JP2007145286A - 車両の操舵装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 複数の制御システムを互いに干渉させることなく作動させることができる車両の操舵装置を提供すること。
【解決手段】 第1および第2転舵用ECU42,43は同期して転舵制御プログラムを実行する。すなわち、ステップS22にて、転舵角指令値δ1,δ2を各センサから入力した検出値を用いて決定する。そして、ステップS23にて、決定した指令値δ1,δ2の信頼度k1、k2を決定し、ステップS24にて、信頼度k1,k2を用いて信頼度係数Kを決定する。また、ステップS25にて、係数Kが予め設定された所定範囲内にあるか否かを判定し、範囲内であれば「Yes」と判定してステップS26に進む。ステップS26においては、係数Kを用いた重み係数を指令値δ1,δ2に乗算することによって目標転舵角指令値δtを計算する。そして、第1および第2転舵用電動モータ24,25を指令値δtにより駆動する。
【選択図】 図2
【解決手段】 第1および第2転舵用ECU42,43は同期して転舵制御プログラムを実行する。すなわち、ステップS22にて、転舵角指令値δ1,δ2を各センサから入力した検出値を用いて決定する。そして、ステップS23にて、決定した指令値δ1,δ2の信頼度k1、k2を決定し、ステップS24にて、信頼度k1,k2を用いて信頼度係数Kを決定する。また、ステップS25にて、係数Kが予め設定された所定範囲内にあるか否かを判定し、範囲内であれば「Yes」と判定してステップS26に進む。ステップS26においては、係数Kを用いた重み係数を指令値δ1,δ2に乗算することによって目標転舵角指令値δtを計算する。そして、第1および第2転舵用電動モータ24,25を指令値δtにより駆動する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、転舵輪を転舵するための複数の転舵用電動モータまたは操舵ハンドルに操舵反力を付与するための複数の操舵反力用電動モータと、同複数の転舵用電動モータまたは複数の操舵反力用電動モータのそれぞれに対応して設けられて駆動を制御するための複数の制御ユニットとを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置に関する。
近年、運転者によって操作される操舵ハンドルと転舵輪との機械的な連結が解除されたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置の開発は盛んに行われている。そして、この種の操舵装置においては、例えば、転舵輪を転舵するための転舵用電動モータとこの転舵用電動モータを駆動制御するための制御ユニットとから構成されるサブシステムが複数設けられて構成される場合がある。この場合、各サブシステムにおいては、例えば、個々に設けられた角度センサによって転舵輪の変位量を検出し、この変位量と決定された目標変位量とに基づいて、転舵用電動モータを駆動制御するようになっている。
ところで、上述したように、車両の操舵装置を複数のサブシステムを設けて構成した場合には、例えば、角度センサの自体の異常や検出誤差などによって、検出値に基づいて駆動制御される転舵用電動モータが互いに干渉する場合がある。この場合には、転舵モータに対して無用な駆動制御を実行することになり問題である。
この問題に対して、例えば、下記特許文献1には、複数の転舵用電動モータ(転舵軸モータ)を互いに干渉させることなく駆動制御する車両の操舵装置が示されている。この従来の車両の操舵装置は、各転舵軸モータを駆動する各サブシステムの制御ユニットのうち、優先順位の最も高いサブシステムの制御ユニット(代表制御ユニット)が、目標転舵角指令値と角度センサの検出信号とに基づいて転舵電流指令値を算出する。そして、代表制御ユニットは、この転舵電流指令値を正常に動作しているサブシステム数で等分して分割転舵電流指令値を算出し、同算出した分割転舵電流指令値を他のサブシステムの制御ユニット(非代表制御ユニット)に対して送信する。これにより、代表制御ユニットは、自ら算出した分割転舵電流指令値に基づいて転舵軸モータを駆動し、非代表制御ユニットは、通知された分割転舵電流指令値に基づいて転舵軸モータを駆動するようになっている。したがって、各サブシステムは、同一の分割転舵電流指令値に基づいて転舵軸モータを駆動することになり、各転舵軸モータが互いに干渉することを防止するようになっている。
また、このように構成された従来の車両の操舵装置においては、各サブシステムがそれぞれ故障診断を実行するようになっており、異常を検出したときには、この異常検出を他のサブシステムに通知するようになっている。そして、例えば、優先順位が最も高いサブシステムすなわち代表制御システムが異常の検出を通知した場合には、他の正常に動作しているサブシステムのうちで優先順位が最も高いサブシステムの制御ユニットが代表制御ユニットとして設定されるようになっている。
特開2004−142731号公報
上記従来の車両の操舵装置においては、代表制御ユニットにて異常が検出された場合、この異常検出を他の非代表制御ユニットに通知し、非代表制御ユニットのうちから代表制御ユニットを選択して切り換える。しかしながら、一般的に、システムの異常を検出するために実行される故障診断には、制御プログラムの実行周期に比して、非常に長い周期(時間)が必要となる。したがって、上記従来の車両の装置においては、故障診断の実行によって代表制御ユニットに異常が発生していると確定されるまでの間、代表制御ユニットから誤った分割転舵電流指令値が送信され続ける可能性がある。この場合には、各転舵軸モータが互いに干渉したり、同モータの出力不足や電力損失が発生する可能性がある。
また、上記従来の車両の操舵装置においては、代表制御ユニット自身が異常であるか否かに関わらず、サブシステムに異常が検出されれば、代表制御ユニットを一義的に他の制御ユニットへ切替える。すなわち、角度センサによる検出値が、例えば、ノイズなどによって一時的に異常値となった場合には、代表制御ユニット自身に異常が発生していないにもかかわらず、故障診断によって異常発生と判定される場合がある。このように、一時的にサブシステムの動作が不安定となる場合においても、制御ユニットの切替が実行されてしまうため、急激に転舵指令(例えば、転舵角など)が変化し、車両の挙動が乱れる可能性がある。
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の制御システムを互いに干渉させることなく作動させることができる車両の操舵装置を提供することにある。
本発明の特徴は、転舵輪を転舵するための複数の転舵用電動モータまたは操舵ハンドルに操舵反力を付与するための複数の操舵反力用電動モータと、同複数の転舵用電動モータまたは複数の操舵反力用電動モータのそれぞれに対応して設けられて駆動を制御するための複数の制御ユニットとを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記各制御ユニットを、前記操舵ハンドルに対する運転者の操作入力値を検出する操作入力値検出手段と、前記対応する転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータを前記操作入力値に応じて独立して駆動させるための独立駆動指令値を決定する独立駆動指令値決定手段と、前記複数の転舵用電動モータまたは複数の操舵反力用電動モータの動作に関して予め設定された複数の設定値と比較することにより、前記決定した独立駆動指令値の信頼度を決定する信頼度決定手段と、他の制御ユニットの信頼度決定手段によって決定されるとともに出力された信頼度を用いて、全制御ユニットによって決定された全ての独立駆動指令値の信頼度に対する前記信頼度決定手段により決定した信頼度の比を表す信頼度係数を決定する信頼度係数決定手段と、前記独立駆動指令値決定手段により決定した独立駆動指令値と、他の制御ユニットの独立駆動指令値決定手段によって決定されるとともに出力された独立駆動指令値とに対して前記決定した信頼度係数を用いた重み係数を乗算することにより、全制御ユニットがそれぞれに対応する転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータの作動状態を統一して駆動させるための共通駆動指令値を演算する共通駆動指令値演算手段と、前記演算した共通駆動指令値に基づいて、前記対応する転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータを駆動制御する駆動制御手段とで構成したことにある。そして、前記操作入力値検出手段は、前記操舵ハンドルの変位量を検出する変位量センサで構成されるとよい。
この場合、前記各制御ユニットは車両の運動状態量を検出する運動状態量検出手段を備えており、前記独立駆動指令値決定手段は、さらに、前記検出した車両の運動状態量を用いて、前記対応する転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータを独立して駆動させるための独立駆動指令値を決定するとともに、前記信頼度決定手段は、さらに、車両の運動状態量に関して予め設定された複数の設定値と前記検出した車両の運動状態量とに基づいて、前記決定した独立駆動指令値の信頼度を決定するとよい。そして、前記運動状態量検出手段によって検出される車両の運動状態量が、少なくとも、車両の旋回に伴って発生するヨーレートであるとよい。
また、この場合、前記予め設定された複数の設定値は、設定値ごとの判別項目として設定されており、前記信頼度決定手段は、前記決定した独立駆動指令値または前記運動状態量と前記判別項目とを比較することによって前記独立駆動指令値が前記判別項目に該当する項目数をカウントし、予め設定された信頼度の初期値から前記カウントした項目数を減ずることによって前記信頼度を決定するとよい。
さらに、前記各制御ユニットは、さらに、前記信頼度係数決定手段によって決定した信頼度係数が予め設定された所定の範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって、前記信頼度係数が予め設定された所定の範囲内になければ、異常が発生していると認識し、発生した異常に対応するために予め設定されたフェール処理を実行するフェール処理実行手段とを備えるとよい。
上記のように構成した本発明においては、まず、操舵ハンドルに対する運転者の操作入力値(例えば、操舵角)に応じて、複数の転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータをそれぞれ独立して駆動させるための独立駆動指令値が決定される。そして、この決定された独立駆動信号の信頼度が予め設定された複数の設定値や設定値ごとに設けられた判別項目と比較することによって決定されるとともに、同信頼度を用いて信頼度係数が決定される。そして、このように決定された信頼度係数を用いた重み係数を各独立駆動指令値に乗算することによって共通駆動指令値が計算され、この共通駆動指令値に基づいて全ての転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータが統一された作動状態で駆動制御される。
これにより、例えば、一時的に操作入力値が異常値となって信頼度が低い独立駆動指令値が決定されても、この独立駆動指令値に対する重み付けを小さくすることにより、共通駆動指令値に対する影響を小さくすることができる。したがって、正確な共通駆動指令値を確保することができ、適正に転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータを駆動制御することができる。これにより、各電動モータ間の駆動干渉や、駆動干渉に伴う出力不足、電力損失などを効果的に防止することができる。また、一時的に独立駆動指令値の信頼度が低下した後、操作入力値が再び正常値となって信頼度が向上した場合には、信頼度が向上した時点から重み付けを大きくすることにより、適正な共通駆動指令値を計算することができる。これにより、一時的に異常が発生した転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータの駆動を完全に停止させる必要がなく、共通駆動指令値の急激な変化を防止することができる。したがって、車両の挙動が乱れることがなく、運転者は、常に良好な操舵フィーリングを得ることができる。
また、信頼度係数については、転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータの駆動制御中において、予め設定された所定の範囲内にあるか否かが判定され、所定の範囲内になければ、異常発生に対応するフェール処理が実行される。これにより、別途異常の発生を判定する故障診断処理が不要となり、迅速に発生した異常に対する適切なフェール処理を実行することができる。したがって、これによっても、各電動モータ間の駆動干渉を防止することができるとともに、これら電動モータの出力不足や電力損失を防止することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る車両の操舵装置について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る車両の操舵装置を概略的に示している。
この車両の操舵装置は、運転者によって操作される操舵操作装置10と、左右前輪FW1,FW2を前記運転者の操作により転舵する転舵装置20とを機械的に分離したステアリングバイワイヤ方式を採用している。操舵操作装置10は、運転者によって回動操作される操作部としての操舵ハンドル11を備えている。操舵ハンドル11は操舵入力軸12の上端に固定され、操舵入力軸12はその下端にて減速機構を内蔵した反力発生用の操舵反力用電動モータ13により回転駆動されるようになっている。
また、転舵装置20は、車両の左右方向に延びて配置された転舵軸21を備えている。この転舵軸21の両端部には、タイロッド22a,22bおよびナックルアーム23a,23bを介して、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2が転舵可能に接続されている。左右前輪FW1,FW2は、転舵軸21の軸線方向の変位により左右に転舵される。転舵軸21の外周上には、図示しないハウジングに組み付けられた第1転舵用電動モータ24および第2転舵用電動モータ25が設けられている。第1転舵用電動モータ24および第2転舵用電動モータ25の回転は、それぞれねじ送り機構26,27により減速されるとともに転舵軸21の軸線方向の変位に変換される。なお、第1転舵用電動モータ24および第2転舵用電動モータ25の特性、すなわち駆動電流の大きさに対する発生駆動力の大きさの特性は略同一であることが好ましい。
次に、操舵反力用電動モータ13、第1転舵用電動モータ24および第2転舵用電動モータ25の回転を制御する電気制御装置について説明する。電気制御装置は、第1操舵角センサ31、第2操舵角センサ32、第3操舵角センサ33および転舵角センサ34を備えている。第1操舵角センサ31、第2操舵角センサ32および第3操舵角センサ33は、操舵入力軸12に組み付けられて、操舵ハンドル11の中立位置からの回転角を検出してそれぞれ操舵角θm,操舵角θ1および操舵角θ2として出力する。転舵角センサ34は、転舵軸21の外周上にて図示しないハウジングに組み付けられ、転舵軸21の基準位置からの軸線方向の変位量を検出して転舵角δとして出力する。なお、これらの操舵角θ1,θ2,θ3および転舵角δは、中立位置を「0」とし、右方向の角度を正の値で、左方向の角度を負の値でそれぞれ表す。
また、電気制御装置は、車速センサ35,37とヨーレートセンサ36,38を備えている。車速センサ35,37は、それぞれ車速を検出して車速V1,V2を出力する。ヨーレートセンサ36,38は、それぞれ車両に発生したヨーレートを検出してヨーレートγ1,γ2を出力する。
さらに、電気制御装置は、第1操舵角センサ31に接続された操舵反力用電子制御ユニット(以下、操舵反力用ECUという)41と、第2操舵角センサ32、転舵角センサ34、車速センサ35およびヨーレートセンサ36に接続された第1転舵用電子制御ユニット(以下、第1転舵用ECUという)42と、第3操舵角センサ33、転舵角センサ34、車速センサ37およびヨーレートセンサ38に接続された第2転舵用電子制御ユニット(以下、第2転舵用ECUという)43とを備えている。これらのECU41〜43は、それぞれCPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものである。また、第1転舵用ECU42と第2転舵用ECU43とは、通信バスBを介して互いに接続されており、同通信バスを介して各種信号を出入力することにより、協調して動作する。
操舵反力用ECU41は、ROMに記憶した図2の操舵反力制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行して、駆動回路44を介して操舵反力用電動モータ13を駆動制御する。第1転舵用ECU42および第2転舵用ECU43は、それぞれ、ROMに記憶した図4の転舵制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行して、駆動回路45および駆動回路46を介して第1転舵用電動モータ24および第2転舵用電動モータ25を駆動制御する。
駆動回路44〜46は、ECU41〜43により制御されて、電動モータ13,24,25を駆動制御する。これらの駆動回路44〜46内には、電動モータ13,24,25に流れる駆動電流をそれぞれ検出する駆動電流センサ44a〜46aがそれぞれ設けられていて、駆動電流センサ44a〜46aによって検出された駆動電流はECU41〜43にそれぞれ供給される。
次に、上記のように構成した実施形態の動作を説明する。図示しないイグニッションスイッチがオン状態とされた後、運転者によって操舵ハンドル11が回動操作されると、操舵反力用ECU41は、図2の操舵反力制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。この操舵反力制御プログラムの実行はステップS10にて開始され、操舵反力用ECU41は、ステップS11にて第1操舵角センサ31によって検出された操舵角θmを入力する。
次に、操舵反力用ECU41は、ステップS12にて、目標操舵反力テーブルを参照して前記入力した操舵角θmに対する目標操舵反力Tmを計算する。この目標操舵反力テーブルは、図3に示すように、操舵角θmの絶対値|θm|の増加に伴って絶対値の増加する目標操舵反力Tmを記憶している。なお、この目標操舵反力Tmの計算においては、目標操舵反力テーブルを用いるのに代えて、操舵角θmと目標操舵反力Tmとの関係を予め定めた関数(例えば、指数関数やべき乗関数など)を用意しておいて、同関数を用いて前記入力した操舵角θmに対応する目標操舵反力Tmを計算するようにしてもよい。
前記ステップS12における目標操舵反力Tmの計算後、操舵反力用ECU41は、ステップS13にて、駆動電流センサ44aによって検出された駆動電流を用いて、操舵ハンドル11に付与される反力トルクが前記計算した目標操舵反力Tmに一致するように駆動回路44を介して操舵反力用電動モータ13の回転を制御する。そして、ステップS14にて、この操舵反力制御プログラムの実行を一旦終了する。これにより、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に対して、操舵ハンドル11の操舵角θmすなわち左右前輪FW1,FW2の転舵角δに応じた反力トルクが付与される。したがって、運転者は、この操舵反力を感じながら、操舵ハンドル11を回動操作できる。
次に、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に応じて、左右前輪FW1,FW2を転舵する転舵制御について説明する。上述した操舵反力制御プログラムの実行と並行して、第1転舵用ECU42および第2転舵用ECU43は、図4の転舵制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行している。ここで、第1転舵用ECU42と第2転舵用ECU43とは、通信バスBを介して互いに所定の情報を送受信することによって同期し、転舵制御プログラムを同様に実行する。このため、以下の説明においては、第1転舵用ECU42による転舵制御プログラムの実行を主に説明するものとし、必要に応じて第2転舵用ECU43による同プログラムの実行を説明する。
この転舵制御プログラムの実行はステップS20にて開始され、第1転舵用ECU42は、ステップS21にて接続された各センサによって検出された各検出値を入力する。具体的に説明すると、第1転舵用ECU42は、第2操舵角センサ32から操舵角θ1、転舵角センサ34から転舵角δ、車速センサ35から車速V1およびヨーレートセンサ36からヨーレートγ1の各検出値を入力する。なお、第2転舵用ECU43によるステップS21の実行においては、第3操舵角センサ33から操舵角θ2、転舵角センサ34から転舵角δ、車速センサ37から車速V2およびヨーレートセンサ38からヨーレートγ2の各検出値を入力する。
次に、第1転舵用ECU42は、ステップS22にて、前記各センサから入力した検出値を用いて、第1転舵用電動モータ24を駆動するための独立駆動指令値としての転舵角指令値δ1を決定する。以下、この転舵角指令値δ1の決定について説明する。まず、第1転舵用ECU42は、ROM内に予め用意された転舵角指令値テーブルを参照して、前記入力した操舵角θ1に対応する転舵角指令値δ1’を計算する。この転舵角指令値テーブルは、図5に示すように、操舵角θ1の絶対値|θ1|の増加に従って絶対値の増加する転舵角指令値δ1’を記憶している。なお、転舵角指令値テーブルを用いるのに代えて、操舵角θ1と転舵角指令値δ1’との関係を予め定めた関数(例えば、指数関数やべき乗関数など)を用意しておいて、同関数を用いて前記入力した操舵角θ1に対応する転舵角指令値δ1’を計算するようにしてもよい。
次に、第1転舵用ECU42は、上記計算した転舵角指令値δ1’を補正することによって、転舵角指令値δ1を決定する。この転舵角指令値δ1の補正について説明する。左右前輪FW1,FW2の転舵角δは、車両の運動状態量を表す車速V1とヨーレートγdの関数として、下記式1に従って計算することができる。
δ=L・(1+A・V12)・γd/V1 …式1
ここで、前記式1中のLは車両のホイールベースを示す予め決められた所定値であり、Aは車両の運動性能を示す予め決められた所定値である。また、前記式1中のδは転舵角センサ34によって検出された左右前輪FW1,FW2の実転舵角であり、V1は車速センサ35によって検出された車速であり、γdは実転舵角δで旋回するために必要なヨーレートを示すものである。
δ=L・(1+A・V12)・γd/V1 …式1
ここで、前記式1中のLは車両のホイールベースを示す予め決められた所定値であり、Aは車両の運動性能を示す予め決められた所定値である。また、前記式1中のδは転舵角センサ34によって検出された左右前輪FW1,FW2の実転舵角であり、V1は車速センサ35によって検出された車速であり、γdは実転舵角δで旋回するために必要なヨーレートを示すものである。
そして、前記式1を変形することによって、ヨーレートγdは、下記式2によって示すことができる。
γd=δ・V1/(L・(1+A・V12)) …式2
このように計算されるヨーレートγdとヨーレートセンサ36によって検出された実ヨーレートγとを用いて、第1転舵用ECU42は、下記式3に従って転舵角指令値δ1’を補正した転舵角指令値δ1を計算して決定する。
δ1=δ1’+C・(γd−γ) …式3
ただし、前記式3中のCは予め決められた正の定数である。
γd=δ・V1/(L・(1+A・V12)) …式2
このように計算されるヨーレートγdとヨーレートセンサ36によって検出された実ヨーレートγとを用いて、第1転舵用ECU42は、下記式3に従って転舵角指令値δ1’を補正した転舵角指令値δ1を計算して決定する。
δ1=δ1’+C・(γd−γ) …式3
ただし、前記式3中のCは予め決められた正の定数である。
そして、前記式3によれば、実ヨーレートγがヨーレートγdに満たない場合には、転舵角指令値δ1の絶対値が大きくなる側に補正される。また、実ヨーレートγがヨーレートγdを超える場合には、転舵角指令値δ1の絶対値が小さくなる側に補正される。この補正により、実ヨーレートγに応じて、左右前輪FW1,FW2を転舵するための転舵角指令値δ1をより精度よく確保することができる。そして、第1転舵用ECU42は、決定した転舵角指令値δ1を、通信バスBを介して、第2転舵用ECU43に対して送信する。
ここで、第2転舵用ECU43によるステップS22の実行においては、図5の転舵角指令値テーブルおよび前記式1〜3を用いた同様の計算により、独立駆動指令値としての転舵角指令値δ2が決定される。そして、第2転舵用ECU43は、決定した転舵角指令値δ2を、通信バスBを介して、第1転舵用ECU42に対して出力する。
次に、第1転舵用ECU42は、ステップS23にて、前記決定した転舵角指令値δ1の信頼度k1を決定する。この信頼度k1は、第1転舵用ECU42が決定した転舵角指令値δ1が適切な値として決定されたか否かを判別するための指数である。以下、詳しく信頼度k1の決定について説明する。この信頼度k1は、予め設定された転舵用電動モータの動作に関する複数の信頼度判別項目に基づいて、決定された転舵角指令値δ1が適正であるか否かを判定することによって決定される。
ここで、信頼度判別項目としては、以下に例示する項目を挙げることができる。例えば、a)決定された転舵角指令値δ1の値がシステム上予め設定された転舵角の上下限値と一致する状態で継続しているか、b)決定された転舵角指令値δ1に含まれる情報としての左右前輪FW1,FW2の転舵角速度指令値dδ1/dtがシステム上予め設定された転舵角速度の上限値と一致する状態で継続しているか、c)ヨーレートセンサ36によって検出された実ヨーレートγが前記式2に従って計算されるヨーレートγdから大幅に外れた値として検出されているかなどである。なお、これらの信頼度判別項目とは別に、例えば、各部品の信頼性や使用時間などを信頼度判別項目として採用することもできる。
これら例示した信頼度判別項目a)〜c)について、信頼度判別項目a)の発生状況としては、転舵角指令値δ1が左右前輪FW1,FW2の転舵動作可能範囲外の値として決定され続ける状況である。また、信頼度判別項目b)の発生状況としては、転舵角速度指令値dδ1/dtが第1転舵用電動モータ24の動作可能な転舵角速度よりも大きな値として決定され続ける状況である。さらに、信頼度判別項目c)の発生状況としては、ヨーレートセンサ36から出力される実ヨーレートγが想定範囲外の値として検出され続ける状況である。これらの状況が発生する原因としては、例えば、第1転舵用ECU42に接続している各センサの失陥や、ノイズや電波障害などの一時的な影響、コネクタ類の接触不良、システムの一時的な瞬停などが考えられ、いずれの場合も、転舵角指令値δ1の信頼度を低下させるものである。
このため、第1転舵用ECU42は、信頼度k1について予め設定された初期値Nから、予め設定された信頼性判別項目に該当する項目ごとに、例えば、「1」ずつ減算することにより、転舵角指令値δ1の信頼度k1を決定する。このように、信頼性判別項目に該当する項目をカウントし、このカウント値を初期値Nから減算することによって、迅速にかつ確実に信頼度k1を決定することができる。そして、第1転舵用ECU42は、信頼度k1を決定すると、同決定した信頼度k1を、通信バスBを介して第2転舵用ECU43に送信する。なお、第2転舵用ECU43がステップS23を実行する場合においては、上記した信頼度k1と同様に、転舵角指令値δ2の信頼度k2が決定され、同決定された信頼度k2は、通信バスBを介して、第1転舵用ECU42に送信される。
このように、前記ステップS23にて信頼度k1を決定すると、第1転舵用ECU42は、ステップS24において、信頼度係数Kを決定する。この決定される信頼度係数Kは、後述する目標転舵角指令値δtを計算するときの重み係数として用いられるものである。そして、信頼度係数Kは、下記式4に従って、全転舵角指令値δ1,δ2の信頼度k1と信頼度k2の和に対する転舵角指令値δ1の信頼度k1の比として計算される。
K=k1/(k1+k2) (0<K<1) …式4
ここで、前記式4中のk2は、第2転舵用ECU43によって決定されて、通信バスBを介して受信した信頼度である。ここで、本実施形態においては、第2転舵用ECU43によってステップS24が実行される場合においても、第2転舵用ECU43は前記式4に従って信頼度係数Kを計算する。この場合、第2転舵用ECU43は、通信バスBを介して受信した転舵角指令値δ1の信頼度k1を用いて、信頼度係数Kを計算する。
K=k1/(k1+k2) (0<K<1) …式4
ここで、前記式4中のk2は、第2転舵用ECU43によって決定されて、通信バスBを介して受信した信頼度である。ここで、本実施形態においては、第2転舵用ECU43によってステップS24が実行される場合においても、第2転舵用ECU43は前記式4に従って信頼度係数Kを計算する。この場合、第2転舵用ECU43は、通信バスBを介して受信した転舵角指令値δ1の信頼度k1を用いて、信頼度係数Kを計算する。
なお、第2転舵用ECU43がステップS24を実行して信頼度係数Kを決定する場合には、信頼度k1と信頼度k2の和に対する転舵角指令値δ2の信頼度k2の比として計算してもよい。これによっても、適正に信頼度係数Kを決定することができる。
次に、第1転舵用ECU42は、ステップS25にて、信頼度係数Kが、転舵制御システム自体に異常が発生したか否かを判定するための所定値s1,s2によって決定される範囲内の値であるか否かを判定する。すなわち、計算した信頼度係数Kが所定値s1,s2で決定される範囲内の値であれば、信頼度係数Kの信頼性が高く、言い換えれば、転舵制御システム自体に異常が発生しておらず、上述のように決定された転舵角指令値δ1および転舵角指令値δ2の信頼性が高いため、第1転舵用ECU42は「Yes」と判定してステップS26に進む。
ステップS26においては、第1転舵用ECU42は、下記式5に従って共通駆動指令値としての目標転舵角指令値δtを計算する。
δt=K・δ1+(1−K)・δ2 …式5
ただし、前記式5中のKは、前記式4に従って計算される信頼度係数である。このように、信頼度係数Kを用いて目標転舵角指令値δtを計算することにより、信頼度k1,k2を良好に反映して転舵角指令値δ1と転舵角指令値δ2とに適切な重み付けを行うことができる。
δt=K・δ1+(1−K)・δ2 …式5
ただし、前記式5中のKは、前記式4に従って計算される信頼度係数である。このように、信頼度係数Kを用いて目標転舵角指令値δtを計算することにより、信頼度k1,k2を良好に反映して転舵角指令値δ1と転舵角指令値δ2とに適切な重み付けを行うことができる。
すなわち、例えば、転舵角指令値δ1の信頼度k1が向上した状況または転舵角指令値δ2の信頼度k2が低下した状況では、信頼度係数Kの値は大きくなる。この場合には、信頼度k1の向上した転舵角指令値δ1の重みが大きくなり、目標転舵角指令値δtの信頼性が向上する。一方、転舵角指令値δ1の信頼度k1が低下した状況または転舵角指令値δ2の信頼度k2が向上した状況では、信頼度係数Kの値は小さくなる。この場合には、信頼度k2の向上した転舵角指令値δ2の重みが大きくなり、目標転舵角指令値δtの信頼性が向上する。
このように、目標転舵角指令値δtを計算すると、ステップS27にて、第1転舵用ECU42は目標転舵角指令値δtに基づいて第1転舵用電動モータ24を駆動制御する。すなわち、第1転舵用ECU42は、左右前輪FW1,FW2が前記計算した目標転舵角指令値δtによって表される目標転舵角δtに転舵されるように、第1転舵用電動モータ24の回転をフィードバック制御する。また、第1転舵用ECU42は、駆動回路45の駆動電流センサ45aから第1転舵用電動モータ24に流れる駆動電流を入力し、左右前輪FW1,FW2を転舵するための転舵トルクに対応した大きさの駆動電流が第1転舵用電動モータ24に適切に流れるように駆動回路45をフィードバック制御する。
ここで、第2転舵用ECU43も、第1転舵用ECU42と同様に、ステップS25およびステップS26の各処理を実行し、前記式5に従って共通駆動指令値としての目標転舵角指令値δtを計算する。そして、ステップS27にて、第2転舵用ECU43は目標転舵角指令値δtに基づいて第2転舵用電動モータ25を駆動制御する。すなわち、第2転舵用ECU43も、左右前輪FW1,FW2が目標転舵角δtに転舵されるように、第2転舵用電動モータ25の回転をフィードバック制御する。また、第2転舵用ECU43は、駆動回路46の駆動電流センサ46aから第2転舵用電動モータ25に流れる駆動電流を入力し、左右前輪FW1,FW2を転舵するための転舵トルクに対応した大きさの駆動電流が第2転舵用電動モータ25に適切に流れるように駆動回路46をフィードバック制御する。
このように、第1転舵用電動モータ24および第2転舵用電動モータ25が目標転舵角指令値δtに基づいて駆動制御されることにより、これら電動モータ24,25の作動状態は略同一状態に統一される。そして、このように統一された作動状態で駆動する電動モータ24,25は、ねじ送り機構26,27を介して転舵軸21を軸線方向に駆動する。そして、転舵軸21の軸線方向の変位により、左右前輪FW1,FW2が目標転舵角δtに転舵される。その結果、左右前輪FW1,FW2は、操舵ハンドル11の回動操作に応じて転舵され、車両は左右に旋回する。そして、第1転舵用電動モータ24と第2転舵用電動モータ25とをそれぞれ駆動制御して、左右前輪FW1,FW2を転舵制御すると、第1転舵用ECU42と第2転舵用ECU43は、それぞれ、ステップS30にてこの転舵制御プログラムの実行を一旦終了する。
一方、前記ステップS25にて、計算した信頼度係数Kが所定値s1,s2で決定される範囲外の値であれば、信頼性係数Kの信頼性が低く、言い換えれば、転舵制御システム自体に異常が発生しており、転舵角指令値δ1または転舵角指令値δ2の一方の信頼性が低いため、第1転舵用ECU42は「No」と判定してステップS28に進む。ステップS28においては、第1転舵用ECU42は、制御システム異常時に、発生した異常に対応して実行するように、予め設定されたフェール処理を実行する。このフェール処理は、第1転舵用ECU42によって制御されるシステムまたは第2転舵用ECU43によって制御されるシステムのうち、異常の発生したシステムの作動を停止する処理である。そして、第1転舵用ECU42は、フェール処理を実行すると、ステップS29にてこの転舵制御プログラムの実行を一旦終了する。
ここで、前記ステップS28にて実行されるフェール処理について、以下に簡単に説明しておくと、第1転舵用ECU42および第2転舵用ECU43は、例えば、前記ステップS23にて決定した自身の信頼度k1(信頼度k2)と、前記ステップS24にて受信した第2転舵用ECU43の信頼度k2(第1転舵用ECU42の信頼度k1)とを比較する。そして、信頼度k1の値と信頼度k2の値のうち、小さい値となっているシステムを異常が発生したシステムと認識し、同システムの作動を停止する。
すなわち、例えば、信頼度k1の値が小さい場合には、第1転舵用ECU42は、自身が制御するシステムに異常が発生していると認識し、第1転舵用電動モータ24の駆動制御を停止する。この場合には、第2転舵用ECU43は、自身が制御するシステムに異常は発生していないと認識し、第2転舵用電動モータ25の駆動制御を継続する。一方、信頼度k1の値が大きい場合には、第1転舵用ECU42は、自身が制御するシステムに異常は発生していないと認識し、第1転舵用電動モータ24の駆動制御を継続する。この場合、第2転舵用ECU43は、自身の制御するシステムに異常が発生していると認識し、第2転舵用電動モータ25の駆動制御を停止する。
ここで、第1転舵用ECU42または第2転舵用ECU43が駆動制御を停止する場合には、例えば、前回のプログラムの実行時に計算した目標転舵角指令値δtに急激な変化を与えないように、重み係数を小さく変化させた後に駆動制御を停止するとよい。なお、第1転舵用ECU42または第2転舵用ECU43に異常が発生した場合には、発生した異常を表すフラグ(例えば、ダイアグフラグなど)を所定値に設定して出力することができる。これにより、車両に搭載された他のシステムに対して、操舵装置の異常を通知することができるとともに、例えば、図示しない警告灯の点灯や警報音の発生によって運転者に異常の発生を報知することができる。
なお、このように、第1転舵用ECU42または第2転舵用ECU43が駆動制御を停止した後は、正常に作動している第1転舵用ECU42または第2転舵用ECU43が、前記ステップS22にて決定した転舵角指令値δ1または転舵角指令値δ2を目標転舵角指令値δtとして決定する。そして、左右前輪FW1,FW2は、正常に作動している第1転舵用ECU42または第2転舵用ECU43によって駆動制御される第1転舵用電動モータ24または第2転舵用電動モータ25によって、目標転舵角δtに転舵されるようになる。
以上の説明からも理解できるように、この実施形態によれば、一時的に操舵角θ1または操舵角θ2が異常値となって、信頼度k1の低い転舵角指令値δ1または信頼度k2の低い転舵角指令値δ2が決定されても、これら転舵角指令値δ1,δ2に対する重み付けを小さくすることにより、目標転舵角指令値δtに対する影響を小さくすることができる。したがって、正確な目標転舵角指令値δtを確保することができ、適正に第1転舵用電動モータ24および第2転舵用電動モータ25を統一した作動状態で駆動制御することができる。
これにより、転舵用電動モータ24,25間の駆動干渉や、駆動干渉に伴う出力不足、電力損失などを効果的に防止することができる。また、一時的に転舵角指令値δ1,δ2の信頼度k1,k2が低下した後、操舵角θ1,θ2が再び正常値となって信頼度k1,k2が向上した場合には、信頼度k1,k2が向上した時点から重み付けを大きくすることにより、適正な目標転舵角指令値δtを計算することができる。これにより、一時的に異常が発生した第1転舵用電動モータ24または第2転舵用電動モータ25の駆動を完全に停止させる必要がなく、目標転舵角指令値δtの急激な変化を防止することができる。したがって、車両の挙動が乱れることがなく、運転者は、常に良好な操舵フィーリングを得ることができる。
また、信頼度係数Kについては、転舵用電動モータ24,25の駆動制御中、すなわち、転舵制御プログラムのステップS25において予め設定された所定の範囲内にあるか否かが判定され、所定の範囲内になければ、異常発生に対応するフェール処理が実行される。これにより、別途異常の発生を判定する故障診断処理が不要となり、迅速に発生した異常に対する適切なフェール処理を実行することができる。したがって、これによっても、転舵用電動モータ24,25間の駆動干渉を防止することができるとともに、これら電動モータの出力不足や電力損失を防止することができる。
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、第1転舵用ECU42と第2転舵用ECU43の2つの電子制御ユニットがそれぞれ第1転舵用電動モータ24と第2転舵用電動モータ25の駆動を制御する車両の操舵装置に対して、本発明を適用して実施した。すなわち、2系統のシステムを有する車両の操舵装置について実施した。しかし、3系統以上のシステムを有する車両の操舵装置に対して、本発明を適用して実施可能であることはいうまでもない。この場合においても、各電子制御ユニットが図4に示した転舵制御プログラムを同期して実行することによって、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
ここで、例えば、3つの電子制御ユニットが転舵制御プログラムを実行するときには、同プログラムのステップS24の処理によって決定される信頼度係数を次のように決定するとよい。すなわち、ステップS23の実行によって、第1の電子制御ユニットの信頼度ka、第2の電子制御ユニットの信頼度kb、第3の電子制御ユニットの信頼度kcが決定されたとする。この場合、ステップS24では、信頼度係数KAと信頼度係数KBが決定される。具体的には、信頼度係数KAは下記式6に従って決定され、信頼度係数KBは下記式7に従って決定される。
KA=ka/(ka+kb+kc) …式6
KB=kb/(ka+kb+kc) …式7
KA=ka/(ka+kb+kc) …式6
KB=kb/(ka+kb+kc) …式7
そして、例えば、第1の電子制御ユニットの転舵角指令値がδa、第2の電子制御ユニットの転舵角指令値がδb、第3の電子制御ユニットの転舵角指令値がδcとすれば、ステップS26における目標転舵角指令値δtは、下記式8に従って計算することができる。
δt=KA・δa+KB・δb+(1−KA−KB)・δc …式8
したがって、上記実施形態と同様に、各信頼度ka,kb,kcを反映した重み係数を用いて目標転舵角指令値δtを計算することができる。さらに、上述した信頼度係数KA,KBの値が所定範囲内の値であるか否かをステップS25にて判定することによって、システムに異常が発生したか否かも判定することができる。
δt=KA・δa+KB・δb+(1−KA−KB)・δc …式8
したがって、上記実施形態と同様に、各信頼度ka,kb,kcを反映した重み係数を用いて目標転舵角指令値δtを計算することができる。さらに、上述した信頼度係数KA,KBの値が所定範囲内の値であるか否かをステップS25にて判定することによって、システムに異常が発生したか否かも判定することができる。
また、上記実施形態においては、本発明を車両の操舵装置に設けた複数の転舵用電動モータ24,25に対して適用した。しかし、車両の操舵装置内に、操舵ハンドル11の回動操作に対して操舵反力を付与するための1つまたは複数の操舵反力用電動モータが上記実施形態の操舵反力用電動モータ13に加えて設けられている場合には、本発明は、上記実施形態の操舵反力用電動モータ13を含む複数の操舵反力用電動モータに対しても適用可能である。ここで、前記1つまたは複数の操舵反力用電動モータは、操舵ハンドル11の回動操作に対して反力を付与することが可能であれば、操舵反力用電動モータ13に並列または直列に設けられていてもよい。
この変形例においては、前述した複数の操舵反力用電動モータを、駆動回路を介してそれぞれ独立にまたは共通に制御する操舵反力用ECU(上記実施形態の操舵反力用ECU41を含む)が、上記実施形態の図2の操舵反力制御プログラムに対して、図4の転舵制御プログラムのステップS23〜S26およびステップS28,29に該当するステップS41〜S46を付加した図6に示す操舵反力制御プログラムを実行する。
この場合、例えば、操舵反力用ECUが2つすなわち反力制御システムが2系統であるときには、2つの操舵反力用ECUは、上記実施形態の操舵反力制御プログラムにおけるステップS12を変形したステップS12’にて、例えば、操舵角センサ31,32によって検出された操舵角θm,θ1と図3に示した目標操舵反力テーブルとを用いて、操舵反力指令値T1,T2を決定する。
そして、ステップS41にて、操舵反力用電動モータの動作に関する複数の信頼度判別項目に基づいて、決定された操舵反力指令値T1,T2が適正であるか否かを判定することによって、信頼度k11,k12を決定する。この場合、例えば、操舵ハンドル11に入力されるトルクを検出するトルクセンサが設けられていれば、このトルクセンサによって検出されたトルクが操舵反力指令値T1,T2によって表される反力トルクから大幅に外れているかを判別する信頼度判別項目を設けておくとよい。続いて、ステップS42にて、前記決定した信頼度k11,k12を用いて信頼度係数K1を決定するとともに、ステップS43にて信頼度係数K1の値が所定範囲内の値であるか否か、言い換えれば、反力制御システムに異常が発生しているか否かを判定する。
そして、信頼度係数K1の値が所定範囲内の値であれば、ステップS43の「Yes」判定に基づき、ステップS44にて、前記式5と同様に、信頼度係数K1を用いて操舵反力指令値T1,T2に重み付けして計算される目標操舵反力指令値Tmを決定する。これにより、各操舵反力用ECUは、それぞれ、目標操舵反力指令値Tmに基づいて操舵反力用電動モータの駆動を制御することにより、操舵ハンドル11(操舵入力軸12)に対して、所定の操舵反力を付与することができる。また、信頼度係数K1の値が所定範囲外の値であれば、ステップS43の「No」判定に基づき、ステップS45にて上記実施形態と同様にフェール処理を実行して、異常の発生した反力制御システムの作動を停止する。したがって、この変形例においても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
また、上記実施形態においては、第1転舵用ECU42と第2転舵用ECU43がそれぞれ車速センサ35,37と接続するように実施した。しかし、1つの車速センサから第1転舵用ECU42と第2転舵用ECU43に対して車速が出力されるように構成して実施することもできる。
また、上記実施形態においては、車両を操舵するために回動操作される操舵ハンドル11を用いるようにした。しかし、これに代えて、例えば、直線的に変位するジョイスティックタイプの操舵ハンドルを用いてもよいし、その他、運転者によって操作されるとともに車両に対する操舵を指示できるものであれば、いかなるものを用いてもよい。
さらに、上記実施形態においては、第1転舵用電動モータ24および第2転舵用電動モータ25が転舵軸21に組み付けられており、この転舵軸21をリニアに変位させることによって、左右前輪FW1,FW2を転舵するようした。しかし、これに代えて、転舵軸21をラックバーで構成するとともに、上記実施形態の構成に加えて、同転舵軸21に設けたラック歯に噛み合うピニオンギアを下端に固定した転舵入力軸を設け、この転舵入力軸に対して第1転舵用電動モータ24および第2転舵用電動モータ25が回転を伝達するようにしてもよい。
FW1,FW2…前輪、10…操舵操作装置、11…操舵ハンドル、13…操舵反力用電動モータ、20…転舵装置、21…転舵軸、24,25…転舵用電動モータ、31,32,33…操舵角センサ、34…転舵角センサ、35,37…車速センサ、36,38…ヨーレートセンサ、41…操舵反力用ECU、42,43…転舵用ECU
Claims (6)
- 転舵輪を転舵するための複数の転舵用電動モータまたは操舵ハンドルに操舵反力を付与するための複数の操舵反力用電動モータと、同複数の転舵用電動モータまたは複数の操舵反力用電動モータのそれぞれに対応して設けられて駆動を制御するための複数の制御ユニットとを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記各制御ユニットを、
前記操舵ハンドルに対する運転者の操作入力値を検出する操作入力値検出手段と、
前記対応する転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータを前記操作入力値に応じて独立して駆動させるための独立駆動指令値を決定する独立駆動指令値決定手段と、
前記複数の転舵用電動モータまたは複数の操舵反力用電動モータの動作に関して予め設定された複数の設定値と比較することにより、前記決定した独立駆動指令値の信頼度を決定する信頼度決定手段と、
他の制御ユニットの信頼度決定手段によって決定されるとともに出力された信頼度を用いて、全制御ユニットによって決定された全ての独立駆動指令値の信頼度に対する前記信頼度決定手段により決定した信頼度の比を表す信頼度係数を決定する信頼度係数決定手段と、
前記独立駆動指令値決定手段により決定した独立駆動指令値と、他の制御ユニットの独立駆動指令値決定手段によって決定されるとともに出力された独立駆動指令値とに対して前記決定した信頼度係数を用いた重み係数を乗算することにより、全制御ユニットがそれぞれに対応する転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータの作動状態を統一して駆動させるための共通駆動指令値を演算する共通駆動指令値演算手段と、
前記演算した共通駆動指令値に基づいて、前記対応する転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータを駆動制御する駆動制御手段とで構成したことを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。 - 請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
前記各制御ユニットは車両の運動状態量を検出する運動状態量検出手段を備えており、
前記独立駆動指令値決定手段は、さらに、前記検出した車両の運動状態量を用いて、前記対応する転舵用電動モータまたは操舵反力用電動モータを独立して駆動させるための独立駆動指令値を決定するとともに、
前記信頼度決定手段は、さらに、車両の運動状態量に関して予め設定された複数の設定値と前記検出した車両の運動状態量とに基づいて、前記決定した独立駆動指令値の信頼度を決定することを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。 - 請求項1または請求項2に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
前記予め設定された複数の設定値は、設定値ごとの判別項目として設定されており、
前記信頼度決定手段は、
前記決定した独立駆動指令値または前記運動状態量と前記判別項目とを比較することによって前記独立駆動指令値が前記判別項目に該当する項目数をカウントし、予め設定された信頼度の初期値から前記カウントした項目数を減ずることによって前記信頼度を決定することを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。 - 請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
前記各制御ユニットは、さらに、
前記信頼度係数決定手段によって決定した信頼度係数が予め設定された所定の範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって、前記信頼度係数が予め設定された所定の範囲内になければ、異常が発生していると認識し、発生した異常に対応するために予め設定されたフェール処理を実行するフェール処理実行手段とを備えることを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。 - 前記操作入力値検出手段は、前記操舵ハンドルの変位量を検出する変位量センサで構成されるものである請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
- 前記運動状態量検出手段によって検出される車両の運動状態量は、少なくとも、車両の旋回に伴って発生するヨーレートである請求項2に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
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Cited By (2)
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JP2009262643A (ja) * | 2008-04-22 | 2009-11-12 | Toyota Motor Corp | 車両制御装置 |
CN104443022A (zh) * | 2014-11-11 | 2015-03-25 | 深圳职业技术学院 | 一种四轮独立驱动电动汽车稳定性控制方法及系统 |
-
2005
- 2005-11-30 JP JP2005345945A patent/JP2007145286A/ja active Pending
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JP2009262643A (ja) * | 2008-04-22 | 2009-11-12 | Toyota Motor Corp | 車両制御装置 |
CN104443022A (zh) * | 2014-11-11 | 2015-03-25 | 深圳职业技术学院 | 一种四轮独立驱动电动汽车稳定性控制方法及系统 |
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