JP2007168517A - 車両用サスペンション構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】旋回走行時に旋回性と操縦安定性を適切に両立させた車両用サスペンション構造を提供すること。
【解決手段】車両用サスペンション構造1は、車輪Wを回転自在に支持するアクスル部材2を車体に連結する車両用サスペンション構造であって、車両側方から見て、仮想キングピン軸Xと地面Gとの交点Pが前記車輪の接地点QとニューマチックトレールTが最大となる場合の横力発生位置Rとの間に位置させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両用サスペンション構造に関する。
車両用サスペンション構造としては、トレーリングアーム式、ウィッシュボーン式、ストラット式、マルチリンク式など種々の方式のものがあり、そのうち、車両後輪に使用される車両用サスペンション構造としては、例えば特許文献1に記載されたものなどがある。
この従来の車両用サスペンション構造においては、仮想キングピン軸と地面との交点を車輪(タイヤ)の横力発生位置よりも常に車両後方に位置させることで、旋回走行時に旋回外側の後輪をトーイン、旋回内側の後輪をトーアウトとし、アンダーステア傾向とすることによって操縦安定性の向上が図られている。
なお、仮想キングピン軸とは、アクスル部材および車輪のいわゆるコンプライアンスステアによるトー角変化の回転中心軸であり、車両用サスペンション構造において、車体に対してアクスル部材を連結する連結要素の幾何学的配置および構成と、当該連結要素と車体及びアクスル部材との間に介在されるブッシュ等の弾性要素の剛性により決定される。
特開2005−225382号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来構造のように、旋回走行時の操縦安定性を高めることを狙いとして、旋回走行時に旋回外側の後輪をトーイン、旋回内側の後輪をトーアウトとして、アンダーステア傾向とすると、後輪のスリップ角が比較的小さい低速旋回時においては、旋回性が低下してしまうという可能性がある。
さらに、高速旋回時においても、後輪のスリップ角が比較的大きくなることに起因して、後輪の横力発生位置が車両前方に移動するため、仮想キングピン軸の地面との交点と、後輪の横力発生位置との車両前後方向距離が過度に大きくなり、旋回外側の後輪のトーインおよび旋回内側の後輪のトーアウトが大きくなり、これに伴い、アンダーステア傾向が大きくなり、これも旋回性が過度に低下するという可能性がある。
ところが、旋回走行時の操縦安定性はアンダーステア傾向とすることにより得られるため、旋回性とはトレードオフの関係にあり、上記問題を解決するための、低速旋回時に旋回性を重視し、高速旋回時に旋回性を保持しつつ操縦安定性を重視するという要請に対しては、両者のバランスが重要になる。
そこで本発明は、上記問題に鑑み、旋回走行時に旋回性と操縦安定性を適切に両立させた車両用サスペンション構造を提供することを主たる目的とする。
上記の問題を解決するため、本発明の一態様に係る車両用サスペンション構造は、
車輪を回転自在に支持するアクスル部材を車体に連結する車両用サスペンション構造であって、
仮想キングピン軸と地面との交点を車両側方から見て、前記車輪の接地点(接地中心)とニューマチックトレールが最大となる場合の横力発生位置との間に位置させる、ことを特徴とする。なお、仮想キングピン軸の位置決めは、例えば、アクスル部材と車体とを連結する連結要素および弾性要素の構成により調整される。
これらのことは、旋回性をよくするためには、仮想キングピン軸を上記横力発生位置と上記接地点に対してどのように位置決めすれば適切かを、車輪に作用する横力によるモーメントの方向を考慮することにより検討して導かれたものである。
ここで、仮想キングピン軸とはアクスル部材および車輪のいわゆるコンプライアンスステアによるトー角変化の回転中心軸であり、横力発生位置とは、旋回走行時に車輪に作用する横力の発生位置であり、ニューマチックトレールとは、車輪の接地点と横力発生位置との車両前後方向距離であり、ニューマチックトレールが最大となる場合は、例えば車輪のスリップ角が比較的小さい場合に生じ得る。
なお、上記仮想キングピン軸と地面との交点を、ニューマチックトレールが最大となる場合の横力発生位置との間の所定の範囲に位置させることが、スリップ角が大きくなる過程で、極端に小さいスリップ角あるいは極端に大きいスリップ角で、前記横力発生位置が前記交点よりも車両前方に移動してしまい、低速旋回域あるいは高速旋回域が過度に小さくなることを防止する上で、好ましい。
ここで、上記所定の範囲は、例えば、低速旋回時の旋回性の向上及び高速旋回時の操縦安定性の向上を所望のスリップ角範囲で実現するために、上記車輪のスリップ角が第一の所定値より小さいときには上記横力発生位置が上記交点よりも車両後方に位置し、車輪のスリップ角が第二の所定値より大きいときには上記横力発生位置が上記交点よりも車両前方に位置するように決定されてもよい。
あるいは、より簡易な手法として、上記所定の範囲は、単に上記車輪の接地点とニューマチックトレールが最大となる場合の横力発生位置との中点を含むように決定されてもよい。
本発明によれば、低速旋回時における旋回性能と高速旋回時における操縦安定性能を適切に両立させた車両用サスペンション構造を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1および図2は、本発明による車両用サスペンション構造の一実施例を示す模式図である。図1は当該サスペンション構造を上方から見た図を、図2は当該サスペンション構造を車両側方から見た図をそれぞれ示す。
本実施例の車両用サスペンション構造1は、車輪Wを回転自在に支持するアクスル部材2を、連結要素としての2本のアッパーアーム3、4と、2本のロアアーム5、6およびそれぞれのアームに対応する弾性要素としてのブッシュにより図示しない車体に連結して構成される。
一方のアッパーアーム3は、アクスル部材2の車両前後方向の略中央の上側にブッシュを介して連結されるとともに、車両側方内側に延び、その車両側方内側端は、ブッシュを介して図示しない車体に連結される。
他方のアッパーアーム4は、アクスル部材2の車両前側の上側にブッシュを介して連結されるとともに、車両側方内側及び車両前方に延びて、その車両側方内側端は、ブッシュを介して図示しない車体に連結される。
また、一方のロアアーム5は、アクスル部材2の車両後側の下側にブッシュを介して連結されるとともに、車両側方内側及び車両後方に延びて、その車両側方内側端は、ブッシュを介して図示しない車体に連結される。
さらに、他方のロアアーム6は、アクスル部材3の車両前側の下側にブッシュを介して連結されるとともに、車両側方内側および車両前方に延びて、その車両側方内側端は、ブッシュを介して図示しない車体に連結される。
加えて、アクスル部材2および車輪Wのトー角を能動的にコントロールするために、トーコントロールアーム7が設けられ、当該トーコントロールアーム7の車両側方外側端はアクスル部材2の前方に設けたヒンジ部2aにヒンジ連結され、当該コントロールアーム7の車両側方内側端は、図示しないトー角をコントロールする手段に連結される。
ロアアーム6のアクスル部材2よりには、バネ座6aが設けられ、当該バネ座6aには、ここでは図示しないコイルバネの下端が連結されて、当該コイルバネの上端は車体に連結される。
アクスル部材2の車両後側の下側には、ここでは図示しないショックアブソーバの連結部2bが構成され、ここに当該ショックアブソーバの下端が連結されて、当該ショックアブソーバの上端は車体に連結される。
本実施例においては、このように構成される車両用サスペンション構造において、図2に示すように、車両側方から見て、仮想キングピン軸Xと地面Gとの交点Pが、車輪Wの接地点とニューマチックトレールTが最大となる場合の横力発生位置Rとの間に位置するように、連結要素であるアッパーアーム3、4およびロアアーム5、6および弾性要素としてのそれぞれのブッシュを構成する。すなわち、アームについては幾何学的配置を、ブッシュについては剛性を調整するのである。
なお、ニューマチックトレールTとは、車輪Wの接地点Qと横力発生位置Rとの車両前後方向距離であり、ニューマチックトレールTが最大となる場合とは、車輪のスリップ角が十分小さい場合である。
このように仮想キングピン軸Xの位置及び向きを設定することにより、スリップ角が比較的小さい低速旋回時においては、図3(a)に示すように、横力発生位置Rは交点Pの車両後方に位置することになり、横力発生位置Rに作用する横力により、後輪には上方から見て仮想キングピン軸Xまわりに反時計回りのモーメントが作用し、それにより後輪は回転されて、旋回外側の後輪はトーアウト、旋回内側の後輪はトーインとなり、車両を操舵した場合に、前輪の操舵方向に対して後輪が逆方向に操舵されることになるため、旋回性が高まる。
これにより、低速旋回時において、旋回性が低下してしまうことを防止することができる。
さらに、高速旋回時においては、後輪のスリップ角が比較的大きくなることに起因して、図3(b)に示すように、後輪の横力発生位置Rが車両前方に移動して、仮想キングピン軸Xの地面Gとの交点Pよりも、横力発生位置Rが車両前方に移動すると、横力発生位置Rに作用する横力により、後輪には上方から見て仮想キングピン軸Xまわりに時計回りのモーメントが作用し、それにより後輪は回転され、旋回外側の後輪はトーインとなり、旋回内側の後輪はトーアウトとなり、前輪の操舵方向に対して後輪が順方向に操舵されることになるため、アンダーステア傾向となる。
これにより高速旋回時においては、アンダーステア傾向を実現して、操縦安定性を高めることができる。
なお、スリップ角が大きくなるにつれて、後輪の横力発生位置Rが車両前方に移動するのは、車輪Wの接地点と横力発生位置Rとの車両前後方向距離で示されるニューマチックトレールTが、スリップ角に対して図4に示すような、反比例の関係にあることに起因する。この反比例の関係は、車輪(タイヤ)の種類、空気圧等により個別に異なる。スリップ角が十分小さい場合のニューマチックトレールTは通常20〜30mm程度であり、スリップ角が車輪の横剛性の限界まで大きくなった場合は、ニューマチックトレールTはゼロとなり、横力発生位置Rは接地点Qに一致する。
このため、上述したように、低速旋回時において、旋回外側の車輪をトーアウト、旋回内側の車輪をトーインとし、高速走行時において、旋回外側の車輪をトーイン、旋回内側の車輪をトーアウトとするためには、本実施例においても、あるスリップ角において、横力発生位置Rが仮想キングピン軸Xと地面Gとの交点Pを越えて車両前方に移動させる。
スリップ角がどの値になったときに、横力発生位置Rを交点Pよりも車両前方に移動させるかは、例えば、低速旋回時と高速旋回時とをスリップ角のどの領域で設定するかにより、あるいは、車輪たるタイヤの種別等の条件により個別具体的に決定される。極端に小さいスリップ角で横力発生位置Rが交点Pよりも車両前方に移動してしまうと、旋回性が高められる低速旋回域が小さくなり、極端に大きいスリップ角で横力発生位置Rが交点Pよりも車両前方に移動してしまうと、操縦安定性を高める高速旋回域が小さくなる。
そこで本実施例では、仮想キングピン軸Xと地面Gとの交点PをニューマチックトレールTが最大となる場合の横力発生位置Rと車輪Wとの接地点Qの間の車両前後方向の所定の範囲に位置するように、連結要素であるアッパーアーム3、4とロアアーム5、6および弾性要素であるブッシュを構成する。
これによれば、横力発生位置Rを交点Pよりも車両前方に移動させるスリップ角を適切な値とすることができ、極端に小さいあるいは極端に大きいスリップ角で横力発生位置Rが交点Pよりも車両前方に移動して、旋回性が高められる低速旋回域および操縦安定性が高められる高速旋回域が過度に小さくなることを防止して、低速旋回時の旋回性の向上と、高速旋回時の操縦安定性の向上をバランスよく行うことができる。
また、上述した低速旋回域及び高速旋回域を所望の範囲とするために、所定の範囲が、低速旋回時等に、車輪のスリップ角が第一の所定値より小さいときには横力発生位置Rが交点Pよりも車両後方に位置し、高速旋回時等に、車輪のスリップ角が第二の所定値より大きいときには横力発生位置Rが交点Pよりも車両前方に位置するように決定される。
これによれば、所望のスリップ角を閾値として、高速旋回時にはアンダーステア傾向として操縦安定性を高め、低速旋回時には旋回性を高めることができる。第一及び第二の所定値は同じ値としてもかまわない。
あるいは、スリップ角を閾値として使用しないより簡易な手法として、この所定の範囲を、単にニューマチックトレールTが最大となる場合の横力発生位置Rと車輪Wの接地点Qの中点を含む所定長としてもよい。
これによれば、スリップ角が大きくなってニューマチックトレールTが小さくなり、横力発生位置Rが単に当該中点を通過して車両前方に移動した時点で、旋回外側の後輪をトーイン、旋回内側の後輪をトーアウトとして、高速旋回時の操縦安定性を高めることができ、より簡易な手法により、低速旋回域と高速旋回域とをバランスよく配分することができる。
加えて、従来技術に比べて、高速旋回時において、仮想キングピン軸Xの地面Gとの交点Pと、後輪の横力発生位置Rとの車両前後方向距離が過度に大きくなることを防止できるため、それに伴い、旋回外側の後輪のトーインおよび旋回内側の後輪のトーアウトが大きくなり、アンダーステア傾向が大きくなって、旋回性が過度に低下することを防止することができる。
なお、前述したように、仮想キングピン軸Xとは、アクスル部材2および車輪Wのいわゆるコンプライアンスステアによるトー角変化の回転中心軸であり、車両用サスペンション構造において、車体に対してアクスル部材2を連結する連結要素(ここではそれぞれ2個のアッパーアームとロアアーム)の幾何学的配置および構成と、当該連結要素と車体及びアクスル部材との間に介在されるブッシュ等の弾性要素の剛性により決定されるものである。
以下に、図1および図2に示したような、マルチリンク式のサスペンション構造における仮想キングピン軸Xの決定の仕方について述べる。
図5は、図1に示した本発明に係るマルチリンク式の車両用サスペンション構造のそれぞれのアームの延在方向を上方から見て示す模式図である。また、図6は、図2に示した本発明に係るマルチリンク式の車両用サスペンション構造のそれぞれのアームの延在方向を車両側方内側から見て示す模式図である。
このようにそれぞれ2本のアッパーアーム及びロアアームによりサスペンション構造を構成した場合は、仮想キングピン軸Xは、アッパーアーム3の延長線とアッパーアーム4の延長線の交点と、ロアアーム5とロアアーム6の延長線との交点を相互に結んだ直線となる。
このように連結要素としてのアッパーアーム3、4及びロアアーム5、6を構成することにより、車両側方内側から見て、仮想キングピン軸Xと地面Gとの交点Pを、車輪Wの接地点Qとスリップ角が十分小さい場合の横力発生位置Rとの間に位置させることができる。
以上本発明の一実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
例えば、本実施例においては本発明をマルチリンク式の車両用サスペンション構造において適用したが、例えば、2本のアッパーアームをいわゆるAアームに置換してもよいし、逆に、2本のロアアームをAアームとして構成してもよい。さらに、トレーリングアーム式、ウィッシュボーン式、ストラット式等の他の形式の車両用サスペンション構造において本発明を適用してもよい。
本発明は、仮想キングピン軸の位置決めに関するものであり、タイヤサイズや車両サイズとは無関係であるため、乗用車、トラック、バス等の様々な車両の主にリア側のサスペンション構造に適用可能なものである。
本発明による車両用サスペンション構造の一実施例を上方から見て示す模式図である。 本発明による車両用サスペンション構造の一実施例を車両側方内側から見て示す模式図である。 仮想キングピン軸と地面との交点と、車輪の接地点と、横力発生位置との位置関係を示す模式図である。 スリップ角とニューマチックトレールとの反比例の関係を示す模式図である。 図1に示した本発明に係るマルチリンク式の車両用サスペンション構造のそれぞれのアームの延在方向を示す模式図である。 図2に示した本発明に係るマルチリンク式の車両用サスペンション構造のそれぞれのアームの延在方向を示す模式図である。
符号の説明
1 車両用サスペンション構造
2 アクスル部材
3 アッパーアーム
4 アッパーアーム
5 ロアアーム
6 ロアアーム
7 トーコントロールリンク
X 仮想キングピン軸
P 仮想キングピン軸Xと地面との交点
Q 接地点
R 横力発生位置
T ニューマチックトレール

Claims (4)

  1. 車輪を回転自在に支持するアクスル部材を車体に連結する車両用サスペンション構造であって、
    仮想キングピン軸と地面との交点が車両側方から見て前記車輪の接地点とニューマチックトレールが最大となる場合の横力発生位置との間に位置するように構成された、ことを特徴とする車両用サスペンション構造。
  2. 前記仮想キングピン軸と地面との交点を、前記車輪の接地点とニューマチックトレールが最大となる場合の横力発生位置との間の所定の範囲内に位置ように構成された、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用サスペンション構造。
  3. 前記所定の範囲は、前記車輪のスリップ角が第一の所定値より小さいときには前記横力発生位置が前記交点よりも車両後方に位置し、前記車輪のスリップ角が第二の所定値より大きいときには前記横力発生位置が前記交点よりも車両前方に位置するように決定される、ことを特徴とする請求項2に記載のサスペンション構造。
  4. 前記所定の範囲は、前記車輪の接地点とニューマチックトレールが最大となる場合の横力発生位置との車両前後方向距離の中点を含むように決定される、ことを特徴とする請求項2に記載の車両用サスペンション構造。
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