JP2007185572A - 粉体及びその製造方法、成膜方法、並びに、構造物 - Google Patents
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Abstract
【課題】粒径が小さい粒子を容易に取り除いて粉体粒子の粒径をそろえることができる粉体の製造方法及びその粉体を用いた成膜方法を提供する。
【解決手段】この製造方法は、一群の粉体粒子を原料粉として準備する工程(a)と、一群の粉体粒子にエネルギーを与えることにより、粉体粒子間の合体を起こさせる工程(b)とを具備し、得られた粉体を用いて成膜するもので、粉体の製造に用いられる粉体製造室11に配置された容器18中の粒径分布を有する粉体粒子にマグネトロン15からマイクロ波を発生させ上記粒子に照射することにより小粒子が大粒子に取り込まれ、微粉が取り除かれることにより粒径が制御された粉体が得られ、この粉体を用いてエアロゾルデポジション法により緻密で強固な安定した高品質の膜を形成する。
【選択図】図1
【解決手段】この製造方法は、一群の粉体粒子を原料粉として準備する工程(a)と、一群の粉体粒子にエネルギーを与えることにより、粉体粒子間の合体を起こさせる工程(b)とを具備し、得られた粉体を用いて成膜するもので、粉体の製造に用いられる粉体製造室11に配置された容器18中の粒径分布を有する粉体粒子にマグネトロン15からマイクロ波を発生させ上記粒子に照射することにより小粒子が大粒子に取り込まれ、微粉が取り除かれることにより粒径が制御された粉体が得られ、この粉体を用いてエアロゾルデポジション法により緻密で強固な安定した高品質の膜を形成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、粉体及びその製造方法に関する。さらに、本発明は、その粉体を基板に向けて噴射することにより、基板上に粉体を堆積させるエアロゾルデポジション法を用いた成膜方法、並びに、そのような成膜方法を用いることによって作製された構造物に関する。
近年、微小電気機械システム(MEMS:micro electrical mechanical system)の分野においては、誘電体、圧電体、磁性体、焦電体、半導体のように、電圧を印加することにより所定の機能を発現する電子セラミックス等の機能性材料を含む素子を、成膜技術を用いて製造する研究が盛んに進められている。
例えば、インクジェットプリンタにおいて高精細且つ高画質な印字を可能とするためには、インクジェットヘッドのインクノズルを微細化すると共に高集積化する必要がある。そのため、各インクノズルを駆動する圧電アクチュエータについても、同様に、微細化及び高集積化することが求められる。そのような場合に、バルク材よりも薄い層を形成でき、且つ、微細なパターン形成が可能な成膜技術は有利である。
最近では、成膜技術の1つとして、セラミックスや金属等の成膜技術として知られるエアロゾルデポジション法(以下において、「AD法」という)が注目されている。AD法とは、原料の粉体(原料粉)を含むエアロゾルを生成し、それをノズルから基板に向けて噴射することにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法である。ここで、エアロゾルとは、気体中に浮遊している固体や液体の微粒子のことをいう。
AD法においては、高速のガス流により加速された原料粉が、基板や先に形成された堆積物等の下層に衝突して食い込み、衝突の際に原料粉が破砕することにより新たに生成された破砕面が下層に付着する。このような成膜メカニズムはメカノケミカル反応と呼ばれている。このAD法によれば、不純物を含まない、緻密で強固な厚膜を形成することができる。そのため、例えば、圧電体をAD法によって作製することにより、圧電アクチュエータ等の機器の性能を向上させることが期待されている。なお、AD法は、噴射堆積法又はガスデポジション法とも呼ばれている。
ところで、原料の粉体を基板に向けて噴射することにより原料を基板上に堆積させるAD法においては、粉体の平均粒径によって、作製された構造物の性質が大きく異なることから、構造物形成の条件として粉体の平均粒径が重要であることが知られている(特開2001-152360、特開平11-21677)。そこで、粉体の分級に関する様々な試みが行われている。
関連する技術として、特許文献1には、自動連続操作によりあらゆる粉粒体を分級可能な装置に用いる篩において、粉粒体の残査粉等のすみ残りや目詰まりを解消することにより、分級率の安定した精密分級を行うことのできる篩が開示されている。特許文献1によれば、2つの側板の間に等間隔に配置された複数のシャフトによって構成される環状ドラムにおいて、これらのシャフトに設けられた加工溝部にワイヤーを引っかけることにより、環状ドラムの外周部にワイヤーを巻着して篩目が構成される。
特許文献2には、トナー等の各種粉体を粗粉と微粉とに遠心分離する気流分級機において、分級点の調整操作を容易に行うことが開示されている。この気流分級機は、一定の吸引力が付与される分級室の外周において周方向に多数のルーバーを等間隔に設け、各ルーバーの開度調整によって分級室内に吸引される2次エアーの流速を変化させて、分級室内で遠心分離される粉体の分級点を調整するようにしたものであり、ルーバーの1つに圧力測定孔を形成して圧力測定器を設けたことを特徴としている。
特許文献3には、粉体を精密に分級するために、被分級粉体を、第1の平均粒径を有する第1の粉体と、この第1の平均粒径よりも小さい第2の平均粒径を有する第2の粉体とに分級する湿式粉体分級装置が開示されている。この湿式粉体分級装置は、垂直方向に伸長する筒状の分級管と、供給口から分級管内に液体と粉体を供給する供給管と、供給口よりも上方に配置された排出管とから成っている。第1の粉体は、分級管の内部を下降し、第2の粉体は、排出管を通じて液体と共に排出される。
特許文献4には、粉体を静電気帯電させて分級する方法及び装置が開示されている。この分級方法においては、放出器から放出される粉体の速度に対して垂直な方向に電場を印加することにより、小粒子は電場に引き付けられ、大粒子は運動エネルギーが大きいので前進し続ける。
上記文献1〜4に開示されているように、原料粉を粗粉と微粉とに分級したり、平均粒径を制御することについては検討されているが、粒径が1μmより小さい粒子(例えば、粒径0.1μm以下の微粉)を取り除くことは原理的に非常に困難で、また、その要求もなかった。さらに、所望の粒径の粉体を得るためには、それ以外の粉体を捨てることになってしまう。
なお、溶媒を使用する場合には、沈降法等によれば粒径1μm以下の粉体の分級も時間や多数の工程を経ることで可能であるが、分散剤等の有機溶媒のコンタミネーションは避けられない、もしくは、コストがかかる等の問題がある。
AD法において、粉体を基板に向けて噴射する際に、粒径0.1μm以下の微粉は質量が小さいので高速のガス流中においても加速され難く、十分な運動エネルギーを得ることができない。したがって、噴射された微粉が基板に衝突しても、その運動エネルギーは小さいので、メカノケミカル反応には至らない。その結果、基板上には原料粉が圧粉体として堆積することになり、圧電性能が低下して実用性がなくなると共に、AD法の特徴である緻密で強固な膜を形成することができなくなってしまう。
特開平5-192643号公報(第1−2頁、図1)
実開平6-52970号公報(第1−2、4頁、図1)
特開平11-156229号公報(第1頁、図1)
特表2002-521151号公報(第1頁、図2)
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、粒径が小さい粒子を容易に取り除いて粉体粒子の粒径をそろえることができる粉体の製造方法、及び、そのような製造方法によって製造された粉体を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、その粉体を用いる成膜方法、並びに、それによって作製された構造物を提供することを第2の目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る粉体の製造方法は、一群の粉体粒子を原料粉として準備する工程(a)と、一群の粉体粒子にエネルギーを与えることにより、粉体粒子間の合体を起こさせる工程(b)とを具備する。
例えば、粒径の異なる粉体粒子間の合体によって、粒径が0.1μm以下の微粉を取り除くことができる。ここで、「粉体粒子間の合体」とは、粉体を加熱した場合に、粉体粒子間に接合が起こり、ある程度の強さと特性をもつ体系になる現象をいう。また、「微粉を取り除く」とは、エネルギーを与えることによって粉体粒子の粒成長が起こり、体積に対して表面積の大きい粉体粒子、いわゆる微粉が大粒子に取り込まれ、又は、微粉同士が結合することにより、微粉の含有量が減少することをいう。
また、本発明の1つの観点に係る成膜方法は、エアロゾルデポジション法により基板上に膜を形成する方法であって、一群の粉体粒子にエネルギーを与えることにより、粉体粒子間の合体を起こさせる工程(a)と、工程(a)において処理された粉体粒子を原料粉として用い、該原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(b)と、工程(b)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させる工程(c)とを具備する。
本発明によれば、エネルギーを与えることによって構成粒子間の合体を起こさせることにより微粉を取り除くので、従来の分級方法では困難であった、粒径0.1μm以下の微粉の除去、粉体の平均粒径の制御、及び、吸着ガス成分・有機物・各種塩類の除去を容易に行うことが可能となる。
また、粒径0.1μm以下の微粉の除去により、基板上に原料粉が圧粉体として堆積するということがなくなるので、AD法により緻密で強固な膜質を有し、且つ、安定した高品質な膜を形成することが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る粉体の製造方法において用いられる粉体製造装置の構成を示す模式図である。本実施形態では、粉体を製造するための装置としてマイクロ波陶芸窯を用いる。このマイクロ波陶芸窯は、粉体製造室11と、等温障壁12と、断熱壁13と、温度センサ14と、マグネトロン15と、モータ16と、回転羽17とを含んでいる。
図1は、本発明の一実施形態に係る粉体の製造方法において用いられる粉体製造装置の構成を示す模式図である。本実施形態では、粉体を製造するための装置としてマイクロ波陶芸窯を用いる。このマイクロ波陶芸窯は、粉体製造室11と、等温障壁12と、断熱壁13と、温度センサ14と、マグネトロン15と、モータ16と、回転羽17とを含んでいる。
ここで、マイクロ波とは、1m〜1mm程度の波長を有する電磁波のことであり、UHF波(デシメータ波)、SHF波(センチ波)、EHF波(ミリ波)、サブミリ波が該当する。なお、マイクロ波陶芸窯のほかに、ミリ波、遠赤外線、赤外線、可視光線、紫外光線、真空紫外光線、極端紫外光線、軟エックス線、硬エックス線、電子線の内のいずれかを粉体に照射できる装置を用いるようにしても良い。即ち、エネルギーを粉体に供給できる装置であれば、いかなる装置であっても本発明に用いることができる。
粉体製造室11においては、ある粒径分布を有する一群の粉体粒子が、容器18の中に配置されている。等温障壁12は、加熱対象(本実施形態においては、粉体粒子)を均一に加熱するために、加熱対象と同程度のマイクロ波吸収性を有する材料によって形成された炉材である。また、回転羽17は、マイクロ波を反射する材料(例えば、金属)によって形成されており、モータ16によって駆動されて回転する。
マグネトロン15からマイクロ波を発生させ、回転羽17をモータ16によって回転させることにより、回転羽17によって反射されたマイクロ波が、容器18の中に配置された粉体粒子に照射されて、粉体の粒成長を起こさせる。その際に、マイクロ波の反射方向を常に変化させながらマイクロ波を照射するので、照射領域の偏りを防ぐことができる。
このように粉体粒子にエネルギーを与えることにより、体積に対して表面積の大きい小粒子(例えば、粒径が0.1μm以下の微粉)が、大粒子に取り込まれて取り除かれる。同様に、大粒子同士や小粒子同士も合体するが、これによっても微粉が取り除かれる。
粉体粒子に与えられるエネルギーとしては、粉体粒子の温度(マイクロ波処理温度)を300℃以上、好ましくは600℃以上、より好ましくは700℃以上とすることができるエネルギーが望ましい。300℃相当以上のエネルギーを与えることにより、粉体粒子中の水分を取り除くことができ、粉体粒子を乾燥させることができる。また、600℃相当以上のエネルギーを与えることにより、熱処理によって結晶を成長させるために用いられる助剤の反応を起こさせることができる。さらに、700℃相当以上のエネルギーを与えることにより、粒成長を促進させることができる。
また、粉体粒子を直接加熱するのと同時に等温障壁12を加熱することにより、粉体粒子と等温障壁12との温度差がなくなり、高速昇温が実現できる。つまり、粉体粒子を含む室内の温度を均一にすることができるので、温度勾配が生じず、室内部の温度差による粉体粒子のゆがみを防ぐことができる。
このようにして、エネルギー照射により粒径0.1μm以下の微粉を取り除き、微粉の含有量を低減することによって、粒径が制御された粉体を用いてAD法により成膜を行うことができるようになる。その結果、緻密で強固な膜質を有し、かつ、安定した高品質な膜を形成することが可能となる。
次に、本発明の一実施形態に係る成膜方法について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る成膜方法において用いられる成膜装置の構成を示す模式図である。図2に示す成膜装置においては、エアロゾルデポジション(aerosol deposition:AD)法が用いられる。この成膜装置は、エアロゾル生成室1と、エアロゾル生成室1に配置されている巻き上げガスノズル2、圧調整ガスノズル3、及び、エアロゾル搬送管4と、成膜チャンバ5と、排気ポンプ6と、噴射ノズル7と、基板ホルダ8とを含んでいる。
図2は、本発明の一実施形態に係る成膜方法において用いられる成膜装置の構成を示す模式図である。図2に示す成膜装置においては、エアロゾルデポジション(aerosol deposition:AD)法が用いられる。この成膜装置は、エアロゾル生成室1と、エアロゾル生成室1に配置されている巻き上げガスノズル2、圧調整ガスノズル3、及び、エアロゾル搬送管4と、成膜チャンバ5と、排気ポンプ6と、噴射ノズル7と、基板ホルダ8とを含んでいる。
エアロゾル生成室1は、原料粉が配置される容器である。エアロゾル生成室1には、エアロゾル生成室1に振動等を与えることにより、その内部に配置された原料粉を攪拌するための容器駆動部1aが設けられている。
エアロゾル生成室1に配置されている巻き上げガスノズル2には、キャリアガスを供給するためのガスボンベが接続されている。巻き上げガスノズル2は、ガスボンベから供給されたガスをエアロゾル生成室1内に噴射することにより、サイクロン流を生成する。それにより、エアロゾル生成室1内に配置された原料粉が巻き上げられて分散し、エアロゾルが生成される。
あるいは、粉体を収納する容器又は収納部から所定量の粉体を取り出す機構を設け、取り出された粉体を用いてエアロゾルを生成する構成としても良い。例えば、粉体を収納する容器から、回転駆動される粉末供給盤に粉体を連続的に供給し、回転駆動された先の地点においてエアロゾルを生成する構成とすることができる。その場合に、例えば、粉末供給盤に形成された所定の大きさの溝に粉体を供給し、回転駆動された先の地点においてその溝にエアロゾル生成ガスを供給して粉体を分散することにより、一定濃度のエアロゾルを生成することができる。このような構成とすれば、エアロゾル化される粉体量を安定して供給することができ、また、回転駆動させる粉末供給盤の速度を調整することにより、粉体の供給量を調節することができる。
あるいは、粉体を収納する容器内で粉体を攪拌しつつ容器内にガスを供給し、その容器からガスに混合された所定量の粉体を取り出し、取り出された粉体についてエアロゾルを生成する構成としても良い。
一方、キャリアガスが流れる流路に粉体を連続的に供給することにより、粉体をガス中に分散させてエアロゾルを生成するようにしても良い。
なお、エアロゾルの生成方法は、上記の方法に限定されるものではなく、粉体がガス中に分散された状態を作り出すことができれば、様々な方法を用いることができる。
一方、キャリアガスが流れる流路に粉体を連続的に供給することにより、粉体をガス中に分散させてエアロゾルを生成するようにしても良い。
なお、エアロゾルの生成方法は、上記の方法に限定されるものではなく、粉体がガス中に分散された状態を作り出すことができれば、様々な方法を用いることができる。
再び図2を参照すると、圧調整ガスノズル3には、エアロゾル生成室1内のガス圧を調整するための圧調整ガスを供給するガスボンベが接続されている。圧調整ガスの流量を調節してエアロゾル生成室1内の圧力を制御することにより、エアロゾル生成室1内に発生する気流(巻き上げガス)の速度が制御される。キャリアガス及び圧調整ガスとしては、窒素(N2)、酸素(O2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は、乾燥空気等が用いられる。
エアロゾル生成室1に配置されているエアロゾル搬送管4は、エアロゾル生成室1内において巻き上げられた原料粉を含むエアロゾルを、成膜チャンバ5に配置されているノズル7に搬送する。
成膜チャンバ5の内部は、排気ポンプ6によって排気されており、それによって所定の真空度に保たれている。噴射ノズル7は、所定の形状及び大きさの開口を有しており、エアロゾル生成室1からエアロゾル搬送管4を介して供給されたエアロゾルを、開口から基板10に向けて高速で噴射する。
基板ホルダ8は、基板10を保持している。また、基板ホルダ8には、基板ホルダ8を3次元的に移動させるための基板ホルダ駆動部8aが設けられている。これにより、噴射ノズル7と基板10との3次元的な相対位置及び相対速度が制御される。この相対速度を制御することにより、1往復あたりに形成される膜の厚さを制御することができる。
このような成膜装置において、原料粉をエアロゾル生成室1に配置すると共に、基板10を基板ホルダ8にセットして所定の成膜温度に保つ。そして、成膜装置を駆動して噴射ノズル7からエアロゾルを噴射しながら、基板を所定の速度で移動させる。それにより、エアロゾル(原料粉)が、基板10や基板10上に先に堆積した構造物に衝突し、さらに、衝突の際に原料粉が変形又は破砕することによって生じた活性な新生面において粒子同士が結合することにより、原料粉が基板上に堆積する。その結果、基板10上に膜が形成される。そのようにして形成された膜は、新生面における粒子の結合(メカノケミカル反応)により極めて緻密な構造を有している。
図2に示す成膜装置に配置される原料粉の材料としては、AD法による成膜が可能であれば、金属又は非金属の酸化物、炭化物、又は、窒化物等、いかなる材料であっても用いることができる。例えば、酸化物セラミックス等の酸化物や、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の鉛(Pb)を含有する酸化物が挙げられる。また、PZTを作製する場合には、その組成にホウ素(B)、カドミウム(Cd)、ニオブ(Nb)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、ルテチウム(Lu)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)、鉄(Fe)、タングステン(W)、及び、ランタン(La)の内の1つ以上が添加されているものを用いても良い。
また、機能性材料として、次のような材料も用いることができる。PZT以外の圧電材料として、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3や、それらの複合化合物や、それらとPZTとの複合化合物が挙げられる。また、磁性材料として用いられるFe2O3、(Mn,Zn)Fe2O4等のセラミックスや、誘電材料として用いられるTa2O5、Nb2O5、PbTiO3、(Ca,Ba,Sr)TiO3、(Li,K)(Nb,Ta)O3、SrBi2(Ta,Nb)2O9、Bi4Ti3O12等のセラミックスや、半導性材料として用いられるZrO2、SnO2、ZnO、La(Cr,Mn)O3、TiO2等のセラミックスや、導電性材料として用いられるIrO2、LaNiO3、(Ca,Sr,Ba)RuO3、In-SnO2等のセラミックスや、光学材料として用いられるSiO2、Y3Al5O12、Y3Fe5O12、(Pb,La)(Zr,Ti)O3等のセラミックスや、超伝導材料として用いられるYBa2Cu3O7、Bi2Sr2Ca2Cu3O10、La2SrCuO4等のセラミックスや、熱電変換材料として用いられるNa(Co,Cu)2O4、(Bi,Pb)Sr3Co2O9等のセラミックスが挙げられる。さらに、光電変換素子や半導体素子等において用いられるアモルファスシリコンや化合物半導体、耐熱材料等として用いられるMgO、SiC、Si3N4や高強度材料等として用いられるAl2O3、TiC、B4C、BNを含む一般的なセラミックス、マイクロ磁気素子における機能性膜として用いられるPdPtMnやCoPtCr等の合金も挙げられる。
なお、原料粉の適切な粒径の範囲は、原料粉の種類や、エアロゾルの流速等の成膜条件によって異なるが、光散乱法により測定される体積中心粒子径(中心粒径)が0.1μm以上2.2μm以下であるものを用いることが望ましい。
次に、本発明の一実施形態に係る粉体の製造方法及び製膜方法の実施例について説明する。
原料としては、フルウチ化学株式会社製のPNN−PZT粉体(50PNN−15PZ-35PT)を用意した。その際、予め分級処理は施していない。PNN−PZT粉体を粒成長させるために、Panasonic製マイクロ波陶芸窯(2.45GHz)を用いて、PNN−PZT粉体にマイクロ波を照射した。原理的に、PNN−PZT粉体を内部から加熱できる方式が望ましいからである。なお、マイクロ波による加熱には、上記の他に、富士電波工業製のFMW−3−28や、美濃窯業製のMW−Masterを用いることができる。
原料としては、フルウチ化学株式会社製のPNN−PZT粉体(50PNN−15PZ-35PT)を用意した。その際、予め分級処理は施していない。PNN−PZT粉体を粒成長させるために、Panasonic製マイクロ波陶芸窯(2.45GHz)を用いて、PNN−PZT粉体にマイクロ波を照射した。原理的に、PNN−PZT粉体を内部から加熱できる方式が望ましいからである。なお、マイクロ波による加熱には、上記の他に、富士電波工業製のFMW−3−28や、美濃窯業製のMW−Masterを用いることができる。
冶具は、マイクロ波吸収効率の高い専用の容器を用いて、PNN−PZT粉体の内部温度と外部温度の温度差をなくし、均一に加熱するように工夫してある。例えば、マグネシア、アルミナ、ムライト、サイアロン、ジルコニア、イットリア等の酸化物や、炭化珪素等の炭化物や、窒化珪素等の窒化物の専用の容器を用いることができる。ここで、マイクロ波処理温度を、700℃、850℃、1000℃と条件設定し、保持時間は10分間とした。
次に、開口径が100μmの篩にかけ、粗大粒子を取り除いた。その後、日機装株式会社製の粒度分布測定機(MICROTRAC−MT−3000)を用いて、粒度分布測定を行った。この粒度分布測定機は、測定原理として、マイクロトラック法(レーザ回折・散乱法、又は、光散乱法とも呼ばれる)を利用している。マイクロトラック法とは、粒子に光を照射した場合に、散乱される光量及びパターンが粒径に応じて異なるという現象を利用した粒度分布測定方法であり、乾式又は湿式で利用することができるという特徴を有している。本実施形態においては、分散媒体として、0.1%のヘキサメタリン酸水溶液を用いた湿式により測定を行った。
図3は、このときの実験結果に基づいて得られたマイクロ波処理温度と微粉および粗大粉の割合との関係を示す図である。もともとの粉体粒子の受け入れ時においては、0.1μm以下の微粉の量が粉体粒子全体に対して20%であったのに対し、マイクロ波処理温度を700℃、850℃、1000℃と上げるにつれて、微粉の割合が11%、3%、0%と減少していった。
基本的には、マイクロ波照射の他に、ミリ波照射、遠赤外線照射、赤外線照射、可視光線照射、紫外光線照射、真空紫外光線照射、極端紫外光線照射、軟エックス線照射、硬エックス線照射、電子線照射等によって粉体粒子にエネルギーを与えても、上記と同様の効果が得られる。あるいは、加熱処理によって粉体粒子に熱エネルギーを与えても、上記と同様の効果が得られる。
通常の加熱処理においては、マッフル炉等を用いることが多いが、その場合には、まず、ヒーターによって粉体外部の雰囲気が温められ、それから冶具が加熱され、最終的に粉体が過熱される構造となっており、粉体内部と外部との間で温度ムラが発生する可能性がある。また、同様の効果を得るための処理時間は、マイクロ波照射の場合、10分間であるのに対し、マッフル炉の場合、3時間必要である。
次に、マイクロ波処理温度を700℃、850℃、1000℃として製造した粉体を用いて、AD法により、基板上に膜厚15μmの膜を有する構造物を作製した。さらに、作製された膜のビッカース硬度を測定した。測定の際には、株式会社島津製作所製の微小硬度計DUH−W201を用い、印加される加重を10gとした。
図4は、このときの実験結果に基づいて得られたマイクロ波処理温度とビッカース硬度との関係を示す図である。マイクロ波処理温度を700℃、850℃、1000℃と上げるにつれて、ビッカース硬度は250、420、450と上昇していった。マイクロ波処理温度が850℃以上の場合には、ビッカース硬度の大幅な改善が見られた。
ただし、マイクロ波処理温度が1000℃以上の場合には、ビッカース硬度は向上しているが、粒径が1μmの粗大粉が発生しており、エアロゾル搬送管4に詰まりが生じるので、成膜が長時間続かない、または、粗大粉が膜をブラストすることにより膜表面にクレータが発生する等の弊害が見られた。
図5は、本実施例において製造された構造物を示す断面図である。この構造物は、基板10と、基板10上にAD法によって形成された膜20とを含んでいる。なお、膜20は、基板10上に直接形成されても良いし、電極用の導電膜等を介して間接的に形成されても良い。
AD法によって基板10上に膜を形成すると、原料粉が基板10や基板10上に先に堆積した膜に衝突して食い込み(「アンカーリング」と呼ばれる)、さらに、衝突の際に原料粉が変形又は破砕することによって生じた活性面において粒子同士が結合することにより、原料粉が基板10上に堆積する。
図5に示すように、そのようにして形成された膜20は、基板との境界面に形成されたアンカー部(アンカーリングによって形成された領域)において、基板10と強固に密着していると共に、活性面におけるメカノケミカル反応による粒子の結合によって、極めて緻密な構造を有している。
以上説明したように、本実施形態によれば、マイクロ波を粉体粒子に照射することによって粉体粒子を粒成長させ、粉体粒子間の合体により、0.1μm以下の微粉の含有量を低減することができた。さらに、そのようにして得られた粉体を用いてAD法により成膜を行うことによって、基板上に原料粉が圧粉体として堆積することがなくなるので、緻密で強固な構造物を得ることができた。図4に示すようなマイクロ波処理温度とビッカース硬度との関係は、膜厚が約1μm〜800μmの膜のいずれにおいても見られた。
本実施形態に係る成膜方法を用いて機能性膜を作製する場合には、緻密な構造を得られることから、製造歩留まりの向上に加えて、膜の性能が向上することも期待される。例えば、圧電体を作製する場合には、高い圧電性能が得られるようになる。そのため、そのような圧電体を圧電アクチュエータや、インクジェットヘッド用の圧電素子や、超音波探触子において超音波を送受信する振動子(超音波トランスデューサ)に適用することにより、圧電素子等の動作効率や耐久性を含む品質、及び、製造歩留まりを向上させることができる。従って、そのような圧電素子等を含む機器全体の性能を向上させることが可能となる。なお、圧電素子等を作製する場合には、予め電極が形成された基板上に、本実施形態に係る成膜方法を用いて圧電体を形成し、さらにその上に電極を形成すれば良い。
本発明は、粉体の製造方法、および、粉体を基板に向けて噴射することにより膜を形成する成膜方法において利用することが可能である。
1 エアロゾル生成室
1a 容器駆動部
2 巻き上げガスノズル
3 圧調整ガスノズル
4 エアロゾル搬送管
5 成膜チャンバ
6 排気ポンプ
7 噴射ノズル
8 基板ホルダ
8a 基板ホルダ駆動部
10 基板
11 粉体製造室
12 等温障壁
13 断熱壁
14 温度センサ
15 マグネトロン
16 モータ
17 回転羽
18 容器
20 膜
1a 容器駆動部
2 巻き上げガスノズル
3 圧調整ガスノズル
4 エアロゾル搬送管
5 成膜チャンバ
6 排気ポンプ
7 噴射ノズル
8 基板ホルダ
8a 基板ホルダ駆動部
10 基板
11 粉体製造室
12 等温障壁
13 断熱壁
14 温度センサ
15 マグネトロン
16 モータ
17 回転羽
18 容器
20 膜
Claims (17)
- 一群の粉体粒子を原料粉として準備する工程(a)と、
前記一群の粉体粒子にエネルギーを与えることにより、粉体粒子間の合体を起こさせる工程(b)と、
を具備する粉体の製造方法。 - 工程(b)が、粒径の異なる粉体粒子間の合体によって、粒径が0.1μm以下の微粉を取り除くことを含む、請求項1記載の粉体の製造方法。
- 工程(b)が、前記一群の粉体粒子全体に対する前記微粉の量の割合を11%以下にすることを含む、請求項2記載の粉体の製造方法。
- 工程(b)が、前記一群の粉体粒子に、電磁波によるエネルギーまたは熱エネルギーを与えることを含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の粉体の製造方法。
- 工程(b)が、前記一群の粉体粒子に、マイクロ波、ミリ波、遠赤外線、赤外線、可視光線、紫外光線、真空紫外光線、極端紫外光線、軟エックス線、硬エックス線、又は、電子線を照射することを含む、請求項4記載の粉体の製造方法。
- 工程(a)が、セラミックスの粉体粒子を原料粉として準備することを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の粉体の製造方法。
- 工程(a)が、金属又は非金属の酸化物、炭化物、又は、窒化物を含む粉体粒子を原料粉として準備することを含む、請求項6記載の粉体の製造方法。
- 工程(a)が、組成に鉛(Pb)を含有する酸化物を含む粉体粒子を原料粉として準備することを含む、請求項6記載の粉体の製造方法。
- 工程(a)が、組成に鉛(Pb)、チタン(Ti)、及び、ジルコニウム(Zr)を含有すると共に、ホウ素(B)、カドミウム(Cd)、ニオブ(Nb)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)、イットルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、ルテチウム(Lu)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)、鉄(Fe)、タングステン(W)、及び、ランタン(La)の内の少なくとも1つを含有する酸化物を含む粉体粒子を原料粉として準備することを含む、請求項8記載の粉体の製造方法。
- 工程(a)が、光散乱法によって求められる中心粒径が0.1μm以上2.2μm以下である粉体粒子を原料粉として準備することを含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の粉体の製造方法。
- 工程(b)が、前記粉体粒子が300℃以上となるように前記粉体粒子にエネルギーを与えることを含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の粉体の製造方法。
- 工程(b)が、前記粉体粒子が600℃以上となるように前記粉体粒子にエネルギーを与えることを含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の粉体の製造方法。
- 工程(b)が、前記粉体粒子が700℃以上となるように前記粉体粒子にエネルギーを与えることを含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の粉体の製造方法。
- 請求項1〜13のいずれか1項記載の粉体の製造方法を用いて形成された粉体。
- エアロゾルデポジション法により基板上に膜を形成する方法であって、
一群の粉体粒子にエネルギーを与えることにより、粉体粒子間の合体を起こさせる工程(a)と、
工程(a)において処理された粉体粒子を原料粉として用い、該原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(b)と、
工程(b)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させる工程(c)と、
を具備する成膜方法。 - 基板と、
請求項15記載の成膜方法を用いて前記基板上に直接又は間接的に形成された膜であって、ビッカース硬度が250以上の膜と、
を具備する構造物。 - 基板と、
請求項15記載の成膜方法を用いて前記基板上に直接又は間接的に形成された膜であって、厚さ1μm〜800μmの膜と、
を具備する構造物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006004124A JP2007185572A (ja) | 2006-01-11 | 2006-01-11 | 粉体及びその製造方法、成膜方法、並びに、構造物 |
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JP2006004124A JP2007185572A (ja) | 2006-01-11 | 2006-01-11 | 粉体及びその製造方法、成膜方法、並びに、構造物 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2007185572A true JP2007185572A (ja) | 2007-07-26 |
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ID=38341110
Family Applications (1)
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JP2006004124A Withdrawn JP2007185572A (ja) | 2006-01-11 | 2006-01-11 | 粉体及びその製造方法、成膜方法、並びに、構造物 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2007185572A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2009113469A1 (ja) * | 2008-03-13 | 2011-07-21 | 日本電気株式会社 | 光デバイス、その製造方法とそれを用いた光集積デバイス |
WO2011102251A1 (ja) * | 2010-02-18 | 2011-08-25 | 日本電気株式会社 | 光デバイス、光集積デバイス、および光デバイスの製造方法 |
-
2006
- 2006-01-11 JP JP2006004124A patent/JP2007185572A/ja not_active Withdrawn
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