JP2007153156A - 車両安定化制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両の挙動状態に加えてドライバの操舵状態に応じた車両挙動、つまりドライバの所望する車両状態を実現できる車両安定化制御装置を提供する。
【解決手段】駆動輪の車輪速度の差に基づいて駆動輪ヨーレートを求めると共に、操舵角から目標ヨーレートを求め、これらの差もしくはその微分値に基づいて車両の横滑り傾向を検出する。そして、車両の横滑り傾向が検出されたときには、制御対象輪に対して制動力を発生させることで、車両の安定化を図る。
【選択図】図2

Description

本発明は、駆動輪の旋回内外輪の車輪速度差を利用して車両の横転傾向等の安定性を求め、これに基づいて車両の運動制御を行う車両安定化制御装置に関するものである。
従来、特許文献1〜3において、車両の横転傾向等の安定性を判定し、それに基づいて車両の安定化を図る装置が提案されている。
具体的には、特許文献1には、駆動輪の旋回内外輪の車輪速度差に基づいて旋回内輪の空転傾向を検出することで車両の安定性を判定する装置が提案されている。特許文献2には、前後輪の車輪速度差から車両の安定性を判定する装置が提案されている。特許文献3では、各車輪の車輪速度と車両の横方向加速度(以下、横Gという)から車両の安定性を判定する装置が提案されている。
特開平11−254992号公報 特開2001−106050号公報 特開2000−272489号公報
しかしながら、特許文献1に示されるように単に空転傾向のみに基づいて車両の安定性を判定したのでは、ドライバの操舵状態が判らず、ドライバの所望する車両挙動とならない場合がある。特許文献2に示されるように前後輪の車輪速度差に基づいて車両の安定性を判定しても、同様の問題が発生する。また、特許文献3に示されるように各車輪の車輪速度と横Gに基づいて判定しても、結局、ドライバの操舵状態が反映されないため、上記と同様の問題が発生する。
本発明は上記点に鑑みて、車両の挙動状態に加えてドライバの操舵状態に応じた車両挙動、つまりドライバの所望する車両状態を実現できる車両安定化制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、駆動輪ヨーレート取得手段(110)にて、車両における左右駆動輪の車輪速度を求め、車両の旋回時における左右駆動輪の車輪速度の差に基づいて車両の駆動輪ヨーレートを取得し、目標ヨーレート取得手段(120)にて、車両におけるステアリング(9)の操作に応じた検出信号を出力する舵角センサ(7)の該検出信号に基づいて操舵角を求め、該操舵角に応じた目標ヨーレートを取得する。そして、駆動輪ヨーレートと目標ヨーレートの差に基づいて、安定性判定手段(130)にて車両の安定性を判定し、この安定性判定手段(130)での判定結果に基づいて、安定化制御手段(140、150)にて車両の横滑りを抑制する車両安定化制御を実行することを特徴としている。
このように、目標ヨーレートを操舵角から求め、駆動輪ヨーレートを駆動輪の車輪速度の差から求めることで、これらを応答性良く求めることができる。このため、それらに基づいて車両安定化制御を行う場合に、応答性良く行うことが可能となる。そして、ドライバの操舵状態、つまりドライバの要求を直接的に表している操舵角から目標ヨーレートを求めるようにしているため、ドライバの操舵状態に則さない誤動作をなくし、ドライバの所望する車両状態を実現することが可能となる。
請求項2に記載の発明では、ドライバによる車両の運転操作を示すパラメータに基づいて補正量を求め、駆動輪ヨーレート取得手段(110)が取得した駆動輪ヨーレートから補正量を差し引くことで駆動輪ヨーレートを補正する補正手段(200)を備え、安定性判定手段(130)は、駆動輪ヨーレート取得手段(110)が取得した駆動輪ヨーレートから補正量を差し引いた値と目標ヨーレート取得手段(120)が取得した目標ヨーレートの差に基づいて、車両の安定性を判定することを特徴としている。
このように、ドライバの運転操作を示すパラメータに基づいて駆動輪ヨーレートを補正すれば、ドライバの運転操作に応じた車両安定化制御が敏感に行えるようにできる。
例えば、請求項3に示すように、補正手段(200)は、車両の運転操作を示すパラメータとしてエンジン出力を用い、該エンジン出力が大きくなる程、補正量を大きく設定して駆動輪ヨーレートから差し引く。このようにすれば、例えば、エンジン出力が大きくなったときに車両の挙動変動が早くなったときに制御が敏感に行われるようにできるため、ドライバの運転操作に対して応答性を向上させることが可能となる。
また、請求項4に示すように、車両の運転操作を示すパラメータとしてアクセル開度を用い、アクセル開度が大きくなる程、補正量を大きく設定して駆動輪ヨーレートから差し引くようにしてもよい。同様に、請求項5に示すように、車両の運転操作を示すパラメータとしてギア比を用い、ギア比が大きくなる程、補正量を大きく設定して駆動輪ヨーレートから差し引くこともできる。さらに、請求項6に示すように、車両の運転操作を示すパラメータとして舵角センサ(7)の検出信号を用いて求められた操舵角を用い、操舵角が大きくなる程、補正量を大きく設定して駆動輪ヨーレートから差し引くようにしても良い。
請求項7に記載の発明では、車両が前輪駆動車両である場合に、舵角センサ(7)の検出信号を用いて求められた操舵角を用い、該操舵角が大きくなる程、大きくなる補正量を求め、駆動輪ヨーレート取得手段(110)が取得した駆動輪ヨーレートから補正量を差し引くことで駆動輪ヨーレートを補正する補正手段(200)を備えることを特徴としている。
本発明が前輪駆動車両の車両安定化制御装置に適用される場合、駆動輪が操舵輪となるため、駆動輪の車輪速度にタイヤ切れ角の影響が現れることになるが、操舵角に応じて駆動輪の旋回内外輪の車輪速度差から求められる駆動輪ヨーレートを補正すれば、タイヤ切れ角の影響により駆動輪ヨーレートに発生する誤差分を補正することができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における車両安定化制御を実現する車両安定化制御装置が搭載されたシステム全体の概略構成を示した図である。ここでは、エンジンが前方に搭載され、後輪側を駆動輪とするFR車両に対して本発明の一実施形態となる車両安定化制御装置を適用した場合について説明するが、前輪側を駆動輪とするFF車両等、他の形態の車両についても同様に適用可能である。
図1に示されるように、FR車両においては、エンジン1で発生させられたエンジン出力(エンジントルク)がトランスミッション2に伝えられ、トランスミッション2で設定されたギア位置に応じたギア比で変換されたのち、プロペラシャフト3に駆動力が伝達される。そして、プロペラシャフト3に対し、デファレンシャル4を介して接続されたドライブシャフト5を通じて、駆動輪となる後輪RR、RLに駆動力が付与されるようになっている。
ESC−ECU6は、車両安定化制御装置に相当するものであり、このESC−ECU6により車両安定化制御としてESC(横滑り防止制御:Electronic Stability control)が実行される。
具体的には、ESC−ECU6は、舵角センサ7からの検出信号および各車輪FR、FL、RR、RLに備えられた車輪速度センサ8FR、8FL、8RR、8RLからの検出信号を受け取り、各種物理量を求める。例えば、ESC−ECU6は、舵角センサ7が出力するドライバによるステアリング9の操作量に応じた検出信号に基づいて操舵角を求めたり、車輪速度センサ8FR、8FL、8RR、8RLからの検出信号に基づき、各車輪FR、FL、RR、RLの車輪速度や車速(推定車体速度)を求めたりする。
また、ESC−ECU6は、ESCを行うべく、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ10に対してESC指令信号を出力するようになっている。このESC−ECU6が実行するESCは、操舵角の大きさを求めると共に、旋回時における旋回内外の駆動輪の車輪速度差を求め、これらに基づいて車両が横滑りし得る状況か否かという横滑り傾向を判定し、横滑りし得る状況である場合には、横滑りの形態に応じて制御対象輪を決め、制動力を加えることで横滑りを防止し、車両の安定化を図るものである。
例えば、横滑りし得る状況であるか否かは、操舵角や車速から求められる理想軌跡、つまり横滑りしない場合の軌跡を辿るために要求されるヨーレート(以下、目標ヨーレートという)と旋回内外の駆動輪の車輪速度差から求められる駆動輪ヨーレートの差の絶対値が所定のスレッショルドレベルを超えているか否かによって判定される。そして、目標ヨーレートと駆動輪ヨーレートとを比較し、いずれが大きいかによって車両がオーバステア(OS)状態かアンダーステア(US)状態かを判定し、その車両状態に応じた制御対象輪が設定され、制御対象輪に対して制動力が加えられることで横滑りを回避する。
具体的には、オーバステア状態の場合には旋回外輪を制御対象輪、アンダーステア状態の場合には旋回内輪を制御対象輪として、制動力が加えられる。このとき、旋回外輪もしくは旋回内輪の前輪と後輪のいずれを制御対象輪とするかに関しては、駆動輪ヨーレートの大きさや舵角の大きさ、もしくは舵角速度の大きさによって決定されるようになっている。
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ10は、ホイールシリンダ(以下、W/Cという)11FR、11FL、11RR、11RLを自動加圧できるブレーキシステムとして構成されるものである。このブレーキ液圧制御用アクチュエータ10としては、油圧によりW/C圧を発生させる油圧ブレーキシステム、電気的にW/C圧を発生させるブレーキバイワイヤなどの電動ブレーキシステムのいずれも採用できるがいずれも公知のものであるので、ここではブレーキ液圧制御用アクチュエータ10の具体的な構造については省略する。
このようなブレーキ液圧制御用アクチュエータ10により、W/C11FR〜11RLのうち制御対象輪と対応するものが加圧され、それによりキャリパ12FR、12FL、12RR、12RLによってディスクロータ13FR、13FL、13RR、13RLが挟み込まれることで、制動力が発生させられるようになっている。なお、ここで示したブレーキ液圧制御用アクチュエータ10、W/C11FR〜11RL、キャリパ12FR〜12RL、ディスクロータ13FR〜13RLが本発明における制動力発生手段に相当するものである。
このようにして、車両安定化制御を実現する車両安定化制御装置が備えられたシステムが構成されている。続いて、本実施形態の車両安定化制御装置が行う車両安定化制御について、図2を参照して説明する。
図2は、車両安定化制御のフローチャートであり、ESC−ECU6により実行される。この車両安定化制御は、車両に備えられた図示しないイグニッションスイッチがオンされたとき、もしくは車両走行中において、所定の演算周期ごとに実行される。なお、本図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。
まず、ステップ100では、各種センサ信号読み込みの処理を行う。具体的には、車輪速度センサ8FL〜8RRの検出信号と舵角センサ7の検出信号等、車両安定化制御に必要な各種検出信号の読み込みを行い、それらから各物理値が求められる。これにより、各車輪FL〜RRそれぞれの車輪速度や車速(推定車体速度)、さらにはドライバによるステアリング9の操作に応じた操舵角が求められる。
続くステップ110では、駆動輪となる左右後輪RL、RRの車輪速度の差からこのとき実際に車両に対して発生しているヨーレート、つまり駆動輪ヨーレートを求める。ESC−ECU6のうちこの処理を実行する部分が駆動輪ヨーレート取得手段に相当する。
例えば、左右後輪RL、RRそれぞれの車輪速度をVwRL、VwRRとして表し、左右後輪RL、RRの間の距離(トレッド)をrで表すと、駆動輪ヨーレートは次式で表される。
(数1)
駆動輪ヨーレート=(VwRR−VwRL)/r
なお、左右後輪RL、RRそれぞれの車輪速度VwRL、VwRRの差は、右旋回か左旋回かによって変わる。例えば、左旋回の場合には、左後輪RLの車輪速度VwRLの方が右後輪RRの車輪速度VwRRよりも小さくなり、右旋回の場合にはその逆になる。また、この差は、旋回内輪の空転状態によっても変わることになる。つまり、旋回内輪が空転状態の場合には、その車輪速度に空転分が含まれることになるため、駆動輪ヨーレートは旋回内輪の空転分も含んだ値として求められる。
続く、ステップ120では、目標ヨーレートを算出する。具体的には、舵角センサ7の検出信号に基づいて求めた操舵角や車速から周知の手法によって目標ヨーレートを推定する。ESC−ECU6のうちこの処理を実行する部分が目標ヨーレート取得手段に相当する。
そして、ステップ130に進み、ステップ110で求めた駆動輪ヨーレートよりもステップ120で求めた目標ヨーレートの方が大きいか否かを判定する。ESC−ECU6のうちこの処理を実行する部分が安定性判定手段に相当する。
つまり、駆動輪ヨーレートよりも目標ヨーレートの方が大きい場合には、旋回内輪に空転が発生している状況と想定され、その空転による駆動輪ヨーレートが小さく計算されてしまっていると考えられる。
このため、ステップ130で否定判定された場合には、空転が発生されていないと考えられるため、そのまま処理を終了する。そして、ステップ130で肯定判定された場合には、空転が発生していると考えられるため、ステップ140に進む。
ステップ140では制御量の計算を行う。ここでいう制御量の計算とは、旋回内輪の空転を抑制するのに要求される制動力に対応する制御量、つまりそのような制動力を発生させるためにブレーキ液圧制御用アクチュエータ10に備えられた制御弁やモータをどのように駆動するかという電流値や制御時間等を求めるものである。この制御量は、駆動輪ヨーレートと目標ヨーレートの差に基づいて求められる。
そして、ステップ150に進み、アクチュエータ駆動処理を実行する。ここでいうアクチュエータ駆動処理は、ESCにより制御対象輪に対して制動力を発生させるものであり、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ10に対してESC指令信号を出力するものである。これにより、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ10は、制御対象輪と対応するW/C11FR〜11RLを自動加圧し、それによりキャリパ12FR〜12RLによってディスクロータ13FR〜13RLが挟み込まれ、制動力が発生させられるようになっている。
例えば、本実施形態のように、旋回内輪の空転を抑制する場合には、制御対象輪が旋回内輪側の駆動輪となり、それに対応したW/C11RR、11RLが自動加圧されることになる。
このように、旋回内輪側の駆動輪の空転を抑制することで、車両の荷重変動を抑えることが可能となるため、車両のロール角の発生を抑制することが可能となり、同時に旋回内輪側の空転(車輪浮き)に伴うアンダーステアを抑制することが可能となる。
なお、このように旋回内輪側の駆動輪の空転を抑制するような車両安定化制御を実行する部分、つまりESC−ECU6のうちステップ140、150の処理を実行する部分が安定化制御手段に相当する。
以上説明したように、本実施形態では、駆動輪の車輪速度の差に基づいて駆動輪ヨーレートを求め、操舵角から目標ヨーレートを求めるようにしている。このため、以下のことが言える。
ドライバがステアリング9を操作して車両を旋回させた場合、まず、ドライバによるステアリング9の操作が舵角として表れ、それと同時に操舵輪となる両前輪FR、FLの操舵角が変化する。すると、操舵角の変化によって車両が旋回し、旋回外輪側に荷重が移動するため、旋回内輪側の駆動輪が空転状態になる。このため、この駆動輪の空転分が車輪速度として現れ、駆動輪の車輪速度の差に基づいて求められる駆動輪ヨーレートとして現れる。
そして、旋回内輪の空転が発生すると、それに起因して車両の挙動が変化する。このような変化がヨーレートセンサによってヨーとして現れるため、ヨーレートセンサの検出結果に基づいてヨーレートを求める場合には、このタイミングで求められることになる。さらに、これが横方向加速度にも現れるため、横方向加速度からヨーレートを求める場合には、このタイミングで求められることになる。
ここで説明したように、ヨーレートを求めるとき、その求め方によりドライバが操作してからヨーレートを求めるまでに掛かる時間、つまり応答性が異なっていることが分かる。具体的には、操舵角から求める方法→駆動輪の車輪速度の差から求める方法→ヨーレートセンサの検出結果から求める方法→横方向加速度から求める方法の順で応答性が遅くなる。このような応答性の相違は、操舵角や駆動輪の車輪速度の差がヨーレートを発生させる要因となるものであるのに対し、ヨーレートセンサで検出されるヨーや横方向加速度が発生要因に起因して実際に発生した物理量を検出したものであるために発生する。
これに対し、本実施形態では、駆動輪の車輪速度の差に基づいて駆動輪ヨーレートを求め、操舵角から目標ヨーレートを求めている。つまり、ヨーレートを発生させる要因となるもの、言い換えると応答性の早いものを用いて駆動輪ヨーレートと目標ヨーレートを求めている。このため、目標ヨーレートと駆動輪ヨーレートとを応答性良く求めることができ、それらに基づいてESCを行う場合に、応答性良いESCを行うことが可能となる。
そして、ドライバの操舵状態、つまりドライバの要求を直接的に表している操舵角から目標ヨーレートを求めるようにしているため、ドライバの操舵状態に則さない誤動作をなくし、ドライバの所望する車両状態を実現することが可能となる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、ESC−ECU6で実行する処理を変えたものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
上述したように、第1実施形態では、旋回時における旋回内外の駆動輪の車輪速度の差から駆動輪ヨーレートを求めるようにしている。本実施形態では、このように求めた駆動輪ヨーレートをドライバの運転操作を表すパラメータに基づいて補正することで、よりドライバの運転操作を反映させた車両安定化制御が実行されるようにする。
具体的には、エンジン出力は、ドライバによるアクセルペダル踏み込み操作を反映したものとなるため、エンジン出力に応じてその後の横滑り傾向を予測することが可能である。例えば、エンジン出力が急に大きくなるような場合、駆動輪の車輪速度も大きくなってより空転し易くなると想定される。このため、本実施形態では、エンジン出力とそれに応じて発生する駆動輪ヨーレートの関係を予め実験などによって求めておき、それに基づいてエンジン出力に対する補正量の関係を求め、エンジン出力に応じて駆動輪の車輪速度の差から求められる駆動輪ヨーレートを補正する。
図3は、本実施形態の車両安定化制御装置に備えられたESC−ECU6が実行する車両安定化制御のフローチャートである。この図に示されるように、図2に対して、ステップ200の補正処理を加えたものであり、この補正処理以外の各処理に関してはすべて第1実施形態と同様である。
ステップ200に示す補正処理では、図4に示すエンジン出力に対する駆動輪ヨーレートの補正量の関係を表したマップを用いて、駆動輪ヨーレートの補正量を求める。そして、駆動輪ヨーレートから補正値を差し引くことで、エンジン出力に応じた駆動輪ヨーレートの補正を行う。ESC−ECU6のうち、この処理を実行する部分が補正手段に相当する。
エンジン出力は、図示しないエンジンECU等において、それを示すデータが取り扱われているため、車内LAN等を通じてECS−ECU11に取り込むことで取得することが可能である。このため、図4に示すマップを用いて、取得したエンジン出力と対応する補正量を読み取り、それをステップ110において駆動輪の車輪速度の差から求めた駆動輪ヨーレートから差し引くことで本補正処理を行うことができる。
そして、ステップ130では、駆動輪ヨーレートとして、補正後の値を用いることで、エンジン出力に応じた車両安定化制御を実行することが可能となる。
このように、エンジン出力に応じて駆動輪ヨーレートを補正すれば、エンジン出力に応じた車両安定化制御、例えば、エンジン出力が大きくなったときに車両の挙動変動が早くなったときに制御が敏感に行われるようにできるため、ドライバの操舵状態に対して応答性を向上させることが可能となる。
(他の実施形態)
上記実施形態では、操舵角から求められる目標ヨーレートと駆動輪の旋回内外輪の車輪速度差から求められる駆動輪ヨーレートの差に基づいて車両の安定性を求めるようにしたが、この差を時間微分した微分値に基づいて車両の横転傾向を求めることもできる。このようにすれば、目標ヨーレートと駆動輪ヨーレートの差の微分値の方が単なる差よりも位相が早いため、より応答性を高めることが可能となる。
また、上記第2実施形態では、エンジン出力に基づいて駆動輪の車輪速度の差から求められる駆動輪ヨーレートを補正するようにしているが、エンジン出力だけでなく、他のパラメータ、例えばアクセル開度や操舵角、ギア比に基づいて補正することも可能である。つまり、アクセル開度やギア比もドライバの運転操作を表すパラメータとなるものであるため、これらに基づいて駆動輪の車輪速度の変化を予測することが可能である。例えば、アクセル開度、操舵角、ギア比が大きくなる程、駆動輪の車輪速度も大きくなってより空転し易くなると想定される。このため、予めアクセル開度、操舵角、ギア比に対する補正量の関係を実験等によって求めておき、その関係に基づいて駆動輪ヨーレートを補正することができる。
具体的には、図4においてエンジン出力と補正量の関係をマップで示したが、このマップにおける横軸をエンジン出力からアクセル開度や操舵角、ギア比に変えるだけで、これらに対する補正量の関係とすることができる。
さらに、本発明がFF車両等のような前輪駆動車両の車両安定化制御装置に適用される場合、駆動輪が操舵輪となるため、駆動輪の車輪速度にタイヤ切れ角の影響が現れることになる。このため、タイヤ切れ角に応じた左右駆動輪の車輪速度の変動分、および、左右駆動輪間の距離(トレッド)の変動分、駆動輪ヨーレートに誤差が生じる。
したがって、FF車両のように、駆動輪と操舵輪とが一致するような場合には、操舵角に応じて、駆動輪の旋回内外輪の車輪速度差から求められる駆動輪ヨーレートを補正すると良い。例えば、操舵角と補正量の関係は図5のように比例関係となるため、舵角センサ7から求めた操舵角に対応する補正量を図5に示すマップから求めることで、駆動輪ヨーレートに発生する誤差分を補正することができる。
また、上記実施形態では、舵角センサ7および車輪速度センサ8FR〜8RLからの検出信号をESC−ECU6に入力し、ESC−ECU6で操舵角、ヨーレート、車輪速度および車速等を求めるようにしている。しかしながら、これは単なる一例であり、舵角センサ7もしくは車輪速度センサ8FR、8FL、8RR、8RLからの検出信号が他のECU(図示しない)に入力されるようにし、他のECUで各種物理量を求め、それが車内LAN等を通じてESC−ECU6に伝えられるような形態であっても構わない。
さらに、上記実施形態では、旋回内輪の空転を抑制するように制御対象輪に対して制動力を発生させるような車両安定化制御を示したが、その他の制御形態であっても構わない。例えば、駆動輪ヨーレートが目標ヨーレートに近づくように、制御対象輪に対して制動力を発生させるようにしても良い。
なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。
本発明の第1実施形態における車両安定化制御装置の全体のシステム構成を示した図である。 車両安定化制御のフローチャートである。 本発明の第2実施形態における車両安定化制御装置が行う車両安定化制御のフローチャートである。 エンジン出力に対する駆動輪ヨーレートの補正量の関係を表したマップである。 操舵角と補正量の関係を表したマップである。
符号の説明
1…エンジン、2…トランスミッション、3…プロペラシャフト、4…デファレンシャル、5…ドライブシャフト、6…ESC−ECU、7…舵角センサ、8FL〜8RR…車輪速度センサ、9…ステアリング、10…ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、11FR〜11RR…W/C、12FR〜12RR…キャリパ、13FR〜13RR…ディスクロータ、FL〜RR…車輪。

Claims (7)

  1. 車両における左右駆動輪の車輪速度を求め、前記車両の旋回時における前記左右駆動輪の車輪速度の差に基づいて前記車両の駆動輪ヨーレートを取得する駆動輪ヨーレート取得手段(110)と、
    前記車両におけるステアリング(9)の操作に応じた検出信号を出力する舵角センサ(7)の該検出信号に基づいて操舵角を求め、該操舵角に応じた目標ヨーレートを取得する目標ヨーレート取得手段(120)と、
    前記駆動輪ヨーレート取得手段(110)が取得した前記駆動輪ヨーレートと前記目標ヨーレート取得手段(120)が取得した前記目標ヨーレートの差に基づいて、前記車両の安定性を判定する安定性判定手段(130)と、
    前記安定性判定手段(130)での判定結果に基づいて、前記車両の横滑りを抑制する車両安定化制御を実行する安定化制御手段(140、150)とを有していることを特徴とする車両安定化制御装置。
  2. ドライバによる前記車両の運転操作を示すパラメータに基づいて補正量を求め、前記駆動輪ヨーレート取得手段(110)が取得した前記駆動輪ヨーレートから前記補正量を差し引くことで前記駆動輪ヨーレートを補正する補正手段(200)を備え、
    前記安定性判定手段(130)は、前記駆動輪ヨーレート取得手段(110)が取得した前記駆動輪ヨーレートから前記補正量を差し引いた値と前記目標ヨーレート取得手段(120)が取得した前記目標ヨーレートの差に基づいて、前記車両の安定性を判定することを特徴とする請求項1に記載の車両安定化制御装置。
  3. 前記補正手段(200)は、前記車両の運転操作を示すパラメータとしてエンジン出力を用い、該エンジン出力が大きくなる程、前記補正量を大きく設定して前記駆動輪ヨーレートから差し引くことを特徴とする請求項2に記載の車両安定化制御装置。
  4. 前記補正手段(200)は、前記車両の運転操作を示すパラメータとしてアクセル開度を用い、該アクセル開度が大きくなる程、前記補正量を大きく設定して前記駆動輪ヨーレートから差し引くことを特徴とする請求項2に記載の車両安定化制御装置。
  5. 前記補正手段(200)は、前記車両の運転操作を示すパラメータとしてギア比を用い、該ギア比が大きくなる程、前記補正量を大きく設定して前記駆動輪ヨーレートから差し引くことを特徴とする請求項2に記載の車両安定化制御装置。
  6. 前記補正手段(200)は、前記車両の運転操作を示すパラメータとして前記舵角センサ(7)の検出信号を用いて求められた操舵角を用い、該操舵角が大きくなる程、前記補正量を大きく設定して前記駆動輪ヨーレートから差し引くことを特徴とする請求項2に記載の車両安定化制御装置。
  7. 前記車両が前輪駆動車両である場合に、前記舵角センサ(7)の検出信号を用いて求められた操舵角を用い、該操舵角が大きくなる程、大きくなる補正量を求め、前記駆動輪ヨーレート取得手段(110)が取得した前記駆動輪ヨーレートから前記補正量を差し引くことで前記駆動輪ヨーレートを補正する補正手段(200)を備えていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両安定化制御装置。
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