JP2007166950A - かき揚げ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は3cm以上の厚みのあるかき揚げにおいても、また中具の水分が70%以上ある物を用いたかき揚げを急速冷凍し長期冷凍保存後に電子レンジ調理を行っても、中まで均一にサクサク感のあるかき揚げ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】熱凝固性のない起泡剤を用いて起泡バッター液を調製し、たまねぎ等の具材を適当な比率で混ぜあわせ、フライパンに揚げ油を高さ約2.5cmになるよう張り込んだ物の中に直径12cm高さ4.5cmの金属製の円筒を設置し、油温を130℃より高くして上記かき揚げ具材を円筒の中に一気に入れ、中火のまま円筒上面から130℃より高くの油をかけまわすことによって、厚さ約4cmで、中のたまねぎ等の具材との接触面ぎりぎりまで衣のサクサク感があるかき揚げを得る。さらにこのかき揚げに対し−30℃の急速冷凍を行い、−18℃での長期冷凍保存後、電子レンジ解凍するとサクサク感を再現できる。
【選択図】図3

Description

本発明は衣材及び衣材を用いてできる油ちょう済み食品とその製造方法に関する。より詳しくは、油ちょう済み食品のうちでも特にかき揚げにおいて、厚さ3.0cm以上直径12cm程度で、具材にたまねぎやにんじん等の水分の多いものが使われていても、中までサクサクの食感を備え、経時変化にも強く、長期冷凍保存後に電子レンジ調理しても良好な食感が得られる、スーパーやデパート、コンビニエンスストアの惣菜売り場に展示販売するのに適した、もしくは冷凍食品として販売するのに適したかき揚げおよびその製造方法に関する。
まず、サクサク感について考察してみると、本発明者は十数年以上「サクサク感」とは科学的にどのような状態になればいいのか考えてきた。まず、サクサク感のある食品の代表例としては、油ちょう(油で揚げること)直後のてんぷらの衣や、コロッケ等のパン粉衣、またコーンや枝豆ペーストを高圧のエクストルーダー処理して得られるスナック菓子、例えば明治製菓株式会社の商品名「カール」や「枝豆スナック」、古くは米を高温高圧処理して一気に常圧に戻して得られるポンポン菓子、小麦粉に膨化剤を加えカリカリになるまで焼いて得られるウエハース、油脂を生地に練りこんで得られるビスケット、米粉から得られるせんべい、小麦粉と水をこねた生地と油脂を何層にも重ねあわせ焼き調理して得られるパイ生地等が挙げられる。これらは皆、主に澱粉等の炭水化物が主原料となっている。
しかし、例えば卵白を泡立て、砂糖を混ぜてオーブンで焼いて得られるメレンゲのように、たんぱく質が主な支持体ものでもサクサク感は感じられる。また、例えばネスレコンフェクショナリー株式会社製の商品名「エアロ」のようにチョコレートのような油脂が主な支持体のものでもサクサク感は感じられる。
以上の「サクサク感」を持つものに共通して見られる特徴としては、これらを鋭利な刃物で切断面を観察してみると、非常に細かな気泡や空気の層と、それを支持する硬い支持体から構成されていることがわかる。
また、これらは油脂が支持体の「エアロ」のようなものを除けばいずれも水蒸気に弱く、電子レンジ調理や、ただ単に袋を破って空気中の水蒸気にさらされるだけで、サクサク感はすぐに消滅し、歯切れの悪いいわゆる「湿気た」状態になりやすい。例えば、てんぷら等は、揚げて10分間もたたないうちにサクサク感が極端に低下するし、「カール」やせんべい等も、開封後梅雨時などの水蒸気の多い日には約6時間で、冬時などの乾燥した時期でも2〜3日でサクサク感が失われてしまう。また、本発明者及び多くの方々が気づいていると思われることだが、「カール」のような澱粉主体のスナック菓子よりも、「枝豆スナック」のようなたんぱく質を多く含むスナック菓子のほうが水蒸気によるサクサク感の喪失が遅いということが経験的に知られている。
さらに油ちょう済みコロッケを−30℃以下の急速冷凍し長期冷凍保存(通常の冷凍食品の流通温度である−18℃での保存)中にも具材から衣への水分移行が昇華水蒸気の形でおこり、これを電子レンジ解凍してもサクサク感は得られないことが知られている。
話はかき揚げの話に変わる。本発明者は、様々なうどん屋へ行っているが、こうしたうどん屋にはうどんの上に乗せる具材として様々な揚げ物と並んでかき揚げなども置いてある。しかし、多くの場合かき揚げは厚さ1cm程度の薄いものが多く、たまねぎなどの水分が多く焦げやすいものが具材として入っている場合は少ない。また、入っていてもたまねぎの周りの衣はべちゃべちゃしており、揚げたてのサクサク感を保持しているものに出くわすのはよっぽどタイミングのあった運のいいときだけである。また、厚さが2cm以上あるものもたまに見かけるが、それらの中身は例外なくべちゃべちゃしておりおいしいとは言い難い。そこで本発明者は、技術的興味から厚さ3cm以上でたまねぎなどの水分を多く含むヘルシーな野菜かき揚げを中までサクサクした状態で食べたいと常々から思っていた。しかし残念ながら、本発明者の現在までの経験によると、こうしたかき揚げは無かった。いや、正確に言うと作ることが不可能だったのかもしれない。その理由として考えられるのは、厚みのあるかき揚げを作ると容易にわかることだが、衣の水分が揚げ油との接触面から抜けていくと同時に、たまねぎなどの中具から衣表面への水分移行が次々とおこり、これはいくら揚げてもおさまらず、中身はべちゃべちゃしたままになるからである。この現象はたまねぎなどの中具からの水分移行が終わるまで続く。すなわち中具の水分(自由水)が完全に無くなった状態、すなわち炭化寸前の状態まで持っていかないとサクサク感が長続きするかき揚げは得られないのである。こうなると他に考えられる手段としては軽く油ちょうした後に熱風乾燥処理を行うか(これは日清製粉株式会社製の「どんべえ」に付属するかき揚げ)、凍結乾燥処理でも行わないことには無理な話である。しかし本発明者が食べたいのはそのようなサクサク感があっても中具まで干からびてしまったものではなく、サクサク感があってしかもたまねぎ等の中具はみずみずしさを保った分厚いかき揚げなのである。
油ちょう済みコロッケのサクサク感を長期保持する技術として、特許3370199(特開平07−2554029)のように冷凍フライ類に用いられるバッター液であって、食用油脂と、水と、2000gの条件下における遠心法による保水量が1000g/100g以上となる保水性を有する食用保水性物質と、ロスマイルス法により25℃の条件下における0.1重量含有水溶液として測定した際の起泡力が50mm以上を示す起泡剤と、乳化安定剤とを含むエマルジョンからなることを特徴とするバッター液、または少なくとも(a)エマルジョン及び/又は食用保水性物質を含む油剤で形成される層、(b)第1のブレッダー層、(c)請求項1記載のバッター液により形成されるエマルジョン層及び(d)第2のブレッダー層が、フライ類の具材に順次形成されていることを特徴とするマイクロ波調理用冷凍フライ基材。または請求項2記載のマイクロ波調理用基材を、油ちょう処理した後に冷凍したマイクロ波調理用冷凍フライ類、というのが挙げられる。この技術は、「衣がサクサク牛肉コロッケ」に適用されたものであり、いわゆる「電子レンジコロッケ」として当業者の間のみならず一般の消費者においても大きな話題となったものである。この技術的思想の根幹を成すものは、コロッケ中具とパン粉衣との間に何層もの油脂吸着性の高い物質を形成して油脂の皮膜を作り、コロッケ中具からの昇華水蒸気を防ぎ、パン粉衣のサクサク感を長持ちさせよう、と言うものである。これはこれで優れた技術だといえる。だが、てんぷら衣のようなものに関しては、この技術を用いると衣が厚くなりすぎる、いもコロッケのような澱粉質主体の中具でなく、えびや野菜てんぷらのような水分の多い中具に対しては十分なサクサク感保持効果が得られない、といった難点があった。
また、油ちょう済み食品全般のサクサク感を長期保持する技術として、特許3520678(特開平10−042799)のように、衣付食品を通常の調理加熱による油温度でフライ後、130℃以下の食用油に短時間浸漬する、というのが挙げられる。その技術的思想の根幹を成すものは、油ちょう直後の中具からの沸騰水蒸気を、低温の食用油に浸漬することで、中具との間に油の皮膜を形成させる、また同時に衣材そのもののサクサク感を構成している小さな気泡及びその支持体の表面全てに油の皮膜を形成させる、と言うものである。この場合、130℃以下好ましくは常温の油に浸漬しないとそういった油の皮膜は形成されず、また、浸漬油に比較的高価な中鎖脂肪酸トリグリセリドを含ませないと、油っこくなる、という難点があった。そのような背景があるため、この技術が適用されたのは「コーンクリームコロッケ」だけであって、工業的にかき揚げなどのてんぷら類に適用された実績はない。
また、かき揚げに限っていえば、特許公開2004−267070「厚みのあるかき揚げ、かき揚げ用揚げ型およびかき揚げの製造法」が開示されている。これによれば、厚みが3cm以上あるかき揚げで、揚げ型に設けられた突起によって油ちょう時に人為的に厚み方向に空隙を形成することによって、厚みがあっても中まで火が通りサクサク感のあるかき揚げを製造できる、とある。この特許公開2004−267070の技術的発想は、かき揚げを中までサクッと揚げるには、箸でつついて穴をあけさせるというものである。そこで本発明者はこの方法を用いて追跡再現調査を行ってみた。より具体的には、直径11cm、高さ5cmの金属製の円筒型に適度なサイズにカットしたたまねぎ、にんじん、春菊、えびの具材100g/個にバッター30g/個を混合し、直径10.9cm、孔の直径6.6mm、孔と孔の距離1.0cm、突起のサイズは底面の直径8mm、高さ3cmの型に入れて160℃で50秒間、油ちょうする。型からはずし、20g/個のバッター液をつけ、160℃で50秒間、二次油ちょうした。すると、まず、突起と突起との距離1cmでは具材が突起間に挟まれたり、突起によって突き刺されたりして型からはずすのが困難なことが判明した。さらに油ちょう直後は全体としてのサクサク感はあるものの、たまねぎ、にんじん、えびの周り約4mmは、具材の沸騰水蒸気由来と思われるべちゃべちゃした層があって、なかまでサクサク感があるとは到底思えないものができあがった。さらにこれを室温放置しておくと、約10分後には突起周辺にあったサクサク感を形成している層(約2mm)が軟化し、全体としてのサクサク感も極端に低下した。突起と突起の距離を2cm、3cmに変えて同様の実験を行ってみても、同様の結果が得られ、厚みが3cm以上の厚みのあるかき揚げで、中までサクサク感があるものは得られなかった。また、これらを二次油ちょう後、急速冷凍し、120℃2分間の油ちょうを行っても、同様にたまねぎ等の水分の多い具材の周り4mm程度は、やはりべちゃべちゃした食感が残り、中までサクサク感があるものは得られなかった。
特許3370199 特許3520678 特許公開2004−267070
そこで本発明は、3cm以上の厚みのあるかき揚げにおいても、また中具の水分が70%以上あるものを用いても、中まで均一にサクサク感の得られるかき揚げ及びその製造方法を提供することを課題とする。また、このかき揚げを急速冷凍し、長期冷凍保存後に電子レンジ調理を行っても、サクサク感のあるかき揚げ及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、小麦粉、及びショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルのうち少なくとも一種類以上の熱凝固性のない起泡剤を必ず含むことを特徴とする衣材である。
また本発明は、衣材にきな粉に代表される豆類の乾燥粉末を含むことを特徴とする上記の衣材である。
また本発明は、衣材にハイアミロース澱粉を含むことを特徴とする上記の衣材である。
また本発明は、熱凝固性のない起泡剤、水を必ず含み、衣材を起泡させることを特徴とするかき揚げである。
また本発明は、衣材として小麦粉、熱凝固性のない起泡剤、水を必ず含み、衣材を起泡させ、直径3.0cm以上50.0cm以下、高さ3.0cm以上の円筒状の器具を用いて作ることを特徴とするかき揚げの製造方法である。
また本発明は、油ちょうに使用する油脂が融点30℃以上である、上記のかき揚げの製造方法である。
また本発明は上記かき揚げにおいて、油ちょう後にオーブン処理することを特徴とするかき揚げである。
また本発明は上記かき揚げにおいて、油ちょう後に150℃以上300℃以下のオーブン中を、かき揚げの水平面が地表水平面に対して15°以上90°以下の角度を保って10秒以上5分以下おかれることを特徴とするかき揚げの製造方法である。
また本発明は上記かき揚げが、冷凍されていることを特徴とする、電子レンジ調理に適したかき揚げである。
また本発明は上記のかき揚げの製造方法において、円筒状の器具を用いる代わりに、花びら型、星型、ハート型のクッキー等の抜き型を用いて作ったお弁当用かき揚げである。
また本発明は上記のかき揚げの製造方法において、たこ焼き用の型を用いて作った、球形または半球形の形をしたお弁当用かき揚げである。
また本発明は上記のかき揚げにおいて具材に畜肉、乳類、卵類またはそれらの加工品を用いることを特徴とするかき揚げである。
本発明によれば、厚さ3cm以上で中までサクサク感のあるかき揚げで、しかも経時変化に強いかき揚げを容易に作ることができるため、民生に対し大きな効果がもたらされる。また本発明によれば、油ちょう条件を特別なものにした後、急速冷凍し、トンネルオーブンをくぐらせることにより、長期冷凍保存後電子レンジ調理してもサクサク感のある冷凍かき揚げを作ることができる。
本発明者は、上記課題の解決を目指して日々研究した結果、まず熱凝固性のない起泡剤をもちいて比重0.7のバッター液を調製し、このバッターと、たまねぎ、にんじん、さつまいもをそれぞれ約5mm角長さ約4cmの拍子切りしたものにコーンスターチで打ち粉したものを適当な比率で混ぜあわせた。直径21cmのフライパンに揚げ油を高さ約2.5cmになるように張り込んだものの中に直径12cm高さ4.5cmの金属製の円筒を設置し、油温を131℃にして上記かき揚げ具材(バッター液と具材の混合物)をこの円筒の中に一気に入れ、中火のまま円筒上面から131℃の油をかけまわすことによって、厚さ約4cmで、中のたまねぎ等の具材との接触面ぎりぎりまで衣のサクサク感があるかき揚げができることを見出した。
厚さ約4cmで、中のたまねぎ等の具材との接触面ぎりぎりまで衣のサクサク感があるかき揚げができる理由として考えられるのは、熱凝固性のない起泡剤を用いてバッター液を調製し、これと具材の混合物を油温131℃の油の中に投入することにより、このバッター液に含まれる微細な気泡が、油の中ではじけて、油が衣材を作りながら、瞬時に具材まで到達し、サクサク感を構成するのに必要な、微細な気泡とこれを支持する支持体を形成することによると考えられる。熱凝固性の強い起泡剤、例えば卵白や、植蛋由来の起泡剤を用いると、油ちょう時にバッターが油と接触した面で強固な膜を作り、油の通りが極端に悪くなり熱伝導性が落ちるため、サクサク感を出すのに必要な細かな気泡とそれを作り出す支持体が形成されにくくなる。
また、このバッター液の中に、きな粉やハイアミロース澱粉を含ませることにより、一層のサクサク感の持続効果があることを見出した。さらに、油ちょうに使用する油脂が融点35℃のドーナツ用揚げ油を用いることによって、一層のサクサク感の持続効果があることを見出した。さらにこのかき揚げに対し−30℃の急速冷凍を行い、−18℃で120日間の長期冷凍保存後、電子レンジ解凍するとサクサク感を再現できることを見出した。また、このかき揚げの製造途中において、油ちょう後に150℃以上300℃以下のオーブン中を、かき揚げの水平面が地表水平面に対して15°以上90°以下の角度を保って10秒以上5分以下おくことによって、サクサク感を保つのに十分なだけの油脂を、かき揚げの具材表面や衣を形成する気泡状に発泡した澱粉質の表面にコーティングさせ、余分な油脂を落とすことによって油っこさの少ないかき揚げを作り得ることを見出した。また、円筒形やなべの形を変えれば、自由な型を持つかき揚げを作れることを見出した。また、これらのかき揚げをコンビニエンスストアーなどに設置されているホットショーケース中で保存することで揚げたてのサクサク感を持続できることを見出した。また、かき揚げの具材として醤油だしで煮込んだ牛肉や、チーズ、鶏卵を落としこむことによってうどんや丼の具として適した変り種のかき揚げを作ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)小麦粉
小麦粉は、薄力粉、中力粉、強力粉、デュラムセモリナ粉、またこれらを湿熱処理したもの等加工処理した小麦粉のうち、いずれを用いてもよい。かき揚げを含むてんぷら類は、一般に薄力粉を用いるのが常識だが、本発明においてはグルテン量の多い強力粉などを用いてもいっこうに差し支えない。ただし、後ほど触れるが、薄力粉を主成分にしてバッター液を調製する場合、厚さ3cm以上のかき揚げの内部まで均一にサクサク感を得ようとするには、バッター液比重を0.75以下にしないとならず、グルテン量の多い強力粉を使うと比重0.5程度まで下げる必要があり、この場合強力粉の量を適当な量まで減らさねばならず、衣の食感が軽くなりすぎてかき揚げらしい衣の食感にならない、またかき揚げが脆くなりすぎるため、あえてグルテン量の多い小麦粉を選択するメリットはほとんどなく、値段の安い薄力粉を使用すればよい。また、てんぷら類を作るときは、かき混ぜすぎずグルテン網の形成を抑えるのが常識であり、軽い食感を作り出すためのコツと言われているが、本発明においてはバッター液を起泡させるために充分にかき混ぜてもいっこうに差し支えない。その理由は、バッター液を起泡させて細かな気泡を取り込むため、油ちょう処理を行ったときに軽い食感、サクサク感を出すのに必要な細かな気泡とそれを作り出す支持体が形成されるからである。また、小麦粉の他に、コーンスターチ、片栗粉、加工処理澱粉などの澱粉類や、クルトン、干しうどん、パスタなどの小麦粉加工製品を、必要に応じて加えてもかまわない。また、大麦、アマランサス、あわ、えんばく、きび、米(特にアルファ化米や道明寺粉のようにいったんアルファ化させてから乾燥させたものも含む)、そば、とうもろこし、はとむぎ、ひえ、もろこし、ライむぎなどの穀類をそのままあるいは粉砕したものを必要に応じて加えてもかまわない。
(2)起泡剤および乳化剤
起泡剤とは水と小麦粉等の粉末と混ぜ合わせミキサー等で攪拌することにより溶液に細かな気泡を形成させるものを言い、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等から成る熱凝固性のないものと、卵白や植物蛋白等の蛋白質を主成分とした熱凝固性のあるものに大きく分類される。本発明に用いられる起泡剤は、熱凝固性のないものならどのようなものを用いてもかまわない。例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びこれらの混合物が挙げられ、特に第一工業製薬株式会社製の高起泡性起泡剤(ショ糖脂肪酸エステル12%、グリセリン脂肪酸エステル7%、ソルビタン脂肪酸エステル6%、ソルビトール25%、プロピレングリコール5%、エタノール2%、香料0.1%、水42.9%)や、通常の起泡剤(ショ糖脂肪酸エステル25%、グリセリン脂肪酸エステル25%、食品素材(糖類)50%)、(ショ糖脂肪酸エステル20%、グリセリン脂肪酸エステル4%、ソルビタン脂肪酸エステル2%、食品素材(糖類)74%)等が好適に用いられる。熱凝固性の強い起泡剤、例えば卵白や、植物蛋白性起泡剤等を用いると、油ちょう時にバッターが油と接触した面で強固な膜を作り、油の通りが極端に悪くなり熱伝導性が落ちるため、サクサク感を出すのに必要な細かな気泡とそれを作り出す支持体が形成されにくくなる。したがってこれらの熱凝固性のある起泡剤は、起泡させるのに使うのではなく、支持体を形成させる補助的な量にとどめておくのがよい。また、本発明にはHLBの異なるあらゆる種類の乳化剤を組み合わせて用いることができる。
(3)バッター液の比重および攪拌条件
衣材の原料となるバッター液の比重は、セルクルのような金属製の円筒の揚げ型を用いる場合は、0.3から1.0の間で自由に選択できる。比重0・3より小さいバッター液を作るのは事実上困難である。ただし、厚さ3cm以上のかき揚げを中までサクサク感のある状態にするためには、薄力粉を主成分としてバッター液を調製する場合、比重0.75以下にしないとかき揚げの内部まで均一にサクサク感を得ることができない(比重0.8ではかき揚げの内部まで均一にサクサク感を得ることができなかった)ため、この点注意が必要である。厚さが3cmよりはるかに薄い従来のかき揚げ(厚さ1.5cm程度)においては、比重0.8以上1.0以下でも、サクサク感を長時間保つことができ、冷凍保存耐性及び電子レンジ解凍適性もあるものができる。また、工業規模で起泡したバッター液を作る場合は、0.5から0.85くらいの比重にするのが使い勝手がよい。また、セルクルのような揚げ型を用いない場合は衣が散ってかき揚げの形をなさないので比重0.9以上1.0以下にしないとならず、かき揚げの厚さを1.5cm以下にしないと中までサクサク感のあるかき揚げを得ることはできない。攪拌条件は、上記のことを踏まえれば、バッターの比重を0.3以上1.0以下の起泡した状態にできるなら、ハンドミキサーのような普通の泡立て器を用いればどの様な条件を選択してもかまわない。
(4)具材
かき揚げの具材としては、食品の範疇に入るものであればいかなるものでもかまわない。例えば、業務用冷凍食品のかき揚げの具材としては、主にたまねぎ、にんじん、さつまいも、いんげん、グリンピース、青菜、えび、いか、といったところである。これらのかき揚げはすべて厚さ1.5cm以下である。油ちょう済みの冷凍かき揚げは、これを自然解凍もしくは軽く油で揚げて常温放置しても、決してサクサク感は長続きしない。
本発明に置いては特に水分70%以上の食材、例えばたまねぎ(89.7%)、にんじん(89.6%)、いんげん(92.2%)、グリンピース(76.5%)、えび(あまえび78.2%、くるまえび76.1%、さくらえび(ゆで)76.6%、大正えび76.3%、しばえび79.3%、ブラックタイガー79.9%、おきあみ78.5%)、いか(あかいか79.3%、けんさきいか80.0%、こういか83.4%、するめいか79.0%、ほたるいか83.0%、やりいか79.7%)はもちろんのこと、じゃがいも(79.8%)なども好適に用いられる。
他には「五訂日本食品標準成分表」によれば、野菜類では、アスパラガス(92.6%)、うど類(94.4%)、えだまめ(71,7%)、さやえんどう(88.6%)、おかひじき(92.5%)、オクラ(90.2%)、かぶ(93.9%)、かぼちゃ(86.7%)、からしな(90.3%)、ゆでかんぴょう(91.6%)、食用きく(91.5%)、キャベツ(92.7%)グリーンボール(93.4%)、きゅうり(95.4%)、ぎょうじゃにんにく(88.8%)、ごぼう(81.7%)、こまつな(94.1%)、ザーサイ(77.6%)、しかくまめ(92.8%)、ししとうがらし(91.4%)、しそ(86.7%)、しゅんぎく(91.8%)、じゅんさい(98.6%)、しょうが(91.4)、しろうり(95.3%)、ズッキーニ(94.9%)、セロリー(94、7%)、ぜんまい(90.9%)、そらまめ(72.3%)、タアサイ(94.3%)、かいわれだいこん(93.4%)、だいこん(94.6%)、たかな(92.7%)、たけのこ(90.8%)、赤たまねぎ(89.6%)、たらのめ(90.2%)、チンゲンサイ(96.0%)、つくし(86.9%)、つるむらさき(95.1%)、とうがらし(果実75.0%)、とうがん(95.2%)、スイートコーン(77.1%)、ヤングコーン(90.9%)、トマト(94.0%)、なす(93.2%)、べいなす(93.0%)、なばな類(88.4%)、にがうり(別名ゴーヤ、94.4%)、にら(92.6%)、黄にら(94.0%)、にんにく(花茎86.9%)、根深ねぎ(91.7%)、葉ねぎ(90.6%)、こねぎ(91.3%)、のざわな(94.0%)、はくさい(95.2%)、はつかだいこん(95.3%)、ビート(87.6%)、青ピーマン(93.4%)、赤ピーマン(91.1%)、黄ピーマン(92.0%)、ふき(95.8%)、ふきのとう(85.5%)、ふじまめ(89.2%)、ブロッコリー(89.0%)、ほうれんそう(92.4%)、ホ−スラディシュ(77.3%)、みつば(93.8%)、みょうが(95.6%)、むかご(75.1%)、めキャベツ(83.2%)、もやし(95.4%)、モロヘイヤ(86.1%)、やまごぼう(みそ漬け72.8%)、よもぎ(83.6%)、エシャロット(79.0%)、レタス(95,9%)、れんこん(81.5%)、わけぎ(90.3%)、わさび(90.3%)、わらび(92.7%)等である。
果実類ではほとんど全ての生の果実(約80%〜90%)、豆類では大豆水煮缶詰(71.7%)、おから(75.5%)、きのこ類では乾燥品以外の全てのきのこ類(約80%〜95%)、藻類では生わかめ(89.0%)等、魚介類ではほとんど全ての生魚(約70%〜82%)、貝類(生、約75%〜約90%、貝柱を含む)、かに類(生、約80%〜90%)、たこ類(生、約80%〜85%)その他うに(73.8%)、くらげ(塩蔵、塩抜き94.2%)、しゃこ(ゆで、77,2%)、水産練り製品(かまぼこ74.4%等)、肉類では赤身肉(約70%)、卵類ではうずら卵(72.9%)、鶏卵類(全卵生76.1%、ゆで75.8%)等、乳類ではカテージチーズ(79.0%)等において特にその効果を発揮する。
もちろん水分70%未満の食材、例えば全ての穀類、さつまいも等のいも類、はるさめ等の澱粉加工類、砂糖類、ゆであずき、いんげんまめ、えんどう、そらまめ、大豆及びその加工品、等に代表される豆類、アーモンド、カシューナッツ、くり、ぎんなん、くるみ、ごま、らっかせい及びその加工品、等に代表される種実類、にんにく、くわい、ゆりね、らっきょう、等に代表される水分70%未満の野菜類、乾燥果実類、乾燥きのこ類、のり、ひじき等に代表される乾燥藻類、全ての乾燥魚介類、うし、ぶた、にわとり等に代表される全ての肉類およびその加工品類(ソーセージ、ハムなど)、卵黄等の卵類、チーズ等に代表される乳類加工品、ほとんど全ての菓子類、調味料および香辛料類、ぎょうざ、しゅうまい、ハンバーグ、いかフライ、えびフライ、白身フライ、ミートボール、メンチカツ、コロッケ、等に代表される調理加工食品類なども本発明の具材として好適に用いることができる。
(5)具材とバッター液の比率
具材とバッター液の比率は、具材重量1に対してバッター液重量が0.4を下回ると具材のつなぎが少なすぎてかき揚げの形を成さなくなるので、0.4以上である必要がある。0.4以上であれば特に問題なく本発明を実施できる。サクサク感の持続効果としては具材重量1に対してバッター液重量が多ければ多いほどよいが、極端にバッター液重量が多いとただの天かすの上に具材が一つだけ乗っているような状態になるため、商品価値の点を鑑みると具材重量1に対してバッター液重量が0.5から2.0あたりが好ましいと考えられる。
(6)打ち粉
かき揚げに代表される揚げ物に打ち粉を打つのは当業者にとって当然のことである。打ち粉を打つ理由として考えられるのは、工業規模で揚げ物を作る場合、具材表面の水分を吸着させ、扱いやすくさせることと、油ちょう時に澱粉の皮膜が形成され、カラリと揚げることの2点のメリットが考えられるが、別に打ち粉なしでもそこそこの品質のものはできるし、てんぷら専門店では揚げたてをすぐに喫食させるため、特に打ち粉をせずに揚げている店も多い。本発明においても打ち粉なしでも充分サクサク感のあるかき揚げを作ることができるが、打ち粉を打った方がより好ましい。打ち粉の種類としては、コーンスターチ、片栗粉、タピオカ澱粉などに代表される澱粉類およびその加工品、小麦粉などが挙げられるが、きな粉に代表される豆類の乾燥粉末やハイアミロース澱粉およびそれらと各種澱粉や小麦粉などとの混合物を用いてもよい。
(7)きな粉に代表される豆類の乾燥粉末
本発明のかき揚げを作るにあたり、きな粉に代表される豆類の乾燥粉末をバッター液または打ち粉に混ぜることにより、たんぱく質サクサク感の持続効果が得られる。その理由は、きな粉に代表される豆類の乾燥粉末には、たんぱく質と食物繊維が豊富に含まれており、たんぱく質の乾燥粉末はガラス転移点が低く、油ちょうによって容易にガラス化することと、食物繊維は油脂吸着能力が高く、サクサク感を持続させるのに必要な衣の微細な気泡を形成する支持体を、水蒸気から保護する役割があるからだと考えられる。バッター液中に混合する量は、対バッター液重量の1%から3%程度が適当である。1%未満だとサクサク感の持続効果が弱く、3%を超えると歯切れが悪くなり豆類特有の異風味がつく。歯切れが悪くなる理由として考えられるのは、ガラス点移転を越えるとたんぱく質がゴム質化するからだと考えられる。もちろんこれはきな粉等の豆類の乾燥粉末単独で行った結果であり、ハイアミロース澱粉等と併用する場合は1%未満でもサクサク感の持続効果が期待できる。
(8)ハイアミロース澱粉
本発明のかき揚げを作るにあたり、ハイアミロース澱粉をバッター液または打ち粉に混ぜることによって、サクサク感の持続効果が得られる。その理由として考えられるのは、ハイアミロース澱粉を油ちょうすることによって得られる支持体が、ガラス化することによると考えられる。バッター液中に混合する量は、対バッター液重量の2%から5%程度が適当である。2%未満だとサクサク感の持続効果が弱い。5%を超えてもバッター液粘度が上がるだけでサクサク感の持続効果は変わらないので5%超の添加はあまり意味がない。もちろんこれはハイアミロース澱粉単独で行った結果であり、きな粉等の豆類の乾燥粉末等と併用する場合は2%未満でもサクサク感の持続効果が期待できる。ハイアミロース澱粉の種類としては、澱粉中のアミロース含量が50%以上のものなら特に指定はないが、アミロース含量60%以上のアルファ化された澱粉、例えば日本食品加工社製「日食アルスターH」などがより好ましい。
(9)型もしくは油ちょうに用いるなべ、フライヤー
直径3.0cm以上50.0cm以下、高さ3.0cm以上の円筒状の型、好ましくは直径4.0cm以上15.0cm以下、高さ4.5cm以上の円筒状の型であり、130℃より高くから230℃の油ちょう温度に耐えうる素材でできた型が好適に用いられる。具体的には金属製のセルクルでよい。直径3.0cm未満だと具材とバッター液の混合物を流し入れるのが困難であり、直径15.0cmより大きいと、できあがったかき揚げを商業規模で流通させるのが困難になる。なぜなら、一般の家庭や飲食店で本発明によるかき揚げを利用しようとする際、うどんの具やかき揚げ丼の具として利用されることが容易に予想され、その場合これに見合ったどんぶりの直径がほとんどの場合15.0cm以下であるからである。高さに関しては厚み3.0cm以上のかき揚げを作ろうとする場合は当然高さ3.0cm以上ないと衣がふきこぼれてなべやフライヤーが天かすだらけになるため、好ましくは4.5cm以上の高さがあればよい。高さの上限は特にないが具材を円筒中に投入しやすく、油ちょう後のかき揚げを取り出しやすければよい。実はかき揚げの大きさは、なべの大きさと同じものを作ることが理論上可能であり、本発明者は直径50.0cmのパエリヤなべを用いて本発明によるかき揚げを作ってみたところ、特に問題なく巨大かき揚げができた。ただしこういった常識を超えた大きさのかき揚げは、小規模飲食店でお客様に対するパフォーマンスとして用いるか、自治会などの祭りのイベントとして作る以外は利用価値はないように思えるし、別にギネスブックに挑戦するつもりもないので直径は50.0cm以下とした。また、型については特に円筒状である必要はなく、花びら型、星型、ハート型などのクッキー等の抜き型を利用すれば、お弁当用の惣菜としてかわいらしい形のかき揚げができる。また、油ちょうに用いるなべの代わりにたこ焼き用の焼き型を用いれば、球形もしくは半球形状のかき揚げを作ることができる。フライヤーについては、工業規模のベルトコンベア式のもので、ベルトの網またはキャタピラがかき揚げの型の底面に当たるような物であれば従来用いられているもので充分間に合う。さらに、円筒状の型にバッター液と具材の混合物を投入した後、円筒上部からフライヤー中の油をかき揚げにかける仕組みを作っておくと、より一層サクサク感を形成する衣層が早く作られるので好適である。また2槽式のフライヤーを用いる場合は、従来の常識とは逆に1槽目の温度を高く、2槽目の温度を低く設定しておくと油切れは悪いがサクサク感の持続するかき揚げを作ることができ、特に電子レンジ用油ちょう済み冷凍食品に本発明を適用するときに効果を発揮する。
(10)油ちょうに使用する油脂
油ちょうに使用する油脂は、本発明においては食用油脂ならどの様なものを用いてもよい。ただし、融点30℃以上の油脂を用いた方がややサクサク感の持続効果が向上する。例えはドーナツ用揚げ油や、精製パーム油、精製ラード、精製牛脂等が好適に用いられる。
(11)油ちょう温度および油ちょう時間
油ちょう温度は、2槽式のフライヤーを用いる場合は、最初の槽は130℃より高く185℃以下の好きな温度を選択し、次の槽で好ましくは130℃より高く、少なくとも150℃以下に油の温度を設定するのがよい。単槽式のフライヤーの場合は130℃より高く150℃以下に設定する。こうすることによって本発明のかき揚げを作るにあたり、油切れは悪いがサクサク感の持続するかき揚げを作ることができ、特に電子レンジ用油ちょう済み冷凍食品に本発明を適用するときに効果を発揮する。なべで調理を行う場合は、火力の調節を適宜行えばよい。
(12)バッター液における粉と水の比率
バッター液を調整するにあたり、小麦粉、コーンスターチ、きな粉、ハイアミロース澱粉などの粉と水の割合はバッター液比重と攪拌条件、どんな小麦粉を選択するかで変わってくるが、薄力粉を主な粉体として選ぶ場合、粉重量1に対して水重量1.92で比重0.7のバッター液ができる。
(13)オーブンの温度および時間および傾斜角度
トンネル式のベルトコンベアーオーブンの温度は、150℃以上300℃以下、通過時間は10秒以上5分以下、かき揚げの水平面が地表水平面に対して15°以上90°以下の角度を保つようにおかれるようにオーブンを設置することによって、油ちょう後にあえて油切れを悪くして具材と衣の形成素材の表面にできた油の皮膜を保ったまま、余分な油を落とし、この後−30℃以下の急速冷凍を行ってできるかき揚げが、レンジ調理後もサクサク感を持ち、さらに油っこさの少ないものができる。150℃以上でないと油切れが充分に行われず、300℃以上だと多くの食用油の発煙点が300℃以下のため、煙が発生して製造上不適切なためである。かき揚げの水平面が地表水平面に対して15°以上90°以下の角度を保つようにする理由は、15°未満の角度、例えばかき揚げの水平面(底面)が地表水平面に対して平行だった場合、余分な油はかき揚げ底面に表面張力の作用で残ったままになるからである。
以下本発明を用いた実施例を掲げより具体的に発明実施の態様を説明する。
(14)
薄力粉210g、コーンスターチ30g、水460g、熱凝固性のない起泡剤(ショ糖脂肪酸エステル12%、グリセリン脂肪酸エステル7%、ソルビタン脂肪酸エステル6%、ソルビトール25%、プロピレングリコール5%、エタノール2%、香料0.1%、水42.9%)10gを1Lのジョッキに入れ、ハンドミキサーを用いて2分間攪拌することで比重0.7のバッター液を得た。また、たまねぎ200g、にんじん120g、さつまいも160gをそれぞれ約5mm角長さ約4cmの拍子切りしたものとむきえび140gにコーンスターチ50gで打ち粉した具材を得た。直径21cmのフライパンに白絞油を高さ約2.5cmになるように張り込んだものの中に直径12cm高さ4.5cmの金属製の円筒(セルクル)を設置し、油温を150℃にして上記かき揚げ具材(バッター液100gと具材80gの混合物)をこの円筒の中に一気に入れ、弱火にして円筒上面から130℃より高くの油をかけまわして3分間油ちょうすることによって、厚さ約4cm、直径12cmのかき揚げを得た(実施例1)。比較例としててんぷら粉40gを水60gに溶いたバッター液100gに、上記具材80gを混合して、油ちょう条件は実施例1とまったく同じもの(比較例1)、油の温度を170℃に保ち4分間油ちょうしたもの(比較例2)を得た。実施例1のかき揚げは、中までサクサク感を持った衣を有するものであったが(図1)、比較例1のかき揚げは厚さ約3.5cm、直径12cmで、中の部分はたまねぎやむきえび由来と思われる水分でべちゃべちゃした食感のものになった。油ちょう条件を高めに設定した比較例2においては、厚さ約3.5cm、直径12cmで、中の部分はやはりたまねぎやむきえび由来と思われる水分でべちゃべちゃした食感のものになった。さらに比較例2では、表面に出ているたまねぎやにんじんが炭化(黒焦げの状態)しており、外観も悪くなった(図2)。
(15)
実施例1と比較例2を室温(この時の室温は16℃、湿度70%、曇りのち雨)で放置して、サクサク感の経時変化を調べた。評点は揚げたてのサクサク感を5点、サクサク感がある、を3点、まったくサクサク感がない、を1点として、10名の専門パネラーに評価してもらい、その平均点を表にした(表1)。表1の結果より、本発明を用いれば、室温放置しても、長時間サクサク感を持続できることがわかった。
(16)
実施例1のかき揚げを−30℃の急速冷凍し、−18℃で120日間の長期冷凍保存後、業務用電子レンジ1500Wで50秒解凍したもの(実施例2)、実施例1、比較例2のかき揚げをコンビニエンスストアーにあるホットショーケースの中に入れたもの(実施例3、比較例3)のサクサク感の経時変化を調べた。評点は揚げたてのサクサク感を5点、サクサク感がある、を3点、まったくサクサク感がない、を1点として、10名の専門パネラーに評価してもらい、その平均点を表にした(表2)。表2の結果より、本発明を用いて作ったかき揚げは、コンビニエンスストアや、スーパー、デパート等の惣菜売り場において、良好な品質を保って展示販売できることがわかった。
(17)
きな粉、ハイアミロース澱粉の添加効果を見るため、薄力粉210g、コーンスターチ30g、水460g、熱凝固性のない起泡剤10gを1Lのジョッキに入れ、ハンドミキサーを用いて2分間攪拌することで比重0.7のバッター液を得た。このバッター液100gに対し、何も加えないもの(実施例1)、きな粉1g加えたもの(実施例4)、きな粉2gを加えたもの(実施例5)、きな粉3gをくわえたもの(実施例6)、きな粉5gを加えたもの(実施例7)、アルファー化ハイアミロース澱粉1gを加えたもの(実施例8)、2gを加えたもの(実施例9)、5gを加えたもの(実施例10)、10gを加えたもの(実施例11)、15gを加えたもの(実施例12)、きな粉0.5g、アルファー化ハイアミロース澱粉1gを加えたもの(実施例13)、をそれぞれ調整し、(実施例1)の具材80gを加え、実施例1と同じ油ちょう条件で油ちょうしてサクサク感の経時変化を調べた。評点は揚げたてのサクサク感を5点、サクサク感がある、を3点、まったくサクサク感がない、を1点として、10名の専門パネラーに評価してもらい、その平均点を表にした(表3)。表3の結果から、きな粉やハイアミロース澱粉を用いるとサクサク感の持続効果が上がることがわかる。
(18)
油ちょうに使う油脂を変えた場合のサクサク感の経時変化を調べるために、(14)と同じ条件でかき揚げの具材を作り、白絞油を用いて油ちょうしたもの(実施例1)、ドーナツ用揚げ油(融点35℃)を用いて油ちょうしたもの(実施例14)、精製パーム油を用いたもの(融点35℃、実施例15)、精製パーム油に白絞油を加えて融点30℃、融点25℃、融点20℃にしたもの(実施例16、実施例17、実施例18)、精製ラードを用いたもの(融点約30℃、実施例19)で油ちょう条件は(14)とまったく同じにして実験を行った。評点は揚げたてのサクサク感を5点、サクサク感がある、を3点、まったくサクサク感がない、を1点として、10名の専門パネラーに評価してもらい、その平均点を表にした(表4)表4の結果から、融点30℃以上の油脂を使ったほうが白絞油を用いるよりサクサク感の持続効果が上がることがわかった。
(19)
油ちょう条件を変えた場合の長期冷凍保存後のサクサク感の変化を調べるために、(14)と同じ条件でかき揚げの具材を作りバッター液100gに対してきな粉1g、ハイアミロース澱粉(アミロース含量50%のもの)2gを入れ、直径21cmのフライパンに白絞油を高さ約2.5cmになるように張り込んだものの中に直径12cm高さ4.5cmの金属製の円筒(セルクル)を設置し、油温を150℃にしてかき揚げ具材(バッター液100gと具材80gの混合物)をこの円筒の中に一気に入れ、弱火にして円筒上面から130℃より高くの油をかけまわして3分間油ちょうし、厚さ約4cm、直径12cmのかき揚げを得た(実施例20)。また、上から2gの常温の白絞油を噴霧することによって、同様のかき揚げを得た(実施例21)。比較例として油温を130℃より高くにしてかき揚げ具材(バッター液100gと具材80gの混合物)を円筒の中に一気に入れ、強火にして円筒上面から170℃の油をかけまわして3分間油ちょうしたもの(比較例4)、油温を最初から160℃にしてかき揚げ具材(バッター液100gと具材80gの混合物)を円筒の中に一気に入れ、中火にして円筒上面から160℃の油をかけまわして2分30秒間油ちょうしたもの(比較例5)を、−30℃で急速冷凍し、―18℃にて長期冷凍保存し、電子レンジ解凍して2分後に試食したもの(それぞれ実施例20、実施例21、比較例4、比較例5)のサクサク感を調べた。評点は揚げたてのサクサク感を5点、サクサク感がある、を3点、まったくサクサク感がない、を1点として、10名の専門パネラーに評価してもらい、その平均点を表にした(表5)。表5からわかるように、実施例20、実施例21は油ちょう条件の違う比較例4、比較例5と比べて、明らかに長期冷凍保存後のサクサク感の延長効果が認められた。
(20)
油っこさの改善効果を調べるために、薄力粉21kg、コーンスターチ3kg、きな粉1kg、アルファ化ハイアミロース澱粉2kg、水46kg、熱凝固性のない起泡剤1kgを120Lのタンクに入れ、バッター液を泡立て用の攪拌板3枚がついたミキサーで5分間攪拌して、比重0.75のバッター液を得た。また、(14)と同じ条件でかき揚げの具材を作った。油の温度を150.0℃に設定した第一槽のフライヤーに直径12.0cm、高さ6cmの円筒形をした金属性の器具を設置した。この中にバッター液100gに対しかき揚げの具80gを混合したものを、一気に投入し、上から150.0℃の油をかけまわして、1分30秒間油ちょうを行った。型からかき揚げをはずし、油の温度を130℃より高くに設定した第二槽のフライヤーで1分30秒間油ちょうを行った。このかき揚げに、常温の白絞油を1個あたり3g噴霧し、かき揚げの水平面が地表水平面に対して30°の角度を保つように設置した220℃のトンネルオーブン中を、1分間通過させ、油切りを行った。これに対し−35℃の急速冷凍を行い、−18℃で120日間の長期冷凍保存したものを実施例22とした。一方、トンネルオーブンの中を通過させずに、−35℃の急速冷凍を行い、−18℃で120日間の長期冷凍保存したものを比較例6とした。これらを、電子レンジ解凍し、常温で2分放置後10名の専門パネラーに、油っこさの有無と、サクサク感の有無を官能評価してもらった。比較例6は、10名中9人が油っこいと評価したが、実施例22は10名とも油っこさをまったく感じないと評価した。またサクサク感については、比較例6、実施例22とも良好なサクサク感を有しているとの評価であった。以上の結果から、トンネルオーブンを用いて油切りを行うことで、サクサク感はまったく落とさずに油っこさを改善できることがわかった。
(21)
具材とバッター液の比率によるサクサク感の経時変化を調べるため、(14)と同じように具材とバッター液を調整した。具材の重量:バッター液重量が130g:50g(実施例23)、120g:60g(実施例24)、100g:80g(実施例25)、80g:100g(実施例1)、60g:120g(実施例26)、40g:140g(実施例27)、20g:160g(実施例28)として、(14)と同じように油ちょう処理してサクサク感の経時変化を調べた。評点は揚げたてのサクサク感を5点、サクサク感がある、を3点、まったくサクサク感がない、を1点として、10名の専門パネラーに評価してもらい、その平均点を表にした(表6)。表6の結果からわかるように、具材の重量1に対してバッター液(比重0.7に調整したもの)重量が0.4を下回ると、実施例23のようにつなぎが少なすぎて型からはずす時にかき揚げが崩れ、商品価値のないものとなった。また、具材の重量1に対してバッター液重量が上がるにしたがい、サクサク感の持続効果は上がったが(実施例24〜28)、実施例27、実施例28は、具材が衣に対して少なすぎて、見栄えの点で劣るとの評価があったため、商品価値の点を鑑みると、具材の重量1に対してバッター液重量が0.5から2.0あたりが好ましいと考えられる。
(22)
(14)の具材を5mm角のさいころ状に切り、クッキー用の抜き型を用いるほかは(14)とまったく同じ条件でかき揚げをつくったところ、花びら型、星型、ハート型のお弁当のおかずにぴったりのかわいらしい形のかき揚げができた。また、(14)でフライパンの代わりにたこ焼き用のプレートを用い、油を深さ1cmに張り込んでかき揚げを作ったところ、直径約3.5cmの球形に近い形のかき揚げができた。
(23)
(14)において、具材を入れたセルクルの上から、牛ロースを醤油とみりん、酒で甘辛く煮たものを40g落とし込むと、うどんの具材として適した、変り種のかき揚げを作ることができた。また、生卵を1個落とし込んでも、同様にうどんの具材として適した、変り種のかき揚げを作ることができた。
本発明により得られたかき揚げの断面図(写真)である。 従来の方法により得られたかき揚げの断面図(写真)である。 本発明により得られたかき揚げの断面図(写真)をトレーシングペーパーに書き写したものである。 従来の方法により得られたかき揚げの断面図(写真)をトレーシングペーパーに書き写したものである。
符号の説明
1 衣を形成している細かな気泡
2 たまねぎ
3 にんじん
4 さつまいも
5 衣中心部のべちゃべちゃした部分
6 炭化したたまねぎ

Claims (14)

  1. 小麦粉と、糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルのうち少なくとも一種類以上の熱凝固性のない起泡剤を必ず含むことを特徴とする衣材。
  2. 請求項1の衣材にきな粉に代表される豆類の乾燥粉末を含むことを特徴とする衣材。
  3. 請求項1の衣材にハイアミロース澱粉を含むことを特徴とする衣材。
  4. 衣材に小麦粉、熱凝固性のない起泡剤、水を必ず含み、衣材を起泡させることを特徴とするかき揚げ。
  5. 請求項4のかき揚げにおいて具材の水分が70.0重量%以上99.9重量%以下であることを特徴とするかき揚げ。
  6. 衣材として小麦粉、熱凝固性のない起泡剤、水を必ず含み、衣材を起泡させ、直径3.0cm以上50.0cm以下、高さ3.0cm以上の円筒状の器具を用いて作ることを特徴とするかき揚げの製造方法。
  7. 請求項4のかき揚げの製造方法において、油ちょう温度が130℃より高く150.0℃以下であるかき揚げの製造方法。
  8. 請求項4のかき揚げの製造方法において、油ちょうに使用する油脂が融点30℃以上であるかき揚げの製造方法。
  9. 請求項4のかき揚げにおいて、油ちょう後にオーブン処理することを特徴とするかき揚げ。
  10. 請求項4のかき揚げにおいて、油ちょう後に150℃以上300℃以下のオーブン中を、かき揚げの水平面が地表水平面に対して15°以上90°以下の角度を保って10秒以上5分以下おかれることを特徴とするかき揚げの製造方法。
  11. 請求項4のかき揚げが、冷凍されていることを特徴とする、電子レンジ調理に適したかき揚げ。
  12. 請求項4のかき揚げにおいて、円筒形の器具の代わりに、花びら型、星型、ハート型のクッキー等の抜き型を用いて作ったお弁当用かき揚げ。
  13. 請求項4のかき揚げにおいて、たこ焼き用の型を用いて作った、球形または半球形の形をしたお弁当用かき揚げ。
  14. 請求項4のかき揚げにおいて具材に畜肉、乳類、卵類またはそれらの加工品を用いることを特徴とするかき揚げ。
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