JP2007186412A - 脈理が低減された低膨張率ガラスおよび素子ならびにその製造方法 - Google Patents

脈理が低減された低膨張率ガラスおよび素子ならびにその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】超低膨張率シリカ・チタニアガラス中の脈理を減少させる。
【解決手段】ガラスを、1600℃を超える温度で72〜288時間の範囲の間熱処理する。一つの実施例において、本発明はガラスを流動させずまたは動かさずに熱処理する。本発明は、超低膨張率ガラス中の脈理の大きさを500%も減少させ、特に高い周波数の脈理の大部分を減少させることが判明した。
【選択図】 図4

Description

優先権主張
本願は、2005年12月21日付けで提出された「脈理が低減された低膨張率ガラスおよび素子ならびにその製造方法」と題する米国仮特許出願第60/753,058号の優先権を主張した出願である。
本発明は、シリカおよびチタニアを含有するガラスから作成された遠紫外線用素子に関するものである。特に本発明は、脈理が低減された、低膨張率ガラスおよびこのガラスから作成された素子、ならびにこのようなガラスおよび遠紫外線リソグラフィーに適した素子の製造方法に関するものである。
シリカおよびチタニアから作成された超低膨張率ガラスおよび軟X線または遠紫外線(EUV)リソグラフィー用素子は、従来シリカおよびチタニアの有機金属先駆物質の火炎加水分解によって作成されてきた。火炎加水分解法で作成されたガラスからなる超低膨張率シリカ・チタニア物品は、宇宙観測に用いられる望遠鏡のミラーおよび遠紫外線または軟X線によるリソグラフィーに使用される素子の製造に用いられる。これらのリソグラフィー素子は、集積回路パターンを形成するのに利用されるパターン画像を照射し、投射し、かつ縮小するために遠紫外線または軟X線とともに用いられる。遠紫外線または軟X線を使用すると、より小さい集積回路形状を作成することができる利点があるが、この波長領域における輻射線の操作および方向付けは困難である。したがって、1nmから70nmまで範囲などの遠紫外線または軟X線における波長は、工業用には広く用いられてはいなかった。この領域における制約の一つは、安定かつ高品質の回路パターン画像を維持しながらこのような輻射線への曝露に耐えることができるミラー素子を経済的に製造することが不可能であったことである。そこで、遠紫外線または軟X線とともに使用するための安定な高品質のガラス製リソグラフィー素子に対する要求がある。
上述の方法によって作成された超低膨張率チタニア・シリカガラスの一つの制約は、このガラスが脈理を含んでいることである。脈理は、ガラスから作成されたレンズおよびウインドウ素子における光の透過に悪影響を与える組成的異質部分である。脈理は数ppb/℃の熱膨張係数(CTE)の変化に関連する組成的変化を測定するマイクロプローブによって測定することが可能である。或る場合には脈理は、ガラスから作成された反射光学素子内の1オングストローム2乗平均平方根(rms)レベルにおける表面仕上げに影響を与えることが判明している。遠紫外線リソグラフィー用素子は極めて低いrmsレベルを有する仕上げを要求される。
シリカおよびチタニアを含有する超低膨張率ガラスを製造するための改良された方法および装置を提供することは有益である。特に、脈理が低減された遠紫外線用素子およびこのようなガラス素子を製造することが可能な方法および装置を提供することは望ましいであろう。さらに、超低膨張率ガラスおよび遠紫外線リソグラフィー用素子中の脈理を測定するための方法および装置を提供することは望ましいであろう。
本発明は、ガラスのアニーリング点より約100℃高い温度から急速流展に用いられる温度(約1900℃)まで、温度に応じて6時間以上12ヶ月までの範囲の期間の間ガラスを熱処理することによって低膨張率ガラス中の脈理を低減する方法に関するものである。
本発明は、超低膨張率ガラスおよびこのガラスで作成された遠紫外線リソグラフィーに適した光学素子、ならびに1400℃を超える温度で最低24時間熱処理することによって超低膨張率ガラス中の脈理を低減することによる上記ガラスおよび素子の製造方法に関するものである。好ましい実施例においては、ガラスが1600℃を超える温度で72〜288時間の範囲の間熱処理される。さらに別の実施例においては、ガラスを流動させたり「動かし」たりせずに熱処理を行なっている。
本発明は、超低膨張率シリカ・チタニアガラス中の脈理を低減する方法およびその方法で作成された光学素子に関し、固結されたシリカ・チタニアガラスブールが、炉内の回転する容器内で公知の方法で調製され、このブールが1600〜1700℃の範囲の温度で72〜288時間の範囲の間熱処理され、そして上記固結されたブールが1600〜1700℃の範囲の温度から1000℃まで1時間当り25〜75℃の範囲の割合で、好ましくは1時間当り50℃の割合で冷却され、次いで炉の自然冷却速度で周囲温度まで冷却されることによって、脈理が低減されたシリカ・チタニアガラスブールが生成する。本発明の実施例においては、上記ガラスブールは、シロキサンならびにケイ素およびチタンのアルコキシドおよび四塩化物からなる群から選ばれたシリカおよびチタニアの先駆物質を用いた火炎加水分解によって調製される。好ましい先駆物質は、イソプロポキシドチタンおよびオクタメチルシクロテトラシロキサンである。
他の実施の形態において、本発明は、低膨張係数ガラスを、1600〜1700℃の範囲の温度で72〜288時間の範囲の間流動したり動いたりしないようにして熱処理することに関するものである。
さらに別の実施の形態において、本発明は、大きなガラスブール中の、または大きなガラスブールから得られたガラスのセグメントを、1600〜1700℃の範囲の温度で72〜288時間の範囲の間、流動したり動いたりしないようにして熱処理することにより、脈理を低減する方法に関し、その熱処理中、ガラスは垂直軸線の周りで回転され、かつ熱源はガラスの水平寸法全体に亘って一様に分布される。さらに好ましい実施例においては、ガラスを、1600〜1700℃の範囲の温度で72〜160時間の範囲の間、流動したり動いたりしないようにして熱処理し、その熱処理中、ガラスは垂直軸線の周りで回転され、かつ熱源はガラスの水平寸法全体に亘って一様に分布される。
さらに別の実施の形態において、本発明は、5〜10重量%のチタニアを含有するシリカ・チタニアガラス中の脈理を低減することに関する。
さらなる実施の形態において、本発明は、容器内にガラスを入れ、ガラスと容器との間にパッキング材料を詰め、次いで、1600℃より高い温度で72〜288時間の範囲の期間に亘りガラスを熱処理することによって、ガラスを流動させずに、低膨張率ガラス中の脈理を低減することに関する。
全般的に見れば、本発明は、ガラスのアニーリング点(約1200℃)より約100℃高い温度から急速流展に用いられる温度(約1900℃)まで、温度に応じて6時間以上12ヶ月までの範囲の時間の間ガラスを熱処理することによって低膨張率ガラス中の脈理を低減する方法に関するものである。図6は、本発明の実施に用いることができる、極端かつ最も有用な(中央値)時間と温度とを示す概略的なグラフである。一般的に、ガラスは1400℃を超える温度で24時間を超える時間の間熱処理される。大部分のガラス組成に関して実際的な(工業的に望ましい)時間および温度は、1600〜1700℃(温度の中央値は1650℃)の範囲の温度において72〜288時間以上である。より低い温度においては、より長い時間が必要であるが、前記実際的な時間/温度で得られるのと同様の結果が期待できる。
米国特許第5,970,751号明細書には、溶融シリカ・チタニアガラスを調製するための方法および装置が記載されている。この装置は固定のカップまたは容器を備えている。米国特許第5,696,038号明細書には、そこに記載された従来技術の回転カップを用いて溶融シリカブール中の軸外等質性を改善するために、振動/回転パターンを用いることが記載されている。米国特許第5,696,038号明細書に開示されているように、x軸およびy軸の振動パターンは下式によって規定されていた。すなわち、
x(t)=rsin2πωt+rsin2πω
y(t)=rcos2πωt+rcos2πω
ここで、x(t)およびy(t)は、時間(t)(分)の関数としての炉の環状壁の中心から測定したブールの中心の座標である。ブール形成中の環状壁とガラス収容容器またはカップとの接触を避けるために、rとrとの和は、環状壁の半径とガラス収容容器またはカップの半径との差よりも小さくなければならない。パラメータr,r,ω,ωおよびブールの中心の周りの1分当りの回転数(rpm)を表す第5のパラメータωがブール全体の運動を規定する。一般的に、本発明を実施する場合、ω,ωおよびωはそれぞれ1.6〜1.8,3.5〜3.7および4.0〜4.2の範囲にある。チタニア含有シリカブールの製造に用いられるω,ωおよびωは、コーニング社によって本願と共有される米国特許出願第10/378,391号(米国特許公開第2004/0027555号明細書)に開示されているように、それぞれ1.71018rpm,3.63418rpm および4.162rpm である。
米国特許出願公開第2004/0027555号明細書には、チタニア含有ガラススートを堆積させることによって低膨張率のチタニア含有シリカガラス体を製造する方法が記載されている。この米国特許出願公開第2004/0027555号明細書における方法は、米国特許第5,970,751号明細書に記載された装置と、米国特許第5,696,038号明細書に記載された回転/振動カップとを用いている。シリカ・チタニアスートは、振動テーブル上に取り付けられた容器内に堆積され、上記テーブルの振動パターンを変えることによって、特に上記テーブルの回転速度を増大させることによって脈理が低減される。特に、米国特許出願公開第2004/0027555号明細書においては、ω,ωおよびωのそれぞれに関する値を増大させると脈理が減少することが判明したと説明されている。米国特許出願公開第2004/0027555号明細書には、脈理に影響を与える他の要因および脈理の発生に対処することができる方法が記載されている。例えば、炉の排気ポートを通る流れが脈理に影響を与え、かつ排気ポートの数を増やすことによって脈理が低減されるとの断定が記載されている。米国特許第5,951,730号明細書および米国特許第5,698,484号明細書にも、脈理形成に関するさらなる情報が見られる。
上述の改善は脈理を減少させはするが、さらなる脈理の低減が切に望まれている。さらにシリカ・チタニア超低膨張率ガラスからなるブール中の、または1個のブールから得られたガラスのセグメント中の脈理を減少させることは、超低膨張率材料で見られる研磨問題を軽減する。特に、中間空間周波数表面粗さが改善され、その結果、EUVの用途および極端に平滑な表面仕上げが要求される用途により適した材料が得られる。ULE(超低膨張率)ガラス中の脈理(すなわち組成の重なり)は、ブールの上面と底面に平行な方向で極めて歴然としている。脈理は、局部的な平均TiOレベルに比較して一般に±0.1%を超えるチタニア(TiO)組成における変化からなり、このレベルは、公称の目標CTEに左右されるが、7.25〜8.25重量%(それより多くても少なくてもよいが、一般にTiOは5〜10重量%の範囲にある)であることが多い。組成における変化(脈理)は、CTEが異なる薄層が交互に並ぶことになり、したがって圧縮面と伸張面とが交互に並ぶことになる。このような超低膨張率ガラス材料の研磨を試みたとき、脈理に起因する交番する圧縮層と伸張層とが、一様でない材料内に除去すべきかつ許容できない表面粗さを生じる。この現象は中間空間周波数表面粗さを一般に「木目」と呼んでいる鏡産業で観察されてきた。ここに記載されている方法によって、組成的変化である脈理を低減すると、層間の圧縮と伸張のレベルが低下し、優れた研磨性が得られる。
第1のステップとして、従来公知のいずれかの方法によって、例えば米国特許出願公開第2004/0027555号明細書に記載された装置(この装置は図1に示されている)を用いた米国特許第5,696,038号明細書に記載された方法によって、シリカ・チタニアガラスブールが調製される。ここに記載されているチタニア含有シリカガラスブールの製造に用いられているω,ωおよびωの値はそれぞれ1.71018rpm,3.63418rpm および4,162rpm である。本発明によれば、上記ガラスブールが製造された後、1600℃を超える温度(炉頂温度で表される)でシリカ・チタニア超低膨張率ガラスブールを72〜160±8時間、好ましくは72〜96±8時間(3、4日)の範囲の間保持することによって脈理が低減された。一つの実施例においては、温度の範囲は1600〜1700℃であった。さらなる実施例においては温度が約は1650±25℃であった。別の実施例においては、ガラスを動かすことが本発明による脈理の低減効果を減退させることは予期していないとしても、ガラスは、ガラスが流動したり動いたりしないような温度で保持された。ガラスの動き規制は、ガラスがいずれの方向にも動かないように耐火材料からなるパッキングを詰めることによって達成された。動きを規制するパッキングを詰めた後、ガラスは複数の標準的なCHオキシ点火バーナを用いて、シリカ・チタニア超低膨張率ガラスブールを作成するのに用いられたのと同じ炉内で加熱された。ガラス表面の温度データは熱処理(後述)の間記録された。上述した時間の間保持された後、ガラスは1時間当り50℃の割合で1000℃まで強制的に冷却され、次いで炉の冷却速度で周囲温度(炉を囲む室温)まで冷却された。複数のバーナは、加熱されるガラスサンプルの全半径をカバーするように配置され、バーナへのガス流は特定された温度を達成しかつ維持するのに十分なように流された。
上述の熱処理によって脈理が低減されたブールが周囲温度まで冷却された後、このブールは光学素子を作成するのに適した形状に切断され、芯抜きされ、さもなければ光学素子を作成するのに適した形状に処理されることが可能である。切断または芯抜きに加えた上記処理は、エッチング、追加の熱処理,研削、研磨、ミラーを形成するために選択された金属の付加、および所望の光学素子を形成するのに必要な追加的処理である。
脈理が低減されたシリカ・チタニア光学素子を作成する一般的な方法は、従来技術の何れかを用いてシリカ・チタニアガラスブールを炉内で調製し、1600℃を超える温度で上記ブールを72〜288時間(好ましくは1600〜1700℃の範囲の温度で72〜160時間の範囲の間)熱処理し、このブールを、1600℃を超える温度から1時間当り50℃の割合で1000℃まで冷却し、次いで炉の自然冷却速度で周囲温度まで冷却して、脈理が低減されたシリカ・チタニアガラスブールを生成させ、このガラスを必要に応じて処理して脈理が低減されたシリカ・チタニア光学素子を作成する。脈理が低減されたシリカ・チタニア光学素子を作成するための特定の実施例は、従来技術の何れかを用いて固結されたシリカ・チタニアガラスブールを炉内の回転する容器内で調製し、このブールまたは調整されたブールから得られるサンプルを1600〜1700℃の範囲の温度で72〜288時間の範囲の間熱処理してこのブール中の脈理を減少させ、このブールを1600〜1700℃の範囲の温度から1時間当り50℃の割合で1000℃まで冷却し、次いで炉の自然冷却速度で周囲温度まで冷却して、脈理が低減されたシリカ・チタニアガラスブールを生成させ、次いでこのブールを選ばれた光学素子の形状に切断し、そして、この形状のものを、切断、研削および研磨して、脈理が低減された遠紫外線リソグラフィーに適した光学素子にすることである。このようにして作成された光学素子は遠紫外線リソグラフィー、例えば反射リソグラフィー法に用いられるミラーに適している。
ここで、図1に示された装置を参照すると、高純度ケイ素含有原料すなわち先駆物質14と、高純度チタン含有原料すなわち先駆物質26とを用いて、チタニアを含有するシリカガラスブールが製造された。原料すなわち先駆物質材料は、一般にシロキサン、チタンまたはケイ素を含有するアルコキシドおよび四塩化物である。シロキサンならびにケイ素およびチタンのアルコキシドが好ましい。特に一般的に用いられるケイ素含有原料の一つはオクタメチルシクロテトラシロキサンであり、特に一般的に用いられるチタン含有原料の一つはイソプロポキシドチタンであり、ここではこれらの双方が用いられた。窒素のような不活性バブラーガス20が原料14および26を泡立てて、原料蒸気およびキャリアガスを含む混合物を生成させた。窒素のような不活性キャリアガス22は、ケイ素原料蒸気とバブラーガスとの混合物とを混合し、かつチタン原料蒸気とバブラーガスとの混合物とを混合して、飽和を防止しかつ原料14,26を分配装置24およびマニホ−ルド28を通じて炉16内の転化サイト10に送る。ケイ素原料および蒸気ならびにチタン原料および蒸気はマニホ−ルド28内で混合されて、蒸気質のチタン含有シリカガラス先駆物質混合物を形成し、この混合物は、炉16の上部38に取り付けられたバーナ36に導管34を通じて供給された。バーナ36はバーナ火炎37を生成する。転化サイト10のバーナ火炎37は、水素および/または酸素と混合されたメタンなどの、燃料と酸素との混合物から形成され、約1600℃を超える温度で原料を燃焼させ、酸化させ、そしてスート11に転化する。またバーナ火炎37は、スート11を加熱して固結させてガラスにする。導管34および導管34内に容れられる原料の温度は、火炎37よりも以前に反応を生じる可能性を最少にするように制御されかつ監視される。
原料は転化サイト10に供給され、ここでチタニア含有シリカスート微粒子11に転化された。スート11は、耐火性の炉16内に配置された一般にジルコン製の回転式収集カップ12内に、かつ高温のチタニア・シリカガラス体18の上部ガラス表面上に堆積された。チタニア含有シリカブールの製造に用いられるω,ωおよびωはそれぞれ1.71018rpm,3.63418rpm および4,162rpm であった。スート微粒子11はチタニア含有高純度シリカガラス体に固結された。
上記カップ12は、ガラス体18が約0.2〜2メートルの間の直径Dと約2〜20cmの間の高さHを有する円筒体となるように、直径が約0.2〜2メートルの間の円形を有する。転化サイト10に供給されてスート11そしてガラス18に合体される、チタン原料またはケイ素含有原料の量を変えることによって、溶融シリカガラス中のチタニアの重量%を調整することができる。チタニアおよび/またはシリカの量は、EUVまたは軟X線反射リソグラフィーまたはミラー素子の動作温度において約ゼロの熱膨張係数をガラス体が備えるように調整される。
粉末はカップ内に集められてガラスブールに固結される。1600℃を超える温度、例えば1645〜1655℃の範囲の温度が上記粉末をガラスブールに固結するのに十分な温度である。所望のサイズのシリカ・チタニアガラスブールが形成された後、このガラスブールは本発明によるさらなる処理のために炉から取り外された。直径約150cm(約60インチ)、厚さ(作成されたガラスの垂直厚さ)約15cm(約6インチ)のブールの形成および固結は、一般に160〜200時間に亘って行なわれる。また、直径約10〜15cm(約4〜6インチ)、厚さ(作成されたガラスの垂直厚さ)約2.5〜5cm(約1〜2インチ)の小型のブールを調製することもでき、これは16〜48時間の短い時間で固結させることができる。ブールが炉から取り外されたとき、本発明による熱処理のためにブール全体が炉に戻され、あるいはブールのセグメントが芯抜きされる。さらに別の実施例においては、1600℃を超える温度でブールが形成された後、この固結されたブールが、炉から取り外されることなく1600〜1700℃の温度でさらに72〜288時間の間保持されることによって本発明による熱処理がなされる。この追加の熱処理および冷却の後、ブールは光学素子に処理される。
本実施例においては、ブールのほぼ厚さ全体から多数の直径25.4cm(10インチ)のシリカ・チタニアコアが採取された。本発明による熱処理のために、シリカ・チタニアコアはジルコン(珪酸ジルコニウム)製容器内に配置され、このコアはそのエッジと底面が砕いたジルコンに囲まれてガラスの動きが規制された。次に容器に入ったコアが回転炉内に配置され、1600〜1700℃の範囲の温度で72〜288時間の範囲の間加熱された。このガラスのサンプルは複数のCHオキシバーナを用いて加熱され、熱処理中のガラス表面の温度が記録された。ガラスが上述の温度および時間の範囲で保持された後、このガラスは約1000℃まで1時間当り50℃の割合で炉内で冷却され、次いで、炉の自然冷却速度で周囲温度まで冷却された。最終的な冷却後、このサンプルは1000℃未満の温度で70〜130時間の範囲の間アニールされ、冷却およびアニールの後のPEO機器を用いたCTE(熱膨張係数)の測定では、0.635cm(四分の一インチ)の増大を記録した。このデータは、バルクのCTE値が本発明による熱処理に影響されず、かつ実際には本発明による熱処理によって低下していることを示している。
図2Aおよび図2Bは干渉計走査である。図2Aは中間空間周波数表面粗さにおける脈理の影響を示す。ブール全体に亘る脈理のうねりにより、ブール表面と完全に平行な脈理を伴った部分を抜き出すことは不可能である。したがって、脈理の一部は常に表面を「遮断」している。図2Bは脈理を横切る干渉計走査画像で、表面の山と谷の変化を示している。脈理の改善度は光のレターデーション(optical retardation)における改善度の解析によって測定された。
光が或る透明な物質に入射するときに、異なる速度でその物質を通って(より速い通路とより遅い通路)伝播する二つのビームに光が分かれるように、二つの異なる屈折率を有する物質には方向の異なる二つの成分(常光線nおよび異常光線n)への光の分離が見られる。複屈折は式Δn=n−nで定義され、ここでnおよびnをそれぞれ異方性の軸に垂直および平行な偏光に関する屈折率である。したがって、ビームがその物質から出射するとき、より速いビームの出射とより遅いビームの出射との間に差がある。この差がレターデーションであり、通常ナノメートルで測定される。光のレターデーションは光が通過する物質の厚さで倍率がかけられる。もし第1の物質サンプルの厚さが同一物質の第2のサンプルの厚さの2倍であるとすると、厚さが2倍のサンプルは他のサンプルの2倍のレターデーションを示す。光のレターデーションは厚さで倍率がかけられるので、サンプルの厚さ(センチメートル[cm])で割ることによって標準化されることが多い。複屈折とレターデーションとの間の差は複屈折が標準化されていることにある。もし、すべてのサンプルが期せずして同じ厚さ、例えば1cmであるならば、単位は異なるが複屈折はレターデーションに等しくなる。
図3Aおよび図3Bは、本発明による熱処理の結果としての脈理の低減による光のレターデーションの変化を示す。図3Aは、ブールの位置(x軸)に対するy軸上の脈理(“S”)による光のレターデーションの熱処理前の大きさを示す。図3Bは、ブールの位置(x軸)に対するy軸上の脈理Sによる光のレターデーションの熱処理後の大きさを示す。図3Bにおいてグラフの両端における光のレターデーションの高いレベルは脈理ではなく、サンプル調製によるものである。図3Aと図3Bとを比較すると、図3Bのサンプルにおいては光のレターデーションが少ないことを明らかに示しており、このことは本発明による熱処理を用いると脈理が低減されることを明示している。
図4は、超低膨張率ガラスブールの頂部近傍の小部分からの脈理の低減を示す図である。このデータおよび図3Aおよび図3Bに示されたデータは、本発明による熱処理がブール中の脈理の大きさを500%以上も減らすことができることを示している。また、本発明が実施されると、より高い周波数の脈理の大部分が除去されることも表している。これは図3Aおよび図3Bに示された垂直軸の目盛で10を超えるレターデーション値を有する脈理である。
図5は、本発明による熱処理の前後でのブール内の高さに対するCTE(熱膨張係数)の変化を示す。このデータは、本発明による熱処理によってバルクCTEが影響されないことを示している。
ブールの調製時に、シリカ・チタニアブールの製造に用いられたω,ωおよびωの値が、米国特許出願公開第2004/0027555号明細書に教示されたものよりもそれぞれ5rpm だけ高く、かつ熱処理時のω,ωおよびωの値が、それぞれ1.71018rpm,3.63418rpm および4,162rpm であることを除いては、実施例1と同様にガラスブールが調製される。得られたブールは1600℃を超える温度で選ばれた時間の間熱処理される。ブールは1600〜1700℃の範囲の温度で72〜160時間の範囲の間加熱されるのが好ましい。この方法のさらなる実施例においてシリカ・チタニアブールの製造に用いられるω,ωおよびωに関する値は、脈理を減らすための本発明によるブールの熱処理時よりもそれぞれ5rpm だけ高い。
本発明により脈理の低減を実行する場合には、ガラスブール中の脈理を減らすための費用効果的な方法は、ブール全体をここに記載された温度と時間において保持することである。これは、ブールが炉から取り外されるのに先立つブール形成工程の最後に行なうことができる。本発明の方法を用いると、ブールの領域全体に亘って、特にブールの上半分において著しい脈理低減が得られる。得られた材料は次に、例えば所望の光学ブランクを形成するのに適したサイズのセグメントにブールが芯抜きおよび/または切断され、続いて従来公知の方法を用いた研削および研磨ステップを含むさらなる処理ステップによって光学ブランクに処理されて、遠紫外線用に用いられる光学素子に関する厳しい要求を満たす光学素子が生成する。天体望遠鏡のミラーのような極めて大きい素子については、ブール全体が所望の大型素子に処理される。
本発明について詳細に説明したが、本発明の方法を用いることにより、超低膨張率(ULE)ガラス中の脈理を低減することが可能なことが明らかに理解される。ガラスは従来公知のいずれの方法によっていかなる形状にも調製することができ、ガラスの調製後、このガラスは炉内で1600℃を超える温度で72〜288時間の範囲の間熱処理され、かつ周囲温度まで冷却されて、脈理が低減されたシリカ・チタニアガラスを生成する。他の形状も可能ではあるが、ガラスを調製するための最も一般的な形状は円形で厚さを有するブールである。
以上、限られた実施例について説明したが、当業者がここに説明されている本発明の範囲から離れることなしに他の実施例を工夫することが可能なことは言うまでもない。例えば、本明細書には直径と厚さを備えたガラスブール、またはブールから取ったコアの熱処理について説明されているが、厚さを備えたいかなる形状のガラスも本発明により熱処理を施すことが可能である。例えばガラスは、長方形、正方形、八角形、六角形、偏球およびその他のいかなる従来公知の形状であってもよい。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
シリカ・チタニア超低膨張率ガラスの製造に用いられる従来の装置の図 本発明による熱処理前の中間空間周波数表面粗さに対する脈理の影響を示す干渉データを示す画像 本発明による熱処理後の中間空間周波数表面粗さに対する脈理の影響を示す干渉データを示す画像 本発明による熱処理前のブール上の位置(x軸)に対するy軸上の脈理による複屈折の大きさを示すグラフ 本発明による熱処理後のブール上の位置(x軸)に対するy軸上の脈理による複屈折の大きさを示すグラフ 本発明による熱処理の前後におけるブールの頂部近傍の脈理低減度合いを示すグラフ 本発明による熱処理の前後におけるブールの位置に対するCTEの変化を示すグラフ 本発明が実施可能な温度と時間の範囲を示すグラフ
符号の説明
10 転化サイト
11 スート
12 収集カップ
14,26 先駆物質(原料)
16 炉
18 シリカ・チタニアガラス体
20 不活性バブラーガス
22 不活性キャリアガス
36 バーナ

Claims (12)

  1. シリカ・チタニアガラス中の脈理を減少させる方法であって、
    或る形状を有するシリカ・チタニアガラスを調製し、
    該ガラスを炉内で1600℃を超える温度で72〜288時間の範囲の間加熱し、
    前記ガラスを周囲温度まで冷却して、脈理が低減されたシリカ・チタニアガラスを生成させる諸ステップを含むことを特徴とするシリカ・チタニアガラス中の脈理を低減する方法。
  2. 前記時間が72〜160時間の範囲であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 熱処理に先立って前記ガラスを容器内に入れ、かつ該ガラスと該容器との間にパッキング材料を詰めることによって、前記ガラスが流動しないようにして前記熱処理を実施することを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 前記シリカ・チタニアガラスを、シロキサンならびにケイ素およびチタンのアルコキシドおよび四塩化物からなる群から選ばれたシリカおよびチタニアの先駆物質を用いた火炎加水分解により調製することを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 前記シリカ・チタニアガラスの調製ステップが、固結されたガラスブールを炉内で回転する容器内で調製する工程を含み、
    前記熱処理ステップが、前記固結されたブールを1600〜1700℃の範囲の温度で72〜160時間の範囲の間処理する工程を含み、
    前記冷却ステップが、前記固結されたブールを1600〜1700℃の範囲の温度から1時間当り50℃の割合で1000℃まで冷却し、次いで前記炉の自然冷却速度で周囲温度まで冷却して、これにより脈理が低減されたシリカ・チタニアガラスブールを生成させる工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 前記先駆物質が、イソプロポキシドチタンおよびオクタメチルシクロテトラシロキサンであることを特徴とする請求項5記載の方法。
  7. チタニア含有シリカブールの製造および1600〜1700℃における熱処理に用いられるω,ωおよびωに関する値それぞれ1.71018rpm,3.63418rpm および4,162rpm であることを特徴とする請求項5記載の方法。
  8. チタニア含有シリカブールの製造に用いられるω,ωおよびωに関する値それぞれ
    5rpm 大きく、熱処理中の前記ω,ωおよびωに関する値それぞれ1.71018rpm,3.63418rpm および4,162rpm であることを特徴とする請求項5記載の方法。
  9. 前記ブールまたはそのセグメントを選択された光学素子の形状に処理し、
    該形状のものを切断、研削および研磨して、遠紫外線リソグラフィーに適した脈理が低減された光学素子する諸ステップをさらに含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
  10. 前記熱処理ステップが、前記ガラスを炉内で1600℃を超える温度で72〜160時間の範囲の間加熱する工程を含み、
    必要に応じて前記ガラスをシリカ・チタニアガラス製光学ブランクおよび/または素子に処理するステップをさらに含み、前記ブランクおよび/または素子が5〜10重量%のチタニアを含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
  11. 前記熱処理ステップが、前記ガラスを1600〜1700℃の範囲の温度で72〜96時間の範囲の間加熱する工程を含み、
    前記冷却ステップが、前記ガラスを1600〜1700℃の範囲の温度から1時間当り50℃の割合で1000℃まで冷却する工程を含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
  12. 前記ガラスを1000℃から前記炉の自然冷却速度で周囲温度まで冷却するステップをさらに含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
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