JP2007154271A - 無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱延板焼鈍を省略して、熱延板焼鈍を付加した製品と同等以上の磁気特性を有する無方向性電磁鋼板を形状、板厚のばらつきを大きくすることなく製造する方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.008%以下、Si:1.5%〜3.5%、Al:0.2%〜3.0%、1.9%≦(%Si+%Al)、Mn:0.02〜1.0%、S:0.0015%以下、N:0.0020%以下、Ti:0.008%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物の組成よりなるスラブを1050〜1150℃の範囲で加熱して粗圧延し、粗圧延後の粗バーを、粗圧延と仕上圧延の間のテーブル上で1050〜1150℃の範囲で加熱し、仕上前面温度を1050〜1150℃、仕上後面温度を1000℃以上の条件で熱間仕上圧延を行うと共に熱間仕上圧延後1秒〜7秒間無注水とし、しかる後、注水冷却して700℃以下の温度で巻き取る無方向性電磁鋼板の製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、高級グレードの無方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特に、熱延板焼鈍を省略して、熱延板焼鈍を付加した製品と同等以上の磁気特性を有する無方向性電磁鋼板が得られる製造方法を提供するものである。
通常、無方向性電磁鋼板の高級グレード(JIS 50A470以上)は、スラブをスラブ加熱し、熱延して熱延板とし、これを熱延板焼鈍する。熱延板焼鈍は、いわゆるリジングの発生防止と、製品磁気特性の改善のために行い、その後、酸洗、冷延、仕上焼鈍、そして必要に応じてコーティングし、製品とする。しかし、この熱延板焼鈍を採用することにより、製造コストの上昇のみならず、製造工程の延長に伴う納期管理、工程管理の煩雑さを避けることができなかった。
そこで、この熱延板焼鈍を省略する方法として、特許文献1にC:0.008%以下、1.8%≦(%Si+2×%Al)≦5%、Mn:0.02〜0.5%、S:0.0015%以下、N:0.0020%以下、残部鉄よりなる無方向性電磁鋼スラブをスラブ加熱し、熱間圧延するに際して、仕上温度(仕上後面温度を意味する)を少なくとも1000℃以上とすると共に熱間仕上圧延後1秒〜7秒間無注水とし、しかる後、注水冷却して700℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする高級無方向性電磁鋼板用熱延板の製造方法が提案されている。この方法の要旨とするところは、S,Nの含有量を低減し、熱間仕上温度を1000℃以上とし、無注水時間をとることにより、熱延板の金属組織を従来法では加工組織であったものを、再結晶を促進した組織に変え、熱延板焼鈍材並に磁気特性を向上することにある。
また、特許文献2に、C:0.008%以下、1.8%≦(%Si+2×%Al)≦5%、Mn:0.02〜0.5%、S:0.0015%以下、N:0.0020%以下、残部鉄よりなる無方向性電磁鋼スラブを1100℃〜1200℃でスラブ加熱し、熱間仕上圧延するに際して、上側と下側のロールの周速を少なくとも5%以上異ならせる異周速圧延を少なくとも1パス実施し、熱間仕上温度(仕上後面温度を意味する)を少なくとも950℃以上とすると共に、熱間仕上圧延後1秒〜7秒間無注水とし、しかる後、注水冷却して700℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする高級無方向性電磁鋼板用熱延板の製造方法が提案されている。
特許文献1によれば、熱延板焼鈍を付加した製品と同等以上の製品を得られるものの、仕上後面温度を安定して1000℃以上確保するには、スラブ加熱温度を1200℃程度以上に高めにせざるを得なかった。スラブ加熱を高温にするとS,Nの固溶量が増え、続く熱延で微細析出物を生成するため、特許文献1ではこの悪影響を避けるべく、S:0.0015%以下、N:0.0020%以下として、S,Nの固溶量を予め少なくしているのであるが、少量といえども生成する微細析出物により磁気特性を更に良くすることは難しかった。
また、特許文献2によれば、スラブ加熱を1100〜1200℃とし、仕上後面温度を950℃以上と特許文献1の方法よりも下げることができるが、仕上圧延で異周速圧延を行うため、熱延板の形状制御や板厚のばらつきが大きく、これに起因する製品の鋼板形状、板厚のばらつきが大きいという欠点があった。
特公昭62−61644号公報 特開平3−138317号公報
本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、硫化物、窒化物の固溶をできるだけ抑えて、金属組織を再結晶を促進した組織とすることができ、熱延板焼鈍を省略して、熱延板焼鈍を付加した製品と同等以上の磁気特性を有する無方向性電磁鋼板を、形状や板厚のばらつきを大きくするような圧延方法を用いることなく製造する方法を提供することを課題としてなされたものである。
上記の課題を解決するために本発明は、以下のようにしたことを特徴とする。
第1の無方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、質量%で、C:0.008%以下,Si:1.5%〜3.5%、Al:0.2%〜3.0%、1.9%≦(%Si+%Al)、Mn:0.02〜1.0%、S:0.0015%以下、N:0.0020%以下、Ti:0.008%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物の組成よりなるスラブをスラブ加熱し、熱延し、熱延板を焼鈍することなく冷延し、仕上焼鈍を行うことにより無方向性電磁鋼板を製造する方法において、前記スラブを1050〜1150℃の範囲で加熱して粗圧延し、粗圧延後の粗バーを、粗圧延と仕上圧延の間のテーブル上で1050〜1150℃の範囲で加熱し、仕上前面温度を1050〜1150℃、仕上後面温度を1000℃以上の条件で熱間仕上圧延を行うと共に熱間仕上圧延後1秒〜7秒間無注水とし、しかる後、注水冷却して700℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする。
また、第2の無方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、前記第1の発明において、前記スラブが、更に、質量%で、REM、Mg、Ca、Sn、Sb、Cuの1種または2種以上を各々の含有量で0.0005%〜0.30%含むことを特徴とする。
本発明によれば、熱延板焼鈍を省略して、熱延板焼鈍を付加した製品と同等以上の磁気特性を有する高級無方向性電磁鋼板を、形状や板厚のばらつきを大きくすることなく製造することが可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明者らは、熱延板焼鈍を省略して良好な磁気特性を得られる高級無方向性電磁鋼板の製造方法を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、スラブ加熱温度を1150℃以下とすることが非常に有効であることを見出した。
図1は、本発明者らが行なった実験の実験結果の一例である。
C:0.0011%,Si:2.0%、Al:0.3%,Mn:0.21%、S:0.0012%、N:0.0013%を含む溶鋼を真空溶解し、40mm厚の鋳片を作成した。その後、鋳片を熱間圧延する際、加熱温度を種々変更して仕上後面温度を1001〜1017℃で2.5mm厚に熱延し、仕上圧延後3秒無注水とし、その後注水して620℃の熱延板を作成した。その熱延板を酸洗し、0.50mmに冷延し、880℃×60秒の仕上焼鈍を行い、焼鈍後の冷延板の磁気特性を測定した。このときのスラブ加熱温度と鉄損W15/50の関係を図1に示す。スラブ加熱が1150℃以下であると低いW15/50を得られることが分かる。鉄損の高かった加熱温度1250℃の冷延板の析出物を電子顕微鏡で観察した結果、数百nm以下の微細なAlNが観察され、これが仕上焼鈍における結晶粒成長を抑制していた。
ところで、工場での熱延板の製造方法は、所定の成分を含有した溶鋼を250mm厚程度のスラブに連続鋳造し、所定の長さに切断し、その後、熱延のスラブ加熱炉で加熱し、幅調整圧延し、30〜70mm厚程度に粗圧延し、2〜3mm程度に仕上圧延し、注水ゾーンで注水されコイラーで巻き取られるというものである。加熱炉からスラブを抽出し、仕上圧延までの間の温度降下は避けることができず、前記特許文献1と同様に仕上後面温度1000℃を確保しようとすると、一般には1150℃以上にスラブ加熱する必要があった。また、仕上圧延前面から仕上圧延後面の温度降下は、50〜100℃であり、仕上後面温度を1000℃を確保するためには、仕上前面温度を1050〜1100℃確保する必要があった。これらより、スラブ加熱を1050〜1150℃と低温化し、かつ仕上後面温度を1000℃以上とするためには、粗バーを加熱する必要があることが分かった。
そこで、粗バーでの加熱の影響を検討した。図2は、本発明者らが行なった実験の実験結果の一例である。
C:0.0013%,Si:2.0%、Al:0.3%,Mn:0.23%、S:0.0010%、N:0.0015%を含む溶鋼を真空溶解し、100mm厚の鋳片を作成した。その後、鋳片を熱間圧延する際、1150℃で1時間均熱し、40mm厚に粗圧延し、粗バーを直ちに加熱炉に挿入し、種々の温度で2分均熱し、仕上圧延温度を1003〜1011℃で2.5mm厚に熱延し、仕上圧延後3秒無注水とし、その後注水して620℃の熱延板を作成した。その熱延板を酸洗し、0.50mmに冷延し、880℃×60秒の仕上焼鈍を行い、焼鈍後の冷延板の磁気特性を測定した。このときの粗バー加熱温度と鉄損W15/50の関係を図2に示す。これより、粗バーを1050〜1150℃で均熱した場合、良好な磁気特性を得られることが分かった。
工場の一般の熱延方法では、粗圧延終了から仕上圧延開始までの時間は長くても2分程度である。従って、この実験より1150℃以下なら粗バー加熱しても問題ないことが分かった。
本発明は以上の知見に基づいてなされたものである。
以下に本発明の限定理由を説明する。
まず、スラブの組成について説明する。なお、以下の成分は、鋼中に含まれる量である。
Cは、熱間圧延中にオーステナイト、フェライト2相域とさせないことと、0.008%を超えると磁気時効により製品の磁気特性を劣化させるので、0.008%以下(0を含む)とした。
Si,Alは、いずれも電気抵抗を上げ、渦電流損失を下げるため、下限は各々1.5%,0.2%とした。Si,Alを各々3.5%,3.0%を超えて添加すると加工性が著しく劣化する。このため、Si:1.5%〜3.5%、Al:0.2%〜3.0%とした。
1.9%≦(%Si+%Al)は、Cが0.008%以下で、1.9%≦(%Si+%Al)であればオーステナイト、フェライト2相域とならずフェライト1相となるため1.9%≦(%Si+%Al)とした。
Mnは、熱延性をよくするために0.02%以上添加する。上限の1.0%は経済的理由によるものである。
Sは、微細な硫化物あるいは酸硫化物をつくり、1次再結晶温度を高める有害な作用を演ずるため、0.0015%以下とした。
Nは、TiN、AlNの析出を最小限にし、結晶粒成長の抑制を回避するため0.0020%以下とする。
Tiは、微細なTiN,TiCをつくり、結晶粒成長の抑制を回避するため0.008%以下(0を含む)とする。
質量%でREM、Mg、Ca、Sn、Sb、Cuは、1種または2種以上を各々の含有量で0.0005%以上含有すると、実施例に示すように磁気特性を改善でき、上限の0.30%は効果が飽和するためである。
次に、製造条件について説明する。
スラブ加熱は1050〜1150℃とする。1150℃を超えるとスラブ加熱でAlN,MnSが固溶し、続く熱延で微細に析出し、仕上焼鈍での粒成長性が悪く、低鉄損を得られない。1050℃未満では、粗圧延後の粗バーの温度が下がりすぎ、仕上後面温度1000℃を確保するための粗バー加熱の負荷が大きくなりすぎる。
粗バーの加熱は仕上後面温度1000℃以上確保するために行う。スラブ加熱を1050〜1150℃と低温化した場合、通常では熱延ラインで温度降下してしまい仕上後面温度1000℃以上を得られない。粗バーの加熱温度が1150℃を超えると磁気特性が劣化する。また、1050℃未満だと仕上後面温度を1000℃以上に確保することができない。
粗バーの加熱は、粗圧延から仕上圧延の間のテーブルで、バーナーを取り付けたカバーを設置してバーナー加熱したり、誘導加熱装置を取り付けたカバーを設置して加熱すると、効率的に加熱できる。その他の方法で加熱しても構わない。
熱間仕上圧延における仕上前面温度を1050〜1150℃と限定した理由は、1150℃よりも高いと、粗バ−の加熱を1150℃以上にする必要があり、磁気特性が劣化する。また、1050℃よりも低いと仕上後面温度1000℃以上を確保できない。
また、仕上後面温度を1000℃以上と限定した理由は、1000℃以上とすると熱延板焼鈍を省略しても、熱延板焼鈍を付加した製品と同等以上の磁気特性が得られるからである。
熱間仕上圧延後の無注水時間は、1000℃以上の仕上後面温度で熱延した場合、再結晶、正常粒成長に少なくとも1秒は要し、これ未満では磁束密度が低くなるため、下限は1秒とし、上限の7秒は、無注水時間が7秒を越えると、その分注水時間が短縮され、700℃以下で巻き取ることが工業的に困難となるためである。
巻き取り温度は、700℃を越えると酸洗性が悪化するため700℃以下とした。好ましくは650℃以下である。下限は、好ましくは、500℃以上であり、それ以下では巻取りが悪化する。
巻き取られた熱延板は、以後、熱延板焼鈍することなく冷延され、仕上焼鈍される。
C:0.0019%,Si:2.0%,Mn:0.22%,Sol.Al:0.3%,S:0.0011〜0.0015%,N:0.0011〜0.0015%、を含有する250mm厚の無方向性電磁鋼板用連続鋳造スラブを種々の温度でスラブ加熱し、40mm厚に粗圧延し、一部の試料は粗圧延と仕上圧延の間のテーブル上で誘導加熱、バーナー加熱で粗バーを加熱し、直ちに仕上圧延し、熱間圧延後の無注水時間を1秒とし、巻き取り温度は640℃、熱延板板厚は2.5mmとした。続いて酸洗し、0.50mmに冷延し、880℃×60の連続焼鈍し、絶縁皮膜を塗布して製品とした。この時の、スラブ加熱温度、粗バー加熱、仕上前面温度、仕上後面温度と磁気特性の関係を表1に示す。本発明範囲では、良好な磁気特性を得られることが分かる。
Figure 2007154271
C:0.0027%,Si:2.1%,Mn:0.24%,Sol.Al:0.3%,S:0.0013〜0.0015%,N:0.0009〜0.0019%、REM,Mg,Ca,Sn,Sb,Cuを種々含有する250mm厚の無方向性電磁鋼板用連続鋳造スラブを1120℃でスラブ加熱し、40mm厚に粗圧延し、誘導加熱+バーナー加熱で1110℃で粗バーを加熱し、仕上前面温度 1072〜1099℃、仕上後面温度1000〜1024℃で仕上圧延し、熱間圧延後の無注水時間を3秒とし、巻き取り温度は680℃、熱延板板厚は2.5mmとした。続いて酸洗し、0.50mmに冷延し、880℃×60の連続焼鈍し、絶縁皮膜を塗布して製品とした。この時の、REM,Mg,Ca,Sn,Sb,Cuの含有量と磁気特性の関係を表2に示す。REM,Mg,Ca,Sn,Sb,Cuを1種または2種以上含有すると、良好な磁気特性を得られることが分かる。
Figure 2007154271
スラブ加熱温度と鉄損W15/50の関係図である。 粗バー加熱温度と鉄損W15/50の関係図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.008%以下、Si:1.5%〜3.5%、Al:0.2%〜3.0%、1.9%≦(%Si+%Al)、Mn:0.02〜1.0%、S:0.0015%以下、N:0.0020%以下、Ti:0.008%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物の組成よりなるスラブをスラブ加熱し、熱延し、熱延板を焼鈍することなく冷延し、仕上焼鈍を行うことにより無方向性電磁鋼板を製造する方法において、前記スラブを1050〜1150℃の範囲で加熱して粗圧延し、粗圧延後の粗バーを、粗圧延と仕上圧延の間のテーブル上で1050〜1150℃の範囲で加熱し、仕上前面温度を1050〜1150℃、仕上後面温度を1000℃以上の条件で熱間仕上圧延を行うと共に熱間仕上圧延後1秒〜7秒間無注水とし、しかる後、注水冷却して700℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記スラブが、更に、質量%で、REM、Mg、Ca、Sn、Sb、Cuの1種または2種以上を各々の含有量で0.0005%〜0.30%含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
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