JP2007173751A - 配列制御された量子ドットの作製方法及び配列制御された量子ドットを用いた半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】量子ドットの位置・配置を制御する方法および、該方法を用いた量子ドット半導体デバイスを提供する。
【解決手段】
半導体基板上に,第1の半導体極薄膜層あるいは自然酸化膜を形成し、走査型トンネル顕微鏡及あるいは走査型電子顕微鏡を用いて第1の半導体超薄膜層あるいは自然酸化膜を局所的に蒸発させて基板表面を露出させるまで穴を開ける工程を繰り返し、穴の周期的な配列を作製する。その後、第2の半導体超薄膜をエピ成長してから、加熱により半導体基板上に残留している第1の半導体超薄膜層あるいは自然酸化膜を、その上の第2の半導体超薄膜とともに昇華させる。最後に、第3の半導体薄膜をエピ成長することで位置・配列が制御された量子ドットを形成する方法である。さらに、位置・配列が制御された量子ドットを活性層にもつ半導体光/電子装置は新規なデバイス特性を実現する。
【選択図】図3
【解決手段】
半導体基板上に,第1の半導体極薄膜層あるいは自然酸化膜を形成し、走査型トンネル顕微鏡及あるいは走査型電子顕微鏡を用いて第1の半導体超薄膜層あるいは自然酸化膜を局所的に蒸発させて基板表面を露出させるまで穴を開ける工程を繰り返し、穴の周期的な配列を作製する。その後、第2の半導体超薄膜をエピ成長してから、加熱により半導体基板上に残留している第1の半導体超薄膜層あるいは自然酸化膜を、その上の第2の半導体超薄膜とともに昇華させる。最後に、第3の半導体薄膜をエピ成長することで位置・配列が制御された量子ドットを形成する方法である。さらに、位置・配列が制御された量子ドットを活性層にもつ半導体光/電子装置は新規なデバイス特性を実現する。
【選択図】図3
Description
[産業上の利用分野]
本発明は半導体量子ドットの作製方法および量子ドット半導体装置に関するものである。より詳しくは,ドットの位置及び配列を人為的に制御した量子ドットの作製方法に関し,また,位置および配列制御された量子ドットを用いた半導体装置に関するものである。
[従来の技術]
[従来の技術]
従来,半導体量子ドットは半導体基板ウェーハ上に基板結晶とは異なる格子定数を有する他の半導体結晶をエピタキシャル成長することによって形成される。エピタキシャル成長の初期段階において,格子定数が異なる(大きい)ために表面エネルギーが増大するのを緩和するように,膜状の2次元成長ではなくドット状の3次元成長が起こって安定する。この現象を自己組織化と呼んでいる。ドットは形成されるものの,その位置はランダムであり,さらにその直径や高さも統計的に大きく分布してしまう。その結果,量子サイズ効果によってドットの中に形成される量子準位も量子ドット間でばらつきが大きくなり,このことが量子ドットの応用の可能性を限定的なものにしてきた。
このために量子ドットの形成される位置及びその配列を制御することがきわめて重要であり,従来までにその配列を制御しようとする試みはいくつか行われてきた。しかしながら,それらは完全な配列とは言いがたい。すなわち,引用文献1はGaAs基板上の高指数面にGaP/InP量子ドットを形成して位置・配列制御を試みているが,結果として位置及びサイズのばらつきが大きく,配列を制御しているとは言えない。また,引用文献2も格子歪応力を制御したGaAs/InGaAs基板上にInAs量子ドットを直接的に形成して位置・配列制御を試みているが,結果としてドットのサイズはかなり均一化されてはいるものの,ドットとドットの間隔までは制御されてはいない。ごく最近では,引用文献3が原子間力顕微鏡を改造し,In液滴をGaAs基板上に落下させ位置・配列制御を試みている。その結果,Inドロプレットを等間隔に配列することには成功している。しかしながら、その後のAs化によってInAsの結晶を作製できているかどうかについては言及されていない。結果として、ドットの配列に特徴的な物性が示されていないので,この技術に関する評価があいまいなままに残されている。
上記事情に鑑みて本発明の第一の目的は量子ドットを形成すべき位置及び配置を人為的に制御する方法を提供することである。位置と配置の制御の結果,ドットのサイズが大面積にわたって均一となり,ばらつきのために隠れていた量子ドットの本来的な性質が顕著となり,それを用いて量子ドットを用いた半導体デバイスの特性が顕著な改善効果を示すとともに,位置・配列制御の結果,新たな物性が出現して,新たな半導体装置への展望が開ける。このような半導体装置を提供することが本発明の第二の目的である。
上記の第一の目的を達成するために,本発明は、量子ドットを形成すべき位置及び配置を人為的に制御する方法として,▲1▼半導体結晶基板ウェーハ上に,上記半導体結晶基板ウェーハよりも昇華温度が低いことを特徴とする第1の半導体極薄膜層あるいは自然酸化膜を形成する工程1と,▲2▼超高真空中で走査型トンネル顕微鏡を用いて,表面の局所的な位置において、その走査型トンネル顕微鏡の電界蒸発効果(高電圧を加えることにより、探針に対向して接近して配置されている物質の表面原子を蒸発して除去すること)によって、あるいは走査型電子顕微鏡を用いて、その集束電子ビームの高いエネルギー密度を用いて、上記第1の半導体超薄膜層あるいは上記自然酸化膜を蒸発させて基板結晶表面を露出させるまで穴を開けるとともに,上記走査型トンネル顕微鏡あるいは上記走査型電子顕微鏡の走査機能によって、表面の別の局所的な位置において、上記走査型トンネル顕微鏡による電界蒸発あるいは上記走査型電子顕微鏡の高エネルギー密度による蒸発を繰り返して、別の穴を次々と開けて、穴の周期的な配列を作製する工程2と,▲3▼走査型トンネル顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡によって加工した上記加工基板表面上に、上記半導体基板結晶や上記第1の半導体超薄膜あるいは上記自然酸化膜とは異なる組成を有する第2の半導体超薄膜をエピタキシャル成長する工程3と,▲4▼加熱により,半導体結晶基板ウェーハ上に残留している、上記第1の半導体超薄膜層あるいは上記自然酸化膜を、その上の上記第2の半導体超薄膜とともに昇華させる工程4と,▲5▼上記半導体結晶基板ウェーハと同一の組成のまたは異なる組成で、且つ、上記第2の半導体薄膜とは異なる組成を有する第3の半導体薄膜をエピタキシャル成長する工程5を含むことを特徴とする量子ドットの位置および配列制御方法、または上記工程1ないし工程5を1サイクルとしてそれを複数回繰り返すことを特徴とする積層量子ドットの位置及び配置を人為的に制御する方法を提供する。
本発明の第二の目的は次のようにして達成する。量子ドットの配列を人為的に制御することによって,量子ドットのサイズの均一化が自動的に図られる。その結果,従来存在していたサイズばらつきによる量子準位の広がりが消えて,本来的に持つ極めてシャープな量子準位が出現する結果,たとえば量子ドットウェーハの発光スペクトルがシャープになる。その結果,この量子ドットウェーハを量子ドットレーザの活性層に適用すると、レーザ発振に関する種々の性質(閾値電流密度,利得飽和特性,変調特性)などが大幅に改善された量子ドットレーザーダイオードを提供することができる。また,量子ドットの人為的配列の結果,量子ドットの面密度を大幅に向上させることができる。これも量子ドットの電子的性質,光学的な性質を大幅に改善して,低閾値電流密度化などが実現される量子ドットレーザーダイオードを提供することができる。さらには量子ドットの配列を人為的に制御することによって,新規な異方性、周期性が導入されて電子のバンド構造に大幅な変調を導入することができる。その結果,異方性を持つ面発光量子ドットレーザや記憶特性を持った新たな電子デバイスなどの半導体装置を実現することができる。
作用;上記方法による量子ドットの位置・配列制御の方法を用いれば、同時にサイズの不均一性が緩和され、かかる不均一性のために遮蔽されていた量子ドット本来の優れた性質が出現するとともに、制御された配列のために新規な異方性や周期性が出現して、従来にない物性を呈する半導体材料を提供することになるとともに、量子ドットレーザなどに本来期待されている性質が出現するとともに、新規なデバイス特性を有する半導体デバイスを提供することになる。
本発明の位置・配列制御された量子ドットの作製方法に関する第1の実施例を図1ないし図7を用いて説明する。図1ないし図7は本実施例の量子ドットの作製の工程ごとの半導体ウェーハの断面構造を示す図(各図のa)と半導体ウェーハの平面構造を示す図(各図のb)である。
図1は、工程1として、表面が原子オーダで平坦化された半導体結晶基板ウェーハ1の表面に第1の半導体超薄膜2をエピタキシャル成長したエピタキシャルウェーハ10の断面構造(a)および平面(b)を示す図である。上記半導体結晶基板ウェーハ1としては,例えば,InPが用いられる。上記第1の半導体超薄膜2に用いられる半導体としては、例えば、InAsが用いられる。その厚さは0.3ナノメートル(nm)から10nmである。エピタキシャル成長方法としては、たとえば分子線エピタキシャル結晶成長(以下、MBEと略す。)法が用いられる。上記第1の半導体超薄膜2は真空中の加熱によって,350℃程度の比較的低温で昇華してしまい、その結果、半導体結晶基板ウェーハ1の構成原子が整然と配列した結晶表面1−1が表れるという性質を持っている。この昇華完了温度を以下ではT2と呼ぶ。このT2は半導体結晶基板ウェーハ1の蒸発温度(結晶から構成原子が昇華を開始する温度)T1よりも少なくとも100℃近く低い温度である。
図2は、工程2として、第1の半導体超薄膜2が形成されているエピタキシャルウェーハ10を超高真空装置に導入し、走査型トンネル顕微鏡(以下、STMと略記する。)の下に配置した状況を示す。上記STMは先端が原子的オーダーで尖った探針3を有し、探針3の先端をエピタキシャルウェーハ10の表面から所定の距離Dだけ離して保持することができる。エピタキシャルウェーハ10を基準にして探針3に負の電圧Vを加えると、電界蒸発効果によって探針3の直下のエピタキシャルウェーハ10の構成原子が蒸発する。これによって探針3の直下のエピタキシャルウェーハ10には穴4−1があけられ、半導体結晶基板ウェーハ1の結晶表面1−1が露出する。電界蒸発の速度は上記所定の距離Dや探針に加える上記電圧Vの値に依存するだけでなく、半導体結晶基板ウェーハ1の温度Tに強く依存し、温度Tが上昇して第1の半導体超薄膜2の昇華完了温度T2に近づくほど電界蒸発の速度は大きくなる。第1の半導体超薄膜2が昇華して半導体結晶基板ウェーハ1の結晶表面が露出すると、T<T2<<T1の関係があるので電界蒸発はこれより深くは進行しない。形成された穴4−1の底面の径Sは上記電界蒸発速度と第1の半導体超薄膜2の膜厚などで決められる。また穴4−1の径Sは探針の先端の曲率Rや上記所定の距離Dなどによって決められるが、穴4−1の径Sがある値を超えて大きくなると穴4−1の周囲と探針との距離dが増大して電界蒸発速度が急激に低下する。このように穴の径Sに対する上限制限効果があるため、本方法によって作製される穴の径に関する再現性は高く、異なる穴の間での径のばらつきは小さい。
上記STMによるエピタキシャルウェーハ10の表面を走査することができる機能を用いて、探針3の位置を表面内の所定の距離Lだけ離れた別の位置に移して、その位置で前記の電界蒸発工程を行わせることにより、図3に示すように穴4−2を作製することができる。この操作を順次繰り返すことによって第1の半導体超薄膜2に次々と穴4−1,4−2,4−3、−−−−−−−を形成することができる。このエピタキシャルウェーハを穴空きエピタキシャルウェーハ11と呼ぶ。
STMによる電界蒸発を用いた材料加工に関する技術は引用文献4に開示されている。
次に、工程3として、穴空きエピタキシャルウェーハ11を大気に晒すことなく、上記STMと真空的に連結している前記MBE室に移動し、そこで図4に示すように、上記穴空きエピタキシャルウェーハ11上に第2の半導体の超薄膜5を成長する。第2の半導体としては、例えばIn0.53Ga0.47Asなどが選ばれる。第2の半導体はその昇華温度T5が第1の半導体超薄膜2の昇華完了温度T2よりも高いという特徴を有するものである。第2の半導体超薄膜5の厚さは0.3nmから10nm程度であることが好ましい。第2の半導体超薄膜5のMBE成長時の基板温度TEは第1の半導体超薄膜2の昇華完了温度T2よりも低く選ばれることが好ましい。このとき、成長した第2の半導体超薄膜5は基板結晶1が露出している穴4−1,4−2,4−3−−−−−の内部では単結晶5−1となり、第1の半導体超薄膜2の上でも単結晶5−2となる。
次に、工程4として、上記MBE成長が終了した後に、超高真空中で基板温度をTFに上昇して熱処理を行う。このTFは第1の半導体超薄膜2の昇華完了温度T2よりも高く、基板結晶1の昇華温度T1や第2の半導体超薄膜5の昇華温度T5よりも低く選ばれていることが好ましい。この熱処理過程において、図5に示すように、第1の半導体超薄膜2はその上の上記第2の半導体超薄膜の結晶膜5−2とともに昇華する。ウェーハ上には所定の規則で配列された第2の半導体のドット列6−1,6−2,6−3−−−−−−が残されている。この段階のエピタキシャルウェーハを配列ドットエピタキシャルウェーハ12とよぶ。
次に工程5として、図6に示すように、上記ウェーハ上に更にMBE法によって第3の半導体薄膜7を成長する。上記第3の半導体としては上記第2の半導体超薄膜よりはバンドギャップが大きくなるような組成の半導体が好ましく、例えば半導体結晶基板ウェーハ1と同じ組成であるInPなどの半導体が選ばれるのが好ましい。第3の半導体薄膜7は単結晶であるドット6−1,6−2,6−3−−−−−−の上のみならず、ドットとドットの間の基板結晶の上にも単結晶膜として成長する。すなわち単結晶であるドット6−1,6−2,6−3−−−−−−は第3の半導体薄膜7で埋め込まれた構造となる。この段階のエピタキシャルウェーハを埋込・配列量子ドットエピタキシャルウェーハ13とよぶ。
工程6として、上記の工程1〜5を繰り返すことによって、図7に示すように、多層に積層された積層・配列量子ドットエピタキシャルウェーハ14を製作する。ここで、埋込・配列量子ドットエピタキシャルウェーハ13の表面は第3の半導体薄膜7のエピタキシャル成長の工程で平坦化されるものの、ドット6−1,6−2,6−3−−−−−−の存在のためにわずかながら凹凸が残る。この凹凸は第2回目のSTMによる電界蒸発工程による穴あけの際の位置決めのマーカとして利用できる。第3回目も同様である。このようにして、第1層の量子ドットの位置・配列を基準にして第2層、第3層の量子ドットの位置・配列を制御することが出来る。
上記の第1の実施例では、半導体結晶基板ウェーハ1としてInPが、第1の半導体超薄膜2に用いられる半導体としてInAsが、第2の半導体蝶薄膜の半導体としてはIn0.53Ga0.47Asが、第3の半導体薄膜7の半導体としてInP半導体が用いられてきたが、本発明はこれに限定されることはなく、GaNやZnOなどを含む広く半導体の結晶材料や多結晶、非晶質材料に適用される。
本発明の位置・配列制御された量子ドットの作製方法に関する第2の実施例を図8ないし図10を用いて説明する。図8に示すように,本実施例では図1に示したエピタキシャル成長した第1の半導体超薄膜2に代わって、半導体結晶基板ウェーハ1上の自然酸化膜22を用いることを特徴としている。自然酸化膜とは半導体結晶基板ウェーハ1を長時間大気中で保存しておくと,その表面に形成される酸化膜のことであり,この結晶基板ウェーハを自然酸化膜つき半導体結晶基板ウェーハ30とよぶ。半導体結晶基板ウェーハ1がInPの場合には、自然酸化膜22はInの酸化物やPの酸化物が主成分となっている。その厚さは0.3ナノメートル(nm)から10nmである。上記自然酸化膜22は引用文献5に開示されているように,真空中の加熱によって350℃程度の比較的低温で昇華してしまう。すなわち昇華完了温度T22は350℃程度である。自然酸化膜は結晶質ではなく非晶質である。この自然酸化膜22がSTMの探針によって電界蒸発されることは、前記第1の実施例における、図1に示したエピタキシャル成長した第1の半導体超薄膜2の場合と同様である。STMによる表面の走査によって図9に示すように自然酸化膜22に次々と穴24−1,24−2,24−3、−−−−−−−を形成することができる。この段階のウェーハを穴空き自然酸化膜つき半導体結晶基板ウェーハ31と呼ぶ。次に、上記穴空き自然酸化膜つき半導体結晶基板ウェーハ31上に,第1の実施例の工程3と同じく,第2の半導体の超薄膜5を成長する。第2の半導体はその昇華温度T5が自然酸化膜22の昇華完了温度T22よりも高いという特徴を有するものである。第2の半導体超薄膜5のMBE成長時の基板温度TGは自然酸化膜22の昇華完了温度T22よりも低く選ばれることが好ましい。このとき、図10に示すように,成長した第2の半導体超薄膜5は基板結晶1が露出している穴24−1,24−2,24−3−−−−−の内部では単結晶5−1となり、自然酸化膜22の上では非晶質5−3となる。上記MBE成長が終了した後に、超高真空中で基板温度をTHに上昇して熱処理を行う。このTHは自然酸化膜22の昇華完了温度T22よりも高く、半導体結晶基板ウェーハ1の昇華温度T1や第2の半導体超薄膜5の昇華温度T5よりも低く選ばれていることが好ましい。(T22<TH<<T5,T1)この熱処理過程において、自然酸化膜22はその上の非晶質膜5−3とともに昇華する。第1の実施例の図5と同じように,ウェーハ上には所定の規則で配列された第2の半導体のドット列6−1,6−2,6−3−−−−−−が残されている。以後の工程は第1の実施例の工程5と同じである.
以上の説明のとおり,第1の半導体超薄膜2に代わって自然酸化膜22を用いることによっても埋込・配列量子ドットエピタキシャルウェーハ13を製作することができる。自然酸化膜として半導体結晶基板1を長時間大気中で保存しておくときに,その表面に形成される酸化膜を用いていたが,これに限定されることはなく,清浄な結晶表面を有する半導体ウェーハを大気、または制御された酸素/窒素の雰囲気下で制御された時間だけ放置して得られる酸化膜を用いても良い。
作製された埋込・配列量子ドットエピタキシャルウェーハ13の表面に上記の酸化膜形成工程を工程1′として,さらに工程1′→工程2→工程3→工程4→工程5を順次行い、これを複数回繰り返すことによって,図7に示すように、多層に積層された積層・配列量子ドットエピタキシャルウェーハ14を製作することができる。
本発明の位置・配列制御された量子ドットの作製方法に関する第3の実施例では,第1の実施例の工程2に用いる走査型トンネル顕微鏡STMの代わりに集束電子ビームを用いる。電子ビームは電子線描画(リソグラフィー)に用いられているように、ナノメータまで絞り込むことができ,集束された電子線のエネルギーを用いることによって、物質を蒸発させるなどのナノメートルオーダーの加工が可能である。また,STMと同様の走査機能を有している.図11は集束電子ビームを用いてエピタキシャルウェーハ10の表面を走査しながら第1の半導体超薄膜2に次々と穴あけ加工を施している様子を示す。電子線のエネルギーは第1の半導体超薄膜2だけを選択的に蒸発させて,半導体結晶基板ウェーハ1の原子は蒸発しないような値に選ばれている.第1の半導体超薄膜2の代わりに,第2の実施例で用いられた自然酸化膜22を用いても同様の加工を施すことができる。
上記第1の実施例ないし第3の実施例では、上記第1の半導体超薄膜層または上記自然酸化膜の表面上に、上記走査型トンネル顕微鏡とその探針または上記走査型電子顕微鏡とその集束電子ビームにおける走査機能を用いて次々と穴を開けることができる。本発明の第4の実施例としては、その穴の2次元平面上における配列として図12に示すように、(a)3つの穴が正三角形の頂点に位置し、その正三角形の繰り返しで平面を覆いつくす構造である稠密構造、(b)4つの穴が正方形の頂点に位置し、その正方形の繰り返しで平面を覆いつくす構造である正方形格子構造、(c)4つの穴が長方形の頂点に位置し、その長方形の繰り返しで平面を覆いつくす構造である長方形格子構造、(d)ひとつの方向(x方向)にm個の穴が並び、いくつか分おいて更にm個の穴が並び、これとは異なる他の方向(y方向)にはn個の穴が並び、いくつか分おいて更にn個の穴が並ぶようなmn配列、(e)x方向には周期的な配列をしており、一方y方向には周期性を持たないランダムな配列(1次元周期配列)をした構造などを作製することである。上記(a)(b)などの配列はx方向とy方向で同一の周期を持つ周期配列の例であり、この結果、量子ドットの電子的および光学的な性質がx方向とy方向とで同一となるが、上記(c)(d)(e)などの配列のようにx方向とy方向で異なるの周期を持つ周期配列の例では量子ドットの電子的および光学的な性質がx方向とy方向とで異なることとなる。
本発明の第5の実施例は、第1ないし第4の実施例に記載したような1つ以上の複数層を積層した積層・配列量子ドットエピタキシャルウェーハを従来の量子ドットレーザーダイオードの活性層に代わって用いた量子ドットレーサーダイオードである。図13にその構造(a)と注入電流と光出力の関係(b)を示す。量子ドットの配列が制御された結果として、量子ドットのサイズのばらつきが大幅に低減され、量子ドットの稠密配列による高密度化も達成されて、それらの結果として、レーザーダイオードの閾値電流が大幅に低減される。
本発明の第6の実施例は、第1ないし第4の実施例に記載したような積層・配列量子ドットエピタキシャルウェーハを従来の面発光型レーザーダイオードの活性層に代わって用いた面発光型量子ドットレーサーダイオードである。図14にその構造(a)と光出力の偏波の方向(b)を示す。積層・配列量子ドットエピタキシャルウェーハにおける量子ドットの配列がある方向(x方向)には短周期を持った配列であり、この方向の量子ドットの線密度は大きく、一方、他の方向(y方向)には長周期を持った配列であり、この方向の量子ドットの線密度は小さい。その結果、光学利得がx方向で大きく、y方向で小さくなり,発振する光の偏波はx方向となる。このように異方的配列を持つ積層・配列量子ドットエピタキシャルウェーハを用いることによって、従来偏波面不安定性を抱えていた面発光レーザダイオードの偏波面が安定化される。
本発明の第7の実施例は、図15(a)に示すように、第1ないし第4の実施例に記載したような1つ以上の複数層を積層した積層・配列量子ドットエピタキシャルウェーハを従来の電界効果トランジスタの活性層に代わって用いた電界効果トランジスタである。量子ドットが周期的に配列されていることによって、その周期性によって電子のバンド構造に新たなバンドギャップが形成される。このバンドギャップの形成によって電界効果トランジスタには微分負性抵抗を示す電流一電圧特性が出現し、新機能電子デバイスとして電子回路に応用される。量子ドットの配列の規則性がx方向とy方向とで異なる場合は、x方向に流れる電子に対するバンドギャップとy方向に流れる電子に対するバンドギャップが異なる結果、x方向に電流を流す場合の微分負性抵抗とy方向に電流を流す場合の微分負性抵抗が異なって現れる。その結果、図15(a)に示すようなゲートを共通として直交して配列された2つのソース−ゲート−ドレインからなる電界効果トランジスタでは、S1−G−D1をそれぞれソース−ゲート−ドレインとする電界効果トランジスタと、これと直交する方向のS2−G−D2をそれぞれソース−ゲート−ドレインとする電界効果トランジスタとではドレイン電圧−電流特性が異なるとともに微分負性抵抗特性に伴うヒステレシスが出現する領域が異なる。このような、さまざまな新機能素子を提供することが出来る。
本発明によってもたらされた量子ドットの位置および配列制御の方法は、量子ドットのサイズの均一性をもたらし、その結果として従来はばらつきの中に隠されていた量子ドットの本来的な物性を実現するばかりでなく、配列制御の結果としてもたらされる新たな周期性の結果、従来とは全く異なる電子的・光学的な物性をもたらすことができる。その結果として量子ドットレーザーダイオードや面発光型レーザーダイオードなどの光半導体デバイスの特性改善ばかりでなく、従来は実現できなかったデバイス特性を実現することができるようになる。電子デバイスの面でも、新たな周期性がもたらされる結果、新たなバンドギャップが出現し、従来は実現できなかったような全く新しい電界効果トランジスタなどを実現できるようになる。
引用文献
1)J.H.Noh et al.:Japan.J.Appl.Phys.,37(1998)3793.
2)K.Yamaguchi et al.:Japan.J.Appl.Phys.,41(2002)L996.
3)S.Ohkouchi et al.:Japan.J.Appl.Phys.,44(2005)5777.
4)特許第2992355号
5)H.Bando et al.:J.Crystal Growth 278(2005)464.
引用文献
1)J.H.Noh et al.:Japan.J.Appl.Phys.,37(1998)3793.
2)K.Yamaguchi et al.:Japan.J.Appl.Phys.,41(2002)L996.
3)S.Ohkouchi et al.:Japan.J.Appl.Phys.,44(2005)5777.
4)特許第2992355号
5)H.Bando et al.:J.Crystal Growth 278(2005)464.
1:半導体結晶基板ウェーハ、
1−1:半導体結晶基板ウェーハの表面
2:第1の半導体超薄膜、
3:走査トンレル顕微鏡の探針、
4−1,4−2,4−3、−−−−−−−:穴
5:第2の半導体超薄膜
5−1:単結晶、5−2:単結晶,5−3:非晶質
6−1,6−2,6−3−−−−−−:ドット列
7:第3の半導体薄膜
22:半導体結晶基板ウェーハの自然酸化膜
24−1,24−2,24−3、−−−−−−−:穴
10:エピタキシャルウェーハ
11:穴空きエピタキシャルウェーハ
12:配列ドットエピタキシャルウェーハ
13:埋込・配列量子ドットエピタキシャルウェーハ
14:積層・配列量子ドットエピタキシャルウェーハ
30:自然酸化膜つき半導体結晶基板ウェーハ
31:穴空き自然酸化膜つき半導体結晶基板ウェーハ
1−1:半導体結晶基板ウェーハの表面
2:第1の半導体超薄膜、
3:走査トンレル顕微鏡の探針、
4−1,4−2,4−3、−−−−−−−:穴
5:第2の半導体超薄膜
5−1:単結晶、5−2:単結晶,5−3:非晶質
6−1,6−2,6−3−−−−−−:ドット列
7:第3の半導体薄膜
22:半導体結晶基板ウェーハの自然酸化膜
24−1,24−2,24−3、−−−−−−−:穴
10:エピタキシャルウェーハ
11:穴空きエピタキシャルウェーハ
12:配列ドットエピタキシャルウェーハ
13:埋込・配列量子ドットエピタキシャルウェーハ
14:積層・配列量子ドットエピタキシャルウェーハ
30:自然酸化膜つき半導体結晶基板ウェーハ
31:穴空き自然酸化膜つき半導体結晶基板ウェーハ
Claims (6)
- 量子ドットを形成すべき位置及び配置を人為的に制御する方法であって,▲1▼半導体結晶基板ウェーハ上に,上記半導体結晶基板ウェーハよりも昇華温度が低いことを特徴とする第1の半導体極薄膜層を形成する工程1と,▲2▼超高真空中で走査型トンネル顕微鏡を用いて,表面の局所的な位置において、その走査型トンネル顕微鏡の電界蒸発効果(高電圧を加えることにより、探針に対向して接近して配置されている物質の表面原子を蒸発して除去すること)によって上記第1の半導体超薄膜層を蒸発させて基板結晶表面を露出させるまで穴を開けるとともに,上記走査型トンネル顕微鏡の走査機能によって、表面の別の局所的な位置において、上記走査型トンネル顕微鏡による電界蒸発を繰り返して別の穴を次々と開ける工程2と,▲3▼走査型トンネル顕微鏡にて加工した上記加工基板表面上に上記半導体基板結晶や上記第1の半導体超薄膜とは異なる組成を有する第2の半導体超薄膜をエピタキシャル成長する工程3と,▲4▼加熱により,半導体結晶基板ウェーハ上に残留している上記第1の半導体超薄膜層を,その上の上記第2の半導体超薄膜とともに昇華させる工程4と,▲5▼上記半導体結晶基板ウェーハと同一の組成のまたは異なる組成で,且つ,上記第2の半導体薄膜とは異なる組成を有する第3の半導体薄膜をエピタキシャル成長する工程5を含むことを特徴とする量子ドットの位置および配列制御方法,及び上記工程1ないし工程5を1サイクルとしてそれを複数回繰り返すことを特徴とする積層量子ドットの位置および配列制御方法。
- 上記第1の半導体極薄膜層の代わりに上記半導体結晶基板ウェーハ上に自然に形成される,または酸素と窒素の雰囲気中に所定の時間放置することによって形成される自然酸化膜を用いることを特徴とする請求項1記載の量子ドットの位置および配列制御方法。
- 上記走査型トンネル顕微鏡とその探針に代わって走査型電子顕微鏡の集束電子ビームを用いることを特徴とする請求項1ないし2記載の量子ドットの位置および配列制御方法。
- 上記第1の半導体極薄膜層または上記自然酸化膜の表面上に上記走査型トンネル顕微鏡とその探針,または上記走査型電子顕微鏡とその集束電子ビームを用いて次々と明けられる穴の配列が2次元稠密構造,二次元正方形格子,2次元長方形格子を含む2次元周期格子を形成する配列であることを特徴とする請求項1ないし3記載の量子ドットの位置および配列制御方法。
- 上記第1の半導体極薄膜層または上記自然酸化膜の表面上に上記走査型トンネル顕微鏡とその探針または上記走査型電子顕微鏡とその集束電子ビームを用いて次々と明けられる穴の配列が,ひとつの方向については周期的な配列であり,他の一つの方向に対しては非周期的な配列であることを特徴とする請求項1ないし3記載の量子ドットの位置および配列制御方法。
- 位置および配列が制御された量子ドットを活性層に用いた量子ドットレーザーダイオード,面発光レーザーダイオード,あるいは電界効果トランジスタであって,その量子ドットは▲1▼半導体結晶基板ウェーハ上に,上記半導体結晶基板ウェーハよりも昇華温度が低いことを特徴とする第1の半導体極薄膜層あるいは自然酸化膜を形成する工程1と,▲2▼超高真空中で走査型トンネル顕微鏡を用いて,表面の局所的な位置において,その走査型トンネル顕微鏡の電界蒸発効果(高電圧を加えることにより、探針に対向して接近して配置されている物質の表面原子を蒸発して除去すること)によって,あるいは走査型電子顕微鏡を用いてその集束電子ビームの高いエネルギー密度を用いて,上記第1の半導体超薄膜層あるいは自然酸化膜を蒸発させて基板結晶表面を露出させるまで穴を開けるとともに,上記走査型トンネル顕微鏡あるいは上記走査型電子顕微鏡の走査機能によって,表面の別の局所的な位置において,上記走査型トンネル顕微鏡による電界蒸発あるいは上記走査型電子顕微鏡の高エネルギー密度による蒸発を繰り返して,別の穴を次々と開けて,穴の周期的な配列を作製する工程2と,▲3▼走査型トンネル顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡によって加工した上記加工基板表面上に,上記半導体結晶基板ウェーハや上記第1の半導体超薄膜あるいは上記自然酸化膜とは異なる組成を有する第2の半導体超薄膜をエピタキシャル成長する工程3と,▲4▼加熱により,半導体結晶基板ウェーハ上に残留している,上記第1の半導体超薄膜層あるいは上記自然酸化膜を,その上の第2の半導体超薄膜とともに昇華させる工程4と,▲5▼上記半導体結晶基板ウェーハと同一の組成のまたは異なる組成で,且つ,上記第2の半導体薄膜とは異なる組成を有する第3の半導体薄膜をエピタキシャル成長する工程5を含むことを特徴とする量子ドットの位置および配列制御方法,または上記工程1ないし工程5を1サイクルとしてそれを複数回繰り返すことを特徴とする積層量子ドットの位置および配列制御方法を用いて製作されることを特徴とする。
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JP2005381091A JP2007173751A (ja) | 2005-12-20 | 2005-12-20 | 配列制御された量子ドットの作製方法及び配列制御された量子ドットを用いた半導体装置 |
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JPH104069A (ja) * | 1996-06-18 | 1998-01-06 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | 半導体微細構造の作製方法 |
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