JP2007189921A - 気管支喘息の遺伝的素因検査方法 - Google Patents

気管支喘息の遺伝的素因検査方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2007189921A
JP2007189921A JP2006009156A JP2006009156A JP2007189921A JP 2007189921 A JP2007189921 A JP 2007189921A JP 2006009156 A JP2006009156 A JP 2006009156A JP 2006009156 A JP2006009156 A JP 2006009156A JP 2007189921 A JP2007189921 A JP 2007189921A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gene
base
nucleic acid
bronchial asthma
seq
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2006009156A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5111763B2 (ja
Inventor
Kazuhiko Obara
和彦 小原
Yusuke Nakamura
祐輔 中村
Mayumi Tamatoshi
真由美 玉利
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Resonac Corp
Original Assignee
Hitachi Chemical Co Ltd
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Chemical Co Ltd, RIKEN Institute of Physical and Chemical Research filed Critical Hitachi Chemical Co Ltd
Priority to JP2006009156A priority Critical patent/JP5111763B2/ja
Publication of JP2007189921A publication Critical patent/JP2007189921A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5111763B2 publication Critical patent/JP5111763B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】気管支喘息に関連した遺伝子多型を明らかにし、気管支喘息の遺伝的素因の検査方法を提供することを主な目的とする。
【解決手段】被験者から採取された核酸における、(i)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第3830番目の塩基および/または(ii)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第−9382番目の塩基に対応する遺伝子多型部位の塩基形態を検出する工程、必要に応じてさらに被験者由来の核酸から特定された遺伝子多型部位の塩基形態と配列番号1に記載の配列における遺伝子多型部位の塩基形態とを比較する工程を経て、得られる遺伝子多型情報に基づき、気管支喘息の遺伝的素因、気管支喘息に対する罹患性等を判定する。
【選択図】なし

Description

本発明は、気管支喘息に対する遺伝的素因の検査方法に関するものであり、詳しくは所定の遺伝子多型に基づき気管支喘息に罹りやすいか否かについての情報を得る方法に関する。
ヒトゲノム中の塩基配列において、各個体間で多くの部位において配列の個体差があることが明らかになっている。この相違が遺伝子多型である。この配列の相違は、個体毎の表現型や疾患への罹患しやすさ(罹患性)等の多様性を生じる一因と考えられている。一塩基多型(SNP:Single Nucleotide Polymorphismともいう)は、個体間のDNA塩基配列上の1塩基の違いが生じている部位において、人口中1%以上の頻度で存在するものと定義される遺伝子多型であり、ヒトゲノム中に300〜1000万カ所あると言われる。SNPは遺伝子発現の質的・量的変化をもたらす原因となりうるとともに、ゲノム中に高頻度存在することから遺伝子解析におけるマーカーとして重要であり、遺伝子機能と多型との関連検討、薬剤代謝・薬効の判定、疾患関連遺伝子探索などにおいて利用が図られている。
一塩基多型を含む遺伝子多型を利用した疾患関連遺伝子探索により、疾患と強く連関した一塩基多型、疾患に対する罹患性の差異の原因となる遺伝子多型などを明らかにする研究が行われている。疾患の原因となる一塩基多型部位や遺伝子同定による疾患への関連物質の明確化により、遺伝子多型の塩基配列の差異を判定することによる疾患への罹患リスクの判定、疾患発症の機構解明、疾患に対する予防指針の提示、疾患の発症機構や標的明確化による創薬開発、薬剤等の治験への多型情報の利用など多くの展開の可能性があることから遺伝子多型による疾患関連遺伝子探索・同定の研究が注目を集めている。
気管支喘息(Bronchial asthma)は遺伝的要因や環境的要因の組み合わせにより引き起こされる複雑性疾患(complex disease)である。
気管支喘息は気道の炎症と種々の程度の気流制限に特徴づけられ、発作性の咳、喘鳴、および呼吸困難を示す。気流制限は、軽度のものから致死的な高度のものまで存在し、自然に、また治療により少なくとも部分的には可逆的である。気道炎症には好酸球、T細胞(Th2)、肥満細胞など多くの炎症細胞の浸潤が関与し、気道粘膜上皮の損傷がみられる。と定義される(厚生省免疫・アレルギー研究班作成 喘息予防・管理ガイドライン1998改訂版(非特許文献1)による)。
気管支喘息患者は世界的に増加傾向にあり、米国立衛生研究所(NIH)によると、世界全体の気管支喘息患者数は1億5000万人以上である。日本における気管支喘息患者は300万人以上、罹患率は1961年において1.2%であるのに比べて1996年において3.0%と35年前の2倍以上、小児においては35年前の約6倍といわれ、顕著な増加を示している。
喘息は重症の発作による死亡の危険性があり、近年の喘息治療ガイドラインの普及による吸入ステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬の使用、ピークフロー測定による重症度評価等の管理方法の進展により死者数は横ばい状態にあるものの、発作による呼吸困難などで1年間におよそ6000人が亡くなっている。
気管支喘息における遺伝的素因の存在は、分子生物学的手法の確立以前から双生児や家系により研究が重ねられている。喘息患者を発端とした1親等親族の喘息の有病率は、一般集団と比べて6〜7倍高く、家族集積性があることが分かっている。双生児においては、一卵性双生児の方が二卵性双生児よりも形質の一致率が高いことなど、多くの報告において遺伝的素因の関与が示されている(非特許文献2及び3参照)。
MyD88(Myeloid Differentiation primary Response Gene 88)は、BonnertらによりヒトMyD88のcDNAがクローニングされ、タンパク質は296アミノ酸からなる分子量33kDの分子である。タンパク質のC末端側は、タイプ1IL1受容体(IL1RAP)の細胞質ドメインと高い相同性がある(非特許文献4参照)。
MyD88のノックアウトマウスによりマウスにおける生理的機能の検討がなされている。MyD88のノックアウトマウスは、トール様レセプタにより誘導される炎症性サイトカイン産生の抑制、IL1に対する反応性低下、IL18に対するナチュラルキラー細胞活性化の仲介の生理機能の消失、が生じた。これはMyD88が、IL1レセプタまたはIL18レセプタのシグナル伝達経路に重要な物質であることを示している(非特許文献5参照)。
しかし、MyD88遺伝子に関連する遺伝子多型が、喘息と関連するとの報告はない。
厚生省免疫・アレルギー研究班作成 喘息予防・管理ガイドライン1998改訂版 Laitinen T,Rasanen M,Kaprio J,Koskenvuo M,Laitinen LA.Importance of genetic factors in adolescent asthma-A population based twin-family study.Am J Respir Crit Care Med 157:1-6,1998 Lichtenstein P,Svartengren M.Genes,environments,and sex:factors of importance in atopic disease in 7-9-yearsold Swedish twins.Allergy 52:1079-1086,1997 Bonnert TP,Garka K,Parnet P,Sonoda G,Testa JR,Sims JE.The cloning and characterization of human MyD88:a member of an IL-1 receptor related family.FEBS Lett.,402,81-84,1997 Adachi O,Kawai T,Takeda K,Matsukoto M,Tsutsui H,Sakagami M,Nakanishi K,Akira S.Targeted disruption of the MyD88 gene results in loss of IL-1-and IL-18-mediated fuction,Immunity,9,143-150,1998
上記のように、気管支喘息の予防/治療や発症機序の解明が望まれている。気管支喘息は、遺伝的素因が関与していると考えられるが、患者の発症リスクや重症度の予測が可能になれば、個々の体質を考慮した効果的な生活指導や予防対策を行うことが可能となる。また、気管支喘息に関与する遺伝子の特定は、より有効な治療方法や治療薬開発の重要な指針となる。
上記のような状況の下、本発明は、気管支喘息に関連した遺伝子多型を明らかにし、気管支喘息の遺伝的素因の検査方法を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、気管支喘息の罹患性と関連する遺伝子としてMyD88に着目し、そのSNPを探索したところ、疾患に連関する遺伝子多型を同定した。本発明は係る知見に基づいて完成されたものである。したがって、上記の課題は以下に述べる本発明によって解決される。すなわち、本発明は、気管支喘息の遺伝的素因マーカー(発症危険因子)としてのMyD88遺伝子多型および気管支喘息の罹患性検査等を提供するものであり、特定的には下記の〔1〕〜〔12〕である。
〔1〕 被験者から採取された核酸における、下記(i)および/または(ii)に対応する遺伝子多型部位の塩基形態を検出する工程を含む気管支喘息の遺伝的素因検査方法。
(i)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第3830番目の塩基
(ii)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第−9382番目の塩基
〔2〕 さらに、被験者由来の核酸から特定された遺伝子多型部位の塩基形態と配列番号1に記載の配列における遺伝子多型部位の塩基形態とを比較する工程を含む、上記〔1〕に記載の遺伝子素因検査方法。
〔3〕 下記(a)および(b)の工程を含む気管支喘息の罹患性検査方法。
(a)被験者から採取された核酸における、下記(i)および/または(ii)に対応する遺伝子多型部位の塩基形態を検出する工程
(i)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第3830番目の塩基
(ii)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第−9382番目の塩基
(b)被験者由来の核酸から特定された遺伝子多型部位の塩基形態と配列番号1に記載の配列における遺伝子多型部位の塩基形態とを比較し、気管支喘息に罹る遺伝的危険性を判定する工程
〔4〕 前記(b)において、
(i)に対応する遺伝子多型部位の塩基形態がGである場合、および
(ii)に対応する遺伝子多型部位の塩基形態がGである場合、
のうち少なくとも一方に該当する場合は、気管支喘息に罹る遺伝的危険性が相対的に高いと判定する、上記〔3〕に記載の罹患性検査方法。
〔5〕 前記(b)において、
(i)に対応する遺伝子多型部位の塩基形態がAである場合、および
(ii)に対応する遺伝子多型部位の塩基形態がCである場合、
のうち少なくとも一方に該当する場合は、気管支喘息に罹る遺伝的危険性が相対的に低いと判定する、〔3〕に記載の罹患性検査方法。
〔6〕 成人気管支喘息の罹患性を検査する、上記〔3〕から〔5〕のいずれか一項に記載の罹患性検査方法。
〔7〕 下記(I)、(II)および(III)からなる群より選ばれる核酸である遺伝的素因マーカー。
(I)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第3830番目の遺伝子多型部位を含む核酸
(II)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第−9382番目の遺伝子多型部位を含む核酸
(III)上記(I)および(II)のいずれかの核酸に対して相補的な配列を有する核酸
〔8〕 下記(I)、(II)および(III)からなる群より選ばれる核酸の少なくとも1種と特異的にハイブリダイズする、塩基長が10以上の核酸。
(I)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第3830番目の遺伝子多型部位を含む核酸
(II)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第−9382番目の遺伝子多型部位を含む核酸
(III)上記(I)および(II)のいずれかの核酸に対して相補的な配列を有する核酸
〔9〕 気管支喘息の遺伝的素因マーカーを検出するプライマーおよび/またはプローブである、上記〔8〕に記載の核酸。
〔10〕 上記〔9〕のプライマーおよび/またはプローブを備える気管支喘息の遺伝的素因検出キット。
〔11〕 気管支喘息の予防および/または治療薬の感受性試験方法であって、ヒトMyD88遺伝子の発現調節領域と、前記発現調節領域により発現が制御される検出可能な発現産物をコードする塩基配列とを備えた組換え核酸を含む発現細胞系に候補薬剤を投与し、前記発現産物の発現を検出することを特徴とする感受性試験方法。
〔12〕 前記発現調節領域にはMyD88遺伝子の5'上流側の配列が含まれており、5'上流側領域内の遺伝子多型部位の塩基形態が(iv)または(v)のいずれかである、上記〔11〕に記載の感受性試験方法。
(iv)C
(v)G
本発明により、気管支喘息の遺伝的素因を検査することが可能である。本発明の検査方法を利用すると、被験者の気管支喘息に対する罹患性(易罹患性)を予測できるので、気管支喘息の予防のための生活指導等が可能となる。さらに、気管支喘息発症の遅延、早期発見をも可能とする。また、本発明で得られた知見は、気管支喘息の発症機序の解明および治療薬の開発、治験等における患者情報にも利用できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において使用する、「ポリヌクレオチド」とは、2個以上のヌクレオチドがホスホジエステル結合で結合されてなる物質を意味する。「ポリヌクレオチド」には、「リボヌクレオチド(RNA)」と、「デオキシリボヌクレオチド(DNA)」がある。ここでDNAはcDNAおよびゲノムDNAを含む。また、「ポリヌクレオチド」は、これらに限定されず、ペプチド核酸、モルホリノ核酸、メチルフォスフォネート核酸、S−オリゴ核酸などの人工合成核酸をも包含する。
本明細書で使用する「核酸」という用語は、前記「ポリヌクレオチド」と、同義的若しくは、交換的に使用し、DNAまたはRNAを意味する。さらに、「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、特に断らない限り単離された核酸およびポリヌクレオチドを指し、これは組換えDNA技術などにより調製された場合は細胞物質、培養培地を実質的に含有せず、化学合成された場合には前駆体化学物質またはその他の化学物質を実質的に含まない、核酸またはポリヌクレオチドを指す。
本明細書におけるアミノ酸、ペプチド、塩基形態、核酸などの略号による表示は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)またはIUBMB(International Union of Biochemistry and Molecular Biology)による規定、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)および当該分野における慣用記号に従うものとする。本明細書において「塩基形態」とは、塩基の種類または配列のことである。また、ポリヌクレオチドがDNA場合のチミン(t)はRNAについてはウラシル(u)であり、特に断らない限り、相互に読み替え可能とする。また、塩基形態やアミノ酸配列などの情報は、電子化してコンピューター上で扱うことができる。
本明細書において使用する、「遺伝子多型」とは、ヒトゲノム上の塩基配列が各個体間において異なること又は異なる配列の型を意味するものである。「一塩基多型(SNP)」とは、このような遺伝子多型の中で、一塩基の核酸の相違として現れるものを指す。さらに、「核酸断片」とは、核酸の部分配列および/または全長配列を有するものを指す。「遺伝子領域」とは、タンパク質をコードする翻訳領域および/またはタンパク質コード領域以外の転写領域、プロモーター、イントロン領域、該遺伝子近傍の機能未同定領域などの非翻訳領域を指す。
本明細書において「遺伝子多型部位」とは、上記遺伝子多型として検出される塩基形態の違いが存在する部位のことをいう。多型は、1つの基準となる塩基配列に対し、塩基の置換、欠失、付加などの変異として特定することができる。欠失、付加などにより、配列の塩基数に相違を生じる場合があるが、この場合、基準とする配列に対応する部位として配列相互のアライメントを行うことにより特定し得る。アライメントをとる一形態として、コンピューター上で塩基配列を電子情報として処理し、配列のアライメントをとることが可能である。例えば、FASTA、BLASTなどのホモロジー検索で用いられる各種のアルゴリズムおよびソフトウエアを利用することにより、2種の配列をアライメントし、相互に対応する部位を特定することができる。また、Sequencherプログラムにより各個体の塩基配列を比較することによっても特定できる。
本明細書において使用する、「特異的にハイブリダイズする」とは、当業者に認識されている、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という用語と同義であり、2つの核酸(または断片)が、サムブルックら(Sambrook,J.)の「大腸菌におけるクローン遺伝子の発現(Expression of cloned genes in E.coli)」,モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning:A laboratory manual),米国,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press),1989年,pp.9.47−9.62,pp.11.45−11.61に記載されたハイブリダイゼーション条件下で、相互にハイブリダイズすることを意味する。
より具体的には、前記「ストリンジェントな条件」とは、約45℃において6.6×SSCでハイブリダイゼーションを行った後に、50℃で2.0×SSCで洗浄することを指す。ストリンジェンシーの選択のため、洗浄工程における塩濃度を、例えば低ストリンジェンシーとしての約2.0×SSC、50℃から、高ストリンジェンシーとしての約0.2×SSC、50℃まで選択することができる。さらに、洗浄工程の温度を低ストリンジェエンシー条件の室温、約22℃から、高ストリンジェンシー条件の約65℃まで高くすることができる。
本発明において使用する核酸被検試料(検体ともいう)の起源は、任意の生物学的試料であればその部位は限定されない。例えば、試料の採取しやすさ、含有量および抽出用試薬の種類などから、血液、皮膚、組織、口腔粘膜細胞などが好適に用いられる。また、試料は抽出したゲノムDNAの他にも、ゲノムDNAの一部塩基配列を含むものでもよい。すなわち、一塩基多型部位の分析前に、試料核酸中の目的に合致する全部または一部塩基配列(DNA断片)を任意の好適な方法、例えばPCRなどで増幅した試料を核酸被検試料として使用してもよい。なお、DNAの抽出は、公知の方法、例えば、「QIAamp mono kit」(QIAGEN社製)などの市販の抽出キットを用いて行うことができる。
本発明において使用するプライマーは、化学合成法など任意の好適な作成方法で調製できる。プライマーには、MyD88遺伝子領域上の遺伝子多型がプライマー内に含まれるもの、およびプライマー内に遺伝子多型部位を含まないが、例えばPCRなどにより遺伝子多型部位の1塩基の上下流または近傍にあるように設計したプライマーが好ましい。プライマーは、使用する検出方法等に合致した任意の好適な長さでよいが、連続する10ヌクレオチド以上、好ましくは15〜50ヌクレオチド、より好ましくは15〜30ヌクレオチドである。具体的には、このようなプライマーは、一塩基多型部位および/またはその近傍の塩基配列情報に基づいてフォワードプライマーおよびリバースプライマーとして、例えば自動合成装置を用いて、合成できる。
プライマーは、必要ならば1個以上の標識を保有してもよい。好ましい標識としては、酵素、ビオチン、蛍光物質、ハプテン、抗原、抗体、放射性物質および発光団などが挙げられる。プライマーは、鋳型となる核酸と相補的な配列を有することが望ましいが、必要ならばそのプライマー内に、望ましくない影響が生じない限り1箇所以上の相補的でない塩基対(ミスマッチ)を導入してもよい。
本発明において使用するポリヌクレオチドプローブは、任意の好適な合成方法で調製できる。ポリヌクレオチドプローブは、検出方法等に合致した任意の好適な長さでよいが、連続する10ヌクレオチド以上、好ましくは15〜50ヌクレオチド、より好ましくは15〜30ヌクレオチドである。プローブは、MyD88遺伝子領域中の対応する遺伝子多型部位のいずれか一方のアレル(allele)に相補的な塩基配列を含む。ただし、必要ならば、そのポリヌクレオチドプローブに望ましくない影響が生じない限り、1箇所以上の相補的でない塩基対を導入してもよい。また、プローブは、プライマーと同様に、1個以上の標識を保有してもよい。
本発明には、遺伝子多型部位を1箇所以上を含む核酸断片も包含される。例えば、遺伝子多型部位を含まないその近傍の配列を有するプライマーを用いてPCRなどにより、該遺伝子多型部位を含むように増幅した核酸などである。1箇所以上の遺伝子多型部位を含む核酸は、マルチプライマーPCR増幅産物のように各遺伝子多型が別個の核酸断片上にあっても、または連続した核酸断片上に複数の遺伝子多型が存在してもよい。PCRにおける試料の増幅可能な長さの限界、伸長反応での塩基の相補性の正確さ、解析の容易さなどの条件から、核酸断片の長さは15b〜1kbが望ましい。このような核酸断片は、例えば塩基配列解析(シークエンス)やSSCPなどの試料として遺伝子多型部位の判定のための試料、チップ・マイクロアレイ用のプローブ等に使用できる。核酸断片は、必要ならば1個以上の標識を保有してもよい。
遺伝子多型の検出方法としては数多くの方法が知られている。例えば、塩基配列解析(シークエンス)、インベーダーアッセイ、TaqmanPCR、MS(Mass Spectrometer)による塩基判定、パイロシークエンシング、SnaPshot、アレル特異的プライマー法、制限酵素断片長多型(RFLP:Restriction Fragment Length Polymorphisms)、DNAマイクロアレイ等ハイブリダイゼーションによる遺伝子多型検出、SPR(表面プラズモン共鳴)、SSCP(Single Strand Conformation Polymorphism)、ヘテロ2本鎖分析、WAVEシステム(クロマトグラフィーによる塩基の相違検出)、分子ビーコン(Sniper法など)などが挙げられる。
インベーダーアッセイは、Cleavase、アレル特異的プローブおよびFRETプローブによる検出反応を用い、アレル特異的プローブが多型部位に相補的で3重鎖が形成されれば、Cleavaseによる反応が進行して蛍光が発生するという方法である。
TaqmanPCRは、遺伝子多型部分の各アレルに相補的な配列をプローブ内に有するTaqmanプローブとPCRプライマーを使用したPCRであり、Taqmanプローブ中の一塩基多型部位の塩基配列が相補的な場合に蛍光が発生するという方法である。
MSによる塩基判定は、遺伝子多型部分直前までのプライマーを用いて一塩基伸長反応を行い、伸長した塩基をMSで質量分析する方法である。
パイロシークエンシングは、塩基伸長反応で発生するピロリン酸をATPに転換し生物発光で測定、発光により相補鎖合成の有無を判定する方法である。
SnaPshotは、遺伝子多型部位直前までのプライマーを用いて標識ddNTP(4種類の塩基毎に異なる標識)による一塩基伸長反応を行い、伸長した塩基を標識の種類で判別する方法である。
アレル特異的プライマー法は、遺伝子多型部位の配列が、相補的な場合はPCRで伸長し、ミスマッチの場合には伸長しない配列のプライマーを設計して、PCRにおけるプライマーと増幅産物の有無を対照して遺伝子多型を判定する方法である。
このような公知であるいずれかの検出方法において、本発明のプローブ、および/またはプライマー、および/またはポリヌクレオチドなどを用いて、本発明の検査方法に従い所望の遺伝子多型部位を検出することができる。
本発明の1つの実施の形態において、気管支喘息の発症と関連する遺伝子多型は、例えば以下のようにして検出できる。
気管支喘息患者(例えば、成人喘息患者)群からの検体を用いて、遺伝子多型を決定し、その中から、1次候補多型を選抜する(1次スクリーニング)。さらに、検体数を増やして候補多型を絞り込む(2次スクリーニング)。一方、健常者の対照群からの検体も同様に候補多型部位の遺伝子多型を決定する。これら遺伝子多型の高密度遺伝子多型マップの作成、患者対照研究等の関連解析による疾患関連遺伝子多型探索結果から、気管支喘息と関連する遺伝子多型を特定する。すなわち、これらの解析により疾患と関連がある遺伝子多型は、気管支喘息患者群と対照群の間のアレル出現頻度に有意差が生じる。
このようにして、本発明において、以下の(i)および(ii)に示すMyD88遺伝子の5’上流域内および3’UTR(Untranslated Region)領域にそれぞれ多型が特定された。
(i)配列番号1に記載の配列の第3830番目
(ii)配列番号1に記載の配列の第−9382番目
配列番号1の配列はMyD88遺伝子を含む、ヒト第3番染色体の38145157番目から38159514番目の領域の塩基配列を示すものである。上記(i)に示す塩基は、配列番号1の塩基番号13869位であり、上記(ii)に示す塩基は、配列番号1の塩基番号658位である。
図1にMyD88遺伝子における多型部位を示す。第1の遺伝子多型部位第3830番目は構造遺伝子の3'UTR領域(非翻訳領域)に存在する(i)の遺伝子多型部位を示す。第2の遺伝子多型部位は、構造遺伝子の5'側上流領域(ii)の遺伝子多型部位を示す。
配列番号1に記載の配列においてMyD88遺伝子の翻訳開始点であるメチオニンをコードするATGのA(アデニン)は、配列番号1の塩基番号10040位の塩基「A」であり、ヒト第3番染色体の第38155196番目の塩基である。上記(i)に示す塩基は、この翻訳開始点の「A」を第1位(起点)と定めて数えた場合第3830番目に存在し、ヒト第3番染色体の第38159025番目にあたる。また、上記(ii)の塩基は、上記起点から起算して第−9382位に該当し、ヒト第3番染色体の第38145814番目にあたる。また、配列番号1の配列において、第38157781番目がMyD88翻訳の終止コドンである。
尚、本明細書を通じて、配列番号1中の塩基を指す場合、塩基配列中の実際の塩基番号に代えて、翻訳開始点である「A」を起点とした番号を示す場合がある。
本発明の検査方法では、被験者から核酸を採取し、その核酸における(i)および/または(ii)に対応するMyD88遺伝子多型部位について塩基形態を検出する。上記(i)および(ii)の記載は、MyD88遺伝子における遺伝子多型の現れる場所を特定したものである。上記(i)および(ii)に対応する部位の特定は、配列アライメントを行うことにより可能である。配列アライメントについては上記で説明の通りである。また、(i)および(ii)は部位を特定するものであり、配列番号1の配列全体を用いて部位を特定してもよいし、配列番号1の塩基配列において、当該部位を含む10から30塩基程度からなる配列、より具体的には、当該部位を挟む前後約5から15塩基、より好ましくは前後約10塩基からなる塩基配列を抜き出し核酸断片として特定することも可能である。
本発明の検査方法では、被験者由来の核酸から特定された塩基形態と、配列番号1に記載の塩基形態とを比較する。配列番号1の配列における塩基形態は、(i)としては「A」であり、(ii)としては「G」であり、これらの塩基形態と被験者由来の核酸において(i)および/または(ii)に対応する部位の塩基形態とを比較することになる。
上記に列挙した塩基形態からなる、或いはそれを含むポリヌクレオチドは、気管支喘息の遺伝的素因マーカーであり、各マーカーを本発明の検査方法において、検出することにより気管支喘息、より好適な対象としては気管支喘息についての遺伝的素因を検査することが可能となる。
下記実施例にて詳説するが、本発明者らは上記の遺伝的素因と気管支喘息に対する罹患性との関係を明らかにした。すなわち、上記被験者の遺伝的素因マーカーを特定することにより、遺伝学的な見地から被験者の気管支喘息に対する罹患性を検査することができる。
(i)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第3830番目の場合、塩基形態が「A」の遺伝子多型は健常者に多く見られる。これに対し、同部位が「G」の遺伝子多型は、気管支喘息の患者に多く見られる。したがって、被験者の上記第3830番目の部位の塩基形態が「A」であれば、気管支喘息に罹る遺伝的な危険性は相対的に低いと判定できる。これに対し、被験者の上記第3830番目の部位の塩基形態が「G」であれば、気管支喘息に罹る遺伝的な危険性は相対的に高いと判定することができる。
(ii)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第−9382番目の遺伝子多型については、健常者の場合「C」が多く、気管支喘息の患者には「G」が多い。したがって、被験者の上記第−9382番目の塩基形態が「C」である場合、気管支喘息に罹る遺伝的な危険性は相対的に低いと判定できる。これに対し、被験者の上記第−9382番目の塩基形態が「G」であれば、気管支喘息に罹る遺伝的な危険性は相対的に高いと判定できる。
(i)および(ii)の多型部位については、いずれか一方についてのみ検査してもよいし、より好ましくは(i)および(ii)の双方について検査してもよい。第3830番目が「A」であり第−9382番目が「C」である組み合わせからなるハプロタイプ、および第3830番目が「G」であり第−9382番目が「G」である組み合わせからなるハプロタイプはそれぞれ強い連鎖不平衡が見出されており、特に第3830番目が「A」であり且つ第−9382番目が「C」であるハプロタイプを有する被験者の場合、遺伝的な見地からの気管支喘息に罹る確率は相対的に低いといえる。
本発明の別の実施の形態に従えば、前記検査は以下のように行うことができる。
被験者から核酸試料(例えば、組織、細胞、血液など)を採取し、常法に従いDNAまたはゲノムDNAを抽出する。得られたDNAサンプルをPCR法により増幅し(遺伝的素因マーカーを含む領域)、各種の一塩基多型の検出方法を用いて、MyD88遺伝子領域の各多型部位(i)および(ii)のうち、1箇所以上における遺伝子多型の塩基の種類を決定する。上記のようにして、関連解析から得られたSNPsと気管支喘息の病態(重症度を含む)との相関関係から、決定したMyD88遺伝子多型を参照してその個体の状態を判定する。
より具体的には、前記DNAサンプルの遺伝的素因マーカーを含む領域で、PCRを行い、1)SSCP法で塩基の種類を決定する、または2)該PCR増幅産物を直接シークエンス(Sanger法やMaxam−Gilbert法)する。或いは、遺伝的素因マーカーを含む領域に特異的にハイブリダイズするプローブを使用して、前記DNAサンプルまたはそのPCR増幅産物から多型部位を直接検出する(インベーダーアッセイなど)。さらに、遺伝的素因マーカー近傍(直前)までの配列を有するプライマーを用いて、一塩基伸長反応を行い、伸長した塩基をMS(質量分析器)で解析する。
前記の多型部位の検出、解析には、本発明のポリヌクレオチドが好適である。すなわち、プローブまたはプライマーとしては、下記(I)、(II)および(III)からなる群より選ばれる核酸の少なくとも1種と特異的にハイブリダイズするもの、および下記(I)、(II)および(III)からなる群より選ばれる核酸の少なくとも1種を増幅産物中に含むことができるプライマーである。プライマーの塩基長など具体的な形態については上記での説明と同様である。
(I)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第3830番目の遺伝子多型部位を含む核酸
(II)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第−9382番目の遺伝子多型部位を含む核酸
(III)上記(I)および(II)のいずれかの核酸に対して相補的な配列を有する核酸
本発明において、本発明のプローブおよびプライマーは、それらの各々を有効成分とする検査用キットとして好ましくは提供される。特に、プライマーを含んでなる本発明の検査用キットは、DNAポリメラーゼ、4種類のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)およびサイズマーカー等を含んでよい。さらに、適当な緩衝剤、洗浄剤、反応停止液などが含まれてもよい。
加えて、本発明のプローブおよびプライマーは、MyD88遺伝子の遺伝子多型に特異的な抗体の検出に使用することもできる。
本発明の検査用キットは、気管支喘息の遺伝的素因マーカーの検出を企図するものであるが、必要ならば他の疾患関連因子(マーカー)の検査用キットと組み合わせて、その検査結果から被験者の複合的な状態を判定することができる。
上記(ii)の多型は、MyD88の5'側上流領域に含まれており、MyD88の転写活性と関連があると考えられる。具体的には、配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から−9283部位の配列が「G」の場合よりも、「C」の場合の方が、MyD88の転写活性が増加することが確認された。かかる知見に基づき、本発明は、気管支喘息の予防および/または治療薬の感受性を試験し判断するための感受性試験方法をも提供する。本発明の感受性試験方法は、ヒトMyD88遺伝子の発現調節領域と前記発現領域により発現が調節される検出可能なタンパク質をコードする塩基配列とを備えた組換え核酸を含む細胞系に候補薬剤を投与し、前記発現調節領域により発現が制御される検出可能な発現産物の発現、例えば、mRNAおよび/またはタンパク質の発現を検出することを特徴とする。好ましい実施形態としては、前記発現調節領域にはMyD88遺伝子の5'上流側の配列が含まれており、かつ5'上流側領域に下記(iv)または(v)のいずれかの塩基を含ませておく方法を挙げることができる。創薬過程においては何重にもスクリーニングが繰り返されるが、本発明は比較的初期段階のスクリーニング方法の1つとして好適である。
(iv)C
(v)G
すなわち、本発明の感受性試験方法は、検出可能な発現産物を組み込んだ形質転換体を作製し、そのmRNAおよび/またはタンパク質の発現量や活性等を測定することにより、候補化合物の効果等を推定するための情報を得るものである。MyD88遺伝子の5'側上流領域の第−9283番の部位には、上記(iv)または(v)の塩基を組み込む。また、検出可能な発現産物は、その発現が検出可能なものであれば特に限定はなく、例えば、各種の蛍光タンパク質、発光タンパク質、生成酵素、分解酵素、耐性遺伝子などが例示される。発現ベクター、形質転換体の作製など、タンパク質等の発現細胞系の構築は、Molecular Cloning(3rd.ed,Cold Spring Harbor Laboratory Press)などに記載の定法に従って行うことができる。
一つの好ましい形態としては、例えば、(iv)Cの配列を有する遺伝子を発現させる場合において、候補薬剤の存在により、発現量が低下した場合には、MyD88の過剰発現が関連する疾患、より具体的には、気管支喘息などの予防/治療薬となり得る。また、他の実施形態として、(iv)および(v)のそれぞれの発現系について候補薬剤の投与による発現量の差異を検定することにより、個人差による薬剤の効果の違いを検定することも可能である。
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
MyD88の遺伝的変異体が気管支喘息の感受性に関連するかを評価するために、MyD88遺伝子多型の分析を行った。
喘息を煩う被験者全員は、国立衛生研究所(National Institute of Health)の診断基準を若干改変したものを基準として診断した(国立衛生研究所、国立心肺血液研究所1997年)。アトピー性喘息の診断は、1種または複数のアレルゲンに対して陽性であるかあるいは血清中の総IgEが400kU/L以上であるかに基づいた(Mao XQ,Shirakawa T,Yoshikawa T,Yoshikawa K,Kawai M,Sasaki S,Enomoto T,Hashimoto T,Furuyama J,Hopkin JM,Morimoto K.Association between genetic variants of mast-cell chymase and eczema.Lancet 1996;348:581-3.)。コントロール(対照区)として、アトピー性関連疾患を持たない個人を母集団から、無作為に559人を選んだ(年齢幅18−83才、平均年齢44才;男:女=2.61:1.0)。人種はすべて日本人であり、理化学研究所遺伝子多型研究センター(The Institute of Phisical and Chemical Research (RIKEN), SNP Research Center)における研究倫理委員会の規則に従って、全員から研究に参加することについて書面によるインフォームドコンセントを得た。
Taqman system(Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)を用いた遺伝子型判定(ゲノタイピング:genotyping)またはインベーダーアッセイ(Third Wave Technologies,Inc.)によって、多型を検出した。ゲノタイピングの具体的な手法は添付のマニュアルに従った。また、EcoT22Iを用いたPCR−RFLP(PCR restriction fragment length polymorphism)分析による遺伝子型判定(ゲノタイピング、genotyping)を行い、3´末端の非翻訳領域(UTR)内に「AまたはG」の多型部位を検出した。この3´末端の遺伝子多型部位は、配列番号1の配列の翻訳開始点(配列番号記載の塩基配列の10039番目:ヒト第3染色体の第38155196位)を基点として第3830番目(配列番号1の塩基番号14357位:配列番号1の第38145814位)の部位として特定される。
PCR−RFLPは、定法に従って行った。すなわち、下記の塩基配列からなるフォワードプライマー及びリバースプライマー(それぞれの塩基配列は、配列表の配列番号2及び3に示す通りである。)を用いて、95℃・2分間の加熱に続き、94℃・30秒間−55℃・30秒−72℃・30秒間のサイクルを37サイクル行い、続いて72℃・7分間のPCRを行った。増幅産物を制限酵素EcoT22Iで消化後、消化産物の長さを電気泳動にて測定した。消化産物長が120bpの場合AA、145bpの場合GG、120bpと145bpの2産物を認めた場合AGと判定した。
フォワードプライマー配列 5´ CCTAACCATGTCCCTGAAC 3´
リバースプライマー配列 5´ TTTTGCTCTCTTCCTCTCTCTGTGATGCA 3´
尚、PCRについては、Molecular Cloning(3rd.ed),Cold Spring Harbor Laboratory Pressなど、制限酵素切断については、Molecular Cloning(2nd.ed),Cold Spring Harbor Laboratory Pressなどに説明されている。
喘息の場合およびコントロールにおけるアレル頻度を、分割表を作成しカイ二乗検定によって比較した。本調査におけるコントロール集団についてのすべての遺伝子型頻度はハーディー−ワインベルグ平衡に従った。コントロールおよび成人喘息を患う患者から採取したサンプルについて解析を行った。
Figure 2007189921
表1に示すように、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第3830番目の部位における遺伝子多型は成人喘息と高い関連性があった(p(有意確率)=0.000083)。
また、−9283番目から3830番目の領域を含む一塩基多型部位(−9283、−5945、−5455、−5215、−5042、−1930、1803、3776、3830、4058、5129、11173)をタイピングし、上記第3830番との連鎖不平衡を23名で確認した。その結果、3830番のメジャーアレル数とマイナーアレル数が35/11(メジャーアレル数/マイナーアレル数)であったのに対し、−9283番は34/12と両者に連鎖不平衡を認めた。他一塩基多型部位は、45/1〜44/2であり3830番との連鎖不平衡を認めなかった。このことから、第−9283番の多型は、第3830番の多型と強い連鎖不平衡関係にあることが明らかとなった。
さらに遺伝子型について、上記の多型を利用して分析を行った。表1に示すように、本発明者らは、上記第3830番目の多型による遺伝子型と成人喘息との関連性を検討したところ、AAの型はAGまたはGGの型に比べて有意に非成人喘息患者の割合が多いことを見出した。
MyD88は、自然免疫系のシグナルを伝達する分子であり、その結果抗ウイルス作用や炎症反応種々の自然免疫反応が引き起こされることが知られている。喘息症状は、しばしば呼吸器感染症により症状が悪化することが知られている。感染が喘息増悪に関与する機構は明らかではないが、感染時の最前線の防御機能として、また獲得免疫への連携として自然免疫系が発動されることが知られている。上記のように本発明者らは、MyD88遺伝子に関連する2つの遺伝子多型が喘息の発症に関わることを明らかにした。MyD88の遺伝子多型を知ることによる喘息の予防および治療への貢献が期待される。
本発明は、気管支喘息に関連する検査、診断、予防、治療、創薬等の分野において有用である。
MyD88遺伝子のエクソン位置とSNPの概略を示す図である。

Claims (12)

  1. 被験者から採取された核酸における、下記(i)および/または(ii)に対応する遺伝子多型部位の塩基形態を検出する工程を含む気管支喘息の遺伝的素因検査方法。
    (i)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第3830番目の塩基
    (ii)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第−9382番目の塩基
  2. さらに、被験者由来の核酸から特定された遺伝子多型部位の塩基形態と配列番号1に記載の配列における遺伝子多型部位の塩基形態とを比較する工程を含む、請求項1に記載の遺伝子素因検査方法。
  3. 下記(a)および(b)の工程を含む気管支喘息の罹患性検査方法。
    (a)被験者から採取された核酸における、下記(i)および/または(ii)に対応する遺伝子多型部位の塩基形態を検出する工程
    (i)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第3830番目の塩基
    (ii)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第−9382番目の塩基
    (b)被験者由来の核酸から特定された遺伝子多型部位の塩基形態と配列番号1に記載の配列における遺伝子多型部位の塩基形態とを比較し、気管支喘息に罹る遺伝的危険性を判定する工程
  4. 前記(b)において、
    (i)に対応する遺伝子多型部位の塩基形態がGである場合、および
    (ii)に対応する遺伝子多型部位の塩基形態がGである場合、
    のうち少なくとも一方に該当する場合は、気管支喘息に罹る遺伝的危険性が相対的に高いと判定する、請求項3に記載の罹患性検査方法。
  5. 前記(b)において、
    (i)に対応する遺伝子多型部位の塩基形態がAである場合、および
    (ii)に対応する遺伝子多型部位の塩基形態がCである場合、
    のうち少なくとも一方に該当する場合は、気管支喘息に罹る遺伝的危険性が相対的に低いと判定する、請求項3に記載の罹患性検査方法。
  6. 成人気管支喘息の罹患性を検査する、請求項3から5のいずれか一項に記載の罹患性検査方法。
  7. 下記(I)、(II)および(III)からなる群より選ばれる核酸である遺伝的素因マーカー。
    (I)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第3830番目の遺伝子多型部位を含む核酸
    (II)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第−9382番目の遺伝子多型部位を含む核酸
    (III)上記(I)および(II)のいずれかの核酸に対して相補的な配列を有する核酸
  8. 下記(I)、(II)および(III)からなる群より選ばれる核酸の少なくとも1種と特異的にハイブリダイズする、塩基長が10以上の核酸。
    (I)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第3830番目の遺伝子多型部位を含む核酸
    (II)配列番号1に記載の塩基配列中、MyD88遺伝子の翻訳開始点から第−9382番目の遺伝子多型部位を含む核酸
    (III)上記(I)および(II)のいずれかの核酸に対して相補的な配列を有する核酸
  9. 気管支喘息の遺伝的素因マーカーを検出するプライマーおよび/またはプローブである、請求項8に記載の核酸。
  10. 請求項9のプライマーおよび/またはプローブを備える気管支喘息の遺伝的素因検出キット。
  11. 気管支喘息の予防および/または治療薬の感受性試験方法であって、ヒトMyD88遺伝子の発現調節領域と、前記発現調節領域により発現が制御される検出可能な発現産物をコードする塩基配列とを備えた組換え核酸を含む発現細胞系に候補薬剤を投与し、前記発現産物の発現を検出することを特徴とする感受性試験方法。
  12. 前記発現調節領域にはMyD88遺伝子の5'上流側の配列が含まれており、5'上流側領域内の遺伝子多型部位の塩基形態が(iv)または(v)のいずれかである、請求項11に記載の感受性試験方法。
    (iv)C
    (v)G
JP2006009156A 2006-01-17 2006-01-17 気管支喘息の遺伝的素因検査方法 Expired - Fee Related JP5111763B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006009156A JP5111763B2 (ja) 2006-01-17 2006-01-17 気管支喘息の遺伝的素因検査方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006009156A JP5111763B2 (ja) 2006-01-17 2006-01-17 気管支喘息の遺伝的素因検査方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007189921A true JP2007189921A (ja) 2007-08-02
JP5111763B2 JP5111763B2 (ja) 2013-01-09

Family

ID=38446083

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006009156A Expired - Fee Related JP5111763B2 (ja) 2006-01-17 2006-01-17 気管支喘息の遺伝的素因検査方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5111763B2 (ja)

Non-Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6011045077; Nucleic Acids Research, 1995, Vol.23, p.3539-3546 *
JPN6011045078; FEBS Letters, 1997, Vol.402, p.81-84 *
JPN6011045079; Human Immunology, 2005, Vol.66, p.842-847 *
JPN6012003272; J. Immunol., vol. 175, pages 6861-6869 (2005) *

Also Published As

Publication number Publication date
JP5111763B2 (ja) 2013-01-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2012511895A (ja) ヒト認知の原因となる遺伝子変異体及び診断標的及び治療標的としてのそれらを使用する方法
US8114592B2 (en) Genetic markers associated with age-related macular degeneration, methods of detection and uses thereof
JP2012187082A (ja) 第6染色体短腕21.33領域の一塩基多型に基づく抗てんかん薬による薬疹リスクの検査方法
Banno et al. Association of genetic polymorphisms of endothelin-converting enzyme-1 gene with hypertension in a Japanese population and rare missense mutation in preproendothelin-1 in Japanese hypertensives
JP2002527079A (ja) 心臓血管ステータスを評価するための遺伝子及びその使用のための組成物
CN106957907B (zh) 用于狗中的肝铜积累的遗传检测
JP5111763B2 (ja) 気管支喘息の遺伝的素因検査方法
US20080020383A1 (en) Haplotype Markers And Methods Of Using The Same To Determine Response To Treatment
JP2008524999A (ja) 精神障害を治療するための組成物及び方法
CA2627289A1 (en) Genetic variants of human inositol polyphosphate-4-phosphatase, type i (inpp4a) useful for prediction and therapy of immunological disorders
US7604945B2 (en) Single nucleotide polymorphisms in protein-tyrosine phosphatase receptor-type delta for the diagnosis of susceptibility to asthma
JP2010187556A (ja) 妊孕性診断方法、妊孕性診断キット、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び抗体
JP2010515467A (ja) 心筋梗塞及び心不全における診断マーカー及び薬剤設計のためのプラットホーム
JP4649163B2 (ja) 気管支喘息の遺伝的素因検査方法
US6316188B1 (en) Histamine-N-methyltransferase variants associated with histaminergic disease
JP4649181B2 (ja) 喘息の遺伝的素因検査方法
AU2004247896B2 (en) Mutations in the SLC40A1 gene associated to impaired iron homeostasis
US20230357849A1 (en) Genetic alterations associated with eosinophilic esophagitis and methods of use thereof for the diagnosis and treatment of disease
JP2020503875A (ja) 喘息治療のためのTh2経路を標的とする組成物および方法
KR101046344B1 (ko) Sntg2의 다형성 및 이의 일배체를 바이오마커로 이용한 뇌졸중 진단방법
KR102072504B1 (ko) Dock8 유전자 단일염기다형성을 이용한 아토피 피부염 진단용 조성물과 검출 방법
JP4533979B2 (ja) アレルギー疾患の遺伝的素因マーカーとしてのヒトトル様レセプター3遺伝子多型およびその使用
JP4502570B2 (ja) 遺伝子多型解析を用いたIgA腎症診断およびIgA腎症診断用キット
JP2017006074A (ja) 末梢動脈疾患検査方法及び検査用試薬
CN118853708A (zh) 利用基因型检测强直性脊柱炎及其易感性的方法及试剂盒

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090115

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110830

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111031

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20111102

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20111102

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120124

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120323

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20121002

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121010

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151019

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151019

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees