JP2007169362A - 重合性液晶性組成物、高分子液晶、回折素子、及び光情報記録再生装置 - Google Patents

重合性液晶性組成物、高分子液晶、回折素子、及び光情報記録再生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を提供することが可能な重合性液晶性組成物を提供する。
【解決手段】重合性液晶性組成物は、重合性官能基及びメソゲン基を有する重合性液晶性化合物並びに重合性官能基を有するカイラル剤を含み、重合性液晶性組成物は、少なくとも一般式(1)
Figure 2007169362

で表される第一の重合性液晶性化合物を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、重合性液晶性組成物、高分子液晶、回折素子、及び光情報記録再生装置に関する。
高分子コレステリック液晶は、螺旋構造を有しており、ネマチック液晶材料のような液晶材料及び不斉中心を有するカイラル剤を重合することによって得られる。また、高分子コレステリック液晶は、その螺旋構造のピッチに応じて、特定の波長領域(選択反射帯)における波長を有する光における左右の円偏光成分の一方を選択的に反射する性質を有する。
高分子コレステリック液晶は、主として、液晶ディスプレイ用の輝度向上フィルムとして用いられている。このような液晶ディスプレイ用の輝度向上フィルムは、可視光の波長の全領域にわたる光を反射させることが要求される。すなわち、可視光の波長の全領域のような広い波長領域にわたる選択反射帯を備えた高分子コレステリック液晶が、望まれている。その他にも、用途によっては広い波長領域にわたる選択反射帯を備えた高分子コレステリック液晶が必要とされる場合がある。
ここで、高分子コレステリック液晶の選択反射帯は、高分子コレステリック液晶の屈折率異方性に依存し、より広い波長領域にわたる選択反射帯を備えた高分子コレステリック液晶を得るためには、高分子コレステリック液晶用の液晶材料の屈折率異方性が、高いことが好ましい。よって、より広い波長領域にわたる選択反射帯を備えた高分子コレステリック液晶を得るために、より高い屈折率異方性を備えた液晶材料の使用が提案されている。
また、広い波長領域にわたる選択反射帯を備えた高分子コレステリック液晶を得るために、互いに異なる選択反射帯を備えた高分子コレステリック液晶のフィルムの積層体及び螺旋構造のピッチが変動する高分子コレステリック液晶の使用が、提案されている。また、特許文献1には、抽出可能な材料成分を含むコレステリック特性を有するポリマー材料を溶剤又は溶剤混合物と接触させることを特徴とする、広いコレステリック反射帯域を有する配向三次元架橋ポリマー材料の製法が開示されている。さらに、特許文献2には、光重合可能なコレステリック液晶を包含する層を、定義された温度における化学線での定義された短時間露光により部分的に重合させる工程、定義された温度における露光なし(暗相)の定義された待ち時間を維持する工程、こうして得られた層を定義された温度において化学線で露光することにより固定する工程を包含することを特徴とする、光重合可能なコレステリック液晶のコレステリック反射帯域を拡張する方法が開示されている。
しかしながら、従来の高分子コレステリック液晶については、液晶材料及びカイラル剤を重合させる際に、均質な螺旋構造を形成することが容易ではない。これは重合させる際に、重合性液晶性化合物と重合性官能基を有するカイラル剤との重合速度が異なるためであり、均質な共重合の状態をとりずらいにことが要因と考えられる。また、液晶材料及びカイラル剤の重合で得られる重合体を熱処理する方法やその後の冷却手段により、高分子コレステリック液晶の螺旋構造が、さらに不均質になることがある。
これにより、高分子コレステリック液晶の透過率を示す分光曲線における選択反射帯の形状が、明瞭な矩形を示さない場合がある。この場合、高分子コレステリック液晶に対して選択反射帯近傍の波長の光を照射するとき、高分子コレステリック液晶の旋光能が著しく小さくなることがある。また、高分子コレステリック液晶の選択反射帯の矩形が明瞭である場合と不明瞭である場合において、中心波長が同様であっても旋光能が不均一であることがある。さらに、重合前の液晶組成物と、重合後の高分子コレステリック液晶とで比較すると、透過率を示す分光曲線における選択反射帯の矩形形状(幅及び中心波長)が、大きく変動することがある。このような現象は、高分子コレステリック液晶を回折素子等の光ピックアップ部品として使用する際に問題となる場合があった。
特開平10−316755号公報 特開平11−80733号公報
本発明の第一の目的は、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を提供することが可能な重合性液晶性組成物を提供することである。
本発明の第二の目的は、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を提供することである。
本発明の第三の目的は、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を含む回折素子を提供することである。
本発明の第四の目的は、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を含む回折素子を含む光情報記録再生装を提供することである。
本発明の第一の態様は、重合性官能基及びメソゲン基を有する重合性液晶性化合物並びに重合性官能基を有するカイラル剤を含む重合性液晶性組成物において、当該重合性液晶性組成物は、少なくとも一般式(1)
Figure 2007169362
で表される第一の重合性液晶性化合物を含み、Rは、水素原子又はメチル基であり、m1及びn1は、m1=n1=0又はm1=1且つn1=1以上8以下の自然数を満たし、p、q、r、s、t、及びuは、0又は1であり、且つp、q、r、s、t、及びuの少なくとも一つは、1であり、Xは、シアノ基、フッ素原子、又は塩素原子であることを特徴とする重合性液晶性組成物である。
本発明の第二の態様は、少なくとも、本発明の第一の態様である重合性液晶組成物を重合させることによって得られることを特徴とする高分子液晶である。
本発明の第三の態様は、光を回折させる回折素子であって、本発明の第二の態様である高分子液晶を含む第一の材料からなる第一の部材及び該第一の材料と屈折率特性が異なる第二の材料からなる第二の部材を含み、該第一の部材及び該第二の部材は、交互に配置されていることを特徴とする回折素子である。
本発明の第四の態様は、光記録媒体に情報を記録する及び/又光記録媒体に記録された情報を再生する光情報記録再生装置であって、本発明の第三の態様である回折素子を含むことを特徴とする光情報記録再生装置である。
本発明の第一の態様によれば、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を提供することが可能な重合性液晶性組成物を提供することができる。
本発明の第二の態様によれば、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を提供することができる。
本発明の第三の態様によれば、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を含む回折素子を提供することができる。
本発明の第四の態様によれば、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を含む回折素子を含む光情報記録再生装を提供することができる。
本発明における屈折率異方性は、右回り円偏光の屈折率と左回り円偏光の屈折率との差を意味する。また、屈折率異方性をΔnとも略記する。
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
本発明の第一の実施形態は、重合性官能基及びメソゲン基を有する重合性液晶性化合物並びに重合性官能基を有するカイラル剤を含む重合性液晶性組成物であって、当該重合性液晶性組成物は、少なくとも一般式(1)
Figure 2007169362
で表される第一の重合性液晶性化合物を含み、Rは、水素原子又はメチル基であり、m1及びn1は、m1=n1=0又はm1=1且つn1=1以上8以下の自然数を満たし、p、q、r、s、t、及びuは、0又は1であり、且つp、q、r、s、t、及びuの少なくとも一つは、1であり、Xは、シアノ基、フッ素原子、又は塩素原子である。
ここで、重合性官能基は、炭素−炭素二重結合(−C=C−)を含む官能基である。重合性官能基としては、例えば、アクリロイル基(CH=CHCOO−)及びメタクリロイル基(CH=C(CH)COO−)などが挙げられる。なお、重合性液晶性化合物の重合性官能基は、カイラル剤の官能基と同一であっても異なってもよい。
また、メソゲン基は、重合性液晶性化合物の分子の異方性に寄与する。メソゲン基は、好ましくは、脂環式炭化水の環、芳香族炭化水素の環及び複素環の少なくとも一つを含み、メソゲン基に含まれる環は、互いに直接的に結合してもよく、連結基を介して間接的に結合してもよい。メソゲン基としては、例えば、1,4’’−ターフェニレン基(−Ph−Ph−Ph−)及び4,4’−ジフェニルアセチレンジイル基(−Ph−C≡C−Ph−)が挙げられる。ここで、−Ph−は、1,4−フェニレン基を表す。
さらに、カイラル剤は、少なくとも一つの不斉炭素原子を有する化合物であり、特に限定されない。前記重合性液晶性化合物とカイラル剤とを含む重合性液晶性組成物を重合させることによって、螺旋構造を備えた高分子コレステリック液晶を得ることが可能となる。
なお、本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物は、重合させるための公知の重合開始剤及び/又は不均一な熱重合を抑制するための重合禁止剤を含んでもよい。
本発明の第一の実施形態によれば、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を提供することが可能な重合性液晶性組成物を提供することができる。
すなわち、本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物は、一般式(1)で表される第一の重合性液晶性化合物を含むことにより、カイラル剤との良好な相溶性を有する。よって、重合性液晶性組成物における重合性液晶性化合物及びカイラル剤の螺旋構造の不均質性が低減される。そして、重合性液晶性組成物を重合させることによって得られる高分子コレステリック液晶の螺旋構造の均質性も維持され、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を提供することが可能となる。
このように、高分子コレステリック液晶の螺旋構造の均質性が維持されるため、重合性液晶性組成物の選択反射帯における重合性液晶性組成物の透過率を示す分光曲線の矩形と高分子液晶の選択反射帯における高分子液晶の透過率を示す分光曲線の矩形との間の変動を低減することが可能となる。さらに、重合の前後において、液晶性重合性組成物の旋光能と高分子液晶の旋光能との間の変動を低減することも可能となる。なお、旋光能は、旋光性を示す物質の単位厚さ当たりその物質の旋光角であり、旋光角は、直線偏光の光が、旋光性を示す物質を通過する際に、直線偏光の偏光面の回転角度を表す。
加えて、本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物の旋光能及び高分子液晶の旋光能は、比較的高い。
高分子コレステリック液晶において、メソゲン基による屈折率異方性を利用するためには、重合性液晶性組成物が液晶相を示す温度範囲で重合することが必要である。本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物は、融点が室温程度と比較的低く、Tcも80℃以上であることから、比較的低温で液晶相を示し、かつ液晶相を示す温度範囲が広い。よって、重合性液晶性組成物を比較的低い温度で重合させることができる。低い温度域では、重合性液晶組成物の屈折率異方性の変化が小さいことから、屈折率異方性の温度変化が低減された状態で高分子液晶を得ることが可能である。
また、より低温で重合できることにより、重合性液晶性組成物を重合させることによって得られる高分子コレステリック液晶の選択反射帯における高分子コレステリック液晶の透過率を示す分光曲線の矩形の温度変化を低減することが可能となる。すなわち、高分子コレステリック液晶の選択反射帯における高分子コレステリック液晶の透過率を示す分光曲線の矩形の幅及び中心波長の温度変化を低減することが可能となる。
さらに、低温で液晶相を示すことから、重合時に重合性液晶性組成物を加熱したり、高い温度で重合させる必要がない。よって、重合性液晶性組成物の不均一な熱重合を抑制して、紫外光のような光の照射によって光重合させることができる。すなわち、不均一な高分子コレステリック液晶を生じ易い熱重合を抑制し、重合性液晶性組成物を光重合させることによって、より均一な高分子コレステリック液晶を、より容易に得ることが可能となる。
また、重合前の重合性液晶性組成物においては、低温であるほどΔn値が大きくなる。そして、高分子液晶のΔn値は、重合性液晶組成物のΔn値を反映し、Δnの大きい重合性液晶組成物を用いて得られる高分子液晶のΔnは大きくなる傾向がある。よって、より低温で重合を行うことにより、Δn値の大きい高分子コレステリック液晶が得られるので好ましい。
さらに、本発明の第一の実施形態による液晶性重合性組成物に含まれる第一の重合性液晶性化合物は、重合前後における光の吸収スペクトル変化が少ない化合物である。よって、本発明の第一の実施形態による液晶性重合性組成物を重合して得られる高分子液晶の可視光領域における光の吸収を低減することも可能となる。すなわち、重合性液晶性組成物を重合することによって得られる高分子液晶の着色を低減することが可能となる。
加えて、本発明の第一の実施形態によれば、重合性液晶組成物を重合することによって得られる高分子コレステリック液晶の屈折率異方性の低下を抑制することも可能となる。
なお、本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物は、少なくとも重合性官能基及びメソゲン基を備えた重合性液晶性化合物並びにカイラル剤を混合することによって、得られる。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、前記第一の重合性液晶性化合物におけるm1及びn1は、m1=1且つn1=1以上8以下の自然数を満たす。この場合には、第一の重合性液晶性化合物は、(CHn1−O−(n1=1〜8)を有する。n1としては、2、4、または6が好ましい。
第一の重合性液晶性化合物におけるm1及びn1が、m1=1且つn1=1以上8以下の自然数を満たす場合には、より低い融点を備えた重合性液晶性組成物を得ることが可能となる。特に、室温程度(30℃以下)の低い融点を備えた重合性液晶性組成物を提供することも可能となる。すなわち、より広い、液晶相を示す温度範囲を備えた重合性液晶性組成物を得ることが可能となる。
さらに、重合性液晶性組成物の屈折率異方性の温度変化は、低い温度では、小さい。このため、第一の重合性液晶性化合物におけるm1及びn1が、m1=1且つn1=1以上8以下の自然数を満たす場合には、重合性液晶性組成物を低い温度で重合させることによって、すなわち、重合性液晶性組成物の屈折率異方性の温度変化が少ない条件で、重合性液晶性組成物を重合させることができる。このため、重合性液晶性組成物を重合することによって得られる高分子液晶の屈折率異方性の変動を抑制することも可能となる。
また、第一の重合性液晶性化合物におけるm1及びn1が、m1=1且つn1=9以上の自然数を満たす場合には、温度変化による熱運動の変化が大きくなる。その結果、重合性液晶性化合物を重合することによって得られる高分子液晶の屈折率異方性の温度変化が、実用上、許容できなくなく場合がある。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、前記第一の重合性液晶性化合物におけるXは、シアノ基である。
第一の重合性液晶性化合物におけるXは、シアノ基である場合には、より高い屈折率異方性を備えた重合性液晶性組成物を得ることが可能となる。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、前記第一の重合性液晶性化合物におけるp、q、r、s、t、及びuのいずれか一つが、1であり、他は、0である。
第一の重合性液晶性化合物におけるp、q、r、s、t、及びuのいずれか一つが、1であり、他は、0である場合には、第一の重合性液晶性化合物をより容易に得ることができる。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、p及びuは、0であり、q、r、s、及びtのいずれか一つが、1であり、他は、0である。
第一の重合性液晶性化合物におけるp及びuは、0であり、q、r、s、及びtのいずれか一つが、1であり、他は、0である場合には、より低い融点を備えた重合性液晶性組成物を、より容易に得ることが可能となる。すなわち、第一の重合性液晶性化合物におけるp及びuは、0であり、q、r、s、及びtのいずれか一つが、1であり、他は、0である場合には、より広い、液晶相を示す温度範囲を備えた重合性液晶性組成物を、より容易に得ることが可能となる。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶組成物における一般式(1)で表される第一の重合性液晶性化合物としては、下記化合物が挙げられ、下記化合物(1A−2)、(1A−4)、(1A−6)、(1B−4)が好ましい。なお、一般式(1)で表される化合物の合成方法については、以下に述べる。
Figure 2007169362
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、重合性液晶性組成物に含まれる全重合性化合物の合計のモルに対する前記第一の重合性液晶性化合物のモルの比は、0.5以上0.95以下であることが好ましく、0.6以上0.9以下が特に好ましい。なお、本発明における重合性化合物とは、一般式(1)で表わされるような重合性液晶性化合物、後述する一般式(2)で表わされるような重合性官能基およびメソゲン基を有する化合物を指す。
重合性化合物の合計のモルに対する前記第一の重合性液晶性化合物のモルの比が、0.5未満である場合には、重合性液晶性化合物の全体における第一の重合性液晶性化合物の含有率が、低すぎて、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を得ることが困難である場合がある。一方、重合性化合物の合計のモルに対する第一の重合性液晶性化合物のモルの比が、0.95を超える場合には、重合性液晶性化合物の全体におけるカイラル剤の含有率が、低すぎて、安定な螺旋構造を備えた高分子コレステリック液晶を提供することができないことがある。
本発明の第一の実施形態に用いられる第一の重合性液晶性化合物は、例えば、以下のような手順で合成することができる。
化合物(1A)は、たとえば以下の方法によって合成できる。
まず、化合物(41)とマグネシウムとを反応させてGrignard試薬を調製し、化合物(42)と反応させ、化合物(43)を得る。つぎに化合物(43)のGrignard試薬を調製し、二酸化炭素と反応させて化合物(44)を得る。つぎに化合物(44)をチオニルクロリドと、ついでアンモニア水と反応させることによって化合物(45)を得る。つぎに化合物(45)とパラトルエンスルホニルクロリドとを反応させ、化合物(46)を得る。つぎに化合物(46)とBBrとを反応させることによって化合物(47)を得る。つぎに化合物(47)とCH=CH−COO−(CHn1−OHとを縮合反応させることによって化合物(1A)を得る。また、化合物(47)を化合物(49)と反応させて化合物(50)を得て、つぎに化合物(50)をアクリル酸クロリドと反応させることによっても化合物(1A)を得ることができる。
なお、本発明の第一の実施形態である重合性液晶性組成物における化合物(1A−0)は、化合物(47)とアクリル酸クロリドとを反応させることによって得ることができる。
Figure 2007169362
化合物(1B)は、たとえば以下の方法によって合成できる。
まず、化合物(51)を臭素化して化合物(52)を得る。つぎに化合物(52)と化合物(53)とを反応させて化合物(54)を得る。つぎに化合物(54)をBBrと反応させて化合物(55)を得る。つぎに化合物(55)とCH=CH−COO−(CH2)n1−OHとを縮合反応させることによって化合物(1B)を得る。
Figure 2007169362
また、本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、該重合性液晶性化合物は、複数の重合性官能基及びメソゲン基を有する第二の重合性化合物を含む。なお、第二の重合性化合物における重合性官能基及びメソゲン基は、上述したものと同じである。また、複数の重合性官能基は、互いに同一の重合性官能基を含んでもよく、互いに異なる重合性官能基を含んでもよい。さらに、第二の重合性化合物の複数の重合性官能基の少なくとも一つは、第一の重合性液晶性化合物の重合性官能基と同一であってよく、第一の重合性液晶性化合物の重合性官能基と異なってもよい。
第二の重合性化合物としては、液晶性であってもよく非液晶性であってもよい。第二の重合性化合物が非液晶性の化合物である場合には、重合性液晶性組成物として液晶性を示せばよい。
重合性液晶性組成物が、さらに、複数の重合性官能基及びメソゲン基を有する第二の重合性化合物を含む場合には、重合の際に、第二の重合性化合物は、重合性液晶性組成物を重合させることによって得られる高分子液晶の液晶性の低下を抑制すると共に、高分子液晶に架橋を含ませることができる。そして、高分子液晶に架橋を含ませることによって、高分子液晶の熱運動を抑制し、高分子液晶の屈折率異方性の温度変化を抑制することが可能となる。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、前記第二の重合性化合物は、一般式(2)
Figure 2007169362
で表される化合物であり、Rは、水素原子又はメチル基であり、m2及びn2は、m2=n2=0又はm2=1且つn2=1以上8以下の自然数を満たし、Yは、1,4−フェニレン基又は−C≡C−である。
としては水素原子が好ましい。m2及びn2としては、m2=1且つn2=1以上8以下の自然数(特に2〜6の自然数)が好ましく、Yとしては−C≡C−が好ましい。
一般式(2)で表される化合物としては、下記化合物等が挙げられ、下記化合物(2−1)が好ましい。
Figure 2007169362
第二の重合性化合物は、一般式(2)で表される化合物である場合には、重合性液晶性組成物を重合させることによって得られる高分子液晶の屈折率異方性の低下を抑制すると共に、高分子液晶の屈折率異方性の温度変化を抑制することができる。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、全重合性化合物の合計のモルに対する前記第二の重合性化合物のモルの比は、0.05以上0.5以下であることが好ましく、0.1以上0.3以下が特に好ましい。
重合性化合物の合計のモルに対する第二の重合性化合物のモルの比は、0.05未満である場合には、重合性化合物の全体における第二の重合性化合物の含有率が、低すぎて、高分子液晶に架橋を十分に含ませることができずに、高分子液晶の屈折率異方性の温度変化を、より十分に抑制することが困難である場合がある。一方、重合性化合物の合計のモルに対する第二の重合性化合物のモルの比が、0.5を超える場合には、重合性液晶性組成物の透明点が、低下して、重合性液晶性組成物の液晶相を示す温度範囲が狭くなる場合がある。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、前記重合性液晶性組成物は、一般式(3)
Figure 2007169362
で表される第三の重合性液晶性化合物をさらに含み、Rは、水素原子又はメチル基であり、m3及びn3は、m3=n3=0又はm3=1且つn3=1以上8以下の自然数を満たし、Zは、−COO−又は−OCO−であり、Wは、シアノ基、フッ素原子、又は塩素原子である。
前記重合性液晶性組成物が、一般式(3)で表される第三の重合性液晶性化合物をさらに含む場合には、重合性液晶性組成物の透明点を高くして、重合性液晶性組成物の液晶相を示す温度範囲を、より容易に広くすることができると共に、重合性液晶性化合物を重合させることによって得られる高分子液晶の屈折率異方性の低下を抑制することができる。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、全重合性化合物の合計のモルに対する前記第三の重合性液晶性化合物のモルの比は、0.05以上0.3以下である。
重合性化合物の合計のモルに対する第三の重合性液晶性化合物のモルの比が、0.05未満である場合には、重合性化合物の全体における第三の重合性液晶性化合物の含有率が、低すぎて、重合性液晶性組成物の透明点を、より十分に高くすることができずに、重合性液晶性組成物の液晶相を示す温度範囲を、より十分に広くすることができない場合がある。一方、重合性化合物の合計のモルに対する第三の重合性液晶性化合物のモルの比が、0.3を超える場合には、重合性液晶性組成物の融点が、高くなりすぎて、より低い温度で液晶相を示す重合性液晶性組成物を提供することが困難である場合がある。また、重合性液晶性組成物の液晶相を示す温度範囲を、より十分に広くすることができない場合がある。
なお、本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、第三の重合性液晶性化合物を含む場合、重合性液晶性化合物の合計のモルに対する第一の重合性液晶性化合物のモルの比は、0.5以上0.9以下であることが好ましく、0.6以上0.9以下が特に好ましい。重合性液晶性化合物の合計のモルに対する第二の重合性液晶性化合物のモルの比は、0.05以上0.4以下であることが好ましく、0.1以上0.3以下であることが特に好ましい。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、重合性化合物の合計の含有率は、重合性液晶性組成物に対して70質量%以上である。重合性化合物の合計の含有率が、重合性液晶性組成物に対して70質量%未満であると、重合性液晶性組成物に含まれる重合性化合物の含有率が、低すぎて、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を十分に提供することができないことがある。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、カイラル剤の含有率は、3質量%以上30質量%以下である。カイラル剤の含有率が、重合性液晶性組成物に対して3質量%未満であると、重合性液晶性組成物に含まれるカイラル剤の含有率が、低すぎて、安定な螺旋構造を備えた高分子コレステリック液晶を提供することができないことがある。すなわち、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を得ることが困難である場合がある。一方、カイラル剤の含有率が、重合性液晶性組成物に対して30質量%を超えると、重合性液晶性組成物及び高分子液晶の屈折率異方性が、低下することがある。すなわち、重合性液晶性組成物及び高分子液晶の旋光能が、小さくなることがある。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、前記カイラル剤は、重合性官能基を有するイソソルビド誘導体又は重合性官能基及び1−フェニルエチル基を有する化合物である。
なお、重合性官能基は、上述したものと同じである。また、これらの具体的なカイラル剤の重合性官能基は、上述したように、重合性液晶性化合物の重合性官能基と同一であってよく、重合性液晶性化合物の重合性官能基と異なってもよい。また、イソソルビド誘導体は、一般式(4)
Figure 2007169362
で表される化合物であり、置換基P及びPは、特に限定されないが、置換基P及びPの少なくとも一方は、重合性官能基を含む。ここで、P及びPは、それぞれ独立に、一つの置換若しくは無置換の1,4−フェニレン基を含むことが好ましい。置換の1,4−フェニレン基は、1,4−フェニレン基の水素原子の少なくとも一つが置換基で置換されている。これらの置換基としては、塩素原子、フッ素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、及び炭素数1以上10以下のアルコキシ基からなる群より選択される置換基が挙げられる。
炭素数1以上10以下のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1以上10以下のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。炭素数1以上10以下のアルコキシ基は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1以上10以下のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
1,4−フェニレン基に置換する置換基としては、メチル基、メトキシ基およびフッ素原子が好ましい。
一般式(4)で表される化合物としては、公知の化合物を使用してもよく、下記一般式(A)で表される化合物および下記一般式(B)で表される化合物を使用してもよい。
一般式(4)で表される化合物としては、好ましくは、一般式(A)
Figure 2007169362
又は一般式(B)
Figure 2007169362
で表されるカイラル剤である。すなわち、一般式(A)又は一般式(B)で表される化合物は、不斉炭素原子を有するカイラル剤である。
ここで、Q及びQは、それぞれ独立に、CH=CR−COO−(L)−E−で表される基である。
また、Q及びQは、それぞれ独立に、−E−Rで表される基である。
は、水素原子又はメチル基であり、水素原子が好ましい。
は、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、炭素数2以上8以下のアルケニル基、フッ素原子、及びシアノ基からなる群より選択される基である。
炭素数1以上8以下のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1以上8以下のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などが挙げられる。炭素数1以上8以下のアルコキシ基は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1以上8以下のアルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基などが挙げられる。炭素数2以上8以下のアルケニル基は、直鎖又は分岐鎖の炭素数2以上8以下のアルケニル基であり、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基などが挙げられる。
本発明の第一の実施形態によるカイラル剤において、好ましくは、HTPを大きくできる観点からは、Rは炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であることが好ましい。具体的には、n−ヘプチル基、メトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、およびシアノ基が好ましい。
wは、0又は1であり、1が好ましい。
Lは、−(CHO−又は−(CH−であり、−(CHO−が好ましい。
p及びqは、それぞれ独立に、2以上8以下の整数であり、2以上4以下の整数が好ましい。
及びEは、それぞれ独立に、塩素原子、フッ素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、及び炭素数1以上10以下のアルコキシ基からなる群より選択される置換基を有してもよい、1,4−フェニレン基であることを特徴とするカイラル剤である。言い換えれば、E及びEは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の1,4−フェニレン基である。
ここで、置換の1,4−フェニレン基は、1,4−フェニレン基の水素原子の少なくとも一つが、それぞれ独立に、塩素原子、フッ素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、及び炭素数1以上10以下のアルコキシ基からなる群より選択される置換基で置換された1,4−フェニレン基である。なお、炭素数1以上10以下のアルキル基及び炭素数1以上10以下のアルコキシ基は、P及びPについて上述したものと同じである。また、置換基の好ましい態様も上述したものと同じである。
本発明のカイラル剤としては、下記化合物が好ましく、下記化合物(B1)〜(B3)が特に好ましい。なお、Q〜Qの好ましい態様は、下記化合物中に例示される。
Figure 2007169362
このように、一般式(4)で表される化合物は、好ましくは、イソソルビド誘導型の中心骨格の両側のそれぞれに一つの置換若しくは無置換の1,4−フェニレン基を有し、イソソルビド誘導型の中心骨格の片側にCH=CR−COO−を有する。ここで、CH=CR−COO−は、重合性官能基である。
この場合は、一般式(4)で表される化合物は、融点または結晶化点が低く、HTPが大きくなる。
一般式(4)で表される化合物は、例えば、合成スキーム1
Figure 2007169362
又は合成スキーム2
Figure 2007169362
に従う合成方法によって、得られる(なお、式中のDCCはジシクロヘキシルカルボジイミドを表し、DMAPはジメチルアミノピリジンを表す。)。
一般式(4)で表される化合物のうち、一般式(B)で表される化合物は、例えば、合成スキーム1に示す方法によって得られる。すなわち、イソソルビドと所定のカルボン酸(QCOOH)との縮合反応によって化合物(b)を得て、つぎに化合物(b)と式QCOClで表される化合物とのエステル化反応によって化合物(B)を得ることができる。
また、一般式(A)で表される化合物は、例えば、合成スキーム2に示す方法によって得られる。すなわち、イソソルビドと所定の第一のカルボン酸(QCOOH)との縮合反応によって化合物(a)を得て、つぎに化合物(a)と、式QCOOHで表される化合物とを反応させることによって化合物(A)を得ることができる。
なお、QCOOH、QCOOH、QCOCl、QCOOHは市販されている化合物をそのまま使用するか、市販されている化合物から誘導して使用できる。
さらに、重合性官能基及び1−フェニルエチル基を有する化合物は、具体的には、一般式(5)
Figure 2007169362
で表される化合物であり、置換基Pは、特に限定されないが、重合性官能基を含む。重合性官能基としてはアクリロイル基およびメタクリロイル基が好ましい。また、一般式(5)で表される化合物としては、メソゲン基を有することが好ましい。一般式(5)で表される化合物としては、具体的には下記化合物が好ましい。
Figure 2007169362
重合性官能基を有するイソソルビド誘導体又は重合性官能基及び1−フェニルエチル基を有する化合物は、比較的高い螺旋誘起力(Helical Twisting Power:HTP)を有する。ここで、螺旋誘起力とは、カイラル剤が液晶をねじる力の指標であり、
HTP=(PC)−1
で定義され、Pは、螺旋構造のピッチ(μm)を表し、Cは、カイラル剤を含む重合性液晶性組成物におけるカイラル剤の濃度(質量%)を表す。
カイラル剤が、重合性官能基を有するイソソルビド誘導体又は重合性官能基及び1−フェニルエチル基を有する化合物である場合には、カイラル剤の螺旋誘起力が、比較的高い。よって、選択反射帯を所望の波長領域にするための重合性液晶性組成物におけるカイラル剤の含有率を低減することが可能となる。一般にカイラル剤の屈折率異方性は、重合性液晶性化合物の屈折率異方性よりも小さい。カイラル剤として重合性官能基を有するイソソルビド誘導体又は重合性官能基及び1−フェニルエチル基を有する化合物を使用することにより、カイラル剤の含有率を低減でき、重合性液晶性化合物の含有率を増加させることができるため、重合性液晶組成物全体としての屈折率異方性の低下を抑制できる。よって、重合性液晶性組成物を重合することによって得られる高分子液晶の屈折率異方性の低下を抑制することが可能となる。その結果、重合性液晶性組成物を重合することによって得られる高分子液晶の旋光能を増加させることも可能となる(旋光能は、屈折率異方性に依存する。)。
本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物において、好ましくは、前記カイラル剤は、重合性官能基を有するイソソルビド誘導体である。
前記カイラル剤が、重合性官能基を有するイソソルビド誘導体である場合には、重合性官能基を有するイソソルビド誘導体が、より高い螺旋誘起力を有するため、重合性液晶性組成物におけるカイラル剤の含有率をさらに低減することが可能となる。その結果、重合性液晶性組成物における重合性化合物の含有率をさらに増加させることができる。よって、重合性液晶性組成物及び高分子液晶の屈折率異方性の低下をさらに抑制することが可能となり、高分子液晶の旋光能をさらに増加させることも可能となる。
本発明の第二の実施形態は、少なくとも、本発明の第一の実施形態の重合性液晶組成物を重合させることによって得られる高分子液晶である。
本発明の第二の実施形態による高分子液晶は、本発明の第一の実施形態の重合性液晶性組成物を、紫外光などの光の照射又は加熱の手段を用いて重合させることによって、得られる。しかしながら、本発明の第一の実施形態である重合性液晶性組成物を、より均一に重合させるためには、重合性液晶性組成物に光を照射することが、好ましい。ただし、重合性液晶性化合物に光を照射することによって、重合性液晶性化合物を重合させた後、得られた高分子液晶をさらに熱処理してもよい。得られた高分子液晶をさらに熱処理することによって、光照射の際に未反応であった微量の重合性化合物および重合性官能基を有するカイラル剤の重合を完了させることが可能となる。なお、重合性液晶性化合物を加熱によって重合させる場合には、得られる高分子液晶の屈折率異方性を高くするために、なるべく低温で重合性液晶性化合物を重合させることが好ましい。
また、本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物を重合させる際に、重合性液晶性組成物を、配向膜に注入して、得られる高分子液晶の配向を制御してもよい。
本発明の第二の実施形態による高分子液晶は、本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物を重合させることによって得られるので、上述したように、得られる高分子コレステリック液晶の螺旋構造の均質性もある程度維持される。
本発明の第二の実施形態によれば、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を提供することができる。すなわち、本発明の第二の実施形態による高分子液晶の透過率を示す分光曲線においては、高分子液晶の選択反射帯における透過率と選択反射帯を除く波長域における透過率が、比較的明確に異なる。
図1は、コレステリック液晶についての透過率を示す分光曲線における選択反射帯を説明する図である。図1における横軸は、光の波長(nm)を示し、縦軸は、コレステリック液晶を通過する左回り円偏光及び右回り円偏光を含む光の透過率(%)を示す。図1に示すように、コレステリック液晶は、コレステリック液晶を通過する左回り円偏光及び右回り円偏光を含む光について、高い透過率を有する波長域(波長<λ及び波長>λ)及び低い透過率を示す波長域(λ≦波長≦λ)を有する。透過率を示す分光曲線において、高い透過率を有する波長域は、左回り円偏光及び右回り円偏光の両方を透過する波長域である。低い透過率を有する波長域は、左回り円偏光及び右回り円偏光の一方を透過すると共に他方を反射する波長域であり、選択反射帯と呼ばれる。
なお、コレステリック液晶の選択反射帯における波長の光については、コレステリック液晶のらせん構造の向きと同じ向きに回転する電磁場の振動面を有する円偏光が、コレステリック液晶によって反射され、コレステリック液晶のらせん構造の向きと反対向きに回転する電磁場の振動面を有する円偏光は、コレステリック液晶を透過する。
そして、選択反射帯の近傍における波長の光については、屈折率異方性が大きく、左回り円偏光の屈折率と右回り円偏光の屈折率との差が大きくなる。より詳しくは、コレステリック液晶の選択反射帯の近傍における波長の光については、コレステリック液晶のらせん構造の向きと反対向きに回転する電磁場の振動面を有する円偏光の屈折率に対する、コレステリック液晶のらせん構造の向きと同じ向きに回転する電磁場の振動面を有する円偏光の屈折率の差が、コレステリック液晶によって大きくなる。一方、選択反射帯から離れた波長の光については、屈折率異方性が小さく、左回り円偏光の屈折率と右回り円偏光の屈折率との差は、小さい。すなわち、選択反射帯から離れた波長の光については、左回り円偏光と右回り円偏光との間の屈折率の差は、小さい。
また、本発明の第二の実施形態による高分子液晶は、選択反射帯を除く波長域において高い透過率を示す。
なお、本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物についての透過率を示す分光曲線のプロファイルと本発明の第二の実施形態による高分子液晶についての透過率を示す分光曲線のプロファイルとの間における選択反射帯の幅の変動及び偏移は、小さい。すなわち、重合性液晶組成物の重合の前後における選択反射帯の幅の変動及び偏移は小さい。このため、本発明の第一の実施形態による重合性液晶性組成物の組成を調整することによって、本発明の第二の実施形態による高分子液晶の透過率を示す分光曲線を、制御することが比較的容易である。
本発明の第二の実施形態による高分子液晶は、光学素子用の材料として用いられ得る。すなわち、本発明の第二の実施形態による高分子液晶を含む光学素子を提供することができる。ここで、光学素子は、光を制御する素子を意味する。光学素子は、光の偏光を制御することができる偏光素子、光を回折させる回折素子、及びそれらの組み合わせなどを含む。
本発明の第三の実施形態は、光を回折させる回折素子であって、本発明の第二の実施形態による高分子液晶を含む第一の材料からなる第一の部材及び該第一の材料と屈折率特性が異なる第二の材料からなる第二の部材を含み、該第一の部材及び該第二の部材は、交互に配置されている。
ここで、第一の材料からなる第一の部材及び第一の材料と屈折率特性が異なる第二の材料からなる第二の部材が、交互に配置されているので、交互に配置される第一の部材及び第二の部材を透過する光は、互いに干渉して回折される。また、第一の部材を構成する第一の材料は、第二の部材を構成する第二の材料と異なるため、第一の部材を透過する光と第二の部材を透過する光との間には位相差が与えられる。
第一の部材及び第二の部材は、好ましくは、実質的に一定のピッチで交互に配置される。第一の部材及び第二の部材が、実質的に一定のピッチで交互に配置される場合には、第一の部材を通じて回折される光と第二の部材を通じて回折される光との干渉が良好であり、回折素子の回折効率を向上させることができる。ここで、実質的に一定のピッチとは、所定の回折効率を得ることができる程度にピッチが一定であることを意味する。
また、第一の部材及び第二の部材は、好ましくは、互いに接する。第一の部材及び第二の部材が、互いに接する場合には、第一の部材及び第二の部材以外の部分に入射する光を低減又は無くし、回折格子に入射する光を有効に利用することができる。
本発明の第三の実施形態によれば、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を含む回折素子を提供することができる。
すなわち、本発明の第三の実施形態による回折素子においては、第一の部材を構成する第一の材料についての透過率を示す分光曲線は、比較的明瞭な選択反射帯を有し得る。この場合には、左回り円偏光の屈折率と右回り円偏光の屈折率との差を与える、選択反射帯の近傍における波長の光を、より容易に選択することができる。その結果、回折素子の第一の部材を透過して、回折素子によって回折される光の波長を選択することが、より容易になる。さらに、第一の部材を構成する第一の材料が、選択反射帯を除く波長域において比較的高い透過率を示す。この場合には、第一の部材を透過する、選択反射帯を除く波長域における波長の光の減衰を抑制することが可能となる。その結果、回折素子を透過する光の透過率の減少を抑制することが可能となる。
なお、第一の部材を構成する第一の材料の屈折率異方性が、比較的大きい場合には、第一の部材に含まれる第一の材料は、第一の材料を透過する左回り円偏光及び右回り円偏光の位相差を、比較的容易に与えることができる。より詳しくは、第一の材料を透過する左回り円偏光及び右回り円偏光の位相差は、第一の材料の屈折率異方性(左回り円偏光の屈折率と右回り円偏光の屈折率との差)と光が透過する方向に沿った第一の材料の厚さの積に比例し、光の波長に反比例する。よって、第一の部材に含まれる第一の材料が、比較的大きい屈折率異方性を有するときには、所定の位相差を与えるための、光が透過する方向に沿った第一の材料の厚さを低減することが可能となる。その結果、回折素子の厚さも低減することが可能となる。
本発明の第三の実施形態による回折素子において、好ましくは、第一の円偏光に対する前記第一の材料の屈折率は、該第一の円偏光に対する前記第二の材料の屈折率と実質的に等しく、該第一の円偏光と逆向きに回転する第二の円偏光に対する前記第一の材料の屈折率は、該第二の円偏光に対する前記第二の材料の屈折率と異なる。
ここで、第一の円偏光及び第二の円偏光の一方は、左回り円偏光であり、他方は、右回り円偏光である。また、第一の円偏光に対する第一の材料の屈折率が、第一の円偏光に対する第二の材料の屈折率と実質的に等しいことは、第一の材料を透過する第一の円偏光及び第二の材料を透過する第二の円偏光の干渉が、問題にならない程度であることを意味する。
この場合には、第一の円偏光に対する前記第一の材料の屈折率が、該第一の円偏光に対する前記第二の材料の屈折率と実質的に等しいので、第一の材料及び第二の材料を透過する第一の円偏光の干渉が抑制されて、第一の円偏光は、第一の材料及び第二の材料の両方を透過することができる。また、第二の円偏光に対する第一の材料の屈折率が、第二の円偏光に対する第二の材料の屈折率と異なるので、第二の円偏光が、第一の材料及び第二の材料を透過するとき、第一の材料を透過する第二の円偏光が、互いに干渉して回折される。その結果、回折素子を透過した第二の円偏光の強度は、特定の方向で大きくなる。
また、第二の材料は、第一の円偏光及び第二の円偏光に対する屈折率が互いに等しい等方性材料であってもよい。この場合には、第二の材料を比較的容易に選択することができる。
本発明の第三の実施形態による回折素子は、公知の製造技術によって、製造することができる。
さらに、本発明の第三の実施形態による回折素子は、第一の部材及び第二の部材のみならず、他の部材を含んでもよい。例えば、本発明の第三の実施形態による回折素子は、基板及び/又は四分の一波長板及び二分の一波長板のような波長板を含んでもよい。
図2は、本発明による回折素子の例を説明する図である。図2に示す回折素子20は、入射光を透過する透明な基板21、本発明の第二の実施形態による高分子液晶を含む第一の材料からなる第一の部材22、及び第一の材料と屈折率特性が異なる第二の材料からなる第二の部材23を含む。第一の部材22及び第二の部材23は、基板21上において交互に配置されている。
ここで、本発明の第二の実施形態による高分子液晶が、右回りのらせん構造を有する高分子コレステリック液晶であり、回折素子20に(実線で示す)右回り円偏光R及び(破線で示す)左回り円偏光Lが入射するとする。なお、右回り円偏光R及び左回り円偏光Lの波長は、右回り円偏光Rの選択反射帯の近傍における波長であるとする。また、左回り円偏光Lに対する第一の材料の屈折率と第二の材料の屈折率とは実質的に等しく、右回り円偏光Rに対する第一の材料の屈折率は、右回り円偏光Rに対する第二の材料の屈折率と異なる。
この場合、第一の部材22を透過する左回り円偏光Lと第二の部材23を透過する左回り円偏光Lとの間には、位相差は与えられず、左回り円偏光Lは、実質的に干渉を起こすことなく、回折素子20を透過する。一方、第一の部材22を透過する右回り円偏光Rは、第一の部材に含まれる右回りのらせん構造を有する高分子コレステリック液晶によって、第二の部材23を透過する右回り円偏光Rに対して、位相差を与えられる。その結果、第一の部材22及び第二の部材23を透過した右回り円偏光Rは、それぞれ、互いに干渉して回折され、所定の方向に強い強度でスプリットされる。
好ましくは、第二の部材23を透過する右回り円偏光Rの位相に対する第一の部材22を透過する右回り円偏光Rの位相の差は、πである。この場合には、回折素子20を透過した右回り円偏光の±1次の回折光の強度が、最大になり、回折素子20の回折効率が高くなる。なお、第二の部材23を透過する右回り円偏光Rの位相に対する第一の部材22を透過する右回り円偏光Rの位相の差をπにするためには、第一の部材を構成する第一の材料の旋光角が、90°になるように、第一の部材の旋光能に応じて第一の部材の厚さを設計すればよい。
また、回折効率を高くするためには、高分子コレステリック液晶の透過率を示す分光曲線における選択反射帯の矩形形状が明瞭であることが好ましい。矩形形状が不明瞭であると旋光角が90°より小さくなり、第二の部材23を透過する右回り円偏光Rの位相に対する第一の部材22を透過する右回り円偏光Rの位相の差がπより小さくなり、回折効率が低下してしまう。
また、回折効率の波長依存性を低減させるためには、すなわち光源から出射するレーザー光の波長が変動した場合においても回折効率を一定に保つためには、選択反射波長帯の矩形形状(幅や中心波長)の変動及び偏移が小さいことが好ましい。矩形形状(幅や中心波長)が変動すると旋光角が変動してしまう。具体的には、重合性液晶組成物の選択反射帯の矩形形状と、重合によって得られる高分子コレステリック液晶の矩形形状が異なると、高分子コレステリック液晶の旋光角が設計段階において期待された旋光角と異なることになり、回折素子の回折効率も設計段階において期待された回折効率と異なってしまう。本発明の第三の実施形態である回折素子は、選択反射帯の矩形形状が明瞭であり、矩形形状の変動が小さい本発明の第二の実施形態による高分子液晶を用いているので、回折効率の低下や、回折効率の波長依存性を抑制できる。
本発明の第四の実施形態は、光記録媒体に情報を記録する及び/又光記録媒体に記録された情報を再生する光情報記録再生装置であって、本発明の第三の実施形態による回折素子を含む。
本発明の第四の実施形態による光情報記録再生装置においては、本発明の第三の実施形態による回折素子は、光記録媒体から反射された光を回折する。また、本発明の第四の実施形態による光情報記録再生装置は、本発明の第三の実施形態による回折素子に加えて、回折格子に入射する光を発生させる光源、光源から射出された光を光記録媒体に集光する対物レンズ、及び光記録媒体から反射された光を検出する光検出器などを含む。
本発明の第四の実施形態によれば、選択反射帯における透過率を示す分光曲線の矩形の形状がより明瞭である高分子液晶を含む回折素子を含む光情報記録再生装置を提供することができる。
図3は、本発明による光記録再生装置の例を説明する図である。図3に示す(点線の枠で示した)光記録再生装置30は、光源としての二波長用半導体レーザー31、コリメータレンズ32、偏光ビームスプリッター33、本発明の第三の実施形態による回折素子34、集光レンズ35、受光レンズ36、並びに、光検出器としてのフォトダイオード37及び38を含む。二波長用半導体レーザー31は、二つの波長λ(実線)及びλ(破線)の光を発生させる発光点を有し、二つの波長λ及びλのP偏光を発生させることができる。波長λ及びλの光は、例えば、DVD用の660nm±20nmの波長を備えた光及びCD用の790nm±20nmの波長を備えた光であってもよい。フォトダイオード37は、波長λの光を検出し、フォトダイオード38は、波長λの光を検出する。偏光ビームスプリッター33は、P偏光を透過し、S偏光を反射する。
また、図4は、図3に示す光記録再生装置に含まれる回折素子の作用を説明する図である。
図4に示すように、図3に示す回折素子34は、波長波長λ及びλの光を透過する透明な基板41、本発明による第三の実施形態による回折素子を構成する第一の部材42及び第二の部材43、並びに四分の一波長板44を含む。第一の部材42は、本発明の第二の実施形態による高分子液晶を含み、波長λは、高分子液晶の選択波長帯の近傍の波長(前記図1のλに近い長波長側)であり、波長λは、高分子液晶の選択波長域から離れた波長(前記λから遠い長波長側)であるとする。
まず、二波長用半導体レーザー31から発振された波長λを備えたP偏光は、コリメータレンズ32によってコリメートされ、偏光ビームスプリッター33を透過して、回折素子34に入射する。波長λを備えたP偏光は、回折素子34の四分の一波長板によって波長λを備えた左回り円偏光に変換される。波長λを備えた左回り円偏光は、回折素子34の第一の部材42及び第二の部材43によって干渉することなく、回折素子34を透過し、集光レンズ35によって、DVDのような光記録媒体39に照射される。波長λを備えた左回り円偏光は、光記録媒体39から反射されるが、このとき、波長λを備えた左回り円偏光は、波長λを備えた右回り円偏光に変換される。光記録媒体39から反射された波長λを備えた右回り円偏光は、集光レンズ35を通じて、回折素子34に入射する。ここで、回折素子34の第一の部材42に入射した波長λを備えた右回り円偏光は、回折素子34の第二の部材43に入射した波長λを備えた右回り円偏光に対して位相差πを与えられ、波長λを備えた右回り円偏光は、主として±1次の回折光として射出される。±1次の回折光として射出された波長λを備えた右回り円偏光は、回折素子34の四分の一波長板44によって波長λを備えたS偏光に変換され、偏光ビームスプリッター33に入射する。波長λを備えたS偏光(±1次の回折光)は、偏光ビームスプリッター33によって反射され、受光レンズ36によって、二つのフォトダイオード37に集束され、二つのフォトダイオード37によって検出される。
次に、二波長用半導体レーザー31から発振された波長λを備えたP偏光は、コリメータレンズ32によってコリメートされ、偏光ビームスプリッター33を透過して、回折素子34に入射する。波長λを備えたP偏光は、回折素子34の四分の一波長板によって波長λを備えた左回り円偏光に変換される。波長λを備えた左回り円偏光は、回折素子34の第一の部材42及び第二の部材43によって干渉することなく、回折素子34を透過し、集光レンズ35によって、CDのような光記録媒体39に照射される。波長λを備えた左回り円偏光は、光記録媒体39から反射されるが、このとき、波長λを備えた左回り円偏光は、波長λを備えた右回り円偏光に変換される。光記録媒体39から反射された波長λを備えた右回り円偏光は、集光レンズ35を通じて、回折素子34に入射する。ここで、回折素子34の第一の部材42及び第二の部材43に入射した波長λを備えた右回り円偏光は、位相差を与えられずに射出される。波長λを備えた右回り円偏光は、回折素子34の四分の一波長板44によって波長λを備えたS偏光に変換され、偏光ビームスプリッター33に入射する。波長λを備えたS偏光は、偏光ビームスプリッター33によって反射され、受光レンズ36によって、フォトダイオード38に集束され、フォトダイオード38によって検出される。
[重合性液晶性組成物の調製]
以下に示す化合物
Figure 2007169362
を用いて、実施例としてのコレステリック液晶の組成物1及び2並びに比較例としてのコレステリック液晶の組成物3及び4を調製した。なお、化合物(1A−4)、化合物(2−1)、化合物(3−1)、および化合物(R)は、重合性化合物であり、化合物(B−1)、及び化合物(5−1)は、カイラル剤である。なお、化合物(1A−4)は、第一の重合性液晶性化合物に含まれ、化合物(2−1)は、第二の重合性化合物に含まれ、化合物(3−1)は、第三の重合性液晶性化合物に含まれる。化合物(R)は、第一、第二、及び第三の重合性液晶性化合物に含まれない重合性液晶性化合物である。また、化合物(B−1)は、重合性官能基を有するイソソルビド誘導体に含まれ、化合物(5−1)は、重合性官能基及び1−フェニルエチル基を有する化合物に含まれる。
表1は、コレステリック液晶の組成物1〜4の組成及び代表的な特性の測定値を示す。
Figure 2007169362
コレステリック液晶の組成物1〜4は以下の手順で行った。まず、重合性化合物を表1に示す所定の量(全重合性化合物に対する各々の重合性化合物のモル%)で混合し、ベース液晶を調製した。つぎに、重合性液晶性組成物に対して、所定の重量%濃度でカイラル剤を添加することによって、組成物1〜4を調製した。なお、表1には示してないが、全てのコレステリック液晶の組成物1〜4には、重合性液晶性組成物に対して0.5質量%の光重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア907)を添加した。
そして、コレステリック液晶の組成物1〜4の融点、結晶化点、HTP(ヘリカルツイスティングパワー)を、以下のように測定した。
[融点の測定]
コレステリック液晶の組成物1〜4を二枚のプレパラートにはさむことによってセルを形成し、セルを5℃/分の速度にて昇温した。セルの昇温中、顕微鏡でセルを観察し、コレステリック液晶の組成物1〜4の結晶の融解が観察され始めた温度をコレステリック液晶の組成物1〜4の融点とした。
[結晶化点の測定]
コレステリック液晶の組成物1〜4を、二つ穴のEHC社製のセル(セルギャップ:10μm)に、等方相の状態で、大気圧下で注入し、セルを5℃/分の速度にて冷却した。セルの冷却中、顕微鏡でセルを観察し、コレステリック液晶の組成物1〜4の結晶の析出が観察され始めた温度をコレステリック液晶の組成物1〜4の結晶化点とした。
[HTPの算出]
化合物(B1)及び化合物(5−1)の各々並びにシアノビフェニル系ネマチック液晶(Aldrich社製、商品番号:5CB)を、1:99の質量比で混合し、あらかじめtanθの値を測定したくさび型セルにそれらの混合物を等方相の状態で注入した。セルを室温まで冷却し、顕微鏡を用いて、Grandjean−Canoくさび法により、HTPを算出した。
<化合物(1A−4)の合成>
予め化合物(1A−4)を以下の工程1〜工程6の手順で合成した。
Figure 2007169362
(工程A−1)
45.2gの2−ブロモ−5−クロロトルエン(41)及び5.8gのマグネシウムを含むTHF中の溶液を2時間撹拌して、Grignard試薬を得た。得られたGrignard試薬を、1.7gのテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム及び52.6gの4−ブロモ−4’−メトキシビフェニル(42)を含むTHF溶液に静かに滴下して、還流下で一晩反応させた。反応液に水を加え、反応液をジクロロメタンで抽出し、水で洗浄した後、反応液からジクロロメタンを留去した。残留物を、ジクロロメタンを用いるシリカゲルクロマトグラフィにかけることにより、50.0gの化合物(43)を得た。
(工程A−2)
THF中で19.6gのエチルブロマイド及び9.5gのマグネシウムを2時間反応させて、Grignard試薬を得た。得られたGrignard試薬に、化合物(43)を含むTHF溶液を加え、得られた溶液を一晩撹拌した後、その溶液に炭酸ガスを3時間吹き込んだ。反応液に水を加え、生じた白色沈殿をろ過することにより、38.2gの化合物(44)を得た。
(工程A−3)
1,1,2,2−テトラクロロエタンに、41.3gの化合物(44)、32mlの塩化チオニル、及び数滴のDMFを混合した。得られた混合物を3時間加熱した後、溶媒及び残留している塩化チオニルを留去した。残った固体を1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解させた。得られた溶液を150mlの濃アンモニア水溶液に滴下し、生じた白色沈殿をろ過することにより、化合物(45)を得た。
(工程A−4)
クロロベンゼン中で、15.9gの化合物(45)、14gのp−トルエンスルホニルクロライド、及び11.4gのピリジンを混合し、得られた混合物を一晩反応させた。反応液に水を加えた後に、反応液をジクロロメタンで抽出し、水で洗浄した。その後、反応液から溶媒を留去した。ジクロロメタンを用いたシリカゲルクロマトグラフィを行うことによって、10.2gの化合物(46)を得た。
(工程A−5)
ジクロロメタンに10.2gの化合物(46)を溶解させた後、得られた溶液に−75℃で4.1mlの三臭化ホウ素を滴下して、その溶液を一晩反応させた。氷浴において、反応液に静かに水を加えた後、反応液にジクロロメタンを加え、水で洗浄した。その後、反応液からジクロロメタンを留去した。残留物を、トルエンを用いて再結晶させることにより、7.3gの化合物(47)を得た。
(工程A−6)
THFに7.3gの化合物(47)、8.0gのトリフェニルホスフィン、及び4.4gのアクリル酸4−ヒドロキシブチル(48a)を溶解させた。得られた溶液に、窒素を導入しながら、氷浴において、14.5gのジエチルアゾジカルボキシラート(40%トルエン溶液)をゆっくりと滴下し、その溶液を一晩反応させた。反応後、反応液をジクロロメタンで抽出し水で3回洗浄した後、ジクロロメタンを留去した。残留物をジクロロメタンを用いたシリカゲルクロマトグラフィにかけることにより、6.8gの化合物(1A−4)を得た。
化合物(1A−4)のHNMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)は、δ(ppm):1.91(4H,m)、2.32(3H,s)、4.06(2H,t)、4.26(2H,t)、5.84(1H,m)、6.13(1H,m)、6.41(1H,m)、6.96−7.00(2H,m)、7.33−7.42(3H,m)、7.53−7.64(6H,m)であった。
<化合物(B1)の合成>
また、予め化合物(B1)を以下の(1)〜(3)の手順で合成した。
(1)4−(4−アクリロイルオキシ)ブトキシ安息香酸の6−ヒドロキシヘキサヒドロフロ[3,2−b]フラン−3−イルエステル(化合物b1)の製造
窒素雰囲気下にて300mlの三つ口フラスコに3.8g(0.026mol)のイソソルビド、8.2g(0.031mol)の4−(4−アクリロイルオキシ)ブトキシ安息香酸、10.7g(0.052mol)のジシクロヘキシルカルボジイミド、0.1gの4−ジメチルアミノピリジン、及び100mlのジクロロメタンを導入し、それらの混合物を室温で一晩撹拌した。固形物をろ別し、ろ液を水で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過により除去し、ロータリーエバポレータを用いてジクロロメタンを留去した。得られた生成物を、シリカゲルカラムを用いて、ヘキサン/酢酸エチル=5:5で分離した後、エタノールによる再結晶により、化合物(b1)を得た。化合物(b1)の収量は、4.2gであり、収率は、41.1%であった。
(2)4−n−ヘプチルベンゾイルクロリドの製造
窒素雰囲気下にて200mlの三つ口フラスコに3.30g(0.015mol)の4−n−ヘプチル安息香酸、1.79g(0.0165mol)の塩化チオニル、及び50mlのジクロロメタンを混合した。混合物に、撹拌しながら、ピリジンを添加し、その混合物を、透明な溶液が得られるまで、還流した後、さらに2時間、撹拌及び還流を行った。反応混合物を、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下にて乾燥させた。粗生成物を、さらに精製することなく、次のステップに用いた。
(3)化合物(B1)の製造
200mlの三つ口フラスコに、3.92g(0.010mol)の化合物(b1)、1.11g(0.011mol)のトリエチルアミン、及び50mlのジクロロメタンを導入し、それらの混合物を室温にて攪拌した。50mlのジクロロメタンに、2.62g(0.011mol)の4−n−ヘプチルベンゾイルクロリドを溶解させ、その溶液を、フラスコにゆっくりと滴下し、窒素雰囲気下で24時間撹拌を行った。次いで、反応混合物を水に注ぎ、50mlのジクロロメタンで抽出した。有機抽出物を、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ジクロロメタンを留去した。得られた生成物を、シリカゲルカラムを用いて、ヘキサン/酢酸エチル=6:4で分離した後、エタノールによる再結晶を行い、真空乾燥器にて24時間、40℃で乾燥して、化合物(B1)を得た。化合物(B1)の収量は、4.4gであり、その収率は、74.2%であり、化合物(B1)についてのNMRの分析結果は、次の通りであった。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ=0.86−0.89(t,3H,CH)、1.27−1.90(m,14H,CH)、2.64−2.68(t,2H,CHPh)、4.03−5.46(m,12H,CHO)、5.81−6.43(m,3H,CH=CH)、6.88−6.90(d,2H,芳香族H)、7.25−7.27(d,2H,芳香族H)、7.99−8.01(m,4H,芳香族H)
[高分子コレステリック液晶セルの製造]
コレステリック液晶の組成物1〜4の各々を、100℃まで加温した等方相の状態で、配向膜が付いたセルギャップ6μmのEHC社製のサンドイッチ型評価用ガラスセルに注入した。次に、セルを35℃まで冷却して、波長365nmの紫外線を、35℃において50mW/cmの照度で各組成物に60秒間照射して、各組成物について光重合を行った。その後、135℃に保温されたホットプレート上にセルを置き、1時間の熱処理を行い、高分子液晶が充填されたガラスセルを作成した。コレステリック液晶の組成物1〜4から、それぞれ、高分子コレステリック液晶1〜4が得られた。
[高分子コレステリック液晶の透過率の測定]
得られた高分子コレステリック液晶1〜4の各々が充填されたガラスセル及び紫外可視分光光度計を用いて、各波長における高分子コレステリック液晶の透過率を室温で測定し、高分子コレステリック液晶1〜4の透過率を示す分光曲線を得た。
図5は、高分子コレステリック液晶1及び3の透過率を示す分光曲線を示す図である。また、図6は、高分子コレステリック液晶2及び4の透過率を示す分光曲線を示す図である。図5及び図6において、横軸は、高分子コレステリック液晶に照射した光の波長(nm)を表し、縦軸は、高分子コレステリック液晶を透過した光の透過率(%)を表す。
図5及び図6に示す高分子コレステリック液晶の透過率を示す分光曲線は、コレステリック液晶に特有の円偏光に対する選択反射帯を有する。図5及び6に示すように、高分子コレステリック液晶1及び2の選択反射帯における高分子コレステリック液晶1及び2の透過率を示す分光曲線の矩形は、明瞭である。一方、高分子コレステリック液晶3及び4の選択反射帯における高分子コレステリック液晶3及び4の透過率を示す分光曲線の矩形は、明瞭ではなく、崩れてしまっている。また、高分子コレステリック液晶1及び2の選択反射帯を除く可視光の波長域における高分子コレステリック液晶1及び2の透過率は、高い。一方、高分子コレステリック液晶3及び4の選択反射帯を除く可視光の波長域における高分子コレステリック液晶3及び4の透過率は、可視光の波長域における短波長の領域で著しく低下している。図5及び図6に示す結果は、高分子コレステリック液晶3及び4の螺旋構造が、光重合及び熱処理を通じて、乱れてしまうのに対して、高分子コレステリック液晶1及び2の螺旋構造が、光重合及び熱処理を通じても維持されることを暗示している。
また、高分子コレステリック液晶1及び2における選択反射帯の長波長側エッジはおよそ600nm程度になっており、高分子コレステリック液晶3及び4では正確に制御できていない状態である。高分子コレステリック液晶を回折素子のような光学部品に使用する材料として用いる場合、660nmのように所定の波長を使用するので選択反射帯のエッジ波長を正確に制御する必要がある。このため、高分子コレステリック液晶1及び2のように、光重合や熱処理で反射帯域がほとんど変化しない方がより好ましいといえる。
更に、組成物1及び3とで、選択反射帯域(選択反射帯の幅)を重合の前後で比較した結果を下表に示す。
Figure 2007169362
この結果から、組成物1の方が重合前後における選択反射帯域の変化が小さく、組成物の時の矩形形状があまり乱されずに維持できているといえる。
[高分子コレステリック液晶の温度特性の評価]
得られた高分子コレステリック液晶1〜4の各々が充填されたガラスセル及び紫外可視分光光度計を用いて、各波長における得られた高分子コレステリック液晶の各々の透過率を30℃及び90℃で測定し、30℃及び90℃における高分子コレステリック液晶1〜4の透過率を示す分光曲線をそれぞれ得た。次に、高分子コレステリック液晶1〜4の各々について、90℃における高分子コレステリック液晶の選択反射帯の中心波長及び30℃における高分子コレステリック液晶の選択反射帯の中心波長の測定値から、1℃の温度変化に対する高分子コレステリック液晶の選択反射帯の中心波長におけるシフト量(nm/℃)を算出した。高分子コレステリック液晶1〜4の各々について得られた、1℃の温度変化に対する高分子コレステリック液晶の選択反射帯の中心波長におけるシフト量(以下、単に「シフト量」と記す。)を表3に示す。
Figure 2007169362
表3に示すように、高分子コレステリック液晶1のシフト量及び高分子コレステリック液晶2のシフト量は、高分子コレステリック液晶3のシフト量及び高分子コレスリック液晶4のシフト量よりも小さい。高分子コレステリック液晶を回折素子の材料として用いるとき、一般的には、温度変化に対する高分子コレステリック液晶の選択反射帯の中心波長におけるシフト量は、小さいことが好ましい。温度変化に対する高分子コレステリック液晶の選択反射帯の中心波長におけるシフト量が、小さい場合には、温度の変化に対する高分子コレステリック液晶を用いる回折素子の光学特性の変動も小さい。よって、回折素子の材料としては、高分子コレステリック液晶1及び2は、高分子コレステリック液晶3及び4よりも好ましいことが確認された。
[高分子コレステリック液晶の旋光能の評価]
コレステリック液晶の組成物1〜4が注入されたガラスセル、高分子コレステリック液晶1〜4の各々が充填されたガラスセル、及び日本分光製分光エリプソメータ(型式M−220)を用いて、光重合前におけるコレステリック液晶の組成物1〜4の旋光能、光重合後における高分子コレステリック液晶1〜4の旋光能、及び熱処理後における高分子コレステリック液晶1〜4の旋光能を測定した。ここで、旋光能は、光重合前におけるコレステリック液晶の組成物、光重合後及び熱処理後における高分子コレステリック液晶の単位厚さ(1μm)当たりの光重合前若しくは光重合後におけるコレステリック液晶の組成物又は熱処理後における高分子コレステリック液晶の旋光角(°)を意味する。
図7は、光重合前のコレステリック液晶の組成物1及び3の、光重合後における高分子コレステリック液晶1及び3の、熱処理後における高分子コレステリック液晶1及び3の、旋光能の測定結果を示す図である。また、図8は、光重合前のコレステリック液晶の組成物2及び4の、及び光重合後における高分子コレステリック液晶2及び4の、熱処理後における高分子コレステリック液晶2及び4の、旋光能の測定結果を示す図である。図7及び図8において、横軸は、光重合前におけるコレステリック液晶の組成物、光重合後における高分子コレステリック液晶、熱処理後における高分子コレステリック液晶、を示し、縦軸は、重合前におけるコレステリック液晶の組成物の、光重合後における高分子コレステリック液晶の、熱処理後における高分子コレステリック液晶の、旋光能(°/μm)を表す。なお、図7および図8では、波長660nmの光に対する旋光能の測定結果を示している。
図7に示すように、光重合前におけるコレステリック液晶の組成物1の、光重合後における高分子液晶1の、熱処理後における高分子コレステリック液晶1の、旋光能は、それぞれ、重合前コレステリック液晶の組成物3の、光重合後における高分子コレステリック液晶3の、及び熱処理後における高分子コレステリック液晶3の、旋光能よりも大きい。また、図8に示すように、重合前におけるコレステリック液晶の組成物2の、光重合後における高分子コレステリック液晶2の、及び熱処理後における高分子コレステリック液晶2の旋光能は、それぞれ、重合前におけるコレステリック液晶の組成物4の、光重合後における高分子コレステリック液晶4の、及び熱処理後における高分子コレステリック液晶4の旋光能よりも大きい。
ここで、参考のために、コレステリック液晶の組成物1及び2に用いたベース液晶(以下、ベース液晶1と呼ぶ)及びコレステリック液晶の組成物3及び4に用いたベース液晶(以下、ベース液晶2と呼ぶ)の屈折率異方性を、みずほ精密製楔セルを用いて測定した。より詳しくは、光重合する前におけるベース液晶1及び2の屈折率異方性、光重合した後におけるベース液晶1及び2の屈折率異方性、並びに光重合し且つ熱処理した後におけるベース液晶1及び2の屈折率異方性を測定した。光重合前、光重合後、及び熱処理後におけるベース液晶1及び2の屈折率異方性の測定値を表4に示す。
Figure 2007169362
表4に示すように、コレステリック液晶の組成物1及び2に用いたベース液晶1の屈折率異方性は、光重合前、光重合後、熱処理後の順に、徐々に減少したのに対して、コレステリック液晶の組成物3及び4に用いたベース液晶2の屈折率異方性は、光重合前、光重合後、熱処理後の順に、徐々に増加した。また、最終的に得られる熱処理後の重合体の屈折率異方性については、ベース液晶2の重合体の屈折率異方性が、ベース液晶1の重合体の屈折率異方性よりも0.01程度だけ大きかった。
一般に、コレステリック液晶の旋光能は、コレステリック液晶の螺旋構造のピッチ及びコレステリック液晶の屈折率異方性に比例する。よって、表4に示すように、コレステリック液晶の組成物3及び4に用いたベース液晶2の(熱処理後における)重合体の屈折率異方性が、コレステリック液晶の組成物1及び2に用いたベース液晶1の(熱処理後における)重合体の屈折率異方性よりも大きいため、ベース液晶2を含むコレステリック液晶の組成物3及び4から得られる高分子コレステリック液晶3及び4の旋光能が、ベース液晶1を含むコレステリック液晶の組成物1及び2から得られる高分子コレステリック液晶1及び2の旋光能よりも大きくなると予想される。
しかしながら、実際には、図7及び8に示すように、高分子コレステリック液晶1及び2の旋光能が、高分子コレステリック液晶3及び4の旋光能よりも大きかった。この事実は、ベース液晶1を含むコレステリック液晶の組成物から得られる高分子コレステリック液晶の旋光能が、ベース液晶2を含むコレステリック液晶の組成物から得られる高分子コレステリック液晶の旋光能よりも大きく、このような旋光能の傾向は、コレステリック液晶の組成物に含まれるカイラル剤の種類にはあまり依存しないことを意味する。そして、ベース液晶1を含むコレステリック液晶の組成物から得られる高分子コレステリック液晶の螺旋構造は、コレステリック液晶の組成物に含まれるカイラル剤の種類の差異が存在するにも関わらず、ベース液晶2を含むコレステリック液晶の組成物から得られる高分子コレステリック液晶の螺旋構造よりも堅固に維持され、その結果として、ベース液晶1を含むコレステリック液晶の組成物から得られる高分子コレステリック液晶は、ベース液晶2を含むコレステリック液晶の組成物から得られる高分子コレステリック液晶よりも高い旋光能を有すると考えられる。
[高分子コレステリック液晶を用いた回折素子の製造及び透過率の測定]
組成物1を用いた回折素子の作成例を、図2を利用して示す。組成物1を用いて高分子コレステリック液晶1が充填されたガラスセルを作成したのち、片側の基板を取り外し、高分子コレステリック液晶1の表面に、厚さ60nmのSiO膜をスパッタ法によって形成した。つぎに、SiO膜の表面にフォトレジストをスピンコート法により塗布した。つぎにフォトマスクをSiO膜の側に配置し、紫外線によって露光し、その後ドライエッチングを行い、高分子コレステリック液晶1を含む格子状の凹凸を有する部材(高分子液晶1からなる部材が図2に示す第一の部材22に相当する)を作製した。なお、本実施例における凹凸部の格子ピッチは16μm、デュティー比は50、格子高さは20μmであった。
つぎに等方性モノマーを格子の凹部に充填した。さらに低反射コートを施した別のガラス基板(図示せず)を積層して、高分子液晶1からなる第一の部材22と等方性モノマーとを挟み込んだ。その後、紫外線照射および加熱により等方性モノマーを重合させて硬化させ、回折素子20を作製した。なお、この等方性モノマーが重合することによって得られる等方性ポリマー(図2において第二の部材23に相当する)の屈折率は、波長660nmの光に対して1.657であった。
このようにして作製した回折素子に四分の一波長板(図示せず)を積層し、波長660nmのレーザー光と波長790nmのレーザー光とを、四分の一波長板が積層された側から入射させた。このとき、波長660nmのレーザー光が選択反射帯に近い波長の光であり、波長790nmのレーザー光が選択反射帯から離れた波長の光である。
波長660nmのレーザー光については、右回り円偏光の0次光の透過率は3%であり、1次光の回折効率は35%であった。また、左回り円偏光の0次光の透過率は90%であった波長790nmのレーザー光については、右回り円偏光の0次光の透過率は93%であり、左回り円偏光の0次光の透過率は90%であった。なおレーザー光は直線偏光であり、直線偏光は右回り円偏光と左回り偏光との合成波である。
この結果より、選択反射帯に近い波長660nmの光について、右回り円偏光は高分子コレステリック液晶1に対する屈折率と等方性ポリマーに対する屈折率との差が生じて回折し、左回り円偏光は、高分子コレステリック液晶1の屈折率と等方性ポリマーとの屈折率との差が小さいため、ほぼ透過する。また、選択反射帯から離れた波長790nmの光について、左右の円偏光に対する高分子液晶1の屈折率と等方性ポリマーの屈折率との差がほぼ等しくなるため、両方とも透過することが分かった。
以上、本発明の実施の形態及び実施例を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、これら本発明の実施の形態及び実施例を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形することができる。
コレステリック液晶についての透過率を示す分光曲線における選択反射帯を説明する図である。 本発明による回折素子の例を説明する図である。 本発明による光記録再生装置の例を説明する図である。 図3に示す光記録再生装置に含まれる回折素子の作用を説明する図である。 高分子コレステリック液晶1及び3の透過率を示す分光曲線を示す図である。 高分子コレステリック液晶2及び4の透過率を示す分光曲線を示す図である。 光重合前のコレステリック液晶の液晶組成物1及び3、光重合後における高分子コレステリック液晶1及び3、並びに熱処理後における高分子コレステリック液晶1及び3の旋光能の測定結果を示す図である。 光重合前のコレステリック液晶の液晶組成物2及び4、光重合後における高分子コレステリック液晶2及び4、並びに熱処理後における高分子コレステリック液晶2及び4の旋光能の測定結果を示す図である。
符号の説明
20、34 回折素子
21、41 基板
22、42 第一の部材
23、43 第二の部材
30 光記録再生装置
31 二波長用半導体レーザー
32 コリメータレンズ
33 偏光ビームスプリッター
35 集光レンズ
36 受光レンズ
37、38 フォトダイオード
39 光記録媒体
44 四分の一波長板

Claims (18)

  1. 重合性官能基及びメソゲン基を有する重合性液晶性化合物並びに重合性官能基を有するカイラル剤を含む重合性液晶性組成物において、
    当該重合性液晶性組成物は、少なくとも一般式(1)
    Figure 2007169362
    で表される第一の重合性液晶性化合物を含み、
    は、水素原子又はメチル基であり、
    m1及びn1は、
    m1=n1=0又はm1=1且つn1=1以上8以下の自然数
    を満たし、
    p、q、r、s、t、及びuは、0又は1であり、且つp、q、r、s、t、及びuの少なくとも一つは、1であり、
    Xは、シアノ基、フッ素原子、又は塩素原子である
    ことを特徴とする重合性液晶性組成物。
  2. 前記第一の重合性液晶性化合物におけるm1及びn1は、m1=1且つn1=1以上8以下の自然数を満たす
    ことを特徴とする請求項1に記載の重合性液晶性組成物。
  3. 前記第一の重合性液晶性化合物におけるXは、シアノ基である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の重合性液晶性組成物。
  4. 前記第一の重合性液晶性化合物におけるp、q、r、s、t、及びuのいずれか一つが、1であり、他は、0である
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の重合性液晶性組成物。
  5. p及びuは、0であり、
    q、r、s、及びtのいずれか一つが、1であり、他は、0である
    ことを特徴とする請求項4に記載の重合性液晶性組成物。
  6. 前記重合性液晶性化合物の合計のモルに対する前記第一の重合性液晶性化合物のモルの比は、0.5以上0.95以下である
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の重合性液晶性組成物。
  7. 前記重合性液晶性化合物は、複数の重合性官能基及びメソゲン基を有する第二の重合性化合物をさらに含む
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の重合性液晶性組成物。
  8. 前記第二の重合性化合物は、一般式(2)
    Figure 2007169362
    で表される化合物であり、
    は、水素原子又はメチル基であり、
    m2及びn2は、
    m2=n2=0又はm2=1且つn2=1以上8以下の自然数
    を満たし、
    Yは、1,4−フェニレン基又は−C≡C−である
    ことを特徴とする請求項7に記載の重合性液晶性化合物。
  9. 重合性化合物の合計のモルに対する前記第二の重合性化合物のモルの比は、0.05以上0.5以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載の重合性液晶性組成物。
  10. 一般式(3)
    Figure 2007169362
    で表される第三の重合性液晶性化合物をさらに含み、
    は、水素原子又はメチル基であり、
    m3及びn3は、
    m3=n3=0又はm3=1且つn3=1以上8以下の自然数
    を満たし、
    Zは、−COO−又は−OCO−であり、
    Wは、シアノ基、フッ素原子、又は塩素原子である
    ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の重合性液晶性組成物。
  11. 重合性化合物の合計のモルに対する前記第三の重合性液晶性化合物のモルの比は、0.05以上0.3以下である
    ことを特徴とする請求項10に記載の重合性液晶性組成物。
  12. 前記重合性化合物の合計の含有率は、当該重合性液晶組成物に対して70質量%以上であり、
    前記カイラル剤の含有率は、当該重合性液晶組成物に対して3質量%以上30質量%以下である
    ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の重合性液晶性組成物。
  13. 前記カイラル剤は、重合性官能基を有するイソソルビド誘導体又は重合性官能基及び1−フェニルエチル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の重合性液晶性組成物。
  14. 前記カイラル剤は、重合性官能基を有するイソソルビド誘導体であることを特徴とする請求項13に記載の重合性液晶性組成物。
  15. 少なくとも、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物を重合させることによって得られることを特徴とする高分子液晶。
  16. 光を回折させる回折素子であって、
    請求項15に記載の高分子液晶を含む第一の材料からなる第一の部材及び該第一の材料と屈折率特性が異なる第二の材料からなる第二の部材を含み、
    該第一の部材及び該第二の部材は、交互に配置されていることを特徴とする回折素子。
  17. 第一の円偏光に対する前記第一の材料の屈折率は、該第一の円偏光に対する前記第二の材料の屈折率と実質的に等しく、
    該第一の円偏光と逆向きに回転する第二の円偏光に対する前記第一の材料の屈折率は、該第二の円偏光に対する前記第二の材料の屈折率と異なることを特徴とする請求項16に記載の回折素子。
  18. 光記録媒体に情報を記録する及び/又光記録媒体に記録された情報を再生する光情報記録再生装置であって、
    請求項16又は17に記載の回折素子を含むことを特徴とする光情報記録再生装置。
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