JP2007177298A - 方向性電磁鋼板コイルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Siを1.0〜5.Omass%含有する方向性電磁鋼板の製造に際し、焼鈍分離剤の主剤として、少なくとも50%のマグネシアを含有し、かつ微量含有物として下記の組成になる複合酸化物を、マグネシア:100質量部に対して1〜10質量部含有するものを用いる。
(M+ a,M2+ b,M3+ c)AOx
但し、2≦a+2b+3c≦6, 0≦a≦6, 0≦b≦3, 0≦c≦2
4≦x≦6
M+ :Li,Na,K、 M2+:Mg,Ca,Sr,Ba,Cr,Co,Mn,Zn,Fe、
M3+:Fe,Al,Cr,Mn、 A:Si,Zr,Mo,W
【選択図】なし
Description
このような原因としては、コイルの表面部と内部での温度ムラや、コイル表面部と内部での焼鈍雰囲気に対する晒され方の違いに起因した酸化や窒化、その他元素の挙動変化等が考えられており、これらに対して種々の対策がとられてきた。
また、コイル炉頂部での被膜欠陥の防止については、例えば特許文献3に、電解脱脂後の電着Siの量をエッジ部と中央部で少なくする方法が提案されている。
さらに、磁気特性の均一性については、特許文献4に、脱炭焼鈍時の酸素目付け量をコイルの外巻部から内巻部にかけて連続的ないし段階的に増加させることにより、インヒビターの抑制力をコイル全長で一定にして均一な二次再結晶を起こさせて磁気特性を均一化する方法が開示されている。
しかしながら、これらはいずれも十分ではなく、歪取焼鈍後にコイル幅方向の端部で鉄損が劣化するという問題が散発していた。このような劣化は、ユーザー側でトランスを製造した後に判明するため、大きな問題となることが少なくない。
従って、歪取焼鈍後に鉄損の劣化がなくコイル全幅で均一な特性を得ることが急務となっている。
(1)Siを1.0〜5.Omass%含有する珪素鋼スラブを、熱間圧延し、ついで焼鈍処理を含む1回または2回以上の冷間圧延により最終板厚とした後、一次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布してから最終仕上焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
焼鈍分離剤の主剤として、少なくとも50%のマグネシアを含有し、かつ微量含有物として下記の組成になる複合酸化物を、マグネシア:100質量部に対して1〜10質量部含有するものを用いることを特徴とする方向性電磁鋼板コイルの製造方法。
記
(M+ a,M2+ b,M3+ c)AOx
但し、2≦a+2b+3c≦6
0≦a≦6, 0≦b≦3, 0≦c≦2
4≦x≦6
M+ :Li,Na,Kのうちから選んだ少なくとも1種
M2+:Mg,Ca,Sr,Ba,Cr,Co,Mn,Zn,Feのうちから選んだ少なくとも1種
M3+:Fe,Al,Cr,Mnのうちから選んだ少なくとも1種
A :Si,Zr,Mo,Wのうちから選んだ少なくとも1種
最終仕上焼鈍前のコイル受け台もしくはコイル上部またはその両方に、下記の組成になる複合酸化合物を、コイル表面積当たり0.02kg/m2以上 0.7kg/m2以下散布することを特徴とする方向性電磁鋼板コイルの製造方法。
記
(M+ a,M2+ b,M3+ c)AOx
但し、2≦a+2b+3c≦6
0≦a≦6, 0≦b≦3, 0≦c≦2
4≦x≦6
M+ :Li,Na,Kのうちから選んだ少なくとも1種
M2+:Mg,Ca,Sr,Ba,Cr,Co,Mn,Zn,Feのうちから選んだ少なくとも1種
M3+:Fe,Al,Cr,Mnのうちから選んだ少なくとも1種
A :Si,Zr,Mo,Wのうちから選んだ少なくとも1種
以下、この知見を得るに至った経緯について説明する。
その後、このコイルを数日間コイルヤードに滞留させた後、コイル受け台に融着防止のためにMgOをコイル表面積当たり0.1kg/m2散布して仕上焼鈍を施し、ついで未反応分離剤を除去してから、張力コーティングを塗布し、焼き付けたのち、平坦化焼鈍を施して、コイルに巻き取った。
得られた製品コイルの外巻部から100m入った位置で、(1) コイル中央部(板幅中央部)と、(2) 最端部を10mm落とした部分(板幅端部)から、400×100mmのサンプルを採取し、N2雰囲気中にて800℃,3時間の歪取焼鈍を行った。
得られた結果を表1に示す。
なお、歪取焼鈍前のサンプルの磁気特性はいずれも、B8=1.895〜1.905T、W17/50=0.98〜1.03W/kgの範囲内で一定あった。
しかしながら、Ba2WO5を20質量部まで添加した場合には、かえって板幅端部のC濃度は増大し、歪取焼鈍後の鉄損も劣化した。
Mg(OH)2+xCO2 → Mg(CO3)x・(OH)2-2x+xH2O
の反応により、炭酸水酸化マグネシウムが生成するが、この炭酸水酸化マグネシウムが、仕上焼鈍途中で再び熱分解し、CO2ガスが発生することによって鋼中にCが侵入するものと考えられる。
このような炭酸水酸化マグネシウムへの反応は、外気に直接晒されているコイルの最外内巻部や上下板幅端面で起こり、仕上焼鈍中のCO2ガスの発生、浸炭もこの外気に接した面で起こるために、コイル幅方向端部でC濃度が高まり、中央部ではC量は増大しなかったものと考えられる。
Ba2WO5+CO2 → BaCO3+BaWO4
のように、BaイオンがCO2を吸収して炭酸塩をつくるために、CO2ガスの鋼中への侵入が阻止され、鋼中に炭化物が生成するのが抑制される結果、磁気特性の劣化が抑えられるものと考えられる。
まず、成分としてSiを1.0〜5.0%含有させる。このSiは、電気抵抗を高めて鉄損を低下させると共に、鉄のα相を安定化させて高温の熱処理を可能とするために必要な元素であり、少なくとも1.0%を必要とするが、5.0%を超えると冷延が困難となるので、Si含有量は1.0〜5.0mass%の範囲に限定した。
次に、Cは0.01〜0.10%とすることが好ましい。このCは、変態を利用して熱延組織を改善するのに有用な元素であるだけでなく、ゴス方位結晶粒の発生に有用な元素であり、0.01%以上の含有を必要とするが、0.10%を超えると効果が強くなりすぎてかえって集合組織が劣化してしまうので、Cは0.01〜0.10%の範囲とすることが好ましい。
インヒビターを用いる場合は、インヒビターとしてはAlN,BN,MnS,MnSe等がよく知られているが、これらのいずれを用いてもよく、またこれらを二種類以上を複合して使用してもよい。インヒビターとしてMnSおよび/またはMnSeを用いる場合には、Mn:0.03〜0.10%、SとSeの合計量:0.01〜0.03%とすることが好ましい。また、AlNをインヒビターとして用いる場合には、Al:0.01〜0.04%、N:30〜120ppm、さらにBNをインヒビターとして用いる場合には、B:0.001〜0.015%、N:30〜120ppmとすることが好ましい。いずれの場合も、これらの範囲よりも低いとインヒビターとして効果に乏しく、一方高いと二次再結晶が不安定になる。
上記のような成分に調整した珪素鋼スラブを、熱間圧延し、ついで焼鈍処理を含む1回または2回以上の冷間圧延で最終板厚にしたのち、一次再結晶焼鈍を施す。この一次再結晶焼鈍において、均熱領域の温度は750〜950℃とするのが望ましい。というのは、950℃を超えると一次再結晶粒の粒成長が進行しすぎて二次再結晶不良となり、一方750℃未満では逆に一次再結晶粒の粒成長が進まずに二次再結晶粒方位が不安定になるからである。この一次再結晶焼鈍における昇温速度は、室温から700℃までは5〜80℃/sとすることが好ましい。というのは、昇温速度が5℃/sより低いと脱炭が加熱領域で進行しすぎて望ましい集合組織が得られず、一方80℃/sより速いと、初期酸化が不安定となり良好な被膜形成が行われなくなるからである。また、均熱時間は20〜240sとするのが好ましい。というのは、均熱時間が20s未満では一次再結晶不良となり、一方240sを超えると一次再結晶粒成長が進行して、いずれも磁気特性劣化の要因となるからである。さらに、焼鈍時の雰囲気酸化性(P[H20]/P[H2])は0.05〜0.85とすることが好ましい。というのは、この雰囲気酸化性(P[H20]/P[H2])が0.05未満では良好な酸化膜が得られずに被膜が劣化し、一方0.85超ではFeOを主体とする過酸化な膜が形成され、やはり被膜が劣化するからである。
なお、上述した主剤としてのマグネシア、各種添加剤および後述する複合酸化物の他には、酸化アルミニウムや酸化カルシウム、酸化マンガン、蛇紋岩等を含有させることができる。
記
(M+ a,M2+ b,M3+ c)AOx
但し、2≦a+2b+3c≦6
0≦a≦6, 0≦b≦3, 0≦c≦2
4≦x≦6
M+ :Li,Na,Kのうちから選んだ少なくとも1種
M2+:Mg,Ca,Sr,Ba,Cr,Co,Mn,Zn,Feのうちから選んだ少なくとも1種
M3+:Fe,Al,Cr,Mnのうちから選んだ少なくとも1種
A :Si,Zr,Mo,Wのうちから選んだ少なくとも1種
で示される複合酸化物を、マグネシア:100質量部に対して該金属換算で1〜10質量部含有させることが重要である。
上記の化学式において、M+ a,M2+ bおよびM3+ cの量を、(a+2b+3c)で2〜6の範囲に限定したのは、これらの量が2に満たないと複合酸化物として、炭酸を吸収する効果が小さくなるからであり、一方6を超えると化学的に不安定な化合物となるため仕上焼鈍初期で分解してしまい、炭酸を吸収する効果がなくなるからである。また、AOxのxを4〜6の範囲としたのは、4より小さいと化学的に不安定となり仕上焼鈍初期で分解し、炭酸を吸収する効果がなくなるからであり、一方6より大きいと、仕上焼鈍雰囲気中に酸素が放出されて被膜が劣化するからである。
ここで、コイル表面積とは、コイル上端面、下端面および側面の面積の合計である。例えば外径:1.5m、内径:0.5m(いずれも直径)、高さ:1mのコイルであれば、表面積はπ・(0.752−0.252)×2+π×1.5×1+π×0.5×1=9.4m2となる。
すなわち、これを行うことにより、仕上焼鈍中に放出するCO2が効果的に吸収され、歪取焼鈍前後の鉄損劣化を抑えることができる。
ここに、散布量が0.02kg/m2に満たないとCO2の吸収効果に乏しく、一方0.7kg/m2を超えるとコストアップとなるため、この範囲に限定した。
なお、仕上焼鈍のその他の条件については公知の方法でよい。
また、磁区細分化による鉄損低減を目的として、平坦化焼鈍後の鋼板にプラズマジェットやレーザー照射を線状に施したり、突起ロールにより線状の凹みを設けたり、あるいは最終冷延後にエッチングなどにより圧延方向とほぼ直行する溝を形成させる処理を施すこともできる。
さらに、最終仕上焼鈍後、ゾルゲル法、TiN蒸着など公知の方法で張力被膜を形成させる技術を組み合わせることも、鉄損の低減のために有効である。
C:0.06%,Si:3.35%,Mn:0.07%,S:0.003%,Al:0.005%,Cu:0.1%,N:0.0035%およびSb:0.040%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる珪素鋼スラブを、ガス加熱炉に装入し1230℃まで加熱し、60分保定後、熱間圧延により2.0mm厚の熱延板とした。ついで、1000℃,1分間の熱延板焼鈍を施し、酸洗後、冷間圧延により0.30mmの最終板厚に仕上げたのち、雰囲気の酸化性(P[H20]/P[H2])が0.40の雰囲気中にて850℃,100秒間の脱炭焼鈍を施し、さらにMgO:100質量部、TiO2:2質量部、水酸化ストロンチウム:3質量部の焼鈍分離剤を、鋼板両面当たりの塗布量で14g/m2塗布してから、コイルに巻き取った。その後、仕上焼鈍コイル受け台とコイル上部に、コイル表面積当り0〜0.7kg/m2のLi4SiO4を散布して仕上焼鈍を行った。なお、ここでコイル受け台にLi4SiO4を散布していない条件と0.02kg/m2のみ添加している条件では、コイルの受け台との融着防止のためにMgOを追加して、合計で0.1kg/m2散布した。
その後、未反応の分離剤を水洗により除去した後、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁張力コーティングを塗布し、焼き付けたのち、平坦化焼鈍を施して、製品とした。
得られた製品コイルの外巻部から100m入った位置で、(1) コイル中央部(板幅中央部)と、(2) 最端部を10mm落とした部分(板幅端部)から、400×100mmのサンプルを採取し、N2雰囲気中にて800℃,3時間の歪取焼鈍を行った。
このときのLi4SiO4散布量とC濃度および歪取焼鈍前後の鉄損の比を表2に示す。
なお、歪取焼鈍前のサンプルの磁気特性はいずれも、B8=1.895〜1.905T、W17/50=0.98〜1.03W/kgの範囲内で一定あった。
C:0.07%,Si:3.31%,Mn:0.07%,P:0.002%,Se:0.02%,Al:0.025%,Cu:0.10%、N:0.0082%およびSb:0.040%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる珪素鋼スラブを、1200℃で60分間加熱したのち、熱間圧延により2.2mm厚の熱延板とした。ついで、950℃,1分間の熱延板焼鈍を施し、酸洗後、一次冷間圧延により厚さ:1.5mmの中間厚としたのち、1050℃、1分間の中間焼鈍を施し、酸洗後、 最高板温:210℃の二次冷間圧延により0.35mmの最終板厚に仕上げた。ついで、雰囲気の酸化性(P[H20]/P[H2])が0.44の雰囲気中にて850℃,100秒間の保定焼鈍を施した。この時の脱炭焼純後の鋼板のC含有量は100ppmであった。
その後、焼鈍分離剤として、MgO:100質量部に対して、各種複合酸化物を種々の範囲で添加したものを用い、水和を20℃,30分、目付け量:両面当たり14g/m2で塗布した。ついで、仕上焼鈍後、未反応の分離剤を水洗により除去してから、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁張力コーティングを塗布し、焼付けた。
得られた製品コイルから400×100mmのサンプルを採取し、N2雰囲気中にて800℃,3時間の歪取焼鈍を行った。
このときの各種複合酸化物の添加量、被膜を含めたC濃度および歪取焼鈍前後の鉄損の比を表3に示す。
なお、歪取焼鈍前のサンプルの磁気特性はいずれも、B8=1.925〜1.935T、W17/50=1.15〜1.20W/kgの範囲内で一定あった。
Claims (2)
- Siを1.0〜5.Omass%含有する珪素鋼スラブを、熱間圧延し、ついで焼鈍処理を含む1回または2回以上の冷間圧延により最終板厚とした後、一次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布してから最終仕上焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
焼鈍分離剤の主剤として、少なくとも50%のマグネシアを含有し、かつ微量含有物として下記の組成になる複合酸化物を、マグネシア:100質量部に対して1〜10質量部含有するものを用いることを特徴とする方向性電磁鋼板コイルの製造方法。
記
(M+ a,M2+ b,M3+ c)AOx
但し、2≦a+2b+3c≦6
0≦a≦6, 0≦b≦3, 0≦c≦2
4≦x≦6
M+ :Li,Na,Kのうちから選んだ少なくとも1種
M2+:Mg,Ca,Sr,Ba,Cr,Co,Mn,Zn,Feのうちから選んだ少なくとも1種
M3+:Fe,Al,Cr,Mnのうちから選んだ少なくとも1種
A :Si,Zr,Mo,Wのうちから選んだ少なくとも1種 - Siを1.0〜5.Omass%含有する珪素鋼スラブを、熱間圧延し、ついで焼鈍処理を含む1回または2回以上の冷間圧延により最終板厚とした後、一次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布してから最終仕上焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
最終仕上焼鈍前のコイル受け台もしくはコイル上部またはその両方に、下記の組成になる複合酸化合物を、コイル表面積当たり0.02kg/m2以上 0.7kg/m2以下散布することを特徴とする方向性電磁鋼板コイルの製造方法。
記
(M+ a,M2+ b,M3+ c)AOx
但し、2≦a+2b+3c≦6
0≦a≦6, 0≦b≦3, 0≦c≦2
4≦x≦6
M+ :Li,Na,Kのうちから選んだ少なくとも1種
M2+:Mg,Ca,Sr,Ba,Cr,Co,Mn,Zn,Feのうちから選んだ少なくとも1種
M3+:Fe,Al,Cr,Mnのうちから選んだ少なくとも1種
A :Si,Zr,Mo,Wのうちから選んだ少なくとも1種
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