JP2007150004A - 窒化物半導体レーザ素子の製造方法 - Google Patents

窒化物半導体レーザ素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】コーティング膜を形成する前に、共振器端面をプラズマ雰囲気に曝露することによって汚染物などを除去しても、初期CODレベルを向上させることができる窒化物半導体レーザ素子の製造方法を提供する。
【解決手段】窒化物半導体層を形成した基板を劈開して共振器端面16、17を形成し、その上にコーティング膜18、19を形成して窒化物半導体レーザバー10とし、これを分割して窒化物半導体レーザ素子を作製する。共振器端面16、17上にコーティング膜18、19を形成する前に、共振器端面16、17を、窒素ガスを含むガスからなるプラズマ雰囲気に曝露する。
【選択図】図2

Description

本発明は、窒化物半導体層を備えた半導体レーザ素子の製造方法に関する。
近年、赤色半導体レーザ素子を用いたDVDよりも大きな記憶容量を有する光ディスクに用いられる、青紫色半導体レーザ素子が実用化されている。現在、二層ディスクによるさらなる高容量化および高速書き込みを可能とするために、より高出力で信頼性の高い青紫色半導体レーザ素子が必要とされている。
半導体レーザ素子の信頼性を高めるためには、レーザ光の出射面または反射面である共振器端面の劣化を防ぐ必要がある。そのため、SiO2やAl23などの誘電体膜からなるコーティング膜を共振器端面に形成することが広く行われている。
特許文献1には、劈開により形成される半導体レーザの共振器端面をArプラズマ雰囲気に曝露することにより共振器端面の平坦性を向上させ、共振器端面に形成されるコート膜と共振器端面との密着性を向上させる半導体レーザの製造方法が提案されている。
特開2002‐335053号公報(第13頁‐第15頁、図6、図9)
発明者は、Arプラズマ雰囲気への曝露の効果を検証するため、Arプラズマ雰囲気に曝露した共振器端面について元素分析を行った。その結果、Arプラズマ雰囲気への曝露を行っていない場合に見られるC、Oが、Arプラズマ雰囲気への曝露を行った場合には見られないことを発見した。C、Oは劈開によって共振器端面を形成した後、コーティングを実施するまでの間に付着した自然酸化膜、水分、汚染物などであると考えられる。Arプラズマ雰囲気への曝露に代えて、共振器端面に加熱処理を行っても同様の結果が得られた。
これらのことから、半導体レーザ素子の信頼性の向上のためには、共振器端面のC、Oを除去した上で、コーティング膜を形成することが必要であり、加熱処理またはArプラズマ雰囲気への曝露により、このようなコーティングが実現できると言える。
しかし、Arプラズマ雰囲気への曝露を行うと、このような共振器端面からのC、Oの除去が行えるものの、同時に共振器端面に、以下に説明するように損傷を与えていることも分かった。
室温において、出力500W、5分間のArプラズマ雰囲気への曝露を行いコーティング膜を形成した窒化物半導体レーザ素子と、Arプラズマ雰囲気への曝露を行わずにコーティング膜を形成した窒化物半導体レーザ素子とを作製し、これらの素子のエージング前後のCODレベルを測定した結果を図7に示す。エージング条件は、雰囲気温度70℃、出力60mWのAPC(Automatic Power Control;定出力制御)駆動である。図7は、横軸をエージング時間、縦軸をCODレベルとし、これらの素子のCODレベルをプロットしたものである。ここで、CODレベルとは、COD(Catastrophe Optical Damage;瞬時光学損傷)が発生する臨界出力である。また、CODレベルの測定条件は幅50nsec、デューティ50%、室温のパルス測定である。
図7から、エージング前は、Arプラズマ雰囲気への曝露を行っていない窒化物半導体レーザ素子の方がCODレベルすなわち初期CODレベルが高いことが分かる。これは、Arプラズマ雰囲気への曝露が共振器端面に損傷を与えたためと考えられる。
エージング後は、Arプラズマ雰囲気への曝露を行わなかった半導体レーザ素子はCODレベルがエージング前に比べて著しく低下している。一方、Arプラズマ雰囲気への曝露を行った半導体レーザ素子は、CODレベルはエージング前に比べて低下していたものの、Arプラズマ雰囲気への曝露を行わなかった半導体レーザ素子よりも高いことが分かる。つまり、Arプラズマ雰囲気への曝露を行うことで、エージングによるCODレベルの経時劣化を抑制できていると言える。
これは、Arプラズマ雰囲気への曝露を行っていない窒化物半導体レーザ素子では、共振器端面に存在している自然酸化膜などの不純物によって共振器端面とコーティング膜との界面に非発光再結合を引き起こす界面準位が存在し、エージング中の発熱により共振器端面が経時劣化したものと考えられる。一方、Arプラズマ雰囲気への曝露を行った窒化物半導体レーザ素子では、共振器端面とコーティング膜との界面には非発光再結合を引き起こす界面準位がArプラズマ雰囲気への曝露を行っていない場合と比べて減少しており、エージング中の発熱が少なく、共振器端面の経時劣化も抑制されているため、CODレベルの経時劣化が抑制されたものと考えられる。
つまり、Arプラズマ雰囲気への曝露は、CODレベルの経時劣化は抑制できるという利点はあるものの、初期CODレベルが低下してしまうという問題点も有している。初期CODレベルの低下は窒化物半導体レーザ素子の高出力化を実現するためには深刻な問題となる。例えば、図7に示す特性を有する半導体レーザ素子の場合、Arプラズマ雰囲気への曝露を行ったものは、初期CODレベルが200mWであるため、それ以上の高出力化は望めない。
以上から、高出力での駆動が可能であり、かつ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を作製するためには、初期CODレベルを高くし、かつエージングによるCODレベルの経時劣化を抑制する必要がある。
そこで、本発明は、共振器端面に形成された自然酸化膜などの不純物を除去し、信頼性を向上させるとともに、共振器端面の損傷を低減することで初期CODレベルも向上させることのできる窒化物半導体レーザ素子の製造方法を提供することを目的とする。
なお、Arプラズマ雰囲気への曝露が共振器端面に損傷を与えていることは上述の通りであるが、具体的にどのような損傷かはこれまでほとんど知られていなかった。発明者が鋭意研究を行ったところ、窒化物半導体からなる共振器端面においてArプラズマ雰囲気への曝露により窒素の量が減少することが分かった。以下にこの詳細を述べる。
Arプラズマ雰囲気への曝露を行った窒化物半導体レーザ素子について、共振器端面の表面から内部に向かってスパッタエッチングしながらAES(Auger Electron Spectroscopy;オージェ電子分光分析)測定によってGaとNの原子数の割合(原子数比)の測定を行った。測定はGaNが表面に現れている領域において行った。図8は、縦軸がGaに対するNの割合(原子数比)、横軸がスパッタエッチング時間である。ここで、1分間のスパッタエッチングは、約3nmの深さに相当する。図8から、最表面(図中横軸0の位置)において、Arプラズマ雰囲気への曝露によって窒素量が減少していることがわかる。
これは、窒化物半導体からなる共振器端面をArプラズマ雰囲気に曝露したことによって、Arプラズマのエネルギーにより窒素が表面から離脱したものと考えられる。窒素が離脱すると、非発光センターが増加して非発光再結合の確率が増加し、それに伴って発熱が増加するので、Arプラズマ雰囲気への曝露によって初期CODレベルが低下したものと考えられる。
また、特許文献1では、コーティング膜の形成前に共振器端面に付着している水分や汚染物を除去するために、加熱処理を併せて行うのが好ましいとされている。このように、端面コーティング前の表面クリーニングを目的とした加熱処理は一般的に行われているが、加熱処理によっても、Arプラズマ雰囲気への曝露と同様に、窒素の離脱および初期CODレベルの低下が生じることが同様の測定により判明している。
上記目的を達成するために本発明は、基板上に窒化物半導体層を形成する窒化物半導体層形成工程と、前記窒化物半導体層を形成した前記基板を劈開して互いに平行な2個の共振器端面を形成する劈開工程と、前記共振器端面にコーティング膜を形成するコーティング膜形成工程とを備える窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記劈開工程と前記コーティング膜形成工程との間に、窒素ガスを含むガスからなるプラズマ雰囲気に前記共振器端面を曝露する曝露工程を有することを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記曝露工程から前記コーティング膜形成工程が完了するまでの間、前記共振器端面を大気曝露しないことを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記曝露工程におけるプラズマ雰囲気が、窒素のみからなるガスから生成されることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記曝露工程におけるプラズマ雰囲気が、窒素およびArからなるガスから生成されることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記曝露工程において、前記共振器端面には前記コーティング膜を構成する元素を含む膜が形成されていないことを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記曝露工程において、前記窒化物半導体層を形成した基板が100℃以上500℃以下に加熱した状態であることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記曝露工程において、前記プラズマ雰囲気に前記共振器端面を暴露する時間が30秒以上20分以下であることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記曝露工程におけるプラズマ雰囲気が、電子サイクロトロン共鳴によって生成されることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記曝露工程において、前記電子サイクロトロン共鳴におけるマイクロ波の出力が200W以上800W以下であることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記コーティング膜の少なくとも一方がAl、Ti、Si、Y、Nb、Ta、Zr、HfもしくはZnの酸化物またはAlもしくはSiの窒化物またはAlもしくはSiの酸窒化物であることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記劈開工程と前記曝露工程との間に、希ガスおよび窒素ガスからなるガスからなるプラズマ雰囲気に前記共振器端面を曝露する予備曝露工程を備えることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記劈開工程と前記曝露工程との間に、希ガスからなるプラズマ雰囲気に前記共振器端面を曝露する予備曝露工程を備えることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記予備曝露工程において前記希ガスがArであることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の窒化物半導体レーザ素子特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記予備曝露工程において前記窒化物半導体層を形成した基板が100℃以上500℃以下に加熱した状態であることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記予備曝露工程において前記プラズマ雰囲気に前記共振器端面を暴露する時間が30秒以上20分以下であることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記予備曝露工程におけるプラズマ雰囲気が、電子サイクロトロン共鳴によって生成されることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記予備曝露工程において前記電子サイクロトロン共鳴におけるマイクロ波の出力が200W以上800W以下であることを特徴とする。
本発明によると、曝露工程において、窒素ガスを含むガスからなるプラズマ雰囲気に共振器端面を曝露することにより、共振器端面の自然酸化膜、水分、汚染物などを除去するとともに、窒素ガスのプラズマによって窒素を供給し、共振器端面における窒素の離脱を抑制できる。したがって、本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法によると、信頼性が高く、初期CODレベルも向上した窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
また、本発明によると、曝露工程において共振器端面にはコーティング膜を構成する元素を含む膜が形成されていないため、共振器端面の自然酸化膜、水分、汚染物などを容易に除去することができる。
また、本発明によると、予備曝露工程を設けることにより、共振器端面の自然酸化膜、水分、汚染物などを十分に除去することができる。
また、本発明によると、曝露工程または予備曝露工程において、窒化物半導体層が形成された基板を100℃以上500℃以下に加熱した状態とすることにより、電極部などを破壊することなく、共振器端面から自然酸化膜、水分、汚染物などを加熱しない場合と比べてより確実に除去することができる。
また、本発明によると、曝露工程または予備曝露工程において、共振器端面をプラズマ雰囲気に曝露する時間を30秒以上20分以下とすることにより、共振器端面からの窒素の離脱を抑制しつつ、自然酸化膜、水分、汚染物などを除去することができる。
また、本発明によると、曝露工程または予備曝露工程において、プラズマ雰囲気は電子サイクロトロン共鳴によって生成することができ、このときのマイクロ波の出力を200W以上800W以下とすることにより、共振器端面からの窒素の離脱を抑制しつつ、自然酸化膜、水分、汚染物などを除去することができる。
また、本発明によると、コーティング膜を、窒化物半導体レーザの発振波長域において吸収係数が十分小さく、熱的に安定なAl、Ti、Si、Y、Nb、Ta、Zr、HfもしくはZnの酸化物またはAlもしくはSiの窒化物またはAlもしくはSiの酸窒化物とすることにより、窒化物半導体レーザ素子の耐久性、信頼性を高めることができる。
《第1の実施形態》
本発明の第1の実施形態について図を用いて説明する。図1は第1の実施形態に係る窒化物半導体レーザバーの共振器長方向に平行な方向から見た正面図、図2は共振器長に垂直な方向から見た窒化物半導体レーザバーの側面図、図3はECRスパッタリング装置の概略構成図、図4は窒化物半導体レーザ装置の概略構成図である。
窒化物半導体レーザバー10は、図1に示すように、n型GaN基板11側から順に、n‐AlGaInNバッファ層21、n‐AlGaInNクラッド層22、n‐AlGaInNガイド層23、AlGaInN多重量子井戸活性層24、p‐AlGaInNガイド層25、p‐AlGaInNクラッド層26、p‐AlGaInNコンタクト層27が積層されている。各層の混晶比は、適宜調節されるものであり、本発明の本質とは関係ない。なお、活性層24にはAs、PなどのV族材料が0.01〜10%程度含まれていてもよい。
p‐AlGaInNガイド層25、p‐AlGaInNクラッド層26およびp‐AlGaInNコンタクト層27の少なくとも一部には、共振器方向に延伸したストライプ状のリッジ13が設けられる。ストライプの幅は、1.2〜2.4μm程度、代表的には1.5μm程度である。
p‐AlGaInNコンタクト層27に接してp電極14が設けられ、p電極14下部には、リッジ13部分を除いて絶縁膜12が設けられている。このように、窒化物半導体レーザバー10は、いわゆるリッジストライプ構造を有している。さらに、窒化物半導体レーザバー10の裏面側には、n電極15が形成されている。
窒化物半導体レーザバー10は、基板にこれらの各層および電極が形成された窒化物半導体ウエハをダイヤモンドポイントによるスクライブおよびブレークの手法により劈開したものである。この劈開してできた面が、図2に示す互いに平行な共振器端面16、17である。
また、光出射側の共振器端面16には、図2に示すように反射率が5%程度の低反射コーティング膜18が形成され、光反射側の共振器端面17には、反射率が95%程度の高反射コーティング膜19が設けられている。
次に、コーティング膜18、19の形成について説明する。
<ECRスパッタリング装置>
まず、コーティング膜18、19の形成に用いる装置について説明する。コーティング膜18、19の形成には、プラズマ雰囲気への曝露とコーティングを大気に曝露することなく連続的に行うことができる真空機構を備えた装置、例えば図3に示すECR(Electron Cyclotron Resonance;電子サイクロトロン共鳴)スパッタリング装置40を用いる。
図3を用いてECRスパッタリング装置40の構成について説明する。ECRスパッタリング装置40は、大きく分けて成膜炉50とプラズマ生成室60とからなる。成膜炉50は、ガス導入口51、ターゲット52、加熱用ヒータ53、試料台54、シャッタ55および排気口56を備える。試料台54は、コーティングを行う面、すなわち共振器端面16または共振器端面17に成膜が行われるような向きでホルダー(不図示)に取り付けられた窒化物半導体レーザバー10を載置する。排気口56には真空ポンプ(不図示)が取り付けられており、ここから成膜炉50内部の気体を排気することができる。ターゲット52にはRF(Radio‐Frequency;高周波)電源57が接続されている。また、プラズマ生成室60は、ガス導入口61、マイクロ波導入口62、マイクロ波導入窓63、磁気コイル64を備え、マイクロ波が、マイクロ波導入口62からマイクロ波導入窓63を経て導入されることにより、ガス導入口61から導入されたガスからプラズマが生成される。
<炉内酸化>
コーティング膜18、19の形成に先立って、成膜炉50内部を酸化させる。この炉内酸化を行う理由について、以下に説明する。
ECRスパッタリング装置40での成膜は、AlやSiなどのメタルのターゲット材からなるターゲット52をスパッタリングして、試料台54に載置された窒化物半導体レーザバー10の表面でプラズマ状態の酸素および窒素と反応させることでAlやSiなどのターゲット材の酸化物および窒化物の膜を形成するのが一般的である。このとき、窒化物半導体レーザバー10表面近傍以外の成膜炉50の内部にはターゲット材のメタルが酸化、窒化していない状態で付着する。また、ターゲット52の表面も酸化、窒化しておらず、ターゲット材がメタルの状態で露出している。成膜炉50の内部がこのような状態であるときにプラズマ雰囲気への曝露を行うと、ターゲット52や成膜炉50の内部に付着したメタルの状態のターゲット材がスパッタリングされ、窒化物半導体レーザバー10の表面に付着することになる。
コーティング膜18、19を形成する際には、ターゲット52をスパッタリングするために、RF電源57によりRF電圧をターゲット52に印加するが、プラズマ雰囲気への曝露時にはRF電圧は印加しない。それにもかかわらず、ターゲット52にスパッタリングが起こるのは、RF電圧を印加しなくてもプラズマを発生させると、数V程度であるがターゲット52に必ず電位が自己生成されるからである。たとえ数V程度であってもターゲット52に電位が生じると、RF電圧を印加する場合に比べると微量ではあるが、ターゲット52はスパッタリングされる。また、場合によっては成膜炉50の内部に付着したメタルの状態のターゲット材もスパッタリングされる。
プラズマ雰囲気として、Arガスのみからなるプラズマを発生させる場合は、ターゲット52のAlやSiなどのターゲット材がスパッタリングされ、共振器端面16、17にメタルの状態の膜が形成される。メタルの状態のAlやSiなどは窒化物半導体レーザバー10を分割してできる窒化物半導体レーザ素子の発振波長域の光を吸収するため、共振器端面16、17に存在すると顕著なCODレベルの低下を引き起こす。また、Arガスに窒素ガスを混合すれば、メタルではなく、光吸収のない窒化物の膜が形成されるが、窒化物の膜は応力が強く、共振器端面16、17に形成されると、窒化物半導体レーザ素子の特性に悪影響を及ぼす。特に、このようにRF電圧を印加せずに自然発生的に付着する膜は膜質がよくなく、コーティング膜として不適切である。
このような、プラズマ雰囲気に曝露している際のターゲット52のスパッタリングは、成膜炉50の内部の壁面およびターゲット52の表面をあらかじめ酸化させておくことにより防ぐことができる。ターゲット52の表面が酸化されていると、自己生成電位は小さくなるのでスパッタリングされる量が少なくなる。さらに、ターゲット材がAlの場合、メタルの状態のAlに比べてAlが酸化したAl23はスパッタリングレートが著しく低くスパッタリングされにくい。万が一スパッタリングされたとしても窒化物半導体レーザバー10に付着するのは、メタルと異なり光吸収を引き起こさない酸化物であるため、CODレベルの低下を引き起こすことがない。
炉内酸化の方法としては、以下の2つの手法がある。1つは、酸素のみからなるプラズマを成膜炉50の内部で発生させる手法である。これにより、成膜炉50の内部およびターゲット52の表面のメタルは酸化される。
もう1つは、酸化物の状態でターゲット52からスパッタリングされるような流量の酸素ガスをガス導入口51から成膜炉50の内部に流した上で、ターゲット52にRF電圧を印加する手法である。これにより、ターゲット材は酸化物の状態でターゲット52からスパッタリングされると窒化物半導体レーザバー10の表面付近のみならず、成膜炉50の内部全体を、ターゲット材のメタルではなく酸化物で覆うことができる。このような酸素ガスの流量は、出力一定のRF電圧をターゲット52に印加しつつ、酸素ガスの流量を増加させていった際に、ターゲット52の表面の電位をモニターすればよい。酸素ガスの流量を増加させていくと、ある流量で電位が急激に低くなる。これは、ターゲット材が十分に酸化していることを意味するので、この流量以上の酸素ガスを流してRF電圧を印加すると、ターゲット52からターゲット材が酸化物の状態でスパッタリングされ、ターゲット52および成膜炉50の内部はターゲット材の酸化物で覆われることとなる。
なお、これらの作業は窒化物半導体レーザバー10を成膜炉50の内部に導入する前に行うか、導入した後であれば、シャッタ55を閉じた状態で行わなければならない。また、成膜炉50とは独立して、プラズマ雰囲気への曝露を行うための曝露専用室を有する装置であれば、炉内酸化は必ずしも必要ではない。
<プラズマ雰囲気への曝露>
次に成膜炉50の内部の試料台54に載置された窒化物半導体レーザバー10の共振器端面16、17において、窒素離脱を引き起こさずに自然酸化膜、水分、汚染物などを除去するため、窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気または窒素ガスを含むガスからなるプラズマ雰囲気に共振器端面16および共振器端面17を含む窒化物半導体レーザバー10を曝露する。この条件を表1に示す。ここで、比較のために行った、プラズマ雰囲気がArガスからのみなるものである場合についても条件を示す。
Figure 2007150004
表1の条件でECRスパッタリング装置40にガス導入口51およびガス導入口61からガスを導入し、プラズマを発生させると、成膜炉50の内部に載置された窒化物半導体レーザバー10の共振器端面16または共振器端面17は、直下のシャッタ55を開くとプラズマ雰囲気に曝露される。
<コーティング膜の形成>
次に、共振器端面16、17にコーティング膜18、19を形成する。第1の実施形態では、光出射側の共振器端面16にはコーティング膜18として、酸化アルミニウム(Al23)からなる膜を形成する。まず、Arガスを流量40sccm、酸素ガスを流量6〜7sccmでECRスパッタリング装置40に導入し、プラズマを発生させる。そして、ターゲット52にRF電圧を印加した後、シャッタ55を開くと、窒化物半導体レーザバー10の共振器端面16にAl23からなるコーティング膜18が形成される。
シャッタ55を開いている時間は、コーティング膜18が所望の反射率が得られる厚さとなるように設定する。光出射側のコーティング膜は、低反射率となるように厚さを設定するのが普通であり、第1の実施形態では、反射率が5%となるようにAl23の厚さを80nmとした。コーティング膜18の形成中に、膜の厚さをモニターするシステムが備えられている場合は、それに従ってシャッタ55の開閉を制御すればよい。
続いて、窒化物半導体レーザバー10を成膜炉50の内部から取り出すことなく反転させて共振器端面17をシャッタ55側に向け、光反射側の共振器端面17に、95%程度の高反射率となるようなコーティング膜19を形成する。高反射率とするため、屈折率が異なる材料を交互に積層するのが一般的である。第1の実施形態では、Al23、酸化シリコン(SiO2)、酸化チタン(TiO2)を用いて、共振器端面17側から順に、Al23/SiO2/TiO2/SiO2/TiO2/SiO2/TiO2/SiO2/TiO2/SiO2なるコーティング膜19が形成される。なお、窒化物半導体レーザバー10を反転させる際に、成膜炉50の内部から一度取り出しても問題ない。
光反射側の共振器端面17においては、光密度が光出射側の共振器端面16に比べて低いため、発熱が少なく、COD破壊が生じにくい。従って、本発明は少なくとも光出射側の共振器端面16に適用すれば効果が得られる。しかし、光反射側の共振器端面17においてCOD破壊が生じることもあるため、光反射側の共振器端面17にも適用するのが好ましい。
第1の実施形態では、光出射側の共振器端面16で行ったのと同様の手順で、窒素ガスを含むガスからなるプラズマ雰囲気への曝露およびAl23からなる膜を形成した後、続けてSiO2/TiO2/SiO2/TiO2/SiO2/TiO2/SiO2/TiO2/SiO2の順に膜を積層する。各層の厚さは、全体としての反射率が所望の反射率となるように設定する。
第1の実施形態では、反射率が95%となるように、各層の厚さは共振器端面17側から順に、6nm/70nm/45nm/70nm/45nm/70nm/45nm/70nm/45nm/140nmと設定した。
本発明では、窒素ガスを含むガスからなるプラズマ雰囲気に曝露した後、大気曝露することなくコーティング膜18、19を形成することが重要であるため、窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気への曝露後、大気曝露せずにコーティング膜18、19を形成して共振器端面16、17を覆い尽くした後であれば、大気曝露した後でもさらに別のコーティング膜を追加して形成することも可能である。これにより、多材料、多層のコーティング膜を形成することができるため、窒化物半導体素子の設計の自由度が高まる。したがって、コーティング膜19の2層目以降の膜の形成は、窒素ガスを含むガスからなるプラズマ雰囲気への曝露および1層目のAl23からなる膜を形成した後、大気曝露して別の成膜装置で行ってもよい。
なお、コーティング膜18、19の材料としては、Al、Ti、Si、Y、Nb、Ta、Zr、Hf、Znの酸化物やAl、Siの窒化物、あるいはAl、Siの酸窒化物、Mg、Caの弗化物などを用いることができる。
以上のようにして、低反射コーティング膜18および高反射コーティング膜19の形成を完了した窒化物半導体レーザバー10は、窒化物半導体レーザ素子に分割される。図3に示すように、分割された窒化物半導体レーザ素子39は、AlNやSiCなどからなるサブマウント32上にマウントされ、サブマウント32ごとステム31にマウントされる。最後にステム31のサブマウント32がマウントされた面に配置されたピン33と配線34により接続され、キャップ36により大気封止され、窒化物半導体レーザ装置30が完成する。ステム31のサブマウント32がマウントされた面と反対側の面には2本のリード線35が設けられている。また、キャップ36には窒化物半導体レーザ素子39から出射されたレーザ光を外部に取り出せるように、ガラスからなる窓37が設けられている。
上記のようにして作製された窒化物半導体レーザ装置30で、曝露したプラズマ雰囲気が、実施例1の窒素ガスのみからなるもの、実施例2のArガスと窒素ガスとを混合したガスからなるもの、比較例のArガスのみからなるものについて、それぞれ初期状態と200時間のエージング後のCODレベルを測定した。その結果を図5および表2に示す。図5は、横軸をエージング時間、縦軸をCODレベルとしてプロットしたものである。エージング条件は、雰囲気温度70℃、出力60mWのAPC駆動である。図5は、横軸をエージング時間、縦軸をCODレベルとし、これらの素子のCODレベルをプロットしたものである。CODレベルの測定条件は幅50nsec、デューティ50%、室温のパルス測定である。
Figure 2007150004
この結果、実施例1および実施例2が、比較例に比べて初期状態およびエージング後ともに高いCODレベルが得られていることが分かる。これは、実施例1および実施例2ではプラズマ雰囲気中に窒素が含まれることで、共振器端面16、17からの窒素の離脱を抑制できているためと考えられる。さらに、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例1の方が初期状態およびエージング後ともに高いCODレベルが得られている。これは、プラズマ中にArも含まれているため共振器端面16、17に損傷を与えているものと考えられる。実施例1ではプラズマ雰囲気は窒素のみであり、Arが含まれていないため、共振器端面16、17に損傷を与えることなく窒素の離脱を抑制できているため、比較例および実施例2と比べて高いCODレベルが得られていると考えられる。
また、エージング後でも最も高いCODレベルを維持していることから、窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気への曝露によっても、Arガスのみからなるプラズマ雰囲気への曝露と同様に共振器端面16、17の自然酸化膜、水分、汚染物などを除去できていることが示唆される。
上記の結果を受けて、窒素ガスを含むガスからなるプラズマ雰囲気への曝露が共振器端面16、17からの窒素離脱を抑制していることを確認するため、AES測定により、上記の3条件でプラズマ雰囲気への曝露を行った共振器端面16、17の窒素量を測定した。その結果を表3に示す。ここで、窒素量とは劈開した直後の共振器端面16、17の単位面積あたりの窒素量を100%とした値である。
Figure 2007150004
窒素量は、比較例が最も少なく、実施例1が最も多かったことから、共振器端面16、17に窒素量が多い窒化物半導体レーザ素子ほどCODレベルが高いという相関が確認できる。
第1の実施形態では、プラズマ生成に用いるマイクロ波の出力は500Wであるが、この出力は200W以上であれば共振器端面16、17の自然酸化膜、水分、汚染物などを除去できる。しかし、800Wよりも高いと、窒素ガスのみからなるプラズマであっても共振器端面16、17において窒素離脱が生じるため好ましくない。これは、おそらくプラズマ中に含まれる窒素イオンにより共振器端面16、17が損傷しているためと考えられる。
また、第1の実施形態では、プラズマ雰囲気への曝露時間は5分としたが、30秒以上であれば共振器端面16、17の自然酸化膜、水分、汚染物などを除去できる。しかし、20分以上であると、マイクロ波の出力が200W以上800W以下であっても共振器端面16、17において窒素離脱が生じるため好ましくない。また、プラズマ雰囲気に混合ガスを用いる場合、窒素ガスが含まれていれば、Ar以外にHe、Ne、Xeなどの希ガスを混合してもよいし、2種類以上の希ガスを混合してもよい。
このように、窒素ガスを含むガスからなるプラズマ雰囲気への曝露を行うことにより、窒化物半導体レーザ素子の共振器端面において、窒素を離脱させることなく、自然酸化膜、水分、汚染物などを除去することができ、CODレベルを向上させることができるため、窒化物半導体レーザ装置を高出力で駆動した時でも高い信頼性が得られる。
なお、第1の実施形態では、劈開によって形成した窒化物半導体レーザ素子の端面に関して詳細に記述したが、RIE(Reactive Ion Etching;反応性イオンエッチング)法、ICP(Inductive Coupled Plasma;誘導結合プラズマ)法などの気相エッチング、KOH(水酸化カリウム)などの溶液によるウエットエッチングによって形成された端面(エッチドミラー)においても、エッチングの際の窒素離脱が確認されており、本発明はなんら問題なく適用できる。
《第2の実施形態》
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、プラズマ雰囲気への曝露を、窒化物半導体レーザ素子を加熱した状態で行う点が異なる以外は第1の実施形態と同様である。
第2の実施形態では、図3に示すECRスパッタリング装置40によって、図3に示す構成の窒化物半導体レーザバー10を、加熱用ヒータ53によって200℃に加熱した状態で窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気に曝露する。
このような処理を施して作製した窒化物半導体レーザ素子を用いた図4に示す構成の窒化物半導体レーザ装置30について、200時間のエージング後のCODレベルを測定した。その結果を、図6に示す。図6は、横軸をエージング時間、縦軸をCODレベルとしてプロットしたものである。図6には室温で窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気に曝露した窒化物半導体レーザ装置の、同条件でのエージング後のCODレベルの測定結果も併せて示している。エージング条件は、雰囲気温度70℃、出力60mWのAPC駆動であり、CODレベルの測定条件は幅50nsec、デューティ50%、室温のパルス測定である。図6から、過熱した状態で窒素ガスのみのプラズマ雰囲気への曝露を行うことによって、さらにCODレベルが向上することが分かる。
続いて、プラズマ雰囲気に曝露する際の窒化物半導体レーザバー10の加熱温度と共振器端面16、17における窒素量との関係をAES測定によって測定した。その結果を表4に示す。ここで、窒素量とは、第1の実施形態と同様に、劈開した直後の共振器端面16、17の単位面積あたりの窒素量を100%とした値である。
Figure 2007150004
表4から、窒化物半導体レーザバー10を加熱した状態で窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気への曝露を行うことにより、より効果的に共振器端面16、17からの窒素の離脱を抑制できていることが分かる。この加熱温度は100℃以上500℃以下が好ましい。500℃よりも高いと、電極部などが破壊され、電圧上昇を引き起こすことがあるからである。第2の実施形態では、プラズマ雰囲気が窒素ガスのみからなる場合について記載した。しかし、プラズマ雰囲気は、窒素ガスが含まれていればAr、He、Ne、Xeなどの希ガスを混合したガスを用いてもよいし、2種類以上の希ガスを混合してもよい。
《第3の実施形態》
次に本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、プラズマ雰囲気への曝露を曝露専用室で行う点が異なる以外は第1の実施形態と同様である。
第3の実施形態では、ECRスパッタリング装置が図3に示すものとは異なり、プラズマ生成室と成膜炉との間に曝露専用室(不図示)が設けられている。曝露専用室と成膜炉とは高真空下で接続されており、高真空下において窒化物半導体レーザバー10を曝露専用室と成膜炉との間で搬送可能である。曝露専用室には、ターゲットがなく、プラズマ源としてRFプラズマ源が装備されている。また、成膜炉にはRF電源に接続されたターゲットが設けられている。ECRスパッタリング装置をこのように構成することにより、成膜炉の内部に対して炉内酸化を行う必要がない。
このような構成のECRスパッタリング装置において、曝露専用室で窒化物半導体レーザバー10の共振器端面16、17を窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気に曝露した後、高真空下で窒化物半導体レーザバー10を成膜炉に搬送した。成膜炉では、共振器端面16、17に厚さ50nmの酸化タンタル(Ta25)を形成した。この窒化物半導体レーザバー10から得られたチップを用いて窒化物半導体レーザ装置30を作製し、第1の実施形態、第2の実施形態と同様に試験を行った。
その結果、第3の実施形態においても、共振器端面の窒素量、CODレベルについて、第1の実施形態、第2の実施形態と同様の結果が得られた。
《第4の実施形態》
次に本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、プラズマ雰囲気への曝露を2段階で行う点が異なる以外は第1の実施形態と同様である。
第4の実施形態では、プラズマ雰囲気への曝露を2段階で行い、第1段階ではArガスのみからなるプラズマ雰囲気、第2段階では窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気に曝露する。第1段階のArガスのみからなるプラズマ雰囲気への曝露により共振器端面16、17に形成された自然酸化膜などの不純物を除去する。第2段階では、第1段階で窒素が離脱した共振器端面16、17に再度窒素を付着させ、窒素量を回復させることができる。このときの条件の一例を表5に示す。
Figure 2007150004
表5の条件でプラズマ雰囲気に曝露した窒化物半導体レーザバー10について、共振器端面16、17の窒素量を測定したところ、98%であった。ここで、窒素量とは、第1の実施形態と同様に、劈開した直後の共振器端面16、17の単位面積あたりの窒素量を100%とした値である。
プラズマ雰囲気への曝露の第1段階においては、プラズマ雰囲気として、Arガスのみからなるものの他にHe、Ne、Xeなどの希ガスを用いてもよいし、これらのガスと窒素ガスとの混合ガスを用いてもよい。
第1段階でのマイクロ波の出力は200W以上800W以下が好ましい。200W以下では共振器端面16、17の自然酸化膜、水分、汚染物などが除去できず、800W以上では共振器端面16、17での窒素の離脱が著しく、第2段階の窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気への曝露を行っても窒素量が回復しないためである。
また、第1段階でのプラズマ雰囲気への曝露時間は30秒以上20分以内が好ましい。30秒以下では共振器端面16、17の自然酸化膜、水分、汚染物などが除去できず、20分以上では窒素の離脱が著しく、第2段階の窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気への曝露を行っても窒素量が回復しないためである。
また、第1段階のプラズマ雰囲気へ曝露する際の窒化物半導体レーザバーの温度は300℃としたが、特に加熱を行わず室温で行ってもよい。ただし、500℃以上では電極部などが破壊され、電圧上昇を引き起こすことがあるため好ましくない。
第2段階でのマイクロ波の出力は200W以上800W以下が好ましい。200W以下では第1段階で共振器端面16、17において減少した窒素量が回復する程度に窒素を補うことができないからである。一方、800W以上では窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気といえども共振器端面16、17において窒素が離脱するからである。これは、恐らくプラズマ雰囲気中の窒素イオンによって生じた損傷であると考えられる。
また、第2段階での窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気への曝露時間は30秒以上20分以内が好ましい。30秒以下では第1段階で共振器端面16、17において減少した窒素量が回復する程度に窒素を補うことができず、20分以上では窒素ガスのみからなるプラズマ雰囲気といえども共振器端面16、17において窒素が離脱するからである。
また、第2段階のプラズマ雰囲気へ曝露する際の窒化物半導体レーザバーの温度は、本実施形態では300℃としたが、第1の実施形態と同様に加熱しなくても、共振器端面16、17において窒素の離脱を抑制するという本発明の効果は得られる。しかし、第2の実施形態で説明した理由から、100℃以上500℃以下に加熱した状態で行うことが好ましい。
第4の実施形態においても、共振器端面の窒素量、CODレベルについて、第1〜第3の実施形態と同様の結果が得られた。また、第4の実施形態では、プラズマ雰囲気への曝露は2段階の処理を行ったが、最終段階で曝露するプラズマ雰囲気が窒素ガスを含むガスからなるものであれば3段階以上であっても、共振器端面の窒素量、CODレベルについて同等の効果が得られる。各段階においては、プラズマ雰囲気に希ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いてもよいし、希ガスとしては2種類以上の希ガスを混合したものを用いてもよい。
産業上利用の可能性
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、単体の半導体レーザ装置、ホログラム素子を備えたホログラムレーザ装置、駆動もしくは信号検出などの処理のためのICチップと一体化してパッケージされたオプトエレクトロニクスIC装置、導波路あるいは微小光学素子と一体化してパッケージされた複合光学素子などに応用可能である。また、本発明は、これらの装置を備えた光記録システム、光ディスクシステムや、紫外から緑色領域の光源システムなどに応用可能である。
本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体レーザバーの正面図 本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体レーザバーの側面図 ECRスパッタリング装置の概略構成図 本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体レーザ装置の概略構成図 本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体レーザ装置と比較例のCODレベルのエージングによる変化を示すグラフ プラズマ雰囲気への曝露時の窒化物半導体レーザバーの温度とエージング後のCODレベルの関係を示すグラフ Arプラズマ雰囲気への曝露を行った窒化物半導体レーザ素子と行っていない窒化物半導体レーザ素子のエージング前後のCODレベルを示すグラフ Arプラズマ雰囲気への曝露を行った窒化物半導体レーザ素子と行っていない窒化物半導体レーザ素子の表面のGaに対する窒素の割合と窒化物半導体レーザ素子の表面のスパッタ時間の関係を示すグラフ。
符号の説明
10 窒化物半導体レーザバー
11 n型GaN基板
12 絶縁膜
14 p電極
15 n電極
16 光出射側共振器端面
17 光反射側共振器端面
18 低反射コーティング膜
19 高反射コーティング膜
21 n‐AlGaInNバッファ層
22 n‐AlGaInNクラッド層
23 n‐AlGaInNガイド層
24 AlGaInN多重量子井戸活性層
25 p‐AlGaInNガイド層
26 p‐AlGaInNクラッド層
27 p‐AlGaInNコンタクト層
30 窒化物半導体レーザ装置
31 ステム
32 サブマウント
33 ピン
34 配線
35 リード線
36 キャップ
37 窓
39 窒化物半導体レーザ素子
40 ECRスパッタリング装置
50 成膜炉
51 ガス導入口
52 ターゲット
53 加熱用ヒータ
54 試料台
55 シャッタ
56 排気口
57 RF電源
60 プラズマ生成室
61 ガス導入口
62 マイクロ波導入口
63 マイクロ波導入窓
64 磁気コイル

Claims (17)

  1. 基板上に窒化物半導体層を形成する窒化物半導体層形成工程と、前記窒化物半導体層を形成した前記基板を劈開して互いに平行な2個の共振器端面を形成する劈開工程と、前記共振器端面にコーティング膜を形成するコーティング膜形成工程とを備える窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、
    前記劈開工程と前記コーティング膜形成工程との間に、窒素ガスを含むガスからなるプラズマ雰囲気に前記共振器端面を曝露する曝露工程を有することを特徴とする、窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  2. 前記曝露工程から前記コーティング膜形成工程が完了するまでの間、前記共振器端面を大気曝露しないことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  3. 前記曝露工程におけるプラズマ雰囲気が、窒素のみからなるガスから生成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  4. 前記曝露工程におけるプラズマ雰囲気が、窒素およびArからなるガスから生成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  5. 前記曝露工程において、前記共振器端面には前記コーティング膜を構成する元素を含む膜が形成されていないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  6. 前記曝露工程において、前記窒化物半導体層を形成した基板が100℃以上500℃以下に加熱した状態であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  7. 前記曝露工程において、前記プラズマ雰囲気に前記共振器端面を暴露する時間が30秒以上20分以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  8. 前記曝露工程におけるプラズマ雰囲気が、電子サイクロトロン共鳴によって生成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  9. 前記曝露工程において、前記電子サイクロトロン共鳴におけるマイクロ波の出力が200W以上800W以下であることを特徴とする請求項8に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  10. 前記コーティング膜の少なくとも一方がAl、Ti、Si、Y、Nb、Ta、Zr、HfもしくはZnの酸化物またはAlもしくはSiの窒化物またはAlもしくはSiの酸窒化物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  11. 前記劈開工程と前記曝露工程との間に、希ガスおよび窒素ガスからなるガスからなるプラズマ雰囲気に前記共振器端面を曝露する予備曝露工程を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  12. 前記劈開工程と前記曝露工程との間に、希ガスからなるプラズマ雰囲気に前記共振器端面を曝露する予備曝露工程を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  13. 前記予備曝露工程において、前記希ガスがArであることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  14. 前記予備曝露工程において、前記窒化物半導体層を形成した基板が100℃以上500℃以下に加熱した状態であることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  15. 前記予備曝露工程において、前記プラズマ雰囲気に前記共振器端面を暴露する時間が30秒以上20分以下であることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  16. 前記予備曝露工程におけるプラズマ雰囲気が、電子サイクロトロン共鳴によって生成されることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  17. 前記予備曝露工程において、前記電子サイクロトロン共鳴におけるマイクロ波の出力が200W以上800W以下であることを特徴とする請求項16に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
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