JP2007182490A - 多孔質構造体を含有する樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】直径100μm程度で空隙率70%以上の中空ガラスを使用すると、ガラスの厚みが薄くなるため、樹脂との混錬時に割れてしまうという課題があった。また、シリカゲル発泡体では表面が親水性になっているため、ポリオレフィン系樹脂など疎水性の樹脂とは特になじみが悪く、比較的脆い樹脂組成物になってしまうという課題があった。
【解決手段】ゾル−ゲル法により湿潤ゲルを作製し、作製した湿潤ゲルの表面を疎水化した後、湿潤ゲル内の水分、溶媒を除去し乾燥させたメソ孔を有し空隙率が70%以上99.5%以下の多孔質構造体をフィラーとして樹脂に混錬させることで、非常に軽く、断熱性、強度ともに高い樹脂を実現でき、掃除機や冷蔵庫、電気湯沸かし器、炊飯器、温水洗浄便座など軽量または断熱性の樹脂が要求される様々な製品に用いることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、軽量かつ断熱性の高い多孔質構造体をフィラーとして樹脂に混錬し、樹脂の軽量化、強化、断熱性向上等を実現した樹脂組成物に関するものである。
従来は、軽量化や断熱性能の向上を目的として中空ガラス(ガラスバルーン)をフィラーとして用いる例が多かった。また、最近ではシリカゲル発泡体などの鉱物系の発泡体を用いている例も多い(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
特開2004−359543号公報 特開2002−193649号公報
しかしながら、直径100μm程度で空隙率70%以上の中空ガラスを使用すると、ガラスの厚みが薄くなるため、樹脂との混錬時に割れてしまうという課題があった。
また、シリカゲル発泡体では非常に軽量なものが作れるが、通常シリカゲルなどのセラミック表面はヒドロキシル基により親水性になっているため、ポリオレフィン系樹脂など疎水性の樹脂とは特になじみが悪く、比較的脆い樹脂組成物になってしまうという課題があった。さらには、シリカゲルを構成するシリカ骨格の太さはシリカゲルと同じであるため、それほどの断熱性能は期待できないという課題もあった。
本発明は、このような課題を解決するものであり、少なくとも水を含む溶媒とゲル原料とを混合することで湿潤ゲルを形成するゲル化工程と、前記湿潤ゲルの表面の少なくとも一部を疎水化する疎水化工程と、前期疎水化工程で表面を疎水化された湿潤ゲル内の水を除く除水工程と、前記除水工程で除水された湿潤ゲル内に残存した溶媒を除いて多孔質構造体を得る乾燥工程とから作製され、少なくともメソ孔を有し空隙率が70%以上99.5%以下の前記多孔質構造体を含有する樹脂組成物とするもので、細い骨格で軽い多孔質構造体を作製することができ、また表面を疎水化しているため樹脂となじみやすく、強くて軽く断熱性も高い樹脂組成物を実現することができる。
以上のように、本発明によれば、骨格が細く、空隙率が大きく、空気分子の平均自由行程より小さいメソ孔を有するため断熱性能が高く、非常に軽量で樹脂となじみやすい多孔質構造体を得ることができ、それを樹脂と混錬することにより断熱性が高く、非常に軽量で強度が高い樹脂を実現できる。
第1の発明は、少なくとも水を含む溶媒とゲル原料とを混合することで湿潤ゲルを形成するゲル化工程と、前記湿潤ゲルの表面の少なくとも一部を疎水化する疎水化工程と、前期疎水化工程で表面を疎水化された湿潤ゲル内の水を除く除水工程と、前記除水工程で除水された湿潤ゲル内に残存した溶媒を除いて多孔質構造体を得る乾燥工程とから作製され、少なくともメソ孔を有し空隙率が70%以上99.5%以下の前記多孔質構造体を含有する樹脂組成物とするもので、骨格が細く、空隙率が高く、空気分子の平均自由行程より小さいメソ孔を有するため断熱性能が高く、非常に軽量で樹脂となじみやすい多孔質構造体を得ることができ、それを樹脂と混錬することにより断熱性が高く、非常に軽量で強度が高い樹脂を実現できる。
また、第2の発明は、ゲル化工程において、ゲル原料がアルキルアルコキシシランであり、少なくとも溶媒には水とアルコールとゲル化を促進させる触媒とを含む請求項1記載の多孔質構造体を含有する樹脂組成物とするもので、アルキルアルコキシシランを原料とすると比較的ゲル化しやすく、また原料のコストも安く、さらには得られた多孔質構造体はある程度の強度を有しているので樹脂との混錬中に潰れにくいため、断熱性が高く、非常に軽量で強度が高い樹脂を低コストで実現できる。
また、第3の発明は、アルキルアルコキシシランは、テトラメトキシシランもしくはテトラエトキシシランのモノマーあるいはオリゴマーあるいはそれらを混合したものである第2の発明の多孔質構造体を含有する樹脂組成物とするもので、炭素数の小さいアルキルアルコキシシランを用いることで、さらにコストが安く、ゲル化条件が容易で特に3〜5量体程度のオリゴマーを含有させておくことでさらにゲル化が容易に起こりやすくなり、断熱性が高く、非常に軽量で強度が高い樹脂を低コストで実現できる。
また、第4の発明は、乾燥工程が湿潤ゲル内に含まれる溶媒の臨界点以上の温度かつ圧力条件で乾燥する乾燥工程である第1の発明の多孔質構造体を含有する樹脂組成物とするもので、骨格が細い湿潤ゲルを乾燥させる場合、通常の乾燥ではメソ孔を潰してしまうが、本発明での乾燥方法ではメソ孔を潰すことがなく、容易に多孔質構造体を得ることができるため、それを樹脂と混錬することにより断熱性が高く、非常に軽量で強度が高い樹脂を実現できる。
また、第5の発明は、乾燥工程が湿潤ゲル内に含まれる溶媒の全部もしくは一部を二酸化炭素に置き換えた後、二酸化炭素の臨界点以上の温度かつ圧力条件で乾燥する乾燥工程である第1の発明の多孔質構造体を含有する樹脂組成物とするもので、骨格が細い湿潤ゲルを乾燥させる場合、通常の乾燥ではメソ孔を潰してしまうが、本発明での乾燥方法では孔を潰すことがなく、また比較的安いコストで容易に多孔質構造体を得ることができるため、それを樹脂と混錬することにより断熱性が高く、非常に軽量で強度が高い樹脂を実現できる。
また、第6の発明は、疎水化工程において、RとR’はアルキル基を表し、R(R’O)4−xSiで表されるアルキルアルコキシシランを用い、かつ乾燥工程が少なくとも表面の一部が疎水化された湿潤ゲル内に含まれる溶媒の臨界点未満の温度かつ圧力条件で乾燥する乾燥工程である第1の発明の多孔質構造体を含有する樹脂組成物とするもので、骨格が細い湿潤ゲルを乾燥させる場合、通常の乾燥ではメソ孔を潰してしまうが、本発明の疎水化工程を行った後に乾燥させると、孔を潰すことがなく、低コストで容易に多孔質構造体を得ることができるため、それを樹脂と混錬することにより断熱性が高く、非常に軽量で強度が高い樹脂を低コストで実現できる。
また、第7の発明は、RとR’はいずれもメチル基で、かつx=2である第6の発明の多孔質構造体を含有する樹脂組成物とするもので、この原料はジメチルジメトキシシランと称され、安価で疎水化速度が速く、確実に疎水化することができる。これは、x=1の単官能では3つのアルキル基の立体障害のために反応性が低下し、またx=3の3官能では加水分解の結果生じる3つのシラノール基が全て、ゲル表面のシラノール基と反応することが難しくシラノール基がゲル表面に残存することで反応性が低下するからであり、ジメチルジメトキシシランはこのようなことがない。したがって、メソ孔を乾燥時に潰すことがなく、比較的安いコストで容易に多孔質構造体を得ることができるため、それを樹脂と混錬することにより断熱性が高く、非常に軽量で強度が高い樹脂を実現できる。
また、第8の発明は、樹脂はポリオレフィン系樹脂である第1〜7の発明のいずれか1発明の多孔質構造体を含有する樹脂組成物とするもので、表面がアルキル基のものが多いため、疎水化された多孔質構造体と混ざりやすく密着性も高いため、断熱性が高く、非常に軽量で強度が高い樹脂を実現できる。
また、第9の発明は、繊維状フィラーを含む第1〜8の発明のいずれか1発明の多孔質構造体を含有する樹脂組成物とするもので、繊維状のフィラーを添加することでさらに樹脂が強化されるため、断熱性が高く、非常に軽量で強度が高い樹脂を実現できる。
(実施の形態1)
図1は本発明の第一の実施の形態における多孔質構造体を含有する樹脂組成物の模式図である。図1(a)は本実施の形態の多孔質構造体を含有する樹脂組成物(以下、本実施の形態では樹脂組成物1という)の断面模式図であり、(b)は樹脂組成物1に含まれる多孔質構造体2の一部分を拡大した模式図である。多孔質構造体2は樹脂3にアンカー効果もしくは物理的な結合もしくは化学的な結合などの作用により結合され、樹脂組成物1を形成している。
多孔質構造体2は、1〜100nm程度の粒子が数珠状につながった骨格4からなり、多孔質構造体2は骨格間距離5の径の多数の孔を形成し、そのため多孔質構造になっている。それゆえ多孔質構造体のバルク体は非常に脆く、100μm程度までは容易に破砕することができる。しかしながら、多孔質構造体は非常に軽い(自重が小さい)ため、1μm以下に破砕することは難しく、ミキサーなどを用いた通常の破砕法では40μm程度のところにピークを持ち、1〜100μm程度の粒度分布を有している。なお、多孔質構造体2の形状は球状に限定されるものではない。
多孔質構造体2を形成する骨格4同士間の骨格間距離5は主にメソ孔(2〜50nm)で、この大きさの孔は空気の(窒素分子や酸素分子の)平均自由行程より小さいため気体分子の熱伝導を抑えることができ、また骨格4も非常に細いためこれを伝う熱伝導も抑えることができるので、非常に断熱性が高い多孔質構造体が得られ、さらにこれを分散させることで断熱性の高い樹脂組成物を実現できる。
また、湿潤ゲルを疎水化処理などの特別な処理をせずに熱風乾燥を行ったり、常温で徐々に乾燥させたりすると通常、空隙率が70%を越える多孔質構造体は作製することができず、空隙率の比較的大きなシリカゲルで60%程度である。また、ゲル原料と溶媒の量、必要に応じて添加するゲル化触媒の種類や量によって、骨格や孔の大きさ、空隙率などを調整できるが、空隙率が99.5%を越える多孔質構造体を作製しようとした場合、骨格を形成する固形分が少なすぎるため骨格を形成できず、湿潤ゲルを得ることができなかった。
樹脂に混錬して軽量化をはかろうとする場合、空隙率の大きな多孔質構造体を用いる方が望ましいが、空隙率が大きいと骨格が細くなり、空間が大きくなるということであるため、比較的弱い多孔質構造体になり、樹脂との混錬時に孔が潰れてしまい、軽量化できない場合がある。したがって、樹脂の軽量化を目的とする場合、空隙率が80〜95%程度が望ましい。
また、空隙率に加え、骨格4の太さも多孔質構造体を特徴付ける重要な因子であり、ある程度空隙率と連動している。骨格4はなるべく細い方がよいが、骨格が細すぎると乾燥時あるいは樹脂との混錬時に孔が潰れてしまうことがあるため、5〜20nm程度が最適である。また、作製の都合上、メソ孔は互いが連通しており、また多孔質構造体2の外部とも連通しているが、孔の径が小さいため樹脂との混錬時に樹脂が孔に入り込むことはほとんどない。
骨格の材質は特に限定するものではないが、樹脂との混錬時の荷重に耐えられるよう、無機物が望ましく、またコストの面からシリカが望ましい。また、骨格を形成する粒子の形状は球状に限定されるものではない。
次に多孔質構造体2と樹脂3との混錬方法について説明する。通常の混錬機を用いて混錬し、特別な混錬機は必要としない。樹脂3は特に限定するものではないが、多孔質構造体表面を疎水化していることからポリオレフィン系樹脂とも相性がよく、ポリエチレン、ポリプロピレンなどにも問題なく練りこむことができる。その他、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリエステル(PET、PBTなど)、ナイロン樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの様々な樹脂と混錬可能である。
樹脂3への多孔質構造体2の添加量は体積比で50%以下が望ましい。これ以上の量を添加すると、樹脂が脆くなり実用的ではなくなってしまう。したがって、多孔質構造体2を体積比で30%程度の添加が望ましい。またこのときに、ガラスウールや炭素繊維のような繊維状の物質をフィラーとして同時に添加しておくと、さらに強度の高い樹脂を実現できる。
このような樹脂組成物1は非常に軽く、断熱性、強度ともに高く、掃除機や冷蔵庫、電気湯沸かし器、炊飯器、温水洗浄便座など軽量または断熱性の樹脂が要求される様々な製品に用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態で、多孔質構造体の具体的な作製方法について説明する。作製工程は主に以下の4つの工程からなる。
(1)ゲル化工程(湿潤ゲルの形成)
(2)疎水化工程(湿潤ゲル表面の疎水化)
(3)除水工程(湿潤ゲル中の水の除去)
(4)乾燥工程(湿潤ゲル中の溶媒除去)
以下、各工程毎に説明する。
(1)ゲル化工程(湿潤ゲルの形成)
本発明では、ゾル−ゲル法により湿潤ゲルを作製する。具体的には、アルコキシシランをゲル原料とし、水やアルコールなどの溶媒と、必要に応じてゲル化触媒とを混合することで、溶媒中でゲル原料の重合をすすめて湿潤ゲルを形成する。また、ゲル原料として水ガラスを用い、必要に応じてゲル化触媒とを混合することによっても、湿潤ゲルを作製することもできる。本発明の作製で用いられるゲル原料としては、ゾル−ゲル法で一般的に用いられる、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等のアルコキシド等がある。この中でも金属としてケイ素を含有する化合物が、入手の容易性、安価なコストなどから好ましい。例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランおよびトリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン等のケイ素アルコキシドやそのオリゴマー等およびこれらの混合物が用いられる。特に、テトラメトキシシランは、シリカ含有分が多く、また安価で容易に入手でき、反応も速いため、本発明で用いるためには最適であり、次にテトラエトキシシランが適する。
ゲル化触媒としては、一般的な有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基が用いられる。有機酸として、酢酸、クエン酸、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸、有機塩基として、ピペリジン、無機塩基として、アンモニア、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等がある。
湿潤ゲルの形成には、アルコキシシランと、溶媒としてのアルコールと、ゲル化触媒としての酸あるいは塩基及び水を加えることで、アルコキシシランの加水分解、縮重合を経て、湿潤ゲルを形成する。湿潤ゲルは、珪素原子と酸素原子が交互に結合した3次元網目構造のシリカ粒子を作り、それらシリカ粒子が重合して数珠状となり骨格を形成し、それら骨格同士の隙間すなわち孔に水等の溶媒が入り込む構造となっている。
ゲル化後、形成された湿潤ゲルを必要に応じて、加温雰囲気に置き、ゲル中の未反応のシラノール基を縮合させてゲルを熟成させることが、ゲル強度を増して、乾燥時の収縮を抑制することに有効である。
(2)疎水化工程(湿潤ゲル表面の疎水化)
この工程は、湿潤ゲルの表面のシラノール基を例えばトリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジメトキシシラン等で疎水性のメチル基に代える工程である。これは、乾燥工程前の予備工程という意味合いがある。乾燥は、湿潤ゲル中の溶媒(水も含む)を乾燥除去させる工程であるが、湿潤ゲルを普通に熱風乾燥させたものは、溶媒が乾燥するときの表面張力により、収縮してしまい孔を潰してしまうので、空隙率が小さくなってしまう。この孔に掛かる力ΔPは一般に(数1)により表される。
ここでΔPは毛管力、γは溶媒の表面張力、θは溶媒と骨格との接触角、dは孔の径を表す。したがって、毛管力を小さくするためには、接触角θを大きくする、あるいは表面張力γを小さくする必要がある。疎水基を導入することで、接触角θを大きくすることができるので、乾燥時に発生する毛管力を下げることができる。なお、表面張力γを小さくすることについては次の除水工程で説明する。
また、疎水化はメチル基に限定されるものではなく、エチル基、プロピル基やフッ素系官能基やフェニル基などでもほぼ同様の効果が得られるが、反応性やコストを考慮するとメチル基が望ましい。
さらには、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等を用いると、塩化水素やアンモニアなどのガスを発生させ、これらが触媒となり湿潤ゲルが異常な反応をしてしまう可能性がある。また、これらの疎水化剤を用いる場合、予め水を取り除いておく必要があり、工程が一つ増えてしまう。そこで、本発明ではアルキルアルコキシシランを用いて疎水化を行った。用いるアルキルアルコキシシランとして、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン等の単官能アルキルアルコキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン等の2官能アルキルアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能アルキルアルコキシシラン化合物がある。これらのうち一つもしくは混合物を疎水化処理液となる溶媒に溶解させておき、湿潤ゲルとその溶媒に接触させることで反応させる。疎水化剤とシラノール基との反応は加水分解を伴うため、必ず水が必要となる。そこで、疎水化処理液となる溶媒は水溶性溶媒が望ましく、水溶性溶媒としては、水溶性のアルコール類としてメタノール、エタノール、プロパノールおよびターシャリ−ブタノール、エチレングリコール、グリセロール等の低級アルコール類、その他、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等のケトンやエーテルや、これらの混合物も用いることができる。
アルキルアルコキシシランを疎水化剤として用いるためには、加水分解のために水を必要とするが、ゲル化工程で作製した湿潤ゲルは水を含んでいるため、新たに水を添加する必要がなく、また脱水しておく必要もないので、非常に望ましい。また、ゲル化時の触媒にアンモニア水を用い、溶媒に水とメタノールを用いることにより、湿潤ゲルに直接アルキルアルコキシシランを添加し、疎水化することができる。
さらに、アルキルアルコキシシランの中でも、2官能のアルキルアルコキシシランが疎水化効率に優れることも見出した。これは、単官能では3つのアルキル基の立体障害により反応性が低下し、3官能では加水分解の結果生じる3つのシラノール基が全て、ゲル表面のシラノール基と反応することが難しく、シラノール基がゲル表面に残存するためではないかと考えられる。したがって、疎水化効率に優れる2官能アルキルアルコキシシラン、特にジメチルジメトキシシランが反応性が高く、非常に望ましい。
また、疎水化工程はゲル化工程の後に記載されているが、ゲル化と同時に行うこともできる。しかし、ゲル化と同時であれば、疎水化剤が重合前のゲル原料と反応して重合を抑制したり、重合前のゲル原料との反応により必要な疎水化剤の量が多くなったりする場合がある。したがって、ゲル化が終了してから、疎水化剤を作用させることが好ましい。さらに、得られるゲルの強度を確保し、疎水化剤の使用量を低減するためには、ゲルの熟成が進んだ後に、疎水化剤を作用させることが望ましい。
(3)除水工程(湿潤ゲル中の水の除去)
この工程では、湿潤ゲル内にある水および未反応の疎水化剤を除去し、その分を表面張力の小さな溶媒に置き換える工程である。この工程も乾燥工程の予備工程の意味合いがある。(数1)によると表面張力γを小さくすることも毛管力の低減には効果がある。水の表面張力は、0.072N/m(25℃)であり、他の液体、例えば汎用的な有機溶媒であるトルエン0.027N/m(30℃)、エタノール0.021N/m(25℃)等に比較して格段に大きい。したがって、乾燥前に湿潤ゲル中の水の割合を低減させ、代わりに表面張力が小さい溶媒に置き換えることが非常に重要である。
除水方法として、溶媒置換もしくは加熱留去のいずれかの方法が望ましい。まず、溶媒置換について説明する。一般的な溶媒置換は、形成された湿潤ゲルを、水溶性溶媒の中に浸漬させて、前記溶媒をゲル内の溶媒と入れ替えることで行う。この時に用いる溶媒としては、水溶性の溶媒であれば特に制限されない。例えば、水溶性のアルコール類としてメタノール、エタノール、プロパノールおよびターシャリ−ブタノール、エチレングリコール、グリセロール等の低級アルコール、その他に、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等のケトン類やエーテル類、ジメチルホルムアミド等のホルムアミド類、さらに蟻酸、酢酸およびプロピオン酸などの低級カルボン酸や、これらの混合物を用いることができる。この中でも、低価格で、入手が容易なメタノールやエタノールなどのアルコール類の使用が望ましい。また、溶媒置換は、上記水溶性溶媒だけではなく、上記水溶性溶媒と他の非水溶性溶媒との混合溶媒によっても可能である。具体的には、n−ヘキサン、デカン、ノナン、オクタン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等と水溶性溶媒の混合溶媒である。安全面や入手の容易性など工業用として特に好ましいものは、オクタン、トルエン、キシレン等である。
次に、加熱留去に関して説明する。加熱留去により水を除く場合、一般的に水の沸点付近より高い沸点を有する非水溶性の溶媒を加えて加熱することで、水を優先的に留去することが可能である。非水溶性の溶媒を用いることで、加熱留去後に有機溶媒と水が自然に分離するため、溶媒の再利用が容易になる効果がある。また、非水溶性溶媒の沸点は、水の沸点より低くても、過剰に加えれば、水を除去することが可能であるが、さらに溶媒の沸点を高くすることで、水留去の選択性を高めることができる。このため、溶媒置換により水を除去する場合に比較して、使用する溶媒量も大幅に低減できる効果が得られる。
また、水と加えた溶媒が、共沸混合物を形成する場合は、水と溶媒が一定の割合で留去されていくため、水の除去の制御が容易になる効果がある。さらに、通常の有機溶媒の乾燥で行われるように、減圧条件下で加熱留去を行うことで、効率的な水除去が可能になる。特に、ゲル化触媒等が存在する場合、水を含む状態で温度を上げて加熱乾燥すると、ゲル骨格中の結合の切断などが生じる可能性がある。このような場合は、減圧で水を加熱留去することで、温度上昇を防ぐことが効果的である。
(4)乾燥工程(湿潤ゲル中の溶媒除去)
乾燥方法に関して説明する。乾燥は、除水工程において水除去時に代わりに湿潤ゲル内に入り込む溶媒を除去する工程である。疎水化工程と除水工程により、毛管力は著しく低下しているため、この状態で熱風乾燥を行ってもある程度の収縮は抑えられ、空隙率の大きな多孔質構造体を得ることができる。このとき、乾燥時の圧力は大気圧以上の加圧下で行うことが、より空隙率の大きな多孔質構造体を得られやすい。加圧下で乾燥を行えば、孔の中に保持される溶媒の沸点が上昇する。このとき、昇温により表面張力γが下がるため、毛管力が低減されて収縮が効果的に抑制され、望ましい。例えば、アセトンを加圧下で乾燥させる場合、沸点を45℃程度上昇させて100℃程度まで上げれば、表面張力が0.005N/m程度下がり、0.015N/m程度まで減少することから、加圧下での乾燥は十分収縮抑制に効果的であるといえる。
しかしながら、より大きな空隙率の多孔質構造体を得るためには、湿潤ゲル内に残存する溶媒の臨界点以上に温度と圧力を上げた状態、すなわち超臨界状態で乾燥させること、もしくは二酸化炭素を超臨界状態で流通させることにより溶媒を抽出する超臨界乾燥することで、表面張力γを0に限りなく近づけることができるため、孔をほとんど潰すことがなく空隙率の大きな多孔質構造体を実現できる。但し、高温高圧に耐えうる装置が必要なため、コストは非常に高いものとなる。
このようにして作製した多孔質構造体を樹脂に混錬させることで、非常に軽く、断熱性、強度ともに高く、掃除機や冷蔵庫、電気湯沸かし器、炊飯器、温水洗浄便座など軽量または断熱性の樹脂が要求される様々な製品に用いることができる。
以上のように、本発明にかかる多孔質構造体を含有する樹脂組成物は、非常に軽く、断熱性、強度ともに高く、掃除機や冷蔵庫、電気湯沸かし器、炊飯器、温水洗浄便座など軽量または断熱性の樹脂が要求される様々な製品に用いることができる。また、本発明の樹脂組成物は電磁波遮断効果や吸音あるいは遮音効果も期待できる。さらには、樹脂に混錬せずに多孔質構造体のみで用いても、優れた断熱材、吸音材、電磁波遮断材などの用途にも利用できる。
(a)本発明の第一の実施の形態における樹脂組成物の断面模式図(b)同、多孔質構造体の一部分を拡大した模式図
符号の説明
1 多孔質構造体を含有する樹脂組成物
2 多孔質構造体
3 樹脂
4 骨格
5 骨格間距離

Claims (9)

  1. 少なくとも水を含む溶媒とゲル原料とを混合することで湿潤ゲルを形成するゲル化工程と、前記湿潤ゲルの表面の少なくとも一部を疎水化する疎水化工程と、前期疎水化工程で表面を疎水化された湿潤ゲル内の水を除く除水工程と、前記除水工程で除水された湿潤ゲル内に残存した溶媒を除いて多孔質構造体を得る乾燥工程とから作製され、少なくともメソ孔を有し空隙率が70%以上99.5%以下の前記多孔質構造体を含有する樹脂組成物。
  2. ゲル化工程において、ゲル原料がアルキルアルコキシシランであり、少なくとも溶媒には水とアルコールとゲル化を促進させる触媒とを含む請求項1記載の多孔質構造体を含有する樹脂組成物。
  3. アルキルアルコキシシランは、テトラメトキシシランもしくはテトラエトキシシランのモノマーあるいはオリゴマーあるいはそれらを混合したものである請求項2記載の多孔質構造体を含有する樹脂組成物。
  4. 乾燥工程が湿潤ゲル内に含まれる溶媒の臨界点以上の温度かつ圧力条件で乾燥する乾燥工程である請求項1記載の多孔質構造体を含有する樹脂組成物。
  5. 乾燥工程が湿潤ゲル内に含まれる溶媒の全部もしくは一部を二酸化炭素に置き換えた後、二酸化炭素の臨界点以上の温度かつ圧力条件で乾燥する乾燥工程である請求項1記載の多孔質構造体を含有する樹脂組成物。
  6. 疎水化工程において、RとR’はアルキル基を表し、R(R’O)4−xSiで表されるアルキルアルコキシシランを用い、かつ乾燥工程が少なくとも表面の一部が疎水化された湿潤ゲル内に含まれる溶媒の臨界点未満の温度かつ圧力条件で乾燥する乾燥工程である請求項1記載の多孔質構造体を含有する樹脂組成物。
  7. RとR’はいずれもメチル基で、かつx=2である請求項6記載の多孔質構造体を含有する樹脂組成物。
  8. 樹脂はポリオレフィン系樹脂である請求項1〜7記載の多孔質構造体を含有する樹脂組成物。
  9. 繊維状フィラーを含む請求項1〜8いずれか1項に記載の多孔質構造体を含有する樹脂組成物。
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JP2008024858A (ja) * 2006-07-24 2008-02-07 Matsushita Electric Ind Co Ltd 複合材料
JP2018168206A (ja) * 2017-03-29 2018-11-01 住友理工株式会社 樹脂組成物およびその製造方法
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