JP2007165689A - スーパールミネッセントダイオード - Google Patents

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Abstract

【課題】コストアップすることなく、単一横モード発光が可能で高出力なスーパールミネッセントダイオードを提供する。
【解決手段】光導波方向にそって利得層を含む光導波路を、支流光導波路21a,21bが光出射端面18に設けた出射開口22に向かって合流する構造にし、光導波路の少なくとも一部が前記光出射端面18の法線方向に対して傾きを有している。また、少なくともいずれかの光導波路が所定の曲率を有する曲線状に形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明はスーパールミネッセントダイオードに関し、特に、高出力化されたスーパールミネッセントダイオードに関するものである。
スーパールミネッセントダイオード(以下「SLD」という。)は通常の発光ダイオード同様にインコヒーレント性を示し、かつ広帯域なスペクトル形状を示しながら、光出力特性では半導体レーザ同様に数十mW程度までの出力を得ることが可能な半導体光素子である。SLDは半導体レーザ同様に注入キャリアの再結合により生じた自然放出光が、光出射端面方向に進む間に誘導放出による高い利得を受けて増幅され、光出射端面から放出される機構を用いている。ただし半導体レーザと異なり端面反射による共振器の形成を抑え、FP(ファブリ・ペロー)モード発振が生じないようにする必要がある。
レーザ発振を抑制するための方法として光導波路を共振器端面から僅かに傾けることにより発振を抑制する斜め光導波路構造が古くから知られており、1978年にD.R.SCIFRESらにより特許文献1においてGaAs/AlGaAs半導体レーザのストライプを端面の垂直方向に対して傾けていくと、共振器が形成されなくなりSLDとしての性能を示すことが報告されている。また1988年にはA.GERARDらにより特許文献2において5度傾斜ストライプ構造による28mWの高出力SLDが報告されている。
SLDはその特徴からファイバジャイロや高分解能OTDRなど光計測の分野で必要とされるインコヒーレント光源として期待されており、更に高出力なSLDへの要求が高まっている。
SLDを高出力化させる方法には(1)端面反射率の低減、(2)放熱性の向上、(3)光導波路領域の増加が挙げられる。このうち(3) 光導波路領域の増加による方法は、注入キャリアの再結合により生じた自然放出光が増幅される領域(発光領域)を広げるものであり、従来からよく採用されている方法である。この光導波路領域の増加方法としては、具体的には素子長を長くする方法と発光幅(活性層面に沿った方向の幅)を広げる方法(非特許文献3参照)とが知られている。
IEEE J. Quantum Electron, 1978, QE-14, p223-227 IEEE J. Quantum Electron, 1988, Vol.24, p2454-2457 応用物理 第68巻 第2号 p175-176
しかしながら、素子長を長くする方法では、1素子の大きさが大きくなり1枚のウエハから製造できる素子数が減ってしまいコストアップに繋がるという問題がある。また、発光幅を広げる方法では、発光幅の広がりにより出力光がマルチモードとなってしまい、横モードの単一化ができなくなるという問題がある。一般に横モードを制御するためには光導波路の幅(発光幅)を制御する必要があり、特に単一横モードの出力光を得るためには、発光幅を十分に狭くする必要がある。
本発明は、上記事情に鑑み、コストアップせずに、かつ横単一モードでの発光を可能とした、出力の高いスーパールミネッセントダイオードを提供することを目的とするものである。
本発明のスーパールミネッセントダイオードは、光導波路が、光導波方向に沿って利得層を含み、複数の光導波路が光出射端面に設けられた1つの出射開口に向かって合流していることを特徴とするものである。
なお、出射開口は、光導波路の光出射端面側の一端に相当する。
ここで、前記複数の光導波路の各々の少なくとも一部が前記光出射端面の法線方向に対して傾きを有していることが望ましい。
また、前記複数の光導波路の少なくともいずれかの光導波路が、前記合流している箇所における光導波時の漏れ光を抑制するための所定の曲率を有する曲線状に形成されていてもよい。
前記光導波路は光を単一横モードにて導波するものとすることができる。
本発明のスーパールミネッセントダイオードは、光導波路が、光導波方向に沿って利得層を含み、複数の光導波路が光出射端面に設けられた1つの出射開口に向かって合流する構成であり、複数の光導波路を備えて発光領域を広くしたことにより高出力な出力光を得ることができる。発光領域を増加させるために素子長を長くして1本の光導波路の長さを長くする方法と異なり、素子長を長くすることなく発光領域を増加させることができるので、コストアップさせることなく、高出力化を達成できる。また、発光領域を増加させるために光導波路の幅を広げる方法と異なり、光導波路の幅を制御することにより、単一横モードを得ることもできる。
出力光の横モードがマルチモードの場合、光源としての用途に制限が生じるが、本発明のスーパールミネッセントダイオードは光導波路の幅を単一横モード発光が可能な幅に設定すれば、単一横モードの出力光でかつ高出力化を達成することができるので光源として有用である。
複数の光導波路の少なくとも一部が光出射端面の法線方向に対して傾きを有していれば、素子の前方および後方端面が共振器面を構成することなく、レーザ発振を効果的に抑制することができる。
複数の光導波路の少なくともいずれかの光導波路が、合流している箇所における光導波時の漏れ光を抑制するための所定の曲率を有する曲線状に形成されていれば、漏れ光によるロスを抑制し光導波路で生じた光を効率よく出力光として利用することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態のスーパールミネッセントダイオード1(以下、「SLD1」という。)の概略構成を示す斜視図であり、図2は図1に示すSLD1のII-II断面図である。図1には、素子内部に設けられている光導波路20を素子上面に破線で示している。
本実施形態のSLD1は、1枚の基板1上に活性層5を含む複数の半導体層が積層されてなる素子であり、その内部に埋め込み型リッジストライプ構造により構成された光導波路20を備えており、この光導波路20は複数の光導波路21a、21bが出射端面18にある1つの出射開口22に向かって合流してなる形状である。なお、以下においては複数の光導波路21a、21bを便宜上、支流光導波路21a、21bと称する。それぞれの支流光導波路21a、21bは光出射端面18の法線方向Nに対して所定の傾きθを有する(例えばθ=7度)直線導波路である。ここで、出射開口22とは光導波路の出射端であり、半導体発光素子の発光点に相当する部分である。支流光導波路21a、21bを光出射端面18の法線方向Nに対し所定の傾きを有するように形成することにより、素子の光出射端面である前方端面18と後方端面19とにより共振器構造が形成されるのを避け、レーザ発振を効果的に抑制することができる。なお、前方端面18および後方端面19のいずれか一方に発光波長に対する無反射膜を形成すれば光導波路は必ずしも法線方向に対して傾きを有していなくてもよい。
駆動時には、複数の支流光導波路21a、21bで発光増幅された光が該導波路21a、21bを導波し合流して出射端面18に配置された1つの出射開口22から出射される。本SLD1は、1素子中の光導波路全域に亘って利得層(活性層5)を有し、複数の支流光導波路21a、21bを備えているので、同等の素子長で直線状の1本の光導波路を有する従来のSLD素子と比較して発光領域が広くなっており、出射開口22からの出力光は従来の素子と比較して高出力となる。
なお、図1に示すような光導波路20の開口22からの出力光は、支流光導波路21a、21bからの伝播光が互いに異なる2方向へ進行するが、集光レンズ付き光ファイバ(先球ファイバ)の入射端面を開口22に極近接させ、あるいは接触させて配置すれば、出力光を効率よく利用することができる。
図1に示すSLD1の具体的な層構成および作製方法を説明する。ここで、SLD1は赤外発光をする層構成を備えたものである。
半導体層の積層は、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いた結晶成長により行う。原料にはTEG(トリエチルガリウム)、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMI(トリメチルインジウム)、AsH3(アルシン)、PH3(ホスフィン)、ドーパントとしてSiH4(シラン)、DEZ(ジエチル亜鉛)を用いる。
n型GaAs基板1上に、MOCVD法により成長温度600℃〜700℃、成長圧力10.1kPaの条件下にてn型GaAsバッファ層(0.2mm厚、キャリア濃度5.0×1017cm-3)2、n型In0.49Ga0.51P下部クラッド層(2.0mm厚、キャリア濃度5.0×1017cm-3)3、ノンドープGaAs下部光ガイド層(0.034nm厚)4 、InGaAs多重量子井戸活性層(1.0mm発光)5、ノンドープGaAs上部光ガイド層(0.034nm厚)6、p型In0.49Ga0.51P上部第1クラッド層(0.2mm厚、キャリア濃度7.0×1017cm-3)7、p型 GaAsエッチングストップ層(100Å厚、キャリア濃度7.0×1017cm-3)8、p型In0.49Ga0.51P上部第2クラッド層(0.5mm厚、キャリア濃度7.0×1017cm-3)9およびp型GaAsキャップ層(0.2mm厚、キャリア濃度7.0×1017cm-3)10をこの順で1回目の成長により積層させる。その上に誘電体マスクとなるSiO2選択成長マスクを形成(図示せず)してp型GaAsキャップ層10、p型In0.49Ga0.51P上部第2クラッド層9をエッチングして、メサストライプ状のリッジ構造を形成する。このリッジ構造により光導波路20が構成される。リッジ構造は、光導波路20が2本の支流光導波路21a、21bが、出射端面に向かって合流し光出射端面18の1つの開口22に至る形状となるように形成する。なお、SiO2選択成長マスクを所望の形状に設けることにより、所望の形状の光導波路を形成することができる。
その後SiO2選択成長マスクを用いた選択成長法により、前記p型GaAsエッチングストップ層8の上、上述のメサストライプを除く領域にn型In0.49(Al0.12Ga0.88)0.51P電流ブロック層(0.5mm厚、キャリア濃度1.0×1018cm-3)11を2回目の結晶成長により形成する。さらに、SiO2選択成長マスクを除去した後に、メサストライプおよび電流ブロック層11の全面に対してp型Al0.58Ga0.42As上部第3クラッド層(1.3mm厚、キャリア濃度7.0×1017cm-3)12、p型GaAsコンタクト層(2.0mm厚、キャリア濃度1.0×1019cm-3)13を3回目の結晶成長により形成する。
その後、基板1裏面からコンタクト層13上面までの素子全体の厚みが100mm程度になるまで基板1の研磨を行い、最後にn側電極14を基板1裏面に、p側電極15をコンタクト層13上面に蒸着および熱処理により形成する。このウエハから共振器長0.50〜2.0mm程度のSLDバ−を劈開により切り出し、光出射端面となる前方端面18および後方端面19に、発光波長に対して0.5%以下の反射率を有するAR膜のコ−ティングを行う。その後劈開によりチップ化を行い、SLD1を形成する。なお、SLD1は、放熱効果を高めるため発光部のあるpn接合部を下にしてヒートシンクに実装することが望ましい。
光導波路の幅はその周りの領域との屈折率段差、導波路内およびその上下層の厚みなどに依存して変化し、出射開口22は活性層5を中心とする発光点であるが、ここでは光導波路20の幅をリッジストライプの幅で規定する。上記層構成のSLD1の場合、支流光導波路のリッジストライプ幅Wa、Wb=3〜4mm、出射端面での開口幅wを3〜4mmとする。それぞれの支流光導波路内においては単一横モードで発光光が進行し、それぞれの支流光導波路からの発光光が出射端面からそれぞれ異なる方向に出射される。なお、導波路の幅は、それぞれの光導波路の延びる方向に垂直な面内における幅をいうものとする。
なお、上記実施形態は、光ガイド層の材料組成および層厚、電流ブロック層の材料組成および層厚、クラッド層の材料組成および層厚は発光波長が単一横モードで発光する条件の1例を示したものであり、本発明は、上記実施形態の材料組成、層厚に限定されるものではない。またここでは屈折率導波型の埋込型リッジストライプ構造によるSLD素子を例として挙げたが、利得導波型の構造による光導波路を備えたものであってもよい。
図3は、本発明の第2の実施形態のスーパールミネッセントダイオード2(以下、「SLD2」という。)の斜視図である。以下においては第1の実施形態のSLD1と同様の構成には同一符号を付し詳細な説明を省略し、主としてSLD1と異なる点について説明する。
SLD2は、SLD1とその光導波路の形状が異なる。SLD2の光導波路30は、所定の曲率の曲線状に形成された2本の支流光導波路31a、31bが出射開口32に向かって合流する形状である。直線状の支流光導波路が直線的に合流する場合と比較して、光導波路が緩やかな曲線を持って合流する形状とすることにより、合流箇所における光導波時の漏れ光を抑制することができる。曲線状の支流光導波路31a、31bは特に、臨界角以上となる曲率、すなわち全反射条件を満たす状態で形成することにより、漏れ光をより効果的に抑制することができる。
図4は、本発明の第3の実施形態のスーパールミネッセントダイオード3(以下、「SLD3」という。)の斜視図である。
SLD3は、SLD1およびSLD2とその光導波路の形状が異なる。SLD3の光導波路40は、直線状の2本の支流光導波路41a、41bが素子内部で合流して一本の導波路43となり、その導波路43の一端が出射端面に延びて出射開口42を形成する形状である。SLD1においては支流光導波路が出射端面の極近くで合流する構成であったが、SLD3のように、支流光導波路が素子内部で合流していれば、支流光導波路からの光が一本の導波路43を進行中に合波され、出射開口から1つの進行方向に進む1本の出力光(単一横モードの出力光)を得ることができる。
上記実施形態においては、支流光導波路が2本のものを例に挙げたが、支流光導波路は3本以上であってもよい。3本以上支流光導波路がある場合、出射端面に向って順次合流する形態であってもよいし、出射端面近傍あるいは素子内部の一箇所で同時に合流する形態であってよい。
本発明の第1の実施形態の素子構造を示す斜視図 図1に示す素子の断面図 本発明の第2の実施形態の素子構造を示す斜視図 本発明の第3の実施形態の素子構造を示す斜視図
符号の説明
1 n型GaAs基板
2 n型GaAsバッファ層
3 n型In0.49Ga0.51P下部クラッド層
4 ノンドープGaAs下部光ガイド層
5 InGaAs多重量子井戸活性層
6 ノンドープGaAs上部光ガイド層
7 p型In0.49Ga0.51P上部第1クラッド層
8 GaAsエッチングストップ層
9 p型In0.49Ga0.51P上部第2クラッド層
10 p型GaAsキャップ層
11 n-In0.49(Al0.12Ga0.88)0.51P電流ブロック層
12 p型Al0.58Ga0.42As上部第3クラッド層
13 p-GaAsコンタクト層
14 n電極
15 p電極
18 前方端面(光出射端面)
19 後方端面
20、30、40 光導波路
21a、21b、31a、31b、41a、42b 支流光導波路
22、32、42 出射開口

Claims (4)

  1. 光導波路が、光導波方向に沿って利得層を含み、複数の光導波路が光出射端面に設けられた1つの出射開口に向かって合流していることを特徴とするスーパールミネッセントダイオード。
  2. 前記複数の光導波路の各々の少なくとも一部が前記光出射端面の法線方向に対して傾きを有していることを特徴とする請求項1記載のスーパールミネッセントダイオード。
  3. 前記複数の光導波路の少なくともいずれかの光導波路が、前記合流している箇所における光導波時の漏れ光を抑制するための所定の曲率を有する曲線状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のスーパールミネッセントダイオード。
  4. 前記光導波路が光を単一横モードにて導波するものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のスーパールミネッセントダイオード。
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