図1は第1の発明を適用した医療用X線撮影装置の全体構成を説明する概略ブロック図であり、図2(a)、(b)は医療用X線撮影装置を正面、側方から見た外観図である。
以下、これらの図に従って第1の実施例の構成を説明する。
装置Mは、支持手段11aで互いに対向させて支持したX線発生部12とX線検出部13と、支持手段11aを、被写体保持手段11cで保持した被写体oに対して相対的に移動させる移動手段11と、ワークステーションやパーソナルコンピュータ等の電子計算機16Aで構成される表示部14と、操作部15と、装置Mを制御する制御手段16とから構成され、この移動手段11を作動させて被写体oのX線画像を撮影するようになっている。
固定部11bは、支持手段11aを旋回軸Aにより下垂保持する。また、旋回制御モータ(図示なし)によって旋回軸Aを回転させる回転手段11dと、X軸制御モータ(図示なし)、Y軸制御モータ(図示なし)による2次元制御で支持手段11aの旋回軸Aを移動させて、支持手段11aを旋回軸Aと交差する面上で位置制御するX−Yテーブル11eとを備えている。このX−Yテーブル11eには、後に詳述する装置Mの別構成の例で説明している図13、図14、図14Aの構成を適宜採用可能である。
そして、固定部11bは支持手段11aを床または地面に設置するための設置手段11nとして機能し、装置Mの本体(X線撮影装置本体)M1は、少なくともX線検出部13、X線発生部12、支持手段11a、設置手段11n、被写体保持手段11cから構成される。
支持手段11aは、図示しないが、壁や天井に設置してもよく、その場合には壁や天井に固定した部材が、支持手段11aの旋回軸Aを保持することになり、当該壁や天井に固定した部材が設置手段11nになる。
表示部14、操作部15、制御手段16は、いずれもX線撮影装置本体M1に設けても、X線撮影装置本体M1に接続される電子計算機16Aに設けてもよく、その他の任意の箇所に設けてもよい。
表示部14、操作部15、制御手段16をX線撮影装置本体M1に設けない場合、X線撮影装置本体M1の近傍に設けると、例えば1人の術者がX線撮影装置本体M1側での作業と、表示部14、操作部15、制御手段16のいずれか少なくとも1つに係る作業との双方を行うのに際して距離的に離間せず、効率的である。なお、X線撮影装置本体M1の近傍は、例えばX線撮影装置本体M1の設置している部屋と同じ室内の、X線撮影装置本体M1の横や、後述する防X線室100を設置する場合に、防X線室100のパネル100aの壁面あるいはその壁面に隣接する場所等が考えられる。
上記の2次元制御は、支持手段11aを旋回軸Aの軸方向と交差する、異なった複数の方向に、好ましくは旋回軸Aの軸方向と直交する平面上の異なった複数の方向に2次元に移動制御する制御であるが、これは、例えば旋回軸Aを2次元に移動制御する制御で実現できる。なお、旋回軸Aは中空軸にして、その内部にX線発生部12やX線検出部13へのケーブルを通過配置させて保護することが望ましい。
被写体保持手段11cは、被写体oである患者の頭部を保持するヘッドレストや、患者の顎を載せるチンレストや、患者が座る椅子等からなり、固定部11bに設けられた昇降手段(図示なし)と接続されている。
図2(a)、(b)の実施例においては、被写体保持手段11cは、患者が座る椅子11c1とヘッドレスト11c2から構成されている。この昇降手段は昇降制御モータ(図示なし)を備えており、被写体保持手段11cを旋回軸Aの軸方向と平行な方向に位置制御する。なお、移動手段11の各制御モータには、回転角や回転速度を制御できるステッピングモータ等を用いることが望ましい。
移動手段11は、X−Yテーブル11e、回転手段11d、旋回軸A、連結部11x、被写体保持手段11cから構成される。
そして、X線発生部12とX線検出部13を互いに対向させて支持する支持手段11aを移動手段11で移動させることにより、結果的にX線発生部12とX線検出部13を被写体保持手段11cで保持した被写体oに対して相対的に移動させている。
移動手段11は、要は支持手段11aを、被写体保持手段11cで保持した被写体oに対して相対的に移動させる機能を果たす構成要素の総体であり、撮影の種類やX線撮影装置の構造に従って、その構成要素が異なり得る。例えば、本実施例においても、後述のリニアスキャン撮影や頭部X線規格写真撮影(セファロ撮影)を行う場合は、必ずしも回転手段11dを使用しないので、この場合の移動手段は、X−Yテーブル11e、旋回軸A、連結部11x、被写体保持手段11cで構成されることになる。また、例えば、支持手段11a、被写体保持手段11cの少なくとも一方の位置制御が、後述する3次元制御である場合は、上述の固定部11bに設けられた図示しない昇降手段も、移動手段を構成する要素になる。3次元制御については、図12の説明に係る、支持手段11aを旋回軸Aの軸方向と平行な方向に昇降移動させる後述の収容フレーム11fも移動手段を構成する要素たり得る。
図1、図2(a)、(b)においては、上述のとおり、支持手段11aの旋回軸AがX−Yテーブル11eで2次元に移動され、被写体保持手段11cが昇降手段で昇降する構成であり、支持手段11aは昇降手段を有さず、被写体保持手段11cは旋回軸Aの軸方向と交差する方向への2次元の移動はしない例であるが、この構成に限定されず、様々な組合せがあり得る。
移動手段11が、支持手段11aを、被写体保持手段11cで保持した被写体oに対して相対的に移動させるには、基本的に2つの方法がある。その1つが上述のように支持手段11aを移動させる方法であり、もう1つが被写体保持手段11cを移動させる方法である。他に、支持手段11a、被写体保持手段11cの双方を移動させてもよい。
つまり、支持手段11aは、被写体保持手段11cで保持した被写体oに対して相対的に移動すればよいので、X線撮影において、移動しない被写体保持手段11cに保持された移動しない被写体oに対して、支持手段11aを移動させる移動手段11を採用してもよいし、移動しない支持手段11aに対して、被写体保持手段11cを移動させてもよいし、被写体保持手段11cに保持された被写体oを移動させる移動手段11を採用してもよい。あるいは、支持手段11a、被写体保持手段11cの双方を移動させる移動手段11を採用してもよい。
被写体保持手段11cの方を静止させる場合、被写体保持手段11cは、移動する支持手段11aに対し静止していることで支持手段11aを被写体保持手段で保持した被写体に対して相対的に移動させる機能を有する。よって、被写体保持手段11cは、静止しているとしても、移動手段を構成する要素である。
被写体保持手段11cの方を移動させるには、例えば上記のX−Yテーブル11eと同様の機構を被写体保持手段11cに用いる方法がある。この構成では、回転手段11d、旋回軸A、連結部11x、X−Yテーブルを用いた被写体保持手段11cが移動手段11を構成する。そのような構成として、本出願人の出願に係る特開2000−139902公報記載の構成が適宜利用可能である。
それゆえ、例えば、図1、図2(a)、(b)における支持手段11aの旋回軸Aを移動させるX−Yテーブル11eを備えずに、旋回軸Aを位置的に固定して支持手段11aの旋回のみを行い、被写体保持手段11cが図示しないX−Yテーブルで2次元に移動される構成にしてもよい。この場合、支持手段11aのみが昇降手段を備えるようにしてもよいし、被写体保持手段11cのみが昇降手段を備えるようにしてもよく、支持手段11aと被写体保持手段11cの双方が昇降手段を備えるようにしてもよい。
特開2000−139902公報では、被写体保持手段が保持手段位置調整機構により2次元あるいは3次元に位置制御される構成を示している。また、特開2000−139902公報では、本件の支持手段に相当する旋回アームと被写体保持手段の双方を移動する構成も示しており、この構成も適宜利用可能である。
支持手段11aは、移動手段11により旋回可能であり、その旋回軸Aの軸方向は上述の例のように床面に対して鉛直方向に設定されている。
いずれの実施例も、旋回軸Aの軸方向が床面に対して鉛直に設定される例を中心に方向等が説明されているが、旋回軸Aの軸方向は、自由に設定でき、水平な構成にしてもよく、任意の角度に設定してよい。支持手段11aの旋回軸Aの軸方向を床面に対して水平に設定した場合には、被写体保持手段11cを患者が横たわる寝台として構成してもよい。
以上に述べた各構成により、支持手段11aの位置制御は、旋回軸Aの軸方向と交差する平面上に規定される2方向の制御等、上述の2次元制御によってなされることになる。しかしながら、支持手段11a、被写体保持手段11cの少なくとも一方が2次元的に位置制御できれば、どのような構成としてもよい。
また、例えば図27に示すように、固定部11bに旋回軸Aと交差する面で回動可能に一端を固定したアームA1の他端と、他のアームA2の一端とを、回動する関節で、アームA2が旋回軸Aと交差する面上で回動可能に接合して、アームA2の他端に旋回軸Aを回動可能に接合するようにしてもよい。また、上述の図示しない昇降手段による位置制御も加えて、支持手段11a、被写体保持手段11cの少なくとも一方の位置制御が、旋回軸Aの軸方向と交差する面上に規定される2方向への制御等、上述の2次元制御に、この旋回軸Aの軸方向と交差する面に、更に交差する1方向を加えた、好ましくはこの旋回軸Aの軸方向と平行な1方向を加えた3次元制御によってなされるようにしてもよい。
X線発生部12は、X線ビームBを照射するX線発生器12aと、スリットにより、X線ビームBの形状を変更する照射野変更手段12bとを備え、好ましくはX線コーンビームを、形状が変更されたX線ビームBとして照射する。
X線検出部13には、カセットの形状に形成したX線検出器13aが装着されており、このX線検出器13aを駆動制御するX線検出器制御回路13bが備えられている。また、X線検出器13aを移動するためのスライド用モータ等のカセット移動手段13cと、X線ビームの露光領域を規制するスリットを有する露光野規制手段13dとが更に備えられている。なお、X線検出器13aは、図1、図2(a)、(b)の実施例においては、X線検出部13に対して交換装着、着脱可能な筐体のカセットとして形成されており、その筐体にはX線画像が投影されるイメージセンサ13eが備えられる。イメージセンサ13eとしては、半導体X線検出素子を用いることができ、2次元に広がりのあるフラットパネルに構成することができる。より具体的には、MOSセンサ、CMOSセンサ、TFTセンサ、CCDセンサ、MISセンサ、CdTe(カドミウムテルル)センサ、X線固体撮像素子等によるイメージセンサが利用可能である。イメージセンサ13eは、後述する第1の撮像手段13f、第2の撮像手段13gを形成する。X線検出部13は、X線検出器13aを装着することにより、第1の撮像手段13f、第2の撮像手段13gを備える。
X線検出器13aは、後述する第1の撮像手段13f、第2の撮像手段13gが設けられる基礎である。X線検出器13aの装着部分の寸法は、従来のX線フィルムカセットと同じ寸法、形状に設定して、X線フィルムカセットと互換性を持たせてもよいが、必ずしもカセット形状にする必要はなく、任意の寸法、形状にして構わない。従って、第2の撮像手段13gにXII(X線イメージインテンシファイア)を用いることもできる。また、X線検出器13aをX線検出部13に対して交換装着、着脱可能にせず、X線検出部13に固定させても、一体的に形成しても構わない。
表示部14は、制御手段16に通信ケーブルを介して接続されるワークステーションやパーソナルパーコンピュータ等で構成され、このワークステーション等は、制御手段16から送信された画像データを記憶するビデオメモリ14aと、ビデオメモリ14aに記憶した画像データに対して画像処理を実行する信号処理手段14bと、各種画像を再構成する画像再構成手段14cと、画像や各種情報を表示するCRT14d等を備えている。CRT14dの代わりに液晶ディスプレイを用いてもよい。あるいは、CRT14dや液晶ディスプレイをワークステーション等と独立させ、ビデオメモリ14a、信号処理手段14b、画像再構成手段14cを制御部16の一部として構成してもよい。
操作部15は、表示部14を構成するワークステーションやパーソナルパーコンピュータ等のキーボードやマウス等で構成されている。もちろん、CRT14dの代わりにタッチパネル方式にした液晶ディスプレイ等を用いた表示部14を採用し、操作部15を兼用させてもよい。
制御手段16は、X線発生部12のX線発生器12aの管電圧、電流を制御するX線管制御部16aと、照射野変更手段12bのスリットを制御するスリット制御部16bと、X線検出部13の露光野規制手段13dのスリットを制御する別のスリット制御部16cと、X線検出器13aのイメージセンサ13eやX線フィルムカセットの種別を判別する種別判別部16dと、カセット移動手段13cを駆動するカセット移動手段制御部16eと、移動手段11の各制御モータを駆動する撮影軌道制御部16fと、X線検出器制御回路13bや撮影軌道制御部16fの制御クロックを生成するクロック発生部16gと、簡易的に情報表示し、操作入力を受け付ける操作パネル16hと、制御用の各種変数など一時記憶するワークメモリ16iと、撮影したX線画像をフレーム毎に記憶するフレームメモリ16jと、制御手段16を統合するCPU16kとで構成されている。
図3は、上述したX線発生部12の基本構成を具体的に説明する原理面である。このX線発生部12では、図3A(a)で示すX線管(管電圧90kV、管電流10mA程度)12gからX線ビームBを照射するX線発生器12aの照射方向前方に、照射野変更手段12bを構成するスリット板12cが配置され、このスリット板12cは、図3A(a)で示すモータ12f1により左右にスライドできるようになっている。そして、スリット板12cには、第1の撮像手段13f(後述する)に対応した旋回軸Aの軸方向と平行な方向に伸長する形状のスリット12d#1と、第2の撮像手段13g(後述する)に対応し、旋回軸Aの軸方向と平行な方向に高さを異ならせた2つのスリット12d#2、12d#3が形成されているので、スリット板12cをX線の光軸に対し横方向にスライドすることによって、広がりがスリット形状に規制され、X線コーンビームCBとなるX線ビームBの照射野が、変更される。この図では、X線ビームBは、スリット12d#2で規制されており、第2の撮像手段13gに対応したX線コーンビームCBがX線発生器12aから、前方やや下向きに照射される様子を示している。
スリット12d#3は、スリット12d#2と同様、第2の撮像手段13gに対応したX線ビームBの規制に用いられるが、スリット12d#2よりも図示の高い位置に設けられており、X線コーンビームCBを前方やや上向きに照射するのに用いられる。照射野変更手段12bでは、これらスリット12d#2、スリット12d#3を選択することにより、第2の撮像手段13gに対し、旋回軸Aの軸方向と平行な方向に、X線コーンビームCBの照射野の位置が変更制御される。なお、スリット板12cの形状や、第2の撮像手段13gに対応したスリットの個数は特に限定されない。
図3A(a)、(b)は、X線発生部12の具体的構造を示す図である。X線発生部12内部で、X線発生器12aは支持手段11aに固定されている。X線発生器12a内部のX線管12gからX線ビームBが照射され、X線発生器12aの前方に設けられた照射野変更手段12bに設けられたスリット板12cに形成されたスリット12d#1、12d#2、12d#3に規制されて、更に前方に照射されるようになっている。スリット12d#1を通過したX線ビームBは、X線細隙ビームNBとなる。
照射野変更手段12bは、X線発生器12aに固定された、X線発生器からのX線ビームBの通過を許容する貫通孔を内部に有する固定ブロック12f2、固定ブロック12f2に固定されたモータ12f1、モータ12f1により回転駆動されるネジ軸である駆動軸12f3、駆動軸12f3により固定ブロック12f2に対し、X線ビームBに交差する方向に変位する被駆動部材12f4、固定ブロック12f2前面の、X線発生器からのX線ビームBの通過を妨げない位置に固定されたコロ固定用板12f6、コロ固定用板12f6に設けられた4個のコロ12f5、コロ12f5に案内され、被駆動部材12f4に固定されて、被駆動部材12f4と共にX線ビームBに交差する方向に変位するスリット板12cからなり、駆動軸12f3により被駆動部材12f4を駆動すれば、スリット板12cがX線ビームBを横切る方向に変位する。スリット板12cの変位により、スリット12d#1、12d#2、12d#3のいずれかが選択できる。
そして、X線ビームBの照射野は、照射野変更手段12bで選択されたスリット12d#1〜12d3に応じたX線コーンビームCBになるが、特にスリット12d#2、12d#3のいずれかが選択されたときには、後述の第2の撮像手段13gに対し、旋回軸Aの軸方向と平行な方向に変位することになる。
なお、旋回軸Aの軸方向と平行な方向とは、必ずしも図3B(a)、(b)の例のように、旋回軸Aの軸方向に完全に一致する方向ではなく、図3C(a)、(b)の例のように、斜めに変更されてもよい。
図3B(a)、(b)、図3C(a)、(b)は、図3の例を応用した例であるので、重複する説明は避ける。
図3B(a)で示すスリット12d♯2を通過したX線ビームBはX線コーンビームCBとなって、照射野12d♯2´の位置に照射される。図3B(b)は、図3B(a)のスリット板12cを変位させて、スリット12d#3を通過したX線コーンビームCBが照射野12d♯3´の位置に照射された状態を示す。照射野12d♯2´は旋回軸Aの軸方向に完全に一致する方向である、図の上下方向の上側の、照射野12d♯3´の位置に変更されている。
一方、図3C(a)で示すスリット12d♯2を通過したX線コーンビームCBは、照射野12d♯2´の位置に照射される。図3B(b)は、図3B(a)のスリット板12cを変位させて、スリット12d#3を通過したX線コーンビームCBが照射野12d♯3´の位置に照射された状態を示す。照射野12d♯2´は旋回軸Aの軸方向に完全に一致する方向ではなく、図の上下方向に斜めに、照射野12d♯3´の位置に変更されている。
このような変更は、スリット板12cの変位量の調整により、簡単に実現できる。図3C(a)、(b)の構成の場合、例えば後述の図9の説明に係るオフセットスキャンCT撮影でCT画像を取得することができる。なお、本出願にいう「旋回軸Aの軸方向と平行な方向」は、上記のように、旋回軸Aの軸方向に完全に一致する方向のみではなく、斜めの方向も含む。
上述の例は、旋回軸Aの軸方向と平行な方向に高さを異ならせた複数のスリットをX線発生器12aに対して変位させて照射野の位置を変更する例であるが、別の方式も有りうる。
図31(a)、(b)、(c)、図31A、図31B、図31Cは、いずれもその別の方式の例を原理的に示すが、図3A(a)の変形例なので、共通する点については説明を省略する。また、図31(a)、(b)、(c)いずれの場合も、X線発生器12aの回り止め部材や、移動案内部材は周知の機構を用いて容易に実現できるので、図示せず省略してある。
図31(a)、(b)、(c)においては、X線発生器12aからのX線ビームBがスリット12d♯2で規制されてX線コーンビームCBとなって照射される様子を示す。
図31(a)は、X線発生器12a自体が回動して照射野を変更する例である。図3A(a)と異なり、図31(a)の支持手段11aとX線発生器12aの間は分離され、回動部材12f22、12f21が介在している点が異なっている。ここに、X線発生器12aは、その頂部に回動部材12f22を有している。支持手段11aの底部には、回動部材12f22に対応する位置に、別の回動部材12f21が設けられる。回動部材12f22と回動部材12f21は共通の回動軸12f24を中心に互いに回動可能に接合される。回動軸12f24の軸方向は、旋回軸Aの軸方向と平行な方向に対して直交する方向に設定される。従って、回動部材12f22は、X線発生器12aがX線検出部13に向けて照射するX線コーンビームCBを、旋回軸Aの軸方向と平行な方向に変位させるように回動可能である。X線発生器12aの頂部には、扇型部材12f23が、扇型の要の部分がX線発生器12aの頂部に固定される状態で設けられ、支持手段11aのX線発生部12側底部にはモータ12f20が設けられている。モータ12f20の駆動軸は、扇型部材12f23の円弧状の縁に当接しており、扇型部材12f23を回動させる。扇型部材12f23の回動軸の軸方向は、回動軸12f24と同方向に設定されている。従って、モータ12f20を駆動すれば、X線発生器12aが回動され、X線発生器12aがX線検出部13に向けて照射するX線コーンビームCBが旋回軸Aの軸方向と平行な方向に変位する。
図31(b)は、X線発生器12a自体をスリット板12cに対して昇降させて照射野を変更する例である。図3A(a)と異なり、固定ブロック12f2は支持手段11aのX線発生部12側底部に固定されている。ここに、X線発生器12aは、支持手段11aに直接固定されておらず、下記の被駆動部材12f32によって支持手段11aに対して昇降するようになっている。
固定ブロック12f2内部の、X線発生器12aからのX線ビームBの通過を許容する貫通孔は、X線発生器12a先端の一定範囲での昇降を許容する寸法に設定されている。支持手段11aのX線発生部12側底部には、モータ12f30がネジ軸である軸12f31を下方に向けて固定されている。X線発生器12aの背面には、軸12f31を挿通し、軸12f31によって昇降駆動される内部にねじ切りした被駆動部材12f32が設けられる。従って、軸12f31を駆動すれば、X線発生器12aが固定ブロック12f2およびスリット12d♯2に対して上下に昇降され、照射野が上下に変更される。すなわち、モータ12f30の駆動により、X線発生器12aがX線検出部13に向けて照射するX線コーンビームCBが、旋回軸Aの軸方向と平行な方向に変位する。
図31(c)は、スリット板12cをX線発生器12aに対して昇降させて照射野を変更する例である。ここに、X線発生器12aは、支持手段11aのX線発生部12側底部に固定され、固定ブロック12f2はX線発生器12aに固定されている。支持手段11aのX線発生部12側底部には、モータ12f40がネジ軸である軸12f41を下方に向けて固定されている。図3A(a)と異なり、コロ固定用板12f6は、固定ブロック12f2からは分離され、昇降する部材として構成される。コロ固定用板12f6の背面には、軸12f41を挿通し、軸12f31によって昇降駆動される内部にねじ切りした被駆動部材12f42が設けられる。従って、軸12f41を駆動すれば、コロ固定用板12f6と共に、コロ固定用板12f6に固定されたコロ12f5および上下のコロ12f5に挟持されたスリット板12cが上下に昇降されて、照射野が上下に変更される。すなわち、モータ12f40の駆動により、X線発生器12aがX線検出部13に向けて照射するX線コーンビームCBが旋回軸Aの軸方向と平行な方向に変位する。
図31(a)、(b)、(c)いずれの場合も、第2の撮像手段13g(後述する)に対応したスリットは2つ必要なく、12d#2のみを設け、12d#3を省略できる。
図31A、図31Bは、X線ビームBが第2の撮像手段13gに対応したX線コーンビームCBになるよう規制するスリット12d#2が、図3A(a)のスリット板12cとは別に設けられた、旋回軸Aの軸方向と平行な方向に変位するスリット板12c1に形成されている例である。
図31AはX線発生部12の構造を原理的に説明する側面図であり、図31BはX線発生器12aに固定される固定ブロック12f2と固定ブロック12f2に設けられる機構の斜視図である。下記に説明する「前面」は、X線発生器12aからX線ビームBの照射を受ける方向から見た前面である。
ここに、X線発生器12aは支持手段11aに固定され、X線発生器12aからのX線ビームBの通過を許容する貫通孔を内部に有する固定ブロック12f2はX線発生器12aに固定される。固定ブロック12f2の前面の、X線発生器からのX線ビームBの通過を妨げない位置には、コロ固定用板12f50、12f50が固定される。そのうち、下側のコロ固定用板12f50の底部にはモータ12f52が回動するネジ軸である軸12f53を下方に向けて固定される。スリット板12c1は、2枚のコロ固定用板12f50、12f50に設けられた4個のコロ12f56に案内されて、旋回軸Aの軸方向と平行な方向に変位する。スリット板12c1には、X線ビームBが第2の撮像手段13gに対応したX線コーンビームCBになるよう規制するスリット12d#2と、後述の目的で大きく開口した開口部12d♯6が形成されている。また、スリット板12c1には、内部にねじ切りされた被駆動部材12f55が設けられていて、軸12f53により駆動される。従って、被駆動部材12f55を駆動すれば、スリット板12c1が図の上下、すなわち旋回軸Aの軸方向と平行な方向に変位する。
コロ固定用板12f50、12f50の前面には、4本のピン12f57により、2枚のコロ固定用板12f58、12f58が、変位するスリット板12c1の移動を妨げないように挟む形で固定される。コロ固定用板12f58、12f58の前面には4個のコロ12f5が設けられている。上側のコロ固定用板12f58の上部には、モータ12f1が回動するネジ軸である軸12f3を側方に向けて固定される。スリット板12cには、第1の撮像手段13fに対応した旋回軸Aの軸方向と平行な方向に伸長する形状のスリット12d#1、12d♯4が形成されている。
スリット12d#1はパノラマ撮影用、またはリニアスキャン撮影用のスリットであり、12d♯4は頭部X線規格写真撮影(セファロ撮影)用のスリットである。また、スリット板12cには、後述の目的で大きく開口した開口部12d♯7が形成されている。スリット板12cの前面には、内部にねじ切りされた被駆動部材12f4が設けられていて、軸12f3により駆動される。従って、被駆動部材12f4を駆動すれば、スリット板12cがX線ビームBを横切る方向に変位する。このとき、コロ12f5は、スリット板12cの変位を案内する。
具体的には、X線CT撮影の場合、スリット12d#2がX線ビームBを規制する位置にくるよう、スリット板12c1をモータ12f52により変位させる。その変位量の調整により、スリット12d♯2の旋回軸Aの軸方向と平行な方向への変位調節が可能であり、そのためにX線コーンビームCBは第2の撮像手段13gに対し、照射野を旋回軸Aの軸方向と平行な方向に変更できる。この場合、開口部12d♯7がスリット12d♯2の前方に来るよう、スリット板12cがモータ12f1により変位される。なお、開口部12d♯7はスリット12d♯2を通過したX線コーンビームCBが通過を妨げられない大きさに設定されている。
そしてパノラマ撮影、またはリニアスキャン撮影の場合には、スリット12d♯1がX線ビームBを規制する位置にくるよう、スリット板12cがモータ12f1により変位される。X線ビームBは、スリット12d♯1を通過して、X線細隙ビームNBとなる。スリット12d♯1を通過したX線細隙ビームNBの通過を妨げられないように、開口部12d♯6がスリット12d♯1の背後にくるよう、スリット板12c1がモータ12f52により変位される。なお、開口部12d♯6はスリット12d♯1を通過したX線細隙ビームNBの通過を妨げられない大きさに設定されている。
頭部X線規格写真撮影(セファロ撮影)の場合には、パノラマ撮影時、またはリニアスキャン撮影時のスリット12d♯1が12d♯4に置き換わるのみで、作動は同様であるので、詳述を避ける。
図31Cは、図31Bの応用図である。図31Cの実施例は、図31Bの実施例のスリット12d♯2がスリット12d♯5に代わり、開口部12d♯7がスリット12d♯8に代わるのみであるので、それ以外の説明は省略する。
図31Cの実施例においては、X線CT撮影の場合に、スリット12d♯5とスリット12d♯8が重なり合わさって協働で照射野を変更する点に特徴がある。スリット12d♯5の縦の幅はスリット12d♯2の縦の幅と同じ長さに設定され、スリット12d♯5の横の幅はスリット12d♯2の横の幅よりも長く設定される。一方、スリット12d♯8の縦の幅はスリット12d♯2の縦の幅よりも長く設定され、スリット12d♯8の横の幅はスリット12d♯2の横の幅と同じ長さに設定される。スリット板12cとスリット板12c1の変位量を調整することで、照射野が上下左右の2次元に制御できる。
図4(a)、(b)は、上述したX線検出部13の2通りの基本構成を示した斜視図である。
X線検出部13は、X線検出部13の基礎である基部130a、基部130a内をX線検出部13の旋回方向とほぼ平行な方向に変位するセンサホルダとして機能する可動部130bまたは130c、可動部130bまたは130cに装着されるX線検出器13aから構成され、第1の撮像手段13fと、第2の撮像手段13gとを備えている。
図4(a)の2つのX線検出器13aのうち、図の上側に示すX線検出器13aでは、支持手段の旋回軸Aの軸方向と平行な方向に伸長する第1の撮像手段13fと、X線CT撮影に用いられる第1の撮像手段13fに対して2次元に広がりのある第2の撮像手段13gとが、X線検出器13aに備えられたイメージセンサ13eの単一の検出面上で一部の領域が重なるように領域設定されている。
図4(a)の上側方に示すX線検出器13aで第1の撮像手段13fと第2の撮像手段13gとがイメージセンサ13eの検出面上で一部重なるように領域設定されているのに対し、図4(a)の図示の下の方に示すX線検出器13aでは、それらが独立して個別に備えられている。いずれの場合でも、X線検出器制御回路13bは、第2の撮像手段13gの領域設定を支持手段11aの旋回軸Aの軸方向と平行な方向に位置変更する撮像手段移動手段13iを構成しており、第2の撮像手段13gの領域を、電子的あるいはソフトウェア的な方法で非機械的に設定変更する機能を有している。
もっとも、X線ビームBの照射野は、上述の照射野変更手段12bのスリット12d#1、スリット12d#2、スリット12d#3により規制されてX線コーンビームCBとなり、切り換えられるので、イメージセンサ13eの全面を常に有効領域としてもよい。
ところで、図4(a)の例の場合、第1の撮像手段13f、第2の撮像手段13gは、同一のイメージセンサ13e上で領域設定されるので、第1の撮像面、第2の撮像面ととらえることもできる。
図4(a)には2つの可動部130bと130cが示されているが、そのうち、図の上の方に示す可動部130bについてまず説明する。基部130aには可動部130bに設けられた被案内部13h2を案内する案内部13h1が設けられ、可動部130bは、例えばモータとローラからなるカセット移動手段13cにより変位駆動される。この可動部130bにはX線検出器13aを装着するための受入部13jが設けられ、そこには図4(a)の2つのX線検出器13aのうち、図示の上の方に示すX線検出器13aが装着される。可動部130bにはX線検出器13aが装着された場合のX線検出器13aの前方の位置に露光野規制手段13dが設けられる。露光野規制手段13dは平板な板状部材からなり、第1の撮像手段13f、第2の撮像手段13gの寸法にほぼ適合する寸法の二次スリット13lが開口し、第1の撮像手段13f、第2の撮像手段13gへのX線ビームの照射を許容する一方、それ以外の不要なX線ビームを遮断している。
図4(a)の2つの可動部のうち、下の方に示す可動部130cは、可動部130bの変形例であり、図4(a)の2つのX線検出器13aのうち、上述の図示の下の方に示すX線検出器13aを装着するためのものである。可動部130bとの差は、第1の撮像手段13fと第2の撮像手段13gとが独立して領域設定されているX線検出器13aに合わせて、それぞれの撮像手段の寸法にほぼ適合する2つの二次スリット13l、13lが開口している点である。可動部130cは、装着されたX線検出器13aの第1の撮像手段13fと第2の撮像手段13gの選択に合わせて、X線ビームが照射する位置に来るよう、それぞれの撮像手段を変位させる。
図4(a)の例では、第1の撮像手段13f、第2の撮像手段13gが長方形、矩形の例を示しているが、特にこの形状に限定されるものではなく、細長い第1の撮像手段13fに対して第2の撮像手段13gが2次元に広がりのあるものであればよい。細長い第1の撮像手段13fに対して第2の撮像手段13gが2次元に広がりがあるとは、細長い第1の撮像手段13fの形状に比較して、第2の撮像手段13gは、より幅の広い形状ということである。
図26(a)、(b)は、それぞれ第1の撮像手段13f、第2の撮像手段13gの形状のそれぞれ異なる例を示している。図26(a)の例は、図4の例と同様に、第1の撮像手段13f、第2の撮像手段13gが長方形、矩形の例であるが、例えば図26(b)のような形状でもよく、任意である。図26(b)の例の第1の撮像手段13fは、長方形の四隅に丸みがある形状であり、第2の撮像手段13gは円形である。
ここで、第1の撮像手段13fの縦の最大幅の寸法をW1f、第2の撮像手段13gの縦の最大幅の寸法をW1gとし、第1の撮像手段13fの横の最大幅の寸法をW2f、第2の撮像手段13gの横の最大幅の寸法をW2gとすれば、W1f>W1g、W2f<W2gという関係にあるように設定できる。また、これら縦横の寸法は、比率から設定することもでき、W1f/W2f > W1g/W2gという関係になるように設定してもよい。例えば、W2fを1とすれば、W1fを3〜30の比率で設定し、W2gを1とすれば、W1gを0.3〜2の比率で設定するようにしてもよい。
更に具体的には、W1fを従来もっともパノラマに適した150mmまたは150mm±30mm程度に、W2fをパノラマ断層を鮮明に無駄なく撮像するのに適した10mmまたは10mm±5mm程度に設定し、W1gを数本の歯列または耳のアブミ骨周辺のみをCT撮影するのに適した120mmまたは120mm±30mm程度に、W2gを同じく数本の歯列または耳のアブミ骨周辺のみを撮像するのに適した120mmまたは120mm±30mm程度に設定してもよい。
また、W1gを70mmまたは70mm±20mm程度に、W2gを70mmまたは70mm±20mm程度に設定してもよい。70mm四方または70mm±20mm程度四方の検出面でも、1本の歯およびその左右の歯程度はCT撮影の範囲に収めることができ、また、それぞれの歯の歯冠から根尖まで撮像することができるので、実用的な寸法の範囲であり、かつコストも低く抑えられる。
次いで装置Mの基本動作を説明する。本発明は、被写体oに特定の関心領域Rを指定し、その関心領域RのCT画像を取得する医療用X線撮影装置を提供するものであるが、そのために、装置Mの制御手段16は、要約すると、第1の撮像手段13fで被写体oを広範囲に走査撮影して取得した第1のX線画像を表示部14に表示し、操作部15の操作によって、表示部14に表示された第1のX線画像上で関心領域Rを指定させ、指定された関心領域RのCT画像である第2のX線画像を取得するために、照射野変更手段12bの位置制御と、第2の撮像手段13gの位置制御と、支持手段11aおよび/または被写体保持手段11cの位置制御、すなわち、総体として移動手段11の制御とを行い、第2のX線画像として、CT画像を撮影制御する基本動作を行う。
図5は、その基本動作をなすための制御手段16による制御手順を示すフローチャートである。このフローチャートに従えば、制御手段16は、まず、被写体oを基準位置に配置する配置ステップを実行する(ステップ101)。すなわち、操作部15のキーボード、あるいは操作パネル16hで所定の操作を受け付けると、被写体oを保持した被写体保持手段11cを昇降させて被写体oを基準位置に位置付けする。
そして、操作部15のキーボード、あるいは操作パネル16hの操作により、第1のX線画像の撮影種別としてパノラマモードが選択され、更にその撮影指令を受付けると(ステップ102)、X線ビーム(X線細隙ビームNB)の軌跡としてパノラマ撮影用を選択し(ステップ103)、支持手段11aを光学系の旋回軸と交差する平面上で位置付けし(ステップ104)、照射野変更手段12bのスリット12d#1を選択し(ステップ105)、第1の撮影手段13fを用いて第1のX線画像を走査撮影する(ステップ106)予備撮影ステップ(ステップ102〜106)を実行する。
図6は、被写体oの走査撮影時のX線発生部12、X線検出部13の軌道を示す平面図である。本実施例では、パノラマX線撮影する場合、被写体oを固定保持する前記被写体保持手段11cに対して、支持手段11aをパノラマX線撮影用の軌道に沿って移動手段11により移動(旋回)させる。
ここで、旋回軸Aの2次元移動は前述のようにX−Yテーブル11eで行い、旋回軸Aの回転は回転手段11dで行う。旋回軸Aの回転により、支持手段11aが旋回する。これらのX−Yテーブル11eによる旋回軸Aの2次元移動と回転手段11dによる支持手段11aの旋回との総合運動でパノラマ撮影が行われる。
すなわち、投影倍率を一定に保つために、支持手段11aの回転と同期して、旋回軸Aも図中央部の点線のように歯列からの距離をなるべく一定に保つよう、右奥の歯近傍のA1から前歯中央近傍のA2、A2から左奥の歯近傍のA3を経由して移動させるようになっている。X線発生部12、より具体的にはX線発生器12aは、支持手段11aの回転に従って、歯列の右奥の歯を舌側から頬側に向けてX線ビーム(X線細隙ビームNB)を照射する位置P1、前歯中央近くの歯を舌側から唇側に向けてX線ビーム(X線細隙ビームNB)を照射する位置P2、歯列の左の歯を舌側から頬側に向けてX線ビーム(X線細隙ビームNB)を照射する位置P3を順に経由する軌道に沿って図の上から見て左回りに移動し、X線検出部13、より具体的には第1の撮像手段13fは、それに同期して、位置P1のX線発生器12aからのX線ビーム(X線細隙ビームNB)を受ける位置PP1、位置P2のX線発生器12aからのX線ビーム(X線細隙ビームNB)を受ける位置PP2、位置P3のX線発生器12aからのX線ビーム(X線細隙ビームNB)を受ける位置PP3を経由する軌道に沿って図の上から見て左回りに移動する。図示の例ではX線発生部12、X線検出部13が左回りに移動しているが、右回りでも構わない。
パノラマX線撮影時の軌道については、本発明の出願人の出願に係る特公平2−18092に具体的な記載がある。この特公平2−18092においては、X線束の回転中心の移動軌跡が歯列弓の前歯部に向いて突出する頂点を境として左右対象な略三角形状の包絡線軌跡を描くように構成されたパノラマX線撮影装置が開示されており、例えばこのようなパノラマX線撮影時の軌道を採用することができる。
図28はX線発生器12aから第1の撮像手段13fに向けて照射されるX線ビーム(X線細隙ビームNB)の軌跡が包絡線ENを描く様子を示している。
図7は、被写体oの走査撮影時の状態を説明する模式的な拡大図である。この図では、旋回軸Aの延長線は、被写体o中の、具体的な被写体o´として描かれている患者の歯列弓の中央部分を通過している。X線ビームBは、スリット板12cのスリット12d#1によって規制されX線細隙ビームNBとなって、歯列の細長い透過像が第1の撮像手段13fに投影されている。なお、図7、後出の図10、図18、図19、図24、図25は、いずれも模式的な説明図であり、歯列弓o´が実際より大きく描いてある等、理解のための強調、簡略化などを行っている。
こうして第1のX線画像の撮影が完了すると、取得した画像データを処理して再構成し(ステップ107)、パノラマ画像を表示部14に表示し(ステップ108)、操作部15のマウス操作と連動するカーソルによってパノラマ画像上に関心領域Rを指定し、第2のX線画像の種別を選択する(ステップ109)関心領域指定ステップ(ステップ107〜109)を実行する。
なお、パノラマ画像を含めたX線画像、後述のセファロ画像、リニアスキャン画像その他必要情報の表示は、ワークステーションやパーソナルパーコンピュータ等で構成される表示部14に表示してもよいが、ワークステーションやパーソナルパーコンピュータ等に対する装置本体側の表示部として、例えば、図2に示されるX線撮影装置本体M1の操作パネル16hに装置本体側表示部16dsを設けて、表示するようにしてもよいし、表示部14と装置本体側表示部16ds双方に表示するようにしてもよい。無論、装置本体側表示部16dsも、表示部14の1例である。
更に、表示部14に表示されたパノラマ画像を拡大や縮小して表示するようにしてもよいし、拡大したした結果表示部の画面に収まりきれない部分が生じる場合は、画面に収まる部分のみ表示して、画面のスクロールで表示される部分を変更するようにしてもよい。そして、表示したパノラマ画像のコントラスト調整等を行えば、更に良好にパノラマ画像が視認できる。
装置本体側表示部16dsは、装置本体側であればどこに設けてもよいが、例えば前記支持手段11aまたは前記固定部11bに設けると装置本体側表示部16ds自体の占める空間が節約できて便宜である。
関心領域Rを指定する操作部15も、装置本体側表示部16dsと同様、装置本体側に設けると操作が容易である。操作部15は装置本体側であればどこに設けてもよいが、装置本体側表示部16dsの近傍が特に操作がしやすく好都合である。また、装置本体側表示部16dsが支持手段11aまたは固定部11bに設けられる場合、操作部15を同じ箇所に設けると、特に便宜である。
装置本体側表示部16ds上にパノラマ画像を表示する場合も、操作部15の操作によりパノラマ画像上で関心領域Rの指定をするのであるが、操作部15の操作手段としては、キーボードや手のひらで握持して操作するマウスの他、タッチペンや、ノート型コンピュータに汎用で設けられる、メンブレンシート上を指で接触操作するタイプのマウスを採用しても、大きな設置空間を要さず至便である。前述のように、タッチパネル方式にした液晶ディスプレイ等を用いて、表示部14と操作部15を兼用させてもよい。
装置本体側表示部16ds上には、第1のX線画像IM1としてパノラマ画像だけでなく、後述のリニアスキャン撮影により取得した画像を表示してもよいし、後述の頭部X線規格写真撮影(セファロ撮影)により取得したセファロ画像を表示してもよい。
いずれにしても、表示された画像の上で関心領域Rを指定して、支持手段11aの移動制御を行い、関心領域RのCT撮影をするように構成できることは、パノラマ画像の場合と同様である。
装置本体側表示部16dsには、CT画像等の第2のX線画像IM2を表示してもよい。
図8は、その関心領域Rの指定方法を説明するパノラマ画像(第1のX線画像IM1)の例である。関心領域Rの指定は、操作部15の操作に応じて表示部14のCRT14d上を移動するカーソルによって行えばよい。そのカーソルとしては、矢印形カーソル、十字形カーソル、関心領域枠を表示する矩形カーソルのいずれを用いてもよく、またそれらを組み合わせたカーソルを用いてもよい。矢印形カーソルとしては、パーソナルコンピュータ等で周知の矢印形ポインタを用いることができる。なお、カーソルないしポインタは必ずしも矢印形である必要はなく、任意の形状でよい。また、第1のX線画像IM1は表示部14に表示してもよいし、装置本体側表示部16dsに表示してもよい。無論、表示部14と装置本体側表示部16dsの双方に表示してもよい。
図示のカーソルca、cbは十字形カーソルの例である。この場合、例えば、カーソルca、cbそれぞれをマウス等で操作して、プレスして保持し、画面上で移動させて関心領域Rの指定をするようにする。カーソルca、cbの交点を保持して移動させることによって、これらの2つのカーソルを同時に移動することができるようにしてもよい。
図示のカーソルR´は矩形カーソルの例である。カーソルR´の示す四角形の4つの頂点を結ぶ2つの対角線を想定すれば、その2つの対角線の交差する位置またはその付近が関心領域Rの中心を指定するものとして関心領域Rを指定してもよいし、カーソルR´の大きさが関心領域Rの大きさと一致するように表示させてもよい。
カーソルca、cbとカーソルR´を同時に表示するようにしてもよく、カーソルR´の示す四角形の4つの頂点を結ぶ2つの対角線を想定し、その2つの対角線の交差する位置と、カーソルca、cbの交点とが一致するように表示させてもよい。
パノラマ断層の3次元的な位置の座標情報は予め把握できるので、このようなカーソルにより、関心領域Rの3次元的位置がパノラマ画像上で直交する2座標軸に対して明示的に座標指定できる。また、パノラマ画像の厚み方向の1座標軸に対しては、歯列の像の大きさに基づいて、歯列の厚みの中央部付近が自動的に座標指定されるようにすればよい。
オフセットスキャンについては後述するが、その後、操作部15のキーボード、あるいは操作パネル16hの操作により、第2のX線画像の撮影種別として通常のCTモードまたはオフセットスキャンCTモードが選択され、更にその撮影指令を受け付けると(ステップ110)、指定された関心領域Rの位置を座標計算し(ステップ111)、次に第2のX線画像の種別を判別して(ステップ112)、第2のX線画像の種別が通常のCT撮影であれば、X線ビーム(X線コーンビームCB)の軌跡として通常のCT撮影用を選択し(ステップ113)、支持手段11aを移動させて光学系の旋回軸と交差する平面上で位置付けする(ステップ114)一方、第2のX線画像の種別がオフセットスキャンCT撮影であれば、X線ビーム(X線コーンビームCB)の軌跡としてオフセットスキャンCT撮影用を選択し(ステップ115)、支持手段11aを移動させて光学系の旋回軸と交差する平面上で位置付けし(ステップ116)、X線検出器13aを旋回方向前方または後方にスライドさせて、X線発生部12と、関心領域Rとに対して第2のX線撮像手段13gがオフセットするように位置付けし(ステップ117)、次に関心領域Rの高さを判別して(ステップ118)、関心領域Rの位置が基準位置よりも高ければ、照射野変更手段12bのスリット12d#3を選択し(ステップ119)、第2の撮像手段13gの領域を上昇させて(ステップ120)、光学系の旋回軸と平行方向に位置付けする一方、関心領域Rの位置が基準位置よりも低ければ、照射野変更手段12bのスリット12d#2を選択し(ステップ121)、第2の撮像手段13gの領域を下降させて(ステップ122)、光学系の旋回軸と平行方向に位置付けする撮影位置調整ステップ(ステップ110〜122)を実行する。
なお、このとき第2の撮像手段13gの領域に対する上昇、下降に加えて、支持手段11aや被写体保持手段11cの上昇、下降を制御すれば、関心領域Rの位置に対する適応範囲をより拡大することができる。支持手段11aや被写体保持手段11cの上昇、下降については、図1の説明に係る、固定部11bに設けられた図示しない被写体保持手段11c用の昇降手段や、図12の説明に係る、支持手段11aを昇降移動させる後述の収容フレーム11fを利用することができる。
そして撮影位置調整ステップでの位置付けに基づき、移動手段11を駆動し、第2の撮影手段13gにより、関心領域Rの全体、または1/2以上の割合の部分を含む透過画像を所定の角度毎に撮影し(ステップ123)、取得した透過画像を画像処理して、関心領域Rの所望断面に対するCT画像を再構成する(ステップ124)本撮影ステップ(ステップ123、124)を実行する。
なお、上述の撮影種別の選択では、少なくともパノラマモード、CTモードが選択でき、更にCTモードとして通常のCTモード、オフセットスキャンCTモードが選択できる。しかしながら、更にリニアスキャンモード等を選択できるようにしてもよく、また、パノラマモードを選択している状態で、パノラマ画像が表示されたCRT14d上で関心領域Rが指定されたときには、自動的にCTモードが選択されるようにしてもよい。
リニアスキャン撮影は、図30(a)で示すように、X線発生器12aと第1の撮像手段13fで被写体を挟んだ状態で、X線発生器12aと第1の撮像手段13fを同方向に同期移動させてX線細隙ビームNBにより被写体の関心領域の透過画像を取得する撮影である。X線発生器12aと第1の撮像手段13fを同方向の同期移動は、後述のX−Yテーブルにより、容易に実現できる。よって、リニアスキャンモードを選択した場合には、第1の撮像手段13fによる撮影として、リニアスキャン撮影で第1のX線画像である透過画像(リニアスキャン画像)を取得し、CRT14d上に表示した被写体の透過画像上で、パノラマ画像の場合と同じように関心領域Rを指定して、第2の撮像手段13gでCT撮影を行い、第2の画像であるCT画像を取得するようにしてもよい。
また、第1の撮像手段13fによる撮影として、セファロスタット(頭部X線規格写真撮影またはセファロ撮影)を行うようにしてもよい。頭部X線規格写真撮影(セファロ撮影)は、例えば図30(b)のように、被写体oである人間の頭部を充分に撮影できる長さの第1の撮像手段13fとX線発生器12aで、側方を向いた人間の頭部を挟んだ状態で、第1の撮像手段13fを頭部の前方から後方またはその逆方向、頭部の上方から下方またはその逆方向というように、頭部全体が撮影できるように移動させて、頭部の透過画像を取得する撮影である。
図示の例では、X線発生器12aは固定し、人間の頭部を充分に撮影できる長さのX線細隙ビームNBを照射できる長さのスリット12d♯4を、第1の撮像手段13fと同期移動させて撮影する。この方式の撮影については、本願の出願人の出願に係る特開2003−245277の構成を適宜採用可能である。
例えば、図3、図3A(a)、(b)に示すスリット板12cに、上述のスリット12d♯4を加え、装置Mに、周知構成の頭部X線規格写真撮影(セファロ撮影)用の長尺の水平アームを設け、アームの先端の第2のX線検出部に、上記の第1の撮像手段13fを上記の同期移動可能に備えることで、上記の撮影が可能になる。よって、頭部X線規格写真撮影(セファロ撮影)モードを選択した場合には、頭部X線規格写真撮影(セファロ撮影)で第1のX線画像である透過画像(セファロ画像)を取得し、CRT14d上に表示した被写体の透過画像(セファロ画像)上で、パノラマ画像の場合と同じように関心領域Rを指定して、第2の撮像手段13gでCT撮影を行い、第2の画像であるCT画像を取得するようにしてもよい。
関心領域Rの指定については、例えば、異なる角度から撮影した複数のリニアスキャン画像を表示し、1つのリニアスキャン画像上で関心領域Rを指定し、別のリニアスキャン画像上でも関心領域Rを指定すると、関心領域の3次元的位置の座標情報が得られるので、当該座標情報より関心領域RのCT撮影ができる。
セファロ画像上で関心領域Rを指定する場合、歯列弓o´の右側と左側が重なって表示されるので、セファロ画像上で関心領域Rの指定をすると共に、右側の歯か左側の歯かを別に操作部15より指定する。被写体oである人間の頭部は、上述の第2のX線検出部に固定されており、歯列弓o´の3次元的な位置も把握されている。この場合、例えば前歯を特定の固定位置に位置付けする手段を備えていれば、更に正確に歯列弓o´の3次元的な位置が把握される。なお、歯列弓o´の一般的形状より、関心領域Rの3次元的位置の座標情報が得られるので、関心領域RのCT撮影ができる。予め個別に歯列弓形状を実測しておいてもよい。
図9は、CT撮影用のX線ビーム(X線コーンビームCB)の軌跡を示す平面図である。図9(a)は、通常のCT撮影用の軌跡を示し、図9(b)は、オフセットスキャンCT撮影用の軌跡を示している。通常のCT撮影時には、X−Yテーブル11eにより、支持手段11aの旋回軸Aを移動させて、X線発生器12aと第2の撮像手段13gとが、それぞれ関心領域Rの中心に位置合わせされた旋回軸Aを光学系の旋回軸にした状態で、回転手段11dで支持手段11aの旋回軸Aを回転させ、支持手段を旋回させて、少なくとも1/2回転以上は同期的に旋回し、関心領域R全体が常に第2のX線撮像手段13gに投影されるようになっている。
一方、オフセットスキャンCT撮影時には、X線発生器12aと第2の撮像手段13gとが、それぞれ関心領域Rの中心に位置合わせされた旋回軸Aを光学系の旋回軸とし、かつX線発生器12aと、関心領域Rとに対して第2のX線撮像手段13gがX線検出部13の旋回方向前方または後方にオフセットした状態で、少なくとも1回転以上は同期的に旋回し、関心領域Rの1/2以上の割合の部分が第2のX線撮像手段13gに常に投影されるようになっている。このように、オフセットスキャンCT撮影においては、第2の撮像手段13gをX線検出部13の旋回方向前方または後方にオフセットさせることで、指定された関心領域Rの一部を常に投影しながら関心領域R全てにわたる投影を行い、関心領域RのX線CT撮影をする。第2の撮像手段13gのオフセットは、例えば、図1の説明に係る連結部11xを支持手段移動テーブルにした構成で、支持手段11a全体を、旋回軸Aに交差する面上で移動することや、図4(a)、(b)の説明に係る、撮像手段移動手段13iにより可動部130bを変位駆動することで実現できる。なお、オフセットスキャンCT撮影用の軌跡は、様々な変形が可能である。
なお、ここで、「関心領域」という語は、関心対象領域中、CT撮影で撮影できる範囲に収まり、再構成の対象とされる領域を意味している。これに対して、病理的に関心が持たれる領域には、「関心対象領域」という語を用いる。
このような定義に従えば、「関心領域」と「関心対象領域」の大きさが一致することもあるが、一致しないこともある。「関心対象領域」が大きく、「関心領域」はその「関心対象領域」の中の、特に撮影したい箇所である場合もありうるし、「関心対象領域」が小さく、「関心領域」の中に余地を残して完全に収まってしまう場合もある。
図9A(a)、(b)は、それぞれ、X線コーンビームCBと関心領域Rとを旋回軸Aに直交する方向から見た側面図、旋回軸Aに平行な方向から見た平面図であり、図9A(c)は、CT撮影された関心領域Rの旋回軸Aに沿って切断した断面図である。X線コーンビームCBの照射方向に直交する断面が方形であり、かつ、方形の上下の辺が旋回軸Aと平行な方向に対してX線コーンビームCBの照射方向から見て直交する方向である場合、図9A(a)、(b)に示したように、関心領域Rは、X線コーンビームCBの広がり具合(立体角)によって形状が規定され、厳密には、円柱形状ではなく、その上下に円錐部分を有する6角形状の断面を有している。従って、図8のパノラマ画像による関心領域の指定でカーソルR´により指定される領域を、図9A(c)に示した関心領域Rの内側の例えば2重斜線領域に対応させておけば、その領域を確実に包含するようにCT撮影が行われる。
厳密には以上のとおりであるが、特に必要がない限り、出願においては関心領域RにおけるX線コーンビームCBを示すのに、円柱形状で示すこととする。
図10は、関心領域Rの透過画像撮影時の状態を説明する模式的な拡大図である。この図は、通常のCT撮影時の状態を示すもので、旋回軸Aの延長線が関心領域Rの円柱体の中心を通過している。また、X線ビームBは、スリット板12cのスリット12d#3によって規制されてX線コーンビームCBとなり、関心領域R全体を含んだ透過像が第2の撮像手段13gに投影されている。なお、X線発生部12、X線検出部13は、旋回軸Aを光学系の旋回軸とした旋回軌道に沿って同期的に移動する。
図7、図10の例は、図4の(a)のように、第1の撮像手段13fが第2の撮像手段13gと同一の撮像面に設定される例であるが、図4の(b)のように、第1の撮像手段13fと第2の撮像手段13gとを個別の撮像面として設けてもよい。
図11は、関心領域Rの透過画像撮影の終了後、表示部14に表示される第2のX線画像IM2であるCT画像の例である。ここで、X、Y、Z方向は、互いに直交する方向とされる。また、Z方向は、旋回軸Aと一致するように設定してもよいが、それに限られず、任意の角度を設定できる。また、X面、Y面、Z面は、それぞれ、X、Y、Z方向に直交する平面であり、それらの面は、関心領域Rの断面として適用され、その各断面における断層面画像が表示されている。関心領域Rは、この直交する断面に対して任意に回転、移動させることが可能であり、それに応じて対応した断層面画像が、本撮影ステップで撮影された透過画像から再構成されるようになっている。
図11Aは、図11の断層面画像の表示を更に具体的に説明する図で、この図の関心領域Rは、図11の関心領域Rとは別の歯列の部分である。また、この図において、IX、IY、IZは、それぞれ、表示部14の画面14sに表示された関心領域Rの、前述のX面における断層面画像、Y面における断層面画像、Z面における断層面画像である。
cx、cy、czは、X断層面画像IX、Y断層面画像IY、Z断層面画像IZが切り出されるX面、Y面、Z面の、それぞれの他の面への投影線であるXカーソル、Yカーソル、Zカーソルである。
Xカーソルcxは、Y断層面画像IYとZ断層面画像IZに、X断層面画像IXが切り出されるX面の投影線として表示される。Yカーソルcyは、X断層面画像IXとZ断層面画像IZに、Y断層面画像IYが切り出されるY面の投影線として表示される。Zカーソルczは、X断層面画像IXとY断層面画像IYに、Z断層面画像IZが切り出されるZ面の投影線として表示される。
すなわち、Y断層面画像IYとZ断層面画像IZに表示されたXカーソルcxはX面の位置、X断層面画像IXとZ断層面画像IZに表示されたYカーソルcyはY面の位置、X断層面画像IXとY断層面画像IYに表示されたZカーソルczはZ面の位置を示している。
Pは、関心領域Rにおける任意の点であり、ここでは、この点Pに注目して、この点Pを含む各断層面画像が表示されている。
これらの図では、任意の1点Pを含むZ断層面画像IZ、Y断層面画像IY、X断層面画像IXが、通常の平面図、正面図、側面図のように配列表示されており、任意の1点を上面、正面、側面から見た断層面画像が対比されて表示されるので、3つのX断層面画像、Y断層面画像、Z断層面画像の相対的な関係が、直感的に解り易い。
図11B(a)は本発明における断層面画像の切り出しを示す概念図、(b)はその切り出しによる表示の概念図である。図11B(a)の関心領域Rを構成する各点について3次元CTデータが得られていれば、この関心領域Rについて、図のようにxyz座標系を設定すると、このxyz座標系において、ある点(x,y,z)のボクセル値V(x,y,z)が決まる。
ここで、X方向に対して垂直な面、つまり、X面についてのX断層面画像の切り出しは、x座標(x=xm)を決めて、このx座標を持つX断層面上のボクセル値V(xm,y,z)を2次元平面状に並べれば良い。こうして得られるX断層面画像をX(y,z)xmと記述する。
この方法で、X(y,z)x0、X(y,z)x1、・・・、X(y,z)xm、X(y,z)xm+1、X(y,z)xm+2、X(y,z)xm+3、・・・、X(y,z)xnを得る。X(y,z)x0・・・X(y,z)xnは予め全て得ておいてもよいし、x座標を決定する都度得るようにしてもよい。
同様にして、Y方向に対して垂直な面、つまり、Y面についてY断層面画像、Y(z,x)y0、Y(z,x)y1、・・・、Y(z,x)ym、Y(z,x)ym+1、Y(z,x)ym+2、Y(z,x)ym+3、・・・、Y(z,x)ynを得、Z方向に対して垂直な面、つまり、Z面についてZ断層面画像、Z(x,y)z0、Z(x,y)z1、・・・、Z(x,y)zm、Z(x,y)zm+1、Z(x,y)zm+2、Z(x,y)zm+3、・・・、Z(x,y)znを得る。
こうして、関心領域R内の任意の一点Pを含むX、Y、Z断層面画像を切り出し、Xカーソルcx、Yカーソルcy、Zカーソルczと共に表示した画面の概要が図11B(b)であり、その具体的な例が、図11Aに示したものである。
例えば、図11AのY断層面画像IYにおいてZカーソルczをマウス等で操作して、プレスして保持し、下の方向へ移動させると、これに伴い、X断層面画像IXのZカーソルczも同期して移動し、このZカーソルczで規定されるZ面で切り出したZ断層面画像IZが表示されるように画像処理する。このようなカーソル移動をさせながらの表示は、Y断層面画像IY、X断層面画像IXについても可能である。
また、配列表示された画面上で、X断層面の位置を示すXカーソルcx、Y断層面の位置を示すYカーソルcy、Z断層面の位置を示すZカーソルczは、所望のいずれかをマウスなどを用いて平行移動させることができ、その移動にあわせて、移動されたカーソルに対応した断層面画像が表示されるので、術者が欲しい最適の断層面画像を見つけ出すのが容易である。
第2のX線画像IM2は表示部14に表示してもよいし、装置本体側表示部16dsに表示してもよい。無論、表示部14と装置本体側表示部16dsの双方に表示してもよい。
また、上記のようにカーソルを一つずつ移動させる代わりに、Z断層面画像IZ、Y断層面画像IY、X断層面画像IXのそれぞれで直交していXカーソルcxとYカーソルcy、ZカーソルczとXカーソルcx、YカーソルcyとZカーソルczの交点(図中の符号Pに相当する。)を保持して移動させることによって、これらの2つのカーソを同時に移動させ、その2つのカーソルに対応した二つの断層面について予め切り出された断層面画像をそれぞれ表示するようにしてもよい。この場合、同時2つの断層面画像の表示が変化するので、使い勝手がよくなる。
パノラマ画像上での関心領域Rの設定は、一回につき一箇所のみに限定する必要はなく、複数箇所の指定をしても構わない。この場合、指定した複数箇所のCT撮影を、所望の順に連続的に実行していくように構成することができる。また、関心領域Rの設定と、CT撮影を連動させても構わない。すなわち、前記のように、パノラマ画像が表示されたCRT14d上で関心領域Rが指定されたときに、自動的にCTモードが選択されるようにした構成では、CTモードになるのみでなく、CT撮影の実行まで進むようにしてもよい。
また、関心領域Rの指定は、必ずしも、パノラマ撮影が完了したあと、被写体oである患者を被写体保持手段11cに固定した状態で行う必要はない。つまり、被写体保持状態の再現性さえ保たれれば、一旦患者を被写体保持手段から解放し、別の機会に再度患者を被写体保持手段11cにパノラマ撮影完了時と同じ位置で固定して、ビデオメモリ14aに記録しておいたパノラマ画像を呼び出して、前述のように関心領域Rを指定するようにしてもよい。この場合、患者ごとに識別情報を設定し、被写体保持状態をポテンショメータ等の検知手段で検知して、前記識別情報と関連付けて別に設けた記憶部に記憶しておき、患者の再度の固定時には前記前記識別情報と関連付けられた被写体保持状態を呼び出せるようにしてもよいし、自動的に被写体保持手段11cが被写体保持状態を再現するように駆動されてもよい。
図12は、装置Mの別構成を具体的に説明する外観図である。この構成によれば、装置Mは、図2の装置Mと同様、X線撮影装置本体M1、電子計算機16Aからなり、X線撮影装置本体M1はX線発生部12と、X線検出部13とを移動させる移動手段11とを備える。
図12の装置Mの本体M1(X線撮影装置本体M1)は、X線を遮蔽する材料からなるパネル100aより構成される直方体の防X線室100に囲繞されている。パネル100aの一部には、同じくX線を遮蔽する材料からなる入出用の扉100bが設けられている。パネル100aは、周囲四方と床と天井の6枚で構成しても、周囲四方と天井の5枚で構成しても、周囲四方のみで構成してもよいが、周囲四方と床と天井の6枚の構成により、X線撮影装置本体M1を完全に囲繞した方が、より効率的にX線を遮蔽できる。しかし、必ずしも周囲を四角形に構成する必要はなく、3以上の任意の多角形で構成しても、全体を円筒形、球体など任意の形状のパネル100aで構成してもよい。なお、防X線室100は、図12に示す装置Mのみならず、図1、図2に示す装置Mにも用いることができることはいうまでもない。
装置Mは、操作入力を受け付ける操作パネル16hのほか、オペレータが手に握って操作するデッドマン型エミッションスイッチ(X線撮影開始スイッチ)151を備えたコントロールボックス150を備え、コントロールボックス150は防X線室100の外側に、図示の例では防X線室100のX線撮影装置本体M1周囲四方外側の壁面に設けられる。
コントロールボックス150は、防X線室100のパネル100aの概ね術者の目の高さに設けると操作が容易であるが、その位置としては、防X線室100の外であればよく、必ずしも壁面に接して設ける必要はない。例えば、防X線室100の外側の、パネル100aから離隔した場所に専用のスタンドまたはポールを立て、その先端に設けるようにしてもよい。なお、術者は、防X線室100の外からエミッションスイッチ151の操作によりX線照射を行う。
また、防X線室100を設置せず、X線撮影装置本体M1から離れた場所にコントロールボックス150を設けるようにしてもよい。例えば、コントロールボックス150を、X線撮影装置本体M1の設置していない部屋等に設ければ、術者に対して、X線撮影装置本体M1の発生するX線による悪影響を与える虞場がなく、より安全である。
そして、コントロールボックス150は、他に図12Aで示すようにX線照射状態を点灯表示するランプ154、支持手段11aが撮影開始位置に設定されていることを点灯表示するランプ155、電源スイッチがオンされていることを点灯表示するランプ156を備えている。
移動手段11は、X線発生部12とX線検出部13とが固定された支持手段11aと、この支持手段11aを旋回軸Aにより旋回可能に下垂保持する収容フレーム11fと、この収容フレーム11fに対する固定部である本体フレーム11bとからなる。なお、旋回軸Aには中空軸を用いており、その内部にX線発生部12やX線検出部13へのケーブルを配設して保護し、装置の美観も向上させている。収容フレーム11fは、本体フレーム11bに昇降案内され、支持手段11aを旋回軸Aの軸方向と平行な方向に昇降移動させる。
後述するが、図13、14(a)に示すように、収容フレーム11fは、旋回軸Aを固着させた軸テーブル11gを、Y軸制御モータ11h、X軸制御モータ11iによる2次元制御で、旋回軸Aと交差する平面上で2次元制御により位置制御するX−Yテーブル11eが上部に内蔵され、表示灯や操作スイッチからなる操作パネル16hが図12に示すように側面に設けられ、図1で説明した構成の制御手段16が内部に格納されている。また、本体フレーム11bには、被写体oを位置付けする被写体保持手段11cが取り付けられている。
本体フレーム11bは収容フレーム11fを介して支持手段11aを床または地面に設置するための設置手段11nとして機能し、装置Mの本体(X線撮影装置本体)M1は、少なくともX線検出部13、X線発生部12、支持手段11a、設置手段11n、被写体保持手段11cから構成される。
図2の装置Mと同様、X線撮影装置本体M1の操作パネル16hに装置本体側表示部16dsを設けて、X線画像を含めて必要情報の表示をするようにしてもよいし、表示部14と装置本体側表示部16ds双方に表示するようにしてもよい。
装置本体側表示部16dsは、装置本体側であればどこに設けてもよいが、例えば支持手段11a、収容フレーム11fまたは固定部11bの少なくともいずれかに設けると、装置本体側表示部16ds自体の占める空間が節約できて便宜である。
関心領域Rを指定する操作部15も、装置本体側表示部16dsと同様、装置本体側に設けると操作が容易である。操作部15は装置本体側であればどこに設けてもよいが、装置本体側表示部16dsの近傍が操作しやすく、特に好都合である。
装置本体側表示部16dsが支持手段11a、収容フレーム11fまたは固定部11bの少なくともいずれかに設けられる場合、操作部15を同じ箇所に設けると、特に便宜である。操作部15を設ける場所は任意であるが、後述のようにコントロールボックス150に設けることもできる。
図12、図12Aの例においては、コントロールボックス150にはコントロールボックス側表示部16ds´も設けられる。コントロールボックス側表示部16ds´は、装置本体側表示部16dsと同様、表示部14の一例であり、関心領域Rを指定するために、パノラマ画像等の第1のX線画像IM1を表示できる。X線画像のみならず、別の必要情報の表示をしてもよい。無論、CT画像等の第2のX線画像2を表示してもよい。
術者は、コントロールボックス側表示部16ds´に表示された第1のX線画像IM1の上で、例えばタッチペン152またはメンブレン式のマウス153の操作でカーソルやポインタを移動させて、関心領域Rを指定する。この場合、タッチペン152またはメンブレン式のマウス153は操作部15を構成する。
メンブレン式のマウス153は、ノート型パーソナルコンピュータで周知の構成であり、メンブレン式の指操作部154、左クリックボタン155、右クリックボタン156からなり、指操作部154の表面を指で触れてなぞるように移動させるとコントロールボックス側表示部16ds´においてカーソルやポインタが移動する。左クリックボタン155、右クリックボタン156はコントロールボックス側表示部16ds´に表示されたパノラマ画像等の第1のX線画像IM1上でカーソルやポインタが所望の箇所に移動したときにその箇所を関心領域Rの領域として指定する際の決定指令その他の指令に用いることができる。
タッチペン152またはメンブレン式のマウス153は操作部15を構成する例の一つであるが、これらに限定されない。例えば、図12Aに示すように、コントロールボックス側表示部16ds´上で、カーソルやポインタを上下左右に移動させるための上指定キー(上に移動させるキー)157、下指定キー(下に移動させるキー)158、左指定キー(左に移動させるキー)159、右指定キー(右に移動させるキー)160を十文字に配置してもよい。また、図示しないが、テンキーを設けてエリアをコード入力できるようにしてもよい。
関心領域Rの領域指定は、マウス153を用いずにエミッションスイッチ151のONで行ってもよく、この場合、エミッションスイッチ151も操作部15を構成する。
コントロールボックス150にCTモードとパノラマ撮影モードを切り換える図示しないスイッチを設けてもよいが、関心領域Rの設定と、CT撮影を連動させても構わない。すなわち、関心領域Rが指定されたときに、自動的にCTモードが選択されるように構成してもよい。
被写体保持手段11cの中央には、患者が顎を置くチンレストが設けており、このチンレストは、上下昇降あるいは傾動可能とされ患者の体形に合わせてその位置付けがなされる。チンレストをこのように可動に構成することで、例えば上顎、下顎などの撮影部位ごとに照射線の水平面に対する傾きを調節することも、上方に位置する顎関節と、下方に位置する下顎先端とのように、上下に離れた部位をうまく照射野の中心に位置するように調節することもできる。
ここで、移動手段11と収容フレーム11fの構成を更に説明する。支持手段11aは、患者の体格に合わせて、収容フレーム11fと共に、本体フレーム11bに対して移動する。従って、支持手段11aに一体的に設けられたX線発生部12とX線検出部13とは、収容フレーム11fと共に、被写体保持手段11cに対して移動することになる。
しかし、収容フレーム11fと、支持手段11aとを分離した構成にして、それぞれが本体フレーム11bに対して独立に移動するようにしてもよい。また、収容フレーム11fないし被写体保持手段11cに対し、X線発生部12やX線検出部13が移動するようにしてもよい。本出願人の出願に係る上記特許文献3は、そのように、収容フレーム11fと支持手段11aとを分離して構成した例や、収容フレーム11fないし被写体保持手段11cに対し、X線発生部12が移動するように構成した例を開示している。
上記特許文献3においては、上述の収容フレーム11fに相当する部分を「患者フレーム」、支持手段11aに相当する部分を「昇降本体」と称しており、その目的は、撮影可能な領域を広げることであると共に、例えば撮影部位ごとに照射線の水平面に対する傾きを調節することであり、上方に位置する顎関節と、下方に位置する下顎先端とのように、上下に離れた部位をうまく照射野の中心に位置するように調節することである。
被写体保持手段11cを上下昇降あるいは傾動可能にする構成と、収容フレーム11fと支持手段11aとを分離した構成と、収容フレーム11fないし被写体保持手段11cに対し、X線発生部12やX線検出部13が移動するようにした構成とを組み合わせて、より微妙な調節ができるようにしてもよい。
X線発生部12は、図2に示した基本構成に基づくもので、固定型アノードを有するX線発生器12a、X線管12aから照射されたX線ビームBを、第1の撮像手段13fに対応したX線細隙ビームNBとして規制するスリット12d#1と、第2の撮像手段13gに対応したCT撮影用のX線広域ビームすなわちX線コーンビームCBとして規制する矩形なスリット12d#2、12d#3とを形成したスリット板12c等で構成されており、X線細隙ビームNB、X線広域ビーム(X線コーンビームCB)のいずれかを選択的に照射することができ、具体的構造としては図3、図3A(a)に示すものを適宜採用可能である。
図13は、支持手段11aを下垂保持している収容フレーム11fの上部の内部構造を説明する上方から見た水平断面図である。この図は、X−Yテーブル11eの構造を示しており、収容フレーム11fに固定されたY軸制御モータ11hが連結した回転シャフトを回転させることにより、Y軸テーブル11jをY軸と平行に移動させ、このY軸テーブル11jに固定されたX軸制御モータ11iが連結した回転シャフトを回転させることにより、X軸テーブル11gをX軸と平行に移動させる構造になっている。
図14は、収容フレーム11fの上部と支持手段11aとの連結部分を側方から見た縦断面図である。支持手段11aは、ボールベアリング11kにより回転自在に旋回軸Aと連結されており、X軸テーブル11gに固定された旋回制御モータ11mによる駆動で、支持手段11aが旋回軸Aに対して回転する構造になっている。
旋回制御モータ11mは回転手段11dの具体例である。
その構造をより具体的に説明すると、収容フレーム11fは、ハウジング11f1とハウジングが固定される梁11f2からなり、梁11f2にはY軸制御モータ11hが固定され、このY軸制御モータ11hにはねじ軸であるY駆動軸11hyが設けられ、Y駆動軸11hyが回転すると、Y軸テーブル11jに固定された内部にねじ切りした被駆動部材11jyが図示のy方向に変位するようにしている。そして、Y軸テーブル11jには車輪11y2が設けられ、梁11f2には車輪11y2を案内するレール11y1が設けられているので、Y軸制御モータ11hを回転駆動すれば、Y軸テーブル11jはレール11y1に沿って滑らかに移動する。
一方、Y軸テーブル11jにはX軸制御モータ11iが固定され、このX軸制御モータ11iにはねじ軸であるX駆動軸11ixが設けられ、X駆動軸11ixが回転すると、X軸テーブル11gに固定された内部にねじ切りした被駆動部材11gxが図示のx方向に変位するようにしている。そして、X軸テーブル11gには車輪11x2が設けられ、Y軸テーブル11jには車輪11x2を案内するレール11x1が設けられているので、X軸制御モータ11iを回転駆動すれば、X軸テーブル11gはレール11x1に沿って滑らかに移動する。
図14の例では、X軸テーブル11gには回転手段である旋回制御モータ11mが固定されており、ローラにより、回転軸Aに回転力を伝達するようにしている。ここで、Xテーブルと回転軸Aとの間にはボールベアリング11kが介在しているので、旋回制御モータ11mの回転力は、非常に少ない摩擦抵抗で回転軸Aに伝達される。
図14Aは、旋回制御モータ11mを、図14の実施例とは異なって支持手段11a内部に設け、プーリとベルトにより旋回軸Aに回転力を伝達する実施例であり、その他の構成は図14と同じである。
上記のX−Yテーブル11eについては、本出願人の出願に係る特開平11−104123公報、特開平11−104124公報、特開平11−104125公報記載の技術を適宜応用しうる。