JP2007149360A - 燃料電池発電システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池の発電を長期間停止したときにも燃料電池内が還元雰囲気に保たれ、電極触媒の酸化などによる劣化が防止される燃料電池発電システムを提供する。
【解決手段】燃料電池発電システムは、イオン伝導性を有する電解質膜3が一方の面から順に燃料極5と上記燃料極に燃料を導く燃料流路8が設けられる燃料極側セパレータ9とで、他方の面から順に酸化剤極4と上記酸化剤極に酸化剤を導く酸化剤流路6が設けられる酸化剤極側セパレータ7とで挟持される少なくとも1つの単電池を具備する燃料電池スタック10を備え、上記燃料と上記酸化剤とを供給して発電する燃料電池発電システムにおいて、上記燃料電池スタックを停止してから次に起動するまでの間、酸素を還元する能力を有する還元剤41を、上記燃料極または上記酸化剤極の少なくともいずれか一方に連なる空間に供給する。
【選択図】図3

Description

この発明は、定置型コジェネレーションなどで使用される電気化学的な反応を利用して発電する燃料電池発電システムに関するものである。
燃料電池は、電解質を介して一対の電極を相対させ、この一方の電極に燃料を、他方の電極に酸化剤を供給し、燃料の酸化を電池内で電気化学的に反応させることにより化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置である。
燃料電池には電解質によりいくつかの型があるが、近年高出力の得られる燃料電池として、電解質にプロトン伝導性の固体高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池が注目されている。燃料極に水素ガスを、酸化剤極に酸素ガスを供給すると、両極で式(1)、(2)の反応が起こり、燃料極の標準電極電位が0V、酸化剤極の標準電極電位が1.23Vとなり、両極間に1.23Vの起電力を生じる。
負極反応:H=2H+2e・・・(1)
正極反応:2H+2e+1/2O=HO・・・(2)
発電を開始すると燃料極上で水素は水素イオン(プロトン)となり、水を伴って電解質体中を酸化剤極上まで移動し、酸化剤極上で酸素と反応して水を生ずる。
この燃料電池を特別なパージ処理なしに発電を停止した場合、燃料極には燃料が、酸化剤極には空気が滞留した状態になる。この場合、酸化剤極は式(2)に示すように、1Vという高い電位になる。
Journal of The Electrochemical Society Vol.151, E125−E132 (2004)には、固体高分子型燃料電池を、温度65℃では電位0.8V以上、室温では電位1.0Vで作動していると電極に使用されているカーボンが酸化腐食するとの記述がある。酸素還元反応の標準電極電位は、1.23Vであるため、カーボンの腐食電位より高く、燃料電池内に酸素が滞留した状態で放置すると、カーボンの腐食が進行するし、触媒が劣化してしまう恐れがある。
この問題を解決する手段として、燃料電池停止時に電池内を窒素などの不活性ガスでパージして酸素を追い出してから停止する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、水素を含有するパージガスにて電池内の酸素を追い出したのちに密封して停止保管する方法が記載されている。この場合、不活性ガスによるパージと異なり、停止中に酸素が浸入してきても、電池内部の水素が酸素と反応するため、少量の酸素の流入では電池内部は還元雰囲気が保たれる(例えば、特許文献2参照)。
特開2002−280038号公報 特開2002−093448号公報
しかし、不活性ガスでパージした場合、停止直後は電池内部に酸素は存在しないが、長期間の停止では、燃料電池シール部や配管バルブなどから、燃料電池内部に酸素が浸入する。そして、電極はその近傍の酸素濃度(分圧)に応じて電極電位が決まる。酸素の還元が4電子過程の式(2)で進行すると仮定すると、その電極電位E(V)はネルンストの式(3)により算出される。但し、このRは気体定数、Tは絶対温度(単位K)、Fはファラデー定数、pO2は酸素分圧(単位atm)である。
E=1.23+2.303RT/4F×log(pO2)・・・(3)
この式(3)において、2.303RT/4Fは25℃において、0.0148Vとなる。つまり、酸素濃度分圧を一桁下げても、電極電位は14.8mVしか低下しないことを示している。この式(3)に従えば、電極電位Eを1V以下にするためには、酸素濃度分圧を10−15気圧という極限まで下げなければならない。この結果は、ほんの少量の酸素が電池内に浸入しても、電極電位Eは1Vを越えることを示しており、カーボン腐食の可能性があることを示している。このように、不活性ガスによるパージだけでは、長期間電池の運転を停止した場合、酸素が浸入し高電位状態となり触媒の酸化劣化を完全に抑制することは難しいという問題がある。
また、水素と酸素が反応すると水になるため、水素と酸素が消失した分、電池内部は負圧となる。電池内部の負圧は、外気から電池内部への酸素の流入を加速させ、大量の酸素流入により短期間のうちに水素が欠乏してしまうため、長期間の保存は困難となる。水素を多量貯蔵しておけば、ある程度長期間の停止にも対応できるが、気体である水素を多量に貯蔵するためには、かなりのスペースを必要とし、燃料電池システムが大型化するという問題がある。
この発明の目的は、燃料電池の発電を長期間停止したときにも燃料電池内が還元雰囲気に保たれ、電極触媒の酸化などによる劣化が防止される燃料電池発電システムを提供することである。
この発明に係わる燃料電池発電システムは、イオン伝導性を有する電解質膜が一方の面から順に燃料極と上記燃料極に燃料を導く燃料流路が設けられる燃料極側セパレータとで、他方の面から順に酸化剤極と上記酸化剤極に酸化剤を導く酸化剤流路が設けられる酸化剤極側セパレータとで挟持される少なくとも1つの単電池を具備する燃料電池スタックを備え、上記燃料と上記酸化剤とを供給して発電する燃料電池発電システムにおいて、上記燃料電池スタックを停止してから次に起動するまでの間、酸素を還元する能力を有する還元剤を、上記燃料極または上記酸化剤極の少なくともいずれか一方に連なる空間に供給する。
この発明に係わる燃料電池発電システムの効果は、停止時に電池内部に浸入してきた酸素を電極触媒表面上で還元除去できる還元剤が供給されるため、電極触媒の酸化が防止でき、長期間電池出力を安定に維持することができる。
実施の形態1.
図1は、この発明に係わる燃料電池の単位電池の構成断面図である。図2は、この発明に係わる燃料電池スタックの構成断面図である。
この発明に係わる燃料電池は、一般的な固体高分子型燃料電池であり、簡潔に構成について説明する。
固体高分子型燃料電池の単電池2は、図1に示すように、プロトン伝導性の固体高分子電解質を用いた電解質膜3、電解質膜3の片面それぞれに接するように配置され、電解質膜3を挟持する酸化剤極4と燃料極5、酸化剤極4に面するように酸化剤流路6が設けられる酸化剤側セパレータ7、燃料極5に面するように燃料流路8が設けられる燃料側セパレータ9により構成される。
この電解質膜3として、パーフルオロスルホン酸膜(デュポン社製、ナフィオン(登録商標))を使用するが、これに限るものではない。
酸化剤側セパレータ7には、酸化剤としての空気を流通するための酸化剤流路6の溝が図示しない酸化剤供給口から図示しない酸化剤排出口に連なるように形成されている。
また、燃料側セパレータ9には、燃料を流通するための燃料流路8の溝が図示しない燃料供給口と図示しない燃料排出口に連なるように形成されている。
酸化剤極4および燃料極5としては、一般的に高比表面積のカーボンブラック担体に白金などの貴金属微粒子を担持する触媒が用いられる。
そして、固体高分子型燃料電池の燃料電池スタック10は、図2に示すように、燃料電池の出力を高めるために複数の単電池2が電気的に直列に接続され、構造的に積層され、その積層体の両端から金属製の集電板11a、11bで挟み込んで形成される。
次に、燃料電池スタック10の動作について説明する。
酸化剤側セパレータ7の酸化剤供給口から供給される空気は、酸化剤流路6を通って酸化剤極4に供給される。一方、燃料側セパレータ9の燃料供給口から供給される燃料である水素含有ガスは、燃料流路8を通って燃料極5に供給される。このとき、酸化剤極4と燃料極5とを電気的に外部で外部負荷14を介して接続すると、酸化剤極4側では式(2)の反応が生じ、酸化剤流路6を通って未使用の空気と水が、酸化剤排出口から排出される。また、燃料極5側では式(1)の反応が生じ、未反応の燃料は燃料流路8を通じて燃料排出口から排出される。この反応によって得られる電子は、燃料極5から外部負荷14に供給されて仕事をし、酸化剤極4に流れる。
図3は、この発明の実施の形態1に係わる燃料電池発電システム1の構成図である。なお、図3において燃料電池スタック10を簡略化して電解質膜3、酸化剤極4、燃料極5だけで表している。
この発明の実施の形態1に係わる燃料電池発電システム1は、燃料を燃料極5に供給し、未反応で残存する燃料を排出する燃料供給排出部20、空気を酸化剤極4に供給し、未使用な空気を排出する酸化剤供給排出部30および還元剤を燃料電池スタック10に供給する還元剤供給部40を備える。
燃料供給排出部20は、原燃料を供給する原燃料供給源21、原燃料が原燃料供給源21から改質器22に流れる原燃料供給配管23、原燃料を改質して改質燃料を生成する改質器22、改質燃料が改質器22から燃料電池スタック10に流れる改質燃料供給配管24、未反応で残存する燃料が燃料電池スタック10から改質器22に流れる燃料排出配管25、未反応の燃料が改質器22で燃焼されて生成される排ガスが外部に流れる排ガス排出配管26、改質燃料の供給を開始または停止する改質燃料制御バルブ27、未反応の燃料の排出を開始または停止する未反応燃料制御バルブ28から構成される。
改質器22として、炭化水素やアルコールを主成分とする原燃料を改質する水蒸気改質型の改質器などを用いる。そして、改質器22は、水素含有燃料を製造するために、原燃料が供給されると、水蒸気改質して水素を主成分とする改質燃料を生成する改質部51、改質燃料中の一酸化炭素を酸化して二酸化炭素に変える一酸化炭素選択酸化部(CO選択酸化部)52を備える。また、改質器22は、未反応の燃料を燃焼して改質部51に熱源として供給するバーナ53を備える。
なお、原燃料としては、炭化水素、アルコール系など水素原子を含有する燃料が使用可能である。
酸化剤供給排出部30は、外部から空気が燃料電池スタック10に流れる酸化剤供給配管31、未使用の空気が燃料電池スタック10から外部に流れる酸化剤排出配管32、空気の供給を制御する酸化剤供給制御バルブ33、未使用の空気の排出を制御する酸化剤排出制御バルブ34から構成される。
還元剤供給部40は、還元剤41が貯蔵される還元剤貯蔵手段としてのタンク42、タンク42と改質燃料供給配管24とを連通し、還元剤41が燃料極5に流れる還元剤燃料極供給配管43、タンク42と酸化剤供給配管31とを連通し、還元剤41が酸化剤極4に流れる還元剤酸化剤極供給配管44、還元剤41を送り出す還元剤供給手段としてのポンプ45、還元剤燃料極供給配管43を開閉する還元剤燃料極制御バルブ46、還元剤酸化剤極供給配管44を開閉する還元剤酸化剤極制御バルブ47から構成される。
還元剤燃料極供給配管43は、改質燃料供給配管24の改質燃料制御バルブ27の燃料電池スタック10側で接続されている。
また、還元剤酸化剤極供給配管44は、酸化剤供給配管31の酸化剤供給制御バルブ33の燃料電池スタック10側で接続されている。
この実施の形態1においては、還元剤41としてメタノール水溶液を使用している。
なお、条件によりエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、またはその他アルコール類(多価アルコールを含む)、エチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、蟻酸、酢酸などのカルボン酸類、メチルアミンなどアミン類、その他有機物のうち、電池運転温度以下で電極触媒表面上において酸素を還元できる流体(液体または気体)を、還元剤41として利用することができる。
また、有機化合物のうち、シュウ酸、クエン酸などの常温で固体の物質でも、水やその他有機溶剤など還元剤と反応しない流体に溶解させて、電池に供給できるものであれば、利用可能である。
また、ヒドラジン、亜硝酸、亜硫酸、チオ硫酸、一酸化炭素、鉄イオンなどの向き金属イオンなども原理的には利用可能である。
次に、この燃料電池発電システム1の定常発電時の動作について説明する。
燃料供給排出部20において、水素含有燃料を製造するために、改質器22の改質部51に、原燃料供給源21から原燃料供給配管23を通じて原燃料を投入する。改質器22に投入された原燃料は、水素を主成分とする改質燃料に改質され、改質燃料供給配管24を経由して、燃料電池スタック10の燃料極5に供給される。改質燃料制御バルブ27と未反応燃料制御バルブ28は開放されている。
一方、酸化剤供給排出部30において、酸化剤供給配管31を通じて空気が燃料電池スタック10の酸化剤極4に供給される。酸化剤供給制御バルブ33と酸化剤排出制御バルブ34は開放されている。このとき、還元剤燃料極制御バルブ46と還元剤酸化剤極制御バルブ47は閉鎖されている。
そして、燃料極5において水素が還元されてプロトンと電子が生成し、電子は外部負荷14を経由して酸化剤極4に流れる。プロトンは、電解質膜3を伝導して酸化剤極4に達する。酸化剤極4においてプロトンが酸素により酸化されて水が生成される。
発電に使用されなかった水素含有燃料は、燃料排出配管25を経由して改質器22のバーナ53に供給されて燃焼される。この燃焼熱は改質反応の反応熱として消費される。燃焼の排ガスは排ガス排出配管26を通じて外部に排出される。
次に、この燃料電池発電システム1の発電を停止するときの動作について説明する。
なお、この発明において燃料電池発電システム1の停止とは、燃料電池スタック10からの出力を停止し、かつ改質器22から燃料電池スタック10への燃料の供給も停止している状態を意味する。
そして、燃料電池発電システム1が停止しているときには、燃料電池スタック10の酸化剤極4に通じる酸化剤供給制御バルブ33と酸化剤排出制御バルブ34、および、燃料電池スタック10の燃料極5に通じる改質燃料制御バルブ27と未反応燃料制御バルブ28が閉じられている。このようにして燃料電池スタック10の内部、すなわち、酸化剤供給制御バルブ33と酸化剤排出制御バルブ34とにより密閉される空間と改質燃料制御バルブ27と未反応燃料制御バルブ28とにより密閉される空間は酸素がない状態、または定常発電時より燃料電池スタック10の内部の酸素濃度が低い状態になっている。
次に、燃料電池発電システム1を定常発電状態から停止状態に移行する方法について説明する。
定常発電状態において、酸化剤供給制御バルブ33と酸化剤排出制御バルブ34とを閉じて酸化剤極4への空気の供給を中止する。この状態で発電を継続し、燃料極5からプロトンが酸化剤極4に伝達し、酸化剤極4内に残存している酸素を水に変えて酸化剤極4内の酸素を除去する。そして、酸化剤極4内の酸素の除去が完了したときに改質燃料制御バルブ27と未反応燃料制御バルブ28を閉じて燃料の燃料極5への供給を中止する。同時に、外部負荷14との接続を遮断して発電を完全に停止する。
なお、燃料電池発電システム1を定常発電状態から停止状態に移行する方法として、これ以外にも、酸化剤供給配管31から不活性ガスを流してパージする方法、発電を停止するとともに燃料、酸化剤の入口出口すべてのバルブを閉鎖し、電解質膜3中を拡散する水素により、化学的に酸素を除去する方法など、酸素を除去して酸素濃度を低下させて停止する方法であれば、この発明に適用することができる。
次に、燃料電池発電システム1を停止状態で放置する方法について説明する。
上述の移行方法により酸素濃度を低下させて燃料電池発電システム1の発電を停止した後、改質燃料制御バルブ27、未反応燃料制御バルブ28、酸化剤供給制御バルブ33および酸化剤排出制御バルブ34を閉じることにより密閉された燃料電池スタック10の酸化剤極4と燃料極5の内部空間に酸素が侵入してくる前に、還元剤41を流入させる。
この実施の形態1では、液体の50重量パーセントメタノール水溶液を還元剤41として使用する。還元剤41を貯蔵するタンク42と燃料電池スタック10とを接続している還元剤燃料極供給配管43および還元剤酸化剤極供給配管44に設けられた還元剤燃料極制御バルブ46および還元剤酸化剤極制御バルブ47を開放し、所定量のメタノール水溶液を液滴の状態で燃料極5の燃料流路8および酸化剤極4の酸化剤流路6に流入させ、還元剤燃料極制御バルブ46および還元剤酸化剤極制御バルブ47を閉じて放置する。
なお、還元剤41の流入量は、停止期間の長短などで調整される。
3日間停止状態で放置後、未反応燃料制御バルブ28および酸化剤排出制御バルブ34を開放して残存している還元剤41を排出する。次に、燃料極5に改質燃料と酸化剤極4に空気とを供給し、燃料電池スタック10を昇温し、燃料電池スタック10を起動する。
そして、この起動、発電、停止、放置のサイクルを30回繰り返して実施したが、発電時の電池電圧の低下は見られなかった。
なお、放置期間が長期に亘る場合、所定の周期ごとに間欠的に還元剤41を流入してもよい。
また、燃料極5または酸化剤極4の内部空間に酸素が浸入してきたことを検知する酸素濃度センサを備え、酸素濃度の上昇傾向を感知し、それに応じて還元剤41を流入してもよい。
また、この実施の形態1においては燃料極5と酸化剤極4の両方に還元剤41を流入するが、還元剤41が電解質膜3を透過して反対側に供給されることがあるので、片方にだけ還元剤41を流入してもよい。
また、この実施の形態1においては還元剤41を燃料電池の各流路の上流側から供給しているが、燃料電池内部に連なっている部分であれば、必ずしも上流から供給する必要はなく、下流側、その他の部位から供給してもよい。
このような燃料電池発電システム1は、停止時に電池内部に浸入してきた酸素を電極触媒表面上で還元除去できるので、電極触媒の酸化が防止でき、長期間電池出力を安定に維持することができる。
また、還元剤41が、燃料電池運転温度以下の温度で、燃料電池電極触媒上で酸素の還元性を有するので、停止時の低温状態で酸素が浸入した場合でも、電極触媒表面上ですばやく酸素と還元剤が反応し、酸素を除去するため触媒の酸化を防止する効果が高い。
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2に係わる燃料電池発電システムの構成図である。
この発明の実施の形態2に係わる燃料電池発電システム1Bは、実施の形態1に係わる燃料電池発電システム1と還元剤供給部40Bが異なり、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態2に係わる還元剤供給部40Bは、図4に示すように、実施の形態1に係わる還元剤供給部40にキャリア供給源61および圧力調整手段62が追加され、ポンプ45が省略されており、それ以外は同様である。
そして、この実施の形態2においては、還元剤41をキャリア63中に霧化あるいは気化して酸化剤極4と燃料極5とに運んでいる。還元剤41としては、実施の形態1と同様に50重量パーセントメタノール水溶液を使用している。また、キャリア63としては、窒素ガスを使用している。
なお、実施の形態2においてキャリア63として窒素ガスを使用するが、混合する還元剤41を酸化することのない流体、すなわち酸化剤以外の流体を利用することができる。たとえば、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス、水素、メタン、二酸化炭素など還元剤41を酸化することのない気体を利用することができる。
また、水などの無機液体、各種アルコール、ヘキサン、灯油などの各種有機溶剤など液体も利用することが可能である。液体の場合は、電池への供給のために、ポンプなどの供給手段を備える必要がある。
次に、還元剤41を供給する方法について説明する。
空気の供給を酸化剤供給制御バルブ33と酸化剤排出制御バルブ34とを閉じることにより中止し、発電を継続することにより起こる電気化学反応により酸素を除去したのち、改質燃料制御バルブ27と未反応燃料制御バルブ28を閉じて燃料の供給を中止し、燃料電池発電システム1Bでの発電を停止する。このとき、還元剤燃料極制御バルブ46と還元剤酸化剤極制御バルブ47は閉じられている。
発電を停止した後で、キャリア供給源61から圧力調整手段62にて減圧されたキャリア63をタンク42内の還元剤41内に導入し、還元剤41と混合し、還元剤燃料極制御バルブ46および還元剤酸化剤極制御バルブ47を開いて、還元剤41とキャリア63の混合物を燃料流路8および酸化剤流路6に流入する。具体的には、メタノール水溶液に窒素ガスをバブリングしてメタノール水溶液の蒸気と窒素ガスを混合し、燃料電池スタック10に供給する。
所定量供給後、還元剤41とキャリア63の混合物の供給を停止し、還元剤燃料極制御バルブ46および還元剤酸化剤極制御バルブ47を閉じて放置する。
なお、還元剤41とキャリア63の混合物の流入量は、停止期間の長短などで調整される。
3日間放置後、燃料極5に改質燃料と酸化剤極4に空気とを供給し、燃料電池スタック10を昇温することにより燃料電池スタック10を再起動する。この起動、発電、停止、放置のサイクルを30回繰り返して実施したが、発電時の電池電圧の低下は見られなかった。
このような燃料電池発電システム1Bは、還元剤41とキャリア63とを混合して、燃料極5および酸化剤極4の内部空間に混合物を供給するので、実施の形態1と同様に、停止時に電池内部に浸入してきた酸素を電極触媒表面上で還元除去でき、電極触媒の酸化が防止でき、長期間電池出力を安定に維持することができる。
また、キャリア63として気体の窒素ガスを用いており、燃料極5および酸化剤極4の内部空間に液滴が残存することがないので、追い出しの工程が省略できる。
また、電池内部に供給が難しい還元剤41をキャリア63に混合して容易に供給できるとともに、キャリア63と還元剤41の混合割合を変えることにより、電池内部に供給する還元剤41の量の制御が容易になる。
なお、電池内部の圧力変動を感知する圧力センサを備え、その圧力の減少(負圧など)を感知して、その圧力変動を緩和するように還元剤41とキャリア63の混合物を供給してもよい。
また、この実施の形態2においては両極に還元剤41とキャリア63の混合物を供給するが、還元剤41が電解質膜3を透過して反対の極に供給されることがあるので、片方の極だけに混合物を投入してもよい。
また、この実施の形態2においては還元剤41とキャリア63の混合物を燃料電池の各流路の上流側から供給を行なったが、燃料電池内部に連通している部分であれば、必ずしも上流から供給する必要はなく、下流側、その他の部位から供給してもよい。
実施の形態3.
図5は、この発明の実施の形態3に係わる燃料電池発電システムの構成図である。
この発明の実施の形態3に係わる燃料電池発電システム1Cは、実施の形態1に係わる燃料電池発電システム1と還元剤供給部40Cが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態3に係わる還元剤供給部40Cは、実施の形態1に係わる還元剤供給部40と還元剤貯蔵手段としてのタンク42Cが異なり、実施の形態1に係わる還元剤供給部40の還元剤供給手段の替わりに圧力調整手段としてのレギュレータ65が備えられている。
この実施の形態3においては、還元剤41Cとして高圧下では液体、常圧下では気体と相変化するジメチルエーテルを使用する。
実施の形態3に係わるタンク42Cは、高圧タンクであり、液体のジメチルエーテルを貯蔵している。そして、レギュレータ65によりジメチルエーテルの加わる圧力を常圧にすると気化したジメチルエーテルが還元剤燃料極供給配管43および還元剤酸化剤極供給配管44に流れる。
なお、この実施の形態3において、還元剤41Cとしてジメチルエーテルを使用するが、液化石油ガス、液化水素、液体アンモニアなど、高圧下で液化し常圧付近で気化する物質のうちで、触媒表面で酸素還元能力のあるものであれば利用可能である。
また、効率的ではないが、常温で液体の物質を温めて気化させて供給することも可能である。
次に、還元剤41Cを供給する方法について説明する。
空気の供給を酸化剤供給制御バルブ33と酸化剤排出制御バルブ34とを閉じることにより中止し、発電を継続することにより起こる電気化学反応により酸素を除去したのち、改質燃料制御バルブ27と未反応燃料制御バルブ28を閉じて燃料の供給を中止し、燃料電池発電システム1Bでの発電を停止する。このとき、還元剤燃料極制御バルブ46と還元剤酸化剤極制御バルブ47は閉じられている。
発電を停止した後で、レギュレータ65を開いて気体のジメチルエーテルを還元剤燃料極供給配管43および還元剤酸化剤極供給配管44に導く。それから、還元剤燃料極制御バルブ46および還元剤酸化剤極制御バルブ47を開いて、ジメチルエーテルを燃料流路8および酸化剤流路6に流入する。
ジメチルエーテルを所定量供給後、ジメチルエーテルの供給を停止し、還元剤燃料極制御バルブ46および還元剤酸化剤極制御バルブ47を閉じて放置する。
なお、ジメチルエーテルの流入量は、停止期間の長短などで調整される。
3日間放置後、燃料極5に改質燃料と酸化剤極4に空気とを供給し、燃料電池スタック10を昇温することにより燃料電池スタック10を再起動する。この起動、発電、停止、放置のサイクルを30回繰り返して実施したが、発電時の電池電圧の低下は見られなかった。
このような燃料電池発電システム1Cは、高圧下では液体のジメチルエーテルを気化して、燃料極5および酸化剤極4の内部空間に供給するので、実施の形態1と同様に、停止時に電池内部に浸入してきた酸素を電極触媒表面上で還元除去でき、電極触媒の酸化が防止でき、長期間電池出力を安定に維持することができる。
また、常圧付近では気体のジメチルエーテルを還元剤41Cとして用いており、燃料極5および酸化剤極4の内部空間に液滴が残存することがないので、追い出しの工程が省略できる。
また、還元剤41Cが、貯蔵状態で液体であることにより、同じモル数の物質でも気体よりはるかに体積が小さいため、少ないスペースで大量の還元剤を貯蔵できる。
なお、保管期間が長期に亘る場合、所定の周期ごとに間欠的に還元剤41Cを流入してもよい。
また、燃料極5または酸化剤極4の内部空間に酸素が浸入してきたことを検知する酸素濃度センサを備え、酸素濃度の上昇傾向を感知し、それに応じて還元剤41Cを流入してもよい。
また、電池内部の圧力変動を感知する圧力センサを備え、その圧力の減少(負圧など)を感知して、その圧力変動を緩和するように還元剤41Cを供給してもよい。レギュレータで、電池内部の圧力を一定の陽圧(例えば、電池運転中の電池内圧の最高値以下の圧力)に維持するようにすれば、電池内部に酸素が浸入し、還元剤41Cが消費されて減圧しても、その減圧分だけ自動的に還元剤41Cが補填される。
また、この実施の形態3においては燃料極5と酸化剤極4の両方に還元剤41Cを流入するが、電解質膜3を透過して反対側に供給されることがあるので、片方にだけ還元剤41Cを流入してもよい。
また、この実施の形態3においては還元剤41Cを燃料電池の各流路の上流側から供給しているが、燃料電池内部に連なっている部分であれば、必ずしも上流から供給する必要はなく、下流側、その他の部位から供給してもよい。
実施の形態4.
図6は、この発明の実施の形態4に係わる燃料電池発電システムの構成図である。
この発明の実施の形態4に係わる燃料電池発電システム1Dは、実施の形態2に係わる燃料電池発電システム1Bと還元剤供給部40Dが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態4に係わる還元剤供給部40Dは、実施の形態2に係わる還元剤供給部40Bに一度燃料電池スタック10に供給された還元剤41を回収する機能が追加されたことが異なっており、それ以外は同様である。そして、還元剤供給部40Dは、図6に示すように、燃料排出配管25の未反応燃料制御バルブ28の燃料電池スタック10側および酸化剤排出配管32の酸化剤排出制御バルブ34の燃料電池スタック10側に一端がそれぞれ接続され、途中で一本に合わされ、他端にタンク42に接続される循環ライン67を備える。また、還元剤供給部40Dは、循環ライン67の途中に介設され、燃料極5および酸化剤極4内に残存する還元剤41を回収してタンク42内に戻す循環ポンプ68を備える。
次に、還元剤41を循環する方法について説明する。
空気の供給を酸化剤供給制御バルブ33と酸化剤排出制御バルブ34とを閉じることにより中止し、発電を継続することにより起こる電気化学反応により酸素を除去したのち、改質燃料制御バルブ27と未反応燃料制御バルブ28を閉じて燃料の供給を中止し、燃料電池発電システム1Bでの発電を停止する。このとき、還元剤燃料極制御バルブ46と還元剤酸化剤極制御バルブ47は閉じられている。
発電を停止した後で、キャリア供給源61から圧力調整手段62にて減圧されたキャリア63をタンク42内の還元剤41内に導入し、還元剤41と混合し、還元剤燃料極制御バルブ46および還元剤酸化剤極制御バルブ47を開いて、還元剤41とキャリア63の混合物を燃料流路8および酸化剤流路6に流入する。
そして、燃料排出配管25および酸化剤排出配管32に流れでてきた還元剤41とキャリア63の混合物を循環ポンプ68を稼動してタンク42に戻す。このように、還元剤41とキャリア63の混合物を循環しながら放置する。タンク42には、還元剤41とキャリア63を混合するバブラーを用いているので、消費された還元剤41を補填することができる。
電池運転停止後、還元剤41を循環させて3日間放置した後、還元剤41の供給を停止し、燃料極5に改質燃料と酸化剤極4に空気とを供給し、燃料電池スタック10を昇温し、燃料電池スタック10を再起動する。この起動、発電、停止、放置のサイクルを30回繰り返して実施したが、発電時の電池電圧の低下は見られなかった。
このような燃料電池発電システム1Dは、還元剤41を放置の間に亘って燃料極5および酸化剤極4の内部空間に供給するので、実施の形態1と同様に、停止時に電池内部に浸入してきた酸素を電極触媒表面上で還元除去でき、電極触媒の酸化が防止でき、長期間電池出力を安定に維持することができる。
また、還元剤41が侵入してきた酸素を還元して消費した分、補填されるので、常に一定の還元能力を有し、電池電圧の低下がより小さくなる。
また、循環ポンプ68で強制的に還元剤41を循環させることにより、触媒表面への還元剤41の拡散速度が速くなり、酸素の除去速度が速まるとともに、電池内部の隅々にまで還元剤41が行き渡り、触媒の酸化を防止することができる。
なお、実施の形態4においては還元剤41とキャリア63の混合物を供給するが、液体還元剤や、気化した液体還元剤、その他ポンプなどで循環可能な還元剤流体を循環させてもよい。
この発明に係わる燃料電池の単位電池の構成断面図である。 この発明に係わる燃料電池スタックの構成断面図である。 この発明の実施の形態1に係わる燃料電池発電システムの構成図である。 この発明の実施の形態2に係わる燃料電池発電システムの構成図である。 この発明の実施の形態3に係わる燃料電池発電システムの構成図である。 この発明の実施の形態4に係わる燃料電池発電システムの構成図である。
符号の説明
1、1B、1C、1D 燃料電池発電システム、2 単電池、3 電解質膜、4 酸化剤極、5 燃料極、6 酸化剤流路、7 酸化剤側セパレータ、8 燃料流路、9 燃料側セパレータ、10 燃料電池スタック、11a、11b 集電板、14 外部負荷、20 燃料供給排出部、21 原燃料供給源、22 改質器、23 原燃料供給配管、24 改質燃料供給配管、25 燃料排出配管、26 排ガス排出配管、27 改質燃料制御バルブ、28 未反応燃料制御バルブ、30 酸化剤供給排出部、31 酸化剤供給配管、32 酸化剤排出配管、33 酸化剤供給制御バルブ、34 酸化剤排出制御バルブ、40、40B、40C、40D 還元剤供給部、41、41C 還元剤、42、42C タンク、43 還元剤燃料極供給配管、44 還元剤酸化剤極供給配管、45 ポンプ、46 還元剤燃料極制御バルブ、47 還元剤酸化剤極制御バルブ、51 改質部、52CO選択酸化部、53 バーナ、61 キャリア供給源、62 圧力調整手段、63 キャリア、65 レギュレータ、67 循環ライン、68 循環ポンプ。

Claims (5)

  1. イオン伝導性を有する電解質膜が一方の面から順に燃料極と上記燃料極に燃料を導く燃料流路が設けられる燃料極側セパレータとで、他方の面から順に酸化剤極と上記酸化剤極に酸化剤を導く酸化剤流路が設けられる酸化剤極側セパレータとで挟持される少なくとも1つの単電池を具備する燃料電池スタックを備え、上記燃料と上記酸化剤とを供給して発電する燃料電池発電システムにおいて、
    上記燃料電池スタックを停止してから次に起動するまでの間、酸素を還元する能力を有する還元剤を、上記燃料極または上記酸化剤極の少なくともいずれか一方に連なる空間に供給することを特徴とする燃料電池発電システム。
  2. 上記還元剤は、上記還元剤を酸化する能力のないキャリアに混合されて供給されることを特徴とする請求項1に記載する燃料電池発電システム。
  3. 上記還元剤は、上記燃料極または上記酸化剤極の少なくともいずれか一方に連なる空間に供給されたのち回収され、再度上記空間に供給されることを繰り返すことを特徴とする請求項1または2に記載する燃料電池発電システム。
  4. 上記還元剤は、上記燃料電池スタックの運転温度以下の温度において、上記燃料極および上記酸化剤極の触媒上で酸素を還元する能力を有することを特徴とする請求項3に記載する燃料電池発電システム。
  5. 上記還元剤は、貯蔵状態で液体であることを特徴とする請求項4に記載する燃料電池発電システム。
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