JP2007190697A - フィラメントワインディング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】フィラメントワインディングにおいて、専用の装置を用いることなく、樹脂含浸繊維の張力の測定を可能とすることである。
【解決手段】フィラメントワインディング装置10は、カーボン繊維30をセットし巻き出しを行うクリールスタンド14と、巻き出されたカーボン繊維30に樹脂を含浸させ、樹脂含浸繊維32として供給するレジンバス16と、樹脂含浸繊維32を揃えてライナー20に沿って巻き付けるアイクチ案内部18とを含んで構成される。ここで、アイクチ案内部18は、さらに、樹脂含浸繊維32に張力を与える張力ローラが受ける反力を検出する機能を有する。検出された反力は樹脂含浸繊維32の張力に相当する。
【選択図】図1
【解決手段】フィラメントワインディング装置10は、カーボン繊維30をセットし巻き出しを行うクリールスタンド14と、巻き出されたカーボン繊維30に樹脂を含浸させ、樹脂含浸繊維32として供給するレジンバス16と、樹脂含浸繊維32を揃えてライナー20に沿って巻き付けるアイクチ案内部18とを含んで構成される。ここで、アイクチ案内部18は、さらに、樹脂含浸繊維32に張力を与える張力ローラが受ける反力を検出する機能を有する。検出された反力は樹脂含浸繊維32の張力に相当する。
【選択図】図1
Description
本発明は、フィラメントワインディング装置に係り、特に、繊維強化樹脂複合製品の成形用フィラメントワインディング装置に関する。
繊維強化樹脂で製品を成形する方法として、十分な強度を有する繊維、例えばカーボン繊維を用い、これに液状の樹脂を含浸させて、製品の形状を形作るライナーに巻き付け、樹脂を加熱硬化させるフィラメントワインディング方法が知られている。カーボン繊維は、ポリアクリロニトリルの原糸を例えば3000℃の高温で焼成し、極めて強度が強いものを用いることができるので、例えば高圧タンク等をフィラメントワインディング方法で製造することができる。
フィラメントワインディング方法において、樹脂含浸繊維は、成形の際に適当な張力でライナーに張られて巻きつけられる。張力が十分でないと、ライナーに樹脂含浸繊維が緊密に巻きつけられず、成形製品の強度が不十分のものとなることが生じる。そこで、フィラメントワインディング方法においては、繊維の張力が管理項目とされる。
例えば、特許文献1には、成形体の成形時に繊維の張力を巻径やその積層構成に応じて適切に制御する繊維強化樹脂複合製品の成形用フィラメントワインディング機が開示されている。ここでは、繊維の巻径の増加に伴って巻き付け張力を予め設定された減少曲線に沿って変化させることで内周側の繊維に対する局部的で過剰な負荷がかからないようにできることが述べられている。張力の調整は、巻付け部の駆動速度の変更で行われている。また樹脂塗工部の後、巻付け部であるマンドレルの前に、圧電素子を用いた張力検出器を配置し、目標張力との差を適切に補正することが述べられている。
また、特許文献2には、供給部と巻き付け部との間に張られた糸の切れ及び弛みを検知できるフィラメントワインディング装置が開示されている。そこでは、糸の張られる方向に沿って長さL、高さHの領域を、発光素子と受光素子で挟んで、その空間を検知領域として、糸の状態を検出することが述べられている。
また、特許文献3には、繊維の巻出し、巻取りを必要な最小の張力で行う張力制御と繊維巻出しから送り出し、巻取りの間で繊維に捻りを与えるような繊維方向の変化を生じさせないフィラメントワインディング成形法等が開示されている。そこでは、送出しローラと繊維レベルセンサとで送出し張力制御部を構成し、繊維レベルセンサにおいて通過する繊維に立設されたガイド棒に沿って上下するテフロン(登録商標)Oリングの軽い錘を吊るし、低張力で繊維を張り、この繊維の位置を光る検出レベルセンサで検出して繊維のたるみ状態を検出する。また、含浸ローラから送り出される繊維にダンサロールを吊り下げ、繊維の巻き取りに必要な張力を発生させることが述べられている。
上記のように、フィラメントワインディングにおいて、繊維の張力管理は重要な項目であり、特に、ライナーに巻き付けるときの張力が製品仕様からいえば重要であるが、ライナーに巻き付けるときは、繊維にすでに樹脂が含浸されており、べたつきがあり、そのままでは張力測定に問題がある。そのために、一般的には樹脂含浸前の繊維について張力測定が行われることが多い。しかし、この場合には、製品を形作るライナーに巻き付けるときの張力でなく、また繊維の巻出部の影響を受けやすく、製品成形のための張力として用いるには不十分である。
特許文献1においては、樹脂塗工部の後、巻付け部であるマンドレルの前に、圧電素子を用いた張力検出器を配置しており、また、特許文献2、3においては、いずれも繊維の張られた状態を光学的に検出している。このように、これらの文献には、張力測定のための専用の装置が用いられている。
本発明の目的は、ライナーに巻き付けるときの張力を測定できるフィラメントワインディング装置を提供することである。また、他の目的は、張力測定のための専用の装置を要することなく、張力を測定できるフィラメントワインディング装置を提供することである。以下の手段は、これらの目的の少なくとも1つに貢献する。
本発明に係るフィラメントワインディング装置は、繊維の巻出部と、巻き出された繊維に樹脂を含浸させるレジンバスと、製品の形状を形作るライナーに対し相対的に移動可能で樹脂含浸繊維を案内するアイクチ案内を有し、ライナーに樹脂含浸繊維を順次巻き付ける巻取部と、を備える繊維強化樹脂複合製品の成形用フィラメントワインディング装置であって、アイクチ案内は、樹脂含浸繊維を外周に張って適当な張力を与える張力ローラと、張力ローラに張られた樹脂含浸繊維が張力ローラに与える反力を測定する荷重測定器と、を含むことを特徴とする。
また、アイクチ案内は、張力ローラと荷重測定器との間に設けられ、張力ローラに与えられる反力を荷重測定器に伝達する伝達部材を含むことが好ましい。
また、本発明に係るフィラメントワインディング装置において、張力ローラは、軸方向周りの回転が制限され、伝達部材を取り付ける部分の外周が切り欠かれており、張力ローラの外周と伝達部材の外周との間をシールし、樹脂含浸繊維の樹脂が伝達部材及び荷重測定器に回り込むことを防止するシール部材を含むことが好ましい。
また、本発明に係るフィラメントワインディング装置において、アイクチ案内は、樹脂含浸繊維の案内方向の軸周りに回転可能であり、アイクチ案内の案内方向軸周りの回転によって張力ローラに与えられる反力の大きさが変化することを補正する反力補正手段を含むことが好ましい。
また、反力補正手段は、アイクチ案内の回転角度に基づいて張力ローラに与えられる反力の大きさを補正することが好ましい。
上記構成により、製品の形状を形作るライナーに対し相対的に移動可能で樹脂含浸繊維を案内するアイクチ案内は、樹脂含浸繊維に適当な張力を与える張力ローラと、樹脂含浸繊維が張力ローラに与える反力を測定する荷重測定器とを含む。荷重測定器の検出する反力は、樹脂含浸繊維の張力に相当する。したがって、アイクチ案内に設けられる張力ローラと荷重測定器は、ライナーに巻き付けるときの張力を測定できる。また、ライナーに対し相対的に移動可能で樹脂含浸繊維を案内するアイクチ案内部が、張力測定の機能を有するので、張力測定のための専用の装置を要することなく、張力を測定できる。
また、アイクチ案内は、張力ローラに与えられる反力を荷重測定器に伝達する伝達部材を含むので、樹脂含浸繊維の張力を適切に荷重測定器に伝達することができる。
また、張力ローラは、伝達部材を取り付ける部分の外周が切り欠かれ、その部分をシール部材でシールして、樹脂含浸繊維の樹脂が荷重測定器等に回り込むことを防止するので、樹脂含浸繊維のべたつきにかかわらず、張力を適切に測定することができる。
また、アイクチ案内の案内方向軸周りの回転によって張力ローラに与えられる反力の大きさが変化することを補正するので、アイクチ案内部がライナーに対し相対的に移動するときでも、張力を正しく測定することができる。
アイクチ案内の回転角度に基づいて張力ローラに与えられる反力の大きさは補正される。アイクチ案内部の回転角度は、フィラメントワインディング装置の制御部が管理しているので、反力の大きさの補正を容易に行うことができる。
以下において図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下において述べる材料、成形条件等は、説明のための1例であり、製品の仕様等に合わせ、適当な他の材料、成形条件を採用することができる。例えば、繊維として、カーボン繊維を説明するが、これ以外の適当な強度を有する繊維で、フィラメントワインディングに適したものであってもよい。また、樹脂として、熱硬化型エポキシ樹脂を説明するが、これ以外の適当な接合強度を有する材料で、フィラメントワインディングに適したものであってもよい。
図1は、フィラメントワインディング装置10の構成図である。フィラメントワインディング装置10は、大別して、成形部12と、成形部12における各種測定器からの工程データを収集するデータロガー38と、各要素の動作を全体として制御する制御部40を含んで構成される。なお、図1には、フィラメントワインディング装置10の構成要素ではないが、成形製品の形状を形作るライナー20も図示されている。
成形部12は、原材料であるカーボン繊維30をセットし巻き出しを行う巻出部であるクリールスタンド14と、巻き出されたカーボン繊維30に液体状の樹脂を含浸させ、樹脂含浸繊維32として供給するレジンバス16と、樹脂含浸繊維32を揃えてライナー20に沿って巻き付けるアイクチ案内部18とを含んで構成される。アイクチ案内部18は、後に詳述するように、樹脂含浸繊維32の張力を検出する構造をも有している。
このようにカーボン繊維は、クリールスタンド14からいくつものローラ等を経由し、アイクチ案内部18を通り、ライナー20に巻きつけられ、ライナー20は、その長手軸周りに回転駆動される。ここで、アイクチ案内部18とライナー20の回転機構とが繊維巻取部の機能を有することになる。したがって、カーボン繊維は、ライナー20の回転駆動によって張力が与えられ、その張力の下で、樹脂含浸繊維32がライナー20に緊密に巻きつけられることになる。
また、工程管理のために、樹脂が含浸される前の状態のカーボン繊維30の張力を測定する張力測定器22、レジンバス16の樹脂温度を管理する樹脂温度計24、レジンバス16において外周にカーボン繊維を張るローラ上の樹脂膜厚を測定する膜厚計26等が配置される。また、アイクチ案内部18は、樹脂含浸繊維32の張力を測定できる構造を有している。
原材料であるカーボン繊維30は、ポリアクリロニトリルの原糸を約3,000℃で焼成したものからなる。これを約24,000本程度撚って集め、バインダ樹脂で軽く接着し、厚さ約200μm、幅4mmから5mm程度の扁平なシート状としたものを用いることができる。
クリールスタンド14は、シート状のカーボン繊維を紙の筒に巻きつけたボビンをセットし、固定滑車等を用いて位置を揃えて巻き出す機能を有する巻出スタンドである。ライナー20には、3本ないし4本のカーボン繊維を幅方向に並べるパラレル巻きで巻き付けるので、クリールスタンド14も複数個のボビン取り付け部を有する。図1では、3つのボビンが示されている。
張力測定器22は、クリールスタンド14から巻き出されたカーボン繊維30が張られる張力を測定する機能を有する。張力測定は、3本のカーボン繊維30を幅方向に並べ揃えて1つの張力測定用ローラに張り、張力測定用ローラが3本のカーボン繊維30の張力のために受ける反力をロードセル等の荷重測定器で測定することで行うことができる。ここで測定される張力は、ライナー20に巻き付けられるときの樹脂含浸繊維の張力とは異なり、樹脂が含浸される前の、いわばドライな状態のカーボン繊維の張力である。これに対し、後述するアイクチ案内部18における張力測定は、樹脂が含浸された後の、いわばウエットな状態のカーボン繊維の張力について行われる。したがって、張力測定器22で測定される張力は、いわば、製品成形の際の参考データとして用いられるもので、その意味で、張力測定器22は図1において破線で示されている。
レジンバス16は、3本のカーボン繊維30にそれぞれ液体状の樹脂を含浸させる機能を有し、液体状のエポキシ樹脂を満たしたレジン槽と、レジン槽に一部漬かっている樹脂掻い出しローラと、その前後に配置される前後ローラ等を含んで構成される。張力測定器22のところで幅方向に3本並べ揃えられた各カーボン繊維は、レジンバス16に導入される際に、開繊器によってほぐされ、前ローラの下側外周と、樹脂掻い出しローラの上側外周と、後ローラの下側外周とに沿って張られ、レジンバス16から引き出される。樹脂掻い出しローラは、回転することで、レジン槽から液体状の熱硬化型エポキシ樹脂を外周に付着させ、その上側外周に沿って3本のカーボン繊維30が並べ揃えられて張られることで、それぞれの繊維に樹脂が付着し、含浸する。
レジン槽には、ヒータが備えられ、熱硬化型エポキシ樹脂は、例えば40℃から50℃の範囲で加熱され、粘度管理が行われる。樹脂温度計24は、この樹脂温度を測定するためのものである。樹脂温度計24は、液体状の樹脂に漬けられてその温度を直接検出することが好ましい。
また、樹脂掻い出しローラの外周に付着する樹脂層の厚さが不十分であると、樹脂掻い出しローラに張られた繊維に樹脂が十分に含浸されないので、樹脂掻い出しローラの外周に付着する樹脂層の厚さが管理される。膜厚計26は、この膜厚を測定するためのものである。付着樹脂層の厚さに影響を与えないように、膜厚計26は、非接触方式のものが好ましい。例えば光学式の膜厚計を用いることができる。
レジンバス16から引き出された3本の樹脂含浸繊維32は、アイクチ案内部18に引き出される。アイクチ案内部18は、複数本の樹脂含浸繊維32をライナー20に巻き付け易いように案内する機能を有し、複数本の樹脂含浸繊維32をライナー20に向けて幅方向に並べて揃える揃え口と、揃え口自体をライナー20の外形に沿って移動させる移動機構等を有する。揃え口の移動は、ライナー20の長手軸方向の移動と、ライナー20の幅方向への移動と、幅方向の移動軸周りの回転とによって行われる。そして、このアイクチ案内部18は、もう1つの機能として、複数本の樹脂含浸繊維32がライナー20に巻き付けられるときの張力を測定することができる。このためのアイクチ案内部18の詳細な構成については、後に詳述する。
ライナー20は、成形製品の形状を形作る芯材となるもので、例えば高圧タンクを成形する場合は、タンクの内径に対応する筒である。筒の材質は例えば硬質プラスチックを用いることができる。筒の直径は、例えば30cm程度で、その肉厚は数mm程度のものを用いることができる。ライナー20は、長手軸が回転可能に支持され、回転駆動機構によって長手軸周りに回転される。アイクチ案内部18によって幅方向に並べて揃えられた3本の樹脂含浸繊維32は、その端部がライナー20の巻き始め部に固定され、ライナー20が回転駆動されることで、3本の樹脂含浸繊維32がライナー20の長手軸方向に並んでその外周に巻き取られる。ライナー20に巻き取られる量は、ライナー20の外周上の厚さにして数mmから数十mm程度である。所定の巻き数で樹脂含浸繊維32がライナー20に巻き付けられ、製品の形状が形作られると、その後硬化処理が行われ、エポキシ樹脂が硬化して、繊維強化樹脂複合製品が成形される。樹脂含浸繊維32のライナー20への巻き付け工程等において、必要に応じ、ライナー20の内部に加圧気体21を供給してもよい。
アイクチ案内部18に検出された樹脂含浸繊維32の張力は、張力測定器22によって測定されるいわゆるドライな状態のカーボン繊維30の張力、樹脂温度計24及び膜厚計26の測定結果と共にデータロガー38によって集められ、制御部40に工程管理データとして入力される。制御部40は、これらの工程管理データに基づき、ライナー20の回転速度、アイクチ案内部18の移動速度、レジンバス16の樹脂温度等を制御し、成形製品が仕様の範囲に入るようにすることができる。
次に、樹脂含浸繊維32の張力を検出することができるアイクチ案内部18の詳細について説明する。図2は、製品の外形を形作るライナー20に樹脂含浸繊維32を揃えて巻き付けるアイクチ案内部18の様子を示す斜視図である。ライナー20は、図2に示すX方向に長手軸を有し、その長手軸周りに回転駆動される。図2ではライナー20の回転を記号ψで示してある。アイクチ案内部18は、X軸に沿った移動と、X軸に直交し、ライナーの短手の幅方向であるY軸に沿った移動と、Y軸周りのθ回転が可能なように、アイクチ案内部支持機構17によって支持され、図示されていない駆動機構によって移動及び回転の駆動が行われる。これによって、例えば、円筒状の胴部と、胴部の前後のドーム部とを有する高圧タンクの形状に、ライナー20を芯地として樹脂含浸繊維32が順次巻きつけられ、成形製品が形作られる。
図3は、アイクチ案内部18の詳細構成図である。図3(a)は平面図、(b)は正面図である。アイクチ案内部18は、3本の樹脂含浸繊維32に張力を与えるように樹脂含浸繊維32の進む方向に順次配置される3本のローラ69,70,71と、3本の樹脂含浸繊維32をライナー20に巻き付けやすいように揃えるための案内である揃え口72とがベース板74に取り付けられて構成される。
3本のローラ69,70,71を、中央ローラ70及びその前後の前後ローラ69,71と呼ぶことにすると、樹脂含浸繊維32は、図3(b)に示されるように、前ローラ69側から入り込み、前ローラ69の下側外周、中央ローラ70の上側外周、後ローラ71の下側外周にそれぞれ接触し、揃え口72を通ってライナー20側に案内される。このように3本のローラ69,70,71の外周を上下交互に接触して案内されることで、ライナー20の巻取力によって、樹脂含浸繊維32に適当な張力が与えられる。そして、各ローラ69,70,71には、その張力の反力が及ぼされる。ここで荷重測定器76が中央ローラ70に接続して設けられ、樹脂含浸繊維32の張力に見合う大きさの反力が検出される。ここでは、中央ローラ70が、樹脂含浸繊維32に張力を与える張力ローラを代表していることになる。もちろん、樹脂含浸繊維32の各ローラに張られる態様によっては、前後ローラ69,71にかかる反力を張力として検出してもよい。
図4は、中央ローラ70と荷重測定器76の周辺構造を示す断面図である。中央ローラ70は、その径方向の中央部に中心軸78を有する。荷重測定器76はベース板74に取り付けられ、荷重測定器76と中心軸78との間に反力を伝達する部材である反力伝達棒80が設けられる。反力伝達棒80は、適当な金属棒等を用いることができる。この構成によって、樹脂含浸繊維32の張力に見合う大きさの反力Tは、中央ローラ70から中心軸78に伝えられ、反力伝達棒80を介して荷重測定器76に伝達される。荷重測定器76は、伝えられた反力の大きさを適当な電気信号に変換する機能を有する部材で、例えばロードセル等を用いることができる。
中央ローラ70の外周は、反力伝達棒80を取り付ける部分の外周が切り欠かれる。そして、シール部材82がその切欠部と、反力伝達棒80との間をシールする。シール部材82は、例えば円環状のプラスチックゴム等を用いることができる。このシール部材82によって、樹脂含浸繊維32の樹脂が反力伝達棒80及び荷重測定器76に回り込むことを防止するので、樹脂含浸繊維のべたつきにかかわらず、張力を適切に測定することができる。
図5は、アイクチ案内部18の機能を用いて樹脂含浸繊維の張力を算出し、算出された張力をフィラメントワインディングの工程管理に反映する様子を説明するフローチャートである。図5のフローチャートは、樹脂含浸繊維の張力管理について制御部40が実行する各手順を示すものである。フィラメントワインディング装置10が起動する(S10)と、標準的な張力をカーボン繊維に与えるように、クリールスタンド14の巻出速度、ライナー20の巻取速度及び巻取力等の条件が設定される(S12)。そしてその条件の下でクリールスタンド14において繊維巻出が行なわれ(S14)、レジンバス16において樹脂含浸が行なわれ(S16)、アイクチ案内部18が移動してライナー20が樹脂含浸繊維32を巻き取る(S18)。
このとき、アイクチ案内部18が図2で説明したY軸周りのθ回転を行なうときは、その回転角度の大きさが取得される(S20)。これは、アイクチ案内部18がθ回転すると、張力の反力を受ける中央ローラ70の質量がθ回転の大きさによっては樹脂含浸繊維32に掛かることがあり、反力の大きさがその影響を受けて変化し、荷重測定器76が検出する値が必ずしも張力に見合う大きさとならないことを考慮し、補正を行うためである。なお、アイクチ案内部18の回転角度θは、フィラメントワインディング装置10の制御部40が管理しているので、フィラメントワインディングプログラム等のデータから容易に取得することができる。
そして、荷重測定器76によって検出される中央ローラ70が受ける反力を取得し(S22)、S20において取得したアイクチ案内部18の回転角度θを用いて、S22で取得された反力の大きさに対し、中央ローラ70の質量の掛かり方による影響を補正し(S24)、張力を算出する(S26)。これらの回転角度取得、反力取得、補正及び張力算出等は、制御部40の機能によって実行される。そして算出された樹脂含浸繊維32の張力は、予め成形製品の仕様から定められる目標張力と比較され、工程中の張力が適正か否かが判断される(S28)。張力が適正であると判断されると、フィラメントワインディングが続行され、張力が適正でないときはS12へ戻り、巻出・巻取条件が再設定される。
このように、アイクチ案内部18に張力検出機能のための構造を持たせたので、ライナー20に巻き付けるときの張力を測定でき、また、張力測定のための専用の装置を必要としない。
10 フィラメントワインディング装置、12 成形部、14 クリールスタンド、16 レジンバス、17 アイクチ案内部支持機構、18 アイクチ案内部、20 ライナー、21 加圧気体、22 張力測定器、24 樹脂温度計、26 膜厚計、30 カーボン繊維、32 樹脂含浸繊維、38 データロガー、40 制御部、69,70,71 ローラ、72 揃え口、74 ベース板、76 荷重測定器、78 中心軸、80 反力伝達棒、82 シール部材。
Claims (5)
- 繊維の巻出部と、
巻き出された繊維に樹脂を含浸させるレジンバスと、
製品の形状を形作るライナーに対し相対的に移動可能で樹脂含浸繊維を案内するアイクチ案内を有し、ライナーに樹脂含浸繊維を順次巻き付ける巻取部と、
を備える繊維強化樹脂複合製品の成形用フィラメントワインディング装置であって、
アイクチ案内は、
樹脂含浸繊維を外周に張って適当な張力を与える張力ローラと、
張力ローラに張られた樹脂含浸繊維が張力ローラに与える反力を測定する荷重測定器と、
を含むことを特徴とするフィラメントワインディング装置。 - 請求項1に記載のフィラメントワインディング装置において、
アイクチ案内は、
張力ローラと荷重測定器との間に設けられ、張力ローラに与えられる反力を荷重測定器に伝達する伝達部材を含むことを特徴とするフィラメントワインディング装置。 - 請求項2に記載のフィラメントワインディング装置において、
張力ローラは、軸方向周りの回転が制限され、伝達部材を取り付ける部分の外周が切り欠かれており、
張力ローラの外周と伝達部材の外周との間をシールし、樹脂含浸繊維の樹脂が伝達部材及び荷重測定器に回り込むことを防止するシール部材を含むことを特徴とするフィラメントワインディング装置。 - 請求項1に記載のフィラメントワインディング装置において、
アイクチ案内は、樹脂含浸繊維の案内方向の軸周りに回転可能であり、
アイクチ案内の案内方向軸周りの回転によって張力ローラに与えられる反力の大きさが変化することを補正する反力補正手段を含むことを特徴とするフィラメントワインディング装置。 - 請求項4に記載のフィラメントワインディング装置において、
反力補正手段は、アイクチ案内の回転角度に基づいて張力ローラに与えられる反力の大きさを補正することを特徴とするフィラメントワインディング装置。
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