JP4502570B2 - 遺伝子多型解析を用いたIgA腎症診断およびIgA腎症診断用キット - Google Patents

遺伝子多型解析を用いたIgA腎症診断およびIgA腎症診断用キット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒト遺伝子の構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する検定方法、検定キット、並びに該遺伝子に関連する疾患の診断及び該遺伝子をコードする蛋白質に作用する薬物の薬効の大きさを予測する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アンジオテンシン変換酵素(アンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換する酵素:以下ACEと略す)は、血圧調節に関わる蛋白質であり、1989年EhlersらによりACEをコードする遺伝子がクローニングされた。ACEは26個のエクソンと25個のイントロンから構成されておりACE遺伝子には種々の多型が存在している(現在、ACE遺伝子には13個の遺伝子多型が存在していることが知られている)。特に、イントロン16に存在するアルー配列挿入・欠失多型と種々の疾患との関係が報告されている。それらの疾患には冠動脈疾患、IgA腎症、糖尿病性腎症などがある。
【0003】
本邦における透析患者の内、慢性糸球体腎炎を原疾患とするものが約40%を占め、その約50%はIgA腎症患者と考えられている。そのため、IgA腎症は糖尿病性腎症と同様に透析に至る末期腎不全患者の主因のひとつとして重要視されている。しかしながら、慢性腎不全への進行及びACE阻害薬の有効性を正確に検定する方法やキット、さらにはこれらの検定により早期にかかる疾患の罹患を診断する方法は得られていないのが現状である。
【0004】
IgA腎症患者は約40%が末期腎不全へ進行することが知られている。YoshidaらはACE遺伝子のアルー配列挿入・欠失多型に着目し欠失多型ホモ接合型がIgA腎症の腎不全移行に対する危険因子であり、欠失多型ホモ接合型はACE阻害薬による腎保護効果が他のアルー配列挿入・欠失多型に比べ高いことを報告している(非特許文献1参照)。しかし、他の研究ではこの報告を否定するものもあり、腎不全への移行には、アルー配列挿入・欠失多型ホモ接合型以外の多型が関与する可能性が伺える。具体的にどのような多型が危険因子であるのか、またACE阻害薬による腎保護効果と遺伝子多型との間にどのような関係があるのか、等不明な点が依然多く残されている。
【0005】
【非特許文献1】
「ザ ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲーション(The Journal of Clinical Investigation)」,(米国),1995年,第96巻,p.2162−2169
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、遺伝子多型解析を用いて、IgA腎症の予後をより正確に予測し、またACE阻害薬およびアンジオテンシン受容体拮抗薬のより正確な投与基準を設定することを目的とし、そのための方法ならびにそのための検定キットを提供することを目的とする。ひいては慢性腎不全患者を低減することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
レニン−アンジオテンシン系は、血圧調節の主要因子であり、アンジオテンシンIIは腎疾患の進行因子でもあることが知られている。したがって、レニン−アンジオテンシン系を阻害するACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬は、腎保護作用があることが報告されており、IgA腎症においてもACE阻害薬およびアンジオテンシン受容体拮抗薬が多用されている。上述のようにアルー配列挿入・欠失多型ホモ接合型がIgA腎症の腎不全への進行の危険因子である可能性については既に報告されているが、それを否定する報告もあり、またそれ以外の多型と腎症(腎不全)との関係については何の知見も得られていない。そこで本発明者らは、ACE遺伝子配列に存在するアルー配列挿入・欠失多型以外の遺伝子多型と個々の血漿ACE活性との関係をもとに、さらに遺伝子多型と腎機能の予後との関連、ACE阻害薬の治療効果との関連について調べた。
本発明者らは、血漿ACE濃度に影響するA240T多型及びG2350A多型に関して研究を行った。その結果、エクソン17に存在するG2350A多型が最もACE濃度に影響することが判明した。また、アルー配列挿入・欠失多型は血中循環ACE濃度を反映しないことも明確にした。
【0008】
本発明者らは、上記の知見及び考察を基に、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至ったものである。即ち、本発明者らは以下の発明を提供するものである。
(1)アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する方法。
(2)構造遺伝子の遺伝子多型において、多型が野生型と少なくとも単一ヌクレオチド置換で異なる遺伝子である上記(1)に記載の方法。
(3)アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する工程を含む、腎疾患患者における末期腎不全の発症頻度を予測する方法。
(4)構造遺伝子の遺伝子多型において、多型が野生型と少なくとも単一ヌクレオチド置換で異なる遺伝子である上記(3)に記載の方法。
(5)遺伝子多型部位がエクソンの部位に存在する、上記(3)または(4)に記載の方法。
(6)アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子の多型が、野生型の転写開始点から下流の2350bp位におけるグアニンが、アデニンに置換されている遺伝子である、上記(3)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)遺伝子多型を、遺伝子増幅法又は遺伝子伸長法を用いて検出することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する工程を含む、アンジオテンシン変換酵素を含む血圧調節機構に関与する蛋白質に作用する薬物の投与効果を予測する方法。
(9)構造遺伝子の遺伝子多型において、多型が野生型と少なくとも単一ヌクレオチド置換で異なる遺伝子である上記(8)に記載の方法。
(10)遺伝子多型部位がエクソンの部位に存在する、上記(8)または(9)に記載の方法。
【0009】
(11)遺伝子多型を、遺伝子増幅法又は遺伝子伸長法を用いて検出することを特徴とする、上記(8)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12)前記薬物が、アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬である、上記(8)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)前記アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬が、腎保護作用を有するものである、上記(12)に記載の方法。
(14)上記(8)〜(13)のいずれかに記載の方法を用いて、アンジオテンシン変換酵素を含む血圧調節機構に関与する蛋白質に作用する薬物の投与効果を予測し、得られた結果をもとにして薬物の投与方法を設定することを特徴とする、薬物の投与方法を決定する方法。
(15)前記薬物が、アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬である、上記(14)に記載の方法。
(16)前記アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬が、腎保護作用を有するものである、上記(15)に記載の方法。
(17)ヒト遺伝子の構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する為の検定キットであって、
(i)構造遺伝子の遺伝子多型検出用プライマー、
(ii)DNAポリメラーゼ、
(iii)4種類のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、および
(iv)構造遺伝子の野生型検出用プローブ及び変異型検出用プローブ
を含む、キット。
(18)ヒト遺伝子の構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する為の検定キットであって、
(i)構造遺伝子の野生型用プライマー、多型用プライマー及び共通のリバースプライマー、
(ii)DNAポリメラーゼ、および
(iii)4種類のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)
を含む、キット。
(19)更に
(v)各遺伝子多型を検出する手段
を含む、上記(18)に記載のキット。
(20)(v)各遺伝子多型を検出する手段が、
(v−1)構造遺伝子の野生型検出用プローブ及び変異型検出用プローブ
を含む、上記(19)に記載のキット。
【0010】
(21)更に、(v)各遺伝子多型を検出する手段として、
(v−2)分子量マーカー
を含む上記(20)に記載のキット。
(22)各プライマー、dNTPまたは各プローブの少なくとも1つが、予め標識されていてもよい、上記(17)〜(21)のいずれかに記載のキット。
(23)構造遺伝子の遺伝子多型において、多型が野生型と少なくとも単一ヌクレオチド置換で異なる遺伝子である上記(17)〜(22)のいずれかに記載のキット。
(24)遺伝子多型部位がエクソンの部位に存在する、上記(17)〜(23)のいずれかに記載のキット。
(25)該遺伝子が、アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子である上記(17)〜(24)のいずれかに記載のキット。
(26)アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子の多型が、野生型の転写開始点から下流の2350bp位におけるグアニンが、アデニンに置換されている遺伝子である、上記(25)に記載のキット。
(27)アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する工程を含む、アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子に関連する疾患の診断の予測方法及びアンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシン受容体拮抗薬の投与基準の決定方法。
(28)アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子に関連する疾患が進行性の慢性糸球体腎炎である上記(27)に記載の方法。
(29)アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子に関連する疾患がIgA腎症である上記(27)に記載の方法。
(30)アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子の遺伝子多型において、多型が野生型と少なくとも単一ヌクレオチド置換で異なる遺伝子である上記(27)〜(29)のいずれかに記載の方法。
【0011】
(31)遺伝子多型部位がエクソンの部位に存在する、上記(30)に記載の方法。
(32)アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子の多型が、野生型の転写開始点から下流の2350bp位におけるグアニンが、アデニンにより置換されている遺伝子である、上記(31)に記載の方法。
(33)遺伝子多型を、遺伝子増幅法又は遺伝子伸長法を用いて検出することを特徴とする、上記(27)〜(32)のいずれかに記載の方法。
【0012】
本発明において、「遺伝子多型」とは遺伝子中のある部位において、ホモ接合体における2種以上の塩基が存在することをいい、一方を野生型、それとは異なる塩基を有する遺伝子を多型という。また「遺伝子多型部位」とは、野生型と多型が存在している遺伝子多型の位置をいう。
構造遺伝子においては、エクソンの部位またはイントロンの部位に遺伝子多型部位が存在していてもよい。好ましくは、遺伝子多型部位はエクソンの部位に存在する。
本発明の好ましい実施態様は、構造遺伝子の遺伝子多型において、多型が野生型と少なくとも単一ヌクレオチド置換で異なるホモ接合体である。
遺伝子としては、構造遺伝子に遺伝子多型が存在していれば特に限定されないが、疾患と関連すると考えられている遺伝子が好ましい。例えば、ACEをコードする遺伝子が挙げられる。
【0013】
すでに、ヒトACE構造遺伝子のDNA配列は公知であり、構造遺伝子については、例えば、Howardら(Molec. Cell. Biol. 10(1990) 4294−4302頁)に示されている。本発明においては、文献に示されている構造遺伝子の配列を野生型と定義する。
ACE構造遺伝子の多型は、構造遺伝子の野生型の配列と異なる配列を有するものであれば特に限定されないが、野生型の2350(bp)位におけるグアニンが、アデニンにより置換されているものが好ましい。ここで、2350位とは、転写開始点から下流の2350番目の塩基を意味する。
該ACE遺伝子は、血圧調節に関わる因子でありアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンに変換する作用を有する。この遺伝子は心筋肥大症、高血圧並びに腎疾患に関与していることが報告されており、例えば該発明の遺伝子多型の検出は、IgA腎症患者の慢性腎不全移行の予測並びにACE阻害薬の投与方法、投与時機等を提起し、臨床ならびに診断分野において有用である。
【0014】
(遺伝子多型を検出・同定する工程)
本発明において、遺伝子多型としては、1塩基多型、挿入、欠失多型などの態様が挙げられる。
本発明において遺伝子多型を検出・同定する方法は、検出すべき遺伝子の遺伝子型が明らかにされ、これが特定される方法であれば特に限定されるものではなく、その検出のための方法を適宜に選択、採用し、若しくは該方法を適宜修飾して採用することができる。
例えば、多型の検出・同定を目的とする被験者のDNAを対象として、特定遺伝子の構造遺伝子多型を検出する方法としては、サザンハイブリダイゼーション法やドットハイブリダイゼーション法(J. Mol. Biol., 98: 503-517, 1975等参照)、ジデオキシ塩基配列決定法、DNAの増幅手法を組み合わせた各種の検出法;例えばPCR−制限酵素断片長多型分析法(RFLP: Restriction fragment length polymorphism),PCR−単鎖高次構造多型分析法(Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 86: 2766-2770, 1989等参照)、PCR−特異的配列オリゴヌクレオチド法(SSO: Specific sequence oligonucleotide)、PCR−SSOとドットハイブリダイゼーション法を用いる対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド法(Nature, 324: 163-166, 1986等参照)、ARMS法(Nucleic Acids Res., 1989, 2503-2516 (1989))、ASPCR(Proc. Natl. Acad. Sci., 1989, vol.86, 2757-2760)等が好適に用いられる。
【0015】
尚、上記において、対象となるDNAは、ヒトDNAの全長DNAであってもよいが、必ずしもその必要はなく、ヒトDNAの少なくとも上記本発明にかかる遺伝子の遺伝子多型位置を含む部分DNAであればよい。
また、対象となるDNAは、ヒトに由来するものである限り特に制限されることなく、ヒトDNAを含む例えば血液、毛髪、生体材料組織、手術切除組織、細胞株等の生体試料から広く採取され得る。
上記試料からDNAを抽出する方法は、常法に従って行えばよく、例えば、自動核酸分離装置NA−1000(倉敷紡績(株))、ゲノム抽出キット(キアゲン(株))を用いて行うことができる。
【0016】
本発明のヒトDNA多型の検出ならびに同定は、より好適には、少量のDNA試料を用いて簡便且つ容易にしかも感度及び精度の高い検出が可能であるという理由から、遺伝子増幅法、具体的にはPCR法若しくはそれに準じたDNA増幅法を組み合わせた方法や、遺伝子伸長法により実施することができる。これらは、所望DNA断片を増幅または伸長し、得られた増幅DNAまたは伸長DNAの当該多型部位を含む塩基配列を解析することにより実施することができる。遺伝子伸長法においては、予め、DNA断片を増幅させておいてもよい。
上記増幅法としては特に限定されるものではないが、PCR(Polymerase chain reaction;特公平4−67960号公報、特公平4−67957号公報)、NASBA(Nucleic acid sequence-based amplification method;Nature, 第350巻、第91頁(1991))、LCR(WO089/12696、特開平2−2934号など)、SDA(Strand Displacment Amplification;Nucleic Acids Res., 第20巻、第1691頁(1992))、RCR(WO90/01069)、TMA(Transcription Mediated amplification Method;J. Clin. Microbiol., 第31巻、第3270頁(1993))などが挙げられ、いずれにおいても適用することが可能である。遺伝子伸長法としては、ARMS法の記載に基づいて行うことができる。
【0017】
また、ここで用いられる塩基配列の解析は、特に制限はなく上記した各種の測定手法において採用されている方法、例えば塩基配列の配列決定、ハイブリダイゼーションや制限酵素の利用によるもの、電気泳動等により好ましく行い得る。
ハイブリダイゼーション法によれば、検出を目的とする遺伝子多型部位を含む位置に野生型、多型特異的プローブ(野生型検出用プローブ及び/又は変異型検出用プローブ)を設定し、各プローブでの反応性の有無により野生型または多型配列のいずれかを有するかを解析できる。
【0018】
本発明の検出方法の一つとしては、まず、ヒト生体試料からDNAを抽出し、該遺伝子の少なくとも多型配列を有するかどうかが疑われる遺伝子断片を、DNAポリメラーゼ、4種類のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)と共に、遺伝子多型検出用プライマーとして、遺伝子多型部位を含まないプライマー(フォワードプライマーとリバースプライマー)を用いて被験DNAから増幅し、多量に且つ濃縮されたサンプルを得る。次いで、増幅DNAサンプルに野生型と多型配列を有するプローブ(野生型検出用プローブ及び変異型検出用プローブ)を作用させ、どちらのプローブが作用したかを測定することにより、本発明にかかわる遺伝子多型の存在を検定することができる。
または、上記濃縮されたサンプルに、DNAポリメラーゼ、4種類のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)と共に、遺伝子多型検出用プライマーとして、遺伝子多型部位を含むプライマー、即ち、野生型用プライマー及び/または多型用プライマーを用いて被験DNAを伸長させる。次いで、伸長DNAサンプルに野生型と多型配列を有するプローブ(野生型検出用プローブ及び/または変異型検出用プローブ)を作用させ、どちらのプローブが作用したかを測定することにより、本発明にかかる遺伝子多型の存在を検定することができる。または電気泳動によって伸長されたかどうか検出してもよい。
【0019】
または、DNAポリメラーゼ、4種類のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)と共に、野生型用プライマー、多型用プライマー及び共通のリバースプライマーを用いて、遺伝子を増幅させることによって検定することもできる。これは検出を所望する遺伝子多型部位を有する所望のDNA断片を特異的に増幅するように適宜設定したプライマーの採用により行い得る。具体的には、特定の遺伝子多型部位を含む遺伝子断片が増幅されたか否かによって、遺伝子多型を検出する方法であるが、特定の遺伝子多型部位を含む染色体又は断片を含む核酸試料に、野生型用プライマーと多型用プライマー(フォワードプライマーに相当)を同時にまたはそれぞれ別々に用いて、リバースプライマーと共に増幅反応を行うことにより多型を検出する方法である。ここでフォワードプライマーは上鎖(upper strand)に相同でも下鎖(lower strand)に相同であってもよいが、好ましくは上鎖(upper strand)に相同であって、リバースプライマーはその反対である。
【0020】
本発明において、野生型用プライマーとは、通常の表現型を有している上鎖又は下鎖の遺伝子多型部位を含む遺伝子断片に相同な配列を有するプライマーであって、多型用プライマーとは、野生型とは異なる配列を有している上鎖又は下鎖の遺伝子多型部位を含む遺伝子断片に相同な配列を有するプライマーである。本発明においては、より具体的には、構造遺伝子の野生型用プライマー、多型用プライマー及び共通のリバースプライマー、プロモーター遺伝子の野生型用プライマー、多型用プライマー及び共通のリバースプライマーを使用する。
野生型用プライマーと多型用プライマーは、好ましくは、3’末端近傍に遺伝子多型部位を有するのが好ましい。
遺伝子の増幅におけるプライマーは、被験者のヒトDNAに由来するDNAを鋳型として、少なくとも当該所望の遺伝子多型部位を含む領域を有する部分DNAを増幅できるように設計されたものであり、これは、ヒトDNAに特異的であって、他の遺伝子と相同でなければ(例えば、繰り返し配列やパリンドローム配列でないこと等が重要)特に制限されることなく、DNAの合成の態様、合成するDNAの領域及び塩基長等に応じて適宜選択することができる。
【0021】
本発明におけるプライマーの塩基長は、当該DNAに特異的なプライマーとして機能し得る限り特に制限されず、通常15〜35程度、好ましくは20〜30程度であることができる。
また、増幅されるDNA領域も、特に限定されないが、引き続く塩基配列の解析に好適に利用できるように設定するのがよく、例えばハイブリダイゼーション法を利用する場合は、プローブとの反応が容易に確認できるように設定するのがよい。
従って、本発明は、被験者のヒトDNAに由来するDNAを鋳型として、少なくとも本発明の特定の遺伝子多型部位を含む領域を有する所望の部分DNAを合成できるように設計した上記各プライマーをも提供する。
尚、ここでいうDNAの合成とは、特定のDNA(センス鎖、アンチセンス鎖)を鋳型として、その配列に相補的な配列を有するDNAを伸長及び増幅することを広く含む概念である。
【0022】
上記したプライマーを含む本発明のDNAは、所望により、DNA自動合成機等を利用して本発明で開示する塩基配列に従って合成することができる。
増幅または伸長したDNAを遺伝子多型部位の塩基配列を解析する方法としては、より具体的には、上記のごとく、電気泳動を行ってもよいし、塩基配列決定法に従って行ってもよいし、質量分析を行ってもよいし、更にはプローブを用いたハイブリダイゼーション法によって行ってもよい。
プローブを用いたハイブリダイゼーション法としては、伸長または増幅された特定の核酸に、該核酸配列中に含まれる遺伝子多型部位の配列に特異的なプローブ(野生型検出用プローブまたは変異型検出用プローブ)を用いて、ハイブリダイゼーションをおこなって検出してもよいし、2種以上のプローブ(野生型検出用プローブ及び変異型検出用プローブ)を同時にまたは別々に作用させ、各々のプローブにより得られる検出シグナルの比を求めることによって行うこともできる。
本発明で使用されるプローブは、遺伝子多型部位を含みその種類により検出シグナルが異なれば良いが、好ましくは連続した少なくとも15塩基、より好ましくは連続した少なくとも18塩基からなる塩基配列が必要である。上限としては40塩基程度、好ましくは20〜30塩基程度である。プローブは特定核酸配列と相補鎖を形成すればDNAでもRNAでもPNAでもよく、化学合成または生物学的な方法により調製することができる。例えば、パーキンエルマー社のDNAシンセサイザー391型を用いてホスホアミダイト法により合成できる。精製はFPLCでMONO−Qカラムや逆相カラムにて実施しても良い。他の合成方法としてリン酸トリエステル法、H−ホスホネート法、チオホスファイト法等がある。
【0023】
上記各プライマー、dNTP、各プローブは、予め標識されていてもよい。または、リンカーアームを有していてもよい。具体的には、合成時にビオチン、リンカーアーム、蛍光物質等を有するヌクレオチドまたはオリゴdGTP、オリゴdATP、オリゴdTTP、オリゴdCTP等を5’末端または3’末端に付加し修飾基を導入しても良い。あるいはビオチン、リンカーアーム、蛍光物質等を有するヌクレオチドをオリゴヌクレオチド配列中のヌクレオチドの替わりに置換して合成し修飾基を導入しても良い。あるいは合成したヌクレオチドに後から32P、35Sなどの放射性物質、ALP、PODなどの酵素、FITC、HEX、6−FAM、TETなどの蛍光物質など、公知のオリゴヌクレオチドの標識物を導入しても良い。
また本発明において、プローブで検出する前に、予め試料中に含まれる遺伝子多型部位を含む特定の核酸配列を増幅させておいてもよい。
【0024】
より具体的には、例えば、ビオチン等で標識したプライマーを用いて核酸配列を伸長または増幅した後、伸長または増幅核酸を1本鎖にし、例えば、マイクロタイタープレートのような固相に結合させた野生型検出用プローブまたは変異型検出用プローブとハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしなかった核酸を洗いだし、プローブとハイブリダイズした核酸のプライマーの標識によりハイブリダイズしたか否かを検出し、各プローブの検出シグナルの比により遺伝子多型が野生型か多型もしくは混合型であるのかを検出・同定する方法が挙げられる。
本発明の検定方法は、構造遺伝子における遺伝子多型が存在するか否かを検出することによって行う。
【0025】
また、本発明の構造遺伝子における遺伝子多型検出法において採用され得る各種の操作、例えば、DNA又はDNA断片の合成、DNAの切断、削除、付加又は結合を目的とする酵素処理、DNAの単離、精製、複製、選択、DNA断片の増幅などはいずれも常法に従うことができ(分子遺伝学実験法、共立出版(株)1983年発行;PCRテクノロジー、宝酒造(株)1990年発行等参照)、また必要に応じてこれらを適宜修飾して用いることができる。
上記ACE構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する方法を用いて、腎疾患患者における末期腎不全の発症頻度を予測すること、ACEを介する血圧調節機構に関与する薬物の投与効果を予測すること、ならびにこれらの予測に基づき該薬物の投与方法等を決定することが可能になる。
【0026】
(検定キット)
本発明によって明らかにされた、構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定し、両遺伝子多型およびその組み合わせを検定することで、関連する症状または薬物投与による疾患の予後を予測する診断にあたっては、本発明のキットを使用することが好ましい。
かかる検定キットは、被験者のヒトDNAに由来するDNAを鋳型として、本発明における特定の遺伝子多型部位を含むDNA領域を合成できるように設計された前記のプライマーを必須成分として含有することを特徴とするものである。当該プライマーは、本発明の遺伝子多型の検出方法に応じて適宜選択することができる。
本発明の試薬キットは、上記プライマー成分に加えて、本発明にかかる変異の存在の検出に応じた一乃至数個の試薬を組み合わせたものであってもよい。かかる試薬は、採用される検出方法に応じて適宜選択採用されるが、例えば、DNA合成基質類、DNA合成酵素類等を挙げることができる。更に、当該試薬キットには、測定の実施の便益のために適当な緩衝液、洗浄液等が含まれていてもよい。
具体的には、本発明のキットは、プライマー、DNAポリメラーゼ、4種類のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含む。
【0027】
より具体的には、本発明のキットには、ヒト遺伝子の構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する為の検定キットであって、
(i)構造遺伝子の遺伝子多型検出用プライマー、
(ii)DNAポリメラーゼ、
(iii)4種類のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、
(iv)構造遺伝子の野生型検出用プローブ及び変異型検出用プローブ
を含むキットが含まれる。
(i)の構造遺伝子の遺伝子多型検出用プライマーにおける各遺伝子多型検出用プライマーとしては、各々、遺伝子多型部位を含まないプライマー、即ち、フォワードプライマー及びリバースプライマーの組み合わせであってもよいし、遺伝子多型部位を含むプライマー、即ち、野生型用プライマー及び多型用プライマーの組み合わせであってもよい。
(iv)構造遺伝子の野生型検出用プローブ及び変異型検出用プローブとしては、上記の通りである。
また、本発明のキットには、ヒト遺伝子の構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する為の検定キットであって、
(i)構造遺伝子の野生型用プライマー、多型用プライマー及び共通のリバースプライマー
(ii)DNAポリメラーゼ並びに
(iii)4種類のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)
を含むキットが含まれる。
(i)構造遺伝子の野生型用プライマー、多型用プライマー及び共通のリバースプライマーとしては、各々、検出を所望する遺伝子多型部位を有する所望のDNA断片を特異的に増幅するように適宜設定できる。野生型用プライマーと多型用プライマーは、好ましくは、3’末端近傍に遺伝子多型部位を有するのが好ましい。
【0028】
さらに、上記キットは、(v)各遺伝子多型を検出する手段ならびに当該手段に必要な試薬を含んでいてもよい。例えば、電気泳動法に必要な分子量マーカー(v−1)、またはハイブリダイゼーションに必要な各種プローブ(v−2)を含んでいてもよい。
該プローブとしては、具体的には、構造遺伝子の遺伝子多型を検出するための、野生型検出用プローブ及び/または変異型検出用プローブが挙げられる。それらは上述の通りである。
【0029】
また、本発明のキットにおいては、各プライマー、dNTP、各プローブは、予め標識されていてもよい。または、リンカーアームを有していてもよい。
本発明の検定キットの好ましい実施態様は、構造遺伝子における検出すべき遺伝子多型が、野生型と少なくとも単一ヌクレオチド置換で異なるものを検出できるキットである。
本発明の検定キットの好ましい実施態様は、ACE構造遺伝子の遺伝子多型が、2350bp位におけるグアニン(野生型)がアデニンにより置換されているものを検出できるキットである。
本発明によれば、後述するが、遺伝子多型、特に2350bpの遺伝子多型とIgA腎症およびその予後、ならびにACE阻害薬の腎保護効果とは関連性があり、従って、ACE遺伝子配列における多型検出用試薬を有効成分として含有する検定キットを利用すれば、IgA腎症患者に使用するACE阻害薬投薬基準を決定する診断に使用することができる。
【0030】
ACE遺伝子に関連する疾患の診断及びACE阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬の投与量決定の予測方法
本発明は、ヒト遺伝子のACE構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する工程を含む、該遺伝子に関する疾患の診断及びACE阻害薬アンジオテンシン受容体拮抗薬の投与量決定の予測方法を提供する。ACE遺伝子に関連する疾患としては具体的には慢性糸球体腎炎、特にIgA腎症が挙げられる。本発明において、ACE阻害薬の投与量の予測とは、患者(IgA腎症患者等)にACE阻害薬又はアンジオテンシン受容体拮抗薬を投与する時期を調節することにより患者(IgA腎症患者等)の腎保護効果を期待し慢性腎不全移行を回避、延長することを可能にする診断を意味する。
具体的には、例えば、ACEの遺伝子型を検定することで、患者(IgA腎症患者等)の慢性腎不全移行の危険性を診断すること並びにACE阻害薬又はアンジオテンシン受容体拮抗薬による腎保護効果を有する患者を選別診断するのに有用である。
本発明において用いられるACE阻害薬ならびにアンジオテンシン受容体拮抗薬としては通常当分野で用いられる種々の医薬が挙げられる。
当該遺伝子診断は、好適には、被験者のヒトDNAのACE構造遺伝子の遺伝子型が、野生型であるのか、あるいは2350bp位におけるグアニンがアデニンにより置換されているかどうかを検出することによって行われる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例により特に限定されるものではない。
参考例1
本発明を完成するにあたり、本発明者等は新潟大学医学部に来院あるいは入院している組織学的にIgA腎症と診断された患者280名について、年齢、性別、身長、体重、及び各種血液検査を測定した。各測定値を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0004502570
【0033】
表1はACE阻害薬の投与を受けている患者群と受けていない患者群の臨床所見を示す。年齢、性別、血清クレアチニン値、クレアチニンクリアランスは腎生検時並びに経過観察期間において両群での差を認めなかった。しかし、尿蛋白量及び収縮期血圧値はACE阻害薬投与群が非投与群より優位に高値を示した。また、末期腎不全発生率はACE阻害薬非投与群が投与群に比し優位に高値を示した(図1A)。同様な結果がアンジオテンシン受容体拮抗薬を投与した場合にも得られた。
【0034】
実施例1 ACE遺伝子の塩基多型検出
(1)ACE遺伝子2350位の多型を検出するプライマーの合成
パーキンエルマー社製DNAシンセサイザー392型を用いて、ホスホアミダイト法にて、配列番号1に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(gacgaatgtgatggccaca:以下、プライマー1と示す)および配列番号2に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(gacgaatgtgatggccacg:以下、プライマー2と示す)および配列番号3に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(gacgaatgtgatggccacat:以下、プライマー3と示す)および配列番号4に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(gacgaatgtgatggccacgt:以下、プライマー4と示す)および配列番号5に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(ttgatgagttccacgtatttcg:以下、プライマー5と示す)を合成した。合成はマニュアルに従い、各種オリゴヌクレオチドの脱保護はアンモニア水で55℃、一夜実施した。オリゴヌクレオチドの精製はパーキンエルマー社OPCカラムにて実施した。
プライマー1は3’末端が野生型(A)のヌクレオチド配列を有し、プライマー2は3’末端が多型(G)のヌクレオチド配列を有し、プライマー3は3’末端から2番目が野生型(A)のヌクレオチド配列を有し、プライマー4は3’末端から2番目が多型(G)のヌクレオチド配列を有する。プライマー5はプライマー1〜4のいずれとも対になるリバースプライマーである。
【0035】
(2)PCR法によるACE遺伝子多型の解析
ヒト白血球からフェノール・クロロホルム法により抽出したDNA溶液をサンプルとして使用して、下記試薬を添加して、下記条件によりヒトACE遺伝子多型を解析した。
▲1▼試薬
以下の試薬を含む25μl溶液を調製した。
Figure 0004502570
増幅条件
94℃・2分
94℃・15秒、55℃・30秒、68℃、30秒(35サイクル)
68℃・2分
▲2▼ 検出
得られたPCR産物を常法に従ってアガロースゲル電気泳動に供し、エチジウムブロマイド染色して増幅産物のバンドを検出した。得られた結果は野生型特異的プライマーでの増幅では野生型のみが、多型特異的プライマーでは変異型のみが増幅した。また、ヘテロの検体では野生型と変異型がそれぞれ増幅することを電気泳動で確認した。
【0036】
上記のように、KODplus DNAポリメラーゼとプライマーの3’末端から2番目の塩基に多型を含むプライマーによってのみ試料の遺伝子型を明確に判定することができた。
【0037】
実施例2 ACE A2350G遺伝子多型とIgA腎症の長期的腎機能予後の関係
実施例1で得られたヒトACE遺伝子の塩基多型検出結果とIgA患者の末期腎不全の相関関係を図1に示す。ACE遺伝子の2350位のアデニンホモ接合多型を持つIgA腎症患者はグアニンホモ接合多型及びヘテロ接合多型を持つ同患者に比べ末期腎不全になる危険率が高いことが分かる(図1B)。このことは、2350位のアデニンホモ接合多型が末期腎不全の危険因子となることを示すものである。
【0038】
実施例3 ACE構造遺伝子の塩基多型とACE阻害薬投与における腎保護効果との相関
実施例1で得られたヒトACE遺伝子の塩基多型検出結果とACE阻害薬の腎保護効果の相関関係を図2に示す。
図2から分かるように、ACE遺伝子の2350位がアデニンホモ接合多型となっているIgA腎症の患者はグアニンホモ接合多型及びヘテロ接合多型の遺伝子多型をもつ同患者よりもACE阻害薬の投与を受けている場合、慢性腎不全に移行する期間が遅いことが明らかとなった。このことは、IgA腎症患者の治療を実施するに当たり、ACE阻害薬の投与効果(腎保護効果)を予測する上で、該遺伝子多型を調べることにより、より的確な診断、予測が可能となった。
具体的には、アデニンホモ接合多型を持つIgA腎症患者は末期腎不全の危険率が高く、それら患者へのACE阻害薬の投与は腎保護効果を示し、末期腎不全危険率を低下させる効果がある。同様な結果が、アンジオテンシン受容体拮抗薬を用いた場合にも得られた。
【0039】
【発明の効果】
上述したように本発明の方法は、構造遺伝子の遺伝子多型、例えば、個体がACE構造遺伝子の特定の多型についてホモ接合型であるかまたはヘテロ接合型であるかを決定することにより、IgA腎症患者の末期腎不全の危険にある素因の診断に有用である。なおかつ、該患者へのACE阻害薬あるいはアンジオテンシン受容体拮抗薬の投与による腎保護効果を予測することを可能にする。
【0040】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:ヒトACE遺伝子の野生型配列と相同な配列を有するオリゴヌクレオチド
配列番号2:ヒトACE遺伝子の2350番目が多型な配列と相同な配列を有するオリゴヌクレオチド
配列番号3:ヒトACE遺伝子の配列と相同な配列を有するオリゴヌクレオチド配列番号4:ヒトACE遺伝子の2350番目が多型な配列と相同な配列を有するオリゴヌクレオチド
配列番号5:ヒトACE遺伝子の配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド
【0041】
【配列表】
Figure 0004502570
Figure 0004502570
Figure 0004502570

【図面の簡単な説明】
【図1】 図1Aは、IgA腎症患者の末期腎不全発症の頻度とACE阻害薬投与との相関関係を示した図である。図中、点線は、ACE阻害薬を投与した場合、実線は、ACE阻害薬を投与しなかった場合の結果を示す。
図1Bは、ヒトACE構造遺伝子のIgA腎症患者の末期腎不全発症の頻度と遺伝子多型との相関関係を示した図である。図中、点線は、ヘテロ接合多型かグアニンホモ接合多型の場合の結果を示し、実線はアデニンホモ接合多型の場合の結果を示している。
それぞれ、縦軸は末期腎不全を発症していない患者の割合(%)を、横軸は観察期間(月)を示している。
【図2】 図2Aは、アデニンホモ接合多型のIgA腎症患者における末期腎不全発症の頻度とACE阻害薬投与との相関関係を示した図である。図中、点線は、ACE阻害薬を投与した場合、実線は、ACE阻害薬を投与しなかった場合の結果を示す。
図2Bは、ヘテロ接合多型かまたはグアニンホモ接合多型のIgA腎症患者における末期腎不全発症の頻度とACE阻害薬投与との相関関係を示した図である。図中、点線は、ACE阻害薬を投与した場合、実線は、ACE阻害薬を投与しなかった場合の結果を示す。
それぞれ、縦軸は末期腎不全を発症していない患者の割合(%)を、横軸は観察期間(月)を示している。

Claims (12)

  1. 腎疾患患者の生体試料中の、アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する工程を含む、末期腎不全の発症頻度を予測する方法であって、該多型が、野生型の転写開始点から下流の2350bp位におけるグアニンがアデニンに置換されている遺伝子である、方法。
  2. 遺伝子多型を、遺伝子増幅法又は遺伝子伸長法を用いて検出することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 腎疾患患者の生体試料中の、アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する工程を含む、アンジオテンシン変換酵素を含む血圧調節機構に関与する蛋白質に作用する薬物の投与効果を予測する方法であって、該多型が、野生型の転写開始点から下流の2350bp位におけるグアニンがアデニンに置換されている遺伝子である、方法。
  4. 遺伝子多型を、遺伝子増幅法又は遺伝子伸長法を用いて検出することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  5. 前記薬物が、アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬である、請求項3または4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬が、腎保護作用を有するものである、請求項5に記載の方法。
  7. 腎疾患患者の生体試料中の、アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する為の検定キットであって、
    (i)構造遺伝子の遺伝子多型検出用プライマー、
    (ii)DNAポリメラーゼ、
    (iii)4種類のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、および
    (iv)構造遺伝子の野生型検出用プローブ及び変異型検出用プローブ
    を含み、前記(i)の遺伝子多型検出用プライマーは、上鎖または下鎖の遺伝子多型部位(野生型の転写開始点から下流の2350bp位におけるグアニンがアデニンに置換されている)を含む遺伝子断片に相同な配列を有する、キット。
  8. 腎疾患患者の生体試料中の、アンジオテンシン変換酵素構造遺伝子の遺伝子多型を検出・同定する為の検定キットであって、
    (i)構造遺伝子の野生型用プライマー、多型用プライマー及び共通のリバースプライマー、
    (ii)DNAポリメラーゼ、および
    (iii)4種類のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)
    を含み、前記(i)の多型用プライマーは、上鎖または下鎖の遺伝子多型部位(野生型の転写開始点から下流の2350bp位におけるグアニンがアデニンに置換されている)を含む遺伝子断片に相同な配列を有する、キット。
  9. 更に
    (v)各遺伝子多型を検出する手段
    を含む、請求項に記載のキット。
  10. (v)各遺伝子多型を検出する手段が、
    (v−1)構造遺伝子の野生型検出用プローブ及び変異型検出用プローブ
    を含む、請求項に記載のキット。
  11. 更に、(v)各遺伝子多型を検出する手段として、
    (v−2)分子量マーカー
    を含む請求項10に記載のキット。
  12. 各プライマー、dNTPまたは各プローブの少なくとも1つが、予め標識されていてもよい、請求項11のいずれかに記載のキット。
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