JP2007149203A - テクスチャ加工方法及び加工スラリー - Google Patents

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Abstract

【課題】加工斑を生じることなくテクスチャ条痕を均一且つ鮮明に形成することができるテクスチャ加工方法及び加工スラリーを提供する。
【解決手段】回転基板24の表面に、研磨材を分散媒中に分散させた加工スラリーを供給し、加工テープ23を押し付け、送るテクスチャ加工方法。研磨材は、周囲に不純物15を付着している一次粒子径20nm以下の人工ダイヤモンド粒子11がクラスター状に結合したクラスターダイヤモンド10から成る。クラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度が95%以上、99%以下の範囲にあり、クラスターダイヤモンドの非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度が0.5%以上の範囲にある。クラスターダイヤモンドのクラスター径が30nm以上、500nm以下の範囲にあり、平均クラスター径が30nm以上、200nm以下の範囲にある。
【選択図】図3

Description

本発明は、磁気ハードディスク用の基板の表面にテクスチャ条痕を形成するテクスチャ加工方法及び加工スラリーに関するものである。
コンピュータなどの情報記録再生機器には、音声、画像などの情報を記録する媒体として、磁気ハードディスクが使用されている。
一般に、磁気ハードディスクは、ガラス基板、Ni−Pメッキを施したアルミニウム基板などの非磁性の基板の表面を鏡面に研磨した後、この基板の表面にほぼ同心円状の条痕を形成するためのテクスチャ加工を施し、このテクスチャ加工面上に、スパッタリングなどの既知の成膜技術を利用して、磁性層、保護層などを順次積層することによって製造される。
テクスチャ加工は、当業者には既知のように、磁気ハードディスクへの磁気ヘッドの吸着を防止するため、テクスチャ加工時に基板の表面に形成したテクスチャ条痕とほぼ相似形の同心円状の線条を磁気ハードディスクの表面に形成するためのものである。
一方、磁気ハードディスクへの磁化を高精度に行って、記録と再生を高精度に行うため、磁気ハードディスクの表面は、下記の(1)〜(4)のような地形学的な条件を満たすことが必要である。
(1)磁気ハードディスクの表面に形成される線条のピッチ幅を小さくすること。すなわち、ディスク径方向の単位長さ当りの線条の本数を多くすることにより、磁気ヘッドと向き合う単位面積当りの線条の凸部分(磁気ヘッドに近い磁気ハードディスクの表面部分)の個数が多くなり、磁気ハードディスクへの磁化を高精度に行えるようになる。(近年では、ディスク径方向の単位長さ当りの線条の本数、すなわちライン密度を40本/μm以上にすることが要求されている。)
(2)磁気ハードディスクの表面に深い凹部(深い線条の凹部やスクラッチ)を形成しないこと。これは、この凹部が深すぎると、磁気ヘッドからの磁束が凹部の低部付近の磁性層にとどかず、この部分を磁化できず、このため、正確な記録と再生ができなくなるからである。また、スパッタリングなどによる成膜時に、凹部の低部付近に磁性層が形成されていないこともあるからである。
(3)磁気ヘッドを低空で飛行させるため、磁気ヘッドの飛行高度(浮上距離)に達する異常な突起が形成されていないこと。これは、磁気ヘッドが突起に衝突すると、磁気ヘッドが損傷し、また突起の破片が磁気ハードディスクの表面に付着し、磁気ハードディスクへの記録と磁気ハードディスクからの再生を高精度に行えなくなるからである。(近年では、10nm以下の浮上距離が要求されている。)
(4)磁気ハードディスクの表面へ磁気ヘッドが着陸し、滑走する間、及び磁気ヘッドが磁気ハードディスクの表面上を滑走し、浮上するまでの間、磁気ヘッドを滑らかに滑走させるため、磁気ハードディスクの表面の粗さを低くすること。
このように、磁化を高精度に行うため、線条のピッチ幅を小さくし(すなわち、ライン密度を高くし)、異常に深い線条の凹部やスクラッチを形成しないことが要求されている。一方、磁気ヘッドを低空で飛行させ且つ磁気ヘッドの損傷をなくすため、異常に高い突起を形成せず、表面の粗さを低くすることが要求され、さらに、磁気ハードディスクの表面への磁気ヘッドの吸着を防止できる程度の粗さも要求されている。
すなわち、磁気ハードディスクの表面に、適度な深さの凹部と適度な高さの凸部を有する線条を形成することが要求されている。
このような磁気ハードディスクの表面上の地形学的な条件は、基板の表面に施されるテクスチャ加工に大きく依存する。
このことから、近年、テクスチャ加工により、基板の表面の平均表面粗さを3Å以上、6Å以下の範囲にし且つ基板の表面にライン密度40本/μm以上のテクスチャ条痕を形成することが要求され、さらに基板の表面にこのようなテクスチャ条痕を均一且つ鮮明に形成することが要求されている。
一般に、テクスチャ加工は、遊離砥粒により行われている。すなわち、基板を回転させ、この回転している基板の表面に、研磨材を分散した加工スラリーを供給し、加工テープを押し付けながら、この加工テープを送ることによって、基板の表面にほぼ同心円状のテクスチャ条痕を形成している(例えば、特許文献2参照)。
加工テープとして、テクスチャ加工中に生じた研削クズを内部に取り込むことができ、基板の表面に弾力的に作用する、織布、不織布又は発泡体からなる多孔質のものが使用されている。
また、研磨材として、クラスターダイヤモンドからなるものが加工スラリー中に含まれている(例えば、特許文献1、2参照)。
このクラスターダイヤモンドは、既知の爆発衝撃法(例えば、特許文献1、2及び非特許文献1参照)により生成された人工ダイヤモンド粒子がクラスター状(房状)に結合したものである。
クラスターダイヤモンドによる加工メカニズムについて説明すると、加工スラリー中に研磨材として分散しているクラスターダイヤモンドは、加工中、磁気ハードディスク用の基板の表面に押し付けられている多孔質の加工テープの表面部分に保持され、基板の表面に押し付けられる。大きいクラスターダイヤモンドは、加工テープの表面部分に保持されている状態で基板の表面に押し付けられたときに崩壊し、適度の大きさのクラスターダイヤモンドとなり、このクラスターダイヤモンドが加工テープの表面部分に保持されている状態で基板の表面に作用し、基板の表面を研削して加工する。
そして、クラスターダイヤモンドが一次粒子径20nm以下の範囲にある極小さい人工ダイヤモンド粒子によって構成されているので、従来は、このクラスターダイヤモンドを高純度化する(すなわち、クラスターダイヤモンドの純度を天然ダイヤモンドの純度に近づける)ことによって、基板の平均表面粗さを低くでき且つ高いライン密度のテクスチャ条痕を形成することができると考えられていた。
しかし、クラスターダイヤモンドからなる研磨材を分散させた加工スラリーを使用して磁気ハードディスク用の基板をテクスチャ加工すると、基板の表面に40本/μm以上のライン密度でテクスチャ条痕を形成し得るが、加工斑が生じ(すなわち、テクスチャ条痕が均一に形成されず、局所的に不鮮明となり)、このため、テクスチャ加工後の基板の品質にバラツキが生じ、所定の品質の基板を再現性よく生産することができないという問題が生じているのが現状である。
このため、テクスチャ加工技術の分野において、磁気ハードディスク用の基板の表面に、加工斑を生じることなく、平均表面粗さ3Å以上、6Å以下の範囲で、ライン密度40本/μm以上のテクスチャ条痕を均一且つ鮮明に形成することができる技術の開発が要求されている。
特開平6−121923号公報 特開2005−131711号公報 "酸素欠如爆発法ナノダイヤモンドの正体"(大澤映二著、砥粒加工学会、Vol.47,No.8,2003年8月、第414〜417頁)、及び"クラスターダイヤモンドの特性と固体潤滑への応用"(花田幸太郎著、砥粒加工学会誌、Vol.47,No.8,2003年8月、第422〜425頁)
したがって、本発明の目的は、磁気ハードディスク用の基板の表面に、加工斑を生じることなく、平均表面粗さ3Å以上、6Å以下の範囲で、ライン密度40本/μm以上のテクスチャ条痕を均一且つ鮮明に形成することができるテクスチャ加工方法及び加工スラリーを提供することである。
上記のような加工斑の発生原因について考察すると、磁気ハードディスク用の基板の表面に押し付けられている多孔質の加工テープの表面部分にクラスターダイヤモンドが保持されている時間の間だけ、クラスターダイヤモンドが基板の表面に押し付けられている。一方、回転している基板の表面に加工テープが押し付けられているので、加工テープの表面部分に保持されているクラスターダイヤモンドが基板の表面に作用し、これにより、基板の表面が研削されて、基板の表面にほぼ同心円状のテクスチャ条痕が形成される。
ここで、上記の爆発衝撃法により生成された人工ダイヤモンド粒子の形状は、角が丸く、角張ったところがないが、クラスターダイヤモンドは、このような人工ダイヤモンド粒子がクラスター状に結合したものであり、クラスターダイヤモンドの形状は、不定形であり、鋭い突起状のところはないが、角張ったところがあるので、加工中、この角張ったところが多孔質の加工テープの表面部分に引っ掛かり、これにより、クラスターダイヤモンドは加工テープの表面部分に保持されている(言い換えると、クラスターダイヤモンドは加工テープの表面部分に一時的に付着している)と考えられる。
しかし、クラスターダイヤモンドの形状が不定形であるため、上記のような一時的な付着力が各クラスターダイヤモンドで個別に異なるだけでなく、角張ったところで単に引っ掛けるだけでは上記のような一時的な付着力が弱すぎて、加工テープの表面部分に保持されて基板の表面に作用するクラスターダイヤモンドの密度(基板の表面に作用している加工テープの表面部分に保持されているクラスターダイヤモンドの密度)が局所的に異なることとなり、これが原因で、上記のような加工斑が発生し、テクスチャ加工後の品質にバラツキが生じ、所定の品質の加工品を再現性よく生産することができないと考えられる。(すなわち、加工スラリー中のクラスターダイヤモンドは、テクスチャ加工中に、加工テープの内部に取り込まれ易くなっている。)
本発明の発明者は、鋭意研究の結果、爆発衝撃法により生成された極小さい人工ダイヤモンド粒子から構成されるクラスターダイヤモンドを単に高純度化するのではなく、このクラスターダイヤモンドの不純物中に所定の濃度の塩素を含ませることで、磁気ハードディスク用の基板の表面に、加工斑を生じることなく、平均表面粗さ3Å以上、6Å以下の範囲で、ライン密度40本/μm以上のテクスチャ条痕を均一且つ鮮明に形成することができ、これにより所定の品質の基板を再現性よく生産することができることを見出した。
<加工スラリー> 上記目的を達成する本発明の加工スラリーは、磁気ハードディスク用の基板のテクスチャ加工に使用するためのものであり、研磨材、及び研磨材を分散させる分散媒から構成される。
研磨材は、周囲に不純物を付着している一次粒子径20nm以下の人工ダイヤモンド粒子がクラスター状(房状)に結合したクラスターダイヤモンドから構成される。
そして、クラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度は95%以上、99%以下の範囲にあり、クラスターダイヤモンドの非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度が0.5%以上の範囲にある。
クラスターダイヤモンドのクラスター径は30nm以上、500nm以下の範囲にあり、平均クラスター径(D50)は30nm以上、200nm以下の範囲にある。
研磨材の含有量は、加工スラリーの全量を基準として、0.005重量%以上、0.5重量%以下の範囲にある。
分散媒は、水、及び添加剤から構成される。
添加剤として、グリコール化合物、高級脂肪酸アマイド、有機リン酸エステル及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上の剤が含まれる。
添加剤の含有量は、加工スラリーの全量を基準として、1重量%以上、10重量%以下の範囲にある。
加工スラリーの液性は、アルカリ性であり、pH8以上の範囲にある。
<テクスチャ加工方法> 本発明に従って、磁気ハードディスク用の基板のテクスチャ加工は、基板の表面を回転させ、この基板の表面に上記本発明の加工スラリーを供給し、基板の表面に加工テープを押し付け、この加工テープを送ることによって行われる。
加工テープとして、少なくとも基板の表面に押し付けられる表面部分が太さ0.1μm以上、5.0μm以下の範囲にある繊維からなる織布、不織布、植毛布又は起毛布からなるテープが使用される。
本発明が以上のように構成されるので、以下のような効果を奏する。
研磨材を構成するクラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度が95%以上、99%以下の範囲にあり、非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度が0.5%以上の範囲にあるので、加工中、研磨材が多孔質の加工テープの表面部分に保持され易くなり、またこの研磨材が一次粒子径20nm以下の極小さい人工ダイヤモンド粒子がクラスター状に結合したクラスターダイヤモンドから構成されるものなので、磁気ハードディスク用の基板の表面に、加工斑を生じることなく、平均表面粗さ3Å以上、6Å以下の範囲で、ライン密度40本/μm以上のテクスチャ条痕を均一且つ鮮明に形成することができる。
そして、加工斑が生じないので、テクスチャ加工後の基板の品質にバラツキが生じることなく、所定の品質の基板を再現性よく生産することができる。
本発明は、磁気ハードディスク用の基板の表面に、加工斑を生じることなく、平均表面粗さ3Å以上、6Å以下の範囲で、ライン密度40本/μm以上、好ましくは60本/μm以上のテクスチャ条痕を均一且つ鮮明に形成するためのテクスチャ加工方法及び加工スラリーである。
<加工スラリー> 本発明の加工スラリーは、研磨材、及び研磨材を分散させる分散媒から構成される。
<研磨材> 本発明の加工スラリーに含まれる研磨材は、図1Bに示すように、一次粒子径20nm以下の人工ダイヤモンド粒子11がクラスター状(房状)に結合したクラスターダイヤモンド10から構成される。
人工ダイヤモンド粒子11は、図2Bに示すように、角が丸く、角張ったところがなく、クラスターダイヤモンド10は、このような人工ダイヤモンド粒子11がクラスター状に結合したものであり、クラスターダイヤモンド10は、図2Aに示すように、鋭い突起状のところはないが、不定形であり、角張ったところがある。
ここで、図1Aに示すように、人工ダイヤモンド粒子11は、その核となるダイヤモンド(炭素)12の周囲にオニオンライクカーボン13が形成され、このオニオンライクカーボン13の周囲に化学活性境界層14が形成されているものであり、不純物15は、これらオニオンライクカーボン13と化学活性境界層14とを含むものである。ここで、この化学活性境界層14は、炭素原子、その他の原子、官能基、化学処理(下記の酸処理)により付着した化学材、金属粒子などからなるものである。
本発明の研磨材では、クラスターダイヤモンド10の不純物15中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度が95%以上、99%以下の範囲にあり、クラスターダイヤモンド10の非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度が0.5%以上の範囲、好適に0.5%以上、3.5%以下の範囲にある。この塩素の濃度が0.5%未満であると、加工中にクラスターダイヤモンド10が多孔質の加工テープ内に取り込まれ易くなり、クラスターダイヤモンド10が加工テープの被加工面に作用する表面部分に保持され難くなるため、研削力が低下するだけでなく、加工斑が生じる。
クラスターダイヤモンドのクラスター径は、30nm以上、500nm以下の範囲、好適に30nm以上、350nm以下の範囲にあり、平均クラスター径(D50)は30nm以上、200nm以下の範囲にある。
クラスターダイヤモンドのクラスター径と平均クラスター径(D50)が30nm未満であると、研削力が低下し、テクスチャ加工にかかる時間がかかりすぎ、また基板の表面に形成されるテクスチャ条痕が不鮮明になる。一方、クラスターダイヤモンドのクラスター径が500nmを超え、平均クラスター径(D50)が200nmを超えると、基板の表面にスクラッチが形成されるようになり、また、基板の表面が粗くなり、磁気ハードディスクの表面上を、磁気ヘッドを滑らかに滑走させることができなくなる。
研磨材の含有量は、加工スラリーの全量を基準として、0.005重量%以上、0.5重量%以下の範囲、好適に0.005重量%以上、0.1重量%以下の範囲にある。
研磨材の含有量が0.005重量%未満であると、研削力が低下し、テクスチャ加工にかかる時間がかかりすぎ、基板の表面に不要の起伏が形成される。また、基板の表面に形成されるテクスチャ条痕が不鮮明になる。一方、研磨材の含有量が0.1重量%を超えると、基板の表面が粗くなり、磁気ハードディスクの表面上を、磁気ヘッドを滑らかに滑走させることができなくなる。
<分散媒> 分散媒は、水、及び添加剤から構成される。
添加剤として、グリコール化合物、高級脂肪酸アマイド、有機リン酸エステル及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上の剤が含まれ、添加剤の含有量は、加工スラリーの全量を基準として、1重量%以上、10重量%以下の範囲にある。
グリコール化合物は、研磨材との親和性があり、分散剤として機能する。また、グリコール化合物を使用すると、分散媒を調製する際に、分散媒の粘度を下げるので、分散媒を均一に調製できる。さらに、水との親和性があるので、研磨工程後のガラス基板の洗浄を効率的に行える。グリコール化合物として、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコールブチルエーテルなどが使用できる。好適に、グリコール化合物の含有量は、添加剤の全量を基準として、60重量%以下の範囲にある。
高級脂肪酸アマイドは、研削速度を促進させる研削促進剤として機能する。高級脂肪酸アマイドとして、オレイン酸ジエタノールアマイド、ステアリン酸ジエタノールアマイド、ラウリン酸ジエタノールアマイド、リシノリン酸ジエタノールアマイド、リシノリン酸イソプロパノールアマイド、エルシン酸ジエタノールアマイド、トール脂肪酸ジエタノールアマイドなどが使用され、炭素数が12以上、22以下の範囲にあるものが好ましい。好適に、高級脂肪酸アマイドの含有量は、添加剤の全量を基準として、60重量%以下の範囲にある。
有機リン酸エステルは、基板の表面への異常突起(研削クズが基板の表面に付着して形成されるバリ)の発生を抑制する機能を有する。有機リン酸エステルは、リン酸(HPO)の水素をアルキル基又はアリル基で置換したエステルであり、有機リン酸エステルとして、脂肪族系塩型、芳香族系塩型などが使用でき、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルのリン酸塩が使用できる。好適に、有機リン酸エステルの含有量は、添加剤の全量を基準として、40重量%以下の範囲にある。
界面活性剤は、研磨材の分散性を向上させる働きがある。界面活性剤として、ノニオン系又はアニオン系の界面活性剤が使用できる。好適に、界面活性剤の含有量は、添加剤の全量を基準として、20重量%以下の範囲にある。
加工スラリーの液性は、アルカリ性であり、pH8以上の範囲にある。加工スラリーの液性がpH8未満であると、加工スラリー中で研磨材が沈殿する。好適に、加工スラリーの液性は、pH8以上、pH10以下の範囲にある。
ここで、加工スラリー中で、複数個のクラスターダイヤモンドが凝集して、凝集クラスターダイヤモンドを形成していてもよい。
<研磨材の製造方法> 上記本発明の研磨材は、まず、爆発衝撃法により、周囲に不純物を付着している一次粒子径20nm以下の人工ダイヤモンド粒子がクラスター状に結合したクラスターダイヤモンドを生成する(クラスター生成工程)。ここで、非ダイヤモンド炭素には、オニオンライクカーボンの他、クラスター生成工程後に残留した炭素(未反応の黒鉛)が含まれる。
次に、このクラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度が95%以上、99%以下の範囲となり、クラスターダイヤモンドの非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度が0.5%以上の範囲、好適に0.5%以上、3.5%以下の範囲となるように、クラスターダイヤモンドの不純物を除去すること(不純物除去工程)によって、上記本発明の研磨材が製造される。
本発明の製造方法は、不純物除去工程後のクラスターダイヤモンドを分級する工程(分級工程)を含む。この分級工程は、不純物除去工程後のクラスターダイヤモンドの洗浄後、クラスターダイヤモンドを分級する工程である。分級は、既知の遠心分離機を使用して湿式又は乾式で行われる。分級工程により、目的とする加工精度に応じた所望の平均クラスター径のクラスターダイヤモンドを分級できる。(ここで、平均クラスター径を小さくすると、被加工面の粗さは小さくなる。)
この分級工程は、不純物除去工程後のクラスターダイヤモンドの中から、クラスター径が30nm以上、500nm以下の範囲にあり、平均クラスター径(D50)が30nm以上、200nm以下の範囲にあるクラスターダイヤモンドを分離する工程を含む。この工程において、遠心分離機でクラスターダイヤモンドに作用させる遠心力を段階的に変えることにより、例えば、クラスター径が30nm以上、500nm以下の範囲にあり、平均クラスター径(D50)が80nm、120nm及び150nmにあるクラスターダイヤモンドを段階的に分離することができる。
<クラスター生成工程> クラスター生成工程は、上記のように、爆発衝撃法により、周囲に不純物が付着している人工ダイヤモンド粒子がクラスター状に結合したクラスターダイヤモンドを生成する工程である。
爆発衝撃法は、爆薬の爆発力で人工的にダイヤモンドを生成する方法であり、人工ダイヤモンドは、ダイヤモンドの原料となる炭素(黒鉛)と銅や鉄の金属粉とを混合した材料を爆薬の爆発により生じる衝撃波で高温圧縮することによる方法(黒鉛衝撃圧縮法と呼ばれる)や、TNT(トリニトロトルエン)、RDX、HMX等のような炭素源として使用できる爆薬をヘリウム(He)ガスを充填した容器内で爆発させることによる方法(酸素欠如爆発法と呼ばれる)によって生成できる(例えば、非特許文献1参照)。
爆発衝撃法により生成されたクラスターダイヤモンドには、オニオンライクカーボンが形成され、さらに銅や鉄などの金属や未反応の炭素(黒鉛)などが不純物として付着している。また、この爆発衝撃法により、図1Bに示すように、複数個のクラスターダイヤモンド10が結合力16によって相互に結合しているものも生成される。
<不純物除去工程> 不純物除去工程は、過塩素酸(HClO)、濃硫酸(HSO)、濃硝酸(HNO)及び濃塩酸(HCl)から選択される一種又は二種以上の強酸を使用して、クラスター生成工程後のクラスターダイヤモンドを酸処理する酸処理工程を含み、この酸処理工程は、少なくとも塩素を含む強酸を使用して、クラスターダイヤモンドを酸処理する工程を含む。これにより、図1Aに示すようなオニオンライクカーボン13の周囲に化学活性境界層14が形成される。
例えば、過塩素酸のような強酸で未反応の黒鉛(非ダイヤモンド炭素)をクラスターダイヤモンドの周囲から除去し、次に、濃硝酸と濃塩酸の混合液で金属類(主にCu、Fe、Cr、Ti等)をクラスターダイヤモンドから除去する。さらに、濃硫酸と濃硝酸の混合液で、クラスターダイヤモンドから非ダイヤモンド炭素(オニオンライクカーボンや未反応の黒鉛)を部分的に除去する。
この酸処理工程において、処理温度、処理時間及び放置時間を調節することによりクラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度と非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度を調節でき、またクラスターダイヤモンドの周囲に塩素、酸素等の親水性原子、又は水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等の親水性原子団を形成して、親水性を付与できる。
<粉砕工程> この不純物除去工程は、酸処理工程前のクラスターダイヤモンドを機械的に粉砕する工程(粉砕工程)を含む。
ここで、爆発衝撃法により生成されたクラスターダイヤモンドには、小さいクラスターダイヤモンド同士や人工ダイヤモンド粒子同士が弱い結合力(図1Bに符号16で示すような結合力)で結合してクラスターダイヤモンドを形成しているものがある。このように弱い結合力で結合している小さいクラスターダイヤモンドや人工ダイヤモンド粒子は、研磨材として使用する前又は使用中(加工中)に容易に分離して、上記のように酸処理されていない不純物が露出し、これにより、クラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度や非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度が変化して、非ダイヤモンド炭素の濃度や塩素の濃度が上記の範囲から外れ、加工中に多孔質の加工テープの内部に取り込まれ易くなる。
このため、この粉砕工程により、弱い結合力で結合している小さいクラスターダイヤモンドや人工ダイヤモンド粒子をクラスターダイヤモンドから分離させるのである。
この粉砕は、ボールミル、衝撃ミル、振動ミル、遊星ミルなどの既知の粉砕機を使用して行える。
この粉砕工程における機械的な粉砕により、銅、鉄などの金属が不純物としてクラスターダイヤモンドに新たに付着し、また粉砕後、粉砕前のクラスターダイヤモンドの内部に位置していた人工ダイヤモンド粒子が露出するので、粉砕工程後のクラスターダイヤモンドは、この粉砕工程により生じた不純物だけでなく、新たに露出した上記のクラスター生成工程で生じた不純物も含むことになる。
この不純物は、上記の酸処理工程によって、クラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度が95%以上、99%以下の範囲となり、非ダイヤモンド炭素以外の不純物中の塩素の濃度が0.5%以上の範囲(好適に0.5%以上、3.5%以下の範囲)となるように、クラスターダイヤモンドから除去される。
ここで、この粉砕工程前に、上記のクラスター生成工程後のクラスターダイヤモンドの中からクラスター径が30nm以上、500nm以下の範囲にあるクラスターダイヤモンドを分離しておいてもよい。この場合、分離したクラスター径が30nm以上、500nm以下の範囲にあるクラスターダイヤモンドが、粉砕工程において粉砕される。
変形的に、上記の酸処理工程の後に、クラスターダイヤモンドを機械的に粉砕してもよい(粉砕工程)。この場合、この粉砕工程の後に新たに生じた不純物を除去するため、この粉砕工程後に、過塩素酸、濃硫酸、濃硝酸、及び濃塩酸から選択される一種又は二種以上の強酸を使用して、粉砕工程後のクラスターダイヤモンドを酸処理する(第二の酸処理工程)。この第二の酸処理工程は、上記の酸処理工程と同様に、少なくとも塩素を含む強酸を使用して、クラスターダイヤモンドを酸処理する工程を含む。
また、この粉砕工程前に、上記の酸処理工程後のクラスターダイヤモンドの中からクラスター径が30nm以上、500nm以下の範囲にあるクラスターダイヤモンドを分離しておいてもよい。この場合、酸処理工程後に分離したクラスター径が30nm以上、500nm以下の範囲にあるクラスターダイヤモンドが、この粉砕工程において粉砕され、弱い結合力で結合している小さいクラスターダイヤモンドや人工ダイヤモンド粒子がクラスターダイヤモンドから分離されてから、上記の第二の酸処理工程において酸処理される。
<加工スラリーの製造方法> 上記本発明の加工スラリーは、上記のようにして製造した研磨材を水に加え、超音波を利用して研磨材を水中に分散させた後、これに添加剤を添加し、再び超音波を利用して研磨材を分散媒中に分散させることにより製造できる。
<テクスチャ加工方法> 上記本発明の加工スラリーを使用して磁気ハードディスク用の基板の表面にテクスチャ条痕を形成する本発明のテクスチャ加工方法について説明する。
テクスチャ加工は、図3に示す加工装置20を使用して行える。
テクスチャ加工は、図示のように、基板24を矢印Rの方向に回転させ、基板24の表面に、ノズル22を通じて上記本発明の加工スラリーを供給しながら、コンタクトローラ21を介して加工テープ23を押し付け、加工テープ23を矢印Tの方向に送り、加工テープ23を基板24の径方向でオシレーションさせて行われる。
加工テープ23として、少なくとも基板の表面に押し付けられる表面部分(基板の表面に実質的に作用する部分)が太さ0.1μm以上、5.0μm以下の範囲にある繊維からなる織布、不織布、植毛布又は起毛布からなるテープが使用される。この繊維の太さが、0.1μm未満であると、加工テープの表面部分の繊維と加工スラリー中の研磨材との接触点が減少し、基板の表面に研磨材を十分に作用させることができない。また、繊維の太さが5.0μmを超えると、加工テープの表面部分を構成する繊維と繊維との間の段差が増大し、基板の表面を均一にテクスチャ加工できない。
加工中、本発明の研磨材のクラスターダイヤモンドは、加工テープ23の多孔質な表面部分に保持されて基板24の表面に押し付けられ、適度に崩壊し、クラスターダイヤモンドを構成している人工ダイヤモンド粒子が基板24の表面に作用し、基板24の表面にスクラッチを形成させることなく基板24の表面が研削され、基板24の表面にテクスチャ条痕が形成される。
また、上記のように複数個のクラスターダイヤモンドが凝集して凝集クラスターダイヤモンドが形成されていても、この凝集クラスターダイヤモンドを構成している各クラスターダイヤモンドが適度に崩壊し、各クラスターダイヤモンドを構成している人工ダイヤモンド粒子が基板24の表面に作用し、基板24の表面にスクラッチを形成させることなく基板24の表面が研削され、基板24の表面にテクスチャ条痕が形成される。
<実施例1> 実施例1の加工スラリーを製造した。
[研磨材の製造]
まず、ダイヤモンドの原料となる炭素(黒鉛)粉末と、爆薬と、銅、鉄等の金属粉末とを混合した材料を容器内で爆発させて、周囲に不純物が付着しているクラスターダイヤモンドを生成した(この爆発衝撃法は、一般に、黒鉛衝撃圧縮法と呼称されている)(クラスター生成工程)。
次に、クラスターダイヤモンドの不純物を除去するため、過塩素酸を使用して未反応の黒鉛(残留黒鉛)を除去し、洗浄した後、このクラスターダイヤモンドをビーカー内に入れ、濃硝酸(1重量部)と濃塩酸(3重量部)の混合液を加えて、常温で6時間の間、酸処理して金属類を除去した(酸処理工程)。
次に、このクラスターダイヤモンドを純水で洗浄した後、遠心分離機を使用して、クラスター径30nm以上、350nm以下のクラスターダイヤモンドを湿式に分離し、乾燥した。(このクラスターダイヤモンドの人工ダイヤモンド粒子の純度は3.22g/cmであった。)
次に、このクラスターダイヤモンド(クラスター径30nm以上、350nm以下)を、ボールミルを使用して機械的に粉砕した(粉砕工程)。
次に、この粉砕したクラスターダイヤモンドの不純物を除去するため、この粉砕したクラスターダイヤモンドを洗浄した後、このクラスターダイヤモンドをビーカー内に入れ、濃硝酸(1重量部)と濃塩酸(3重量部)の混合液を加えて常温で6時間酸処理して金属類を除去した(第二の酸処理工程)。
次に、このクラスターダイヤモンドを純水で洗浄した後、遠心分離機で湿式に分級して、クラスター径が30nm以上、350nm以下の範囲にあり、平均クラスター径(D50)がそれぞれ80nm、100nm及び150nmのクラスターダイヤモンドを採取し、乾燥した(分級工程)。
この研磨材のクラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度(%)と非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度(%)は、下記の表3に示すとおりであった。これら炭素濃度と塩素濃度は、蛍光X線分析装置(製品番号:ZSX100e、(株)リガク)を使用して測定した。
[加工スラリーの製造]
実施例1の加工スラリーは、この研磨材を純水中に混入した後、超音波ホモジナイザー(製品名:US−150T、日本精機製作所)を使用して分散し、これに、添加剤として、グリコール化合物、有機リン酸エステル、高級脂肪酸アマイド及びノニオン界面活性剤を添加し、上記超音波ホモジナイザーを使用して再分散して製造した。実施例1の加工スラリーの組成は、下記の表1に示すとおりであった。
<実施例2> 実施例2の加工スラリーを製造した。実施例2の加工スラリーの製造は、上記実施例1における研磨材の製造において、第二の酸処理工程が下記のように異なる以外は上記実施例1と同じである。
実施例2の研磨材の製造における第二の酸処理工程では、分離後に粉砕したクラスターダイヤモンドの不純物を除去するため、分離後に粉砕したクラスターダイヤモンドを洗浄した後、このクラスターダイヤモンドをビーカー内に入れ、濃硝酸(1重量部)と濃塩酸(3重量部)の混合液を加えて常温で6時間酸処理し、次に、この酸処理後のクラスターダイヤモンドを純水で洗浄し、次に、洗浄したクラスターダイヤモンドを別のビーカー内に入れ、濃硫酸(10重量部)と濃硝酸(1重量部)との混合液を加えて130℃で2時間加熱処理し、12時間放置した後、純水で洗浄した。
次に、上記の実施例1と同様に、このクラスターダイヤモンドを遠心分離機で湿式に分級して、クラスター径が30nm以上、350nm以下の範囲にあり、平均クラスター径(D50)がそれぞれ80nm、100nm及び150nmのクラスターダイヤモンドを採取し、乾燥した(分級工程)。
実施例2の研磨材のクラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度(%)と非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度(%)は、下記の表3に示すとおりであった。これら炭素濃度と塩素濃度は、上記の実施例1で使用した蛍光X線分析装置を使用して測定した。
<実施例3> 実施例3の加工スラリーを製造した。実施例3の加工スラリーの製造は、上記実施例1の研磨材の製造工程において、第二の酸処理工程が下記のように異なる以外は実施例1と同じである。
実施例3の研磨材の製造における第二の酸処理工程では、分離後に粉砕したクラスターダイヤモンドの不純物を除去するため、分離後に粉砕したクラスターダイヤモンドを洗浄した後、このクラスターダイヤモンドをビーカー内に入れ、濃硫酸(10重量部)と濃硝酸(1重量部)の混合液を加えて、130℃で2時間加熱処理し、12時間放置した後、純水で洗浄し、次に、洗浄したクラスターダイヤモンドを別のビーカー内に入れ、濃硝酸(1重量部)と濃塩酸(3重量部)の混合液を加えて常温で6時間酸処理し、このクラスターダイヤモンドを純水で洗浄した。
次に、上記実施例1と同様に、このクラスターダイヤモンドを遠心分離機で湿式に分級して、クラスター径が30nm以上、350nm以下の範囲にあり、平均クラスター径(D50)がそれぞれ80nm、100nm及び150nmのクラスターダイヤモンドを採取し、乾燥した(分級工程)。
実施例3の研磨材のクラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度(%)と非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度(%)は、下記の表3に示すとおりであった。これら炭素濃度と塩素濃度は、上記の実施例1で使用した蛍光X線分析装置を使用して測定した。
<比較例1> 比較例1の加工スラリーを製造した。比較例1の加工スラリーの製造は、上記実施例1の研磨材の製造工程において、第二の酸処理工程が下記のように異なる以外は上記実施例1と同じである。
比較例1の研磨材の製造における第二の酸処理工程では、分離後に粉砕したクラスターダイヤモンドの不純物を除去するため、分離後に粉砕したクラスターダイヤモンドを洗浄した後、このクラスターダイヤモンドをビーカー内に入れ、濃硫酸(10重量部)と濃硝酸(1重量部)の混合液を加えて130℃で2時間加熱処理し、12時間放置した後、このクラスターダイヤモンドを純水で洗浄した。(この比較例1では、塩素を含まない強酸を使用して第二の酸処理工程を行った。)
次に、上記実施例1と同様に、このクラスターダイヤモンドを遠心分離機で湿式に分級して、クラスター径が30nm以上、350nm以下の範囲にあり、平均クラスター径(D50)がそれぞれ80nm、100nm及び150nmのクラスターダイヤモンドを採取し、乾燥した(分級工程)。
比較例1の研磨材のクラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度(%)と非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度(%)は、下記の表3に示すとおりであった。これら炭素濃度と塩素濃度は、上記の実施例1で使用した蛍光X線分析装置を使用して測定した。
<比較例2> 比較例2の加工スラリーを製造した。比較例2の加工スラリーの製造は、上記実施例1の研磨材の製造工程において、第二の酸処理工程が下記のように異なる以外は上記実施例1と同じである。
比較例2の研磨材の製造における第二の酸処理工程では、分離後に粉砕したクラスターダイヤモンドの不純物を除去するため、分離後に粉砕したクラスターダイヤモンドを洗浄した後、このクラスターダイヤモンドをビーカー内に入れ、濃硝酸(1重量部)と濃塩酸(3重量部)の混合液を加えて常温で6時間酸処理し、このクラスターダイヤモンドを純水で洗浄し、次に、洗浄したクラスターダイヤモンドを別のビーカー内に入れ、濃硫酸(10重量部)と濃硝酸(1重量部)との混合液を加えて130℃で2時間加熱処理し、12時間放置した後、純水で洗浄し、この洗浄後、塩化アンモニア水を添加し、クラスターダイヤモンドに付着している塩素を塩化アンモニウム(NHCl)の形で除去し、クラスターダイヤモンドに付着している塩素濃度を低下させた。
次に、上記実施例1と同様に、このクラスターダイヤモンドを遠心分離機で湿式に分級して、クラスター径が30nm以上、350nm以下の範囲にあり、平均クラスター径(D50)がそれぞれ80nm、100nm及び150nmのクラスターダイヤモンドを採取し、乾燥した(分級工程)。
比較例2の研磨材のクラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度(%)と非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度(%)は、下記の表3に示すとおりであった。これら炭素濃度と塩素濃度は、上記の実施例1で使用した蛍光X線分析装置を使用して測定した。
<比較試験> 上記の実施例1〜3と比較例1、2の加工スラリーを使用して磁気ハードディスク用の基板にテクスチャ加工を施し、加工後の加工斑について比較した。
加工斑の判定は、基板の表面に形成したテクスチャ条痕が基板の表面にわたって斑無く明瞭に形成されているか否かについて、光学観察装置(製品名:VMX−2100、VISION PSYTEC社)(メクルハライド180W光源ランプ使用)を使用し、基板表面の低倍率(約4倍)で写真撮影し、この写真を使用して行った。
基板として、表面を鏡面に研磨した後に、表面強化処理を施した2.5インチのガラス基板を使用した。テクスチャ加工前のガラス基板の平均表面粗さ(Ra)
は約0.15nmであった。
テクスチャ加工は、図3に示すようなテクスチャ加工装置を使用して行われ、ガラス基板を回転させ、ガラス基板の表面に、加工スラリーを供給しながら、コンタクトローラを介して加工テープを押し付け、この加工テープを送り、この加工テープをガラス基板の径方向でオシレーションさせて行った。
加工テープとして、太さ1μmのポリエステル繊維からなる厚さ700μmの不織布テープを使用した。
テクスチャ加工条件は、下記の表2に示すとおりであった。
<比較試験結果> 比較試験結果を下記の表3に示す。表3に示すように、本発明に従った実施例1〜3では、加工斑を生じることなく、平均表面粗さ3Å以上、6Å以下の範囲で、ライン密度40本/μm以上のテクスチャ条痕を均一且つ鮮明に形成することができたことがわかる。
図1Aは、本発明の加工スラリーに含まれる研磨材の人工ダイヤモンド粒子の断面図であり、図1Bは、本発明の加工スラリーに含まれる研磨材のクラスターダイヤモンドの断面図である。 図2Aは、本発明の加工スラリーに含まれる研磨材のクラスターダイヤモンドの電子顕微鏡写真であり、図2Bは、図2Aの部分拡大写真である。 図3は、本発明を実施するテクスチャ加工装置の一例を示す。
符号の説明
10・・・クラスターダイヤモンド
11・・・人工ダイヤモンド粒子
12・・・ダイヤモンド
13・・・オニオンライクカーボン
14・・・化学活性境界層
15・・・不純物
16・・・結合力
20・・・テクスチャ加工装置
21・・・コンタクトローラ
22・・・ノズル
23・・・加工テープ
24・・・基板
R・・・基板回転方向
T・・・テープ送り方向

Claims (6)

  1. 磁気ハードディスク用の基板をテクスチャ加工するために用いられる加工スラリーであって、
    研磨材、及び
    前記研磨材を分散させる分散媒、
    から成り、
    前記研磨材が、
    周囲に不純物を付着している一次粒子径20nm以下の人工ダイヤモンド粒子がクラスター状に結合したクラスターダイヤモンド、
    から成り、
    前記クラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度が95%以上、99%以下の範囲にあり、
    前記クラスターダイヤモンドの非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度が0.5%以上の範囲にあり、
    前記クラスターダイヤモンドのクラスター径が30nm以上、500nm以下の範囲にあり、平均クラスター径(D50)が30nm以上、200nm以下の範囲にあり、
    前記研磨材の含有量は、当該加工スラリーの全量を基準として、0.005重量%以上、0.5重量%以下の範囲にあり、
    前記分散媒が、
    水、及び
    添加剤、
    から成り、
    前記添加剤として、グリコール化合物、高級脂肪酸アマイド、有機リン酸エステル及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上の剤が含まれ、
    前記添加剤の含有量は、当該加工スラリーの全量を基準として、1重量%以上、10重量%以下の範囲にある、
    ところの加工スラリー。
  2. 請求項1の加工スラリーであって、
    前記研磨材の含有量は、当該加工スラリーの全量を基準として、0.005重量%以上、0.1重量%以下の範囲にある、
    ところの加工スラリー。
  3. 請求項1の加工スラリーであって、
    当該加工スラリーの液性が、pH8以上の範囲にある、
    ところの加工スラリー。
  4. 磁気ハードディスク用の基板をテクスチャ加工するための方法であって、
    前記基板を回転させる工程、
    前記基板の表面に加工スラリーを供給する工程、及び
    前記基板の表面に加工テープを押し付け、この加工テープを送る工程、
    から成り、
    前記加工スラリーが、
    研磨材、及び
    前記研磨材を分散させる分散媒、
    から成り、
    前記研磨材が、
    周囲に不純物を付着している一次粒子径20nm以下の人工ダイヤモンド粒子がクラスター状に結合したクラスターダイヤモンド、
    から成り、
    前記クラスターダイヤモンドの不純物中に含まれる非ダイヤモンド炭素の濃度が95%以上、99%以下の範囲にあり、
    前記クラスターダイヤモンドの非ダイヤモンド炭素以外の不純物中に含まれる塩素の濃度が0.5%以上の範囲にあり、
    前記クラスターダイヤモンドのクラスター径が30nm以上、500nm以下の範囲にあり、平均クラスター径(D50)が30nm以上、200nm以下の範囲にあり、
    前記研磨材の含有量は、前記加工スラリーの全量を基準として、0.005重量%以上、0.5重量%以下の範囲にあり、
    前記分散媒が、
    水、及び
    添加剤、
    から成り、
    前記添加剤として、グリコール化合物、高級脂肪酸アマイド、有機リン酸エステル及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上の剤が含まれ、
    前記添加剤の含有量は、前記加工スラリーの全量を基準として、1重量%以上、10重量%以下の範囲にあり、
    前記加工テープとして、少なくとも前記基板の表面に押し付けられる表面部分が太さ0.1μm以上、5.0μm以下の範囲にある繊維からなる織布、不織布、植毛布又は起毛布からなるテープが使用される、
    ところの方法。
  5. 請求項4の方法であって、
    前記研磨材の含有量は、当該加工スラリーの全量を基準として、0.005重量%以上、0.1重量%以下の範囲にある、
    ところの方法。
  6. 請求項4の方法であって、
    当該加工スラリーの液性が、pH8以上の範囲にある、
    ところの方法。
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