JP3940366B2 - 溶鉄の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は溶鉄の製法に関し、より詳細には、鉄鉱石などの酸化鉄源を炭材等の炭素質還元剤と共に加熱還元し、鉄分純度の高い溶鉄を効率よく製造し得るように改善された方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄鉱石等の酸化鉄源を還元し溶鉄を製造する方法として現在実用化されているのは、高炉−転炉法が主流であるが、この方法は、還元剤としてコークスの使用が不可欠であり、しかもスケールメリットを追求するあまり、経済動向に対する生産柔軟性を欠き、特に多品種・少量生産への対応に問題がある。
【0003】
一方、小規模で多品種・少量生産向きの製鉄法として、MIDREX法に代表される直接製鉄法がある。しかしこの方法は、還元剤として天然ガスを必要とするので、当該設備の立地条件に制約がある。
【0004】
これらに対し、石炭ベースの炭素質還元剤を用いて還元鉄を製造し、該還元鉄を電気炉で加熱溶融することにより溶鉄を製造する方法としてSL/RN法があり、最近では回転炉床炉と電気溶解炉を結合し、酸化鉄の還元と生成する還元鉄の加熱溶解を一貫して行う直接製鉄法も多数提案されている。しかし、これらの方法には大量の電力を必要とするので、当該設備の立地条件が電力供給事情の良い場所に限定される。
【0005】
上記の様な状況の下で、鉄鉱石等の鉄源と石炭等の炭素質還元剤を用いて溶鉄を製造する溶融・還元製鉄法の改良研究が盛んに進められており、その代表例として、予備還元炉と溶融還元炉を組み合わせたDIOS法やHIsme1t法が提案されている。これらの方法を実用化する上で重要となるのは、溶融還元炉で高レベルの2次燃焼率と着熱効率を確保することであるが、これらを高めると、鉄鉱石等の鉄源中の脈石成分に由来して加熱還元時に副生するスラグ内に高濃度の酸化鉄(FeO)が混入し、処理炉の内張り耐火物を著しく溶損するという問題がクローズアップされてくる。こうした問題の対応策として、炉体を水冷し耐火物の溶損を抑制する方法も提案されているが、炉体からの熱損失が大きくなるため、溶鉄の生産性や熱エネルギー効率に多大な悪影響を及ぼす。
【0006】
また直接製鉄法の一つとして、鉄鉱石等の鉄源と炭材などの炭素質還元剤を混合して成形した炭材内装成形体(ペレットやブリケットなど)を回転炉床炉で加熱・還元し、溶融還元炉で最終的に溶融還元を行って溶鉄を製造する方法が知られている(特許文献1,2,3など)。これらの方法には、溶融還元炉で生成する高温の排ガス熱を回転炉床炉へ導入して有効利用することで、設備全体としての熱効率を高める狙いがあり、それなりの効果が期待される。ところが、溶融還元炉から抜き出される高温の排出ガスには多量のダストが含まれており、これが配管内に付着・堆積するばかりでなく回転炉床炉の炉壁などにも付着・堆積し、安定操業の障害となる。
【0007】
しかも、溶融還元炉で熱変動が起ると、回転炉床炉へ供給される高温ガスの熱量や還元ポテンシャルが変動し、設備全体としての操業状況を不安定にする。そして操業状況が不安定になると、回転炉床炉で進行する酸化鉄の還元効率や金属化率が変動し、製品鉄の純度が不安定になるばかりでなく、副生スラグ内への酸化鉄(FeO)の混入量が増大し、炉床耐火物の溶損を招くことになる。
【0008】
更に溶融還元法では、溶融還元炉に多量の酸素と熱を加えるため、炉体耐火物の補修や吹込み羽口のメンテナンスが不可欠で、そのためには、炉体を傾動したり移動させるための設備が必要となり、これら付帯設備の設置や耐火物補修のための経済的負担は、溶鉄の製造コストに少なからぬ影響を及ぼす。
【0009】
【特許文献1】
特公平3−60883号(特許請求の範囲、図1など)
【特許文献2】
特開2001−279313号(特許請求の範囲、図3など)
【特許文献3】
特開2001−247920号(特許請求の範囲、図1など)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な状況に着目してなされたものであって、その目的は、酸化鉄と炭素質還元剤を含む混合物を原料とし、回転炉床炉と溶解炉を組み合わせた溶鉄製造プロセスにおいて、それらの操業条件を適切に制御することにより、回転炉床炉や溶解炉の耐火物の溶損を可及的に抑制しつつ、鉄分純度の高い溶鉄を生産性よく製造することのできる方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成することのできた本発明に係る溶鉄の製法とは、酸化鉄源と炭素質還元剤を含む原料混合物を加熱還元炉へ装入し、該混合物中の酸化鉄を炭素質還元剤により還元して固形還元鉄とした後、該固形還元鉄を溶解炉へ送り、燃料として供給される炭材を燃焼させることにより、該溶解炉で前記固形還元鉄を溶解させて鉄溶湯を得る溶鉄の製法において、
前記固形還元鉄の金属化率を60%以上に高めてから溶解炉へ送り、該溶解炉へ供給する酸素と炭材の量を制御することによって、該溶解炉内におけるCOガスの2次燃焼率を40%以下に制御するところに要旨が存在する。
【0012】
なお本発明において溶解炉内の2次燃焼率とは、溶解炉からの排出ガスを連続的にサンプリングし、得られるガス成分の分析値から下記式によって算出される値であり、
2次燃焼率=100×(CO2+H2O)/(CO+CO2+H2+H2O)
また着熱効率は、溶解炉からの排出ガス温度および鉄溶湯温度の測定値と、上記式によって求められる2次燃焼率を用いて算出される。
【0013】
本発明で使用する前記原料混合物を調製するに当っては、炭素質還元剤および前記炭材の量を、該炭素質還元剤および前記炭材中の揮発分を除いた炭素量(A)が、[(当該混合物中の酸化鉄の還元に必要な化学当量)+(溶鉄製品中の目標炭素濃度分)+(固形還元鉄の溶解に必要な熱量分)]以上となるようにコントロールすれば、原料混合物中の酸化鉄分の固体還元から還元溶融、更には溶融金属鉄の取得に亘る一連の工程をより効率よく円滑に遂行できるので好ましい。
【0014】
上記炭素量(A)の調整は、加熱還元炉へ装入される前記混合物中へ配合する炭素質還元剤、加熱還元炉で製造された還元鉄中へ配合する炭素質還元剤、および前記溶解炉へ供給される炭材から選ばれる1つ以上によって行うことができる。
【0015】
また、前記溶解炉へ供給する酸素含有ガスとして、酸素濃度が90%以上の高純度酸素を使用すれば、溶解炉内における2次燃焼効率が高められるばかりでなく、2次燃焼時の燃焼温度や溶融鉄浴への着熱効率の制御も一層容易になり、更には発生ガス量が抑えられてダスト発生量も低減できるので好ましい。該高酸素濃度ガスの溶解炉への供給は、底吹き、上吹き、横吹きの何れか、又はこれらの任意の組み合わせによって行うことができるが、これらの中でも、高酸素濃度ガスをスラグ層に向けて上吹きし或いは横吹きすると、添加される炭材をスラグ層内で効率よく燃焼させることができ、着熱効率を高めることができるので好ましい。
【0016】
尚、溶解炉は固定式または転動式とし、該溶解炉への前記固形還元鉄や炭材およびスラグ成分調整用のフラックスを、前記溶解炉の上方から炉内へ重力落下により投入し、もしくは溶湯内へ吹き込む方式を採用すれば、還元溶融を簡単な操作で効率よく進めることができるので好ましい。この際、溶解炉の鉄溶湯内に不活性ガスを吹き込んで撹拌すれば、固形還元鉄の溶解が一段と加速され、処理時間を短縮できるので好ましい。
【0017】
固定式の溶解炉を使用する場合、当該溶解炉の側壁に設ける溶鉄と溶融スラグの取出し用タップホールを、その開口高さ位置が不活性ガスの吹抜けを起こさない位置に設定しておけば、ガス吹き込みによる吹込み羽口部の閉塞事故を未然に回避できるので好ましい。
【0018】
なお、本発明で使用する前記酸化鉄源としては鉄鉱石が最も一般的であるが、この他、ミルスケールなどを使用することも勿論可能であり、更には高炉ダストや転炉ダストの如き酸化鉄含有ダスト、更には酸化鉄と共に非鉄金属やその酸化物を含有するもの、例えば、ニッケル、クロム、マンガン、チタンなどの非鉄金属やその酸化物を含有する鉱石や、金属精錬設備から排出されるダストやスラグ等を使用することも可能である。
【0019】
尚、上記非鉄金属やその酸化物の場合は、溶鉄を製造する過程で発生するスラグにこれらを移行させ、純度の高い非鉄金属やその酸化物の製造原料もしくは製品として回収することができる。
【0020】
前記溶解炉で固形還元鉄を溶解する際には、炭材などに由来して溶融金属鉄中に相当量の硫黄が混入してくるが、この溶解工程で適量のCaO含有物質を添加し、該溶解炉内で生成するスラグの塩基度(CaO/SiO2)が1.2以上となる様に調整してやれば、溶融金属鉄中の硫黄分を溶融スラグ方向に移行させることができ、金属鉄の硫黄含量を低減できるので好ましい。この際、溶融金属鉄の炭素含量が2%以上となる様に、溶解炉へ添加する炭材の量を調整してやれば、硫黄分のスラグ方向への分配比が高まり、溶融鉄中の硫黄含量を一段と効率よく低減できるので好ましい。
【0021】
更に、2次燃焼熱の鉄溶湯への着熱効率は60%以上に高めることが好ましい。
【0022】
加熱還元炉で得られる固形還元鉄は、そのまま高温を維持したまま直接溶解炉へ投入することで、固形還元鉄の保有熱をその加熱溶解に有効に利用できるので好ましいが、設備上の制約によっては、該固形還元鉄を一旦ヤード等に保管しておき、必要に応じて溶解炉へ送って加熱溶解を行うことも勿論可能である。
【0023】
なお上記方法を実施する際に、前記溶解炉で発生する燃焼ガスは相当の熱を保有しているので、加熱還元炉へ送って熱源として有効利用することもできるが、この際には、送給配管や加熱還元炉へのダスト付着の問題を回避するため、該燃焼ガスを冷却・除塵し、該ガス中のダスト含有量を5g/Nm3以下に抑えるのがよく、また、前記加熱還元炉からの排ガスを用いて空気を予熱し、当該加熱還元炉の燃焼用空気、原料混合物の乾燥、更には当該原料混合物の原料となる酸化鉄源や炭素質還元剤の乾燥の少なくとも1つとして利用できるようにすれば、熱効率を一層高めることができるので好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を示す図面を参照しつつ、本発明をより具体的に説明していく。しかし、本発明はもとより下記図示例に限定されるわけではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能である。
【0025】
図1は、本発明の一実施例を示す全体システムのフロー図であり、鉄源となる鉄鉱石(1)としては、好ましくは粒径8mm程度以下の粉鉱石を使用し、これを乾燥機(2)で乾燥したのち鉱石ミル(3)で粉砕する。乾燥機(2)の熱源としては、回転炉床炉(14)の排ガス顕熱を利用して予熱した空気(4)を使用し、必要により補助燃料(5)を使用する。炭素質還元剤としては、一般的には石炭(6)を使用し、石炭ミル(7)で粉砕してから混合機(8)へ送る。混合機(8)では、粉砕した粉鉱石と微粉炭、必要に応じておよびバインダー(9)や適量の水分を添加し、球状、粒状、ペレット状、ブリケット状などに塊成化し、成形体とする。このとき、溶解炉での還元溶融時に必要な副原料(10)(例えば、アルミナ、シリカ、カルシアなど)の一部、もしくは混合物をスラグ形成成分として添加することができる。
【0026】
なお図示例では原料(混合物)を塊成化し成形体として用いる例を示しており、本発明ではこの様に成形して供給するのが最も好ましいので、以下の説明では成形体として使用する場合を主体にして説明するが、場合によっては粉状物を混合したままで使用し、あるいは軽く押し固めた程度の混合物として使用することも可能である。また鉄源としては、鉄鉱石が最も一般的であるが、これらと共に酸化鉄を含む高炉ダストやミルスケール等を併用してもよく、更には酸化鉄と共に非鉄金属やその酸化物を含むもの、例えば金属精錬設備から排出されるダストやスラグ等を使用することも可能である。
【0027】
また、炭素質還元剤として石炭(6)などの炭材を使用する場合、炭材中に含まれる揮発分は600℃以上の温度で揮発し酸化鉄の還元には殆ど寄与しないので、前記成形体中への炭材の配合率は、炭材中に揮発分として含まれる炭素を除いた炭素量を基準とし、該炭素量が酸化鉄の還元に必要な化学当量分と、溶鉄製品中の目標炭素濃度分、および溶解炉での還元鉄の溶解に必要な熱量分の総量に、若干のロスを加味して決めればよい。
【0028】
原料成形体(12)を製造する際に用いる塊成機(11)としては、ペレタイザーやブリケッター等を使用できる。該成形体(12)は、見掛け密度で1.2g/cm3以上、望ましくは1.8g/cm3以上とすることが望ましい。これは、加熱還元炉(回転炉床炉)で成形体の外面側に与えられる熱が、成形体内部へ速やかに伝達するために必要な見掛け密度として見出した値である。
【0029】
この成形体(12)は、成形後乾燥機(13)で水分量が1質量%程度以下となるまで乾燥してから回転炉床炉(14)(加熱還元炉)へ供給するのがよい。この時に用いる乾燥用空気として、回転炉床炉(14)から抜き出される排ガス顕熱との熱交換により予熱した空気(4)を使用すれば、排熱の有効利用が増進されるので好ましい。なお該乾燥用空気の温度は、急速加熱による水分の急激な蒸発によって成形体(12)が爆裂等を起こすことのないよう、200℃程度以下に抑えることが望ましい。乾燥された成形体(12)は逐次回転炉床炉(14)へ装入し、加熱還元に供される。
【0030】
加熱還元により生成する還元鉄(15)の金属化率は、少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは、後記図2でも説明する如くスクラップの溶解熱量に近い90%以上に高めておくことが望ましい。該加熱還元に用いる燃料としては、溶解炉(16)から抜き出される還元性ガスを用い、回転炉床炉(14)の側壁などに設けたバーナーで燃焼させることによって成形体(12)を加熱する。
【0031】
該加熱還元工程で還元鉄(15)の金属化率を60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上に高めるには、バーナー燃焼状態を安定に維持することが必要であり、そのためには、溶解炉(16)から抜き出される排ガスを一旦冷却し、除塵することによって排ガス中のダスト濃度を5g/Nm3以下、望ましくは1g/Nm3以下に低減しておくことが望ましい。尚、設備の立ち上げ時や回転炉床炉(14)の熱補償時などに備えて、天然ガスや微粉炭などを外部燃料(17)として供給可能にしておくことも有効である。
【0032】
回転炉床炉(14)内では、後記式(2)、(4)で示す様な反応によって発生するCOガスを、前記予熱空気(4)と下記反応式(1)
CO + 1/2O2 → CO2 ……(1)
で示す如く2次燃焼させ、この反応熱を成形体(12)の加熱還元用の熱として使用する。これらの反応で、排ガス中の酸素量が実質的にゼロになるまで完全燃焼させることができ、2次燃焼率100%を達成できる。これは、回転炉床炉(14)で炭材が有している潜在的熱エネルギーを使い切ることを意味しており、高いエネルギー効率を得ることができる。
【0033】
回転炉床炉(14)で得られる還元鉄(15)は、一旦系外へ取り出してから溶解炉(16)へ装入してもよいが、好ましくは、実質的に冷却することなく高温を保った状態で溶解炉(16)へ装入すれば、熱効率を高める上で有利である。また溶解炉(16)への装入法としては重力落下を利用し、炉の上方から連続装入すればよい。このとき、還元鉄(15)の加熱溶解に必要な熱源となる炭材(18)や、スラグ成分調整用の副原料(19)も、同様に溶解炉(16)の上方から投入する。この上方から投入する方法は、装入設備の保全を容易にする。
【0034】
そして、該溶解炉(16)へ投入される酸素源(20)と炭材(18)を反応(燃焼)させることによって、還元鉄(15)中に残存する未還元の酸化鉄を還元すると共に、還元鉄を加熱・溶解し、好ましくは炭素含有量が2%以上、より好ましくは2.5〜4.5%の溶鉄を製造する。
【0035】
この際、溶解炉(16)で発生するCOガスの2次燃焼率が40%以下、より好ましくは20%以上、40%以下となる様に酸素源(20)と炭材(18)の供給量を制御し、2次燃焼熱の溶湯への着熱効率を60%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上に高める。なお、2次燃焼率を40%以下に、また着熱効率を60%以上(より好ましくは75%以上)に定めた理由は、追って更に詳述する。
【0036】
酸素源(20)としては、好ましくは酸素濃度が90%以上の高純度酸素を使用し、これを溶解炉(16)の湯面上のスラグ層に向けて上吹き、横吹き、もしくは底吹きすることによりスラグ層を撹拌する。なお、酸素の吹込みを上吹き若しくは横吹き構造とすれば、吹込み用羽口のメンテナンスを容易にし、溶解炉(16)本体を傾動させる必要もなくなるため、溶解炉を固定式の簡素な構造にできるので有利である。
【0037】
また、酸素濃度が90%以上の高純度酸素を用いることで2次燃焼率の制御が容易になると共に、溶解炉(16)で発生する還元性ガスを回転炉床炉(14)へ供給する際のガスカロリーを適切なレベル、すなわち必要な理論燃焼温度を確保するのに必要かつ十分な条件制御も容易となる。
【0038】
この際、底吹き撹拌用として鉄溶湯内へ窒素などの不活性ガス(21)を吹き込み、撹拌を強化することで還元鉄(15)の溶解を促進させることも有効である。
【0039】
なお、溶解炉(16)に供給する炭材(18)の一部又は全部、および/もしくは、溶解炉(16)に供給する炭材(18)とは別の炭材を、成形体(12)とは別に回転炉床炉(14)へ直接供給することもできる。この炭材は、回転炉床炉(14)の炉床上に床敷材として供給したり、成形体(12)供給用の装置を用いて成形体(12)と同時に回転炉床炉(14)へ供給したり、成形体(12)を回転炉床炉(14)へ供給した後に供給することもできる。回転炉床炉(14)へ供給されるこの炭材は、床敷材として使用する場合は粉状のものが好ましいが、成形体(12)と同時に回転炉床炉(14)へ供給したり、成形体(12)を回転炉床炉(14)へ供給した後に供給する場合は、必ずしも粉状である必要はなく、塊状であっても構わない。このように炭材を回転炉床炉(14)へ供給すると、該炭材中の揮発分が揮発することで加熱原料としての機能も発揮し、外部燃料(17)の供給量も低減できるので好ましい。
【0040】
上記において、別の炭材とは、溶解炉(16)へ供給される炭材(18)と装入する炉が異なる場合や、別の種類の炭材であってもよいことを意味するもので、例えば、溶解炉(16)に装入する炭材(18)がコークスである場合に、回転炉床炉(14)に装入する別の炭材として、上記コークスの原料となる石炭を使用する様な場合を想定したものである。従って、別の炭材といっても全く別の炭材を意味するものではない。
【0041】
またこの炭材は、回転炉床炉(14)内で加熱されることによりチャー化した後、溶解に必要な炭材(燃料)として溶解炉(16)へ供給される。該炭材として石炭を用いた場合は、回転炉床炉(14)内でチャー化することによって石炭の揮発分は無くなり、予熱されたチャーとして溶解炉(16)へ供給されるので、溶解炉(16)へ炭材(18)として直接供給する場合に比べて、溶解炉(16)へ投入した時に発生する排ガス量が少なくなり、該排ガス設備を縮小できる他、余剰排ガス(26)の量も低減できるので好ましい。
【0042】
上記炭材[炭材(18)についても同じ]としては、石炭の他、木材チップや廃プラスチック、古タイヤなど、更には、揮発分が含まれていないコークスや木炭、コークスブリーズ等も使用できる。
【0043】
溶解炉(16)の側壁には、溶鉄(22)と溶融スラグ(23)を取り出すためのタップホールを設ける。該タップホールの開口設置高さは、撹拌ガス(21)が吹き抜けしない位置に設定するのがよい。また溶解炉(16)は密閉可能な構造とし、該溶解炉(16)から発生するガスの全量、もしくは一部を燃料源として前記回転炉床炉(14)へ供給し、有効利用できるようにするのがよい。溶解炉(16)からの発生ガスを回転炉床炉(14)へ送るに当たっては、図示する如くガスを一旦冷却し、除塵装置(24)を通して除塵することにより、ダスト含有量を5g/Nm3程度以下、望ましくは1g/Nm3以下に低減しておくのがよい。それにより、ガス配管や回転炉床炉(14)などの内壁へのダストの付着堆積を可及的に抑えることができる。この際、該溶解炉(16)から排出される高温ガスが保有する顕熱を、例えば溶解炉(16)の出口に設けた輻射伝熱ボイラー等によって回収してからガス冷却・除塵装置(24)へ送る構成とすれば、排ガスの顕熱も有効に活用できるので好ましい。
【0044】
その後、昇圧ブロワー(25)で圧力調整した後、回転炉床炉(14)の燃焼バーナーへ供給する。このとき、溶解炉(16)から抜き出される排ガスの燃料ガスとしての量が過剰である場合は、余剰排ガス(26)として外部へ取り出し、隣接設備の燃料ガスとして有効利用すればよい。なお、溶解炉(16)を密閉構造とし且つ高圧の酸素ガスを使用すれば、その圧力を利用して溶解炉(16)内を加圧することができ、昇圧ブロワー(25)を省くことができる。
【0045】
回転炉床炉(14)から排出されるガスは、潜熱を殆ど有していないものの高温であるから、廃熱ボイラー(27)で熱回収した後、空気予熱用熱交換器(28)で空気の予熱に有効利用すればよい。熱交換器(28)で熱回収された排ガスは、除塵装置(30)で浄化処理した後、吸引ファン(31)を経て大気放散される。この吸引ファンにより回転炉床炉(14)の炉内圧力が制御される。
【0046】
本発明は、上記の様なフロー図に沿って実施されるが、その中でも特に重要となる回転炉床炉(14)と溶解炉(16)の操業条件などについて、更に詳しく説明する。
【0047】
まず、還元鉄製造設備の主体となる回転炉床炉について詳述する。酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む混合物、好ましくはこれらを成形してなる炭材内装成形体を回転炉床炉へ供給して加熱すると、下記式(2)〜(4)
FemOn + nC → mFe + nCO ……(2)
FemOn + nCO → mFe + nCO2 ……(3)
C + CO2 → 2CO……(4)
で示される反応が進行し、酸化鉄の還元が行われる。ここで発生するCOやCO2の量は、成形体中に内装された炭素質還元剤の量や加熱条件により決ってくる。
【0048】
回転炉床上に装入された原料混合物は、バーナー燃焼による燃焼熱と炉壁および天井からの輻射伝熱によって加熱される。熱輻射は温度の4乗で作用するため、迅速な昇温と還元が可能であり、原料混合物中の酸化鉄は例えば6〜12分といった極短時間の加熱で金属鉄に還元される。
【0049】
原料混合物の外面側から与えられる熱は、伝導伝熱で原料混合物の内部へ伝わり、前記式(2)〜(4)の反応を継続させる。該混合物内部方向への伝熱を効率よく進めるには、原料混合物を成形体とし、その見掛け密度を1.2g/cm3以上、望ましくは1.8g/cm3以上にしておくことが望ましい。
【0050】
酸化鉄源と炭素質還元剤の混合比は、炭素質還元剤中の揮発分を除いた固定炭素分が酸化鉄の還元に要する化学当量以上となる様にすべきことは当然であり、更には、溶解炉へ投入した後の加熱溶融に必要な燃焼熱量と、還元溶融によって生成する溶鉄の目標炭素濃度相当量も加味して決めるのがよい。
【0051】
即ち炭素質還元剤および前記炭材の量は、当該炭素質還元剤および前記炭材中の揮発分を除いた炭素量(A)が、[(当該混合物中の酸化鉄の還元に必要な化学当量)+(溶鉄製品中の目標炭素濃度分)+(固形還元鉄の溶解に必要な熱量分)]以上となる様に調整すべきであり、該炭素量(A)の調整は、加熱還元炉へ装入される前記混合物中へ配合する炭素質還元剤、加熱還元炉で製造された還元鉄中へ配合する炭素質還元剤および前記溶解炉へ供給される炭材から選ばれる1つ以上の量によって行えばよい。例えば、原料混合物の調製段階で多量の炭材を内装した場合は、それに応じて、加熱還元で得た固形還元鉄へ混入する炭材の量を適宜減少させればよい。
【0052】
また溶解炉で還元溶融を行う際には、固形還元鉄と共に或いは別途、溶解炉にCaO含有物質を添加し、副生スラグの塩基度が好ましくは1.2以上となる様に調整することが好ましい。ちなみに、溶解炉で副生するスラグの塩基度を1.2以上に調整してやれば、鉄溶湯中に含まれている硫黄分が溶融スラグ方向へ移行し、得られる金属鉄の硫黄含量を低減できるので好ましい。
【0053】
この時、副生スラグ中のFeO含量が少なくなるにつれて、硫黄成分のスラグ方向への分配率が高まり、鉄溶湯中の硫黄含量は減少する。スラグ中のFeO含量は鉄溶湯中の炭素量(B)が多くなるほど減少してくるので、スラグ方向への硫黄成分の分配率を高めて鉄溶湯中の硫黄含量を低減させるには、鉄溶湯中の炭素量(B)を2%程度以上、より好ましくは3%程度以上に高めることが有効となる。この様にしてスラグ中のFeO量を少なくすれば、溶融FeOによる炉内張り耐火物の溶損も抑えられるので好ましい。
【0054】
該鉄溶湯中の炭素量(B)は、
(1)加熱還元炉へ装入される前記原料混合物内へ配合する炭素質還元剤、
(2)加熱還元炉で製造された還元鉄中へ配合する炭素質還元剤、
(3)前記溶解炉へ供給される炭材、
(4)前記加熱還元炉へ装入される別の炭材
の何れか1以上によって行えばよい。
【0055】
ところで、還元鉄の還元溶融が行われる溶解炉の特性としては、溶解炉での還元溶融処理を効率よく進めるため、溶解炉へ装入される鉄源(還元鉄)の金属化率を如何に高めておくかということが鍵であり、そのためには、回転炉床炉において還元鉄の金属化率を如何に高めるかが重要となる。
【0056】
そのためには、回転炉床炉における原料成形体の昇温・加熱条件を適切且つ安定に制御しなければならず、加熱用燃料ガスの性状を極力安定に維持すべきである。前記溶解炉で発生するガスを回転炉床炉へ送り燃料ガスとして使用する際に、該ガスのカロリーが高いほど燃焼温度を高め易く、回転炉床炉の温度制御が容易となる。これは、溶解炉での2次燃焼率を低めに抑え、CO2含量を低めに維持することが好ましいことを意味している。また、バーナー燃焼を安定して長時間継続させるには、燃料ガス中のダストを可能な限り少なく抑え、送給配管内や燃料ガスバーナへのダストの付着堆積やノズル詰り等を可及的に防止することが望ましい。
【0057】
そこで、溶解炉からの排出ガスを回転炉床炉へ導くまでの間で、該ガスを一旦冷却して除塵する設備を設ける。この除塵処理によって、ガス中のダスト濃度を5g/Nm3以下、望ましくは1g/Nm3以下に低減させることが推奨される。なお除塵設備の操業温度は、設備の耐熱性や安全性などを考慮して800℃程度以下に抑えるのがよい。
【0058】
次に、固形還元鉄の還元溶融が行われる溶解炉の操業条件について説明する。
【0059】
溶解炉内の鉄浴に投入される炭材は、同時に吹き込まれる高濃度酸素との反応によって下記式(5)で示される如くCOガスを発生し
C + 1/2O2 → CO ……(5)
鉄浴上の気相内で下記式(6)で示す如く2次燃焼を起こす。
【0060】
CO + 1/2O2 →CO2 ……(6)
これらの反応は発熱反応であり、これらの熱が鉄浴へ伝えられ、溶解炉へ投入される固形還元鉄を更に還元し溶融するための熱として使用される。
【0061】
第2,3図は、溶解炉へ投入される鉄源の金属化率と、溶解炉における2次燃焼率および炭材消費量の関係を示したグラフである。これらの図からも明らかな様に、炭材消費量は、投入される鉄源の金属化率の上昇と共に減少し(図2)、また2次燃焼率の上昇と共に減少する(図3)。
【0062】
特に図2によれば、2次燃焼率が40%以下では、金属化率が60%以上になると炭材消費量は横這い状態となり、金属化率の変動による炭材消費量の変動が少なくなるため、安定操業を遂行する上で極めて有用となる。
【0063】
よって、溶解炉へ供給する鉄源(即ち還元鉄)の金属化率は、炭材消費量を抑えると共に安定操業を増進する上で極力高める方が有利であり、少なくとも60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは通常の鉄スクラップに相当する90%以上とすることが望ましい。
【0064】
なお金属化率で60%以上を確保するには、原料混合物の製造時に配合される炭素質還元剤の量や回転炉床炉での加熱還元条件を適切に制御すればよく、具体的には、原料混合物の調製段階で前述した如く酸化鉄の還元に必要十分量の炭素質還元剤を配合する他、回転炉床炉での操業温度を1100〜1400℃、より好ましくは1250〜1350℃とし、滞留時間で6分以上、より好ましくは8分以上を確保すればよい。
【0065】
なお図3からは、溶解炉での2次燃焼率の上昇による炭材消費量低減効果を実操業において有効に発揮させるには、2次燃焼率を高めにすることが望ましく、より好ましくは20%以上を確保するのがよい。しかし2次燃焼率が40%を超えると、それ以上の炭材消費量低減効果は殆ど認められなくなるので、2次燃焼率は40%以下、より好ましくは30%程度以下に抑えるのがよい。
【0066】
なお2次燃焼率は、溶解炉への炭材の添加量や酸素ガス吹き込み量などによって変わってくるので、その値を40%以下、より好ましくは20〜40%の範囲に制御するには、前記2次燃焼率を考慮して、炭材添加量や酸素ガス吹き込み量を適切に制御すればよい。
【0067】
また2次燃焼は、溶解炉における気相側の温度を上昇させ、内張り耐火物に多大な熱負荷を与える。投入鉄源の金属化率が低下するということは、鉄源中に含まれる未還元酸化鉄(FeO)量が多くなることを意味しており、延いては副生スラグ中のFeO量の増大によって内張り耐火物の溶損を加速する。そこで、前述の如く耐火物の溶損を抑えるための手段として耐火物を水冷することも試みられているが、この方法では水冷による熱損失が生産効率やコストに重大な影響を及ぼす。
【0068】
また、溶解炉へ添加される鉄源(還元鉄)の溶解を促進するには、鉄浴を撹拌することが有効であるが、撹拌を強化すると溶解炉から抜出される排ガス中のダスト量が増大し(最大100g/Nm3程度まで)、鉄の歩留りを低下させるばかりでなく、高温ガス配管内に付着・堆積して閉塞事故を引き起こす原因になる。
【0069】
これらのことを考慮して本発明では、溶解炉へ供給する還元鉄の金属化率を60%以上、より好ましくは80%以上に高めることで炭材消費量を低減し、且つ、溶解炉での2次燃焼率を40%以下、より好ましくは20〜40%程度、更に好ましくは20〜35%に抑制することによって、気相側温度の過度の上昇を回避し、溶解炉への負荷を軽減できるようにしている。
【0070】
尚、溶解炉へ吹き込む酸素源としては空気を用いることもできるが、その場合は酸素に対して約4倍量も含まれる窒素も予熱されることになり、予熱エネルギーの無駄が多くなるばかりでなく、発生ガス量も増大してくる。従って、熱効率を高めると共に無為なガス発生量の増大を避けるには、酸素源として高純度酸素、好ましくは酸素純度が90%以上の高純度酸素を使用することが望ましく、それにより、発生ガス量を最小限に抑えると共に、ダスト発生量も低減できる。
【0071】
次に、溶解炉における2次燃焼率と着熱効率、および溶解炉からの排出ガス温度の関係を調査し、従来例と比較検討した結果を図4に示す。
【0072】
図4からも明らかな様に、着熱効率が一定であれば、2次燃焼率が高まるにつれて排ガス温度は上昇し、溶解炉で有効に使われることなく排出される熱量が増大する。逆に、排ガス温度を一定に保つことができれば、2次燃焼率が高まるにつれて着熱効率は上昇し、熱が有効に使われることを確認できる。図4に示した事例Aは、溶解炉への投入鉄源としてスクラップを用いた場合の例であり、2次燃焼率が20%で着熱効率は89%と高く、排ガス温度も1650℃程度の低い結果が得られている。
【0073】
これに対し事例Bは、溶解炉への投入鉄源として金属化率が30%の還元鉄を用いた場合で、2次燃焼率は約45%に高まっているため、排ガス温度は1900℃の高温となって内張り耐火物への熱負荷が増大する他、着熱効率は85%に低下している。更にこの事例Bでは、投入鉄源の金属化率が30%と低いため、還元溶融時に副生するスラグ中の(FeO)濃度が高くなり、内張耐火物の溶損も加速されることが確認された。
【0074】
これらの結果から、回転炉床炉による加熱還元装置と、生成する還元鉄を還元溶融する溶解炉を連結した一貫設備を操業する際の望ましい条件としては、
(1)回転炉床炉での金属化率を60%以上、より好ましくは80%以上に高めて残留(FeO)を極力少なくすること、
(2)溶解炉からの排出ガスを回転炉床炉の燃料に使用するための必要なカロリーを確保するため、溶解炉での2次燃焼率を40%以下、より好ましくは20〜40%の範囲に制御すること、
(3)溶解炉の内張り耐火物の溶損を抑えるため、排ガス温度を過度に高めないためにも、2次燃焼率は40%以下に抑えること
が重要であり、図4の斜線で示した領域が好ましい条件として推奨される。
【0075】
即ち、先の第2,3図で説明した如く、回転炉床炉での加熱還元後溶解炉へ装入される還元鉄の金属化率を60%以上に高め、且つ、溶解炉で発生するCOガスの2次燃焼率が40%以下となる様に、該溶解炉への酸素および炭材の供給量を制御し、2次燃焼熱の鉄溶湯への着熱効率を60%以上、より好ましくは75%以上に高めればよいことが確認された。
【0076】
なお、2次燃焼熱の鉄溶湯への着熱効率(Ef)は、次の様に定義される。
【0077】
Ef=[1-(H3+H4−H2)/H1]×100(%)
H1:2次燃焼反応の発熱量。ここで、2次燃焼反応とは、鉄溶湯から発生
するCO、H2ガスの酸素による燃焼で、下記反応式で示される。
【0078】
CO+(1/2)O2=CO2
H2+(1/2)O2=H2O
H2:鉄溶湯から発生するガスの顕熱。ガス量と組成は鉄溶湯の物質収支から
算出され、温度は鉄溶湯と同じとする。
【0079】
H3:炉から排出されるガスの顕熱。
【0080】
H4:2次燃焼反応が生じている気相側からの熱損失(全入熱量の10〜20
%に相当する)。
【0081】
こうした条件を満たせば、溶解炉の内張り耐火物の寿命が延長するので、溶解炉を中間補修やメンテナンスのために傾動可能にしたり移動可能にする必要がなく、固定型の溶解炉本体を用いた場合でも長期間支障なく操業を続けることが可能となる。但し、本発明では固定型溶解炉の使用に限定されるわけではなく、転動式の溶解炉を使用することも勿論可能である。
【0082】
かくして本発明によれば、炭素質還元剤が内装された原料混合物を回転炉床炉の如き加熱還元炉へ装入し、該混合物中の酸化鉄を還元して固形還元鉄とした後、これを溶解炉へ送って更に加熱還元すると共に還元鉄を溶解して溶鉄を製造する際に、
a)加熱還元炉で固形還元鉄の金属化率を60%以上に進め、
b)溶解炉で発生するCOガスの2次燃焼率が40%以下となるように酸素供給量と炭材供給量を制御し、
c)好ましくは、該2次燃焼による燃焼熱の溶湯への着熱効率を60%以上に高め、
d)溶解炉を密閉構造として、該溶解炉から発生するガスの全部もしくは一部を燃料として前記加熱還元炉へ供給し、得られる固形還元鉄を、前記溶解炉で加熱することにより、
炭素含有量が1.5〜4.5%程度の還元鉄溶湯を高いエネルギー効率の下で、加熱還元炉や溶解炉の劣化を最小限に抑制しつつ生産性よく製造し得ることになった。
【0083】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
実施例
前記図1として示したプロセスフロー図に準拠し、表1に示す化学組成の原料鉱石と石炭を用いて、表2に示す条件で試験操業を行い、表2に併記する結果を得た。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表2において、No.1〜3は、回転炉床炉で製造される還元鉄の金属化率を90%に保ち、溶解炉では2次燃焼率を40%以下に、着熱効率が60〜90%になるように制御したもので、このうちNo.1は、溶解炉発生ガスを全量回転炉床炉へ導入し、熱量不足分を補助燃料(本例では天然ガスを使用)で補ったケースである。
【0088】
No.2は、溶解炉の着熱効率を高めると共にガス発生量を増やし、回転炉床炉での補助燃料ゼロを目指した例である。その結果、溶解炉からの排ガス中のダスト量は若干増大するが、実操業の障害となるまでには至らない。また、溶解炉からの排ガス量が若干余剰気味となり、僅かではあるが、外部熱源として利用できることが分る。
【0089】
No.3は、全プロセスパラメータを最適化し、回転炉床炉での補助燃料を使用せず、同時に溶解炉からの余剰ガスもゼロを目指した例であり、回転炉床炉と溶解炉を結び、エネルギー的に自己完結型の操業が確立されている。
【0090】
これらに対しNo.4では、2次燃焼効率が30%と低めに保たれているが、溶解炉での鉄溶湯への着熱効率が73%とやや低いため、石炭および酸素の使用量がやや増大し、余剰ガスも発生量やダスト濃度もやや増加する傾向が見られる。No.6は溶解炉への炭材装入量を増やして浸炭量を増大し、溶鉄の炭素量を飽和炭素量レベルにまで高めた例である。即ち本発明によれば、溶解炉への吹込み炭素量などを調整することにより、溶鉄の炭素量を飽和炭素濃度レベルまでに高めることの容易である。
【0091】
No.5では、溶解炉での2次燃焼率を過度に高めた例であり、着熱効率は高められているが、加熱還元炉へ送給される排ガス量と熱量(還元ポテンシャル)が低下したため、回転炉床炉では補助燃料による追い炊きが必要となった。
【0092】
これらの結果からも明らかな様に、前掲の操業条件を最適化すれば、高いエネルギー効率の下で溶解炉への過度の熱負荷を与えることなく、固体還元から還元溶融にわたる一連の操業を安定して効率よく実施し、高純度の溶融鉄を生産性よく製造できる。そして、例えば上記No.3で示した如く、操業条件をうまくコントロールすれば、一連の溶鉄生産設備内でエネルギー的に自己完結型の操業も実現可能となる。
【0093】
尚、上記No.3と同様の条件で溶融金属鉄の製造を行う際に、溶解炉に加熱用の炭材と共に生石灰(CaO)を追加投入することによって、生成スラグの塩基度(CaO/SiO2比)が1.5〜1.6の範囲となる様に調整しながら還元溶融を継続し、得られる溶鉄のS含量を測定した。その結果、操業開始の初期段階にはS含量が徐々に増大し、40分経過するとS含量は約0.04質量%にまで高まったが、その後のS含量の増大はみられず、得られる金属鉄のS含量は約0.04質量%で安定していた。これは、溶解炉に生石灰を追加投入して生成スラグの塩基度を高めることで、溶融金属中のSがスラグ方向へ移行したことによるものと考えられる。
【0094】
【発明の効果】
以上説明した様に本発明によれば、従来法に比べてより少ないエネルギー消費量で溶鉄を効率よく製造することができ、しかも耐火物損耗が少なくてエネルギー柔軟性に富み、生産弾力性のある製鉄プロセスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すプロセスフロー図である。
【図2】溶解炉での2次燃焼率を変えたときの、溶解炉へ供給される鉄分の金属化率と炭材消費量の関係を示すグラフである。
【図3】溶解炉へ投入される鉄分の金属化率を変えたときの炭材消費量と2次燃焼率の関係を示すグラフである。
【図4】溶解炉からの排出ガス温度を変えたときの、溶解炉内鉄浴への着熱効率と2次燃焼率の関係を示すグラフである。
Claims (21)
- 酸化鉄源と炭素質還元剤を含む原料混合物を回転炉床炉へ装入し、該原料混合物中の酸化鉄を炭素質還元剤により還元して固形還元鉄とした後、該固形還元鉄を溶解炉へ送り、燃料として供給される炭材を燃焼させることにより、該溶解炉で前記固形還元鉄を溶解させて鉄溶湯を得る溶鉄の製法において、
前記固形還元鉄の金属化率を60%以上に高めてから溶解炉へ送り、該溶解炉へ供給する酸素と炭材の量を制御することによって、該溶解炉内におけるCOガスの2次燃焼率を40%以下に制御すると共に、
鉄溶湯中の炭素量(B)を2質量%以上とすることを特徴とする溶鉄の製法。 - 前記回転炉床炉からの排ガス熱を利用して空気を予熱し、当該回転炉床炉の燃焼用空気、原料混合物および原料の乾燥の少なくとも1つとして使用する請求項1に記載の製法。
- 前記炭素質還元剤および前記炭材の量を、該炭素質還元剤および前記炭材中の揮発分を除いた炭素量(A)が、[(当該混合物中の酸化鉄の還元に必要な化学当量)+(溶鉄製品中の目標炭素濃度分)+(固形還元鉄の溶解に必要な熱量分)]以上となる様に調整する請求項1または2に記載の製法。
- 前記炭素量(A)の調整を、回転炉床炉へ装入される前記混合物中へ配合する炭素質還元剤、回転炉床炉で製造された還元鉄中へ配合する炭素質還元剤、および前記溶解炉へ供給される炭材から選ばれる1つ以上によって行う請求項3に記載の製法。
- 前記溶解炉へ供給する酸素含有ガスとして、酸素濃度が90%以上の高純度酸素を使用し、該ガスを底吹き、上吹き、もしくは横吹きしてスラグ層の撹拌を行う請求項1〜4のいずれかに記載の製法。
- 前記2次燃焼熱の鉄溶湯への着熱効率を60%以上に高める請求項1〜5のいずれかに記載の製法。
- 前記固形還元鉄、炭材およびスラグ成分調整用のフラックスを、前記溶解炉の上方から重力落下によって炉内へ投入し、もしくは溶湯内へ吹き込む請求項1〜6のいずれかに記載の製法。
- 前記溶解炉の鉄溶湯内ヘ不活性ガスを吹き込んで攪拌する請求項1〜7のいずれかに記載の製法。
- 前記溶解炉として固定式または転動式の溶解炉を使用する請求項1〜8のいずれかに記載の製法。
- 前記溶解炉として固定式の溶解炉を使用し、該溶解炉の側壁に、溶鉄と溶融スラグの取出用タップホールを設け、且つその開口高さ位置を、前記不活性ガスが吹抜けしない位置とする請求項9に記載の製法。
- 前記酸化鉄源が、酸化鉄と共に非鉄金属またはその酸化物を含むものである請求項1〜10のいずれかに記載の製法。
- 前記酸化鉄源が、金属精錬設備から排出されるダストを含むものである請求項1〜11のいずれかに記載の製法。
- 前記溶解炉内で生成するスラグの塩基度が1.2以上となる様に、当該溶解炉内に別途CaO含有物質を添加し、生成する溶融スラグに鉄溶湯中の硫黄分を移行させる請求項1〜12のいずれかに記載の製法。
- 前記回転炉床炉で得られる前記固形還元鉄を、直ちに溶解炉へ送って溶解させる請求項1〜13のいずれかに記載の製法。
- 前記回転炉床炉で得られる前記固形還元鉄を、実質的に冷却することなく溶解炉へ送って溶解させる請求項1〜14のいずれかに記載の製法。
- 前記回転炉床炉で得られる前記固形還元鉄を、一旦保管してから溶解炉へ送って加熱溶解させる請求項1〜13のいずれかに記載の製法。
- 前記溶解炉で発生する燃焼ガスの少なくとも一部を、前記回転炉床炉へ熱源として供給する請求項1〜16のいずれかに記載の製法。
- 前記溶解炉で発生する燃焼ガスを前記回転炉床炉へ送る際に、該燃焼ガスを冷却・除塵し、該ガス中のダスト含有量を5g/Nm3以下に抑える請求項17に記載の製法。
- 前記炭材の一部又は全部、および/もしくは別の炭材を、前記回転炉床炉に装入する請求項1〜18のいずれかに記載の製法。
- 前記炭材の一部又は全部、および/もしくは別の炭材を、前記回転炉床炉に装入し、該炭材を加熱した後、該炭材の一部又は全部を、前記固体還元鉄と共に溶解炉へ送る請求項19に記載の製法。
- 前記鉄溶湯中の炭素量(B)を、
(1)回転炉床炉へ装入される前記混合物中へ配合する炭素質還元剤、
(2)前記回転炉床炉で製造された還元鉄中へ供給する炭素質還元剤、
(3)前記溶解炉へ供給される炭材、および
(4)前記溶解炉へ装入される別の炭材、
から選択される少なくとも1つによって調整する請求項19または20に記載の製法。
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