以下に本発明の樹脂組成物について具体的に説明する。
本発明で用いる(A)スチレン系樹脂とは、スチレンをはじめ、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの(b)芳香族ビニル系単量体およびこれと共重合可能な単量体を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、沈殿重合または乳化重合に供することにより得られる。
本発明における(A)スチレン系樹脂としては、(r)ゴム質重合体に(b)芳香族ビニル系単位などをグラフト重合したものは含まない。(r)ゴム質重合体に(b)芳香族ビニル系単位などをグラフト重合したものは、後述する(B)グラフト重合体に含める。
具体的には(b)芳香族ビニル系単位1〜100重量%に対して、(a)不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位0〜99重量%、(c)シアン化ビニル系単位0〜50重量%、および(d)これらと共重合可能な他のビニル系単位0〜99重量%を共重合して得られるビニル系共重合体である。
本発明における(A)スチレン系樹脂に用いる(a)不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体には特に制限はないが、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが好適である。
(a)不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられるが、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
本発明における(A)スチレン系樹脂に用いる(c)シアン化ビニル系単量体には特に制限はなく、具体例としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、なかでもアクリロニトリルが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
本発明における(A)スチレン系樹脂に用いる(d)これらと共重合可能な他のビニル系単量体としては、(a)不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、(b)芳香族ビニル系単量体、(c)シアン化ビニル系単量体と共重合可能であれば特に制限はなく、具体例としてN−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸などのカルボキシル基または無水カルボキシル基を有するビニル系単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4,4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルおよびp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどのアミノ基およびその誘導体を有するビニル系単量体、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体などが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
(A)スチレン系樹脂の特性には制限はないが、メチルエチルケトン溶媒を用いて、30℃で測定した極限粘度[η]が、0.20〜2.00dl/g、特に0.25〜1.50dl/gの範囲のものが、すぐれた耐衝撃性および成形加工性を有する樹脂組成物が得られることから好ましい。
本発明で用いる(B)グラフト重合体とは、(r)ゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体およびこれと共重合可能な単量体を加えた単量体混合物を、公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、沈殿重合または乳化重合に供することにより得られる。
そして(B)グラフト重合体とは、ビニル系単量体を含有する共重合体が(r)ゴム質重合体にグラフトした構造をとったものと、ビニル系単量体を含有する共重合体が(r)ゴム質重合体に非グラフトした構造をとったものとを含むものである。
具体的には、(r)ゴム質重合体10〜80重量%の存在下に、(a)不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体20〜90重量%、(b)芳香族ビニル系単位0〜70重量%、(c)シアン化ビニル系単位0〜50重量%、および(d)これらと共重合可能な他のビニル系単位0〜70重量%を共重合して得られるビニル系グラフト共重合体が好適である。
上記(r)ゴム質重合体には特に制限はないが、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴムなどが使用できる。これらゴム質重合体の具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体のうちでは、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体およびアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が、特に耐衝撃性の観点から好ましく用いられ、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
本発明における(B)グラフト重合体を構成する(r)ゴム質重合体の重量平均粒子径には特に制限はないが、0.05〜1.0μm、特に0.1〜0.5μmの範囲であることが好ましい。ゴム質重合体の重量平均粒子径を0.05μm〜1.0μmの範囲とすることによって、優れた耐衝撃性を発現することができる。
なお、(r)ゴム質重合体の重量平均粒子径は、「Rubber Age、Vol.88、p.484〜490、(1960)、by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
本発明における(B)グラフト重合体に用いる(a)不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体には特に制限はないが、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが好適である。
(a)不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられるが、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
本発明における(B)グラフト重合体に用いる(b)芳香族ビニル系単量体には特に制限はなく、具体例としてはスチレンをはじめ、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、なかでもスチレンおよびα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
本発明における(B)グラフト重合体に用いる(c)シアン化ビニル系単量体には特に制限はなく、具体例としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、なかでもアクリロニトリルが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
本発明における(B)グラフト重合体に用いる(d)これらと共重合可能な他のビニル系単量体としては、(a)不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、(b)芳香族ビニル系単量体、(c)シアン化ビニル系単量体と共重合可能であれば特に制限はないが、具体例としてはN−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸などのカルボキシル基または無水カルボキシル基を有するビニル系単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4,4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルおよびp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどのアミノ基およびその誘導体を有するビニル系単量体、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体などが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
本発明における(B)グラフト重合体は、(r)ゴム質重合体10〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の存在下に、(a)不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体が20〜90重量%、より好ましくは30〜70重量%、(b)芳香族ビニル系単量体が0〜70重量%、より好ましくは0〜50重量%、(c)シアン化ビニル系単量体が0〜50重量%、より好ましくは0〜30重量%、(d)これらと共重合可能な他のビニル系単量体が0〜70重量%、より好ましくは0〜50重量%を共重合することによって得られる。ゴム質重合体の割合が上記の範囲未満でも、また上記の範囲を超えても、衝撃強度や表面外観が低下する場合があるため好ましくない。
なお(B)グラフト重合体は、(r)ゴム質重合体に単量体または単量体混合物がグラフトした構造をとったグラフト共重合体の他に、グラフトしていない共重合体を含有したものである。グラフト重合体のグラフト率は特に制限がないが、耐衝撃性および光沢が均衡してすぐれる樹脂組成物を得るためには、10〜100重量%、特に20〜80重量%の範囲であることが好ましい。ここで、グラフト率は次式により算出される値である。
グラフト率(%)=[<ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量>/<グラフト共重合体のゴム含有量>]×100
グラフトしていない共重合体の特性は特に制限されないが、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度[η](30℃で測定)が、0.10〜1.00dl/g、特に0.20〜0.80dl/gの範囲であることが、すぐれた耐衝撃性の樹脂組成物を得るために好ましい条件である。
(B)グラフト重合体は、公知の重合法で得ることができる。例えば、ゴム質重合体ラテックスの存在下に単量体および連鎖移動剤の混合物と乳化剤に溶解したラジカル発生剤の溶液を連続的に重合容器に供給して乳化重合する方法などによって得ることができる。
本発明の(C)脂肪族ポリエステルとしては、特に限定されるものではなく、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体などが挙げられる。具体的には、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸またはポリカプロラクトンなどが挙げられ、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体としては、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートまたはポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエステルは、単独ないし2種以上を用いることができる。これらの脂肪族ポリエステルの中でも、ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体が好ましく、特にポリ乳酸が好ましく使用される。
ポリ乳酸としては、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とする重合体であるが、本発明の目的を損なわない範囲で、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。
かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。これらの共重合成分は、単独ないし2種以上を用いることができる。
ポリ乳酸で高い耐熱性を得るためには、乳酸成分の光学純度が高い方が好ましく、総乳酸成分の内、L体あるいはD体が80モル%以上含まれることが好ましく、さらには90モル%以上含まれることが好ましく、95モル%以上含まれることが特に好ましい。
(C)脂肪族ポリエステルの製造方法としては、既知の重合方法を用いることができ、特にポリ乳酸については、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを採用することができる。
(C)脂肪族ポリエステルの分子量や分子量分布は、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではなく、重量平均分子量としては、好ましくは1万以上、より好ましくは4万以上、特に好ましくは8万以上であるのがよい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量である。
(C)脂肪族ポリエステルの融点は、特に限定されるものではなく、90℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましい。
本発明のスチレン系樹脂組成物には、(D)脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂を含むことが必要である。
かかる(D)脂肪族ポリカーボネートとしては、特に限定されるものではないが、脂肪族ポリカーボネートとは、高分子の直鎖が脂肪族炭化水素基および炭酸基からなるものを指し、置換基や側鎖は脂肪族炭化水素でなくてもよい。具体的には、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリシクロヘキセンカーボネート、ポリスチレンカーボネートが挙げられる。
かかる(D)芳香族ポリエステルとしては、特に限定されるものではないが、芳香族ポリエステルの例としては、芳香族ジカルボン酸(あるいは、そのエステル形成性誘導体)とジオール(あるいはそのエステル形成性誘導体)とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体が挙げられる。
上記芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられ、かかる芳香族ジカルボン酸には、脂肪族ジカルボン酸や脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体を共重合することも可能である。かかる脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などが挙げられ、脂環式ジカルボン酸としては、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
上記ジオール成分としては炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、あるいは分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどおよびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
これらの重合体ないしは共重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレ−ト、ポリプロピレンテレフタレート、ポリプロピレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリプロピレン(テレフタレート/アジペート)、ポリプロピレン(テレフタレート/セバケート)、ポリプロピレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリプロピレンナフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが挙げられる。
本発明のスチレン系樹脂組成物の(A)スチレン系樹脂、(B)グラフト重合体、(C)脂肪族ポリエステル、(D)脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂との混合比は、(A)スチレン系樹脂、(B)グラフト重合体、および(C)脂肪族ポリエステル、(D)脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂の合計量に対して、(A)スチレン系樹脂10重量%以上であり、好ましくは25〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%である。また(B)グラフト重合体の添加量は5〜50重量%、好ましくは7〜50重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。さらに(C)脂肪族ポリエステルの添加量は85重量%未満、好ましくは65〜10重量%、さらに好ましくは50〜10重量%の範囲となるようにすることで、十分な耐衝撃性と耐熱性を得ることができる。さらに(D)脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂の添加量は85重量%未満、好ましくは65〜1重量%、さらに好ましくは50〜5重量%の範囲となるようにすることで、十分な耐衝撃性と耐熱性を得ることができる。
本発明のスチレン系樹脂組成物は、上記のような組成で(A)スチレン系樹脂、(B)グラフト重合体、(C)脂肪族ポリエステル、(D)脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂を混合することにより得られるが、得られたスチレン系樹脂には、(a)不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位が樹脂成分に対して1〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、(b)芳香族ビニル系単位0.1〜80重量%、好ましくは1〜70重量%、(c)シアン化ビニル系単位0〜45重量%、好ましくは0〜40重量%、(d)これらと共重合可能な他のビニル系単位0〜85重量%、好ましくは0〜80重量%の範囲となるようにすることで、十分な耐衝撃性と耐熱性を得ることができる。
本発明でのスチレン系樹脂組成物の特色は、(A)スチレン系樹脂、(C)脂肪族ポリエステル、(D)脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂からなるマトリックスと、このマトリックス中に分散する(B)グラフト重合体のドメインとからなっており、このときドメインである(B)グラフト重合体が、(C)脂肪族ポリエステル中に存在する面積割合が10〜90%の範囲で存在することが好ましい。
例えば、射出成形により得られた成形品について、オスミウムブロック染色法により、(A)スチレン系樹脂、(B)グラフト重合体を染色した後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて6000倍に拡大して断面の観察を行うことにより、(B)グラフト重合体の分散形態を確認することができる。
さらに(B)グラフト重合体の(r)ゴム質重合体にグラフト共重合する単量体混合物の組成を変更することにより、(B)グラフト重合体の分散形態を変更することができる。例えば、単量体混合物中の(a)不飽和カルボン酸アルキルエステルを多くすると、(B)グラフト重合体は(C)脂肪族ポリエステル相での分散が多くなり、(a)不飽和カルボン酸アルキルエステルが少なくなると、(B)グラフト重合体は(C)脂肪族ポリエステル相での分散が少なくなり、(A)スチレン系樹脂相での分散となることが確認できる。
ここで(B)グラフト重合体が、(C)脂肪族ポリエステル中に存在する断面写真での面積割合は10〜90%の範囲であり、好ましくは20〜85%、さらに好ましくは30〜80%の範囲である。面積割合が10〜90%の範囲にない場合は、耐衝撃性が著しく低下するため好ましくない。
(B)グラフト重合体が、(C)脂肪族ポリエステル中に存在する面積割合を測定する方法としては、上記と同様の方法で透過型電子顕微鏡にて成形品断面を撮影した。さらに4倍に拡大し、(C)脂肪族ポリエステル中の分散グラフト重合体の面積(X)と(A)スチレン系樹脂中の分散グラフト重合体の面積(Y)を該写真から切り出し重量法を用いて求め、(X)/((X)+(Y))の式に従って求めたものである。
本発明においては、耐熱性が向上するという観点から、さらに結晶核剤を含有することが好ましい。
本発明で使用する結晶核剤としては、一般にポリマーの結晶核剤として用いられるものを特に制限なく用いることができ、無機系結晶核剤および有機系結晶核剤のいずれをも使用することができる。
無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、マイカ、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などが挙げられ、耐熱性を向上させる効果が大きいという観点から、タルク、カオリナイト、モンモリロナイトおよび合成マイカが好ましい。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていることが好ましい。
無機系結晶核剤の含有量は、(C)脂肪族ポリエステル100重量部に対して、0.01〜100重量部が好ましく、0.05〜50重量部がより好ましく、0.1〜30重量部がさらに好ましい。
また、有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)などのカルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸などのポリマー、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩および2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムなどが挙げられ、耐熱性を向上させる効果が大きいという観点からは、有機カルボン酸金属塩およびカルボン酸アミドが好ましい。これらは単独ないし2種以上用いることができる。
有機系結晶核剤の含有量は、(C)脂肪族ポリエステル100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましく、0.05〜10重量部がより好ましく、0.1〜5重量部がさらに好ましい。
本発明においては、耐熱性が向上するという観点から、さらに無機系結晶核剤以外の充填剤を含有することが好ましい。
本発明で使用する無機系結晶核剤以外の充填剤としては、通常熱可塑性樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状のものを用いることができる。具体的には、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラストナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化硅素繊維及びホウ素繊維などの無機繊維状充填剤、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、亜麻、リネン、絹、マニラ麻、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙及びウールなどの有機繊維状充填剤、ガラスフレーク、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、セリサイト、ベントナイト、ドロマイト、微粉珪酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、珪酸アルミニウム、酸化珪素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土などなどの板状や粒状の充填剤が挙げられる。これらの充填剤の中では、無機繊維状充填剤が好ましく、特にガラス繊維、ワラストナイトが好ましい。また、有機繊維状充填剤の使用も好ましく、脂肪族ポリエステル樹脂の生分解性を生かすという観点から、天然繊維や再生繊維がさらに好ましい。また、配合に供する繊維状充填剤のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることがさらに好ましい。
上記の充填剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていてもよい。
充填剤の含有量は、(C)脂肪族ポリエステル100重量部に対して、0.1〜200重量部が好ましく、0.5〜100重量部がさらに好ましい。
本発明においては、耐熱性が向上するという観点から、さらに可塑剤を含有することが好ましい。
本発明で使用する可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤及びエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルやポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレートおよびグリセリンモノアセトモノモンタネートなどを挙げることができる。
多価カルボン酸系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシルアジピン酸エステルなどのセバシン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどを挙げることができる。
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物および末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などを挙げることができる。
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイルおよびパラフィン類などを挙げることができる。
本発明で使用する可塑剤としては、上記に例示したものの中でも、特にポリエステル系可塑剤及びポリアルキレングリコール系可塑剤から選択した少なくとも1種が好ましい。本発明に使用する可塑剤は、単独ないし2種以上用いることができる。
また、可塑剤の含有量は、(C)脂肪族ポリエステル100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲が好ましく、0.1〜20重量部の範囲がより好ましく、0.5〜10重量部の範囲がさらに好ましい。
本発明においては、結晶核剤と可塑剤を各々単独で用いてもよいが、両者を併用して用いることが好ましい。
本発明においては、加水分解抑制により耐熱性、耐久性が向上するという観点から、さらにカルボキシル基反応性末端封鎖剤を含有することが好ましい。
本発明で使用するカルボキシル基反応性末端封鎖剤としては、ポリマーのカルボキシル末端基を封鎖することのできる化合物であれば特に制限はなく、ポリマーのカルボキシル末端の封鎖剤として用いられているものを用いることができる。本発明においてかかるカルボキシル基反応性末端封鎖剤は、(C)脂肪族ポリエステルの末端を封鎖するのみではなく、天然由来の有機充填剤の熱分解や加水分解などで生成する乳酸やギ酸などの酸性低分子化合物のカルボキシル基も封鎖することができる。また、上記末端封鎖剤は、熱分解により酸性低分子化合物が生成する水酸基末端も封鎖できる化合物であることがさらに好ましい。
このようなカルボキシル基反応性末端封鎖剤としては、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、カルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、なかでもエポキシ化合物および/またはカルボジイミド化合物が好ましい。
カルボキシル基反応性末端封鎖剤の含有量は、(C)脂肪族ポリエステル100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲が好ましく、0.05〜5重量部の範囲がより好ましい。
カルボキシル基反応性末端封鎖剤の添加時期は、特に限定されないが、耐熱性を向上するだけでなく、機械特性や耐久性を向上できるという点で、(C)脂肪族ポリエステルと予め溶融混練した後、天然由来の有機充填剤と混練することが好ましい。
本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤など)、滑剤、離型剤、難燃剤、染料または顔料を含む着色剤、帯電防止剤、発泡剤などを添加することができる。
本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、芳香族および脂肪族ポリケトン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂など)または熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)または軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体など)などの少なくとも1種以上をさらに含有することができる。これらの樹脂を配合することで、優れた特性を有する成形品を得ることができる。
これらの添加剤は、本発明のスチレン系樹脂組成物を製造する任意の段階で配合することが可能であり、例えば、少なくとも2成分の樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、予め2成分の樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めに片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法が挙げられる。
本発明のスチレン系樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、(A)スチレン系樹脂、(B)グラフト重合体、(C)脂肪族ポリエステル、(D)脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂、および必要に応じて結晶核剤、充填剤、可塑剤、その他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、一軸または二軸押出機で、均一に溶融混練する方法や溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。
本発明において、得られたスチレン系樹脂組成物は、通常公知の射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などの任意の方法で成形することができ、あらゆる形状の成形品として広く用いることができる。成形品とは、フィルム、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出し成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、または他の材料との複合体などであり、自動車用資材、電機・電子機器用資材、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、便座、雑貨、またはその他の用途として有用である。また本成形品は、塗装、メッキ等を施して用いることもできる。
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中の部数および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
[参考例1](A)スチレン系樹脂
以下にスチレン系樹脂の調製方法を示す。なお得られたポリマーを、70℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml濃度のメチルエチルケトン溶液を調製し、30℃の温度条件下でウベローデ粘度計を用いて極限粘度を測定した。
<A−1>PSジャパン製“HF77”(ポリスチレン:標準グレード)を使用した。メチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.50dl/gであった。
<A−2>容量が20Lで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)0.05重量部をイオン交換水165重量部に溶解した溶液を添加して400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系で撹拌しながら添加し、60℃に昇温し重合を開始した。
スチレン 70重量部
アクリロニトリル 30重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部
30分かけて反応温度を65℃まで昇温したのち、120分かけて100℃まで昇温した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行なうことにより、ビーズ状のポリマーを得た。得られたスチレン系樹脂のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.53dl/gであった。
<A−3>上記<A−2>のスチレン70重量部、アクリロニトリル30重量部をメタクリル酸メチル70重量部、スチレン25重量部、アクリロニトリル5重量部に変更した以外はすべて同様に懸濁重合を行った。得られたスチレン系樹脂のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.35dl/gであった。
[参考例2](B)グラフト重合体
以下にグラフト共重合体の調製方法を示す。なおグラフト率は次の方法で求めたものである。グラフト共重合体の所定量(m)にアセトンを加え4時間還流した。この溶液を8000rpm(遠心力10,000G(約100×103 m/s2 ))30分遠心分離後、不溶分を濾過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。
グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
ここでLはグラフト共重合体のゴム含有率を意味する。
上記アセトン溶液の濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を得た。この可溶分を、70℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml濃度のメチルエチルケトン溶液を調製し、30℃の温度条件下でウベローデ粘度計を用いて極限粘度を測定した。
<B−1>
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.35μm) 50重量部
(日本ゼオン社製 Nipol LX111K) (固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、メタクリル酸メチル35重量部、スチレン12.5重量部、アクリロニトリル2.5重量部、およびt−ドデシルメルカプタン0.3重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25重量部、オレイン酸カリウム2.5重量部および純水25重量部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥してパウダー状として得た。得られたグラフト共重合体のグラフト率は40%、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.30dl/gであった。
<B−2>上記<B−1>のメタクリル酸メチル35重量部、スチレン12.5重量部、アクリロニトリル2.5重量部をメタクリル酸メチル42.5重量部、スチレン7.5重量部に変更した以外はすべて同様に乳化重合を行った。得られたグラフト共重合体のグラフト率は42%、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.28dl/gであった。
<B−3>上記<B−1>のメタクリル酸メチル35重量部、スチレン12.5重量部、アクリロニトリル2.5重量部をメタクリル酸メチル50部に変更した以外はすべて同様に乳化重合を行った。得られたグラフト共重合体のグラフト率は43%、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.27dl/gであった。
<B−4>上記<B−1>のメタクリル酸メチル35重量部、スチレン12.5重量部、アクリロニトリル2.5重量部をスチレン35重量部、アクリロニトリル15重量部に変更した以外はすべて同様に乳化重合を行った。得られたグラフト共重合体のグラフト率は38%、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.33dl/gであった。
<B−5>ポリブタジエンラテックス(平均ゴム粒子径0.09μm)75部(固形分換算)の存在下で、MAA−BA共重合体を固形分として2部添加し、室温にて30分攪拌することによって肥大化し、その後オレイン酸カリウム1.5部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部をフラスコ内に仕込み、内温を70℃に保持して、メチルメタクリレート13部およびn−ブチルアクリレート2部およびクメンハイドロキシパーオキサイド0.03部の混合物を1時間かけて滴下した後1時間保持した。その後、前段階で得られた重合体の存在下で、第2段目としてスチレン17部およびクメンハイドロキシパーオキサイド0.034部の混合物を1時間かけて滴下した後3時間保持した。しかる後、第1段目および第2段目で得られた重合体の存在下で、第3段目としてメチルメタクリレート3部およびクメンハイドロキシパーオキサイド0.003部の混合物を0.5時間かけて滴下した後1時間保持してから重合を終了した。得られたグラフト共重合体ラテックスにブチル化ハイドロキシトルエン0.5部を添加した後、硫酸で凝固した後、洗浄、乾燥してパウダー状として得た。得られたグラフト共重合体のグラフト率は26%、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.26dl/gであった。
(C)脂肪族ポリエステル
<C−1>重量平均分子量20万、D−乳酸単位1%、融点175℃のポリ−L−乳酸を使用した。
(D)脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂については、以下のものを使用した。
<D−1>東亜合成製“カルボジオール”2000(脂肪族ポリカーボネート)
<D−2>東レ製“トレコン”1100S(ポリブチレンテレフタレート)
<D−3>シェル製“コルティナ”CP509200(ポリプロピレンテレフタレート)
<D−4>三井化学社製“ハイゼックス”2200J(高密度ポリエチレン)
<D−5>住友化学社製“ノーブレン”Y101(ポリプロピレン)
<D−6>新第一塩ビ社製 “ZEST”1300Z(ポリ塩化ビニル)
結晶核剤
<E−1>富士タルク工業製”LMS300”(タルク;無機系結晶核剤)を使用した。
<E−2>日本化成製”スリパックスL”(エチレンビスラウリン酸アミド;有機系結晶核剤)を使用した。
充填剤
<F−1>日東紡績製”CS3J948”(ガラス繊維)を使用した。
[実施例1〜18、比較例1〜4]
表1、2記載の組成からなる原料をドライブレンドした後、押出温度220℃に設定した2軸スクリュー押出機(池貝工業社製PCM−30)を使用して溶融混合ペレタイズを行った。
実施例1〜14、および比較例1〜4で得られたペレットを東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度230℃、金型温度40℃の条件で射出成形することにより得られた試験片について、各特性を以下の測定方法にて評価した。実施例15〜18で得られたペレットは、成形温度230℃、金型温度80℃の条件に変更した以外はすべて同様に成形、評価をした。
[耐衝撃性]:ASTM D256−56Aに従い耐衝撃性を評価した。
[耐熱性]:ASTM D648(荷重:1.82MPa)に従い熱変形温度を測定した。
[面積割合]:射出成形により得られた成形品について、オスミウムブロック染色法により、スチレン系樹脂、グラフト重合体を染色した後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて6000倍に拡大して断面の観察、撮影した。さらに4倍に拡大し、(C)脂肪族ポリエステル中の分散グラフト重合体の面積(X)と(A)スチレン系樹脂中の分散グラフト重合体の面積(Y)を該写真から切り出し重量法を用いて求め、(X)/((X)+(Y))の式に従って面積割合を求めた。
各サンプルの耐衝撃性、耐熱性、および脂肪族ポリエステル中に存在するグラフト重合体の面積割合についての測定結果をそれぞれ表1、表2に示す。
実施例1〜14より、本発明のスチレン系樹脂組成物は、ポリ乳酸単体(比較例2)に対して、スチレン系樹脂とグラフト重合体を添加することにより、大幅に耐衝撃性を改良することができ、さらに実用的な耐熱温度を有することができる。
特に実施例3、7〜9より、グラフト重合体がポリ乳酸中に存在する割合が増すほど耐衝撃性を向上できることがわかる。
一方比較例3および4よりスチレン系樹脂が、本発明の範囲から外れた場合は、耐衝撃性は大幅に向上できるが、耐熱性が低いため、実用的でないことがわかる。