JP2007154273A - 剪断加工時の切り粉発生が少ないアルミニウム合金板およびその剪断加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】剪断加工自体を阻害せずに、容易かつ確実に、切り粉の発生を抑制することができる、6000系アルミニウム合金成形板およびその剪断加工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】厚さが5mm 以下で、質量% で、Si:0.3〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含む6000系アルミニウム合金板を、上刃と下刃との剪断により剪断加工してパネル材とするに際し、剪断加工されるアルミニウム合金板の、JIS Z2242に規定される金属材料の衝撃試験において測定されたシャルピー衝撃値を予め12〜30J/cm2 の範囲として、前記剪断加工時の切り粉発生を抑制する。
【選択図】なし
【解決手段】厚さが5mm 以下で、質量% で、Si:0.3〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含む6000系アルミニウム合金板を、上刃と下刃との剪断により剪断加工してパネル材とするに際し、剪断加工されるアルミニウム合金板の、JIS Z2242に規定される金属材料の衝撃試験において測定されたシャルピー衝撃値を予め12〜30J/cm2 の範囲として、前記剪断加工時の切り粉発生を抑制する。
【選択図】なし
Description
本発明は、剪断加工時の切り粉発生や、それによる押し込み疵が少ない、剪断加工してパネル材とされる6000系アルミニウム合金板およびそのパネル材への剪断加工方法に関するものである。本発明において、アルミニウム合金板とは、厚さが5mm 以下の薄板で、パネル材へ剪断加工される、平板状の素材板や、素材板を予め成形加工した成形板を含むものである。また、以下、アルミニウムを単にAlとも言う。
自動車パネル及びその部品、電気機器パネル並びに精密部品等に使用されるアルミニウム又はアルミニウム合金板(以下、総称してアルミニウム合金板という)は、成形前の素材板や、この素材板を成形加工した成形品の段階で、打ち抜きやシャー切断などの剪断加工されることが多い。剪断加工は、他の切断加工に比べて、簡便で生産性が高い特徴があるためである。
例えば、アルミニウム合金磁気ディスク材は、アルミニウム合金の素材圧延板を打ち抜きの剪断加工して製作される。また、例えば、アルミニウム合金自動車パネル材は、アルミニウム合金の素材圧延板をプレス成形などの成形加工後、その成形板あるいは成形品 (パネル) の縁部 (余肉部) などを除去するトリミングと称される剪断加工を施されて、製品パネルとされる。
この剪断加工においては、一般的に、成形品の形状部を下刃と押させ部材により固定し、上刃と下刃とにより成形板をシャー切断(剪断加工)して、スクラップ部が除去されている。より具体的に、図2 を用いて、この剪断加工方法を説明する。図2 は剪断加工装置の一例を示す断面図である。
図2 において、剪断上刃3 は、板押さえとなるパッド2 と協働して、剪断下刃4 に摺動するように鉛直下方に移動し、剪断上刃3 と剪断下刃4 との各切断面3b、4bの作用による剪断加工により、アルミニウム合金板1 を切断する。即ち、アルミニウム合金板1 の剪断下刃4 上からはみ出た不要部分(スクラップ部分)1aを、切断面5 においてシャー切断して除去する(1b はパネルなどの製品部) 。ここで、t はアルミニウム合金板1 の板厚、d は剪断上刃3 の下面3aと下刃4 の上面4aとの間隔である。R1は剪断上刃3 の切れ刃、R2は剪断下刃4 の切断面角部のR 乃至切断面コーナー部のR である。c は刃面4b、3bのクリアランスである。
しかしながら、上記剪断加工においては、切り粉 (摩耗粉) が発生する場合がある。発生した切り粉は,せん断後のアルミニウム合金板や成形品、及び金型に付着し、アルミニウム合金成形品の表面に押し込み疵による凹凸を形成してしまう。押し込み疵があると、せん断後の板や製品は、不良品として処分されるか、あるいは後の塗装工程で、塗装面が均一の色にならない色むら、即ち塗装むらが発生する原因となる。このため、成形品の表面を研磨するなどして凹凸を除去する手直しがおこなわれる。この場合に、手直しすべき成形品が多いと、生産性を低下させる原因となる。このため、従来よりトリミング加工時に切り粉疵が発生しないように種々の検討がなされてきた。
このための方法として、トリムライン及びこのトリムラインに交差したカットラインに沿って連続する溝部を形成し、スクラップ部を複数のプッシュバーで押す工程により、溝部を分離先端としてトリムライン及びカットラインに従ってトリミング加工を行う方法が提案されている(特許文献1参照)。これは、成形品の所定の位置に溝部を形成した後、この溝部を分離先端としてトリミング加工を行うことにより、溝部を介して成形品形状部から不要部分を確実に分離しようとするものであり、これにより成形品形状部側に、切り粉の原因になるかえりが発生するのを防止するものである。
しかしながら、アルミニウム合金板は鋼板に比してせん断後の破面における破断面の占める割合が大きい。破断面は表面の凹凸が大きいことから切れ刃により破面が擦られ、亀裂を生じ切り粉の原因となるため、鋼板に比して、アルミニウム合金板の方が切り粉は生じやすい。
剪断加工で発生した切り粉は、アルミニウム合金板表面や金型に付着して、アルミニウム合金板表面の押し込み疵の原因となり、製品不良の一因となる。
このため、剪断加工自体を阻害せずに、切り粉の発生を確実に抑制しうるアルミニウム合金板および剪断加工方法が求められていた。
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであって、剪断加工自体を阻害せずに、容易かつ確実に、切り粉の発生を抑制することができる6000系アルミニウム合金板およびそのパネル材への剪断加工方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の、剪断加工時の切り粉発生が少ないアルミニウム合金板の要旨は、厚さが5mm 以下で、質量% で、Si:0.3〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、剪断加工してパネル材とされる6000系アルミニウム合金板であって、JIS Z2242に規定される金属材料の衝撃試験において測定されたシャルピー衝撃値を予め12〜30J/cm2 の範囲とする。
また、上記の目的を達成するための、本発明アルミニウム合金板の剪断加工方法の要旨は、厚さが5mm 以下で、質量% で、Si:0.3〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含む6000系アルミニウム合金板を、剪断加工してパネル材とするに際し、剪断加工されるアルミニウム合金板の、JIS Z2242に規定される金属材料の衝撃試験において測定されたシャルピー衝撃値を予め12〜30J/cm2 の範囲として、前記剪断加工時の切り粉発生を抑制する。
また、上記の目的を達成するための、本発明アルミニウム合金板の剪断加工方法の要旨は、厚さが5mm 以下で、質量% で、Si:0.3〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含む6000系アルミニウム合金板を、剪断加工してパネル材とするに際し、剪断加工されるアルミニウム合金板の、JIS Z2242に規定される金属材料の衝撃試験において測定されたシャルピー衝撃値を予め12〜30J/cm2 の範囲として、前記剪断加工時の切り粉発生を抑制する。
ここで、剪断加工時の切り粉発生をより確実に抑制するために、上記6000系アルミニウム合金板およびその剪断加工方法において、好ましくは、前記金属材料の衝撃試験において測定された延性破面率を予め25〜50%の範囲とする。また、前記アルミニウム合金板が、自動車などのパネルとして必要な、成形性などの諸特性を有するために、上記Si、Mg以外に、更に、Fe:1.5% 以下、Mn:1.0% 以下、 Cr:0.5%以下、Zr:0.5% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.2% 以下、Zn=1.5% 以下、Cu:1.5% 以下とし、残部がAlおよび不純物からなることが好ましい。更に、前記パネル材の用途が自動車パネルであることが好ましい。
アルミニウム合金板は鋼板に比して硬度が低い。このため、アルミニウム合金板は、上刃と下刃との剪断による加工において、剪断刃のより少ない食い込み量で、板の切断部に亀裂が入りやすく、破断後の破面における破断面が占める割合が大きいことから、板の切断面が切り粉の出やすい形状になりすい。
このため、剪断加工中に、下方の最下点に向かう上刃の切断面が、アルミニウム合金板側の切断面を擦る形となりやすい。このため、擦られたアルミニウム合金板側の切断面における亀裂発生を助長し、切り粉の発生をより多くすることにつながる。
本発明者らは、アルミニウム合金板の靱性と剪断加工における切り粉の発生とが相関していることを知見した。即ち、靱性が低すぎるアルミニウム合金板は、剪断加工の際の亀裂の進展が速く、刃の少ない食い込み量で剪断に至り、下方の最下点に向かう上刃の切断面が、この剪断後のアルミニウム合金板端面をこすることで、切り粉の発生をより多くすることにつながる。
これに対して、アルミニウム合金板の靱性を一定の範囲で高めれば、剪断加工の際の亀裂の進展が遅く、剪断に至る刃の食い込み量が多くなり、上刃の切断面が、アルミニウム合金板端面をこすることが防止され、切り粉の発生を抑制できる(剪断加工時の切り粉発生を少なくできる)。
このアルミニウム合金板の靱性は、JIS Z2242に規定される金属材料の衝撃試験において測定された、このアルミニウム合金板のシャルピー衝撃値と良く対応する。そして、このアルミニウム合金板の靱性は、上記アルミニウム合金板のシャルピー衝撃値に加えて、あるいは、このシャルピー衝撃値に代えて、前記金属材料の衝撃試験において測定された、延性破面率の値ともよく対応する。
以下に、本発明の、剪断加工時の切り粉発生の抑制に優れたアルミニウム合金板およびその剪断加工方法の実施態様につき具体的に説明する。
(シャルピー衝撃値)
本発明で規定するアルミニウム合金板のシャルピー衝撃値は、JIS Z2242に規定される金属材料の衝撃試験方法によって、半径2mmの衝撃刃を用いて試験片を破断するのに要した吸収エネルギーを、試験片ノッチ部の原断面積(元断面積)で除した値、J/cm2 として測定される。この際、試験片は深さ2mmのVノッチ試験片を用い、試験は常温で行なう。また、シャルピー衝撃試験機はJIS B 7722に適合するものを用いる。この他のシャルピー衝撃値測定条件の細目は、JIS Z2242の規定に従う。
本発明で規定するアルミニウム合金板のシャルピー衝撃値は、JIS Z2242に規定される金属材料の衝撃試験方法によって、半径2mmの衝撃刃を用いて試験片を破断するのに要した吸収エネルギーを、試験片ノッチ部の原断面積(元断面積)で除した値、J/cm2 として測定される。この際、試験片は深さ2mmのVノッチ試験片を用い、試験は常温で行なう。また、シャルピー衝撃試験機はJIS B 7722に適合するものを用いる。この他のシャルピー衝撃値測定条件の細目は、JIS Z2242の規定に従う。
本発明では、剪断加工されるアルミニウム合金板の上記シャルピー衝撃値を、予め12〜30J/cm2 の範囲として、前記剪断加工時の切り粉発生を抑制する。これによって、剪断加工の際の亀裂の進展が遅く、剪断に至る刃の食い込み量が多くなり、上刃の切断面が、アルミニウム合金板端面をこすることが防止され、切り粉の発生を抑制できる。
上記シャルピー衝撃値が12J/cm2 未満では、アルミニウム合金板の靱性が低すぎる。このため、前記した通り、アルミニウム合金板の剪断加工の際の亀裂の進展が速くなり、刃の少ない食い込み量で剪断に至る。このため、下方の最下点に向かう上刃の切断面が、この剪断後のアルミニウム合金板端面をこすりやすくなり、切り粉の発生がより多くなる。
上記シャルピー衝撃値が30J/cm2 を越えた場合でも、アルミニウム合金板の靱性が高過ぎ、却って切り粉の発生がより多くなる。剪断加工の際の亀裂の進展が遅くなりすぎ、剪断に至る刃の食い込み量が多くなり過ぎて、これによる切り粉の発生がより多くなるからである。また、ベークハード性などが低下し、パネルとして必要な強度が確保できなくなる。
ここで、剪断加工時の切り粉発生をより確実に抑制するために、好ましくは、前記金属材料の衝撃試験において測定された、アルミニウム合金板の延性破面率を予め25〜50%の範囲とする。
本発明で規定する延性破面率の測定方法も、JIS Z2242に記載されている。即ち、JIS Z2242に規定される金属材料の衝撃試験による、上記試験片の破断面(破面)を観察して、延性破面率を求める。この破面観察において、延性破面率S(%)は、延性破面の面積F(mm2 )の、破面の全面積A(mm2 )に対する割合として、(F/A)×100で算出される。
ここで、延性破面は、図1(JIS Z2242に記載の図1と同じ)に模式的に記載されている通り、試験片の破面周縁部に観察される、ディンプルと呼ばれる網目状の模様の破面である。この延性破面は、破面中央部に観察される細い直線状の筋で区切られた滑らかな平面の破面を持つ脆性(ぜい性)破面と、明確に識別される。また、ストライエーションと呼ばれる細かい縞模様が観察されるのが特徴である疲労破面や、細かい凹凸が表面に散在する結晶粒界を破面とするクリープ破面などとも明確に識別される。
本発明では、剪断加工されるアルミニウム合金板の上記延性破面率を25〜50%の範囲として、前記剪断加工時の切り粉発生を抑制する。これによって、上記シャルピー衝撃値(靱性)と同様に、剪断加工の際の亀裂の進展が遅く、剪断に至る刃の食い込み量が多くなり、上刃の切断面が、アルミニウム合金板端面をこすることが防止され、切り粉の発生を抑制できる。
上記延性破面率が25%未満では、アルミニウム合金板の靱性が低すぎる。このため、前記した通り、アルミニウム合金板の剪断加工の際の亀裂の進展が速くなり、刃の少ない食い込み量で剪断に至る。このため、下方の最下点に向かう上刃の切断面が、この剪断後のアルミニウム合金板端面をこすりやすくなり、切り粉の発生がより多くなる。
上記延性破面率が50%を越えた場合でも、アルミニウム合金板の靱性が高過ぎ、却って切り粉の発生がより多くなる。前記した通り、剪断加工の際の亀裂の進展が遅くなりすぎ、剪断に至る刃の食い込み量が多くなり過ぎて、これによる切り粉の発生がより多くなるからである。また、ベークハード性などが低下し、パネルとして必要な強度が確保できなくなる。
(シャルピー衝撃値、延性破面率の制御)
アルミニウム合金板のシャルピー衝撃値、延性破面率の制御、調整は、最も簡便には、アルミニウム合金板製造後の調質処理条件の制御によって行なう。即ち、通常の熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理によってアルミニウム合金板を製造後に、シャルピー衝撃値、延性破面率を上げるためには、溶体化処理後に自然時効させるか、焼鈍処理を行う。また、シャルピー衝撃値、延性破面率を下げるためには、溶体化処理後に人工時効処理を行う。
アルミニウム合金板のシャルピー衝撃値、延性破面率の制御、調整は、最も簡便には、アルミニウム合金板製造後の調質処理条件の制御によって行なう。即ち、通常の熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理によってアルミニウム合金板を製造後に、シャルピー衝撃値、延性破面率を上げるためには、溶体化処理後に自然時効させるか、焼鈍処理を行う。また、シャルピー衝撃値、延性破面率を下げるためには、溶体化処理後に人工時効処理を行う。
(化学成分組成)
本発明6000系Al合金板の化学成分組成について説明する。本発明が対象とする6000系Al合金板は、自動車パネル材などとして、優れた成形性やBH性、強度、溶接性、耐食性などの諸特性が要求される。このような要求を満足するために、Al合金板の基本組成は、質量% で、Si:0.3〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、残部がAlおよび不純物からなるものとする。
本発明6000系Al合金板の化学成分組成について説明する。本発明が対象とする6000系Al合金板は、自動車パネル材などとして、優れた成形性やBH性、強度、溶接性、耐食性などの諸特性が要求される。このような要求を満足するために、Al合金板の基本組成は、質量% で、Si:0.3〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、残部がAlおよび不純物からなるものとする。
なお、その他の元素は、AA乃至JIS 規格などに沿った各許容量とする。その他の合金元素とは、Fe:1.5% 以下、Mn:1.0% 以下、 Cr:0.5%以下、Zr:0.5% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.2% 以下、Zn=1.5% 以下、Cu:1.5% 以下である。
上記合金元素以外のその他の合金元素やガス成分も不純物である。しかし、リサイクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系合金やその他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解原料として使用して、本発明Al合金組成を溶製する場合には、これら他の合金元素は必然的に含まれることとなる。したがって、本発明では、目的とする本発明効果を阻害しない範囲で、これら不純物元素が含有されることを許容する。
上記6000系Al合金における、各元素の好ましい含有範囲と意義、あるいは許容量について以下に説明する。
Si:0.3〜2.5%。
SiはMgとともに、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記低温での人工時効処理時に、GPゾーンなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、自動車パネルとして必要な、例えば170MPa以上の必要強度を得るための必須の元素である。更に、本発明6000系Al合金板にあって、曲げ性を含めた成形性などの諸特性を兼備させるための最重要元素である。
Si:0.3〜2.5%。
SiはMgとともに、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記低温での人工時効処理時に、GPゾーンなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、自動車パネルとして必要な、例えば170MPa以上の必要強度を得るための必須の元素である。更に、本発明6000系Al合金板にあって、曲げ性を含めた成形性などの諸特性を兼備させるための最重要元素である。
また、パネルへの成形後の低温塗装焼き付け処理後(2% ストレッチ付与後170 ℃×20分の低温時効処理時) の耐力を高くする、優れた低温時効硬化能を発揮させるためには、Si/Mg を質量比で1.0 以上とし、SiをMgに対し過剰に含有させた過剰Si型6000系Al合金組成とすることが好ましい。
Si量が0.3%未満では、前記時効硬化能、更には、自動車パネル用途などに要求される、伸びフランジ性及び曲げ性、あるいはプレス成形性などの諸特性を兼備することができない。一方、Siが2.5%を越えて含有されると、粗大な化合物が増加して破壊の起点になり、成形性を低下させる。更に、溶接性をも著しく阻害する。したがって、Siは0.3 〜2.5%の範囲とする。
Mg:0.1〜3.0%。
Mgは、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記人工時効処理時に、SiとともにGPゾーンなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、パネルとして、例えば170MPa以上の必要強度を得、更に、曲げ性を含めた成形性などの諸特性を得るための必須の元素である。
Mgは、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記人工時効処理時に、SiとともにGPゾーンなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、パネルとして、例えば170MPa以上の必要強度を得、更に、曲げ性を含めた成形性などの諸特性を得るための必須の元素である。
Mgの0.1%未満の含有では、絶対量が不足するため、人工時効処理時に前記化合物相を形成できず、時効硬化能を発揮できない。このためパネルとして必要な170MPa以上の必要強度が得られない。
一方、Mgが3.0%を越えて含有されると、却って、粗大な化合物が増加して破壊の起点になり、曲げ性を含めた成形性などの諸特性を低下させる。したがって、Mgの含有量は、0.1 〜3.0%の範囲とする。
Fe:1.5% 以下、Mn:1.0% 以下、 Cr:0.5%以下、Zr:0.5% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.2% 以下、Zn=1.5% 以下。
これらの元素は、スクラップなど溶解原料などから混入しやすい元素であるが、一方で、結晶粒の微細化効果もあり、成形性の向上効果もある。但し、含有量が多すぎると、粗大な化合物を形成し、それが破壊の起点として作用するため、成形性が劣化する。したがって、各々、上記上限までの含有は許容する。
これらの元素は、スクラップなど溶解原料などから混入しやすい元素であるが、一方で、結晶粒の微細化効果もあり、成形性の向上効果もある。但し、含有量が多すぎると、粗大な化合物を形成し、それが破壊の起点として作用するため、成形性が劣化する。したがって、各々、上記上限までの含有は許容する。
(製造方法)
次ぎに、本発明Al合金板の製造条件について以下に説明する。本発明では、溶体化処理までは、鋳造→均質化熱処理→熱間圧延→冷間圧延→溶体化処理の通常のAl合金板の各工程を経て、パネル材用の、5mm 以下の薄板に製造される。また、前記した通り、アルミニウム合金板のシャルピー衝撃値、延性破面率の制御、調整は、アルミニウム合金板製造後の調質処理条件の制御によって行なう。
次ぎに、本発明Al合金板の製造条件について以下に説明する。本発明では、溶体化処理までは、鋳造→均質化熱処理→熱間圧延→冷間圧延→溶体化処理の通常のAl合金板の各工程を経て、パネル材用の、5mm 以下の薄板に製造される。また、前記した通り、アルミニウム合金板のシャルピー衝撃値、延性破面率の制御、調整は、アルミニウム合金板製造後の調質処理条件の制御によって行なう。
但し、上記鋳造〜溶体化処理の各工程において、アルミニウム合金板の成形性などパネルとしての要求特性を確保するために必要な靱性の確保自体は必要である。
先ず、溶解、鋳造工程では、上記6000系成分規格範囲内に溶解調整されたAl合金溶湯を、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
(均質化熱処理)
このAl合金鋳塊に500 ℃以上融点未満の温度で均質化熱処理を施す。この均質化熱処理は組織の均質化、すなわち、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくすことを目的とする。熱処理温度が500℃より低いと鋳塊の粒内偏析を十分になくすことができず、これが破壊の起点として作用するため、靱性が劣化する。また、熱処理時間は、鋳塊の厚みにもよるが、2hr 以上とすることが好ましい。2hr より短いと鋳塊の粒内偏析を十分になくすことができず、これが破壊の起点として作用するため、靱性が劣化する可能性がある。
このAl合金鋳塊に500 ℃以上融点未満の温度で均質化熱処理を施す。この均質化熱処理は組織の均質化、すなわち、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくすことを目的とする。熱処理温度が500℃より低いと鋳塊の粒内偏析を十分になくすことができず、これが破壊の起点として作用するため、靱性が劣化する。また、熱処理時間は、鋳塊の厚みにもよるが、2hr 以上とすることが好ましい。2hr より短いと鋳塊の粒内偏析を十分になくすことができず、これが破壊の起点として作用するため、靱性が劣化する可能性がある。
この均質化熱処理(1回目の均質化熱処理) 後に、一旦200 ℃以下の温度まで冷却して390 〜480 ℃の温度まで再加熱する均質化熱処理(2回均熱) を行なうか、または、前記均質化熱処理後に、390 〜480 ℃の温度まで冷却し、いずれもこの温度範囲で保持する均質化熱処理(2段均熱) を行なった後に、熱間圧延を開始する。これによって、1 回のみの均質化熱処理に比して、靱性がより向上する。
これら2 回均熱あるいは2 段均熱のいずれの場合においても、上記1 回目および、上記2 回目あるいは2 段目の均質化熱処理における、前記各温度範囲での保持によって、熱間圧延前の組織が最適化される。この保持温度が低いと、粒界における析出相の形成が促進され、靱性が劣化する。一方、保持温度が高過ぎると、強度が大きくなりすぎ、靱性が低下する。
上記1 回目および、上記2 回目あるいは2 段目の均質化熱処理における、保持時間は 2〜15hrを目安とする。保持時間が2hr より短いと、強度が大きくなりすぎ、伸び特性が低下する為に、靱性も低下する可能性がある。一方、保持時間が15hrより長いと、粒界における析出相の形成が促進され、却って靱性が劣化する可能性がある。
(熱間圧延)
これらの均質化熱処理後に、390 〜480 ℃の温度で熱間圧延を開始する。熱間圧延開始温度が480 ℃を超えた場合、再結晶が生じて熱間圧延時に粗大な再結晶粒が生成し、靱性が劣化する。また、熱間圧延開始温度が390 ℃未満の場合、熱間圧延自体が困難となる。
これらの均質化熱処理後に、390 〜480 ℃の温度で熱間圧延を開始する。熱間圧延開始温度が480 ℃を超えた場合、再結晶が生じて熱間圧延時に粗大な再結晶粒が生成し、靱性が劣化する。また、熱間圧延開始温度が390 ℃未満の場合、熱間圧延自体が困難となる。
更に、熱間圧延の終了温度を170 〜300 ℃として、コイル状、板状などの熱延板を製作する。熱間圧延終了温度が300 ℃を超えた場合、SiとMgとの質量比Si/Mg が1 以上であるような過剰Si型の6000系Al合金板は再結晶しやすく、靱性が劣化する。熱間圧延の終了温度が170 ℃未満では、熱間圧延自体が困難となる。
(熱延板の焼鈍)
この熱延板を、冷間圧延前に、470 ℃以上の温度で焼鈍 (荒鈍) を施した後に、100 ℃/s以上の速度で冷却する処理を行なう。荒鈍温度が470 ℃より低いと、粒界における析出相の形成が促進され、靱性が劣化する。また、上記冷却速度が100 ℃/sより小さいと、冷却過程で粒界における析出相の形成が促進され、靱性が劣化する。
この熱延板を、冷間圧延前に、470 ℃以上の温度で焼鈍 (荒鈍) を施した後に、100 ℃/s以上の速度で冷却する処理を行なう。荒鈍温度が470 ℃より低いと、粒界における析出相の形成が促進され、靱性が劣化する。また、上記冷却速度が100 ℃/sより小さいと、冷却過程で粒界における析出相の形成が促進され、靱性が劣化する。
靱性を向上させるためには、前記2 回均熱あるいは2 段均熱とともに、この条件下での荒鈍工程を入れることが好ましい。
(冷間圧延)
この荒鈍後に、引き続き冷間圧延を行なって、所望の板厚の冷延板 (コイルも含む) を製作する。
この荒鈍後に、引き続き冷間圧延を行なって、所望の板厚の冷延板 (コイルも含む) を製作する。
(溶体化および焼入れ処理)
冷延後の板は、調質処理として、必須に溶体化および焼入れ処理されてAl合金板とされる。この溶体化および焼入れ処理は、6000系Al合金板の靱性を向上させるために重要な工程である。また、塗装焼き付け硬化処理などの人工時効硬化処理により、GPゾーンなどの化合物相を十分粒内に析出させるためにも重要な工程である。
冷延後の板は、調質処理として、必須に溶体化および焼入れ処理されてAl合金板とされる。この溶体化および焼入れ処理は、6000系Al合金板の靱性を向上させるために重要な工程である。また、塗装焼き付け硬化処理などの人工時効硬化処理により、GPゾーンなどの化合物相を十分粒内に析出させるためにも重要な工程である。
この効果を出すために、本発明では、溶体化処理における化合物の固溶量を増大させることが必要である。そして、この化合物の固溶量を増すために、本発明では、冷延板を500 ℃以上の比較的高い温度で溶体化処理する。溶体化処理温度が500 ℃未満の場合、溶体化処理直後の焼入れ処理において、塗装焼き付け硬化処理などの人工時効硬化処理によりGPゾーンなどの化合物相を十分粒内に析出させることはできる。しかし、本発明のように、靱性を向上させることは困難となる。
溶体化処理後の焼入れの際には、冷却速度は50℃/ 分以上の急冷とすることが好ましい。冷却速度が50℃/ 分未満の遅い場合には、焼入れ後の強度が低くなり、時効硬化能が不足し、前記低温短時間の低温での人工時効処理により135MPa以上の高耐力を確保できない。
また、粒界上にSi、Mg2Si などが析出しやすくなり、割れの起点となり易く、Al合金板の靱性が低下する。この冷却速度を確保するために、焼入れ処理は、ファンなどの空冷でもよいが冷却速度が遅くなる可能性が大きく、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段から選択して行うことが好ましい。
本発明では、成形パネルの塗装焼き付け工程などの人工時効硬化処理での時効硬化性を高めるため、溶体化焼入れ処理後のクラスターの生成を抑制し、GPゾーンの析出を促進するために、予備時効処理をしても良い。この予備時効処理は、50〜100 ℃、好ましくは60〜90℃の温度範囲に、1 〜24時間の必要時間保持することが好ましい。また、予備時効処理後の冷却速度は、1 ℃/hr 以下であることが好ましい。
この予備時効処理として、溶体化処理後の焼入れ終了温度を50〜100 ℃と高くした後に、直ちに再加熱乃至そのまま保持して行う。あるいは、溶体化処理後常温までの焼入れ処理の後に、直ちに50〜100 ℃に再加熱して行う。
また、連続溶体化焼入れ処理の場合には、前記予備時効の温度範囲で焼入れ処理を終了し、そのままの高温でコイルに巻き取るなどして行う。なお、コイルに巻き取る前に再加熱しても、巻き取り後に保温しても良い。また、常温までの焼入れ処理の後に、前記温度範囲に再加熱して高温で巻き取るなどしてもよい。
(調質処理条件)
前記した通り、アルミニウム合金板のシャルピー衝撃値、延性破面率の制御、調整は、アルミニウム合金板製造後の調質処理条件の制御によって行なう。シャルピー衝撃値、延性破面率を上げるためには、溶体化および焼入れ処理後に、剪断加工までの一定期間自然時効させるか、または焼鈍処理を行う。また、シャルピー衝撃値、延性破面率を下げるためには、溶体化および焼入れ処理後に人工時効処理を行う。これら自然時効時間、焼鈍処理の温度、時間、人工時効処理の温度、時間を調整することによって、アルミニウム合金板のシャルピー衝撃値、延性破面率を制御、調整する。
前記した通り、アルミニウム合金板のシャルピー衝撃値、延性破面率の制御、調整は、アルミニウム合金板製造後の調質処理条件の制御によって行なう。シャルピー衝撃値、延性破面率を上げるためには、溶体化および焼入れ処理後に、剪断加工までの一定期間自然時効させるか、または焼鈍処理を行う。また、シャルピー衝撃値、延性破面率を下げるためには、溶体化および焼入れ処理後に人工時効処理を行う。これら自然時効時間、焼鈍処理の温度、時間、人工時効処理の温度、時間を調整することによって、アルミニウム合金板のシャルピー衝撃値、延性破面率を制御、調整する。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
次に、本発明の実施例を説明する。表1 に示す各組成の6000系Al合金をDC鋳造によって鋳造した400mm 厚の鋳塊を、表2 に示す種々の条件で、均質化熱処理 (均熱とも略記) および熱間圧延を行った。得られた各熱延板について、表2 に示す種々の条件で、荒鈍、冷間圧延、溶体化および焼入れ処理を行い、厚さ1mmのAl合金板を得た。
なお、均熱処理は、1 回のみの均熱の他に、表2 に示す加熱温度と保持時間の1 回目の均熱の後に、一旦室温まで冷却した後、更に表2 に示す加熱温度と保持時間の2 回目の均熱を行なう2 回均熱と、表2 に示す加熱温度と保持時間の1 回目の均熱の後に、更に表2 に示す温度まで冷却して保持を行なって、2 回目の均熱を行なう2 段均熱との3種類とした。
この均熱後に、表2 に示す各開始温度と各終了温度で、厚さ5mmtまで熱間圧延した。この熱延板を、表2 に示す温度と冷却速度で荒鈍した後、冷間圧延を行い、厚さ1.0mmtの冷延板を得た。そして、この冷延板を、連続式の熱処理設備で、各例とも共通して、各溶体化処理温度に到達した時点で (保持時間 0秒) 、直ちに室温まで200 ℃/ 秒の急冷にて焼入れ、この焼入れ後直ちに、70℃の温度で1 時間保持する予備時効処理を行った (保持後は冷却速度0.6 ℃/hr で徐冷) 。
これら溶体化処理後の各Al合金板から供試板 (ブランク) を切り出し、圧延方向に対する角度が45°方向の、引張強度 (MPa)、0.2%耐力 (MPa)、伸び(%) 、r 値、を測定した。機械的な特性は、圧延方向に対する角度が45°方向を長手方向とするJIS 5 号引張試験片を採取し、JIS Z 2201にしたがって行った。クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。各サンプルについて3回の試験を行い、その平均値を採用した。これらの測定結果を表3 に各々示す。
更に、これら溶体化処理後の各Al合金板に対し、表3 に示すような各条件で調質処理を行い、これら各Al合金板のシャルピー衝撃値、延性破面率を変化させた上で、各々測定した。シャルピー衝撃値と延性破面率とは、前記したJIS Z2242に規定される金属材料の衝撃試験方法によって、測定した。これらの測定結果を表3 に各々示す。
そして、これらシャルピー衝撃値、延性破面率を変化させた各アルミニウム合金板を、前記図2 に示した剪断加工装置乃至金型を用いて、下記条件にて剪断加工した場合の、剪断刃食込量、切り粉発生量、また、カエリの大きさを試験、調査した。
(剪断加工条件)
剪断する板部位の表面と剪断上刃3 の移動方向とのなす角度 (剪断角度):90°( 板1 は、その表面に垂直の方向に剪断される) 。
上刃3 、下刃4:成品部1bの外縁形状に対応した切断面の平面形状を有し、JIS FCD-55の金型用鋼から構成。
R1 (上型3 の切れ刃R)、R2 (下型4 の切れ刃R): 各々100 〜150 μm の範囲。各刃の切断面を目立て後、サンドペーパなどの研磨具により研磨。
刃面4b、3bのクリアランスc:板厚の10% である0.1mm 。
板押えパッド2:成形部1bの概ね全面を押さえる面積を有する矩形状とし、厚さは30mm。硬度:40Hv の底面2aを含めて一体のウレタン樹脂製のパッド。
剪断する板部位の表面と剪断上刃3 の移動方向とのなす角度 (剪断角度):90°( 板1 は、その表面に垂直の方向に剪断される) 。
上刃3 、下刃4:成品部1bの外縁形状に対応した切断面の平面形状を有し、JIS FCD-55の金型用鋼から構成。
R1 (上型3 の切れ刃R)、R2 (下型4 の切れ刃R): 各々100 〜150 μm の範囲。各刃の切断面を目立て後、サンドペーパなどの研磨具により研磨。
刃面4b、3bのクリアランスc:板厚の10% である0.1mm 。
板押えパッド2:成形部1bの概ね全面を押さえる面積を有する矩形状とし、厚さは30mm。硬度:40Hv の底面2aを含めて一体のウレタン樹脂製のパッド。
上記各同一条件(1条件) について、各々10個(10 回) の剪断加工試験を実施し、剪断加工加工した際の、板切断面5 に亀裂が入った時の剪断刃の食い込み量(mm)と、剪断1ショットにつき、剪断される板の剪断長さ1m当たりに発生する切り粉発生量(mg/m ・ショット) との平均を求めた。切り粉は、切断時に切断面を吸引して収集し、重量を測定した。切り粉発生量が0.2mg/m ・ショット以上のものは不合格とした。
カエリの大きさ(mm)は、剪断後の板を樹脂埋めし、この剪断後の板断面を研磨した状態で光学顕微鏡で観察し、発生したカエリの大きさを測定した。カエリが0.25mm以上 (板厚の10% 以上) のものは不合格とした。
表2 に示す発明例1 〜5 は、発明範囲内の化学成分組成を有し、好ましい製造条件で製造されている。この結果、表3 に示す通り、r 値を含めて、パネルへのプレス成形に有利な、良好な機械的性質を有している。にもかかわらず、表3 に示すような各条件で調質処理を行い、シャルピー衝撃値と延性破面率とを変化させた場合、同じ表2 の発明例でも、切り粉発生量が異なる。
即ち、表3 における、表2での同じ発明例同士の比較において、表3 における発明例11は、シャルピー衝撃値が12〜30J/cm2 の範囲内であり、延性破面率が25〜50%の範囲内である。この結果、発明例11は、後述する比較例に比して、剪断刃の食い込み量(mm)が大きく、切り粉発生量(mg/m2) も少なく、カエリも小さくなっている。
これに対して、表3の比較例16、17は、表2 における同じ発明例1 であるにもかかわらず、シャルピー衝撃値と延性破面率が範囲外である。このため、表3 における発明例11に比して、比較例16、17は、切り粉発生量やカエリの大きさが多い。
これは、表3 における発明例12と比較例18 (表2 における発明例2 同士) との比較、表3 における発明例13と比較例19 (表2 における発明例3 同士) との比較、表3 における発明例14と比較例20 (表2 における発明例4 同士) との比較、表3 における発明例15と比較例21 (表2 における発明例5 同士) との比較、でも同じことが言える。
一方、表2 に示す比較例6 〜10は、発明範囲外の化学成分組成を有するか、好ましい製造条件外で製造されている。この結果、表3 に示す通り、r 値を含めて、パネルへのプレス成形に不利な機械的性質を有している。にもかかわらず、表3 に示すような各条件で調質処理を行い、シャルピー衝撃値と延性破面率とを発明範囲内とした場合、切り粉発生量では、表3 における発明例並に、少なくなっている。
以上の結果から、プレス成形性を規定する機械的な性質如何にかかわらず、言い換えると、プレス成形性を規定する機械的な性質からは独立して、Al合金板の靱性と、剪断加工における切り粉発生量やカエリの大きさとが相関していることが分かる。
以上詳述したように、本発明によれば、剪断加工自体を阻害せずに、容易かつ確実に、切り粉の発生を抑制することができる(剪断加工時の切り粉発生が少ない)、アルミニウム合金板およびその剪断加工方法を提供することができる。したがって、アルミニウム合金板の剪断加工を必要とする、自動車パネル及びその部品、電気機器パネル並びに精密部品等の製造工程に適用できる。
1、7;アルミニウム合金板、2、8;板押さえ部材、3、9;剪断上刃、
4、10;剪断下刃、5;板切断面、6;支持枠、
d ;上刃の下面と下刃の上面との間隔、t;アルミニウム合金板の板厚、
R1;上型3 の切れ刃R 、R2;下型4 の切れ刃R 、
c ;上型3 と下型4 とのクリアランス
4、10;剪断下刃、5;板切断面、6;支持枠、
d ;上刃の下面と下刃の上面との間隔、t;アルミニウム合金板の板厚、
R1;上型3 の切れ刃R 、R2;下型4 の切れ刃R 、
c ;上型3 と下型4 とのクリアランス
Claims (8)
- 厚さが5mm 以下で、質量% で、Si:0.3〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、剪断加工してパネル材とされる6000系アルミニウム合金板であって、JIS Z2242に規定される金属材料の衝撃試験において測定されたシャルピー衝撃値を予め12〜30J/cm2 の範囲としたことを特徴とする、剪断加工時の切り粉発生が少ないアルミニウム合金板。
- 前記金属材料の衝撃試験において測定された延性破面率が予め25〜50%の範囲である請求項1に記載のアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板が、更に、Fe:1.5% 以下、Mn:1.0% 以下、 Cr:0.5%以下、Zr:0.5% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.2% 以下、Zn=1.5% 以下、Cu:1.5% 以下とし、残部がAlおよび不純物からなる、請求項1または2に記載のアルミニウム合金板。
- 前記パネル材が自動車パネルである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板。
- 厚さが5mm 以下で、質量% で、Si:0.3〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含む6000系アルミニウム合金板を、剪断加工してパネル材とするに際し、剪断加工されるアルミニウム合金板の、JIS Z2242に規定される金属材料の衝撃試験において測定されたシャルピー衝撃値を予め12〜30J/cm2 の範囲として、前記剪断加工時の切り粉発生を抑制することを特徴とするアルミニウム合金板の剪断加工方法。
- 前記金属材料の衝撃試験において測定された延性破面率を予め25〜50%の範囲とする請求項5に記載のアルミニウム合金板の剪断加工方法。
- 前記アルミニウム合金板が、更に、Fe:1.5% 以下、Mn:1.0% 以下、 Cr:0.5%以下、Zr:0.5% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.2% 以下、Zn=1.5% 以下、Cu:1.5% 以下とし、残部がAlおよび不純物からなる、請求項5または6に記載のアルミニウム合金板の剪断加工方法。
- 前記パネル材が自動車パネルである請求項5乃至7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板の剪断加工方法。
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JP2005352607A JP2007154273A (ja) | 2005-12-06 | 2005-12-06 | 剪断加工時の切り粉発生が少ないアルミニウム合金板およびその剪断加工方法 |
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---|---|---|---|---|
JP2009138247A (ja) * | 2007-12-10 | 2009-06-25 | Kobe Steel Ltd | 加工硬化特性に優れたAl−Mg系冷間加工用アルミニウム合金押出材 |
JP2014532114A (ja) * | 2011-09-15 | 2014-12-04 | ハイドロ アルミニウム ロールド プロダクツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングHydro Aluminium Rolled Products GmbH | AlMgSi系アルミニウムストリップの製造方法 |
-
2005
- 2005-12-06 JP JP2005352607A patent/JP2007154273A/ja active Pending
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