JP2007146217A - 製鋼法及び製鋼用精錬設備 - Google Patents

製鋼法及び製鋼用精錬設備 Download PDF

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Abstract

【課題】 劣悪安価なスクラップを多量に使用することができ,出鋼量の拡大が可能で,しかも排ガスの回収,処理も可能で環境上の問題もなく,COの発生量削減対策にも資する製鋼法及びそれに用いる精錬設備を提供する。
【解決手段】 本発明は,比表面積を減少させる加工が施された鉄を含有するスクラップの一部又は全部を600〜1200℃に予熱し,スクラップの全部と溶銑を精錬炉に装入した後,酸素を吹き込みながら溶鋼を製造する製鋼法およびこれを実施するための製鋼用精錬設備である。好ましくは比表面積を減少させる加工をプレス成形にて直方体または立方体に成形し,成形後の厚みを80〜1000mmとし,さらに予熱装置としてトンネル炉または回転炉床炉を用いることを特徴とする製鋼法,およびこれを実施するための製鋼用精錬設備である。
【選択図】 図1

Description

本発明は,鉄を含有するスクラップ(以降,単に「スクラップ」と表記する場合がある。)と溶銑を精錬炉に装入して精錬炉で吹錬し,溶鋼を溶製する製鋼法,及びそれに用いられる精錬設備に関する。
本発明では,鋼を製造する精錬炉であれば特に限定するものではないが,工業上,転炉又は電炉が好適である。
転炉法による製鋼工程においては,主原料として溶銑とスクラップを装入して溶鋼を生産している。高炉一貫製鉄所では,下工程での発生屑(=歩留落ち分)が自家発生屑として使用されており,その比率は自家発生屑を外販しない場合10%弱程度である。従って,高炉一貫製鉄所では,転炉での主原料に占める溶銑の比(溶銑比,Hot Metal Ratio:HMR)は,90%以上となるのが一般的である。
一方,近年,地球環境問題から,COガス排出量削減のニーズが高まってきている。鉄鋼業においては,鉄鉱石を還元して溶銑を製造して鉄鋼製品とすると,鉄鉱石をコークスで鉄に還元する際に,COガスが発生するため,すでに生産された鉄鋼製品をリサイクルして製品に再生する方が,溶銑の使用量を低減でき,大幅にCOガス排出量を削減できる。このような理由から,転炉においても市中屑など,自家発生屑以外の外部発生屑を積極的に使用する試みがなされている。しかしながら,スクラップの比率が多くなると,スクラップの溶解に要する熱量が増大するため,スクラップの使用比率は所定値以下とされ,一般には15%程度が限界である,という問題があった。
このような問題に対して,スクラップを事前に予熱することでスクラップの比率を増大させることが提案されている。
例えば,特許文献1には,鉄源を積載する金属性敷板とバーナーとを有するカバーからなる転炉装入鉄源の予熱装置が開示されている。
また,特許文献2には,使用済み自動車または使用済み家電機器のリサイクル処理を目的として,廃車プレス屑や使用済み家電屑を,加熱炉を有する溶解室(=電気炉)で溶解する際に,この溶解室に直結し,溶解室からの排ガスを導入して原料の予熱を行う予熱室で予熱してガス化成分をガス化除去したのち溶解する発明が開示されている。
特開平2−240209号公報 特開2002−285225号公報
しかしながら,特許文献1に開示されている発明は,スクラップを無加工で直接予熱する方式のため,スクラップの比表面積が大きいことによるスクラップの酸化が無視できなくなり,予熱による効果が減少してしまうという問題がある。これは酸化鉄を精錬炉に装入した場合,酸化鉄が鉄に還元される際の反応は吸熱反応であることから,むしろ冷却材として作用してしまうためである。
鉄の酸化速度は酸化層を通した酸素の拡散律速であり,酸化速度は時間の1/2乗に比例することが知られている。従って予熱条件が同じであれば,単位面積当りに生成する酸化層の厚みはスクラップの形状にかかわらず同等となる。従って,スクラップの比表面積が大きければ大きいほど,酸化層の質量比,すなわち酸化率が大きいことになる。
さらに,シュレッダー屑などのように形状が小さく比表面積が大きいスクラップを高温に加熱すると,酸化鉄の生成の問題に加えて,表面酸化発熱による部分溶融が生じ,スクラップ同士が溶着してしまう現象が発生するため,この方法では高温に予熱した場合にスクラップがハンドリングできなくなる可能性がある。
また,特許文献2に開示されている発明は,加熱源を有する溶解室に直結した予熱室に溶解室の排ガスを導入して廃車プレス屑を予熱する方式であるが,溶解室に加熱源を有する必要があり,一般的には電気炉にしか適用できない技術である。
また,溶解室で発生する排ガスで予熱を行うため,発生ガス量で予熱できるスクラップ量の上限が決まり,多量のスクラップを予熱することができないという問題がある。
さらに,シャフト型炉に上方からスクラップを装入し予熱するため,下部のスクラップには上部のスクラップの重圧を受ける。従って,この状態で加熱すると,高温で強度が低下したスクラップは容易に圧着されるため,特に高温まで加熱する場合には,プレス屑を使用してもスクラップ同士の溶着問題が回避できるわけではない。
さらに,高濃度のCOを含む排ガスが多量に発生する転炉においては,排ガスを燃料として再利用する目的で,排ガスを未燃焼状態で回収するOG(Oxygen Converter Gas Recovery System)設備が設置されている。このOG設備においては,転炉炉頂と排ガス回収ダクトを密閉する代わりに,ガスの圧損を制御することで大気の吸引と排ガスの漏洩を抑制することが行われているが,排ガス回収ダクト内に圧損が大きくかつ変動する場合が多く,圧損制御を高精度で行うことが困難となる。そのため,スクラップ予熱構造体を排ガスダクト上に設けるこの方法を採用することは困難である。
これらに対し,本発明は,劣悪で安価なスクラップを多量に使用することができ,排ガスの回収,処理も可能で環境上の問題もなく,COの発生量削減対策にも資する製鋼法及びそれに用いる精錬設備を提供することを目的とする。
係る課題を解決するため,本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)比表面積を減少させる加工が施された鉄を含有するスクラップを,600〜1200℃に予熱し,該予熱後のスクラップと溶銑を精錬炉に装入して,酸素を吹き込みながら溶鋼を精錬することを特徴とする,製鋼法。
(2)前記比表面積を減少させる加工を,プレス成形により施すことを特徴とする,(1)に記載の製鋼法。
(3)前記鉄を含有するスクラップが,使用済み自動車屑,廃家電屑,HS屑,H1屑,H2屑,H3屑,プレス屑,シュレッダー屑,加工屑,またはリターン屑,の1種以上であることを特徴とする,(1)または(2)に記載の製鋼法。
(4)予熱する前記スクラップとして,すでにプレス成形されている廃車プレス屑を併用することを特徴とする,(1)〜(3)のいずれかに記載の製鋼法。
(5)予熱する前記スクラップとして,重量屑を併用することを特徴とする,(1)〜(4)のいずれかに記載の製鋼法。
(6)予熱後の前記スクラップの温度Tに対して,前記精錬炉に装入する際の前記スクラップの温度をTとするとき,T−Tを200℃以下とすることを特徴とする,(1)〜(5)のいずれかに記載の製鋼法。
(7)前記溶鋼中のCuの含有量が0.10質量%以下,Niの含有量が0.04質量%以下,Snの含有量が0.02質量%以下,Crの含有量が0.08質量%以下,Znの含有量が0.25質量%以下となる様に溶製することを特徴とする,(1)〜(6)のいずれかに記載の製鋼法。
(8)Cu,Ni,Sn,Cr,Znの装入量が,それぞれ以下の式を満足する様にスクラップの配合比を変更して溶製することを特徴とする,(1)〜(7)のいずれかに記載の製鋼法。
Figure 2007146217
(9)前記比表面積を減少させる加工を施した後の前記スクラップの嵩比重が0.4〜5.0であることを特徴とする,(1)〜(8)のいずれかに記載の製鋼法。
(10)前記スクラップを直方体または立方体に前記比表面積を減少させる加工を施すことを特徴とする,(1)〜(9)のいずれかに記載の製鋼法。
(11)前記比表面積を減少させる加工を施した後の前記スクラップの厚みを80〜1000mmとすることを特徴とする,(1)〜(10)のいずれかに記載の製鋼法。
(12)前記精錬炉が転炉であることを特徴とする,(1)〜(11)のいずれかに記載の製鋼法。
(13)トンネル炉または回転炉床炉を用いて前記スクラップを予熱することを特徴とする,(1)〜(12)のいずれかに記載の製鋼法。
(14)体積%で,酸素濃度0〜10%の雰囲気で前記スクラップを予熱することを特徴とする,(1)〜(13)のいずれかに記載の製鋼法。
(15)前記スクラップを予熱した後の排ガスを回収し,処理することを特徴とする,(1)〜(14)のいずれかに記載の製鋼法。
(16)前記排ガスの処理条件として,900℃以上で2秒以上保持し,かつ300℃以下まで冷却することを特徴とする,(15)に記載の製鋼法。
(17)鉄を含有するスクラップを予熱するためのトンネル炉または回転炉床炉と,前記スクラップを搬送する搬送手段と,前記搬送手段により搬送された前記スクラップと溶銑が装入され,溶鋼が精錬される精錬炉と,を有することを特徴とする,製鋼用精錬設備。
(18)前記トンネル炉又は前記回転炉床炉の前段に,前記スクラップをプレスするためのプレス成形機を有することを特徴とする,(17)に記載の製鋼用精錬設備。
(19)前記スクラップを予熱した後の排ガス回収処理設備をさらに有することを特徴とする,(17)または(18)に記載の製鋼用精錬設備。
(20)前記精錬炉が転炉であることを特徴とする,(17)〜(19)のいずれかに記載の製鋼用精錬設備。
本発明によれば,劣悪で安価なスクラップを含む多量のスクラップを使用することができ,予熱排ガスの回収・処理も可能で環境上の問題もなく,CO発生量を減少させることができる。
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1に本発明が対象とするプロセスフローの一例を示す。スクラップの一部または全部を比表面積を減少させる加工(例えばプレス成形加工等)を施したのち,予熱炉で予熱し,溶銑とともに該スクラップを精錬炉に装入して酸素を吹き込んで精錬を行う。
ここで,本発明で対象とするスクラップは,特に限定するものではなく,一般市中屑として,HS屑,H1屑,H2屑,H3屑などのヘビー屑のほか,プレス屑,シュレッダー屑,加工屑,使用済み自動車屑,廃家電屑などを含み,また,自家発生屑としてリターン屑および重量屑と呼ばれる鋳片・鋼片などの半製品屑で厚みの大きいもの,等を含むものとする。なお,これらスクラップ種別の簡単な説明を表1に示した。
Figure 2007146217
また,精錬炉としては,通常,転炉を用いて行われる。精錬の形態としては,脱炭のみの場合,脱燐を行った後に脱炭を行う場合,さらにMURC(Multi Refining Converter)と呼ばれる,脱燐を行ったのち,精錬炉を傾動して脱燐スラグのみを排出した後,同一炉で継続して脱炭を行う場合,等がある。
さらに,本発明では,溶銑は質量%で(以下同じ)Cが2.0%以上の溶鉄,溶鋼とはCが2.0%未満の溶鉄と定義する。
まず,スクラップをプレス成形などの比表面積を減少させる加工を施したのち,予熱する際の作用について説明する。
図2は,板厚が1mm程度のリターン屑を用いて,スクラップの比表面積を減少させる方法としてプレス加工を行った場合と,プレス成形なしの場合について,酸素濃度1体積%の雰囲気で予熱した際の,スクラップ温度と酸化率(スクラップ中の酸化鉄の質量割合)の関係を示した図である。
なお,ここでいうスクラップ温度とは,予熱直後ではなく,予熱されたスクラップを精錬炉まで搬送した後の,精錬炉装入時の温度とする。
これは,予熱直後の温度が同じでも,スクラップの形状や装入までの時間などによってスクラップ温度の低下分が異なるため,精錬炉へ予熱されたスクラップから供給できる熱量は,精錬炉装入時の温度で決まるからである。
ちなみに,図2においては,予熱されたスクラップを精錬炉まで搬送した時間は,4〜6分程度であった。
その結果,いずれの場合も,温度の増加に伴って予熱時間が増大することと,高温ほど酸化速度が大きくなることから,スクラップ温度の上昇に伴って酸化率が増大することがわかる。
ただし,プレス成形なしの場合は,スクラップ温度900℃の場合10%程度の酸化率であり,1100℃では20%以上の酸化率となってしまうが,プレス成形を行った場合は,酸化率を1/4程度に抑制できることがわかる。
これは,プレス成形を行った場合は,スクラップの比表面積が小さくなっているため,酸化されにくくなったものと考えられる。
さらに,プレス成形なしの場合,スクラップの比表面積が大きい形状であることから,放熱量も大きくなるため,予熱炉から精錬炉に装入するまでの間の温度降下量が大きくなり,同一のスクラップ温度を得るためには予熱温度を高くする必要がある。この結果,予熱時間が増加するため,さらに酸化率が増加したものと考えられる。
また,予熱スクラップを精錬炉に投入した際の,精錬炉の温度変動への影響を計算した結果を図3に示す。図3において冷却比とは,温度降下量を無予熱スクラップを投入したときの温度降下量を1としたときの比で表したもので,次式で計算される。
冷却比=(予熱スクラップ1質量%投入時の温度降下量)/(冷スクラップ1質量%投入時の温度降下量)
図3より,プレス成形なしの場合は,500℃程度以上に加熱すると,加熱効果は減少し始め,800℃以上に加熱した場合は,むしろ逆効果になってしまうことがわかる。これは,プレス成形なしのスクラップは,予熱温度の増加とともに酸化率が顕著に高くなるため,スクラップ中の酸化鉄含有量が多くなり,この酸化鉄が精錬炉中で鉄に還元される際の吸熱反応により,冷却材として作用してしまうためである。
尚,比表面積は,単位質量当たりの表面積で定義され,単位はm/トンとする。比表面積は幾何学形状が決まれば容易に算出でき,厚みt×幅D×長さLの板状の場合は,
表面積=2LD+2tL+2tD
質量=ρLDt
ρ:密度 トン/m
であるから,
比表面積=2(1/t+1/L+1/D)/ρ
となる。
板,シートなど,L,D>>tの場合は,非表面積≒2/ρtとなって,板厚だけで決まる。また,立方体の場合,t=L=Dから,比表面積=6/ρtとなる。
一般のスクラップは,板,シート,またはそれらの組み合わせであり,比表面積≒2/ρtとして差し支えない。一方,プレスしたスクラップの場合は立方体または直方体として形状から計算できる。
通常のスクラップは厚み1〜6mmであり,比表面積は50〜300m/トンである。一方,これらをプレス成形すると,比表面積は5〜6m/トンと大幅に減少させることができる。
また,前記の酸化率とは,単位質量当りの酸化鉄の質量%をいうが,直接測定が困難なため,冷却後のスクラップ表面のスケール厚みの測定値から下式にて換算して求めることができる。スケール厚みは,スケールを含む表面層の断面を光学顕微鏡観で観測して測定可能である。
酸化率(%)=スケール厚み÷(スクラップ体積)1/3×79.85/55.85×100
≒スケール厚み÷スクラップ厚み×2×79.85/55.85×100
ここで、55.85は鉄の原子量、79.85はFe2O3のFe1モルあたりの分子量である。
以上のことから,前記(1)に関わる発明では,まず比表面積を減少させる加工が施された鉄を含有するスクラップの一部又は全部を,600〜1200℃に予熱することにより,スクラップを多量に溶解することが可能となると共に,後述するように,スクラップ中の樹脂等を除去することができる。
スクラップ比,すなわち(スクラップ質量)/((溶銑質量)+(スクラップ質量))×100に関しては,従来技術ではスクラップ比を最も大きくできる精錬形態である,予備脱燐なしで脱炭吹錬だけを行うケースでも,外部添加昇熱材(例えば炭材)の添加なしで10%程度,炭材を併用して15%程度のスクラップ比が限界であった。しかし,本発明によれば,炭材の使用なしで20%程度,炭材を併用すれば25%以上のスクラップ比が可能となる。
また,スクラップ予熱の効果は,溶銑脱燐処理を行う場合の様な,予熱処理後温度が1450℃以下と低温,かつ処理時間も10分程度と短いためスクラップ溶解には不利な条件の場合に,特に大きくなる。通常脱燐時のスクラップ比は最大10%程度が限界であったが,スクラップの全部を900℃に予熱すると,さらに10%以上スクラップ比を増加させることができる。
従って,同一の質量の溶鋼を溶製する場合,従来技術と比較して,スクラップ比を増加させることができるため,使用する溶銑量を削減できる。そのため,高炉での出銑量を減少させることができるため,前述の通り,高炉でのCO発生量を低減することができる。ちなみに,溶銑1トン当りの高炉でのCO発生量は,2トン程度であり,スクラップ予熱に伴うCO発生量は予熱温度にもよるがスクラップ1トン当り0.5トン程度のため,本技術により溶銑をスクラップに置き換えることで対象とする各吹錬単位(チャージ)の溶銑トン当り1.5トン程度のCOを低減することができ,地球環境面からも貢献できる。
一方,精錬工程で発生するスラグ量を削減することも地球環境面から求められており,これには溶銑脱燐処理の適用による精錬効率向上が有効な手段であるが,一方でスクラップ使用量が制限されるという問題があった。しかし,本発明により,このスラグ量を削減させるという課題も解決することができる。
スクラップの予熱温度に関しては,600℃未満の場合は樹脂類などの揮発・燃焼成分の除去が不十分となり,1200℃を超えると酸化量が増大するとともに,スクラップの溶着問題が発生することと,予熱後から精錬炉装入までの温度降下が大となって,予熱の効果が減少してしまうため,上記の温度範囲に規定する。さらに,スクラップの予熱温度は700〜1100℃であることがより好ましい。
ちなみに,スクラップの予熱温度とは,トンネル炉や回転炉床炉等の予熱炉から搬出された時点での温度,すなわち予熱直後の温度を意味している。温度の測定は,例えば放射温度計で測定可能である。
また,予熱時間はスクラップ厚みで変動するため,特に規定するものではなく,適宜設定すれば良いが,1〜6時間程度が例示できる。
次に,予熱処理されたスクラップと溶銑を精錬炉に装入した後,酸素を吹き込みながら溶鋼を溶製する。スクラップと溶銑の装入順はどちらが先でも良い。精錬炉が転炉の場合には,転炉を傾動してスクラップを装入するので,スクラップを先に装入する方が作業上好ましい。一方,精錬炉が電気炉の場合には,種湯として銑鉄又は溶鋼を残すので,スクラップを後から装入しても良い。また,スクラップの一部を予熱する場合は,常温のスクラップを精錬炉に装入した後,予熱したスクラップを精錬炉に装入しても良いし,逆の順番で装入しても良い。
スクラップを本発明に規定する温度範囲に予熱する重要な目的の一つは,スクラップ中に含有する樹脂等を,予熱時に燃焼,除去し,スクラップを精錬炉に装入する際には火炎,有害物質等の発生を防止するためであり,作業性,環境上の点から,精錬炉に装入する際のスクラップ全体の質量に占める樹脂,油脂を,質量%で,0.5%以下,好ましくは0.1%以下,更に好ましくは0.01%以下にすることが好適である。
精錬炉は,転炉の他,電気炉等特に制限するものではない。スクラップの予熱は,特に制限するものではないが,トンネル炉,回転炉床炉などの横型炉を用いることがスクラップの溶着・圧着を防止する上で好ましい。
前記(2)に関わる発明は,前記(1)に関わる発明において,比表面積を減少させる加工をプレス成形により施すことを特徴とする。プレス成形の目的は,比表面積を減少させるとともに,スクラップの嵩密度を増加させることで加熱効率を高めるとともに,形状を一定化させることで予熱炉への輸送・装入,精錬炉への装入などのハンドリングを容易にすることである。プレス成形されたスクラップの形状は立方体でも直方体でもよい。
前記(3)に関わる発明では,前記の鉄を含有するスクラップが,使用済み自動車屑,廃家電屑,HS屑,H1屑,H2屑,H3屑,プレス屑,シュレッダー屑,加工屑,リターン屑の1種以上であることを特徴とする。
リターン屑は自家発生屑(すなわち,工場で発生するスクラップを,同一の工場でリターンさせて使用する屑)であるためその成分値が既知であり,不純物も少ない。加工屑は,鉄鋼製品の加工工場から発生するもので,成分的なばらつきは少ない。
これに対してHS屑,H1屑などの一般市中屑は外観である程度選別された上級屑でも不純物は多く,未選別の劣質屑や,廃車屑,家電屑に至っては,単独使用では再生できないほど不純物,特に配線などから混入するCu等を含んでいる。炭素,珪素,リン,硫黄など,精錬反応を利用して除去できる不純物元素もあるが,銅,ニッケル,錫などは除去できない。したがって,これらの精錬反応で除去できない不純物元素については,精錬炉へのインプット量を制限するしか方法はない。このため,種々のスクラップを混合して成分を調整することが必要である。
従って,不純物元素が少ないスクラップは単独で使用可能であるが,精錬反応で除去できない不純物元素を含むスクラップは,不純物元素が少ないスクラップと混合して使用することが好ましい。
以上の通り,スクラップの種類としては,単独で使用しても良く,また複数種のスクラップを混合して使用することもできるため,劣悪で安価なスクラップであっても,多量に使用することができる。
前記(4)に関わる発明は,前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の製鋼法において,予熱するスクラップとして,すでにプレス成形されている廃車プレス屑を併用することを特徴とする。
スクラップをプレス成形したものを使用するに際して,すでにプレス成形されている廃車プレス屑を使用しても,同一の作用効果が得られるため,すでにプレス成形されている廃車プレス屑を併用しても良い。
ただし,ここで使用する廃車プレス屑は,廃車よりあらかじめモーター類,樹脂類,廃油・液体類を除去した後にプレス成形したものを用いることが好ましい。
前記(5)に関わる発明は,予熱するスクラップとして,重量屑を併用することを特徴とする。
ここで言う重量屑とは,一辺が100mm以上の大断面である屑を指す。一般鉄鋼製品では,板厚100mm以上のものはほとんどないため,市中屑では重量屑はほとんど存在しないが,鉄鋼製造工程における半製品屑として存在する鋼片屑,鋳片屑が,主に重量屑として発生する。この重量屑はプレス成形は行わないが,すでに比表面積が小さいため,予熱する場合にプレス成形した屑と同じ作用効果が得られる。
前記(6)に関わる発明は,予熱後のスクラップ温度Tに対して,精錬炉に装入する際のスクラップ温度Tとした場合,ΔT=T−Tを200℃以下とすることを特徴とする。
予熱後のスクラップをシュートなどを用いて搬送し,精錬炉に装入するが,その際に予熱スクラップからの放熱でスクラップ温度が低下する。この放熱量が過大であれば,予熱した工程が無駄になってしまうため,なるべく温度の低下幅(ΔT)を低位とすることが好ましい。本発明者の実験的な知見から,ΔTが200℃以下であれば,スクラップを予熱した効果が保持されることが確認されているため,ΔTが200℃以下となる様に操業することが好ましい。
本発明においては,スクラップがプレス成形などにより比表面積を減少させる加工が施されているため,放熱量は抑制される。しかしながら,予熱後のスクラップの搬送・装入時間の短縮や,シュートへの断熱材・断熱蓋の設置などの放熱抑制対策を同時に実施することで,前記のΔTをより低位とすることができるため好適である。
前記(7)に関わる発明は,溶鋼中のCu,Ni,Sn,Cr,Znの含有量が,それぞれ所定値以下となる様に溶製することを特徴とする。
前述の通り,特に劣悪で安価なスクラップは不純物元素を含んでいるが,代表的な不純物元素としてはCu,Ni,Sn,Cr,Znが挙げられる。
Cu,Ni,Snは精錬工程では除去することができない元素であるため,要求される製品特性上,許容できる上限値未満にすることが重要である。従って,要求される製品特性を満足する範囲の所定の値となる様に,スクラップ中の含有量を考慮して,スクラップ比を設定することが重要である。
また,Crは精錬工程で酸化除去できるものの,このとき生じたクロム酸化物がスラグに移行するため,スラグからのCr溶出問題が発生する。このためCrについても環境基準を満足する範囲の所定の値となる様に,スクラップ中の含有量を考慮して,スクラップ比を設定することが重要である。
さらに,Znについては精錬工程の脱炭時に蒸発し,製鋼ダスト中に濃化するため,ダスト中Zn濃度の上限から許容できるZn含有量の範囲の所定の値となる様に,スクラップ中の含有量を考慮して,スクラップ比を設定することが重要である。
以上の理由から,本発明では,Cu,Ni,Sn,Cr,Znの含有量がそれぞれ規定した所定値以下となるように溶製することが好ましい。
前記(8)に関わる発明は,Cu,Ni,Sn,Cr,Znの装入量が,それぞれ以下の式を満足する様にスクラップの配合比を変更して溶製することを特徴とする。
Figure 2007146217
Cu,Ni,Sn,Cr,Znの含有量については,前記(7)に関わる発明において,それぞれ規定した所定値以下となることとしたが,本発明はそのための具体的な数値を示すものである。
上記式で,Cu,Ni,Snに関わる上限値は,主に熱間加工性や材質特性などによる実験的知見によるものである。また,Crに関わる上限はスラグからのCr溶出特性を満足するための実験的知見によるものであり,Znについては排ガスから湿式集塵機により回収される集塵ダスト中のZn濃度についての操業知見によるものである。
また,各スクラップ種別ごとの各成分の含有濃度は,対象とするスクラップ中の各成分を測定すれば良い。但し,実際の操業では簡便のため,過去の操業実績結果を回帰分析するなどして推定値を求めておくことが好ましい。そうすれば,各種スクラップの装入量から各不純物元素成分のインプット量が推定でき,その結果,鋼中の含有量が推定できる。
前記(9)に係る発明は,比表面積を減少させる加工を施した後のスクラップの嵩比重が0.4〜5.0,好ましくは1.0〜5.0,より好ましくは2.0〜5.0であることを特徴とする。
前記比表面積を減少させる加工としてプレス成形を行った場合,プレス成形後のスクラップの嵩比重は予熱効率,酸化抑制とハンドリングの点から高いほうが望ましい。嵩比重が0.4以上であると,予熱後のスクラップの温度低下を防止できるが,好ましくは1.0以上,より好ましくは2.0以上が好適である。一方,嵩比重が5.0を超えるとプレス成形に多大な負荷が必要で効率的でないので上記の範囲とすることが好ましい。
前記(10)に係る発明は,スクラップを直方体または立方体に比表面積を減少させる加工を施すことを特徴とする。
前記比表面積を減少させる加工としてプレス成形を行った場合,スクラップを直方体または立方体にプレス成形することにより,予熱装置での加熱効率が向上するとともに,予熱装置までの運搬やその後の搬出,転炉装入などのハンドリングが容易になるので,直方体または立方体にプレス成形することが好ましい。
前記(11)に係る発明は,比表面積を減少させる加工を施した後のスクラップの厚みを80〜1000mmとすることを特徴とする。
直方体または立方体の大きさは,酸化抑制,加熱時間,ハンドリング性,の観点から,各1辺の長さを80mm以上1000mm以下の範囲とすることが好ましい。
図4は,前記比表面積を減少させる加工としてプレス成形を行った場合に,H1屑,リターン屑を混合してプレス成型したスクラップを用いて,種々のプレス厚みと,トンネル炉で900℃まで予熱した際の酸化率との関係を調べた結果である。
この結果から,プレス成形を施すことで,スクラップの酸化率は顕著に減少するため,プレス厚みは80mm以上が好ましいことがわかる。すなわち,80mm未満の場合,加熱時間は短くてすむが,前述の通り比表面積が大きくなるためスクラップの酸化が無視できなくなる。
一方で,プレス厚みが大きくても,酸化率は微増するだけであるが,1000mmを超えて大きくなると,加熱に多大な時間が必要になると同時に,ハンドリングにも課題がでてくるため,この範囲とすることが好ましい。
前記(12)に係る発明は,精錬炉が転炉であることを特徴とする。
転炉で吹錬することにより,スクラップを多量に溶解し生産量の拡大が可能で,かつCO発生を減少させることが可能になる。
前記(13)に係る発明は,トンネル炉または回転炉床炉を用いてスクラップを予熱することを特徴とする。
図5に例示したトンネル炉,または図6に例示した回転炉床炉を用いれば,炉内の雰囲気制御が容易で自重以上の圧力もかからないため,連続的に,溶着・圧着の発生や,スクラップの酸化を抑制しつつ,スクラップを600℃以上に予熱することができる。
前記(14)に係る発明は,体積%で,酸素濃度0〜10%の雰囲気でスクラップを予熱することを特徴とする。
スクラップ予熱時の雰囲気が,体積%で,酸素濃度が10%以下であれば,600℃以上に予熱してもスクラップの酸化を抑制することができるので,酸素濃度を10%以下とすることが好ましい。また,酸素濃度は低いほど酸化を抑制できるため,好ましくは1%以下である。また,酸素濃度の下限値は0%を含む。
前記(15)に係る発明は,スクラップを予熱した後の排ガスを回収し,処理することを特徴とする。
スクラップを予熱した後の排ガスには,ダスト,SOx,NOx等が含まれているので,これらを電気集塵機,乾式集塵機,湿式集塵機等で回収した後,必要に応じて脱硝,脱硫等の処理をすることとする。
前記(16)に関わる発明は,前記の排ガス処理条件として,900℃以上で2秒以上保持し,かつ300℃以下まで冷却することを特徴とする。
予熱スクラップとして,廃車屑などの劣質スクラップを用いた場合,スクラップ中に塩化ビニルなど,塩素を含む高分子樹脂類が混入することが多い。これらの塩素分は,予熱されるときに分解・気化するが,排ガスが冷却される過程で非常に有害なダイオキシン類を生成する場合がある。この生成を防止するには,ダイオキシン類が分解する温度まで昇温した後,再合成しない温度まで急冷することが有効である。
そのためには,排ガスを900℃以上で2秒以上保持することで生成したダイオキシンを分解したのち,再合成が起こらない300℃以下まで,好ましくは1秒以内に,さらにより好ましくは0.5秒以内に冷却することで,排出ガス中にダイオキシンが存在しないようにでき,最も厳しいごみ焼却炉の規制値である0.1ngTEQ/Nm以下を満足できる。
排ガス中のダイオキシンを分解するための温度および時間の上限値については,特に規定するものではないが,燃焼塔のサイズを考慮すると,1300℃以下で5秒以下とすることが現実的である。
また,その後,ダイオキシンの再合成が起こらない様にするための温度および時間の下限値についても,特に規定するものではないが,ガス中に含まれる酸による腐食を抑制する観点からは,酸の露点温度以上とすることが好ましく,また時間については短いほどその効果が発揮されるため,理論的には0秒超が下限値となるが,0.1秒以上とするのが現実的である。
具体的な方法としては,排ガスに対して水を直接スプレーする方法等で実施することができる。これによって,ダイオキシン類生成の原因となる塩化ビニル等が混入しても問題なく予熱することができる。
前記(17)に係る発明は,鉄を含有するスクラップを予熱するトンネル炉または回転炉床炉を有することを特徴とする製鋼用精錬炉である。
製鋼用精錬炉がトンネル炉または回転炉床炉を有していれば,スクラップを連続的に予熱することにより,スクラップを多量に溶解することができ,スクラップ中に含有する樹脂,油脂成分をトンネル炉内で燃焼,除去できる。従って,製鋼用精錬炉ではスクラップ装入時の樹脂,油脂成分の火炎の発生もなく,効率的に精錬することができる。
前記(18)に関わる発明は,トンネル炉又は回転炉床炉の前段にスクラップをプレスするプレス成形機を有することを特徴とする。予熱炉の前段にプレス成形機を有していればスクラップを連続的にプレス加工することにより,スクラップを多量かつ連続的に予熱できる。
前記(19)に係る発明は,更に,前記スクラップを予熱した後の排ガス回収処理設備を有することを特徴とする。排ガス回収処理設備を設ければ,スクラップ予熱時に発生した樹脂,油脂成分を回収処理できるので,環境上好ましい。
前記(20)に係る発明は,さらに精錬炉が転炉であることを特徴とする。
転炉を用いて吹錬することにより,スクラップを多量に溶解し生産量の拡大が可能で,かつCO発生を減少させることが可能になる。
以下に,本発明の実施例および比較例を説明するが,本発明は下記実施例により限定されるものではない。
(精錬工程で脱炭を行う場合)
340トン転炉を用いて溶銑の脱炭吹錬を実施した。溶銑比,すなわち(溶銑質量)/(溶銑質量+スクラップ質量)は74〜92%で行った。以降,溶銑比はHMR(hot metal ratioの略称)と記載することがある。
また,スクラップとしては,H1屑のほか,リターン屑は薄板シート状およびコイル状のもの,重量屑は250mm厚み×幅〜1000mm×長さ〜400mmの鋼片屑を用いた。予熱する場合は,重量屑はそのまま,H1屑およびリターン屑は混合してプレス加工で320mm×600mm×600〜800mmの直方体に加工して用いた。リターン屑およびH1屑は厚み〜6mmであり,比表面積は50〜300m/トンであった。
これらをプレス成形した結果,比表面積は5〜6m/トンと大幅に減少し,また,嵩比重は2〜3であった。一方,重量屑の比表面積はさらに小さく,1.5〜2.5m/トンの範囲であった。
スクラップの予熱は,トンネル炉方式の予熱炉を用いた。トンネル炉の炉内温度を1100℃,炉内酸素濃度は体積濃度で1%に燃焼制御した。また,一部の例では酸素濃度の効果を見るため,酸素濃度3体積%および10体積%で燃焼制御した。さらに,スクラップの予熱時間(すなわち炉内滞留時間)は80分で行った。予熱後のスクラップは,保温カバーつきのスクラップシュートを用いて転炉に装入し,さらに溶銑を装入したのち,酸素を吹き込んで精錬した。予熱炉排出時のスクラップ温度は960〜1000℃であり,転炉装入前のスクラップ温度は表2に示したように,900〜940℃であった。
トンネル炉でスクラップを予熱した際の排ガスは,燃焼搭に導き950℃で2秒保持し,その後スプレーノズルから水をスプレーさせて200〜300℃まで0.5〜1秒で冷却した。その結果,排出ガス中のダイオキシンはほとんど存在しないようにでき,0.1ngTEQ/Nm以下を満足できた。
また,前記の排ガスは,ダストをバグフィルターで回収した後,湿式脱硫装置と触媒還元脱硝装置を用いて脱硝,脱硫処理を行った。表2に結果を示す。
Figure 2007146217
比較例1〜4は予熱スクラップを使用しない場合である。HMRが約90%程度までは,炭材の添加なく吹錬可能であったが,HMRが86%ではスクラップの溶解熱量が不足するため,昇熱材として炭材を添加する必要があった。
これに対して,実施例1〜5では,スクラップの全量を予熱した場合である。HMRが80%程度まで炭材を添加することなく吹錬可能であった。すなわち,全スクラップを900℃まで予熱することにより,予熱しない場合にくらべて約10%のHMR低下が可能であった。さらにHMRを75%まで低下させても,若干の炭材で吹錬可能であった。
さらに,実施例6〜8では,スクラップの一部を予熱した結果であるが,一部を予熱しても比率相当の効果があり,HMRの低下が可能であった。
また,実施例9〜11は,あらかじめプレス成形された廃車スクラップ屑を混合使用した例である。実施例3〜5と同程度のHMRであるが,同程度の炭材原単位で吹錬できており,あらかじめプレス成形されたスクラップを使用しても同じ効果が得られることがわかる。
さらに,実施例12〜13は予熱炉内酸素濃度がそれぞれ3%,10%の場合の結果である。酸素濃度が高いと酸化率が増加するため予熱効果が減少するが,酸素濃度10%までなら予熱によりHMRの低下が可能であった。
また,回転炉床炉を用いて同様の実験を行ったが,上記と同等の結果が得られた。
表3は表2と同じチャージのスクラップ種別使用量と脱炭後のCu,Ni,Sn成分値を示したものである。
Figure 2007146217
比較例1〜4はリターン屑のみ使用しているため,Cu,Ni,Snはいずれも低い値となっている。
一方,実施例1〜13は,本発明によりスクラップを配合した結果である。比較例にくらべ多量のH1屑や廃車プレス屑を使用しているが,Cu,Ni,Snは本発明で規定した範囲内にある。すなわち,本発明により不純物の問題を抑制しつつ劣質スクラップの多量使用が可能となることが示唆された。
(精錬工程で脱燐を行う場合)
表4に,同じく340トン転炉で溶銑脱燐吹錬を実施した結果を示す。HMRは78〜92%で行った。
Figure 2007146217
スクラップとしては,H1屑のほか,リターン屑は薄板シート状およびコイル状のもの,重量屑は250mm厚み×幅〜1000mm×長さ〜400mmの鋼片屑を用いた。予熱する場合は,重量屑はそのまま,H1屑およびリターン屑は混合してプレス加工で320mm×600mm×600〜800mmの直方体に加工して用いた。リターン屑およびH1屑は厚み〜6mmであり,比表面積は50〜300m/トンであった。
これらをプレス成形した結果,比表面積は5〜6m/トンと大幅に減少し,また,嵩比重は2〜3であった。一方,重量屑の比表面積はさらに小さく,1.5〜2.5m/トンの範囲であった。
スクラップの予熱は,トンネル炉方式の予熱炉を用いた。トンネル炉の炉内温度を1100℃,炉内酸素濃度は体積濃度で1%に燃焼制御した。予熱後のスクラップは,保温カバーつきのスクラップシュートを用いて転炉に装入し,さらに溶銑を装入したのち,酸素を吹き込んで精錬した。
トンネル炉でスクラップを予熱した際の排ガスは,上記と同様の処理を行った。
比較例5〜8は予熱スクラップを使用しない場合である。比較例5〜6のようにHMRが90%以上では特に問題なく吹錬できたが,HMRが90%未満である比較例7〜8ではスクラップが完全に溶解せず,未溶解の状態で炉内に残存した。
これに対して,実施例14〜19では,スクラップの全量を予熱した場合であるが,HMRが78.5%まで未溶解となることなく吹錬可能であった。よって,全スクラップを900℃まで予熱することにより,予熱しない場合にくらべて10%以上のHMR低下が可能であった。
さらに,実施例20〜22は,スクラップの一部を予熱した結果であるが,一部を予熱しても比率相当の効果があり,HMRの低下が可能であった。
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は,鉄を含有するスクラップと溶銑を精錬炉に装入して精錬炉で吹錬し,溶鋼を溶製する製鋼法,及びそれに用いられる精錬設備に適用可能である。
本発明に係る製鋼法の全体のプロセスフローの一例を示す図である。 スクラップの予熱温度と酸化率の関係の一例を示す図である。 スクラップの予熱温度と冷却比の関係の一例を示す図である。 スクラップの厚みと酸化率の関係の一例を示す図である。 本発明に係る製鋼法で使用したトンネル炉の一例を示す概要図である。 本発明に係る製鋼法で使用した回転炉床炉の一例を示す概念図である。

Claims (20)

  1. 比表面積を減少させる加工が施された鉄を含有するスクラップを,600〜1200℃に予熱し,該予熱後のスクラップと溶銑を精錬炉に装入して,酸素を吹き込みながら溶鋼を精錬することを特徴とする,製鋼法。
  2. 前記比表面積を減少させる加工を,プレス成形により施すことを特徴とする,請求項1に記載の製鋼法。
  3. 前記鉄を含有するスクラップが,使用済み自動車屑,廃家電屑,HS屑,H1屑,H2屑,H3屑,プレス屑,シュレッダー屑,加工屑,またはリターン屑,の1種以上であることを特徴とする,請求項1または2に記載の製鋼法。
  4. 予熱する前記スクラップとして,すでにプレス成形されている廃車プレス屑を併用することを特徴とする,請求項1〜3のいずれか1項に記載の製鋼法。
  5. 予熱する前記スクラップとして,重量屑を併用することを特徴とする,請求項1〜4のいずれか1項に記載の製鋼法。
  6. 予熱後の前記スクラップの温度Tに対して,前記精錬炉に装入する際の前記スクラップの温度をTとするとき,T−Tを200℃以下とすることを特徴とする,請求項1〜5のいずれか1項に記載の製鋼法。
  7. 前記溶鋼中のCuの含有量が0.10質量%以下,Niの含有量が0.04質量%以下,Snの含有量が0.02質量%以下,Crの含有量が0.08質量%以下,Znの含有量が0.25質量%以下となる様に溶製することを特徴とする,請求項1〜6のいずれか1項に記載の製鋼法。
  8. Cu,Ni,Sn,Cr,Znの装入量が,それぞれ以下の式を満足する様にスクラップの配合比を変更して溶製することを特徴とする,請求項1〜7のいずれか1項に記載の製鋼法。
    Figure 2007146217
  9. 前記比表面積を減少させる加工を施した後の前記スクラップの嵩比重が0.4〜5.0であることを特徴とする,請求項1〜8のいずれか1項に記載の製鋼法。
  10. 前記スクラップを直方体または立方体に前記比表面積を減少させる加工を施すことを特徴とする,請求項1〜9のいずれか1項に記載の製鋼法。
  11. 前記比表面積を減少させる加工を施した後の前記スクラップの厚みを80〜1000mmとすることを特徴とする,請求項1〜10のいずれか1項に記載の製鋼法。
  12. 前記精錬炉が転炉であることを特徴とする,請求項1〜11のいずれか1項に記載の製鋼法。
  13. トンネル炉または回転炉床炉を用いて前記スクラップを予熱することを特徴とする,請求項1〜12のいずれか1項に記載の製鋼法。
  14. 体積%で,酸素濃度0〜10%の雰囲気で前記スクラップを予熱することを特徴とする,請求項1〜13のいずれか1項に記載の製鋼法。
  15. 前記スクラップを予熱した後の排ガスを回収し,処理することを特徴とする,請求項1〜14のいずれか1項に記載の製鋼法。
  16. 前記排ガスの処理条件として,900℃以上で2秒以上保持し,かつ300℃以下まで冷却することを特徴とする,請求項15に記載の製鋼法。
  17. 鉄を含有するスクラップを予熱するためのトンネル炉または回転炉床炉と,
    前記スクラップを搬送する搬送手段と,
    前記搬送手段により搬送された前記スクラップと溶銑が装入され,溶鋼が精錬される精錬炉と,
    を有することを特徴とする,製鋼用精錬設備。
  18. 前記トンネル炉又は前記回転炉床炉の前段に,前記スクラップをプレスするためのプレス成形機を有することを特徴とする,請求項17に記載の製鋼用精錬設備。
  19. 前記スクラップを予熱した後の排ガス回収処理設備をさらに有することを特徴とする,請求項17または18に記載の製鋼用精錬設備。
  20. 前記精錬炉が転炉であることを特徴とする,請求項17〜19のいずれか1項に記載の製鋼用精錬設備。


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