JP4866088B2 - 成膜方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、焼成させることなく高密度の緻密質のセラミック構造物を得るために、セラミック超微粒子のエアロゾルを発生させ、分級あるいは解砕によりエアロゾル中の二次粒子を排除した後に、一次粒子あるいはそれに準じる粒径の粒子のみを基板上に吹き付ける複合構造物の作製方法が開示されている。その際に、連続的に安定した濃度のエアロゾルを発生させるために、振動する篩からセラミック超微粒子を落下させている。
さらに、特許文献5においては、原料粉の凝集を抑制するために、原料粉に分散剤を添加しているが、原料粉と分散剤とを乾式で混合するだけでは、分散剤の効果を十分に発揮させることが困難である。
図1は、本発明の一実施形態に係る成膜方法において用いられる成膜装置の構成を示す模式図である。図1に示す成膜装置においては、エアロゾルデポジション(aerosol deposition:AD)法が用いられる。この成膜装置は、ガスボンベ1と、搬送管2a及び2bと、エアロゾル生成室3と、成膜室4と、排気ポンプ5と、噴射ノズル6と、基板ホルダ7とを含んでいる。
噴射ノズル6は、所定の形状及び大きさ(例えば、長辺が5mm程度で、短辺が幅0.5mm程度の長方形)の開口を有しており、エアロゾル生成室3から供給されたエアロゾルを基板10に向けて高速で噴射する。
このような成膜装置において、原料粉をエアロゾル生成室3に配置すると共に、基板10を基板ホルダ7にセットして所定の成膜温度に保つ。そして、成膜装置を駆動して噴射ノズル6からエアロゾルを噴射しながら、基板を所定の速度で移動させる。それにより、エアロゾルに含まれる原料粉が基板上の分離層に衝突してメカノケミカル反応が生じる。その結果、基板10上に膜が形成される。
本実施形態においては、図1に示す成膜装置に配置される原料粉として、圧縮度が30%以下である原料粉が用いられる。ここで、圧縮度とは、粒子の流動性を評価する指標であり、所定の容器に圧縮することなく試料を満たしたときの試料の比重(ゆるめカサ密度)をρAとし、同じ容器にタッピングにより圧縮した状態で試料を満たしたときの試料の比重(固めカサ密度)をρPとした場合に、圧縮度CP(%)=(ρP−ρA)/ρP×100によって表される。
界面活性剤とは、油によく馴染む親油性部位と、水によく馴染む親水性部位とを有する物質のことをいう。親油性部位としては、例えば、直鎖のアルキル分岐鎖のアルキル、アルキルナフタレン、ペルフルオロアルキル、ポリプロピレンオキサイド、ポリシロキサン等が挙げられる。また、親水性部位は、アニオン系、カチオン系、両性、及び、非イオン系の4種類に分類される。界面活性剤は、この分類に従って、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び、非イオン界面活性剤の4種類に分類される。
まず、図2の工程S1において、界面活性剤を溶媒に溶解させることにより、界面活性剤溶液を調整する。界面活性剤としては、例えば、以下に挙げる物質を使用することができる。アニオン界面活性剤としては、アルキルスルフォン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフォン酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルメチルタウリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウム、アルキルスルホカルボン酸塩(例えば、Aerosol OT)、アルキルスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンエーテルリン酸等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルイミダゾール、アルキルアミノ酸等が挙げられる。
次に、工程S3において、表面に界面活性剤が付着した粉体から溶媒を蒸発させ、さらに粉体を乾燥させる。それにより、界面活性剤によって被覆された原料粉が得られる。
加熱処理の最適温度は使用する界面活性剤によって異なるが、概ね80℃から500℃の範囲である。加熱温度が低すぎる場合には、脱水縮合反応の促進が充分で無く、反対に、加熱温度が高すぎる場合には、原料粉に付着した界面活性剤の分解が生じるおそれがある。また、加熱雰囲気は大気中でも構わないが、反応副生物である水分や過剰な界面活性剤を気散させるためには、真空中で行うことが望ましい。
第1の実施例として、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(Zr,Ti)O3)膜を形成するための原料粉を調整した。成膜原料としては、堺化学工業株式会社製のPZT粒子(製品名:PZT−LQ)を用い、界面活性剤としては、和光純薬工業株式会社製のステアリン酸を用い、溶媒としては、和光純薬工業株式会社製のオクタンを用いた。
このようにして得られたステアリン酸被覆PZT粒子の圧縮度は25%であった。
第2の実施例として、実施例1と同じ材料を用いて同様の処理を行うことにより、原料粉を調整した。ただし、PZT粒子とステアリン酸との混合液を遊星ボールミルによって撹拌した後にオクタンを蒸発させる乾燥工程は、室温で真空乾燥することにより行った。この乾燥PZT粒子の圧縮度は30%であった。
第1の比較例として、実施例1と同じPZT粒子を未処理のまま用意した。このPZT粒子の圧縮度は、42%であった。
(比較例2)
第2の比較例として、実施例1と同じPZT粒子を用いて同様の処理を行うことにより、原料粉を調整した。ただし、PZT粒子を遊星ボールミルによって攪拌する工程においては、ステアリン酸を溶解させないオクタンを用いた。この乾燥PZT粒子の圧縮度は35%であった。
なお、実施例並びに比較例において、圧縮度の測定に際しては、ホソカワミクロン株式会社製のパウダテスタ(型式:PT−S)を使用し、各試料を3回測定し、その平均値を測定値とした。測定値のバラツキは、平均値に対して1.0以下であった。
図3は、実験結果を示す図である。図3において、横軸は成膜時間を示しており、縦軸
は原料粉の消費量を示している。原料粉の消費量は、原料粉が配置されているエアロゾル生成室の重量を測定することにより求めた。
以上の実験結果により、圧縮度が低いほど(望ましくは30%以下、さらに望ましくは25%以下)原料粉は順調に消費され、AD法による成膜装置において安定した成膜を行うことができることが確認された。
1a 圧力調整部
2a、2b 搬送管
3 エアロゾル生成室
3a 容器駆動部
4 成膜室
5 排気ポンプ
6 噴射ノズル
7 基板ホルダ
7a 基板ホルダ駆動部
10 基板
Claims (7)
- 界面活性剤をパラフィン又は脱水アルコールに溶解させた溶液に成膜原料の粉体を混合して攪拌することにより、前記成膜原料の粉体の表面に界面活性剤を付着させて、圧縮度が30%以下である原料粉を作製する工程(a)と、
工程(a)において作製された原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(b)と、
工程(b)において生成されたエアロゾルを、基板が配置された成膜室に導入する工程(c)と、
前記成膜室に設けられたノズルからエアロゾルを基板に向けて噴射することにより、原料粉を基板上に堆積させる工程(d)と、
を具備する成膜方法。 - 工程(a)が、界面活性剤をパラフィン又は脱水アルコールに溶解させた溶液に成膜原料の粉体を混合して、超音波の振動を与えることによって攪拌することを含む、請求項1記載の成膜方法。
- 工程(a)が、表面に界面活性剤が付着した前記成膜原料の粉体を、80℃〜500℃の雰囲気において加熱することを含む、請求項1又は2記載の成膜方法。
- 前記界面活性剤が、カルボン酸を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の成膜方法。
- 前記界面活性剤が、シリコン(Si)、チタン(Ti)、又は、アルミニウム(Al)を含有するカップリング剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の成膜方法。
- 前記成膜原料の粉体が、酸化物を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の成膜方法。
- 前記成膜原料の粉体が、鉛を含有する酸化物を含む、請求項6記載の成膜方法。
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