JP2007146302A - 無電解金めっき液及び無電解金めっき方法 - Google Patents

無電解金めっき液及び無電解金めっき方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 中性且つ低温でも、金の析出速度が高く、安定性も優れた無電解金めっき液を提供すること。
【解決手段】 金塩と、下記一般式(I)で表される還元剤と、重金属塩と、を含むことを特徴とする無電解金めっき液。
【化1】
Figure 2007146302

[式中、Rは水酸基又はアミノ基を示し、R、R及びRはそれぞれ独立に水酸基、アミノ基、水素原子又はアルキル基を示す。]
【選択図】なし

Description

本発明は、無電解金めっき液及び無電解金めっき方法に関する。
従来の高温、高アルカリ性無電解金めっき液に代わって、中性及び低温で使用可能な無電解金めっき液が近年開発されている。かかる無電解金めっき液は、めっき可能なレジストや電子部品の使用範囲を広げることを目的として開発されたものであるが、既存の製品ではめっき液の安定性が不充分であり、付きまわり性にも劣っている。
このような安定性低下の原因としては、(1)無電解金めっき自体の安定性が不充分であること、及び(2)めっき処理による不純物金属混入により安定性が低下すること、の2つが想定されており、これらの観点からめっき液を改良する試みがなされている。
例えば、特許文献1には、シアン化合物を使用することなく、中性付近で無電解金めっきを実現するために、還元剤としてアスコルビン酸を使用することが開示されている。
また、めっき処理による不純物金属混入の抑制や液安定性向上のために、メルカプトベンゾチアゾール系化合物の金属隠蔽剤を添加することが、特許文献2及び特許文献3に開示されている。
更に、特許文献4には、無電解金めっき液に還元剤としてヒドラジン化合物(10〜30g/L)を使用することが開示され、この浴は上記のアスコルビン酸浴と比較して低濃度で実用的な析出速度が得られるとされている。
また、めっき処理による不純物金属混入の抑制や液安定性向上のためベンゾトリアゾール系化合物の金属隠蔽剤を添加する改良がなされており、この隠蔽剤の管理範囲は広く(3〜10g/L)実用的であることが、特許文献5に開示されている。
一方、特許文献6には、還元剤にチオ尿素またはフェニル系化合物を使用する方法が開示されており、チオ尿素は低濃度で金を還元できることが示されている。
特開平1−191782号公報 特開平4−350172号公報 特開平6−145997号公報 特開平3−215677号公報 特開平4−314871号公報 特許第2972209号公報
しかしながら、上記従来技術のめっき液には以下のような問題点が存在していた。すなわち、アスコルビン酸による還元は還元効率が低く、実用析出速度を確保するために、アスコルビン酸ナトリウム濃度を60〜100g/Lと過剰に配合するため、めっき液の安定性が低下していた。
また、メルカプトベンゾチアゾール系化合物の金属隠蔽剤は、使用管理範囲が非常に狭く(0.1〜5ppm)、作業の効率が低く、添加量が多くなると、付きまわり不良が発生するという問題があった。
一方、還元剤としてヒドラジン化合物を使用すると、この浴はアスコルビン酸浴と比較して低濃度で実用的な析出速度を得られるものの、ヒドラジン化合物自体の安定性が低く、液の安定性が確保できないという問題があった。また、めっき処理による不純物金属混入の抑制や液安定性向上のためベンゾトリアゾール系化合物の金属隠蔽剤を添加する改良がなされているが、上記のように還元剤自体の安定性が低いため、結果的に安定性向上が不十分で実用化が困難である。
また、チオ尿素化合物及びフェニル化合物の両方の還元剤を配合した無電解金めっき液は、チオ尿素の副生成物をフェニル化合物系還元剤で還元し、液安定性を向上せしめたものであるが、チオ尿素の副生成物を完全に元の還元剤にもどすことが困難であり、この残留副生成物がめっきの付きまわり不良や不安定化の原因となり、充分な安定性を保持できない場合があった。また、フェニル化合物系還元剤は、中性(pH7〜7.5)において還元力が少ないため実用的な析出速度を得ることができず、弱アルカリ性領域(pH9.0付近)においては、皮膜外観が悪くめっき中に液が分解する問題があった。
そこで、チオ尿素化合物、フェニル化合物の両方の還元剤を配合した無電解金めっき液が提案されており(特開平3−104877号公報)、このめっき液によれば、チオ尿素の副生成物がフェニル化合物系還元剤で還元されるため、液安定性が向上することが可能になる。また、この浴にベンゾトリアゾール系化合物の金属隠蔽剤を添加することが提案されており(特開平9−157859号公報)、このめっき液によれば、不純物金属混入の抑制や液安定性向上を図り、従来浴に比べて安定性を向上させることが可能になる。
しかしながら、安定性が更に高く、中性且つ低温で実用的な析出速度を発揮するめっき液が求められているのが現状である。そこで、本発明の目的は、pH6〜8程度の中性領域において液温60〜80℃程度の低温でも、充分な金の析出速度を発揮する無電解金めっき液であって、めっき液の安定性が特に優れた無電解金めっき液を提供することにある。本発明の目的は、また、かかる無電解金めっき液を用いた無電解金めっき方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の還元剤と重金属塩を含む無電解金めっき液により、上記目的が達成可能であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の無電解金めっき液は、金塩と、下記一般式(I)で表される還元剤と、重金属塩と、を含むことを特徴とするものである。
Figure 2007146302

[式中、Rは水酸基又はアミノ基を示し、R、R及びRはそれぞれ独立に水酸基、アミノ基、水素原子又はアルキル基を示す。]
本発明の無電解金めっき液は、金塩と組み合わせる還元剤を上記一般式(I)で表される化合物とし、重金属塩を併用したことから、pH6〜8程度の中性領域において液温60〜80℃程度の低温でも、充分な金の析出速度を発揮するのみならず、めっき液の安定性が特に優れるようになる。
上記本発明の無電解金めっき液は、錯化剤を更に含むことが好ましく、pH緩衝剤を更に含むことが好ましく、金属イオン隠蔽剤を更に含むことが好ましい。すなわち、本発明の無電解金めっき液は、錯化剤、pH緩衝剤及び金属イオン隠蔽剤のうち少なくとも1つを更に含むことが好ましい。かかる成分を含有することにより、めっき液の安定性が更に優れるようになる。
そして、重金属塩は、タリウム塩、鉛塩、砒素塩、アンチモン塩、テルル塩及びビスマス塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの重金属塩であることが好ましく、重金属塩はタリウム塩であることが特に好ましい。また、重金属塩としては重金属無機化合物塩又は重金属有機錯体塩が良く、無電解金めっき液は、重金属塩に由来する重金属が1〜100ppmとなるように重金属塩を含有することが好適である。重金属塩が上記化合物である場合又は上記濃度である場合には、金の析出速度及びめっき液の安定性が更に優れるようになる。
本発明の無電解金めっき液においては、還元剤が、下記一般式(II)で表される還元剤であることが好ましい。一般式(II)で表される還元剤を用いることによりめっき液の安定性が高まると共に、金の析出速度を向上させることが可能になる。
Figure 2007146302

[式中、R21は水酸基又はアミノ基を示し、R22は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
本発明の無電解金めっき液は、pHが5〜10であることが好ましい。無電解金めっき液のpHが上記範囲である場合は、様々な被めっき体に対して中性且つ低温で無電解金めっきが可能なることから、めっき可能なレジストや電子部品の使用範囲を広げることが可能になる。
本発明は、また、pH6〜8、液温60〜80℃における金の析出速度が0.2〜1.0μm/時であり、0.36dm/Lのめっき負荷で65℃において1時間めっきを行った後に室温で1日放置したときの異常析出成分が0%であることを特徴とする無電解金めっき液を提供する。
本発明は、更に、無電解金めっき液中に被めっき体を浸漬して該被めっき体表面に金被膜を形成させる無電解金めっき方法において、無電解金めっき液は上記本発明の無電解金めっき液であることを特徴とする無電解金めっき方法を提供する。かかる方法においては、無電解金めっき液のpHを6〜8とすることが好ましく、金被膜の形成を液温60〜80℃の無電解めっき液で行うことが好ましい。かかる方法を適用することにより、様々な被めっき体に対して中性且つ低温で無電解金めっきが可能となる。
本発明によれば、pH6〜8程度の中性領域において液温60〜80℃程度の低温でも、充分な金の析出速度を発揮する無電解金めっき液であって、めっき液の安定性が特に優れた無電解金めっき液を提供することが可能になる。また、かかる無電解金めっき液を用いた無電解金めっき方法を提供することが可能になる。
本発明の無電解金めっき液は、上述のように、必須成分として、金塩、還元剤及び重金属塩を含有している、先ず、かかる必須成分の実施の形態について説明する。
(金塩)
本発明の無電解金めっき液に使用可能な金塩としては、シアン系金塩及び非シアン系金塩が挙げられる。シアン系金塩としては、シアン化第一金カリウム及びやシアン化第二金カリウムが例示でき、非シアン系金塩としては、塩化金酸塩、亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩、チオリンゴ酸金塩が例示可能である。金塩は1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
金塩としては、亜硫酸金塩及びチオ硫酸金塩が好ましく、その含有量としては金として1〜10g/Lの範囲であることが好ましい。金の含有量が1g/L未満であると、金の析出反応が低下し、10g/Lを超えると、めっき液の安定性が低下すると共に、めっき液の持出により金消費量が多くなるため経済的に好ましくない。含有量は、2〜5g/Lの範囲とすることがより好ましい。
(還元剤)
本発明の無電解金めっき液において用いる還元剤は、下記一般式(I)で表される化合物(以下「化合物I」という。)である。
Figure 2007146302
化合物Iにおける、Rは水酸基又はアミノ基、R、R及びRはそれぞれ独立に水酸基、アミノ基、水素原子又はアルキル基であるが、アルキル基としては、直鎖又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、直鎖又は分岐状の炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、t−ブチル基等)がより好ましい。
化合物Iの具体例としては、例えばフェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、t−ブチルフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、ヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルヒドロキノン、アニリン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−トルイジン、p−トルイジン、o−エチルアニリン、p−エチルアニリン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
めっき液の安定性及び金の析出速度の観点からは、化合物Iは、下記一般式(II)で表される化合物(以下「化合物II」という。)であることが好ましい。
Figure 2007146302
化合物IIにおいて、R21は水酸基又はアミノ基、R22は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、t−ブチル基等)である。化合物IIの具体例としては、p−フェニレンジアミン、メチルヒドロキノン、ヒドロキノン等が挙げられる。
還元剤の含有量は、めっき液の全容量を基準として0.5〜50g/Lが好ましい。還元剤の含有量が、0.5g/L未満であると、実用的な析出速度を得るのが困難になる。50g/Lを超えると、めっき液の安定性を確保できなくなる傾向にある。還元剤の含有量は、2〜10g/Lとすることがより好ましい。
(重金属塩)
本発明においては、上述した金塩と還元剤との組み合わせに重金属塩を添加したことが大きな特徴である。重金属塩を添加することにより、pH6〜8程度の中性領域において液温60〜80℃程度の低温でも、実用上充分な金の析出速度(0.2μm/時以上)が可能になる。すなわち、重金属塩は析出速度促進剤として機能する。また、従来技術では不可能であった優れためっき液安定性も得られるようになる。
析出速度を更に促進する観点からは、重金属塩は、タリウム塩、鉛塩、砒素塩、アンチモン塩、テルル塩及びビスマス塩からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
タリウム塩としては、硫酸タリウム塩、塩化タリウム塩、酸化タリウム塩、硝酸タリウム塩等の無機化合物塩、マロン酸二タリウム塩等の有機錯体塩が挙げられ、鉛塩としては、硫酸鉛塩、硝酸鉛塩等の無機化合物塩、酢酸鉛等の有機錯体塩が挙げられる。
また、砒素塩としては、亜砒酸塩、砒酸塩、三酸化砒素等の無機化合物塩や有機錯体塩が挙げられ、アンチモン塩としては、酒石酸アンチモニル塩等の有機錯体塩、塩化アンチモン塩類、オキシ硫酸アンチモン塩、三酸化アンチモン等の無機化合物塩類が挙げられる。
そして、テルル塩としては、亜テルル酸塩、テルル酸塩等の無機化合物塩や有機錯体塩が挙げられ、ビスマス塩としては、硫酸ビスマス(III)、塩化ビスマス(III)、硝酸ビスマス(III)等の無機化合物塩、しゅう酸ビスマス(III)等の有機錯体塩が挙げられる。
本発明においては、重金属化合物塩として、タリウム塩(好ましくは、タリウム無機化合物塩又はタリウム有機錯体塩)を用いることが特に好ましい。
上述した重金属塩は1種又は2種以上を用いることができるが、その添加量の合計はめっき液全容量を基準として1〜100ppmが好ましく、1〜10ppmがより好ましい。1ppm未満では、析出速度向上効果が充分でない場合があり、100ppmを超す場合はめっき液安定性が悪くなる傾向にある。
本発明の無電解金めっき液は、上述した金塩、還元剤及び重金属塩に加えて、錯化剤、pH緩衝剤及び金属イオン隠蔽剤の少なくとも一つを含有することが好ましく、これらの全てを含有することがより好ましい。以下、かかる成分について説明する。
(錯化剤)
本発明の無電解金めっき液には、錯化剤を含有させることが好ましく、当該成分を含有せしめることにより、金イオン(Au)が安定的に錯体化されて、Auの不均化反応(3Au=Au3++2Au)の発生を低下させ、液が安定に保たれるという効果が得られる。錯化剤は、1種のみを用いてもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよく、好適な錯化剤としては、シアン系錯化剤及び/又は非シアン系錯化剤が挙げられる。
シアン系錯化剤としては、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等のシアン塩が挙げられ、非シアン系錯化剤としては亜硫酸塩、チオ硫酸塩、チオリンゴ酸塩が挙げられる。
錯化剤としては、亜硫酸塩、チオ硫酸塩が好ましく、錯化剤の含有量は、めっき液の全容量を基準として1〜200g/Lが好ましい。錯化剤の含有量が1g/L未満であると、金錯化力が低下し安定性を低下する傾向にある。また、200g/Lを超えると、めっき液の安定性が向上するが、液中に再結晶が発生し経済的に負担となる。錯化剤の含有量は、20〜50g/Lとすることがより好ましい。
(pH緩衝剤)
本発明の無電解金めっき液には、pH緩衝剤を含有させることが好ましく、当該成分を含有せしめることにより、析出速度を所望の値に調整することができ、pH等を一定に保つこともできる。pH緩衝剤は、1種のみを用いてもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよい。好適なpH緩衝剤としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、硼酸塩、クエン酸塩、硫酸塩等が挙げられ、これらの中では、硼酸塩及び/又は硫酸塩が特に好ましい。
錯化剤の含有量は、めっき液の全容量を基準として1〜100g/Lが好ましい。錯化剤の含有量が1g/L未満であると、pHの緩衝効果がなくめっき浴の状態が変化する場合があり、100g/Lを超えると、めっき液中で再結晶化が進行する傾向にある。錯化剤の含有量は、20〜50g/Lの範囲とすることがより好ましい。
(金属イオン隠蔽剤)
本発明の無電解金めっき液には、金属イオン隠蔽剤を含有させることが好ましく、当該成分を含有せしめることにより、以下の効果が得られる。すなわち、作業中にめっき装置の錆や金属破片等の持込み等による不純物の混入や、被めっき物の付きまわり不足による下地金属のめっき液中への混入などによって、銅、ニッケル、鉄などの不純物イオンが混入し、めっき液の異常反応が進行して、めっき液の分解が発生した場合に、このような異常反応を抑制することが可能になる。
金属イオン隠蔽剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物を用いることができ、かかる化合物としては、ベンゾトリアゾールナトリウム、ベンゾトリアゾールカリウム、テトラヒドロベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール等が例示できる。
金属イオン隠蔽剤の含有量は、めっき液の全容量を基準として0.5〜100g/Lが好ましい。金属イオン隠蔽剤の含有量が0.5g/L未満であると、不純物の隠蔽効果が少なく、充分な液安定性を確保できない傾向にある。一方、100g/Lを超えると、めっき液中に再結晶化が生じる場合がある。コスト及び効果を考慮すると、金属イオン隠蔽剤の含有量は、2〜10g/Lとすることがより好ましい。
(無電解金めっき液のpH)
本発明の無電解金めっき液のpHは5〜10であることが好ましい。無電解金めっき液のpHが5未満であると、めっき液の金錯化剤である亜硫酸塩や、チオ硫酸塩が分解し、毒性の亜硫酸ガスが発生するおそれがある。また、pHが10を超えると、めっき液の安定性が低下する傾向にある。無電解金めっき液のpHは、6〜8がより好ましく、7〜8が更に好ましい。
(無電解金めっき方法)
次に、本発明の無電解金めっき方法について説明する。本発明の無電解金めっき方法は、上述した本発明の無電解金めっき液中に被めっき体を浸漬して該被めっき体表面に金被膜を形成させることを特徴とするものである。
かかる方法においては、無電解金めっき液のpHは5〜10が好ましく、6〜8がより好ましく、7〜8が更に好ましい。また、金被膜の形成を液温60〜80℃の無電解めっき液で行うことが好ましく、液温は65℃〜80℃とすることがより好ましい。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
[試料の作成]
めっき試験用サンプルには3cm×3cm×0.3mmの圧延銅板を使用し、表面の錆や有機物等を除去するために、酸性脱脂であるZ−200(ワールドメタル株式会社製、商品名)に45℃で3分間処理した。更に、余分な界面活性剤を除去するために湯洗(45℃、純水)を1分間実施した。その後、水洗処理を1分間行った。更に、表面の形状を均一化するために、過硫酸アンモニウム溶液(120g/L)に室温で3分間浸漬処理するソフトエッチング処理を行った。その後、水洗処理を1分間行った。次いで、表面の酸化銅を除去するために硫酸(10%)に室温で1分間浸漬処理を行い、その後、水洗処理を1分間行った後、置換パラジウムめっきであるSA−100(日立化成工業株式会社製、商品名)に室温で5分間浸漬処理を行った。その後、水洗処理を1分間行った。
次に、無電解Ni−Pめっき液であるNIPS−100(日立化成工業株式会社製、商品名)に85℃で、25分間浸漬処理をしてニッケル−リンのめっき皮膜を5μm程度に行い、水洗処理を1分間行った後、置換金めっき液であるHGS−500(日立化成工業株式会社製、商品名)に85℃で、10分間浸漬処理して、0.05〜0.1μm程度の膜厚の金めっき膜を形成させて水洗処理を1分間行い、更に、以下の無電解金めっきを行って評価した。また、無電解金めっき液の評価用めっき槽には、ポリプロピレン製の樹脂槽を使用した。
[金めっき液安定性評価方法]
(金めっき液安定性評価用実験槽の洗浄方法)
金めっき液安定性評価方法には、PP(ポリプロピレン製)樹脂製の1Lビーカーをめっき槽として使用した。また、槽内に付着している不純物を除去するために、実験前に槽内を王水(1:3=硝酸:塩酸、50%に純水で希釈)で6時間以上、常温で洗浄した後、水洗、純水洗を順次、充分行い、80℃で乾燥して実験に使用した。
(金めっき液安定性評価方法)
金めっき液安定性は、3条件に分類して評価した。まず(1)上記めっき槽を使用して、めっき前に液温度を65℃に設定して1時間放置した時の金めっき液の安定性を評価した。次に(2)昇温後0.36dm/Lのめっき負荷で1時間(65℃)めっき処理した。次いで(3)そのめっき液を自然冷却し、室温で金めっき液を1日放置し、異常析出物がめっき槽の底面を覆う面積の割合(槽内異常析出発生面積(%))、すなわち異常析出成分(%)でめっき液安定性を評価した。なお、評価基準は表1に示す通りである。
Figure 2007146302
[皮膜外観及びめっき付き回り不良評価方法]
めっき外観、めっき付き回り不良については、電気金めっき皮膜(0.5μm相当)に近い外観を標準とした。また、めっき付き回り性につては、めっき端部を顕微鏡(20〜50倍相当)で目視観察して評価した。
[無電解金めっき液の作製及び評価]
(実施例1〜4)
表2に示す組成になるように実施例1〜4の無電解金めっき液を作製し、上述した評価方法に基づいて評価を行った。なお、実施例1〜4は、還元剤であるヒドロキノン濃度を3g/Lに一定にして実験を行った。また、析出速度促進剤である重金属塩として硝酸タリウムとして用い、実施例1〜4の無電解金めっき液におけるTl(タリウム)イオンは、それぞれ1、3、5、10ppmとなるようにした。
析出速度、皮膜外観、めっき付き回り不良及び金めっき液安定性について表2にまとめて示すが、タリウムイオン濃度が1ppmで析出速度の増加が見られ、未添加浴との比較で約2倍の析出速度向上が確認できた。また、めっき皮膜の外観は均一なレモンイエローで、付き回り不良の発生もなく良好であった。また、めっき中やめっき後の金めっき液安定性も良好であった。更に、タリウムイオンの含有量が3、5、10ppmになるにしたがって、析出速度は増加し、10ppmの添加で0.36μm/時の析出速度(未添加時の約3倍)を示した。しかも、めっき皮膜の外観は均一なレモンイエローで、析出速度の増加に伴うめっき付き回り不良の発生もなく良好であった。また、めっき中やめっき後の液安定性も良好であった。
Figure 2007146302
(実施例5〜8)
表3に示す組成になるように実施例5〜8の無電解金めっき液を作製し、上述した評価方法に基づいて評価を行った。実施例5〜8は、還元剤であるヒドロキノン濃度を更に多い5g/Lに一定にして実験を行った。また、析出速度促進剤である重金属塩として硝酸タリウムとして用い、実施例5〜8の無電解金めっき液におけるTl(タリウム)イオンは、それぞれ1、3、5、10ppmなるようにした。
析出速度、皮膜外観、めっき付き回り不良及び金めっき液安定性について表3にまとめて示すが、タリウムイオン濃度が1ppmで析出速度の増加が見られ、実施例1と同様に未添加浴(比較例4)との比較で約2倍の析出速度向上が確認できた。また、めっき皮膜の外観は均一なレモンイエローで、めっき付き回り不良の発生もなく良好であった。また、めっき中やめっき後の金めっき液安定性も良好であった。更に、タリウムイオンの含有量が3、5、10ppmになるにしたがって、析出速度は増加し、ヒドロキノン5g/L、タリウム10ppm、pH7.5の条件で0.56μm/時の析出速度(未添加時の約3から4倍)を示した。しかも、めっき皮膜の外観は均一なレモンイエローで、析出速度の増加に伴うめっき付き回り不良の発生もなく良好であった。また、めっき中やめっき後の液安定性も良好であった。
Figure 2007146302
(実施例9〜12)
表4に示す組成になるように実施例9〜12の無電解金めっき液を作製し、上述した評価方法に基づいて評価を行った。金めっき液組成は、実施例5〜8と同様に、還元剤であるヒドロキノンを5g/L、pHを液安定性の良い7.5で、析出速度促進剤としてタリウムイオンを1、3、5、10ppmの条件で、めっき温度を80℃で実験を行った。
析出速度、皮膜外観、めっき付き回り不良及び金めっき液安定性について表4にまとめて示すが、めっき温度を80℃にすると析出速度は更に速くなり、1.0ppmの添加で約0.5μm/時の析出速度を示した。また、更に添加量を多くすると10.0ppmの添加で1.15μm/時の実用析出速度を示した。また、めっき外観については、実施例9〜12の条件ではすべて、均一なレモンイエローの外観を示し、めっき付き回り不良や、析出ムラの発生もなく良好な結果であった。金めっき液の安定性については、めっき前、めっき中、めっき後、めっき後(1日以上)も良好な結果であった。
Figure 2007146302
(比較例1〜4)
表5に示す組成になるように比較例1〜4の無電解金めっき液を作製し、上述した評価方法に基づいて評価を行った。比較例1、2、3及び4にはそれぞれ、還元剤としてヒドロキノンを0、1、3及び5g/L添加して金めっきを行った。
析出速度、皮膜外観、めっき付き回り不良及び金めっき液安定性について表5にまとめて示すが、還元剤であるヒドロキノンを添加しない場合は、1時間めっき液中に浸漬しても、ほとんど金膜厚の増加がなく、析出が進行しない結果となった。一方、還元剤としてヒドロキノンを添加した場合、析出膜厚が除々に増加し、ヒドロキノン5g/Lで0.152μm/時(未添加時の約2.5倍)の析出膜厚を得ることができた。
また、比較例2〜4の条件では、めっき皮膜の外観は均一なレモンイエローで、付き回り不良の発生もなく良好であった。また、めっき中やめっき後の液安定性も良好であった。しかし、析出速度が実用的な無電解金めっき液(約0.2〜1.0μm/時、又はこれ以上)と比較して析出速度が遅い結果となった。このためパッケージ基板等のワイヤボンディング基板には、生産性が悪く問題であることがわかった。
Figure 2007146302
(比較例5〜8)
表6に示す組成になるように比較例5〜8の無電解金めっき液を作製し、上述した評価方法に基づいて評価を行った。析出速度、皮膜外観、めっき付き回り不良及び金めっき液安定性について表6にまとめて示すが、金めっき液のpHを1NのNaOHを使用して、それぞれ8、9、10と変化させると、pH9の条件で析出速度が著しく増加し、約0.8μm/時を示した。しかし、pH9と10の条件では、めっき液が非常に不安定で昇温中に、めっき槽内で異常析出が発生して通常に使用することが困難な結果となった。またpH8.0の条件(比較例5)でも、めっき後1日経過すると、めっき槽内の一部に異常析出が発生する結果となった。
更に、めっき外観については、pH8の条件ではレモンイエローの均一な表面であったが、pH9と10については赤褐色の外観不良になる結果となった。また、めっき付き回り性については、比較例5、6、7の条件では問題無い結果となった。比較例8については、比較例6と同様にpH9.0で、めっき温度を80℃で実験したが、めっき外観が赤褐色で悪く、液安定性は65℃と比較して更に悪くなり、めっき前に液中の金イオンの消費が多く、析出速度が65℃の条件と変わらない結果となった。
Figure 2007146302
以上の結果から本発明の無電解金めっき液は、重金属塩の添加によって、還元剤であるヒドロキノンの析出効率を高めることが可能となり、しかも、実用的な析出速度(0.2〜1.0μm/時)が得られ、安定性と均一なレモンイエローの皮膜外観を有する無電解金めっきが可能であることがわかった。また、液のpHが中性付近(6〜8)で、かつ低い温度条件(60〜80℃)で使用可能なため、金めっき液の安定性が低く、大量生産が不可能なため実用化されていなかった中性での無電解金めっきが可能となり、適用できる材料や電子部品等の範囲は大幅に拡大される。

Claims (14)

  1. 金塩と、下記一般式(I)で表される還元剤と、重金属塩と、を含むことを特徴とする無電解金めっき液。
    Figure 2007146302

    [式中、Rは水酸基又はアミノ基を示し、R、R及びRはそれぞれ独立に水酸基、アミノ基、水素原子又はアルキル基を示す。]
  2. 錯化剤を更に含むことを特徴とする請求項1記載の無電解金めっき液。
  3. pH緩衝剤を更に含むことを特徴とする請求項1又は2記載の無電解金めっき液。
  4. 金属イオン隠蔽剤を更に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の無電解金めっき液。
  5. 前記重金属塩が、タリウム塩、鉛塩、砒素塩、アンチモン塩、テルル塩及びビスマス塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの重金属塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の無電解金めっき液。
  6. 前記重金属塩が、タリウム塩であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の無電解金めっき液。
  7. 前記重金属塩が、重金属無機化合物塩又は重金属有機錯体塩であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の無電解金めっき液。
  8. 前記重金属塩に由来する重金属が1〜100ppmとなるように前記重金属塩を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の無電解金めっき液。
  9. 前記一般式(I)で表される還元剤が、下記一般式(II)で表される還元剤であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の無電解金めっき液。
    Figure 2007146302

    [式中、R21は水酸基又はアミノ基を示し、R22は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
  10. pHが、5〜10であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の無電解金めっき液。
  11. pH6〜8、液温60〜80℃における金の析出速度が0.2〜1.0μm/時であり、
    0.36dm/Lのめっき負荷で65℃において1時間めっきを行った後に室温で1日放置したときの異常析出成分が0%であることを特徴とする無電解金めっき液。
  12. 無電解金めっき液中に被めっき体を浸漬して該被めっき体表面に金被膜を形成させる無電解金めっき方法において、
    前記無電解金めっき液は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の無電解金めっき液であることを特徴とする無電解金めっき方法。
  13. 前記無電解金めっき液のpHが6〜8であることを特徴とする請求項12記載の無電解金めっき方法。
  14. 前記金被膜の形成を、液温60〜80℃の前記無電解めっき液で行うことを特徴とする請求項12又は13記載の無電解金めっき方法。
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