく性能の向上が図れる。
本実施形態(請求項7に記載の発明)によれば、図4(a)に示される第1の噴孔部26と第2、第3の噴孔部27、28とがなす角θ1、θ2は、それぞれ自由に決定することができるため、燃料噴霧13が付着する可能性のある複数の吸気バルブ9a、9bが独立に動作するときにも対応することができる。
実施形態では、複数の吸気バルブ9a、9bがシリンダ3内に突出する吸気行程において燃料噴射を実行する場合で説明したが、吸気バルブ9a、9bがシリンダ3内に突出しない圧縮行程において燃料噴射を実行する場合に対応させることもできる。このときには、3つの各噴霧部13a、13b、13cの貫徹力及び燃料量は、好ましくは、次のように設定する。まず、燃料噴霧の貫徹力については、第2、第3の噴霧部13b、13cの貫徹力が第1の噴霧部の13aの貫徹力よりも大きくなるように設定することが好ましい。第1の噴霧部13aは圧縮行程時に燃料噴霧を点火プラグ6の付近に供給できる程度の貫徹力を備えていれば十分であり、その一方、第2、第3の噴霧部13b、13cに対しては、吸気行程時に均質混合気を早期に形成する必要から、シリンダ3内に燃料噴霧を十分に拡散させ得る貫徹力が求められるからである。
次に、各噴霧部の燃料量については、第1の噴霧部13aの燃料量が第2、第3の噴霧部13b、13cの燃料量よりも大きくなるように設定することが好ましい。このように設定すれば、第1の噴霧部13aにより点火プラグ6の周辺に十分な量の燃料を供給して、成層燃焼時におけるオーバーリーン領域を減らして安定した成層燃焼を実現できる。他方、均質燃焼時には、第2、第3の噴霧部13b、13cによって供給される燃料を第1の噴霧部13aの燃料で補って良好な均質燃焼を維持することができる。
このようにして、圧縮行程中に燃料を噴射したときには第1の噴霧部13aにより点火プラグ6の回りに濃厚な混合気を形成して良好な成層燃焼を実現することができる。また、第2、第3の噴霧部13b、13cが設けられていることにより、第1の噴霧部13aのみで必要な燃料量を確保する場合と比較して燃料噴霧の下端を上方(点火プラグ6の側)に寄せることができ、それにより、成層燃焼時のピストン4への燃料の付着を抑えてHC、スモーク、PM等の排出量を低減することができる。
1 筒内噴射式火花点火内燃機関
3 シリンダ
7 吸気通路
9 吸気バルブ
10 排気バルブ
11 燃料噴射弁
11a ノズル部
13 燃料噴霧
13a 第1の噴霧部
13b 第2の噴霧部
13c 第3の噴霧部
25 噴孔
26 第1の噴孔部
27 第2の噴孔部
28 第3の噴孔部
3 シリンダ
7 吸気通路
9 吸気バルブ
10 排気バルブ
11 燃料噴射弁
11a ノズル部
13 燃料噴霧
13a 第1の噴霧部
13b 第2の噴霧部
13c 第3の噴霧部
25 噴孔
26 第1の噴孔部
27 第2の噴孔部
28 第3の噴孔部
Claims (7)
- 1つのシリンダに対して複数の吸気バルブを備え、
シリンダの上方側に相対的に偏った第1の噴霧部と、シリンダの中心線と直交する方向より、燃料噴射弁の軸を含むシリンダ上下方向の面を中心として左右対称的に所定角度、シリンダ下方に傾いた方向に扁った第2、第3の噴霧部とを合成した燃料噴霧を燃料噴射弁によりシリンダ内に噴射可能とすると共に、
前記第1の噴霧部を、吸気行程においてシリンダ内に突出する前記複数の吸気バルブの隙間に位置させ、かつ前記第2、第3の噴霧部を、同じく吸気行程においてシリンダ内に突出する前記複数の吸気バルブと衝突しない範囲でシリンダ上方に位置させる
ことを特徴とする筒内噴射式火花点火エンジン。 - 前記第1の噴霧部はシリンダの中心線の方向に扁平な円錐状であることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火エンジン。
- 前記第2、第3の噴霧部は前記所定角度、下方に傾いた方向に扁平な円錐状であることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火エンジン。
- 前記第1の噴霧部のシリンダ上下方向拡がり角のほうが前記第2、第3の噴霧部を合わせた噴霧部のシリンダ上下方向拡がり角より小さくなるようにすることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火エンジン。
- 前記第1の噴霧部の横方向拡がり角より前記第2、第3の噴霧部を合わせた噴霧部の横方向拡がり角のほうが大きくなるようにすることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火エンジン。
- ガス流動制御弁を備え、
タンブルが必要となる運転域で前記ガス流動制御弁を働かせてシリンダ内にタンブルを生じさせることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火エンジン。 - 3つの特定方向に偏った燃料噴霧を形成する第1、第2、第3の噴孔部を備え、
前記3つの特定方向のうちの1つがシリンダの中心線の方向と一致するように、かつ、残り2つの特定方向がシリンダの中心線と直交する方向より、燃料噴射弁11の軸を含むシリンダ上下方向の面を中心として左右対称的に所定角度、シリンダ下方に傾いた2つの方向と一致するように前記3つの噴孔部とシリンダとの位置関係を調整する
ことを特徴とする燃料噴射弁。
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JP2006012573A JP2007192163A (ja) | 2006-01-20 | 2006-01-20 | 筒内噴射式火花点火エンジン及びその燃料噴射弁 |
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JP2006012573A Pending JP2007192163A (ja) | 2006-01-20 | 2006-01-20 | 筒内噴射式火花点火エンジン及びその燃料噴射弁 |
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Country | Link |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2006
- 2006-01-20 JP JP2006012573A patent/JP2007192163A/ja active Pending
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