JP2007178637A - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ベルト部材を用いた定着装置において、記録紙をベルト部材から安定的に分離する。
【解決手段】定着ロール611と、定着ベルト610を介して定着ロール611を押圧するように配置された加圧ロール62と、定着ロール611と加圧ロール62との圧接部の下流側近傍にて、定着ベルト610の外表面を加圧ロール62に押圧する剥離パッド64とを有し、剥離パッド64が定着ベルト610の外表面を加圧ロール62に押圧する剥離押圧パッド641と、剥離押圧パッド641の下流側近傍にて定着ベルト610が加圧ロール62から離隔する角度を設定する剥離ロール642とを含んでいる。
【選択図】図3

Description

本発明は、例えば電子写真方式を利用した画像形成装置に用いられる定着装置等に関し、より詳しくは回動可能なベルト部材を備えた定着装置等に関する。
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、一般に、一定速度で回転する感光体ドラムの表面が帯電器によって一様に帯電された後、画像情報に基づいて制御されたレーザ光が走査露光され、静電潜像が形成される。感光体ドラム上に形成された静電潜像は、現像器により現像され、現像されたトナー像は記録紙上に静電転写される。そして、定着装置によってトナー像が記録紙に定着され、画像が形成される。
かかる画像形成装置に用いられる定着装置としては、2ロール方式と呼ばれる構成が従来より広く一般に利用されている。この2ロール方式の定着装置は、内部に加熱源(ヒータ)が配設された円筒状の芯金の表面に、耐熱性弾性層と離型層とが積層されて形成された定着ロールと、芯金に耐熱性弾性層と耐熱性樹脂被膜あるいは耐熱性ゴム被膜による離型層とが積層されて形成された加圧ロールとが互いに圧接されて構成されている。そして、定着ロールと加圧ロールとの圧接領域(ニップ部)に、未定着トナー像を担持した記録紙を通過させ、未定着トナー像に対して加熱と加圧とを行うことにより、トナー像を定着している。
ところで、近年、画像形成装置では、高生産性化やカラー化が急速に進展するとともに、両面印刷機構を備えたものも多く開発されている。さらには、今後も画像形成装置の高速化は加速していくものと予想される。そのため、画像形成装置に搭載される定着装置においても、高速化への対応を一段と進める必要性が高まっている。
ところが、従来の2ロール方式の定着装置は、高速で連続して送られてくる多数枚の記録紙に対しては、充分な定着処理を行うことが困難であるという問題を有している。すなわち、2ロール方式の定着装置においては、定着ロールを構成する芯金や芯金に被覆されたシリコーンゴム等からなる弾性層等が熱的抵抗体として作用する。そのため、2ロール方式の定着装置では、記録紙が定着ロールの表面から奪う熱量に対応した熱量を、定着ロールの内部に配置したヒータから即応的に、かつ充分に供給することが構造的に難しい。
その結果、2ロール方式の定着装置に高速で連続して記録紙が送られると、定着ロールの表面温度が漸次低下し、次第に定着性能が低下するという不都合が生じる。また、画像形成装置の立ち上がり時において、定着ロールの表面温度が一時的に落ち込む所謂「温度ドループ現象」が発生し易くなる。特に、記録紙として熱容量の大きい厚紙等が使用される場合には、定着ロールの表面から奪われる熱量が大きくなるので、定着性能の低下や温度ドループが大きくなり、定着不良に基づく画像品質の劣化を生じさせることとなる。
かかる状況から、2ロール方式の定着装置を用いた場合に生じる上記した問題点を解消し、画像形成装置の高速化に対応した定着装置を実現する技術が開発されている。例えば、記録紙を加熱する加熱部材が、複数の張架ロールによって張架されたフィルム状のベルト部材(定着ベルト)で構成された定着装置に関する技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。
このような定着ベルトを用いた定着装置では、ニップ部に進入する前に予め張架ロール内に配設されたヒータによって定着ベルトを充分に加熱しておき、ニップ部においては加熱された定着ベルトから記録紙およびトナー像に熱を加えることでトナー像を定着している。そのため、定着ベルトが定着処理の間に記録紙によって熱を奪われても、定着ベルト自体の熱容量が小さいことから、定着ベルトは張架ロール内のヒータにより短時間で所定の定着可能温度まで回復させることが可能である。それにより、加熱部材として定着ベルトを用いた定着装置では、ニップ部内に進入する際の定着ベルトの温度を所定値に維持することが容易となり、画像形成装置が高速化されても、ニップ部に充分な熱量を供給することが可能である。
しかし、定着ベルトを用いた定着装置においても、記録紙の表面にはトナー像が担持されているため、定着ベルトの熱によってトナー像が溶融した際に、トナー像が接着剤となって記録紙と定着ベルトとの間に付着力が作用する。そのため、従来の2ロール方式の定着装置と同様に、定着ベルト表面から記録紙を剥離する機構を設ける必要がある。特に、画像形成装置の高速化が図られた場合には、定着装置において一旦剥離不良が生じて紙詰まり(ジャム)が生じると、その影響を受けて損傷する後続の記録紙の枚数も多くなることから、ニップ部を高速で通過した記録紙を定着ベルト側から安定的かつ確実に剥離する必要がある。
記録紙を定着ベルト表面から剥離する機構としては、上記した特許文献1に記載されたように、従来よりニップ部の下流側に定着ベルトに当接して分離爪を配設する構成が用いられている。また、定着ロールと加熱ロールとに張架された定着ベルトに対して加圧ロールが圧接して配設された構成の定着装置においては、ニップ部の出口部(最下流部)に対応した位置の定着ベルトの内側に、かかる出口部における定着ベルトの曲率を大きく設定するための固定部材を設け、定着ベルトの曲率の変化により記録紙を剥離する構成も用いられる(例えば、特許文献2参照)。
特開平3−133871号公報(第4頁、図3) 特開2003−5566号公報(第6−8頁、図4)
しかしながら、定着ベルトを用いた定着装置において、記録紙を定着ベルト表面から剥離する機構として分離爪を用いる場合には、記録紙を定着ベルト側から安定的に剥離するために、分離爪を定着ベルトに当接させて配設する必要がある。そのために、定着ベルト表面は分離爪によって磨耗され易くなる。そして、定着ベルト表面に分離爪による磨耗が生じると、定着画像上に定着ベルト表面の磨耗痕に対応した定着ムラが発生して画像品質を低下させる場合がある。また、磨耗痕上にオフセットしたトナーが次第に付着堆積して、定着画像上に汚れを生じさせることもある。さらには、定着ベルト表面の磨耗が進んだ場合には、薄層の定着ベルトは最終的に破断に至り、定着装置の機能が損なわれるおそれもある。
また、記録紙を定着ベルト表面から剥離する機構として、ニップ部の出口部に定着ベルトの曲率を大きく形成するための固定部材を設ける場合には、定着ロールと加圧ロールとが圧接されるニップ部の入口部と、固定部材が配設される出口部との間のニップ中間領域においては、定着ベルトは定着ベルトの張力のみによって加圧ロールに圧接されることとなる。そのために、ニップ中間領域でのニップ圧は、比較的低いものとなる。そして、このような低ニップ圧領域において記録紙やトナーが加熱されると、記録紙中の水分が気化して水蒸気となったり、トナー中の空気が熱膨張するなどして、定着ベルトと加圧ロールとの間にエアーギャップ(気泡)が生じることがある。このようなエアーギャップが生じた場合には、ニップ部内に存在する記録紙上のトナーが未だ完全に定着されていない状態にあることから、気泡が動き回って、未定着トナーが乱され易くなる。その結果、定着画像にムラ等の画像不良が発生し、画像品質の低下を招くという大きな問題が生じる。
そこで本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ベルト部材を用いた定着装置において、記録紙をベルト部材から安定的に分離することにある。
また、他の目的は、画像形成装置の高速化を図った場合においても、高い定着性能を維持することができる定着装置を提供することにある。
かかる目的のもと、本発明の定着装置は、記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、回動可能な定着ロールと、定着ロールに張架されるベルト部材と、ベルト部材を介して定着ロールを押圧する加圧部材と、定着ロールと加圧部材との圧接部の下流側近傍にて、ベルト部材の外表面を加圧部材に押圧する剥離部材とを備え、剥離部材は、ベルト部材の外表面を加圧部材に押圧する押圧部材と、押圧部材の下流側近傍にてベルト部材が加圧部材から離隔する角度を設定する剥離角度設定部材とを含むことを特徴としている。
ここで、剥離部材は、剥離角度設定部材が、ベルト部材の内周面側であって押圧部材が加圧部材を押圧する面の最下流部領域に配置されたロール状部材で構成されたことを特徴とすることができる。特に、ロール状部材は、ベルト部材の移動方向と同一の方向に回転自在に構成されたことを特徴とする。
また、剥離部材は、剥離角度設定部材が、押圧部材の加圧部材を押圧する面よりも下流側の近傍の側面に形成された凹状部と、ベルト部材の外周面側であって凹状部に対向する位置に配置されたロール状部材とで構成されたことを特徴とすることもできる。特に、ロール状部材は、凹状部にベルト部材を介して当接する位置と凹状部から離隔された位置との間で、ベルト部材と接触した状態を維持しながら移動可能に構成されたことを特徴とすることができる。また、ロール状部材は、ベルト部材の移動方向と同一の方向に回転自在に構成されたことを特徴とすることもできる。
また、本発明の定着装置は、記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、回動可能な定着ロールと、定着ロールに張架されるベルト部材と、ベルト部材を介して定着ロールを押圧するように配置されてニップ部を形成する加圧部材と、定着ロールと加圧部材との圧接部の下流側近傍にて、ベルト部材の外表面を加圧部材に押圧する押圧部材と、押圧部材の下流側近傍にてベルト部材の進行方向を屈曲させる回転部材とを備えたことを特徴としている。
ここで、回転部材は、加圧ロール表面に変形を生じさせない押圧力で加圧ロールを押圧することを特徴とすることができる。
また、押圧部材は、定着ロールと加圧部材との圧接部の下流側端部から加圧部材と押圧部材との圧接部の下流側端部に至る領域のニップ圧が、ベルト部材の進行方向に向けて単調減少するように設定されたことを特徴とすることができる。加えて、押圧部材は、定着ロールと加圧部材との圧接部の下流側端部と押圧部材の上流側端部との間の領域のニップ圧Pnが、ベルト部材の絶対温度をTn、周辺環境の絶対温度をTo、大気圧をPoとして、Pn≧Po×(Tn/To−1)を満たすように設定することを特徴とすることもできる。また、押圧部材は、押圧部材の上流側端部が定着ロールと加圧部材とで画成されるくさび状領域内に配置されることを特徴とすることができる。
加えて、加圧部材は、定着ロールとの圧接部での凹み量が定着ロールの凹み量よりも大きいことを特徴とすることができる。
さらに、本発明を画像形成装置として捉え、本発明の画像形成装置は、トナー像を形成するトナー像形成部と、トナー像形成部によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写部と、記録材上に転写されたトナー像を記録材に定着する定着部とを含み、定着部は、回動可能な定着ロールと、定着ロールに張架されるベルト部材と、ベルト部材を介して定着ロールを押圧するように配置された加圧部材と、定着ロールと加圧部材との圧接部の下流側近傍にて、ベルト部材の外表面を加圧部材に押圧する剥離部材とを備え、剥離部材は、ベルト部材の外表面を加圧部材に押圧する押圧部材と、押圧部材の下流側近傍にてベルト部材が加圧部材から離隔する角度を設定する剥離角度設定部材とを含むことを特徴としている。
ここで、定着部の剥離部材は、剥離角度設定部がベルト部材の進行方向を90°以上屈曲させることを特徴とすることができる。
また、定着部の剥離部材は、剥離角度設定部材が、ベルト部材の内周面側であって押圧部材が加圧部材を押圧する面の最下流部領域に配置された回転部材で構成されたことを特徴とすることもできる。さらに、定着部の剥離部材は、剥離角度設定部材が、押圧部材の加圧部材を押圧する面よりも下流側の近傍の側面に形成された凹状部と、ベルト部材の外周面側であって、凹状部に対向する位置に配置された回転部材とで構成されたことを特徴とすることもできる。
加えて、定着部は、加圧部材が複数の張架ロールによってベルト部材が張架された加圧ベルトモジュールで形成されたことを特徴とすることができる。
本発明によれば、画像形成装置の高速化を図った場合においても、記録紙をベルト部材から安定的に剥離することが可能となる。また、高い定着性能を安定して維持することができるので、良質な画像を短時間で大量に提供することが可能となる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置の一例としてのデジタルカラープリンタ1を示した概略構成図である。図1に示すデジタルカラープリンタ1は、所謂タンデム型であり、各色の画像データに対応して画像形成を行なう画像形成プロセス部20、例えばパーソナルコンピュータ(PC)3や画像読取装置4に接続され、これらから受信された画像データに対して所定の画像処理を施す画像処理部(IPS:Image Processing System)22、各装置(各部)の動作を制御する制御部10を備えている。
画像形成プロセス部20は、一定の間隔を置いて並列的に配置される4つの画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kを備えている。画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kは、静電潜像を形成してトナー像を担持する感光体ドラム31、感光体ドラム31の表面を所定電位で一様に帯電する帯電ロール32、感光体ドラム31上に形成された静電潜像を現像する現像器33、転写後の感光体ドラム31表面を清掃するドラムクリーナ34を含んで構成されている。また、画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kそれぞれに対応して、感光体ドラム31を露光するレーザ露光装置25Y,25M,25C,25Kが設けられている。
ここで、各画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kは、現像器33に収納されたトナーを除いて、略同様に構成されている。そして、画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kは、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
また、画像形成プロセス部20は、各画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kの感光体ドラム31にて形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト41、各画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kの各色トナー像を一次転写部T1にて中間転写ベルト41に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール42、中間転写ベルト41上に転写された重畳トナー像を二次転写部T2にて記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写ロール50、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60を備えている。
本実施の形態のデジタルカラープリンタ1では、画像形成プロセス部20は、制御部10から供給される制御信号に基づいて画像形成動作を行なう。その際に、PC3や画像読取装置4から入力された画像データは、IPS22によって画像処理が施され、各レーザ露光装置25Y,25M,25C,25Kに供給される。そして、例えばイエロー(Y)の画像形成ユニット26Yでは、帯電ロール32により所定電位で一様に帯電された感光体ドラム31の表面が、IPS22から得られた画像データに基づいてレーザ露光装置25Yにより走査露光されて、感光体ドラム31上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像器33により現像され、感光体ドラム31上にはYのトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット26M,26C,26Kにおいても、M、C、Kの各色トナー像が形成される。
各画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kで形成された各色トナー像は、図1の矢印A方向に回動する中間転写ベルト41上に、一次転写ロール42により順次静電吸引され、中間転写ベルト41上に重畳されたトナー像が形成される。重畳トナー像は、中間転写ベルト41の移動に伴って二次転写ロール50が配設された二次転写部T2に搬送される。重畳トナー像が二次転写部T2に搬送されると、そのタイミングに合わせて用紙Pが二次転写部T2に供給される。そして、二次転写部T2にて二次転写ロール50により形成される転写電界により、重畳トナー像は搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される。
その後、重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト41から剥離され、搬送ベルト76,77により定着装置60まで搬送される。定着装置60に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部(不図示)に搬送される。
次に、本実施の形態の画像形成装置に用いられる定着装置60について説明する。
図2は本実施の形態の定着装置60の概略構成を示す側断面図である。この定着装置60は、加熱部材の一例としての定着ベルトモジュール61と、定着ベルトモジュール61に対して圧接して配置された加圧部材の一例としての加圧ロール62とで主要部が構成されている。
定着ベルトモジュール61は、ベルト部材の一例としての定着ベルト610、定着ベルト610を張架しながら回転駆動する定着ロール611、内側から定着ベルト610を張架するテンションロール612、外側から定着ベルト610を張架する外部加熱ロール613、定着ロール611とテンションロール612との間で定着ベルト610の姿勢を矯正する姿勢矯正ロール614、定着ベルトモジュール61と加圧ロール62とが圧接される領域であるニップ部N内の下流側領域に配置され、用紙Pを定着ベルト610から剥離する剥離部材の一例としての剥離パッド64、ニップ部Nの下流側において定着ベルト610を張架するアイドラーロール615により主要部が構成されている。
定着ロール611は、外径65mm、長さ360mm、厚さ10mmのアルミニウムからなる円筒状のコアロール(芯金)に、コアロール表面の金属磨耗を防止する保護層として、厚さ200μmのフッ素樹脂が皮膜して形成されたハードロールである。ただし、定着ロール611は、この構成に限られるものではなく、加圧ロール62との間でニップ部Nを形成する際に、加圧ロール62からの押圧力に対して殆ど変形を生じない充分にハードなロールとして機能する構成であればよい。そして定着ロール611は、図示しない駆動モータからの駆動力を受けて、264mm/sの表面速度で矢印C方向に回転する。
また、定着ロール611の内部には、加熱源として定格900Wのハロゲンヒータ616aが配設され、定着ロール611の表面に接触するように配置された温度センサ617aの計測値に基づき、画像形成装置の制御部10(図1参照)が定着ロール611の表面温度を150℃に制御している。
定着ベルト610は、周長314mm、幅340mmのフレキシブルなエンドレスベルトである。また、定着ベルト610は多層構造を有しており、厚さ80μmのポリイミド樹脂で形成されたベース層と、ベース層の表面側(外周面側)に積層された厚さ100〜200μmのシリコーンゴムからなる弾性体層と、さらに弾性体層上に被覆された厚さ30〜100μmのテトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)チューブからなる離型層とで構成されている。ここでは、弾性体層は、特にカラー画像に対する画質向上のために設けられたものである。なお、定着ベルト610の構成は、使用目的や使用条件等の装置設計条件に応じて、材質・厚さ・硬度等を適宜選択することができる。そして、定着ベルト610は、定着ロール611により矢印D方向に回動する。
テンションロール612は、ニップ部Nの上流側に配置された外径30mm、肉厚2mm、長さ360mmのアルミニウムで形成された円筒状ロールである。そして、テンションロール612の内部には加熱源として定格1500Wのハロゲンヒータ616bが配設されており、温度センサ617bと制御部10(図1参照)とによって、表面温度が190℃に制御されている。したがって、テンションロール612は、定着ベルト610を張架する機能とともに、定着ベルト610を内周面側から加熱する機能をも併せ持っている。
また、テンションロール612の両端部には、定着ベルト610を外側に押圧するバネ部材を備えたテンション調整装置(不図示)が配設されている。それにより、テンションロール612は、定着ベルト610の張力を所定値(例えば、15kgf)に調整する機能を有している。
さらに、テンションロール612には、アイドラーロール615の近傍に配置された定着ベルト610のエッジ位置を検知するベルトエッジ位置検知機構の検知結果に応じて、定着ベルト610の軸方向における当接位置を変位させる軸変位機構(不図示)が配設されている。それにより、定着ベルト610の蛇行(ベルトウォーク)を制御するステアリングロールとしても機能する。
なお、このような定着ベルト610に対する蛇行制御は、姿勢矯正ロール614において行なうように構成することもできる。
外部加熱ロール613は、外径25mm、肉厚2mm、長さ360mmのアルミニウムで形成された円筒状ロールである。また、外部加熱ロール613の表面には厚さ20μmのPFAからなる離型層が形成されている。この離型層は、定着ベルト610の外周面からの僅かなオフセットトナーや紙粉が外部加熱ロール613に堆積するのを防止するために形成されるものである。
外部加熱ロール613の内部には、加熱源としての定格1000Wのハロゲンヒータ616cが配設されており、温度センサ617cと制御部10(図1参照)とによって、表面温度が190℃に制御されている。したがって、外部加熱ロール613は、定着ベルト610を張架する機能とともに、定着ベルト610を外周面側から加熱する機能をも併せ持っている。したがって、本実施の形態では、定着ロール611とテンションロール612および外部加熱ロール613とによって定着ベルト610が加熱される構成を採用している。
また、姿勢矯正ロール614は、外径15mm、長さ360mmのアルミニウムで形成された円柱状ロールである。姿勢矯正ロール614は、定着ベルト610がニップ部Nに円滑に進入するように、定着ベルト610の姿勢を矯正する機能を有している。
剥離パッド64は、押圧部材の一例としての剥離押圧パッド641(後段の図3参照)と、剥離角度設定部材の一例としての剥離ロール(ロール状部材、回転部材:後段の図3参照)642とで構成され、加圧ロール62が定着ベルト610を介して定着ロール611に圧接される領域(「ロールニップ部N1」:後段の図3参照)の下流側近傍位置において、定着ロール611の軸方向全域に亘って配置されている(後段の図3参照)。ここで、剥離押圧パッド641は、例えばSUSやアルミニウムといった金属の剛体で形成された断面が略円弧形状のブロック部材である。そして、定着ロール611の周面近傍位置に配置され、定着ベルト610を加圧ロール62に押圧している。また、剥離ロール642は、例えば外径4〜8mmのステンレスからなる円柱状ロールである。そして、剥離押圧パッド641の定着ベルト610の回動方向下流側領域であって、かつ加圧ロール62と対向する位置において剥離押圧パッド641に回転自在に軸支され、定着ベルト610が加圧ロール62から急激に離れるようにその進行方向を屈曲させている。
このような構成を有する剥離パッド64は、定着ベルト610を介して加圧ロール62を所定の幅領域(本実施の形態では、定着ベルト610の進行方向に沿って6mmの幅)に亘って所定の荷重(例えば、剥離パッド64の長手方向の長さを380mmとして、15kgf)で均一に押圧することで、後段で述べる「剥離ニップ部N2」(後段の図3参照)を形成している。
また、アイドラーロール615は、外径12mm、長さ360mmのステンレスで形成された円柱状ロールである。アイドラーロール615は、剥離パッド64の定着ベルト610進行方向下流側近傍であって、かつ定着ベルト610が再び定着ロール611に張架されて、定着ベルト610が定着ロール611に巻き付けられる(ラップされる)領域(ラップ領域)よりも上流側の領域にて、剥離パッド64を通過した定着ベルト610を剥離パッド64から離れるように導く位置に配置されている。そして、剥離パッド64を通過した定着ベルト610を定着ロール611に向けて円滑に回動させている。さらに、アイドラーロール615の近傍には、定着ベルト610のエッジ位置を検知するベルトエッジ位置検知機構(不図示)が配設されている。
次に、加圧ロール62は、直径45mm、長さ360mmのアルミニウムからなる円柱状ロール621を基体として、基体側から順に、シリコーンゴムからなる厚さ10mmの弾性層622と、膜厚100μmのPFAチューブからなる離型層623とが積層されて構成されたソフトロールである。そして、加圧ロール62は、定着ベルトモジュール61に押圧されるように設置され、定着ベルトモジュール61の定着ロール611が矢印C方向へ回転するのに伴い、定着ロール611に従動して矢印E方向に回動する。その進行速度は、定着ロール611の表面速度と同じ264mm/sである。
続いて、定着ベルトモジュール61と加圧ロール62とが圧接されたニップ部Nについて説明する。
図3は、ニップ部Nの近傍領域を表す概略断面図である。図3に示したように、定着ベルトモジュール61と加圧ロール62とが圧接されたニップ部Nには、定着ベルト610が定着ロール611にラップされたラップ領域内において、加圧ロール62が定着ベルト610の外周面に圧接するように配置されることにより、ロールニップ部(第1ニップ部)N1が形成されている。
ここで、本実施の形態の定着装置60では、上述したように、ロールニップ部N1を形成する一方のロールである定着ロール611は、アルミニウムの芯金(コアロール)の表面に耐熱性樹脂(フッ素樹脂)を被覆して構成されたハードロールであって、定着ロール611には弾性層は被覆されていない。また、ロールニップ部N1を形成する他方のロールである加圧ロール62は、弾性層622が被覆されたソフトロールである。
このような定着ロール611と加圧ロール62との構成により、本実施の形態のロールニップ部N1では、加圧ロール62の弾性層622が変形することでロールニップ部N1が形成されており、加圧ロール62側がニップ(ロールニップ部N1)を形成するロール(NFPR:NIP Forming Pressure Roll)として機能している。すなわち、ロールニップ部N1では、定着ロール611には凹みが殆ど生じず、加圧ロール62表面のみが大きく凹んだ状態(加圧ロール62の凹み量>定着ロール611の凹み量)が形成されることで、定着ベルト610の進行方向に所定の幅を持ったニップ領域を作り出している。
このように、本実施の形態の定着装置60では、ロールニップ部N1において定着ベルト610がラップされている側の定着ロール611は殆ど変形せず、円筒形状が維持されている。そのため、定着ベルト610は定着ロール611表面の円周面に沿って回動し、その回動半径に変動が生じることがないので、進行速度を一定に維持しながらロールニップ部N1を通過することができる。それにより、定着ベルト610がロールニップ部N1を通過する際にも、定着ベルト610にはシワや歪みが極めて発生し難い。その結果、定着画像に画像乱れが生じることが抑制され、良質の定着画像を安定的に提供することができる。なお、本実施の形態の定着装置60では、ロールニップ部N1は定着ベルト610の進行方向に沿って15mmの幅に設定されている。
さらに、ロールニップ部N1の下流側近傍には、剥離押圧パッド641と剥離ロール642とで構成された剥離パッド64が配設されている。そして、剥離パッド64は定着ベルト610を加圧ロール62表面に押圧している。それにより、ロールニップ部N1の下流側には、ロールニップ部N1に連続して、定着ベルト610が加圧ロール62表面にラップされた剥離ニップ部(第2ニップ部)N2が形成されている。
図3に示したように、剥離ニップ部N2を形成する剥離パッド64は、剥離押圧パッド641の断面が略円弧形状に形成され、ロールニップ部N1の下流側近傍にて定着ロール611の軸方向に沿って配置されている。さらに、剥離押圧パッド641の定着ベルト610の回動方向下流側領域であって、かつ加圧ロール62と対向する位置に、剥離ロール642が回転自在に配設されている。そのため、剥離ニップ部N2を通過した後の定着ベルト610は、剥離ロール642を通過する時点で進行方向が屈曲するように急激に変化し、剥離押圧パッド641の外側面から離隔するようにアイドラーロール615の方向に向けて回動する。そのため、ロールニップ部N1および剥離ニップ部N2を通過した用紙Pは、剥離ニップ部N2を出た時点で定着ベルト610の進行方向の変化に追随できなくなり、用紙Pは自身の所謂「コシ」によって定着ベルト610から剥離される。このようにして、剥離ニップ部N2の出口部において、用紙Pに対する曲率分離が安定的に行なわれる。
続いて、剥離パッド64の配置位置と、剥離パッド64により形成される剥離ニップ部N2のニップ圧分布(ニップ圧プロファイル)とについて述べる。
剥離パッド64は、上述したようにロールニップ部N1の下流側近傍に配設されている。それにより、ロールニップ部N1および剥離ニップ部N2からなるニップ部N内においては、ロールニップ部N1内でニップ圧がピークとなる位置(後段の図5参照)から剥離ニップ部N2の最下流位置に至るまでの領域で、ニップ圧が所定値以下に落ち込んだ谷間の領域が発生することが抑制され、ニップ圧が連続的に単調減少するように設定することが可能となる。そのため、本実施の形態の定着装置60では、後段で詳述する剥離パッド64の構成に基づく作用も加えて、安定的な用紙分離を実現すると同時に、画像ムラ等といった画像不良のない高品質の定着画像を提供することが可能となる。
ここでは、まず、ロールニップ部N1の下流側近傍に配設された剥離パッド64の剥離押圧パッド641により、ニップ圧が所定値以下に落ち込む谷間の領域が発生することが抑制され、ニップ部N内でニップ圧が連続的に単調減少するように設定される点について説明する。
本実施の形態の定着装置60では、加熱部材として定着ベルト610が定着ロール611を含む複数のロールで張架されて構成された定着ベルトモジュール61を用いている。このような定着ベルトモジュール61を用いた構成は、後段で述べるように、デジタルカラープリンタ1の高速化が図られた場合にも、定着装置60において所定の定着温度を常に維持することができ、また、高速定着動作の開始時に定着温度が落ち込む所謂「温度ドループ現象」の発生を抑制することができるという優れた特長を有している。
しかし、かかる定着ベルトモジュール61を用いた定着装置60においても、用紙Pの表面にはトナー像が担持されているため、定着ベルト610の熱によってトナー像が溶融した際に、トナー像が接着剤となって用紙Pと定着ベルト610との間に付着力が働く。そのため、従来の定着装置と同様に、定着ベルト610表面から用紙Pを剥離する機構を設ける必要がある。特に画像形成装置の高速化を図った場合には、定着装置60において一旦剥離不良が生じて紙詰まり(ジャム)が生じると、その影響を受けて損傷する後続の用紙Pの枚数も多くなることから、ニップ部Nを高速で通過した用紙Pを定着ベルト610側から安定的に、かつ確実に剥離する必要がある。
その際に、用紙Pを定着ベルト610表面から剥離する機構として従来からの分離爪を用いるとすると、用紙Pを定着ベルト610側から安定的に剥離するために、分離爪を定着ベルト610に当接させて配設する必要がある。そのために、分離爪を用いた場合には定着ベルト610表面が分離爪によって磨耗され易くなり、次のような問題が発生する可能性が高い。すなわち、定着ベルト610表面に分離爪による磨耗痕が生じ、定着画像上に定着ベルト610表面の磨耗痕に対応した定着ムラが発生して画像品質を低下させる場合がある。また、磨耗痕上にオフセットしたトナーが次第に付着堆積して、定着画像上に汚れを生じさせることもある。さらには、定着ベルト610表面の磨耗が進むと、薄層の定着ベルト610は最終的に破断するに至り、定着装置60の機能が損なわれるおそれもある。そのため、定着ベルト610を用いる定着ベルトモジュール61において用紙分離を行うには、上述したように、分離爪のような当接部材を必要としない、曲率分離による剥離機構が最適である。
そこで、本実施の形態の定着ベルトモジュール61では、ニップ部Nの下流部に定着ベルト610の進行方向を急激に変化させて、用紙Pを定着ベルト610から剥離する剥離部材、すなわち剥離パッド64を配設している。
ところが、剥離パッド64を配設することにより、ロールニップ部N1に連続して剥離ニップ部N2を形成すると、剥離ニップ部N2内の剥離パッド64が配設された領域(剥離パッド64と加圧ロール62との圧接部)N2Tよりもロールニップ部N1側に位置する境界領域N2S(図3参照)では、定着ベルト610を定着ロール611および加圧ロール62のいずれにも直接押圧する部材が存在しない。そのため、この境界領域N2Sでは定着ベルト610の張力のみによって加圧ロール62に圧接されることとなり、この境界領域N2Sでのニップ圧(以下、境界領域N2Sでのニップ圧をPnとする。)は定着ベルト610の張力のみで形成されることとなる。そのため、剥離パッド64をロールニップ部N1の下流側端部N1E(図3参照)から所定の距離以上に離隔して配設すると、境界領域N2Sは、ロールニップ部N1のニップ圧と剥離パッド64が配設された領域N2Tでのニップ圧との狭間となって、ニップ圧Pnが所定値(これをPn1とする。)よりも低く落ち込んだ谷間の領域として形成される。すなわち、境界領域N2Sのニップ圧Pnは、ロールニップ部N1のニップ圧および剥離パッド64が配設された領域N2Tのニップ圧よりも相対的に低くなる。
ここで図4は、剥離パッド64をロールニップ部N1の下流側端部N1Eから所定の距離以上に離隔して配設した場合のニップ部N(ロールニップ部N1および剥離ニップ部N2)のニップ圧プロファイルの概略を示した図である。図4に示したように、この場合には、剥離ニップ部N2において、ロールニップ部N1との境界領域N2Sにニップ圧Pnが所定値Pn1以下に落ち込んだ谷間の領域が形成されている。
ところで、本実施の形態の定着装置60による定着プロセスでは、トナー像を担持した用紙Pは、ロールニップ部N1において加熱および加圧されてトナーが溶融圧着される。その際に、ロールニップ部N1内において熱を受けた用紙Pやトナーからは、用紙P中の水分が気化して水蒸気を発生させたり、トナー中の空気が熱膨張しようとする。ところが、ロールニップ部N1では高いニップ圧が印加されているため、定着ベルト610と加圧ロール62との間に水蒸気や膨張した空気によるエアーギャップ(気泡)が生じることはない。
しかし、剥離ニップ部N2内のロールニップ部N1との境界領域N2Sにおけるニップ圧Pnが所定値Pn1以下の低い状態に形成されていると、ロールニップ部N1で抑え込まれていた気泡が境界領域N2Sにおいては抑止できずに発生することとなる。そして、気泡が発生した状態で、用紙Pが剥離パッド64の配設されたニップ圧の高い領域N2Tに進入すると、境界領域N2Sにおいて発生した気泡がその高いニップ圧によって用紙Pの表面上を動き回ることとなる。そうすると、用紙P上のトナー像は、ロールニップ部N1を通過した直後であって、溶融したトナーが未だ完全に固化されていない状態にあるため、気泡が動き回ることによってトナー像が乱される現象が生じる。その結果、定着画像にムラ等の画像不良が発生するという事態を招来することとなる。
そこで、本実施の形態の定着装置60では、剥離パッド64は、ロールニップ部N1の下流側近傍に配設している。このように剥離パッド64を設置することで、剥離ニップ部N2内におけるロールニップ部N1と剥離パッド64が配設された領域N2Tとの間の境界領域N2Sの幅を極力狭く設定することが可能となる。それにより、定着ベルト610の張力のみによって加圧ロール62に圧接される領域が狭くなる。そのため、図5(本実施の形態の剥離パッド64を配設した場合のニップ部Nのニップ圧プロファイルの概略を示した図)に示したように、境界領域N2Sにおいてニップ圧Pnが所定値Pn1よりも落ち込む谷間の領域が発生することを抑制することができる。そして、ニップ部N内におけるロールニップ部N1内でニップ圧がピークとなる位置から剥離ニップ部N2の最下流位置に至る領域において、ニップ圧が連続的に単調減少するように設定することが可能となる。
このように、境界領域N2Sのニップ圧Pnを所定のPn1よりも高く設定できるので、境界領域N2Sにおいて気泡の発生を抑止することができる。さらには、ロールニップ部N1内でニップ圧がピークとなる位置から剥離ニップ部N2の最下流位置に至るまで、ニップ圧を連続的に単調減少するように設定することにより、ロールニップ部N1において高いニップ圧により抑え込まれていた水蒸気や熱膨張しようとする空気は、剥離ニップ部N2を通過するまでの経路で徐々に開放されることとなり、上記したような気泡が動き回る現象の発生を抑制することが可能となる。そのため、未だ完全に固化されていない状態のトナー像が乱されることが殆ど無くなり、定着画像に画像ムラ等の画像不良が発生するのを抑制することができる。
ここで、境界領域N2Sにおいて気泡が発生するのを抑止するためには、境界領域N2S内の圧力(ニップ圧)Pnが次の(1)式を満たすことが必要である。
Pn≧Po×(Tn/To−1) ……(1)
すなわち、上記した境界領域N2Sでのニップ圧Pnの所定値Pn1は、
Pn1=Po×(Tn/To−1)
となる。
なお、Tnは定着ベルト610の絶対温度、Toは定着ロール611から充分に離れた位置における空気の絶対温度(環境温度)、Poは大気圧である。
(1)式は、次のように導かれる。まず、理想気体の状態方程式は次の(2)式で表される。
PV = nRT ……(2)
なお、Pは圧力、Vは体積、nはモル数、Rは気体定数、Tは絶対温度である。
したがって、次の(3)式および(4)式が導かれる。
(Po+Pn)×Vn = nRTn ……(3)
PoVo = nRTo ……(4)
なお、Vnは境界領域N2S内の気泡の体積、Voは大気圧下での気泡の体積である。 境界領域N2S内で気泡の発生を抑制するには、Vn≦Voなる条件を満たせばよい。そこで、(3)式および(4)式より、次の(5)式が導かれる。
Tn/(Po+Pn)≦To/Po ……(5)
さらに(5)式を変形すると、上記した式(1)が導かれる。
そして、剥離パッド64は、式(1)を満たすニップ圧Pnとなるような充分に狭い境界領域N2Sが形成されるように、ロールニップ部N1の下流側近傍位置に配設されることとなる。
続いて、本実施の形態の剥離パッド64の構成について述べる。
図6は、剥離パッド64の構成を説明する概略断面図である。図6に示したように、本実施の形態の剥離パッド64は、ロールニップ部N1の下流側近傍にて定着ベルト610を加圧ロール62に押圧する剥離押圧パッド641と、剥離押圧パッド641の定着ベルト610の回動方向下流側領域であって、かつ加圧ロール62と対向する位置において剥離押圧パッド641に回転自在に軸支された剥離ロール642とで構成されている。そして、ニップ部Nでのニップ圧が図5に示したニップ圧プロファイルを形成するように、剥離押圧パッド641により、定着ベルト610を介して加圧ロール62を押圧している。また、用紙Pが確実かつ安定的に定着ベルト610から剥離されるように、剥離ロール642により、剥離押圧パッド641を通過した定着ベルト610の進行方向を急激に屈曲させている。
このように、本実施の形態の剥離パッド64では、図5に示したニップ圧プロファイルを形成する剥離押圧パッド641と、用紙Pを剥離する剥離ロール642とにより、それぞれ機能を分担させることで、後述する定着ベルト610の円滑な回動が確保できるので、剥離の安定性・確実性を確保しつつ高品質な定着画像の形成を図ることが可能となる。
まず、本実施の形態の剥離押圧パッド641について述べる。剥離押圧パッド641の内側面641aは、剥離押圧パッド641が定着ロール611の周面に近接して配設可能な形状により形成されている。すなわち、剥離押圧パッド641の内側面641aは、剥離押圧パッド641を定着ロール611側に極力近接させて(本実施の形態では、剥離パッド64と定着ロール611とのギャップを0.5mm)配置するために、定着ロール611の周面に倣った湾曲面で形成されている。
図6に示した境界領域N2Sを極力狭く設定するためには、ロールニップ部N1(図3も参照)の下流側近傍であって、定着ロール611と加圧ロール62とで画成されたくさび状領域Qにおいて、剥離押圧パッド641が加圧ロール62表面を押圧するように配置する必要がある。そのため、剥離押圧パッド641の内側面641aの上流側端部(剥離押圧パッド641の押圧面641cの上流側端部)64pをロールニップ部N1の下流側端部N1Eの近傍、すなわち上記したくさび状領域Q内の定着ロール611に近接した位置に設置できるように、内側面641aは定着ロール611の周面に倣った湾曲面に形成されている。本実施の形態の剥離パッド64では、剥離押圧パッド641の内側面641aは曲率半径66mmの略円周面で形成している。なお、定着ロール611の周面に倣う湾曲面であれば、略円周面等の曲面に限らず、複数の平面を段階的に屈曲させて形成することも可能である。
また、剥離押圧パッド641の内側面641aの上流側端部64pをくさび状領域Q内の定着ロール611に近接した位置に設置できるようにすると同時に、上流側端部64p部分の強度および剛性を確保するために、剥離押圧パッド641を剛体で構成するとともに、内側面641aと押圧面641cとのなす角度θ1は、15〜50°に設定するのが好適である。
剥離押圧パッド641の外側面641bは、定着ベルト610が加圧ロール62から離隔した後、アイドラーロール615および定着ロール611への円滑な進行を阻害しないように、アイドラーロール615に向かう傾斜面で形成されている。
剥離押圧パッド641の押圧面641cは、剥離ニップ部N2において定着ベルト610をスムーズに移動させるため、押圧力にバラツキが生じにくい平面で形成されている。なお、押圧面641cは、加圧ロール62の円周面に倣った凹状曲面で形成することもでき、それにより押圧力のバラツキの発生を極めて小さく抑えることが可能である。その場合に、押圧面641cは、定着ベルト610と摺擦するので、定着ベルト610と押圧面641cとの摺動抵抗を低減するため、その表面に、摩擦係数が小さく、かつ耐摩耗性に優れた例えばテフロン(登録商標)等を被覆した構成とすることが好ましい。
加えて、剥離押圧パッド641の押圧面641cには、下流側端部領域、すなわち定着ベルト610が加圧ロール62から離隔する領域(剥離領域)Rにおいて、剥離ロール642が剥離押圧パッド641にて矢印M方向に回転自在に軸支されている。
また、剥離押圧パッド641の押圧面641cにおいては、加圧ロール62を押圧する押圧力が図5に示したニップ圧プロファイルとなるように設定されている。すなわち、剥離押圧パッド641の押圧面641cの上流側領域でのニップ圧は、上記した(1)式で示される気泡の発生を抑止可能なニップ圧Pn1以上に設定されている。それにより、境界領域N2Sのニップ圧をPn1以上に安定して設定することが可能となり、境界領域N2Sでの気泡の発生を抑止することができる。また、定着画像に高い光沢性を付与することに寄与することもできる。
さらに、ニップ圧Pn1以上に設定されたロールニップ部N1において抑え込まれていた水蒸気や熱膨張しようとする空気を徐々に開放させるため、ロールニップ部N1内でニップ圧がピークとなる位置(ピーク位置)からニップ圧が連続的に単調減少するように(図5参照)、剥離押圧パッド641では、押圧面641cによる押圧力が下流側端部64qに向かうに従って低くなるように設定されている。
次に、剥離領域Rにて剥離押圧パッド641に回転自在に軸支されている剥離ロール642について述べる。この剥離ロール642は、曲率半径の小さい(例えば、外径4〜8mm)ロール部材である。このように、剥離領域Rに曲率半径の小さい剥離ロール642を配設することで、加圧ロール62の接線と加圧ロール62から離隔される定着ベルト610とのなす角(剥離角)θ2を容易に40°以上となるように設定することができる(図6参照)。また、アイドラーロール615の配置位置および剥離押圧パッド641の外側面641b形状を適切に設定することにより、剥離角θ2を90°以上に設定することも可能となる。そのため、剥離ロール642によって用紙Pの剥離性能を確実に向上させることが可能となる。
さらに、剥離ロール642は剥離押圧パッド641にて矢印M方向に回転自在に軸支されているので、剥離領域Rにおいて定着ベルト610を急激に屈曲させても、定着ベルト610はスムーズにその進行方向を変えることが可能となる。そのため、定着ベルト610の円滑な回動を促進することもできる。
このように、剥離領域Rにおいて、剥離角度設定部材として剥離ロール642を配設することにより、用紙Pを定着ベルト610から確実かつ安定的に剥離すると同時に、押圧面641cの幅面積を極めて小さく形成することも可能となる。
図7は、押圧面641cの幅面積と剥離角との関係を比較する図である。図7では、(a)が剥離角を大きく設定した場合を示し、(b)が押圧面641cの幅面積を小さく形成した場合を示している。図7(a)に示したように、確実に用紙Pの剥離が可能となる剥離角θ2を剥離押圧パッド641のみによって形成しようとすれば、剥離押圧パッド641が定着ロール611と加圧ロール62とで画成される領域に配設される構成上の要因から、押圧面641cの幅面積をある程度広く形成する必要が生じる。この場合には、定着ベルト610と剥離押圧パッド641の押圧面641cとの接触面積が大きくなって、摺動摩擦は大きなものとなる。一方、図7(b)に示したように、押圧面641cの幅面積を小さく形成しようとすれば、確実に用紙Pの剥離が可能となる剥離角θ2を形成することが困難となる。
これに対して、本実施の形態の剥離パッド64では、図5に示したニップ圧プロファイルを形成する剥離押圧パッド641と、用紙Pを剥離する剥離ロール642とにより、それぞれ機能を分担させたことにより、剥離押圧パッド641では、下流側端部領域(剥離領域R)での形状を用紙Pの剥離が確実となる剥離角θ2に形成する必要がなくなり、押圧面641cの幅面積を極めて小さく形成することができる。そのため、剥離ニップ部N2を通過する際の剥離押圧パッド641と定着ベルト610との摺動摩擦を効果的に低減することが可能となる。それにより、定着ベルト610の回動を円滑に行なうことができるため、定着ベルト610の移動速度のムラに起因する画像乱れの発生を抑制することができる。その結果、剥離ロール642による確実かつ安定的な剥離性能を維持しながら、高品質の定着画像の形成を図ることが可能となる。
加えて、剥離ロール642での加圧ロール62側へのニップ圧は、図5に示したニップ圧プロファイルにおける剥離ニップ部N2の最下流位置での低圧に設定されている(例えば、剥離ロール642の軸方向の長さを380mmとして、0.5kgf)。そのため、加圧ロール62表面に変形(凹部)が生じない。すなわち、剥離ロール642が定着ベルト610を加圧ロール62に押圧する押圧力により、加圧ロール62表面に変形(凹部)が生じることが抑制されている。そのため、以下に述べるように、用紙Pの定着ベルト610からの剥離をより安定的に行なうことができる。
すなわち、剥離ロール642からの押圧力を受ける加圧ロール62は、シリコーンゴム等からなる弾性層622を備えた弾性ロール(ソフトロール)である。そのため、剥離ロール642からの押圧力が必要以上に高ければ、剥離領域Rにおいて加圧ロール62表面に変形(凹部)を生じさせる。その場合には、剥離ニップ部N2を通過した用紙Pには、剥離領域Rでの加圧ロール62表面の変形(凹部)により、アップカールが形成されることとなる。そのため、用紙Pの進行方向に対する定着ベルト610の進行方向の変化は相対的に小さくなり、用紙Pの定着ベルト610からの剥離は不安定なものとなる。
これに対して、本実施の形態の剥離ロール642では、加圧ロール62表面に変形(凹部)を生じさせない押圧力に設定されている。そのように設定することで、図8(剥離ロール642が加圧ロール62表面に変形(凹部)を生じさせない押圧力で設定された場合を示す図)に示したように、剥離領域Rにおいて加圧ロール62表面に変形(凹部)は生じない。そのため、剥離ニップ部N2を通過した用紙Pは、直進するか、または剥離ニップ部N2での加圧ロール62の周面に沿って若干のダウンカールが形成された方向に進行する。それにより、用紙Pの進行方向に対する定着ベルト610の進行方向の変化は相対的に大きなものとなり、用紙Pを定着ベルト610から安定して剥離することが可能となる。
なお、剥離ロール642の加圧ロール62側へのニップ圧を加圧ロール62表面に変形(凹部)が生じない低圧に設定しても、剥離ロール642の配置位置において上述したようなエアーギャップ(気泡)に起因する画像乱れが生じることは殆どない。剥離押圧パッド641の押圧面641cにより図5に示したニップ圧プロファイルが設定されているため、剥離ロール642の配置位置では、ロールニップ部N1において抑え込まれていた水蒸気や熱膨張しようとする空気はすでに開放されているためである。
上述したように、本実施の形態の剥離パッド64では、剥離押圧パッド641は、剥離押圧パッド641の内側面641aが定着ロール611の周面に近接して配置される。それと同時に、剥離押圧パッド641の押圧面641cにおいては、加圧ロール62を押圧する押圧力が図5に示したニップ圧プロファイルとなるように設定されている。それにより、境界領域N2Sでのニップ圧を気泡の発生を抑止可能なニップ圧Pn1以上に確保して、境界領域N2Sにおいて気泡の発生を抑止可能としている。また、剥離ニップ部N2において、ロールニップ部N1において抑え込まれていた水蒸気や熱膨張しようとする空気を徐々に開放することもできる。そのため、未だ完全に固化されていない状態のトナー像が乱されることが殆ど無くなり、定着画像に画像ムラ等の画像不良が発生するのを抑制することができる。
また、剥離領域Rにおいて、剥離角度設定部材としての剥離ロール642を配設することにより、用紙Pの剥離性能を確実に向上させることが可能となる。それと同時に、押圧面641cの幅面積を極めて小さく形成することも可能となる。そのため、剥離ニップ部N2を通過する際の剥離押圧パッド641と定着ベルト610との摺動摩擦を低減することができる。それにより、定着ベルト610の回動を円滑に行なうことが可能となるため、定着ベルト610の移動速度のムラに起因する画像乱れの発生を抑制することができる。その結果、剥離ロール642による確実かつ安定的な剥離性能を維持しながら、安定して高品質の定着画像の形成を図ることが可能となる。
ここで、本実施の形態の定着装置60での用紙分離性能に関する評価を行った。本評価試験では、プロセススピードを264mm/sに設定し、20万枚の通紙を行った。使用する用紙Pとしては、王子製紙(株)製の比較的薄いOKトップコートN紙(85gsm紙)とOKトップコートN紙(127.9gsm紙)とを用いた。さらに、用紙P上に形成するトナー画像としては、3色(マゼンタ,シアン,イエロー)を重ね合わせたトナー像で先端余白幅3mmとしたベタ画像(濃度100%)を用いた。このような坪量の小さい薄紙の用紙Pを用い、先端余白幅が狭いベタ画像を形成するといった本評価試験での評価条件は、用紙分離に対して厳しい条件であることから採用したものである。
なお、比較例として、剥離パッド64を配設しない構成、すなわちニップ部Nがロールニップ部N1だけで構成された従来の定着装置を用い、同様の評価試験を行った。
その結果、本実施の形態の定着装置60では、20万枚の通紙すべてで剥離に成功し、ジャムの発生は認められなかった。これに対し、従来の定着装置においては、初期より分離不良が発生した。このように、本実施の形態の定着装置60での用紙分離性能の優位性が確認された。
ところで、剥離パッド64の剥離押圧パッド641においては、押圧面641cの上流側端部64pは、境界領域N2Sの幅を極力狭くするために、定着ロール611に近接した位置に配置されるが、その際に、上流側端部64pを定着ロール611と当接するように配置することも可能である。このように設定すれば、境界領域N2Sを殆ど無くし、剥離ニップ部N2の殆ど全域を剥離パッド64と加圧ロール62との圧接部N2Tで形成することができる。加えて、押圧面641cは、上流側端部64pが定着ロール611からの押圧力も同時に受けることができるので、圧接部N2T全域において充分なニップ圧を形成することが可能となる。
図9は、剥離押圧パッド641の押圧面641cの上流側端部64pを定着ロール611に接触するように設定して、定着ロール611からの押圧力も同時に受ける構成を示した図である。図9に示したように、この場合には、押圧面641cの上流側端部64pは、くさび状領域Qの最深部を埋めるように、くさび形状で形成される。このように、押圧面641cの上流側端部64pをくさび形状に形成することで、定着ロール611からの押圧力を安定して受けることができると同時に、定着ロール611と摺擦しても、上流側端部64pの定着ロール611との接触面および定着ロール611表面に磨耗が生じ難くなる。そのため、長期に亘って剥離パッド64の機能を維持することが可能である。
なお、この構成では、剥離押圧パッド641は、定着ベルト610や定着ロール611と摺擦するので、定着ベルト610や定着ベルト610の進行をスムーズに行ない、また、定着ベルト610や定着ロール611との磨耗を低減するため、その表面に、摩擦係数が小さく、かつ耐摩耗性に優れた例えばテフロン(登録商標)等を被覆した構成とすることが好ましい。
次に、本実施の形態の定着装置60における定着動作について説明する。
画像形成装置の二次転写部T2(図1参照)において未定着トナー像が静電転写された用紙Pは、搬送ベルト76,77により、定着装置60のニップ部Nに向けて(図2参照:矢印F方向)搬送されてくる。そして、ニップ部Nを通過する用紙P表面の未定着トナー像は、主としてロールニップ部N1に作用する圧力と熱とにより用紙Pに定着される。
このとき、本実施の形態の定着装置60では、ニップ部Nに作用する熱は、主として定着ベルト610によって供給される。定着ベルト610は、定着ロール611の内部に配置されたハロゲンヒータ616aから定着ロール611を通じて供給される熱と、テンションロール612の内部に配置されたハロゲンヒータ616bからテンションロール612を通じて供給される熱と、外部加熱ロール613の内部に配置されたハロゲンヒータ616cから外部加熱ロール613を通じて供給される熱とによって加熱されるように構成されている。そのため、主にテンションロール612および外部加熱ロール613から適切かつ速やかに定着ベルト610に熱エネルギーを補給することができるので、ニップ部Nにおいては、プロセススピードが264mm/sという高速であっても充分な熱量を確保することができる。
すなわち、本実施の形態の定着装置60では、直接的な加熱部材として機能する定着ベルト610は、極めて熱容量を小さく形成することができる。加えて、定着ベルト610は、熱供給部材である定着ロール611と、テンションロール612および外部加熱ロール613とに広いラップ面積(大きなラップ角度)で接触するように構成されている。そのため、定着ベルト610が1回転する短かい期間に、定着ロール611やテンションロール612および外部加熱ロール613から充分な熱量が供給されるので、定着ベルト610を必要な定着温度に短時間で復帰させることが可能となる。それにより、ニップ部Nにおいては、定着装置60が高速化されても、所定の定着温度を常に維持することができる。
その結果、本実施の形態の定着装置60においては、連続通紙時においても定着温度を略一定に維持することが可能となる。また、高速定着動作の開始時に定着温度が落ち込む温度ドループ現象の発生を抑制することが可能となる。特に、熱容量の大きな厚紙等に対する定着においても、定着温度の維持および温度ドループの発生を抑制することができる。さらには、紙種に対応させて定着温度を途中で切り替える(定着温度のアップおよびダウンの双方を含む。)必要がある場合にも、定着ベルト610は熱容量が小さいので、ハロゲンヒータ616a、さらにはハロゲンヒータ616b、ハロゲンヒータ616cの出力調整により、所望の温度への切り替えを容易、かつ速やかに行うことも可能となる。
また、本実施の形態の定着装置60では、ロールニップ部N1を形成する一方のロールである定着ロール611は、アルミニウムの芯金(コアロール)の表面に耐熱性樹脂(フッ素樹脂)を被覆して構成されたハードロールであって、定着ロール611には弾性層は被覆されていない。また、ロールニップ部N1を形成する他方のロールである加圧ロール62は、弾性層622が被覆されたソフトロールである。
そのため、本実施の形態のロールニップ部N1においては、定着ベルト610がラップされている側の定着ロール611は殆ど変形しない構成が実現されている。それにより、定着ベルト610は、ロールニップ部N1を通過する際に、その進行速度を一定に維持することが可能となり、ロールニップ部N1において定着ベルト610にシワや歪みが生じることを抑制することができる。その結果、ロールニップ部N1を用紙Pが通過する際に、定着ベルト610のシワや歪みに起因するトナー像の乱れの発生が抑えられ、良質の定着画像を安定的に提供することが可能となる。
引き続いて、ロールニップ部N1を通過した後には、用紙Pは剥離ニップ部N2に搬送される。剥離ニップ部N2は、加圧ロール62に剥離押圧パッド641と剥離ロール642とにより構成された剥離パッド64が押圧されて、定着ベルト610が加圧ロール62に圧接するように形成されている。したがって、図3に示したように、ロールニップ部N1は定着ロール611の曲率によって下に凸である湾曲した形状を有するのに対し、剥離ニップ部N2は加圧ロール62の曲率によって上に凸である湾曲した形状を有している。
そのため、ロールニップ部N1において定着ロール611の曲率のもとで加熱加圧された用紙Pは、剥離ニップ部N2において加圧ロール62による相反する方向に向いた曲率に進行方向が変化させられる。その際に、用紙P上のトナー像と定着ベルト610表面との間で微小なマイクロスリップが生じる。それによって、トナー像と定着ベルト610との付着力が弱められ、用紙Pは定着ベルト610から剥離され易い状態が形成される。このように、剥離ニップ部N2は、最終の剥離工程で確実に剥離が行なわれるための準備工程にも位置付けられる。
そして、剥離ニップ部N2の出口(剥離領域R)では、定着ベルト610は剥離ロール642に巻き付くように搬送されるので、定着ベルト610の搬送方向はそこで急激に変化する。そのため、剥離ニップ部N2内において定着ベルト610との付着力が予め弱められた用紙Pは、用紙P自身が有している紙のコシによって定着ベルト610から容易にセルフストリップする。
その際に、上述したように、剥離押圧パッド641は、上記した図5で示されるニップ圧プロファイルを設定している。それにより、境界領域N2Sでのニップ圧を気泡の発生を抑止可能なニップ圧Pn1以上に確保して、境界領域N2Sにおいて気泡の発生を抑止可能とすることができる。また、剥離ニップ部N2でのニップ圧は、剥離押圧パッド641の押圧面641cの下流側端部64qに向かうに従って低くなるように設定されている。そのため、ロールニップ部N1において抑え込まれていた水蒸気や熱膨張しようとする空気を徐々に開放することもできるので、未だ完全に固化されていない状態のトナー像が乱されることが殆ど無くなり、定着画像に画像ムラ等の画像不良が発生するのを抑制することができる。
また、確実に用紙Pの剥離が可能となる剥離角θ2を設定できる剥離ロール642により、剥離パッド64での剥離性能を向上させることが可能となり、用紙Pは剥離ニップ部N2を出た時点で定着ベルト610から安定的に曲率分離される。また、剥離ロール642により、剥離押圧パッド641における押圧面641cの幅面積を極めて小さく形成することも可能となる。そのため、剥離ニップ部N2を通過する際の剥離押圧パッド641と定着ベルト610との摺動摩擦を低減することができる。それにより、定着ベルト610の回動を円滑に行なうことが可能となる。さらには、剥離ロール642は回転自在に軸支されているため、急激に屈曲する剥離領域Rにおいても、定着ベルト610はスムーズにその進行方向を変えることが可能となり、定着ベルト610の円滑な回動を促進することもできる。
そして、定着ベルト610から分離された用紙Pは、剥離ニップ部N2の下流側に配設された剥離補助部材の一例としての剥離案内板83(図2参照)により、その進行方向が導かれる。剥離案内板83により案内された用紙Pは、その後、排紙ガイド65および排紙ロール66によって機外に排出されて、定着処理が完了する。
以上説明したように、本実施の形態の定着装置60は、加熱部材として定着ベルト610が定着ロール611を含む複数のロールで張架されて構成された定着ベルトモジュール61を用いているので、画像形成装置が高速化されても、定着装置60において所定の定着温度を常に維持することができる。さらには、高速定着動作の開始時に定着温度が落ち込む温度ドループ現象の発生を抑制することが可能となる。そのため、高品質な定着画像を短時間で大量に提供することが可能となる。
それとともに、ニップ部Nは、ロールニップ部N1と、ロールニップ部N1の下流側に、ロールニップ部N1に連続して形成された剥離ニップ部N2とで構成されている。そして、剥離ニップ部N2を形成する剥離パッド64は、剥離押圧パッド641により上記した図5で示されるニップ圧プロファイルを設定している。それにより、境界領域N2Sでのニップ圧を気泡の発生を抑止可能なニップ圧Pn1以上に確保して、境界領域N2Sにおいて気泡の発生を抑止可能とすることができる。また、剥離ニップ部N2でのニップ圧は、剥離押圧パッド641の押圧面641cの下流側端部64qに向かうに従って低くなるように設定されている。そのため、ロールニップ部N1において抑え込まれていた水蒸気や熱膨張しようとする空気を徐々に開放することもできるので、未だ完全に固化されていない状態のトナー像が乱されることが殆ど無くなり、定着画像に画像ムラ等の画像不良が発生するのを抑制することができる。
加えて、本実施の形態の定着装置60では、確実に用紙Pの剥離が可能となる剥離角θ2を設定できる剥離ロール642により、剥離パッド64での剥離性能を向上させることが可能となり、用紙Pは剥離ニップ部N2を出た時点で定着ベルト610から確実かつ安定的に曲率分離される。また、剥離ロール642により、剥離押圧パッド641における押圧面641cの幅面積を極めて小さく形成することも可能となる。そのため、剥離ロール642による確実かつ安定的な剥離性能を維持しながら、剥離ニップ部N2を通過する際の剥離押圧パッド641と定着ベルト610との摺動摩擦を低減することができる。それにより、定着ベルト610の回動を円滑に行なうことが可能となるので、高品質な定着画像を安定して提供することができる。
さらには、剥離ロール642は回転自在に軸支されているため、急激に屈曲する剥離領域Rにおいても、定着ベルト610はスムーズにその進行方向を変えることが可能となり、定着ベルト610の円滑な回動を促進することもできる。その際に、剥離領域Rでは、剥離ロール642により加圧ロール62表面に変形(凹部)を生じさせない所定圧以下のニップ圧が設定されている。それにより、剥離パッド64による剥離性能を安定化させることが可能となり、画像形成装置の高速化を図った場合にも、ベタ画像が形成された「コシ」の弱い薄紙に対しても、安定して用紙分離を行うことができる。
[実施の形態2]
実施の形態1では、画像形成装置に搭載される定着装置60において、所定のニップ圧プロファイルを形成する剥離押圧パッド641と、剥離角度設定部材としての定着ベルト610内周面側に設定された剥離ロール642とにより構成された剥離パッド64を用いる場合について説明した。実施の形態2では、所定のニップ圧プロファイルを形成する剥離押圧パッド641と、剥離角度設定部材としての定着ベルト610外周面側に設定された剥離角度調整ロール643とにより構成された剥離パッド64を用いる場合について説明する。なお、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
図10は、本実施の形態の剥離パッド64の構成を説明する概略断面図である。図10に示したように、本実施の形態の剥離パッド64は、ロールニップ部N1の下流側近傍にて定着ベルト610を加圧ロール62に押圧する剥離押圧パッド641と、剥離押圧パッド641の定着ベルト610の回動方向下流側領域であって、かつ剥離押圧パッド641の外側面641bと対向する位置において、矢印J方向に回転自在に軸支された剥離角度設定部材の一方を構成する剥離角度調整ロール(ロール部材、回転部材)643とで構成されている。
剥離押圧パッド641は、実施の形態1と同様に、ニップ部Nでのニップ圧が上記した図5に示したニップ圧プロファイルを形成するように、押圧面641cにより定着ベルト610を介して加圧ロール62を押圧している。また、剥離押圧パッド641の外側面641bには、押圧面641cの下流側端部64qの下流側近傍位置に、剥離角度設定部材の他方を構成する内側に窪んだ湾曲部(凹状部)641dが形成されている。この湾曲部641dは、断面形状が略半円形で形成され、その直径は、剥離角度調整ロール643の外径よりも大きく形成されている。
一方、剥離角度調整ロール643は、例えば外径が8〜10mmのステンレスからなるロール部材である。そして、剥離押圧パッド641の外側面641bに形成された湾曲部641dと対向する位置にて、剥離押圧パッド641方向(矢印Z方向)に接離自在に配設され、定着ベルト610を外周面側から剥離押圧パッド641側に押し付けるように構成されている。
剥離角度調整ロール643は、剥離押圧パッド641に圧接させるように配置された際には、定着ベルト610を介して剥離押圧パッド641の湾曲部641d内部に侵入した位置に設定される。そのため、定着ベルト610は剥離押圧パッド641により湾曲部641dに押し付けられることなり、湾曲部641dの形状に倣って移動することとなる。それにより、押圧面641cの下流側端部64qにおける定着ベルト610が加圧ロール62から離隔する領域(剥離領域)Rにおいて、定着ベルト610の進行方向を急峻に屈曲させることができる。例えば、剥離押圧パッド641の押圧面641cを通過する定着ベルト610の進行方向と、湾曲部641dに進入する定着ベルト610の進行方向とのなす角θ3(剥離角:図10参照)を110°程度に設定することが可能となる。
このように、本実施の形態の剥離パッド64においても、外側面641に形成された湾曲部641dと、湾曲部641dに対応して設けられた剥離角度調整ロール643とにより、剥離角θ3を90°以上といった大きな角度に設定することができる。そのため、実施の形態1の場合と同様に、剥離押圧パッド641においては、押圧面641cの幅面積を極めて小さく形成することができるので、剥離ニップ部N2を通過する際の剥離押圧パッド641と定着ベルト610との摺動摩擦を低減することが可能となる。それにより、定着ベルト610の回動を円滑に行なうことができるため、定着ベルト610の移動速度のムラに起因する画像乱れの発生を抑制することができる。その結果、湾曲部641dと剥離角度調整ロール643とによる確実かつ安定的な剥離性能を維持しながら、高品質の定着画像の形成を図ることが可能となる。
さらに、剥離角度調整ロール643は矢印J方向に回転自在に軸支されているので、定着ベルト610が湾曲部641dをスムーズに進行することが可能である。そのため、定着ベルト610の円滑な回動を促進することもできる。
また、本実施の形態の剥離パッド64では、剥離角度調整ロール643の配置位置を矢印Z方向に自在に設定することで、剥離角θ3を調整することが可能なように構成されている。ここで、図11は、剥離角度調整ロール643を剥離押圧パッド641の湾曲部641d内部に完全に侵入させない位置に設定した場合を示した図である。剥離角度調整ロール643を図11のように設定した場合には、剥離角θ3を図10に示した場合よりは小さく設定することができる。
このように、使用される用紙Pが例えば厚紙である場合、形成される画像の先端余白部が広い場合、画像の印字比率が小さい場合等といった、比較的剥離を容易に行なうことができる場合には、剥離角度調整ロール643の配置位置を調整することにより、剥離角θ3を小さく設定することも可能である。その場合には、剥離領域Rにおいて定着ベルト610に急激な変形が生じるのを極力抑えることができるので、定着ベルト610の寿命を極力延ばすことができる。また、剥離角度調整ロール643表面の磨耗を抑え、剥離角度調整ロール643の寿命も極力延ばすことができる。そのため、定着装置60としての使用可能期間を延ばすことができるというメリットも生じる。
上述したように、本実施の形態の剥離パッド64においても、確実に用紙Pの剥離が可能となる剥離角θ3を設定できるので、剥離パッド64での剥離性能を向上させることが可能となり、用紙Pは剥離ニップ部N2を出た時点で定着ベルト610から確実かつ安定的に曲率分離される。また、剥離押圧パッド641の湾曲部641dと剥離角度調整ロール643とにより、剥離押圧パッド641における押圧面641cの幅面積を極めて小さく形成することも可能となる。そのため、剥離ロール642による確実かつ安定的な剥離性能を維持しながら、剥離ニップ部N2を通過する際の剥離押圧パッド641と定着ベルト610との摺動摩擦を低減することができる。それにより、定着ベルト610の回動を円滑に行なうことが可能となるので、高品質な定着画像を安定して提供することができる。
また、本実施の形態の剥離パッド64では、必要に応じて剥離角度調整ロール643の配置位置を制御することで、定着ベルト610等の寿命を極力延長させることができるので、定着装置60の長期に亘る使用を保証することも可能となる。
[実施の形態3]
実施の形態1では、画像形成装置に搭載される定着装置60において、定着ベルトモジュール61に対して圧接して配置される加圧部材として、加圧ロール62を用いた構成について説明した。実施の形態2では、加圧部材として複数のロールにより加圧ベルト700が張架された加圧ベルトモジュール70を用いた構成について説明する。なお、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
図12は、本実施の形態に係る定着装置90の構成を示す側断面図である。本実施の形態の定着装置90の構成は、上記した実施の形態1の定着装置60において、加圧ロール62に代え、加圧部材として加圧ベルトモジュール70を配設した点が異なることを除いては、実施の形態1の定着装置60と同様である。
本実施の形態の加圧ベルトモジュール70は、加圧ロール701、インレットロール702および張架ロール703の3本のロールにより張架された加圧ベルト700、加圧ベルト700および定着ベルト610を介して定着ロール611に付勢される状態で配置される圧力部材としての圧力パッド704により主要部が構成されている。そして、加圧ベルトモジュール70は定着ベルトモジュール61に押圧されるように設置され、定着ベルトモジュール61の定着ロール611が矢印C方向へ回転するのに伴い、加圧ベルト700は定着ロール611に従動して矢印G方向に回動する。その進行速度は、定着ロール611の表面速度と同じ264mm/sである。
加圧ベルトモジュール70と定着ベルトモジュール61とが圧接されたニップ部Nには、定着ベルト610が定着ロール611に巻き付けられたラップ領域内において、加圧ベルト700が定着ベルト610の外周面に圧接するように形成されたベルトニップ部N3が設定されている。
本実施の形態に係る定着装置90では、加圧ベルト700の内側に圧力パッド704が加圧ベルト700を介して定着ロール611側に向けて付勢された状態で配置され、加圧ベルト700を定着ロール611のラップ領域に押圧している。また、ベルトニップ部N3の最下流部では、加圧ロール701が、加圧手段としての圧縮コイルスプリング(不図示)によって、加圧ベルト700および定着ベルト610を介して定着ロール611の中心軸に向けて付勢されており、定着ロール611および定着ベルト610の当接部に局所的な高圧を生じさせている。
そのため、ベルトニップ部N3を幅広く形成することができるので、用紙P上のトナー像に対するさらなる安定した定着性能を実現することが可能となる。また、加圧ロール701による局所的な高圧によって溶融したトナー像に効率的に圧力を加えるので、高い定着性を保持するとともに、トナー像表面を平滑にしてカラー画像に良好な画像光沢を付与することができる。
ここで、加圧ベルトモジュール70に配設される加圧ベルト700は、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のような耐熱強度の高い樹脂で形成されたベース層で構成されている。ベース層の厚さとしては、例えば50〜125μm程度に形成される。また、加圧ベルト700は、ベース層の定着ロール611側の表面または両面に離型層が被覆された構成を採ることもできる。その場合の離型層としては、フッ素樹脂、例えばPFA等が5〜20μmの厚さでコーティングされたものが好ましい。さらには、必要に応じてベース層と離型層との間に弾性層が形成された積層構造を採ることもできる。その場合、弾性層としては、厚さが100〜200μmのシリコーンゴム等を使用することができる。 本実施の形態の定着装置90においては、加圧ベルト700として、厚さ75μm、幅350mm、周長240mmのポイリミドフィルムのベース層のみにより構成されている。
また、加圧ベルト700を張架する3個のロールは、スチールコアに弾性層としてシリコーンゴムが被覆された加圧ロール701と、ステンレス製のインレットロール702と、ステンレス製の張架ロール703とで構成され、10kgfの張力で加圧ベルト700を張架している。それぞれの外径は、加圧ロール701が25mm、インレットロール702が22mm、張架ロール703が20mmであり、長さは360mmである。また、インレットロール702の内部には、加熱源としてハロゲンヒータ705が配設されている。そして、図示しない温度センサおよび制御部10(図1参照)によりその表面温度は120℃に制御され、加圧ベルト700に予熱を与えている。
加圧ロール701は、加圧手段としての圧縮コイルスプリング(不図示)によって、加圧ベルト700および定着ベルト610を介して定着ロール611の中心軸に向けて(矢印K方向)付勢されており、定着ロール611および定着ベルト610の当接部に局所的な高圧を生じさせている。その場合、この定着ロール611および定着ベルト610に対する局所的な高圧を低荷重で効率良く付与するために、加圧ロール701は定着ロール611より小径に形成されている。
なお、加圧ロール701、インレットロール702および張架ロール703のいずれかのロールには、加圧ベルト700のベルトエッジ位置を検知するベルトエッジ位置検知機構と、ベルトエッジ位置検知機構の検知結果に応じて加圧ベルト700の軸方向における当接位置を変位させる軸変位機構とを配設し、加圧ベルト700の蛇行(ベルトウォーク)を制御するように構成することも可能である。
圧力部材としての圧力パッド704は、幅の広いベルトニップ部N3を確保するための弾性体部材と、弾性体部材が加圧ベルト700の内周面と接触する面に設けられた低摩擦層とで構成され、金属等からなるホルダ(不図示)に保持されている。低摩擦層を表面に有する弾性体部材は、定着ロール611側がほぼ定着ロール611の外周面に倣う凹形状に形成され、定着ロール611に対して押圧されて配置され、定着ロール611のラップ領域に形成されたベルトニップ部N3の入口側領域を形成している。
圧力パッド704の弾性体部材としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性の高い弾性体や、板バネ等を用いることができる。弾性体部材上に形成された低摩擦層は、加圧ベルト700内周面と圧力パッド704との摺動抵抗を小さくするために設けられ、摩擦係数が小さく、耐摩耗性のある材質であることが望ましい。具体的には、テフロン(登録商標)を含浸させたガラス繊維シート、フッ素樹脂シート、フッ素樹脂塗膜等を用いることができる。
さらに、本実施の形態の定着装置90においても、ベルトニップ部N3の下流側近傍には剥離パッド64が配設されている。そして、剥離パッド64は定着ベルト610を加圧ロール701表面に対して押圧するように設置されている。それにより、ベルトニップ部N3に連続して、定着ベルト610が加圧ロール701側にラップされた剥離ニップ部N2が設定されている。
また、剥離ニップ部N2を形成する剥離パッド64は、ベルトニップ部N3の下流側近傍にて定着ベルト610を加圧ロール701に押圧する剥離押圧パッド641と、剥離押圧パッド641の定着ベルト610の回動方向下流側領域であって、かつ加圧ロール701と対向する位置において剥離押圧パッド641に回転自在に軸支された剥離角度設定部材としての剥離ロール642とで構成されている(図6も参照)。
それにより、本実施の形態の剥離パッド64においても、確実に用紙Pの剥離が可能となる剥離角θ2を設定できる剥離ロール642により、剥離パッド64での剥離性能を向上させることが可能となり、用紙Pは剥離ニップ部N2を出た時点で定着ベルト610から確実かつ安定的に曲率分離される。また、剥離ロール642により、剥離押圧パッド641における押圧面641cの幅面積を極めて小さく形成することも可能となる。そのため、剥離ロール642による確実かつ安定的な剥離性能を維持しながら、剥離ニップ部N2を通過する際の剥離押圧パッド641と定着ベルト610との摺動摩擦を低減することができる。それにより、定着ベルト610の回動を円滑に行なうことが可能となるので、高品質な定着画像を安定して提供することができる。
さらには、剥離ロール642は回転自在に軸支されているため、急激に屈曲する剥離領域Rにおいても、定着ベルト610はスムーズにその進行方向を変えることが可能となり、定着ベルト610の円滑な回動を促進することもできる。その際に、剥離領域Rでは、剥離ロール642により加圧ロール62表面に変形(凹部)を生じさせない所定圧以下のニップ圧が設定されている。それにより、剥離パッド64による剥離性能を安定化させることが可能となり、画像形成装置の高速化を図った場合にも、ベタ画像が形成された「コシ」の弱い薄紙に対しても、安定して用紙分離を行うことができる。
本発明の画像形成装置の一例であるデジタルカラープリンタを示した概略構成図である。 実施の形態1に係る定着装置の概略構成を示す側断面図である。 ニップ部の近傍領域を表す概略断面図である。 剥離パッドをロールニップ部から所定の距離以上に離隔して配設した場合のニップ部のニップ圧プロファイルの概略を示した図である。 本発明の剥離パッドを配設した場合のニップ部のニップ圧プロファイルの概略を示した図である。 実施の形態1に係る剥離パッドの構成を説明する概略断面図である。 剥離押圧パッドの押圧面の幅面積と剥離角との関係を比較する図である。 剥離ロールが加圧ロール表面に変形(凹部)を生じさせない押圧力で設定された場合を示す図である。 剥離押圧パッドの押圧面の上流側端部を定着ロールに接触するように設定して、定着ロールからの押圧力も同時に受ける構成を示した図である。 実施の形態2に係る剥離パッドの構成を説明する概略断面図である。 剥離角度調整ロールを剥離押圧パッドの湾曲部内部に完全に侵入させない位置に設定した場合を示した図である。 実施の形態3に係る定着装置の概略構成を示す側断面図である。
符号の説明
26Y,26M,26C,26K…画像形成ユニット、25Y,25M,25C,25K…レーザ露光装置、31…感光体ドラム、32…帯電ロール、33…現像器、34…ドラムクリーナ、41…中間転写ベルト、42…一次転写ロール、50…二次転写ロール、60,90…定着装置、61…定着ベルトモジュール、62,701…加圧ロール、64…剥離パッド、70…加圧ベルトモジュール、610…定着ベルト、611…定着ロール、641…剥離押圧パッド、642…剥離ロール、643…剥離角度調整ロール、700…加圧ベルト、702…インレットロール、704…圧力パッド、83…剥離案内板

Claims (17)

  1. 記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、
    回動可能な定着ロールと、
    前記定着ロールに張架されるベルト部材と、
    前記ベルト部材を介して前記定着ロールを押圧する加圧部材と、
    前記定着ロールと前記加圧部材との圧接部の下流側近傍にて、前記ベルト部材の外表面を前記加圧部材に押圧する剥離部材とを備え、
    前記剥離部材は、前記ベルト部材の外表面を前記加圧部材に押圧する押圧部材と、当該押圧部材の下流側近傍にて当該ベルト部材が当該加圧部材から離隔する角度を設定する剥離角度設定部材とを含むことを特徴とする定着装置。
  2. 前記剥離部材は、前記剥離角度設定部材が、前記ベルト部材の内周面側であって前記押圧部材が前記加圧部材を押圧する面の最下流部領域に配置されたロール状部材で構成されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  3. 前記ロール状部材は、前記ベルト部材の移動方向と同一の方向に回転自在に構成されたことを特徴とする請求項2記載の定着装置。
  4. 前記剥離部材は、前記剥離角度設定部材が、前記押圧部材の前記加圧部材を押圧する面よりも下流側の近傍の側面に形成された凹状部と、前記ベルト部材の外周面側であって当該凹状部に対向する位置に配置されたロール状部材とで構成されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  5. 前記ロール状部材は、前記凹状部に前記ベルト部材を介して当接する位置と当該凹状部から離隔された位置との間で、当該ベルト部材と接触した状態を維持しながら移動可能に構成されたことを特徴とする請求項4記載の定着装置。
  6. 前記ロール状部材は、前記ベルト部材の移動方向と同一の方向に回転自在に構成されたことを特徴とする請求項4記載の定着装置。
  7. 記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、
    回動可能な定着ロールと、
    前記定着ロールに張架されるベルト部材と、
    前記ベルト部材を介して前記定着ロールを押圧するように配置されてニップ部を形成する加圧部材と、
    前記定着ロールと前記加圧部材との圧接部の下流側近傍にて、前記ベルト部材の外表面を当該加圧部材に押圧する押圧部材と、当該押圧部材の下流側近傍にて当該ベルト部材の進行方向を屈曲させる回転部材と
    を備えたことを特徴とする定着装置。
  8. 前記回転部材は、前記加圧ロール表面に変形を生じさせない押圧力で当該加圧ロールを押圧することを特徴とする請求項7記載の定着装置。
  9. 前記押圧部材は、前記定着ロールと前記加圧部材との圧接部の下流側端部から当該加圧部材と当該押圧部材との圧接部の下流側端部に至る領域のニップ圧が、前記ベルト部材の進行方向に向けて単調減少するように設定されたことを特徴とする請求項7記載の定着装置。
  10. 前記押圧部材は、前記定着ロールと前記加圧部材との圧接部の下流側端部と当該押圧部材の上流側端部との間の領域のニップ圧Pnが、前記ベルト部材の絶対温度をTn、周辺環境の絶対温度をTo、大気圧をPoとして、Pn≧Po×(Tn/To−1)を満たすように設定することを特徴とする請求項7記載の定着装置。
  11. 前記押圧部材は、当該押圧部材の上流側端部が前記定着ロールと前記加圧部材とで画成されるくさび状領域内に配置されることを特徴とする請求項7記載の定着装置。
  12. 前記加圧部材は、前記定着ロールとの圧接部での凹み量が当該定着ロールの凹み量よりも大きいことを特徴とする請求項7記載の定着装置。
  13. トナー像を形成するトナー像形成部と、
    前記トナー像形成部によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写部と、
    前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着部とを含み、
    前記定着部は、
    回動可能な定着ロールと、
    前記定着ロールに張架されるベルト部材と、
    前記ベルト部材を介して前記定着ロールを押圧するように配置された加圧部材と、
    前記定着ロールと前記加圧部材との圧接部の下流側近傍にて、前記ベルト部材の外表面を当該加圧部材に押圧する剥離部材とを備え、
    前記剥離部材は、前記ベルト部材の外表面を前記加圧部材に押圧する押圧部材と、当該押圧部材の下流側近傍にて当該ベルト部材が当該加圧部材から離隔する角度を設定する剥離角度設定部材とを含むことを特徴とする画像形成装置。
  14. 前記定着部の前記剥離部材は、前記剥離角度設定部が前記ベルト部材の進行方向を90°以上屈曲させることを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。
  15. 前記定着部の前記剥離部材は、前記剥離角度設定部材が、前記ベルト部材の内周面側であって前記押圧部材が前記加圧部材を押圧する面の最下流部領域に配置された回転部材で構成されたことを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。
  16. 前記定着部の前記剥離部材は、前記剥離角度設定部材が、前記押圧部材の前記加圧部材を押圧する面よりも下流側の近傍の側面に形成された凹状部と、前記ベルト部材の外周面側であって当該凹状部に対向する位置に配置された回転部材とで構成されたことを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。
  17. 前記定着部は、前記加圧部材が複数の張架ロールによってベルト部材が張架された加圧ベルトモジュールで形成されたことを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。
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