JP2007143575A - 転輪付き鞄 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ケースを傾けて引っ張りながら運搬する型式の転輪付き鞄を、身体の横側部に位置させ、前後左右の占有面積を少なくし、軽快に曳行できるようにするとともに、鞄の横倒れに対する抑止機能と、ケースの開閉操作の行い易さとを、ケース本体に形成する開口と転輪との位置設定によって向上できるようにする。
【解決手段】 長径方向が前後方向に沿う矩形箱状のケース本体1を構成する壁面のうち、前傾姿勢の上部側壁面c3と、その前後に連なる両壁面c2,c4と、一つの横側面1Aとにわたる仮想切断面に沿って開口を形成し、その開口を覆う範囲の壁面部分を開閉自在な蓋体12bによって構成し、開口周辺のスライドファスナー13が付設される部位を、仮想切断面が斜めに交差する壁面よりも、その仮想切断面に対して直角に近づく面部分によって構成してある。
【選択図】 図1

Description

本発明は、荷重を支持する転輪と曳行用の取っ手とを備えた旅行鞄やビジネス用の鞄など、箱状のケースを、主として傾けて引きながら運搬するための転輪付き鞄の改良に関する。
一般に転動用の転輪を備えた転輪付き鞄としては、大別して、4個の転輪を接地させた自立姿勢で箱状のケースを移動させる型式の比較的大型のものと、2個の転輪を接地させた前傾姿勢を保って箱状のケースを移動させる型式の比較的小型のものとがある。本発明は、主として、前傾させた姿勢を保って搬送する後者の型式の転輪付き鞄の改良に関する技術である。以下、本明細書では、使用者が引きまたは押し操作によってケースを移動させる運搬動作を「曳行」と称する。
この種の転輪付き鞄としては、下記[1]〜[4]に記載のものが従来より知られている。
[1]縦辺と横辺とで構成される方形の幅広面を進行方向の前後両側に備えるとともに、前記縦辺と横辺に対して直交する方向の奥行き辺に相当するところの、前記前後両側の幅広の面同士の対向間隔幅によって構成される幅狭の周辺枠面が、前後の幅広面の四周に位置して前後の幅広面の間を繋ぎ、全体が矩形箱状に構成されているケース本体では、その厚みが薄い方向、すなわち最も辺の長さが短い奥行き辺を前後方向に沿わせ、縦横の辺の長さが長い幅広の面を前後に位置させた姿勢で曳行するのが一般的である。
この構造のケースでは、曳行用の取っ手は、進行方向の前面側に位置する幅広面に沿って上下方向に設けられている。また、転輪も、矩形箱状のケース本体の辺長さの長い方向である前側の幅広面を曳行方向に向けて曳行し易いように、その幅広面に沿う方向の軸芯周りで転動するように配設されていた(例えば、特許文献1参照)。
[2]ただし、曳行用の取っ手や転輪が、必ずしも矩形箱状のケース本体の幅広面を曳行方向での前後に位置させて曳行するように設けられているものばかりとは限らず、ごく少数ではあるが矩形箱状のケース本体の幅広面が横に向く状態で曳行されるように、矩形箱状のケース本体の辺長さの短い奥行き辺に沿う方向の軸芯周りで転動する転輪が配置され、取っ手も進行方向の前面側に位置する幅狭の周辺枠面に沿って上下方向に設けられたものもある(例えば図11参照)。
[3] また、矩形箱状の転輪付き鞄において、矩形箱状のケース本体の幅広面が横に向く状態で曳行されるように、矩形箱状のケース本体の辺長さの短い奥行き辺に沿う方向の軸芯周りで転動するように転輪が配置されているとともに、曳行用の取っ手をケース本体の周辺枠面のうちで進行方向の後面側に沿わせ、転輪が設けられているケース本体の角部に対する対角箇所から前方上方に延出し、曳行姿勢におけるケース本体の水平方向断面での長径方向を前後方向に向けて曳行するようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
[4] さらに、矩形箱状のケース本体に設ける開口部を閉塞する蓋体を開閉する構造としては、前記特許文献1に示されるように幅広面で構成される一側壁の全面を揺動開閉できるようにしたもの、あるいは、特許文献3に示されるように、ケース本体の上部壁と後部壁とのうちで、左右端縁近くの一部分だけを残し、その他の広範囲にわたる部分を開閉自在に構成したものとがある(特許文献1および3参照)。
特開平9−135717号公報(段落番号0027−0029、図1、図2) 特開平11−276226号公報(段落番号0015−0017、図1) 特表平9−510136号公報(明細書の第15頁第11行〜第20行、図14)
〔前記[1]に示した従来技術について〕
前記[1]に記載したように、矩形箱状のケースを、縦辺と横辺とで構成される方形の幅広面が進行方向の前後両側に位置し、最も辺の長さが短い奥行き辺が前後方向に沿う姿勢で、すなわち最も厚みの薄い方向が前後方向となる状態で曳行するように、転輪及び取っ手の位置を配設した構造の一般的な転輪付き鞄では、次のような問題がある。
すなわち、このような転輪付き鞄を使用する際には、使用者が身体の後側に手を回して取っ手を引っ張りながら曳行しているのであるが、この構造のものでは、矩形箱状のケースの辺長さの長い方向である広幅の面が前に向き左右方向での横幅が広くなり、これが曳行する使用者から後方に離れて位置する。このため、使用者と車輪付き鞄とが占める面積は、前後方向でも左右方向でも広くなって、人混みの中では他の通行者や他物と衝突することがあり、通行の妨げとなり易い。
このような転輪付き鞄を使用する際の使用者の歩行形態を見ると、図12及び図13に示すようになる。
この図12においては、便宜上、同一の図中に、前記[1]に記載した従来構造の転輪付き鞄と、後述する本発明の転輪付き鞄とを、曳行する人物とともに記載している。つまり、人物B1〜B3の曳行する鞄が前記[1]に記載したところの、縦横の辺の長さが長い幅広の面を前後に位置させた姿勢で曳行する構造の転輪付き鞄であり、人物Aの曳行する転輪付き鞄が後述する本発明の転輪付き鞄である。同図に記載したケース本体1のうち、斜線部分が前記[1]に記載した構造の転輪付き鞄のケース本体を表し、その重心の位置も、符号Gが本発明のケース本体1における重心位置を示し、符号G’が前記[1]に記載した構造の転輪付き鞄の重心位置を示している。
図12において実線で描かれている人物B1の動作は、ケース本体1の前向きの面に沿う取っ手3’を把持した状態で、前方の脚の踵が着地する直前、もしくは着地した時点で、かつ後方の脚の踵部が地面から離れる直前、もしくは少し浮き上がった状態を示すものであり、身体のほぼ中心に相当する点BG(身体重心)が前後の脚の着地点のほぼ中間点の直上にある。
この状態では、実線で描かれた人物B1の後方の脚の踵は、実線で描かれた取っ手3’の延長線と同一線上のケース本体1の前縁よりも離れた前方に位置しているが、点線で描かれた人物B2のように身体重心BGがさらに前方へ移動すると、前方の脚の踵は着地し、後方の脚の踵がより浮き上がり、太い点線で描かれた取っ手3’の延長線と同一線上のケース本体1の前縁(前縁よりも後方側は図示せず)が踵にきわめて近接した状態となる。
次に、二点鎖線で描かれた人物B3のように身体重心BGがさらに前方へ移動すると、前方の脚はほぼ全面的につま先側まで着地し、後方の脚の踵がさらに浮き上がり、太い二点鎖線で描かれた取っ手3’で引かれたケース本体1の前縁(前縁よりも後方側は図示せず)が踵よりも前方に位置する状態、つまり、踵に衝突した状態となる。このように、少し大きな歩幅で歩くと、取っ手3’を把持する側と同じ側の脚が後方に位置する状態で後方の踵が曳行するケース本体1に接触し、大きな歩幅では歩きにくい傾向がある。
図13(II)では、身体の右側に転輪付き鞄を位置させて、右手で取っ手3を把持して歩行している状態を上方からみた状態を示している。前記図12に実線で描かれた人物B1が曳行する転輪付き鞄のケース本体1の位置が図13(II)では二点鎖線で示されており、図12の人物Aが曳行する転輪付き鞄のケース本体1を表す実線のケース本体1とは、図中の前後距離ΔLだけ長くなって曳行者からは後方へ離れた状態となっている。
この状態からケース本体1がさらに前方へ移動すると、図12の人物B3が曳行するケース本体1のように曳行者の右足の踵に衝突する状態となる。
これを避けるには、転輪2の接地点Oから握り部30’までの距離Lをもっと長くすれば良いが、そうすれば前述の曳行者と車輪付き鞄とが占める面積がさらに増大することになる。そして、転輪2の接地点Oから握り部30’までの距離Lをさらに長くするために、テレスコープ構造などで伸縮自在に構成される取っ手3’は、そのテレスコープ段数が増すなどの構造の複雑化や重量増加を招く不具合がある。
尚、図12に描かれた人物B1〜B3は、取っ手3’を持つ側の手の肩部分が、後方側に少し捻られているが、これは取っ手3’を持つ側の手を身体の後方側へ移行させる際に自然に生じる動作であり、図13(II)では右手を後方へ移行させた場合の肩部分を二点鎖線で示している。
〔前記[2]で示した従来技術について〕
前記[2]に記載したように、矩形箱状のケース本体1の辺長さの長い方向である幅広面が横に向く状態で曳行されるように、転輪2が奥行き辺に沿う方向の軸芯周りで転動し、取っ手も進行方向の前面側に位置する幅狭の周辺枠面に沿って設けられたものでは、次のような問題がある。
つまり、この構造では、図11に示すように、曳行姿勢で前傾した取っ手3の後方上側に、幅狭の周辺枠面の前面側を沿わせてケース本体1を乗せた状態となり、ケース本体1の左右横幅方向での寸法は比較的小さくなるので、平面的にみれば取っ手3を曳行者の横側方に位置させた状態で曳行しても左右方向の幅寸法が大きくなることを避けられる点では有利である。
しかしながら、この構造のものでは、図14に単純化して示すように、左右方向で幅狭のケース本体1が前傾姿勢となることで、見かけ上のケースの上下高さが高くなり、左右幅に対する上下高さの比がより大きくなってケース本体1の重心Gの位置は、左右方向でもかなり高い不安定な状態になっている。
図14では、左右転輪の接地点間隔が20cm、前傾姿勢での最上位置が60cmのケース本体1の前後方向視形状を単純化して矩形形状とし、実線で示す水平姿勢と、二点鎖線で示す右側への傾倒姿勢とを示している。
同図(I)では、左側の転輪2Lが高さ5cmの凸部に乗り上げた状態を示しており、この場合、水平姿勢での重心Gが傾倒姿勢での重心G”に移行する間で、ケース本体1は右側の転輪2Rの接地点Oを中心として回転し、重心Gは前記接地点Oを中心とした円弧軌跡上を移行して重心G”に達する。この状態では、重心G”は右側の転輪2Rの接地点Oの鉛直線よりも左側に位置しているので、この状態のままであれば転倒は免れるが、現実には、ケース本体1は前進移動中であり、重心の移動が、ある程度の動慣性を有して行われる状態であり、かつ、重心G”が図示の状態からさらに傾倒方向へ移動する際の軌跡はケース本体1を持ち上げる方向の移動成分をほとんど有していないので、抵抗なく転倒し易い。
同図(II)では、上記(I)と同様なケース本体1において、右側の転輪2Rが深さ5cmの凹部に落ち込んだ状態を示している。この場合、水平姿勢での重心Gが傾倒姿勢での重心G”に移行するまでの間は、ケース本体1は左側の転輪2Lの接地点Oを中心として回転し、重心Gは前記接地点Oを中心とした円弧軌跡上を移行して重心G”に達する。この状態では、重心G”は凹部に落ち込んだ右側の転輪2Rの接地点Oの鉛直線yよりも左側に位置しているので、この状態のままであれば転倒は免れるが、現実には、ケース本体1は慣性をもって前進移動中であり、しかも凹部に落下したことで、図14(I)に図示の場合よりもかなり大きな横転方向への動慣性を有して傾倒するものであり、かつ、図示の重心G”がさらに傾倒方向へ移動する際の軌跡はケース本体1を持ち上げる方向の移動成分をほとんど有していないので、抵抗なく転倒し易い。
また、前記[2]に示す構造では、上述のように、ケース本体1の左右幅に対する上下高さの比が大きいことによる左右方向への転倒し易さの外に、次の点でもケース本体1の左右方向への転倒が生じ易くなる要因がある。
つまり、この構造では、図11に示すように、矩形箱状のケース本体1の重心Gが転輪2の接地点Oの直上に位置する基準曳行姿勢では、転輪2の接地点Oと取っ手3の握り部30とを結ぶ線分y1に対して、ケース本体1部分の重心Gがかなり離れて位置し、しかも、重心Gの高さと、その重心Gから前記線分y1への垂線と線分y1との交点Gpとの間にはかなりの落差L4がある。
このため、曳行に伴って重心Gが少しでも左右に揺れると、前記線分y1からの離間距離L3にケース内荷物を含めての重量と前記落差L4による位置エネルギーを乗じた回転モーメントmGが線分y1周りに作用し、路面上の僅かな凹凸部分によっても、前記線分y1周りにケース本体1を回転させようとする作用力が生じて左右方向へ転倒し易くなる。
このような回転モーメントmGによる転倒方向への作用力を少なくするには、ケース本体1の重心Gが前記線分y1から離れる方向の距離L3を極力短くして、重心Gを線分y1に近づけるようにすればよいが、図12に斜線で示したように、ケース本体1の前後方向寸法を短くすることによって重心G’を線分y1(図12では取っ手3’に沿う線分)に近づけた場合には、ケース内容量が大きく縮減され、ケース本来の物品収納の機能が損なわれてしまうので好ましくない。
また、曳行中に上記の回転モーメントmGによるケース本体1の左右方向の揺れが生じようとした場合、これを阻止するための抵抗作用は、重心Gからかなり遠い位置である取っ手3の握り部30でしか与えることができない。そして、この取っ手3の長さである転輪2の接地点Oから握り部30までの距離は、接地点Oから、所定高さの握り位置に届く長さを必要とし、前記特許文献1に記載した構造のものと同様に長尺のものであるため、握り部30から重心Gまでの水平距離も比較的大きくなる。したがって、握り部30を強く把持することによる抵抗を与えるだけでは、回転モーメントmGが作用して転倒しかけているケース本体1の左右方向への転倒を阻止することはかなり困難である。
尚、図11に二点鎖線で記載したように、取っ手3をかなり起立させた急角度で曳行するようにすれば、重心Gから線分y1への距離L3は縮めることはできないが、重心Gから線分y1への垂線が水平に近くなって前記落差L4を小さくすることができる。しかしながら、このような曳行姿勢では、取っ手3でケース本体1の後方側への転倒を防ぐように押さえる操作が必要となり、前方へ引くという操作が極めて困難で、実用的な曳行操作とは云えない。
〔前記[3]に示した従来技術について〕
前記[3]に記載したように、矩形箱状の転輪付き鞄において、曳行姿勢にあるケース本体1の水平方向断面での長径方向を前後方向に向け、曳行用の取っ手3をケース本体の周辺枠面のうちで進行方向の後面側に沿わせ、転輪2が設けられているケース本体1の角部に対する対角箇所から前方上方に延出し、前後方向に沿う取っ手3によって曳行できるようにした構造のもの(以下、便宜上、「上引き式」の取っ手を備えたものと略称する)も特許文献2で提案されている。
この構造によれば、前記[2]で示した従来構造のものに比べて、ケース本体1の最も長い対角方向の長さを、転輪の接地点Oから取っ手3までの長さの一部に利用できるので、その分、取っ手3(特許文献2ではハンドル部材13)の長さを短縮できる利点がある。また、このことに加え、転輪2(特許文献2では転輪15)の接地点Oと取っ手3の握り部30(特許文献2ではハンドル33)とを結ぶ線分に対して、ケース重心Gが、前記[2]に記載した構造のものに比べればかなり近接して位置することになり、前述のような左右方向への回転が生じた場合に、回転モーメントmGの値は割合に小さくなるので、この回転モーメントmGの影響によって転倒する可能性はある程度少なくなる点で優れている。
しかしながら、このような上引き式の取っ手3を備えた構造のものでは、主に、次の[3・1]〜[3・2]に記載の点で重大な問題がある。
[3・1]
前記特許文献2に記載の構造のものとは異なるが、図16に基づき、上引き式の取っ手3を備えた構造について、接地点Oを通る鉛直線y上にケース本体1の重心Gが位置している姿勢を基準曳行姿勢(太い実線で表された状態)として説明する。
この基準曳行姿勢では、理論上はケース本体1の重量が握り部30に作用していない状態でケースの曳行を行うことが可能となる。ただし、通常の歩行状態では、このように接地点Oの直上に重心Gが存在する状態を厳密に維持したままでケースを曳行し続けることは不可能であり、図12及び図17(II)に示すように歩行に伴って握り部30の位置が上下に運動をして、取っ手3の走行路面に対する傾斜角度がかなり大きく変動する。
このときの取っ手3の傾斜角度が、前記の基準曳行姿勢から少しでも後傾がわに倒れると、図16に示すように重心Gが鉛直線yから後方側へ外れるため、重心G箇所に作用する下向きの荷重Wによって、ケース本体1を後方側へ転倒させようとする後方への分力F1(F2)が発生する。この後方への分力F1(F2)によるケース本体1の後傾を、曳行操作者が持つ取っ手3の後方への動きを受け止めることで阻止しようとすると、その受け止め反力で転輪2を前方へ押し出す作用が発生する。そして、転輪2が前方側へ動いてしまうと、ますます重心Gが鉛直線yから後方側へ外れてケース本体1はさらに後傾方向に大きく傾き出す。
図16中における符号yr1は、転輪2の接地点Oと重心Gとを結ぶ線分が、転輪2の接地点Oを通る鉛直線yから、後方へ5度傾倒した状態の線分を示し、yr2は後方へ10度傾倒した状態の線分を示している。前記荷重Wの分力F1は前記後方へ5度傾倒した状態でのものであり、分力F2は、後方へ10度傾倒した状態でのものである。
このようなケース本体1の後ろ倒れ現象は、上述のような歩行に伴う握り手部分の上下動の他、走行路面が僅かでも前下がりの傾斜地であると特に発生し易く、これを握り部30の位置で止めるには、転輪2の前方への移動を止める方向の力を加えながら、重心Gを鉛直線y上に戻すようにケース本体1を前傾させる方向への力を加えなければならない。すなわち、前記鉛直線yよりも後方側に重心Gが存在する状態で、その重心Gを上方へ持ち上げる方向の作用力を与えるか、前記鉛直線yよりも前方側に前記重心Gでの重量と同程度以上の押さえ作用力を与える必要がある。
ところが、ケース本体1が既に基準曳行姿勢から少しでも後傾がわに倒れていると、取っ手3の握り部30に対して直交する後方上方への引き作用力ufを与えるだけでは、ケース本体1の後傾を助長する方向に力が加えられることにしかならず、逆に握り部30に対して直交する前方下方への押し作用力dfを加えると、下方への押し下げ力以上に前方への押し出し力が大きく働き、何れにしても転輪2の前方への動きを止めることができない。
すなわち、この構造のもので転輪2の前方への動きを止めるには、単なる押し引きではなく、図16に示すように、前記握り部30において、握り部30の上方側では図示f方向に力を加えながら、握り部30の下方において図示r方向への力を同時的に加えるというように、手首の捻りで上下逆向きの偶力が働くように力を加える必要がある。しかも、この力は、倍力とは逆に増幅作用で働かせることになるから、非常に大きな操作力が必要であり、一旦動き始めた転輪2の前方への動きを、このような手首の捻り力だけで止めることは、よほど腕力に優れた者でない限り不可能であり、実用的な構造のものとは云えない。
[3・2]
このため、前記上引き式の構造のものでは、特許文献2でも示されているように、歩行に伴って生じる握り手部分の上下運動等によって、ケース本体1の重心Gが前記転輪2の接地点Oを通る鉛直線yを越えて後方側へ移動することがないように、ケース本体1の前傾度合いを予め十分に大きく(特許文献2の図1では本発明でいう基準曳行姿勢よりも約20度前傾している)前倒れさせて曳行するように取っ手3の位置を設定していた。
すなわち、例えばケース本体1を図17(II)の太い実線で示す基準姿勢に位置させた状態から、曳行操作者の握り手の位置(握り部中心M)が、歩行にともなって約80cmの高さから70cmの間で上下位置変化すると仮定すると、ケース本体1の傾斜角度は、約53度から32.5度と20.5度も変化する。この上下変化には個人差があるので、上下変動がもっと少ない、たとえば80cm〜75cmと、僅か5cm程度しか変化しない場合を仮定してみても、約53度から40.5度と12.5度も変化する。
これは、前記特許文献1で示したようにケース本体1の前向きの面に沿わせて取っ手3を設けたもの(以下、便宜上「下引き式」の取っ手を備えたものと略称する)では、同様の条件(基準曳行姿勢)で同図(I)に示すように、握り部30の高さが10cm程度変化した場合のケース本体1の角度変化が、約53度から44度と、半分以下の9度程度でしかないということと比べて顕著な変化であり、このような上引き式の構造のものにおける大きな角度変化は、転輪2の接地点Oから握り部30までの距離が極端に短くなっていることに起因する。
その上、曳行操作者の体格によっても握り手の高さに個人差があることと、走行路面が傾斜したり、凹凸が存在したりすることによっても、ケース本体1の傾斜角度は不測に変動することがある。したがって、そのように傾斜角度が不測に変動しても、その重心Gが前記鉛直線yを越えて後方側へ移行しないだけの余裕を持たせてケース本体1の曳行時の角度を設定しなければならず、そのために上引き式のものにおいては、前述したように基準曳行姿勢から20度もの余分な前傾姿勢を確保しているのであるが、この20度程度の前傾というのは寧ろ最低条件に相当し、より確実性を増すにはさらに大きく傾斜させる必要がある。
前記特許文献2に記載されている構造と同様に基準曳行姿勢から大きく(約20度)前傾させたケースを単純化して図示すると、図16に太い二点鎖線を用いた仮想線で示すとおりである。
このようにケース本体1に十分な余裕を持たせた前傾姿勢で曳行することにより、上引き式の構造のものにおいても、重心Gが鉛直線yを越えて後傾するような不都合を避けられるようにすることも可能であるが、その反面、このように大きく前傾させた姿勢で曳行すると、取っ手3を把持する曳行操作者に対するケース重量の負担割合がかなり大きくなり、軽快な曳行が望めないという新たな問題がある。
つまり、図16に太い二点鎖線を用いた仮想線で図示した構造に基づいて説明すると、転輪2の接地点Oから重心G’までの水平距離Lwが11cm、接地点Oから取っ手3’の握り部30’までの水平距離Lmが50cmであるとし、重心G’の位置で下向きに作用する荷重wが10kgとした場合、取っ手3’の握り部30’に作用する重量は、約2kgとなり、かなりの重さを曳行操作者が負担する必要が生じる。前記重心G’に作用する重量が20kgなら、握り部30’に作用する重量も倍の約4kgにもなり、長時間の曳行には多大な労力を要することになる。このため、転輪付きの鞄の特質である鞄内容物の重量による影響があまり握り部に作用しないという大きな利点の一つが損なわれてしまう、という欠陥がある。
尚、図16に太い二点鎖線で図示した構造のものにおいて、接地点Oから前記取っ手の握り部30の中心まで距離Lは、同図中に太実線で記載したものよりも接地点Oから握り部30’までの長さを長くした状態で図示しているが、これは、基準曳行姿勢よりも20度程度の前傾姿勢とした場合には、握り部30’の高さが低くなりすぎるので、握り部30’の高さが所定高さに達する程度に取っ手3’の長さを延長しなければならないためである。
このように取っ手3’の長さを延長すると、折角、ケース本体1’を曳行操作者の身体の横側部に位置させても前後長さがかなり長くなってしまい、前後方向寸法を短縮するという目的を充分には達成することができない。その上、握り部30’と接地点Oとの距離が遠くなることで、握り部30’と接地点Oとを結ぶ線分y1’もかなり傾倒するので、ケース本体1’の重心G’から前記線分y1’への垂線との交点Gpと、前記重心G’との落差L4も前記線分y1’が傾倒して水平に近づくほど大きくなり、上引き式の構造でありながらケース本体1’が転倒する可能性を充分に低減できなくなってしまう。
したがって上引き式の構造のものでは、ケース本体1の進行方向の前向き面に沿って取っ手3を設けた下引き式の構造のものに比べては、接地点Oから握り部30までの距離を短くして曳行することができるという優れた点を有したものでありながら、その反面、諸々の条件から上述のような不具合点も抱えていて、実用上の扱い難さがあると考えられていた。
このように、特許文献2に示す構造のものでも、その公報図面の図1に示される上引き式の転輪付き鞄専用の構造としてではなく、その上引き式構造としての使用形態に加えて、同公報図面の図2に示されるように、取っ手をさらに引き出した4輪接地式に切り換えて使用するなど、曳行形態の多様化の一例として示されている。つまり、重量バランスを考えると長い距離の曳行には不向きなものでありながら、この転輪付き鞄を上引き式の使用形態で用いるのは、走行路面が登りや下りの坂道で、4輪接地状態では移動させにくい場合や、段差部や溝などの障害物を越える際に一時的に持ち上げて比較的短時間の曳行を行うことを考慮したものと考えられる。
〔前記[4]に示した従来技術について〕
前記[4]に記載したように、矩形箱状の転輪付き鞄において、幅広面で構成される一側壁の全面を揺動開閉できるようにしたものでは、その揺動開閉される一側壁自体の強度で内容物の圧力に抗した保形性を備えなければならないので、側壁の強度を容易に変形しない高強度のもので作製する必要があって、コスト増の要因となり易い。
これとは別に、ケース本体の上部壁と後部壁とのうちで、左右端縁近くの一部分だけを残し、その他の広範囲にわたる部分を開閉自在な蓋体で構成したものでは、その蓋体と周辺の開口とをスライドファスナー13で開閉自在に接続すると、図30に部分的に拡大して示すように、同一壁面上での屈曲経路部分で大きく経路長さが異なってくるために、スライダーの動きが円滑でなくなったり、ファスナーユニット14を損傷し易いという問題がある。
本発明の目的は、荷重を支持する転輪と曳行用の取っ手とを備えた旅行鞄やビジネス用の鞄など、ケースを自立させてではなく、傾けて引っぱりながら運搬する型式で、かつスライドファスナーによる開閉構造を備えた転輪付き鞄において、転輪付き鞄を身体の横側部に位置させて曳行者を含めての前後左右の占有面積を少なくした状態で、かつケース重量の影響少なく軽快に曳行できるようにするとともに、そのように身体の横側部にケースを位置させて曳行する際の鞄の横倒れに対する抑止機能と、ケースの開閉操作の行い易さとを、ケース本体に形成する開口と転輪との位置設定によって向上できるようにすることにある。
〔解決手段1〕
上記目的を達成するための解決手段の1つは、ケース本体に曳行用の取っ手と転輪とを備えた転輪付き鞄において、前傾姿勢としたケース本体の水平方向断面での長径方向が前後方向に沿う姿勢で曳行されるように、前記転輪を、前記長径方向に交差してケース本体の短径方向に沿う左右向きの横軸芯まわりで回動するように設定して前記ケース本体の底部側に設け、矩形箱状のケース本体を構成する壁面のうち、前傾姿勢、または後傾姿勢の底部側壁面に対向する上部側壁面と、その上部側壁面の前後の各端辺に連なる両壁面と、これらの3壁面の各一端辺が連続するコの字状の端辺部分に対して隣接する3端辺を備えた別の一つの壁面との、4面にわたる仮想切断面に沿ってケース本体に開口を形成するとともに、その開口を覆う範囲の壁面部分を開閉自在な蓋体によって構成し、前記蓋体を前記開口の四周辺のうちの一辺に連なる状態で開閉自在に設け、該蓋体の開閉される周辺と、前記開口周辺の各壁面との間を開閉自在に接続するスライドファスナーを設け、かつ、このスライドファスナーが付設される部位を、前記仮想切断面が斜めに交差する壁面よりも、その仮想切断面に対して直角に近づく面部分によって構成したことである。
このような構成を採用したことによる作用は次のとおりである。
〔1〕
すなわち、ケース本体の水平方向断面での長径方向が前後方向に沿う姿勢で曳行されるように、ケース本体に対する転輪の回動方向を設定して、左右方向ではケース本体の短径方向が存在し、前後方向ではケース本体を曳行者の横脇に位置させて前後長さを短縮することによって、曳行者を含めての前後左右の占有面積を少なくして曳行できるように構成されている。
〔2〕
そして、本発明では、ケース本体の開口とその開口を多う蓋体部分とを、スライドファスナーを用いて簡便に開閉操作できるように構成するにあたり、開口の位置とスライドファスナーの設け方、および、転輪との位置関係を次のように工夫したものである。
すなわち、ケース本体を構成する壁面のうち、底部側壁面に対向する上部側壁面と、その上部側壁面の前後の各端辺に連なる両壁面と、これらの3壁面の各一端辺が連続するコの字状の端辺部分に対して隣接する3端辺を備えた別の一つの壁面との、4面にわたる仮想切断面に沿ってケース本体に開口を形成し、その開口を覆う範囲の壁面部分を開閉自在な蓋体によって構成したものであるから、開口や蓋体を、ケース本体の底部側に位置する転輪の配設箇所との干渉を生じることなく設定することが可能となる。換言すれば、転輪の位置を、開口や蓋体を設けるためにケース本体の左右方向両端から中央側へ寄せた位置に配設するという構成を採用する必要なく、最大限ケース本体の左右方向の両端近くに寄せて転輪の位置を設定することができる。
〔3〕
しかも、開口の四周辺のうちの一辺に連なる状態で蓋体を開閉自在に設け、該蓋体の開閉される周辺と、前記開口周辺の各壁面との間をスライドファスナーで開閉自在に接続し、このスライドファスナーが付設される部位を、前記仮想切断面が斜めに交差する壁面よりも、その仮想切断面に対して直角に近づく面部分によって構成したものであるから、ファスナーエレメントの付設距離を、ケース本体壁側と蓋体側とで大きな差を生じないように設定でき、スライダーの円滑な作動を妨げない構造とすることが可能となる。
〔解決手段2〕
上記目的を達成するための第2の解決手段としては、ケース本体に曳行用の取っ手と転輪とを備えた転輪付き鞄において、曳行用の取っ手を、転輪を設けた底部側の角部と対向するケース本体の上部側の角部近くに設けたことである。
第2の解決手段を採用したことにより、前記第1の解決手段による場合と同様の作用に加えて、次の作用を奏する。
〔1〕
すなわち、転輪を設けたケース本体の底部側の角部からその角部に対向する上部側の角部までのケース本体の対角方向の長さを、取っ手の一部に兼用できることになる。したがって、転輪の接地点近くから取っ手の握り部までの全体にわたって取っ手を設ける場合に比べて、前記ケース本体の対角方向の長さを有効利用して、その分、取っ手自体の所要長さを短くでき、取っ手を伸縮可能なテレスコープ構造とする場合には、そのテレスコープ段数を少なくし易く、この点で転輪付き鞄全体として小型軽量化を図ることができる。
〔2〕
また、取っ手は、転輪を設けた角部と対向するケース本体の角部近くに設けられているので、転輪の接地点と取っ手の握り部とが、ケース本体の重心を挟んでその下方側と上方側との両側に振り分けられた状態に位置することになる。
このため、例えば、転輪を設けた角部から前傾姿勢のケース前縁に沿って取っ手を配置した構造のものに比べ、転輪の接地点と握り部とを結ぶ仮想線分を中心として生じるケース本体の重心の回転モーメントに対する抵抗を与え易くなる。
〔解決手段3〕
上記目的を達成するための第3の解決手段としては、ケース本体に曳行用の取っ手と転輪とを備えた転輪付き鞄において、曳行されるケース本体に対する側面視で、転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分が、前記ケース本体の前傾姿勢の前縁と、前記転輪の接地点とケース本体の重心相当箇所とを結ぶ線分とで構成される角度範囲内に位置するように、前記取っ手の位置を設定し、前記取っ手の握り部を、その長手方向が曳行方向の前後に向き、かつ前記ケース本体における重心相当箇所が転輪の接地点を通る鉛直線上に位置する基準曳行姿勢で、前記ケース本体の前傾姿勢の前縁の傾斜角度よりも水平に近くなるように設定してあることである。
上記第3の解決手段を採用したことにより、前記第1及び2の解決手段による場合と同様の作用に加えて、次の作用を奏する。
〔1〕
取っ手の位置を、曳行されるケース本体に対する側面視で、転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分が、ケース本体の前傾姿勢の前縁と、転輪の接地点とケース本体の重心相当箇所とを結ぶ線分とで構成される角度範囲内という、前記転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分がケース本体の重心に近づいて位置するように設定している。その結果、転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分の周りで重心が左右に揺れた場合における回転モーメントの大きさ自体を低減するとともに、ケース本体の左右傾動角度に対する重心の左右移動量の割合も比較的小さくでき、ケース本体の左右方向への転倒の可能性を少なくできるようにしてある。
〔2〕
また、取っ手の握り部は、その握り部が曳行方向の前後に向くように設定されている。したがって、身体の横側へ自然に垂らした手の掌が身体の内側に向く状態から掌を握るという自然な動作で、そのまま把持して曳行することができる。
つまり、握り部が曳行方向に対して左右方向に沿うものであると、取っ手を握るための掌を曳行方向での前向きにしたり後ろ向きにするために、上腕に対して前腕が捻られる状態となるが、本発明のものではこのような必要がなく、身体の横側に自然に垂らした手で握り部を楽な状態で把持して操作性良く曳行することができる。
〔3〕
さらに、曳行状態で前後方向に向く握り部30が図15(I)に示すように水平姿勢に近く設定されているので、図15(II)に示すように、握り部30が水平に対して大きな角度を持って前傾したものに比べて、親指側を無理に前腕の撓骨側に近づけるように、掌の中心部における中支骨の長手方向に沿う線が、前腕の長手方向に対して大きく屈折した状態となることも避けられる。したがって、前述のように掌を身体の内側へ向けた自然な姿勢であることとの相乗により、楽な握り状態を維持して、楽な姿勢で曳行することができる。
〔4〕
そして特に本発明によるもっとも特徴的な技術手段は、取っ手3の握り部30が、ただ単に前後方向に向き、かつ無条件に水平に近く設定されているのではなく、ケース本体1における重心相当箇所が転輪の接地点を通る鉛直線上に位置するという、基準曳行姿勢であることの条件のもとに、握り部30がケース本体1の前傾姿勢の前縁の傾斜角度よりも水平に近く設定されている点である。
したがって、図3及び図18に示すように、基準曳行姿勢にあるケース本体1が、曳行操作者の歩行に伴ってある程度前傾もしくは後傾して、ケース本体の重心Gが接地点Oをとおる鉛直線yの前後に多少移動しても、前記握り部30では、確実に重心Gの移動方向とは逆方向の押し下げまたは引き上げ操作力を随時付与することが簡単にでき、重心Gの移動による転輪2の前方移動を抑制することができる。
しかも、ケース本体1を常に基準曳行姿勢に近い姿勢に維持して曳行することができるものであるから、握り部30部分には、歩行に伴う握り部30の上下動に起因したケース本体の姿勢変化による重心移動分の僅かな荷重が作用するのみであり、前述した特許文献2に示されている構造のもののように、予め大きく前傾させた姿勢で曳行する構造のものに比べ、曳行時の操作者にかかる負担重量を顕著に軽減することができる。
〔解決手段4〕
上記目的を達成するための第4の解決手段としては、ケース本体に曳行用の取っ手と転輪とを備えた転輪付き鞄において、曳行用の取っ手を、ケース本体における重心相当箇所が転輪の接地点を通る鉛直線上に位置する基準曳行姿勢で、転輪の接地点と基準曳行姿勢における取っ手の握り部とを結ぶ線分の周りにケース本体が旋回して、基準曳行姿勢では前記鉛直線よりも後方側に位置していたケース本体の部分が前記線分よりも前方側に位置するように向きを変えても、ケース本体の底縁が水平よりも上向きであるように、前記基準曳行姿勢における前記転輪の接地点と曳行姿勢における取っ手の握り部とを結ぶ線分の角度を設定して配設してあることである。
上記第4の解決手段を採用したことにより、前記第1〜3の解決手段による場合と同様の作用に加えて、次の作用を奏する。
〔1〕 すなわち、ケース本体の左右一方の転輪が凸部に乗り上げたり、凹部に落ち込んだりしてケース本体を左右方向へ傾ける外力が作用したとき、上記のように転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分の位置が設定されていることにより、ケース本体が傾倒する際の回動中心となる前記転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分と、ケース本体の重心との距離が比較的短く、かつ上下の落差も少ないので、ケース本体を転倒させる方向での回転モーメント自体をきわめて小さく押さえることができる。
〔2〕 その上、基準曳行姿勢で転輪の接地点をとおる鉛直線よりも後方側に位置していたケース本体の部分が、転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分よりも前方側に位置するように向きを変えても、ケース本体の底縁が水平よりも上向きであるように、前記転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分を、基準曳行姿勢で前記転輪の接地点を通る鉛直線との角度差が少ない上下方向の起立した線分として設定している。このため、ケース本体を左右に傾ける方向の外力が作用したとしても、その外力はケース本体を前記転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分周りに旋回する方向の作用となり、ケース本体を転倒させることにはならない。
〔解決手段1にかかる発明の効果〕
前記第1の解決手段を採用したことにより、次の効果を奏する。
長径方向が前後方向に沿う姿勢でケース本体を曳行者の横脇に位置させて、曳行者を含めての前後左右の占有面積を少なくして曳行できるように構成されているケース本体を用いるにあたり、そのケース本体の開口の位置とスライドファスナーの設け方、および、転輪との位置関係工夫して、ケース本体の横倒れを抑制し易く、かつ、スライダーの円滑な作動を妨げない構造で構成し得たものである。
すなわち、ケース本体を構成する壁面のうちの一つの壁面の全体を揺動開閉するように構成するのではなく、前記上部側壁面と、その上部側壁面の前後の各端辺に連なる両壁面と、それらの3壁面の各一端辺が連続するコの字状の端辺部分に対して隣接する3端辺を備えた別の一つの壁面との、4面にわたる仮想切断面に沿ってケース本体に開口を形成し、その開口を覆う範囲の壁面部分を開閉自在な蓋体によって構成することにより、開口や蓋体が、ケース本体の底部側に位置する転輪と干渉することを避けて、転輪の配設位置をできるだけケース本体の左右両端に近づけて転輪間隔を広く設定することにより、ケース本体の横倒れを抑制することが可能となる。
しかも、前記開口周辺のスライドファスナーが付設される部位を、前記仮想切断面が斜めに交差するケース本体の壁面よりも、その仮想切断面に対して直角に近づく面部分によって構成したものであるから、ファスナーエレメントの付設距離を、ケース本体壁側と蓋体側とで大きな差を生じないように設定できる。これにより、前記ファスナーエレメントの付設距離の差が大きいことに起因してスライダーがこじれる、というような動作不良を招く虞の少ない構造となる利点がある。
〔解決手段2にかかる発明の効果〕
第2の解決手段を採用したことにより、前記第1の解決手段による場合と同様の効果に加えて、次の効果を奏する。
すなわち、ケース本体の対角方向の長さを有効利用して、取っ手自体の所要長さを短くし、転輪付き鞄全体として小型軽量化を図ることができるものであるが、これとともに、ケース本体の重心を挟んでその下方側を転輪で支持し、上方側を取っ手で支持するという、重心の両側で支持された状態とすることにより、ケース本体の横倒れ、および転輪の接地点と握り部とを結ぶ仮想線分を中心として生じるケース本体の回転を生じ難くすることができる利点がある。
〔解決手段3にかかる発明の効果〕
第3の解決手段を採用したことにより、前記第1および2の解決手段による場合と同様の効果に加えて、次の効果を奏する。
曳行者は、上肢を自然に身体の横側に垂らした状態に近い姿勢で握り部を楽に把持しながら、ケース本体の重心を転輪の接地点の直上近くに位置させた状態、すなわちケース重量を最大限低減した状態での曳行を、ケース本体の重心が接地点の直上を越えて後方移動することによるケース姿勢の後傾を避けた状態で、しかも曳行姿勢の握り手にケース本体重量の多くが作用し難い状態で、かつ、ケース本体の左右傾倒が生じにくい状態での曳行が可能となったものである。
これによって、ケースを曳行者の横脇に位置させて前後左右の占有面積少なく曳行でき、しかも、前後に比べて左右方向幅の狭いケース本体の収納容積は十分に確保しながら、左右方向での重心移動による傾倒を回避し易くするとともに、ケース本体の前後方向での重心移動に伴うケースの後傾や、握り部に多大なケース重量が作用した状態となることを避けて、軽快に曳行することができる実用的な転輪付き鞄を得られたものである。
〔解決手段4にかかる発明の効果〕
第4の解決手段を採用したことにより、前記第1〜3の解決手段による場合と同様の効果に加えて、次の効果を奏する。
すなわち、ケース本体の左右一方の転輪が凸部に乗り上げたり、凹部に落ち込んだりしてケース本体を左右方向へ傾ける外力が作用したとき、ケース本体が傾倒する際の回動中心となる前記転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分と、ケース本体の重心との距離が比較的短く、かつ上下の落差も少ないように転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分の位置が設定されていることにより、ケース本体を転倒させる方向での回転モーメント自体をきわめて小さく押さえることができる。
その上、基準曳行姿勢で転輪の接地点をとおる鉛直線よりも後方側に位置していたケース本体の部分が、転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分よりも前方側に位置するように向きを変えても、ケース本体の底縁が水平よりも上向きであるように、前記転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分を、基準曳行姿勢で前記転輪の接地点を通る鉛直線との角度差が少ない上下方向の起立した線分として設定している。このため、ケース本体を左右に傾ける方向の外力が作用したとしても、その外力はケース本体を前記転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分周りに旋回する方向の作用となり、ケース本体を転倒させることにはならないので、鞄を横脇に位置させた状態で曳行する際に、ケース本体の転倒の可能性を極力低減することができる。
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
〔全体の構造〕
本発明の転輪付き鞄は、矩形箱状のケース本体1と、ケース本体1の下部に設けた転輪2と、ケース本体1の上部側でケース本体を曳行するための取っ手3とで構成されている。
ケース本体1は、図1〜図3示すように、矩形箱状を成すケース本体1の6面のうち、進行方向で左右両側に位置する横向きの2面が、辺長さの大きい縦辺aと横辺bとにより、6面のうちで最も面積の広い方形状の横向き面1Aを構成している。
残りの4面は、前記左右両側の横向き面1A同士の対向間隔幅に相当する左右幅を有した周辺枠面1Bによって構成されており、この周辺枠面1Bの前記左右幅が、前記縦辺a及び横辺bに対して垂直な方向で、その縦辺a及び横辺bよりも短い寸法の奥行き辺cとなる。そして、この周辺枠面1Bは、前傾させた曳行姿勢で進行方向の前方側に向く前向き面c1と、その上端側に連なって上方に向く上向き面c2と、その後方側に連なって進行方向の後方斜め上方に向く状態となる後向き面c3と、その後向き面c3と前記前向き面c1とに連なる状態で下向きとなる下向き面c4とからループ状に形成されている。
このようにケース本体1は、左右の幅広の横向き面1Aと、その周部に位置する周辺枠面1Bとで全体が矩形箱状に構成されている。
このように、周辺枠面1B部分の左右幅に相当する奥行き辺cの寸法が、左右両側の横向き面1Aの縦辺a及び横辺bよりも短く形成されているので、転輪付き鞄を曳行する際に前傾姿勢とされるケース本体1は、その水平方向断面での長径方向が前後方向に沿う姿勢となり、この状態で曳行されるように転輪2及び取っ手3が後述するように設けられている。
〔ケース本体〕
ケース本体1は、ケース壁10の全体がほぼ矩形箱状の合成樹脂材で構成されているとともに、前記周辺枠面1B部分を構成するループ状の周辺ケース壁11では、その周辺ケース壁11が容易に変形しない程度の保形強度を有したものであり、具体的には周辺ケース壁11自体が容易に変形しない程度の強度を有した硬質の合成樹脂材で構成されているものが望ましい。あるいは、図示しないが、その周辺ケース壁11自体は硬質のものでなくとも、その内部に壁面に沿うループ状の金属製等の補強材(図示せず)を備えて補強された構造とすることによって容易に変形しないように構成されているものであってもよい。
前記周辺枠面1B部分の左右両側に位置する横向き面1A部分を構成する横側ケース壁12では、その下方側の一部が周辺枠面1B部分と一体化されて固定ケース壁部分12aを構成しており、横向き面1Aの残部が開閉自在な可動ケース壁部分12bを構成している。
前記可動ケース壁部分12bは、図2,3、及び図7に示されるように、その下端側の直線状の一端縁部分が、前記固定ケース壁部分12aの上側端縁に対して、横向き面1Aの面内における揺動支点線PL周りで揺動自在に連結されている。そして、可動ケース壁部分12bの前記固定ケース壁部分12aに連結されていない残りの3辺の端縁部分は、前記周辺枠面1B部分の上向き面c2、後ろ向き面c3と、下向き面c4とにわたってスライドファスナー13を介して開閉自在に連結してある。
これによって前記揺動支点線PLと、前記3面に沿うスライドファスナー13とによって形成されるほぼ矩形の開口面sが、ケース本体1の内部空間に対して左右両側から物品を出し入れ可能な開口部を形成しており、この開口部が前記可動ケース壁部分12bを蓋体として閉じられた状態と、開放された状態とに、スライドファスナー13の操作によって開閉自在に構成されている。
そして、前記開口面sは、前記横向き面1Aに平行であるように前記周辺枠面1Bのみに形成される通常の開口面ではなく、矩形箱状のケース本体1の前記横向き面1Aと前記周辺枠面1Bの後ろ向き面部分とで構成される角部を斜めに横断した状態(図1〜3、及び図7,8参照)に形成されることになる。
このように横断面がケース壁に対して斜めになる箇所にスライドファスナー13の左右一対のファスナーエレメント14(務歯)を対向させて設けると、図8(I)に示すように、横断面が周辺枠面1Bに対して斜めに交差している場合には、横断面箇所で対向して噛合する一方側のファスナーエレメント14と他方側のファスナーエレメント14とで、夫々のファスナーエレメント14の付設長さが異なってくる。このため、スライダー15がこじれて開閉し難くなる虞があるが、本発明では、図8(II)に示すように、前記周辺枠面1Bの前記後ろ向き面におけるファスナー付設箇所と前記横向き面1Aのファスナー付設箇所とに、夫々V字状の溝部16を設けて、前記揺動支点線PLと前記スライドファスナー13付設箇所とで形成される開口面sに対してほぼ直交する面が形成されるように構成している。このように開口面sに対してほぼ直交する面に左右一対のファスナーエレメント14,14を対向させて設けることにより、各ファスナーエレメント14の付設長さをほぼ等しくすることができ、スムーズなスライダー15の移動による開閉操作を可能にすることができる。
このケース本体1の周辺枠面1Bの前記上向き面c2部分、及び下向き面c4部分に形成されるスライドファスナー13は、互いにほぼ平行な面に設けられるものであるから、前記後ろ向き面c3部分と同様なV字状の溝部16は形成されていない。このケース本体1の一例を実寸で示すと、縦辺aの長さLaは、48cm、横辺bの長さLbは36cm、奥行き辺cの長さLcは22cmに構成されている。
尚、上記のように、前記横向き面1Aの下方側における一部を固定ケース壁部分12aとしているのは、このケース本体1の最も短い辺である奥行き辺cの幅一杯に転輪2を設け易くして、曳行時におけるケース本体1の左右傾動の影響を少なくするためである。
〔転輪の構造〕
前記図2,3及び図9に示す転輪2は、ケース本体1の前記長径方向に交差する短径方向に沿う横軸芯まわりで回動するように設定して前記ケース本体1底部側の前部に設けてある。この転輪2は、ケース本体1の左右両側において、横向きの回転軸芯xを共通にする状態で配設された左右一対の支軸20周りに転動自在に構成されたものである。
図9では、左右一対の転輪2のうちの左側のみを示しているが、右側においても、これと左右対称に転輪2が配置されている。この左側の転輪2の支軸20は、輪体21を左右両側で支持するようにコの字状の取付枠22に両端側を固定され、その取付枠22ごと、ケース本体1の底部に形成されている転輪装着用の凹部23へ嵌め込み装着されている。
このように転輪2を支持するように構成することにより、たとえば図31に示すように、転輪2の配設位置を、スライドファスナー13の配設位置を避け得るところの比較的広い幅w2に相当津する距離だけケース本体1の中央側へ寄せて設定する必要がなく、図9に示すように転輪2の外側を支持する部材の幅寸法w1だけケース本体1の中央側へ寄せて設定すればよいので、転輪2を、極力ケース本体1の左右端部よりに配設することが可能となる。
このように、転輪2の回転軸心xがケース本体1の下端高さhbよりも上方に位置するように、転輪2の大部分をケース本体1の内部に埋没させた状態として両端支持すれば、ケース本体1の重心Gの高さを極力低く維持しながら、ケース本体1の底部の左右幅全体に転輪2の支軸20を貫通させる必要がないので、ケース本体1の底部側の容積が転輪支持軸の存在によって大きく削減されることもない。
支軸20をケース本体1の外側に設けて転輪2を片持ち状態で支持するようにした図10や図32に示す構造のものに比べると、ケース本体1の左右端から転輪2までの左右方向での幅寸法w1は、あまり差はないが、
ケース本体1の下端の高さhbは大きく異なる。
〔取っ手の構造〕
取っ手3は、図2及び図4に示すように、ケース本体1に内蔵されている保持筒4と、この保持筒4に対して挿抜自在に嵌挿された引き手杆5とから構成されている。
保持筒4の引き出し側端部には、係合孔40が形成され、引き手杆5の挿入奥側端部には、引き手杆5の挿抜方向に対して直交する方向の軸線を有した円柱状の係合片41が引き手杆5に対して相対移動可能に設けられている。この係合片41は押圧バネ板42によって常に係合孔40に対して係合方向に付勢されているが、係合片41の突出側の端部が球面状の湾曲面に形成されているので、押し方向もしくは引き方向に強く操作すると、係合片41がバネ板42の付勢力に抗して係合孔40から外れ、伸縮操作することができる。
この構造では、引き手杆5の引き出し長さを略30cmに設定しておくことで、引き手杆杆5を二重筒状にしてテレスコープ構造とするような必要なく、単一棒状の抜き差し部分を備えた引き手杆5で地面から握り手までの高さに相当する距離を備えた取っ手3を構成することができるが、ケース本体1の大きさや、引き出し長さL1の設定条件によっては、二重筒状や三重筒状の多段の引き手杆5を用いたテレスコープ構造に構成してもよい。
上記構造の引き手杆5は、図4〜図6に示すように、上述の保持筒4に対して抜き差し方向で移動する左右一対の伸縮杆部50と、その上端側で伸縮杆部50に対して横軸芯P2周りで相対角度変更可能なU字状の握り杆部51との組み合わせで構成され、この握り杆部51には、曳行操作者が把持するための握り部30が備えられている。
前記伸縮杆部50に対する握り杆部51の相対角度を変更可能な部位の構造は、図5、図6に示すように構成されている。
すなわち、前記伸縮杆部50の上端部には、その伸縮杆部50とU字状の握り杆部51の開放側である基端部を連結するための接続用枠体52が一体的に連結してあり、この接続用枠体52に姿勢変更機構6を組み込んである。
前記接続用枠体52は、U字状の握り杆部51の開放側である基端部を個々に連結するための左右一対の接続部材53,53と、その接続部材53,53同士を、2本の連結軸体54,54で連結して構成されている。
各接続部材53は、各伸縮杆部50の上端部に対する連結用の嵌合部55と、握り杆部51の各基部を連結する連結用挟持部56とを備え、その連結用挟持部56は、U字状の握り杆部51の基端部を左右両側から挟持する状態に位置する左右一対の対向挟持片56A,56Aを備えている。前記対向挟持片56A,56A同士は、前記左右一対の接続部材53,53同士の間に設けられた一対の連結軸体54,54の延長部分54a,54aで一体に連結されている。
前記対向挟持片56A,56Aは、図5に示すように、伸縮杆部50に対して、側面視でその杆身方向の中心線m1に対して、ケース本体1の中央側へ向けて所定角度θm1だけ傾斜した(約26度)中心線m2を有するように屈折した形状に形成されており、この傾斜した中心線m2上の離れた二箇所に前記連結軸体54が配設されている。
前記連結軸体54のうち、伸縮杆部50に近い側の第1連結軸体54は、側面視で前記伸縮杆部50の長手方向の中心線m1の延長線に交差するように軸芯P1を位置させているとともに、前記握り杆部51の基部の揺動範囲からは離れて位置し、左右の接続部材53,53を一体に連結して、この第1連結軸体54の前記左右の接続部材53同士の間の部分を把持した状態での引き手杆51の伸縮操作を行い易く構成してある。
前記伸縮杆部50から遠い箇所に位置する第2連結軸体54には、握り杆部51の基部が揺動自在に連結されていて、この第2連結軸体54が握り杆部51を前記軸芯P2周りで姿勢変更可能に枢支するための枢支軸となっている。
前記姿勢変更機構6は、次のように構成されている。
すなわち、前記握り杆部51のうち、握り部30側から前記軸芯P2位置を越えて伸縮杆部50に近い側の基部に、姿勢変更機構6の構成要素となるカム部60が一体に設けられており、このカム部60と、このカム部60の動作に伴って握り杆部51をケース本体1の外郭縁に沿う格納姿勢と、ケース本体1の外郭縁から離れて水平方向に近づく曳行作用姿勢との各姿勢に弾性付勢するバネ材で構成された付勢手段61と、前記握り杆部51の前記格納姿勢と曳行作用姿勢との両姿勢で付勢手段61の付勢力に対向して握り杆部51の基部を受け止めるように接当する接当部62とで前記姿勢変更機構6が構成されている。
前記付勢手段61として用いられるバネ材は、前記第1連結軸体54の外周側で接続部材53の内周側に沿う状態で設けられた円環状のバネ板で構成されている。この付勢手段61を構成する円環状のバネ板は、図5に示すように、接続部材53の内周の180度を超す範囲で接続部材の内部に形成されるバネ材嵌入部63に接触する状態に嵌入されており、自由状態でカム部60の先端移動軌跡Rと交差するように配設領域を設定してある。
この配設領域のうち、二点鎖線で示すところの前記格納姿勢にある状態でのカム部60に交差する領域n1と、曳行作用姿勢にあるカム部60と交差する領域n2が、前記格納姿勢と曳行作用姿勢との各姿勢でカム部60対して付勢手段61の付勢力が働くように、カム部60と接触したバネ材が変形させられる範囲である。
また、この付勢手段61を構成する円環状のバネ板は、図5,6に示すように、その円環の曲率中心P3位置が、前記第1連結軸体54の軸芯P1と第2連結軸体54の軸芯P2とを結ぶ線分m2よりも少し格納姿勢にあるカム部60寄りに偏倚している。
このように付勢手段61を配設してあることにより、前記カム部60は、付勢手段61を構成する円環状のバネ板の曲率中心P3位置と第2連結軸体54の軸芯P2とを結ぶ線分をデッドポイント線DPLとして、その両側に前記格納姿勢と曳行作用姿勢との各姿勢でカム部60が安定位置するように構成してある。
前記付勢手段61を構成する円環状のバネ板の曲率中心P3の位置は、前記第1連結軸体54と第2連結軸体54とを結ぶ線分m2よりも格納姿勢のカム部60側に寄っているが、これによって、付勢手段61である円環状のバネ板による付勢力の作用方向と曳行作用姿勢にあるカム部60との交叉角が、前記第1連結軸体54と同一位置に曲率中心P3が位置する場合よりも直角に近づき、バネによる付勢力がカム部60に効率良く作用することになる。
各接続部材53の連結用挟持部56を構成する左右一対の対向挟持片56A,56Aは、図5,6に示すように中間に位置する外周枠部56Bと一体に形成されていて、この外周枠部56Bによって前記円環状のバネ板を嵌め込む前記バネ材嵌入部63と、カム部60に対する前記接当部62とを構成している。
前記カム部60が格納姿勢にある状態(図5中、二点鎖線で示す状態)では、握り杆部51の中心線m3は、前記伸縮杆部50の長手方向の中心線m1に対して約90度屈折しており、この格納姿勢から握り杆部51のを操作してカム部60を曳行作用姿勢(図5中、握り杆部51が実線で示される状態)に操作すると、前記接続部材53の中心線m2に対する握り杆部51の中心線m3の角度差θm2は、約26度である。
したがって、握り杆部51を格納姿勢から曳行作用姿勢に姿勢変更するに要する握り杆部51の揺動操作角θm3は約38度であり、この角度範囲で前記カム部60も揺動変位する。前記握り杆部51を格納姿勢(図5中、二点鎖線で示す状態)にしておくと、握り杆部51がケース本体1の外郭縁に沿う状態を前記付勢手段61の軽い付勢力で維持し、その握り杆部51をケース本体1から引き離す方向に操作すると、前記デッドポイント線DPLを越えてカム部60が曳行作用姿勢(同図中、実線で示す状態)側に移行して、その曳行作用姿勢に握り杆部51が位置する状態を前記付勢手段61のより強い付勢力で維持することになる。
〔組み合わせ構造〕
図2に示すように、前記転輪2が設けられたケース本体1の下方の角部に対して、対角線方向で対向する上部側のケース本体1の角部からは、ケース本体1の周辺枠面1B部分の後ろ向き面に沿って伸縮調節自在な取っ手3が設けられている。図3のようにケース本体1の重心Gが接地点Oの鉛直線y上に位置する状態で、転輪2の接地点Oから取っ手3が設けられているケース本体1の対角位置のコーナーまでの高さH1が約60cmであるから、取っ手3の引き出し長さL1を20cmとすれば、地面から最大伸長時の取っ手3の握り部中央箇所Mまでの高さH2は、約75cmとなる。
尚、この取っ手3の引き出し長さL1は、使用者の身長等に応じて適宜設定すればよい。因みに上述のように引き出し長さL1が20cm程度で、地面から取っ手上端までの高さH2が約75cmとなる場合であれば、伸長170〜180cm程度の使用者が用いるのに好適である。
参考までに、地面から取っ手3の握り部30の中央箇所Mまでの高さH2が約75cmである場合に、従来のケース本体1の前向き面に沿って取っ手3を設けた構造の転輪付き鞄(ただし、この転輪付き鞄では前後方向断面が左右方向断面の長さよりも短いもので、特許文献1に示したものと同様な構造である)における取っ手3の引き出し長さL1’を図3中に示す。このように、従来の構造であれば、握り部の中央箇所Mまでの高さH2を約75cmにするには、取っ手3の引き出し長さL1’は約50cmと、ケース本体1の横辺bの長さと同程度になってしまうため、取っ手3の所要長さを確保するための引き手杆5の格納スペースをケース本体1の内部に収めることが困難で、この所要長さを確保するためには、取っ手3の伸縮構造を、二段または三段のテレスコープ構造にしなければならず、その伸縮構造の複雑化を免れない。
上記のように、ケース本体1の重心Gが転輪2の接地点Oの直上に位置する姿勢での曳行姿勢が基準の曳行姿勢であり、このとき、曳行する使用者が自然に垂らした手で取っ手3を握るときの高さ位置が、前記取っ手3における握り杆部51によって構成される握り部30の中央箇所Mとなるように取っ手3の引き出し長さL1を調整すればよい。
このときの前記転輪2の接地点Oと前記取っ手3の握り部30の中央箇所Mとを結ぶ線分y1と、ケース本体1の縦辺aと横辺bとによる矩形の中心(重心G相当部分)と前記接地点Oとを結ぶ線分y2とで成す角度θ1が、前記ケース本体1の転輪2を設けた角部とこれに対向する角部とを結ぶ対角線y3と、この対角線y3に交差するケース本体1の前縁(横辺b)とが成す角度θ2よりも小さくなるように、前記取っ手3の側面視での位置を設定してある。尚、この例では、転輪2の接地点Oを通る鉛直線yと、矩形の中心(重心G相当部分)と前記接地点Oとを結ぶ線分y2と、転輪2を設けた角部とこれに対向する角部とを結ぶ対角線y3とが同一線上にならぶ状態を示している。
重心Gの位置は、現実の使用状態では内容物の詰め方などで変化し、必ずしも矩形の中心とは一致しない場合があるが、これを考慮するとケース本体1としてはその重心Gの位置が特定できないので、便宜上、ケース本体1の側面視における矩形の中心を重心相当位置として考える。また、ケース本体1の側面視形状が矩形でない場合にも、その図形の中心を重心相当位置として考えればよい。
また、図13(I)に示すように、曳行方向の背後からまたは正面からみると、取っ手3の握り部30は、ケース本体1の奥行き方向で曳行操作者に近い側の端部から前記握り部30までの距離L2が、歩行姿勢の曳行操作者が自然に垂らした手による握り位置と曳行操作者の身体側部との間隔(握りこぶし1個分程度)と同程度以下となるように設定されている。
具体的なこの間隔寸法としては、かなりの個人差もあるが、要は、曳行者が取っ手3の握り部30を把持しての曳行姿勢で、握り部30に作用する吊り下げ荷重を負担するために、上肢の外転を伴う必要から三角筋の収縮状態を維持し続けなければならない、というような吊り下げ状態ではなく、肩や上肢の筋肉は弛緩状態のままで筋繊維自体の強度により自然に垂らした上肢で無理なく吊り下げて曳行するに適した寸法であれば良く、平均的な成人男性では、約7〜9cm程度である。
握り部30を把持する握り位置と曳行操作者の身体側部との間隔がこれ以下となるように前記寸法を設定しておけば、吊り下げ状態での曳行が楽に行い易い。この間隔が10cm以上くらいになると、同図中に二点鎖線で示すように僅かではあるが腕を外側へ張り出して支持する状態となり、三角筋の収縮を伴って多少腕を引き上げぎみにして曳行する必要があるので、腕の疲れが生じ易い。
つまり、図13に基づいて説明すると、自然に身体の側脇に垂らした手の中心線Phと身体の側辺との間には、通常、握り拳1個分程度の間隔が存在しているが、この自然に手を垂らした状態のままではなく、体幹から横方向へ離れる方向への手の動き(上肢の外転)は、主に、三角筋の収縮運動に基づく肩周りの筋肉の引っ張り作用で行われ、補助的に上肢の上腕3等筋や肩の僧帽筋が収縮作用する場合もある。
このため、体幹から横方向へ離した状態で握り部30部分に重い荷物の重量が作用すると、僅かな角度の動きでも、三角筋等が収縮作用を長時間にわたって連続的して維持するように指令されるため、この三角筋等の肩周りの筋肉に疲労が蓄積することになる。
通常、体側に沿って自然に手を垂らした状態では、三角筋には収縮作用が働かず、弛緩状態の筋繊維自体の強度で上肢を吊り持ちしているものであり、この状態で多少の荷重を掛けても、前記三角筋等の肩周りの筋肉や上肢の骨格筋の筋繊維自体の強度で耐えることができ、筋肉の収縮作用を伴わずに吊り下げ支持することができるので、これらの筋肉の疲労は少なくて済む。しかしながら、僅かな角度とは云え、上肢を外転させて体幹から横方向へ離れるように移動させた状態を維持するには、前述した筋肉の収縮運動を必要とするため、筋肉疲労を避けることはできない。
図13(I)に基づいて一例をみると、ケース本体1の横端部から握り部30の中心までの距離が12.5cmである場合、肩の外転角度は次のようになる。
すなわち、図13(I)では、取っ手3を把持する人物の右手の肩関節sから手首関節h1にわたってその中心を結ぶ線分をを右手の中心線Phとし、この中心線Ph(握り部30の中心と一致する)からケース本体1の横端部までの距離L2を7.5cmに設定したものを実線で図示している。
この実線で図示の状態では、上腕及び前腕が一直線に連なって肩関節sから垂下されている状態であり、上腕および前腕の何れにも筋肉の緊張を要することなく握り部30を把持した状態が維持されている。
この姿勢から、ケース本体1の横端部からの距離が12.5cmである握り部30を把持するには、右手の手首関節h1の位置が、もとの位置から5cm遠ざかった手首関節h2の位置となり、肩関節sと手首関節h2とを結ぶ線分の傾斜角度α1は、もとの右手の中心線Phに対して約6度外側へ振り出された状態となる。この状態を維持するためには、握り部30に作用する荷重に、肩関節sから手首関節h2に至る上肢の長さLhを乗じたモーメントに相当する操作力を得るように、長時間にわたって三角筋の緊張を要することになる。
また、手首関節h2の水平方向位置は同じでも、肘関節の位置を、符号e1で示すように前記肩関節sから手首関節h2に至る直線上に位置させるのではなく、符号e2で示すように、肘関節e2から下側の手首関節h2に至る前腕を垂下状態にして握り部30を把持すると、肩関節sと肘関節e2とを結ぶ線分の傾斜角度α2は、もとの右手の中心線Phに対して約11度外側へ振り出された状態となる。この状態を維持するためには、握り部30に作用する荷重に、肩関節sから肘関節e2に至る上腕の長さLeを乗じたモーメントに相当する操作力を得るように、長時間にわたって三角筋の緊張を要することになる。
このように、ケース本体1の横端部から握り部30の中心までの距離が大きいと、握り部30を身体から離すように腕を持ち上げながら、その腕に重い鞄の重量が作用するという、きわめて疲労し易い使用形態となって望ましくない。
それ故、取っ手3の握り部30の位置は、ケース本体1の奥行き方向で曳行操作者に近い側の端部から前記握り部30までの距離L2が、前述のように、自然に垂らした手による握り位置と曳行操作者の身体側部との間隔と同程度以下となるように設定されるのが望ましい。こうすることで、そのケースにおける取っ手3の握り部30を、体幹から身体の横方向へ離れる方向の手の動き(上肢の外転)を要さずに、曳行操作者が自然に身体の側脇に垂らした手で把持することができる。
前記転輪2の接地点Oと取っ手3の握り部30とを結ぶ線分y1は、図18に示すように、曳行されるケース本体1に対する側面視で、前記ケース本体1の前傾姿勢の前縁と、前記転輪2の接地点Oとケース本体1の重心G相当箇所とを結ぶ線分y2とで構成される角度範囲内に位置し、かつ、前記ケース本体1における重心G相当箇所が転輪2の接地点Oを通る鉛直線y上に位置する基準曳行姿勢で、前記転輪2の接地点Oと曳行姿勢における取っ手3の握り部30の中央箇所Mとを結ぶ線分y1の周りにケース本体1が旋回して180度向きを変えても、ケース本体1の底縁が水平よりも上向きであるように、その対水平姿勢を設定してある。
この図16に示すケース本体1の例では、前記転輪2の接地点Oと曳行姿勢における取っ手3の握り部30の中央箇所Mとを結ぶ線分y1は、前記ケース本体1における重心G相当箇所が転輪2の接地点Oを通る鉛直線yGに対して、約14度前傾しており、ケース本体1が前記線分y1周りに旋回して180度向きを変えたとき、その底縁と水平線との間には、約10度の角度で形成される間隔が存在している。
つまり、このケース本体1の例で示すように、
β1(線分y1が鉛直線yGに対して前傾する角度)=約14度
β2(ケース本体1が前記線分y1周りに旋回して180度向きを変えたときの底縁と水平線とのなす角度)=約10度
であると、
β1+β2=約24度
であるから、
基準曳行姿勢では前記鉛直線yよりも後方側に位置していたケース本体1の後方側部分が180度向きを変えても、その底縁が水平線の下側へ入り込む、すなわち地面に衝突するということがないようにするには、ケース本体1における重心G相当箇所が転輪2の接地点Oを通る鉛直線yGに対する、転輪2の接地点Oと曳行姿勢における取っ手3の握り部30の中央箇所Mとを結ぶ線分y1の前傾角度を、約24度以下であるように設定すればよい。これによって、180度向きを変えてもケース本体1の底縁が中に浮いた状態が維持されている。
上記の例のように、180度向きを変えてもケース本体1の底縁が水平線の下側へ入り込むことがないように鉛直線yに対する前記線分y1の角度を設定しておくのが望ましいが、必ずも完全に180度向きを変えた状態に限らず、例えば、120度以上とか、90度以上に向きを変えた場合など、基準曳行姿勢では前記鉛直線yよりも後方側に位置していたケース本体1の部分が前記線分y1よりも前方側に位置するように向きを変えても、ケース本体1の底縁が水平線の下側へ入り込むことがないように鉛直線yに対する前記線分y1の角度を設定しておけばよい。
このように鉛直線yに対する前記線分y1の角度を設定すると、基準曳行姿勢における前記線分y1の起立角度が鉛直姿勢に近づくため、図18に示すように、重心Gの高さと、前記線分y1に対する重心Gからの垂線の交点Gpとの間における落差L4はきわめて小さくなり、前記線分y1周りに発生する回転モーメントmGは小さく、ケース本体1を回動させるほどの外力とはなりにくい。しかも、路面の凹凸などによって仮にケース本体1を回動させるほどの外力が生じたとしても、ケース本体1は線分y1周りに回転するだけであり、ケースの転倒は避けられることになる。
〔他の実施形態1〕
本発明の実施の形態の別例を示す。
図19はビジネス用の中型のケースを示し、このケースは縦辺aの長さLaが約35cm、横辺bの長さLbが約52cm、奥行き辺cの長さLcが約25cmである。
このように横辺bの長さLbが長いものであると、その横辺の長さLbを、接地点Oから取っ手3の握り部30までの長さとして有効利用し易い。
この実施形態のものでは、ケース本体1を基準曳行姿勢とした場合、路面から傾斜したケース本体1の最上部の高さは、約64cmとなり、握り手の高さとして標準的な高さ70〜75cmにかなり近いので、取っ手3を起伏揺動式もので構成するのに適している。
この構造では、取っ手3を縦辺aの長さLaよりも短い起伏揺動式もので構成し、取っ手3が縦辺aにほぼ沿う格納姿勢と、縦辺aから離れた作用姿勢との間で、約50度取っ手3の角度を変更するように構成してある。
このような取っ手3を備えたものでは、このケース本体1の基準曳行姿勢で作用姿勢にした取っ手3が、ケース本体1の前傾姿勢の前縁の傾斜角度よりも水平に近くなる(水平線に対しては、約20度前上がりの傾斜を有している)ように設定されている。このような起伏揺動式の取っ手3を採用すると、伸縮式の取っ手3に比べて、ケース本体1の内部に伸縮杆部を内装するための保持筒4を設ける必要がない点で有利である。
そして、このケースにおいても、ケース本体1は、前述の実施形態で示したものと同様に、周辺枠面1B部分を構成するループ状の周辺ケース壁11と、前記周辺枠面1B部分の左右両側に位置する横向き面1A部分を構成する開閉自在な横側ケース壁12とで構成されている。そして、横側ケース壁12では、その下方側の一部が周辺枠面1B部分と一体化されて固定ケース壁部分12aを構成しており、横向き面1Aの残部が揺動支点線PL周りで開閉自在な可動ケース壁部分12bを構成している。
また、可動ケース壁部分12bの前記固定ケース壁部分12aに連結されていない残りの3辺の端縁部分は、前述の実施形態で示したものと同様に、前記周辺枠面1B部分の上向き面c2、後ろ向き面c3と、下向き面c4とにわたってスライドファスナー13を介して開閉自在に連結してある。尚、図19中の符号7は、ケース本体1の全体を持ち上げて手提げ状態で運搬する際に用いる提げ手である。
上記の取っ手3の起伏揺動構造は次のように構成されている。
図20(I),(II)に示すように、横支軸32,33周りで起伏揺動自在な握り杆部51を備えて、この握り杆部51を、ケース本体1の外面に沿う格納姿勢と、外面から離れる方向に引き起こされた作用姿勢とに姿勢切り換え可能に構成されている。
この握り杆部51は、前後2箇所の横支軸32,33を備え、前方の横支軸32がケース本体1の上部角部に備えられた取り付けブラケット35の外周部に形成した凹入溝36に嵌入し、後方の横支軸33が取り付けブラケット35の中央箇所に形成したガイド孔37を貫通している。
握り杆部51が図中実線で示す格納姿勢にあるとき、前の横支軸32は凹入溝36の下端部にあり、後ろの横支軸33はガイド孔37の上端部に位置して、この状態が維持されるようにガイド孔37内に装備された板バネ38により後ろ横支軸33が上部側へ付勢されている。握り杆部51を図中二点鎖線で示す曳行姿勢に引き起こすと、後ろ横支軸33が板バネ38の付勢力に抗して下方側へ移動し、前の横支軸32は凹入溝36の上端部に移動し、この状態が後ろの横支軸33を板バネ38の付勢力によってガイド孔37の下端部に付勢することによって維持するように構成されている。
握り杆部51の姿勢変更構造は、上記のような構造に関わらず任意の構造を採択することができる。また、曳行姿勢における起伏角度を多段、もしくは無段に調節可能に構成することで、握り部30の高さ調節を行えるように構成してもよい。
〔他の実施形態2〕
揺動式の取っ手3を構成する場合、図20に示すような構造に限らず、図21〜図24に示すように構成してもよい。この構造では、側面視でL字状に構成された握り杆部51の基端部を枢支する揺動支点軸45を、ケース本体1の上向き面c2に設けて、その揺動支点軸45からケース本体1の最上部を越えてL字状の握り杆部51が後向き面c3側に向けて延出されている。
つまり、揺動支点軸45から後向き面c3側に向けて上側へ握り杆部51を延出し、L字状に屈曲した延長部分が前記後向き面c3に沿う状態の格納姿勢と、図21中に握り杆部51の中心線を太実線で単純化して示したように、前記延長部分が後向き面c3から離れて水平に近くなる作用姿勢とに、姿勢切換自在に構成されている。このように、ケース本体1の最上部を越えてL字状の握り杆部51を備えた取っ手3を採用し、この握り杆部51の起伏角度を、多段、若しくは無段階に調節できるようにした構成の取っ手3を採用してもよい。
図21に示すように、握り杆部51の起伏角度をに多段階に調節すると、その調節角度の設定によって、握り杆部51の握り部30の高さを多段階に変更することができる。因みに、この図21によれば、実線の線図で記載した握り杆部51の握り部30における中央箇所M2として設定した位置の路面からの高さは、約75cmであり、その握り部30が路面に対してなす角度は約11度である。同図中、二点鎖線で示す握り部30のうち、路面に対して平行な握り部30の中央箇所M1の路面からの高さは約70cmであり、その上側の中央箇所M2の高さは70cm、握り部30の角度は、水平よりも下向きに約7度である。最も上方に記載されている中央箇所M3の路面からの高さは約78cmであり、その握り部30が路面に対してなす角度は約24度である。
この握り部30が地面に対してなす角度は、ケース本体1の後ろ倒れ現象を抑制する必要から水平に対して45度を越えてはならず、望ましくはこの例のように24度以下程度、もしくは最大限30度程度以下に、曳行時に通常使用する最大起伏角度を設定しておくべきである。無論、この握り部30が地面に対してなす角度としては、握り部30の全体が同一の角度である必要はなく、部分的に角度が変化していてもよく、実際に把持する部分が上述の角度範囲内に収まるように構成されていればよい。
この構造では、握り杆部51を作用姿勢とすることで、握り杆部51の前記後向き面c3に沿っていた延長部分が後方に向き、その握り部30の中心点Mが、転輪2の接地点Oの直上にケース本体1の重心Gが位置する状態で前記接地点Oを通る鉛直線yの直上、もしくはその極近くに位置する状態となる。したがって、ケース本体1に左右転倒方向の外力が作用しても、その転倒方向に作用する外力を握り部30で直接的に受けて、直接的に握り部30から抗力を作用させることができるので、より効果的に転倒を阻止し易い。
上記のように多段、もしくは無段階の調節を行うための構造としては、次のような構造を採用することができる。
側面視でL字状に構成された握り杆部51の基端部を枢支する揺動支点軸45を、図22及び図24に示されているように、ケース本体1に固定された左右一対のブラケット17に対して軸線方向に相対移動可能に構成してある。この揺動支点軸45は、その一方の軸端に頭部46を備え、他端側に後述する締め付け機構8を装備している。
そして、この揺動支点軸45を支承する前記一対のブラケット17と、そのブラケット17に対向する握り杆部51の基端部との各対向面にそれぞれ係合用の菊座部分18を形成し、前記締め付け機構8の操作によって、各菊座部分18を強く圧接状態にして握り杆部51の姿勢を固定したり、締め付けを緩めて握り杆部51の姿勢変更を可能にする状態とに切換自在に構成してある。
前記締め付け機構8は、図22、及び図24(I),(II)に記載のように、揺動支点軸45の軸端部に対してピン81介して回動操作自在に設けた操作レバー80を備え、この操作レバー80の一部に締め付けカム部82を一体形成している。つまり、操作レバー80に設けられた締め付けカム部82は、図24(II)に実線で図示された状態が締め付け姿勢に操作されている状態であり、このとき締め付けカム部82は揺動支点軸45を図中左方へ引き出すように作用することにより、揺動支点軸45の頭部46が握り杆部51の基端側を図22で左方へ押す。このとき、図22における右側のブラケット17との対向面に形成された菊座部分18同士が圧接され、同時に握り杆部51の基端側における繋ぎ部材51aを介して握り杆部51の他方の基端部に形成されている菊座部分18も他方のブラケット17の対向面に形成されている菊座部分18に圧接して、握り杆部51の姿勢が固定される。
前記操作レバー80を図示二点鎖線のように反転操作すると、締め付け機構8の締め付けを解除する操作となり、このように解除姿勢に操作した状態で締め付けカム部82は、図24(II)中に示す間隙d分の寸法だけ、揺動支点軸45の軸芯方向の動きを自由にする。この間隙dは、前記菊座部分18が咬み合い状態を解除するに十分な間隙である。さらに、前記一方のブラケット17の菊座部分18がない面と、前記他方の握り杆部51の菊座のない面との間に、前記各菊座部分同士を接近させる方向へ軽く付勢するコイルスプリング83を介装している。
前記締め付け機構8はこのように構成されているので、前記操作レバー80の締付け方向の操作によって、前記コイルスプリング83の付勢力の作用方向と同方向に揺動支点軸45を操作して、前記菊座同士を強い噛み合い状態とし、相対回動不能な位置固定状態とすることができる。
前記操作レバー80を解除方向に操作すると、揺動支点軸45を少し動かして菊座部分18の咬み合い方向への押し付け作用を軽減する。この操作によって、前記係合状態にあった菊座部分18同士の強固な固定状態を解除することになるが、その解除方向への操作後にも、コイルスプリング83の付勢力によって菊座部分18同士は軽く接触している。
したがって、前記握り杆部51をある程度の力で揺動操作すると軽い係合状態にあった菊座部分18同士が互いに係合位置を変えて、握り杆部51の前記揺動支点軸45周りでの回動を許し、手を離すと前記菊座同士が係合して握り杆部51はその位置で停止する。この状態で固定したければ、前記操作レバー80を操作して、締め付け操作を行えば、握り杆部51の位置を曳行操作するに好適な固定状態とすることができる。
そして、このケースにおいても、ケース本体1は、前述の実施形態で示したものと同様に、周辺枠面1B部分を構成するループ状の周辺ケース壁11と、前記周辺枠面1B部分の左右両側に位置する横向き面1A部分を構成する開閉自在な横側ケース壁12とで構成されている。そして、横側ケース壁12では、その下方側の一部が周辺枠面1B部分と一体化されて固定ケース壁部分12aを構成しており、横向き面1Aの残部が揺動支点線PL周りで開閉自在な可動ケース壁部分12bを構成している。
また、可動ケース壁部分12bの前記固定ケース壁部分12aに連結されていない残りの3辺の端縁部分は、前述の実施形態で示したものと同様に、前記周辺枠面1B部分の上向き面c2、後ろ向き面c3と、下向き面c4とにわたってスライドファスナー13を介して開閉自在に連結してある。尚、図21,23中の符号7は、ケース本体1の全体を持ち上げて手提げ状態で運搬する際に用いる提げ手である。
〔他の実施形態3〕
ケース本体1における開口面sや、その開口面sを覆う蓋体部分の設け方としては、前記図7に示すように、横向き面1A部分を構成する横側ケース壁12の下方側の一部が固定ケース壁部分12aを構成し、それよりも上側の横向き面1Aの残部が開閉自在な可動ケース壁部分12bを構成する場合に、可動ケース壁部分12bの下側の一端縁部分が、固定ケース壁部分12aの上側端縁に対して、横向き面1Aの面内における揺動支点線PL周りで揺動自在に連結されているものに限らず、例えば、図25に示すように、可動ケース壁部分12bの上側の一端縁部分が、周辺枠面1B部分の後ろ向き面c3の面内における揺動支点線PL周りで揺動自在に連結されたものであってもよい。その他の構成は、前記図7に示した実施の形態のものと同様の構成を採用すればよいものであるため説明を省略する。
〔他の実施形態4〕
ケース本体1や取っ手3の形状及び構造については、各種のものを採用することができるものであり、次のような構造も考えられる。
この実施形態による構造では、基本的な構造、すなわち、縦辺aと横辺bとで構成される横向き面1Aを進行方向の左右両側に備えるとともに、その左右両側の横向き面1A同士の対向間隔幅に相当する奥行き辺c部分では、前向き面c1、上向き面c2、後向き面c3、及び下向き面c4からなる周辺枠面1Bが、前記横向き面1Aの四周に位置して左右両側の横向き面1Aの間を繋いで、全体が箱状に構成されている点、及び、周辺枠面1B部分の左右両側に位置する横向き面1A部分では、その下方側の一部が周辺枠面1B部分と一体化されて固定ケース壁部分12aを構成しており、横向き面1Aの残部が開閉自在な固定ケース壁部分12aを構成している点、などでは、前述の実施形態のものと同様に構成されたものである。
この実施形態における特徴的な部分は、ケース本体1として側面視形状が矩形のものではなく、図26〜図27示すような変形形状に構成されたものを採用していることである。
この構造では、ケース本体1の縦辺aと横辺bのうち、図26(III)に示すように、転輪2を配設してあるケース本体1の一つの角部を構成するところの下側縦辺a1と、これに対向して曳行時に上方に位置する上側縦辺a2とが、互いに平行な辺ではなく、その長さも前記転輪2側の下側縦辺a1が短く、上側縦辺a2が長くなるように設定されている。
横辺bは、転輪2を配設してある側の前側横辺b1と、これに対向して曳行時に後方向きに位置する後側横辺b2とが、互いに平行な辺となるように設定されているが、その長さは、前記転輪2側の前側横辺b1が長く、後ろ向きの後側横辺b2はそれよりも短くなるように設定されている。
このため、ケース本体1の側面視での形状は、曳行時に前傾姿勢の前縁となる前記転輪2側の前側横辺b1と、曳行時に上方に位置する側の上側縦辺a2との交差角θ3が鋭角(例えば約60度)で、その曳行時に上方に位置する側の上側縦辺a2と曳行時に後方向きに位置する後側横辺b2との交差角θ4が鈍角(例えば約120度)になり、残りの角部が夫々ほぼ直角の、不等辺四角形状となっている。
このように構成されたケース本体1においても、その重心Gの位置は、その不等辺四角形状の図形中心位置に存在するものと想定し、この重心Gが転輪2の接地点Oの鉛直線上に位置する基準曳行姿勢で、前記上側縦辺a2がほぼ水平姿勢となるように不等辺四角形状の各辺の寸法を定めてある。
この構造のケースでは、取っ手3を次のように構成している。
前述の実施形態のものでは、取っ手3に設けられる握り部30を、格納姿勢ではケース本体1の外郭縁に沿わせ、曳行姿勢では水平方向に沿わせられるように、握り部30の角度を変更するための起伏揺動構造を必要としているが、この実施形態の発明では、そのような起伏揺動のための構造を必要としていない。
つまり、この実施形態の発明では、ケース本体1の側面視での形状が、曳行時に上方に位置する側の上側縦辺a2と、曳行時に後方向きに位置する後側横辺b2との交差角θ4が鈍角となるように形成されているので、取っ手3を構成する引き手杆5を、この鈍角の角部に沿わせて屈曲した形状とすることができる。
取っ手3は、前述の実施形態と同様に、ケース本体1に内蔵されている保持筒4と、この保持筒4に対して挿抜自在に嵌挿された引き手杆5とから構成するものであるが、その引き手杆5を、上述の保持筒4に対して抜き差し方向で移動する左右一対の伸縮杆部50と、その左右一対の伸縮杆部50の上端側に一体に形成されたU字状の握り杆部51との組み合わせで構成している。
この構造では、握り杆部51が伸縮杆部50に対して所定角度屈曲した状態で一体に形成されているものであり、この屈曲角度を、前記ケース本体1の上側縦辺a2と、曳行時に後方向きに位置する後側横辺b2とによる鈍角の交差角θ4と同程度に設定しておくことで、握り杆部51を、格納姿勢ではケース本体1の外郭縁に沿わせ、曳行姿勢では水平方向に沿わせられるように構成したものである。
上記の例では、曳行時に前傾姿勢の前縁となる前記転輪2側の前側横辺b1と、曳行時に上方に位置する側の上側縦辺a2との交差角θ3が約60度で、その曳行時に上方に位置する側の上側縦辺a2と曳行時に後方向きに位置する後側横辺b2との交差角θ4が約120度に設定した例を示したが、この角度は適宜変更して設定することが可能であり、要は、握り杆部51を、格納姿勢ではケース本体1の外郭縁に沿わせ、曳行姿勢では水平方向に沿わせられるように構成したものであればよい。
図27は、前記図26に示された変形したケース本体1を用いる構造の斜視図、及び、同様な構造で小型のケース本体1の斜視図を示したものである。この図27(II)に示すように小型のケース本体1を構成する場合には、引き手杆5の突出長さが長くなるので、この引き手杆5を一本で構成することにより、その軽量化をより一層図ることができる。
引き手杆5の伸縮杆部50は、ケース本体1の上下方向長さが短いものであるため、複数段のテレスコープ構造と成らざるを得ないが、ケース本体1の左右幅をあまり大きくしない限り、一本の引き手杆5で構成しても全く問題ない。
仮にケース幅を大きくする場合には、引き手杆5の伸縮杆部50は一本で構成し、その上端側の握り杆部51部分で二股に分岐させたり、ループ状に形成した握り部30を構成するなど、部分的に左右端部寄りに握り部30を構成する構造を採用するとよい。
〔他の実施形態5〕
ケース本体1と取っ手3の組み合わせ構造については、各種のものを採用することができるものであり、次のような構造も考えられる。
この実施形態による構造では、取っ手3部分を除く構造が、上記の「他の実施形態4」に示すものと同様に変形ケースによって構成されている。
そして、取っ手3部分は、前記「他の実施形態4」に示す構造のものが、硬質材で構成された伸縮式のものであったのにくらべ、この実施形態では、軟質の取っ手3を採用している点で相違している。
つまり、図28(I)〜(III)に示すように、ケース本体1の周辺枠面1B部分のうち、基準曳行姿勢でほぼ水平方向に沿う上縁に相当する箇所に、布または皮紐などの軟質帯状の取っ手3が前後方向に沿わせて取り付けられており、この取っ手3を把持することによってケースの曳行姿勢を維持することができる。
すなわち、この取っ手3自体は引き上げ方向の作用力を与えるものであるが、ケースを押し下げる必要が生じた場合に、その取っ手3を把持する手でケース本体1の上縁を直接に押し下げることでケース姿勢を維持することが可能である。この構造を採用すれば、ケース本体1の上縁が取っ手3の押し下げ機能を兼ねることになり、取っ手3の機能の一部を備えることになる。この図28における符号3aは、ケース本体1に対する軟質帯状の取っ手3の取付強度を高めるとともに、その取っ手3のケース本体1に対する横ずれを規制するための止め部材である。
このように軟質材で取っ手3を構成すると、ケース本体1の大きさが、曳行操作者の握り手の高さ位置の設定に大きく影響するので、ケース本体1の大きさの自由度が少ない点での不利はあるが、取っ手3自体は軟質材で構成され、ケース上縁に沿う状態に設けられるだけで良いので、姿勢変更構造などが必要でなく、より構造の簡素化が可能になる点では有利である。同図中の符号7はケース全体を持ち上げる際に用いるための提げ手り、符号13は他のケース本体と同様に設けられたスライドファスナーである。
〔他の実施形態6〕
転輪2の設け方としては、図9で示すような転輪2の大部分をケース本体1の内部に埋没させて両持ち状態としたものに限らず、例えば図10に示すように、支軸20をケース本体1の外側に設けて輪体21を片持ち状態で支持するように構成してもよい。
この場合も、転輪2の左右方向での配設位置を、図32に示すように、スライドファスナー13の配設位置を避け得るところの比較的広い幅w2に相当津する距離だけケース本体1の中央側へ寄せて設定する必要がなく、図10に示すようにケース本体1の左側端部と同程度の位置となるように幅寸法w1を設定すればよいので、転輪2を、極力ケース本体1の左右端部寄りに配設することが可能となる。
この図10に示す構造のものでは、転輪2の支軸20をケース本体1の外部に設けているので、どうしてもある程度はケース本体1の下端高さhbが高くなるのは否めないが、図32に示すように、ケース本体1の最下端の底部よりも下側に輪体21を位置させるのではなく、図10に示すように、横向き面1Aの前記固定ケース壁部分12aの一部を凹入させた箇所で、輪体21の一部がケース本体1の最下端部よりも上方に位置するように配設することにより、ケース本体1の重心Gをある程度低くして、転輪2をケース本体1の左右端部に極力近接させた配置形態とすることができる。
〔他の実施形態7〕
取っ手3の構造としては、前述の各実施形態においても種々の構造のものを採用することは自由であり、例えば、図示はしないが、伸縮杆部50を単一の棒状に構成し、握り杆部51は左右に離れた握り部を有するループ状に形成されたもの、あるいは左右に離れた握り部を有する握り杆部51を、先端側が開放されたU字状に構成し、そのU字の開放側とは反対側を単一の棒状の伸縮杆部50に接続したものであってもよい。
また、取っ手3を、単一の引き手杆5と、左右に位置をずらした二つの保持筒4とで構成し、曳行し易い方向の保持筒4を選択して差し替えるようにしてもよい。あるいは、左右に位置をずらした二つの保持筒4の夫々に、伸縮自在な引き手杆5を夫々装着して、左右個別に引き出して使用できるように構成してもよい。
また、取っ手3において、伸縮杆部50と握り杆部51との相対位置関係に関しても、必ずしも曳行姿勢で握り杆部51が伸縮杆部50の前方側に存在した状態で用いられるものに限らず、例えば図29に示すように、伸縮杆部50の上端から握り杆部51が後ろ向きに延出されている構造や、図示はしないが、伸縮杆部50の上端の前後にわたって握り杆部51が設けられている構造のものであってもよい。
図29に記載したように、伸縮杆部50の上端から握り杆部51が後ろ向きに延出されている構造であると、重心Gが前記転輪2の接地点Oとおる鉛直線yの直上に位置する基準曳行姿勢で、前記転輪2の接地点Oと前記取っ手3の握り部30の中央箇所Mとを結ぶ線分y1が、前記鉛直線yにきわめて近接、もしくは一致した状態となるように構成し易いものである。このように前記線分y1と鉛直線yを極力近接させると、前記落差L4及び回転モーメントmGを極力小さくして、転倒し難い構成を得やすい点での有利さがある。
さらに、取っ手3の形態とケース本体1の形態との組み合わせの構造としても、上述の各実施形態のものに限らず、任意の組み合わせ構造を選択することができる。
〔その他〕
[1];転輪2は、ケース本体1を前傾させた姿勢で曳行するには、側面視でケース本体1の前方下方の一角部に設けてあれば事足りるものであるが、その曳行姿勢とは別にケース本体1を前傾させずに起立させたままで移動させる用途のために、別途、補助の転輪を後方側に設けて、四輪または三輪で転動するようにしてもよい。この場合、曳行姿勢で用いる転輪2をキャスター車輪としたり、起立姿勢で用いる補助転輪をキャスター車輪で構成するなどしてもよい。
[2];基準曳行姿勢における取っ手3の握り部30の対水平姿勢は、水平線と平行であるのが最も望ましいことは云うまでもないが、ある程度、例えば10度以内程度の前上がり若しくは前下がりの傾斜角度を有したものであれば支障なく用いることができるものであり、10度を越えても20度以内程度であれば、多少の操作のし難さを伴なうことがあっても、さほど問題なく用いることができるものである。要は、基準曳行姿勢で、ケース本体1の重心が後方側へ移行してケース本体1の後傾動作が生じようとしたとき、握り部30を把持する操作者がケース本体1の後傾を阻止できるように操作力を加えることが問題なくできる程度の傾斜であることが必要である。
[3];揺動して姿勢変更する握り部30の作用姿勢への付勢手段61としては、実施形態で示したような円環状のバネ材を用いるものに限らず、一方向に付勢するコイルスプリングや板状バネ、あるいは、弾性ゴムなど、適宜の付勢手段を用いることができる。要はデッドポイントを越えた状態の複数位置で位置保持できるように付勢できる手段であればよい。
転輪付き鞄の全体を示す斜視図 転輪付き鞄の全体を示し、(I)が正面図、(II)が側面図 曳行状態の転輪付き鞄の全体を示し、(I)が側面図、(II)が背面図 伸縮式の取っ手部分の断面図 伸縮式の取っ手部分の屈伸構造に関する側面視での断面図 伸縮式の取っ手部分の屈伸構造に関する一部切り欠き背面図 転輪付き鞄の使用状態を示す斜視図 スライドファスナーの取付部を示す拡大説明図であり、(I)が比較例を示し、(II)が本発明の構造を示している。 転輪の取り付け構造を示す断面図 転輪の取り付け構造の他の実施形態を示す断面図 転輪付き鞄の取っ手取付構造の従来例を示す概略側面図 転輪付き鞄の使用状態を示す概略側面図 転輪付き鞄の使用状態を示し、(I)が正面図、(II)が平面図 転輪付き鞄の左右傾動時の作用を示す説明図であり、(I)は片輪が凸部に乗り上げた状態、(II)は片輪が凹部に落ち込んだ状態を示す。 取っ手部分での把持作用を示す説明図 従来の転輪付き鞄の使用状態における動作説明図 従来の転輪付き鞄の使用状態における動作説明図であり、(I)が下引き式の転輪付き鞄、(II)が上引き式の転輪付き鞄を示す。 転輪付き鞄の使用状態における動作説明図 転輪付き鞄の他の実施形態を示し、(I)が側面図、(II)が背面図 揺動式の取っ手部分を示し、(I)が揺動軸芯に交差する長手方向での断面図、(II)が揺動軸芯に沿う左右方向での断面図 転輪付き鞄の他の実施形態を示す側面図 転輪付き鞄の他の実施形態を示す正面図 転輪付き鞄の他の実施形態を示す平面図 締め付け機構部分を示す側面図と平面図 転輪付き鞄の他の実施形態を示す斜視図 転輪付き鞄の他の実施形態を示し、(I)が正面図、(II)が側面図、(III)が使用状態を示す説明図 転輪付き鞄の他の実施形態を示す斜視図であり、(I)が中型のもの、(II)が小型のものを示している。 転輪付き鞄の他の実施形態を示し、(I)が正面図、(II)が側面図、(III)が使用状態を示す説明図 転輪付き鞄の他の実施形態を示す側面図 従来の転輪付き鞄のスライドファスナー取り付け構造を示す斜視図と拡大説明図 従来の転輪付き鞄における転輪取り付け構造を示す正面図 従来の転輪付き鞄における転輪取り付け構造を示す正面図
符号の説明
1 ケース本体
1A 横向き面
1B 周辺枠面
2 転輪
3 取っ手
4 保持筒
5 引き手杆
6 姿勢変更機構
7 提げ手
8 締め付け機構
10 ケース壁
11 周辺ケース壁
12 横側ケース壁
13 スライドファスナー
20 支脚
30 握り部
50 伸縮杆部
51 握り杆部
a 縦辺
b 横辺
c 奥行き辺
G 重心
O 接地点
H2 地面から取っ手上端までの高さ
M 握り部の中央箇所
L 接地点から取っ手端部までの長さ
L1 取っ手の引き出し長さ
L2 ケース本体端部から取っ手中心までの左右方向距離
L3 接地点と握り部の中央箇所を結ぶ線分から重心までの垂直距離
L4 落差
y 接地点を通る鉛直線
y1 接地点と握り部の中央箇所を結ぶ線分
y2 接地点と重心相当個所を結ぶ線分

Claims (4)

  1. 矩形箱状のケース本体に曳行用の取っ手と転輪とを備えた転輪付き鞄であって、
    前傾姿勢としたケース本体の水平方向断面での長径方向が前後方向に沿う姿勢で曳行されるように、前記転輪を、前記長径方向に交差してケース本体の短径方向に沿う左右向きの横軸芯まわりで回動するように設定して前記ケース本体の底部側に設け、
    矩形箱状のケース本体を構成する壁面のうち、前傾姿勢、または後傾姿勢の底部側壁面に対向する上部側壁面と、その上部側壁面の前後の各端辺に連なる両壁面と、これらの3壁面の各一端辺が連続するコの字状の端辺部分に対して隣接する3端辺を備えた別の一つの壁面との、4面にわたる仮想切断面に沿ってケース本体に開口を形成するとともに、その開口を覆う範囲の壁面部分を開閉自在な蓋体によって構成し、
    前記蓋体を前記開口の四周辺のうちの一辺に連なる状態で開閉自在に設け、該蓋体の開閉される周辺と、前記開口周辺の各壁面との間を開閉自在に接続するスライドファスナーを設け、かつ、このスライドファスナーが付設される部位を、前記仮想切断面が斜めに交差する壁面よりも、その仮想切断面に対して直角に近づく面部分によって構成してある転輪付き鞄。
  2. 曳行用の取っ手は、転輪を設けた底部側の角部と対向するケース本体の上部側の角部近くに設けてある請求項1記載の転輪付き鞄。
  3. 曳行されるケース本体に対する側面視で、転輪の接地点と取っ手の握り部とを結ぶ線分が、前記ケース本体の前傾姿勢の前縁と、前記転輪の接地点とケース本体の重心相当箇所とを結ぶ線分とで構成される角度範囲内に位置するように、前記取っ手の位置を設定し、
    前記取っ手の握り部を、その長手方向が曳行方向の前後に向き、かつ前記ケース本体における重心相当箇所が転輪の接地点を通る鉛直線上に位置する基準曳行姿勢で、前記ケース本体の前傾姿勢の前縁の傾斜角度よりも水平に近くなるように設定してある請求項2記載の転輪付き鞄。
  4. 取っ手は、ケース本体における重心相当箇所が転輪の接地点を通る鉛直線上に位置する基準曳行姿勢で、転輪の接地点と基準曳行姿勢における取っ手の握り部とを結ぶ線分の周りにケース本体が旋回して、基準曳行姿勢では前記鉛直線よりも後方側に位置していたケース本体の部分が前記線分よりも前方側に位置するように向きを変えても、ケース本体の底縁が水平よりも上向きであるように、前記基準曳行姿勢における前記転輪の接地点と曳行姿勢における取っ手の握り部とを結ぶ線分の角度を設定して配設してある請求項3記載の転輪付き鞄。

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JP2016087225A (ja) * 2014-11-07 2016-05-23 広和エムテック株式会社 キャリーケース

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