この発明でいうポリペプチドとは、部分アミノ酸配列として、配列表における配列番号1乃至3に示すアミノ酸配列を含有するポリペプチドにおいて、そのポリペプチドにおけるシステインの1若しくは複数が他のアミノ酸により置換されたアミノ酸配列、又は、その置換されたアミノ酸配列において、前記置換部位以外の部位で、1若しくは複数のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されたアミノ酸配列を含有し、免疫担当細胞においてインターフェロン−γの産生を誘導する性質を有するすべてのポリペプチドを包含する。システインを置換する他のアミノ酸としては、そのアミノ酸によって置換されたアミノ酸配列を含有するポリペプチドが、部分アミノ酸配列として配列表における配列番号1乃至3に示すアミノ酸配列を含有する野生型ポリペプチドと同様、単独又は適宜補因子の存在下において、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導し且つ野生型ポリペプチドと比較して有意に高い安定性を示すかぎりにおいて、その種類は問わない。システインを置換する他のアミノ酸の具体例としては、例えば、セリン、トレオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンが挙げられ、このうちで最も望ましいアミノ酸はセリン及びアラニンである。配列表における配列番号1乃至3に示すアミノ酸配列を含有するポリペプチドの具体例としては、例えば、配列表における配列番号4又は5に示すアミノ酸配列を含有する野生型ポリペプチドを挙げることができる。因みに、配列番号4に示すアミノ酸配列は、そのN末端から第38番目、第68番目、第76番目及び第127番目にシステインを有し、配列番号5に示すアミノ酸配列は、そのN末端から第7番目、第75番目及び第125番目にシステインを有している。
この発明のポリペプチドの具体例としては、例えば、配列表における配列番号4に示すアミノ酸配列を含有する野生型ポリペプチドにおけるシステインを他のアミノ酸で置換した配列表における配列番号6乃至12に示すアミノ酸配列を含有するポリペプチド、配列表における配列番号5に示すアミノ酸配列を含有する野生型ポリペプチドにおけるシステインを他のアミノ酸で置換した配列表における配列番号13及び14に示すアミノ酸配列を含有するポリペプチド、さらには、所期の生理活性と安定性が失われない範囲で、それらのアミノ酸配列において、前記特定の置換部位以外の部位で、1若しくは複数のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されたアミノ酸配列を含有するポリペプチドが挙げられる。なお、アミノ酸の付加、欠失若しくは置換に関し、1若しくは複数のアミノ酸とは、部位特定変異誘発法などの公知の手法によって付加、欠失若しくは置換できる程度の数のアミノ酸を意味する。配列番号6乃至14に示すアミノ酸配列を含有するポリペプチドは、野生型ポリペプチドと比較して、いずれも安定性と生理活性が有意に高い。
この発明のポリペプチドは、通常、組換えDNA技術を応用して製造される。すなわち、当該ポリペプチドをコードするDNAを適宜宿主内に導入して形質転換し、得られた形質転換体を培養し、生成した当該ポリペプチドを培養物から採取する。この発明は、組換えDNA技術を用いる当該ポリペプチドの製造方法を提供するものでもあり、この発明の製造方法によるときには、所望量の当該ポリペプチドを容易に得ることができる。
この発明の製造方法で用いるDNAとしては、それが当該ポリペプチドをコードするかぎり、天然の給源から得られたDNAを人為的に改変したものであっても、化学合成したものであってもよい。前者の方法の具体例としては、例えば、天然の細胞を給源にして、配列表における配列番号4又は5に示すアミノ酸配列をコードする、配列番号25又は28に示す塩基配列のDNAを調製し、このDNAに対して、ロバート・エム・ホートンらが『メソッズ・イン・エンザイモロジー』、第217巻、270乃至279頁(1993年)に報告している『オーバーラップ・エクステンションPCR法』を適用し、配列番号4又は5に示すアミノ酸配列におけるシステインに相当するコドンを他のアミノ酸のコドンにより置換した塩基配列のDNAを調製する。斯かるDNAの具体例としては、例えば、配列番号25に示す塩基配列有におけるコドンが置換された配列番号15乃至21に示す塩基配列、配列番号28におけるコドンが置換された配列番号22及び23に示す塩基配列及び、それらの塩基配列に相補的な塩基配列、さらには、その配列表における配列番号15乃至23に示す塩基配列及びそれらの塩基配列に相補的な塩基配列において、それらの塩基配列がコードするアミノ酸配列を変更することなく、塩基の1若しくは複数を他の塩基で置換した塩基配列を含んでなるものが挙げられる。後者の方法の具体例としては、例えば、化学合成が挙げられ、配列表における配列番号15乃至23に示す塩基配列に基づき、常法にしたがって、前者の方法の場合と同様の塩基配列を含有するDNAを得ることができる。いずれにしても、一旦DNAが入手されれば、これにPCR法を適用することによって、所望のレベルに容易に増幅することができる。
ところで、斯界においては、一般に、あるポリペプチドをコードするDNAを宿主中で発現させるに際し、そのDNAの発現効率を改善したり、あるいは、ポリペプチドそのものの生理活性を改善する目的で、DNAにおける塩基の1個又は2個以上を他の塩基で置換したり、DNAに適宜のプロモーターやエンハンサーを連結することがある。この発明のDNAにおいても斯かる変更は当然可能であり、具体的には、最終的に得られるポリペプチドが所期の生理活性と安定性を失わない範囲で、例えば、配列表における配列番号15乃至23に示す塩基配列の5´末端及び/又は3´末端に適宜の制限酵素による認識部位、開始コドン、終止コドン、さらには、例えば、配列表における配列番号24に示すヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bのシグナルペプチドに代表されるような、適宜のシグナルペプチドをコードする塩基配列を連結し得ることは言うまでもない。
斯かるDNAは微生物及び動植物由来の適宜の宿主、とりわけ、哺乳類由来の宿主細胞に導入すると、安定性と生理活性の高いポリペプチドを発現する。この発明のDNAは、通常、組換えDNAの形態で宿主に導入される。組換えDNAはこの発明のDNAと自律
複製可能なベクターを含んでなり、DNAさえ入手できれば、通常一般の組換えDNA技術により比較的容易に調製することができる。この発明のDNAを挿入し得るベクターとしては、例えば、pcD、pcDL−SRα、pKY4、pCDM8、pCEV4、pME18Sなどのプラスミドベクターが挙げられる。自律複製可能なベクターは、通常、プロモーター、エンハンサー、複製起点、転写終結部位、スプライシング配列及び/又は選択配列などの、この発明のDNAが個々の宿主において発現するための適宜塩基配列を含んでなる。なお、プロモーターとして、例えば、熱ショック蛋白質プロモーターや、あるいは、同じ特許出願人が特開平7−163368号公報に開示したインターフェロン−αプロモーターを用いるときには、形質転換体における当該DNAの発現を外部刺激により人為的に制御できることとなる。
斯かるベクターにこの発明のDNAを挿入するには、斯界において慣用の方法が用いられる。具体的には、先ず、この発明のDNAを含む遺伝子と自律複製可能なベクターとを制限酵素及び/又は超音波により切断し、次に、生成したDNA断片とベクター断片を連結する。遺伝子及びベクターの切断にヌクレオチドに特異的に作用する制限酵素、とりわけ、AccI、BamHI、BglII、BstXI、EcoRI、HindIII、NotI、PstI、SacI、SalI、SmaI、SpeI、XbaI、XhoIなどを用いれば、DNA断片とベクター断片を連結するのが容易となる。DNA断片とベクター断片を連結するには、必要に応じて、両者をアニーリングした後、生体内又は生体外でDNAリガーゼを作用させればよい。斯くして得られる組換えDNAは、微生物や動物由来の宿主において無限に複製可能である。
斯かる組換えDNAは、適宜宿主内に導入して当該ポリペプチドの製造に用いられる。宿主としては、斯界において慣用される微生物及び動植物由来のものを用いることができるが、ポリペプチドの最終用途が医薬品である場合には、酵母や哺乳類由来の宿主が望ましい。哺乳類由来の宿主細胞の具体例としては、例えば、3T3細胞、C127細胞、CHO細胞、CV−1細胞、COS細胞、HeLa細胞、MOP細胞及びそれらの変異株を始めとする、ヒト、サル、マウス及びハムスター由来の上皮系細胞、間質系細胞及び造血系細胞が挙げられる。斯かる宿主にこの発明のDNAを導入するには、例えば、公知のDEAE−デキストラン法、燐酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、さらには、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスなどによるウイルス感染法などを用いればよい。形質転換体から当該ポリペプチドを産生するクローンを選択するには、形質転換体を培養培地で培養し、当該ポリペプチドの産生が観察されたクローンを選択すればよい。なお、哺乳類由来の宿主細胞を用いる組換えDNA技術については、例えば、黒木登志夫、谷口克、押村光雄編集、『実験医学別冊細胞工学ハンドブック』、1992年、羊土社発行や横田崇、新井賢一編集、『実験医学別冊バイオマニュアルシリーズ3 遺伝子クローニング実験法』、1993年、羊土社発行などにも詳述されている。
斯くして得られる形質転換体は、培養培地で培養すると、宿主内外に当該ポリペプチドを産生する。培養培地として、形質転換体を培養するための慣用の培養培地を用いればよく、斯かる培養培地は、通常、緩衝水を基材とし、これにナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、燐イオン、塩素イオンなどの無機イオンと、宿主の代謝能力に応じた微量元素、炭素源、窒素源、アミノ酸、ビタミンなどを加え、必要に応じて、さらに血清、ホルモン、細胞成長因子、細胞接着因子などを含有せしめて構成される。個々の培養培地としては、例えば、199培地、DMEM培地、Ham’s F12培地、IMDM培地、MCDB104培地、MCDB153培地、MEM培地、RD培地、RITC80−7培地、RPMI−1630培地、RPMI−1640培地、WAJC404培地などが挙げられる。斯かる培養培地に形質転換体を約1×104乃至1×107個/ml、望ましくは、約1×105乃至1×106個/ml接種し、必要に応じて新鮮な培養培地と取替えながら、温度37℃前後で1日乃至1週間、望ましくは、2乃至4日間浮遊培養又は単層培養すると、当該ポリペプチドを含む培養物が得られる。形質転換体の種類や培養条件にもよるが、斯くして得られる培養物は、通常、1l当り、当該ポリペプチドを約1μg乃至1mg含む。
このようにして得られた培養物はIFN−γ誘導剤としてそのまま用いられることもあるが、通常は使用に先立ち、必要に応じて、超音波、細胞溶解酵素及び/又は界面活性剤により菌体又は細胞を破砕した後、濾過、遠心分離などにより当該ポリペプチドを菌体若しくは細胞又はそれらの破砕物から分離し、精製する。精製には菌体若しくは細胞又はそれらの破砕物を除去した培養物に、例えば、塩析、透析、濾過、濃縮、分別沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気泳動、等電点電気泳動などの生理活性蛋白質を精製するための斯界における慣用の方法が適用され、必要に応じて、これらは適宜組合せて適用される。そして、最終使用形態に応じて、精製ポリペプチドを濃縮・凍結乾燥して液状又は固状にすればよい。なお、同じ特許出願人による特開平8−231598号公報に開示されたモノクローナル抗体は当該ポリペプチドの精製に極めて有用であり、このモノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィーによるときには、高純度の当該ポリペプチドが最少のコストと労力で得られる。
この発明のポリペプチドは、通常、免疫担当細胞を培養してIFN−γを製造するための培養培地に共存させるか、IFN−γ感受性疾患の治療・予防のためにヒトを含む哺乳動物に投与される。すなわち、前者の用途においては、哺乳類の末梢血から分離される白血球や、例えば、HBL−38細胞、Mo細胞(ATCC CRL8066)、Jurkat細胞(ATCC CRL8163)、HuT78細胞(ATCC TIB161)、EL4細胞(ATCC TUB39)、L12−R4細胞などの培養株化した免疫担当細胞又はその変異株をこの発明のポリペプチドを1ml当り約0.1ng乃至1μg、望ましくは、約1乃至100ng含む適宜の培養培地に浮遊させる。必要に応じて、培養培地にマイトジェンやインターロイキン2、抗CD3抗体などのT細胞刺激物質を加え、培養培地を適宜新鮮なものと取換えながら、通常一般の方法により約1乃至100時間培養する。斯くして得られる培養物にIFN−γを精製するための慣用の方法、すなわち、塩析、透析、濾過、濃縮、分別沈澱、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、等電点電気泳動などを適宜組合せて適用することにより、IFN−γを採取することができる。
さらに、この発明のポリペプチドは免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導することから、有効成分として当該ポリペプチドを含んでなる感受性疾患剤は、ヒトを含む哺乳動物に投与すると、体内の免疫担当細胞においてIFN−γの産生が促され、IFN−γ感受性疾患の治療・予防に効果を発揮する。また、後記実施例に例示する本発明のポリペプチドのように、ポリペプチドが免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する性質に加えて、NK細胞やLAK細胞(リンホカイン活性化キラー細胞)、細胞障害性T細胞などのキラー細胞による細胞障害性の増強又はキラー細胞の生成を誘導する性質を兼備するときには、キラー細胞も感受性疾患の治療・予防に関与することとなる。したがって、この発明でいう感受性疾患とは、IFN−γ感受性疾患を含む、IFN−γ及び/又はキラー細胞が直接又は間接に関与して治療及び/又は予防し得る疾患全般を意味するものであり、具体的には、例えば、肝炎、ヘルペス症、尖圭コンジロム、AIDSなどのウイルス性疾患、カンジダ症、マラリア症、クリプトコックス症、エルシニア症、結核などの感染症、悪性腎腫瘍、菌状息肉症、慢性肉芽腫などの固形悪性腫瘍、成人T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ種などの血球系悪性腫瘍、さらには、アレルギー症、リウマチ、膠原病などの免疫疾患や骨粗鬆症を挙げることができる。また、インターロイキン3と併用するときには、白血病、骨髄腫、さらには、悪性腫瘍を治療する際の放射線照射や化学療法剤の投与に伴う白血球減少症や血小板減少症の完治又は緩解にも効果を発揮する。
斯くして、この発明の感受性疾患剤は、上記のごとき感受性疾患を治療・予防するための抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、免疫疾患剤、血小板増多剤、白血球増多剤などとして多種多様な用途を含有することとなる。剤型並びに感受性疾患の種類及び症状にもよるが、この発明の感受性疾患剤は、通常、液状、ペースト状又は固状に調製され、当該ポリペプチドを0.000001乃至100%(w/w)、望ましくは、0.0001乃至0.1%(w/w)含んでなる。
この発明の感受性疾患剤は当該ポリペプチド単独の形態はもとより、当該ポリペプチドとそれ以外の生理的に許容される、例えば、担体、賦形剤、希釈剤、免疫助成剤、安定剤、さらには、必要に応じて、他の生理活性物質の1種又は2種以上との組成物としての形態をも包含する。安定剤としては、例えば、血清アルブミン、ゼラチンなどの蛋白質や、グルコース、果糖、蔗糖、マルトース、ラクトース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトールなどの糖質、さらには、燐酸、クエン酸を主体とする緩衝剤が、また、併用し得る他の生理活性物質としては、例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、インターロイキン2、インターロイキン3、インターロイキン12、TNF−α、TNF−β、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ刺激因子、カルボコン、シクロホスファミド、アクラルビシン、チオテパ、ブスルファン、アンシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、テトラヒドロフリルフルオロウラシル、メトトレキセート、アクチノマイシンD、クロモマイシンA3 、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ビンクリスチン、ビンブラスチン、L−アスパラギナーゼ、金コロイド、クレスチン、ピシバニール、レンチナン及び丸山ワクチンなどが挙げられる。このうち、インターロイキン2との併用は、インターロイキン2がこの発明のポリペプチドが免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する際の補因子として機能するので特に有利である。天然型又は組換え型インターロイキン2を併用することにより、当該ポリペプチド単独ではIFN−γを産生し難い免疫担当細胞においても所期のIFN−γ産生を誘導することができる。また、インターロイキン12と併用するときには、当該ポリペプチド又はインターロイキン12単独では容易に達成し得ない、極めて高レベルのIFN−γ産生を誘導することができる。しかも、当該ポリペプチドは体内におけるインターロイキン12によるイムノグロブリンE抗体の産生阻害を高めるので、イムノグロブリンE抗体の産生を主因とする、例えば、アトピー性喘息、アトピー性気管支喘息、枯草熱、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、血管性浮腫、アトピー性消化器異常を始めとするアトピー性疾患を治療するための免疫疾患剤においても極めて有用である。なお、ヒトを含む哺乳動物の体内においては、微量ではあるが、インターロイキン12が存在することがあるので、斯かる場合には、当該ポリペプチドのみを投与すれば所期の治療効果が達成できる。
さらに、この発明の感受性疾患剤は、投薬単位形態の薬剤をも包含し、その投与単位形態の薬剤とは、当該ポリペプチドを、例えば、1回当りの用量又はその整数倍(4倍まで)若しくはその約数(1/40まで)に相当する量を含んでなり、投薬に適する物理的に
一体の剤型にある薬剤を意味する。このような投薬単位形態の薬剤としては、注射剤、液剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、舌下剤、点眼剤、点鼻剤、坐剤などが挙げられる。
この発明の感受性疾患剤は経口的に投与しても非経口的に投与しても、また、以下に述べるように抗腫瘍細胞を体外で活性化させる場合に用いてもよく、いずれの場合にも、感受性疾患の治療・予防に効果を発揮する。感受性疾患の種類や症状にもよるが、具体的には、患者の症状や投与後の経過を観察しながら、成人当り約0.1μg乃至50mg/回、望ましくは、約1μg乃至1mg/回のポリペプチドを1乃至4回/日又は1乃至5回/週の用量で1日乃至1年間に亙って経口投与するか、皮内、皮下、筋肉内又は静脈内に非経口投与すればよい。
この発明の感受性疾患剤は、インターロイキン2を用いる、いわゆる「抗腫瘍免疫療法」にも有用である。抗腫瘍免疫療法は、一般に、(i)悪性腫瘍患者の体内に直接インターロイキン2を投与する方法と、(ii)インターロイキン2により生体外で活性化させた抗腫瘍細胞を患者の体内に移入する方法(養子免疫療法)に大別されるが、当該ポリペプチドを併用するときには、その効果を有意に高めることができる。具体的には、前記(i)の方法の場合、患者にインターロイキン2を投与するのと同時又は事前に当該ポリペプチドを成人当り約0.1μg乃至1mg/回の用量で1乃至10回投与する。インターロイキン2の投与量は、悪性腫瘍の種類、患者の症状及びポリペプチドの用量にもよるが、通常、成人当り約10,000乃至1,000,000単位/回とする。一方、前記(ii)の方法の場合には、悪性腫瘍患者から採取した単核球又はリンパ球をインターロイキン2の存在下で培養するに当り、それら血球1×106個当り当該ポリペプチドを約0.1ng
乃至1μg共存させておく。そして、一定時間培養した後、培養物からNK細胞又はLAK細胞を採取し、これを元の患者に移入するのである。この発明による抗腫瘍免疫療法の対象となり得る疾患としては、例えば、結腸癌、直腸癌、大腸癌、胃癌、甲状腺癌、舌癌、膀胱癌、絨毛癌、肝癌、前立腺癌、子宮癌、喉頭癌、肺癌、乳癌、悪性黒色腫、カポジ肉腫、脳腫瘍、神経芽細胞腫、卵巣腫瘍、睾丸腫瘍、骨肉腫、膵臓癌、悪性腎腫瘍、副腎腫、血管内皮腫などの固形悪性腫瘍や白血病、悪性リンパ腫などの血球系悪性腫瘍が挙げられる。
ところで、当該ポリペプチドをコードするこの発明のDNAは、いわゆる、「遺伝子療法」にも有用である。すなわち、通常の遺伝子療法においては、この発明のDNAを、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどのウイルス由来のベクターに挿入するか、カチオニックポリマーや膜融合型リポソームなどのリポソームに包埋し、この状態でIFN−γ及び/又はキラー細胞に感受性を含有する疾患に罹患した患者に直接注入するか、あるいは、患者からリンパ球を採取し、生体外で導入した後、患者に自家移植するのである。また、養子免疫遺伝子療法においては、効果細胞にこの発明のDNAを通常の遺伝子療法の場合と同様にして導入すると、腫瘍細胞に対する効果細胞の細胞障害性が高まり、養子免疫療法を強化することができる。さらに、腫瘍ワクチン遺伝子療法においては、患者から摘出した腫瘍細胞にこの発明のDNAを通常の遺伝子療法の場合と同様にして導入し、生体外で一定数に達するまで増殖させた後、患者に自家移植するのである。移植された腫瘍細胞は患者体内においてワクチンとして作用し、強力且つ抗原特異的な抗腫瘍免疫を発揮する。斯くして、この発明のDNAは、ウイルス疾患、感染症、悪性腫瘍及び免疫疾患を始めとする各種疾患の遺伝子療法に著効を発揮することとなる。なお、これらの遺伝子療法を実施するための一般的手順は、例えば、島田隆、斎藤泉、小澤敏也編集、『実験医学別冊バイオマニュアルUPシリーズ 遺伝子治療の基礎技術』、1996年、羊土社発行に詳述されている。
以下、この発明の実施の形態につき、実施例を挙げて説明する。実施例A−1乃至A−9にはこの発明によるポリペプチドの製造方法の実施例が、また、実施例B−1乃至B−5にはこの発明の感受性疾患剤の実施例がそれぞれ例示されている。なお、実施例A−1乃至A−9において用いられる手法は斯界において慣用のものであり、例えば、黒木登志夫、谷口克、押村光雄編集、『実験医学別冊細胞工学ハンドブック』、1992年、羊土社発行や横田崇、新井賢一編集、『実験医学別冊バイオマニュアルシリーズ3 遺伝子クローニング実験法』、1993年、羊土社発行などにも詳述されている。
<実施例A−1:ポリペプチドの製造>
<実施例A−1(a):組換えDNAの構築>
ヒト急性リンパ性白血病に由来する株化細胞の一種であるBALL−1細胞(RCB0256)から常法にしたがって染色体DNAを採取する一方、カーステン・ヘンコらが『ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー』、第185巻、227乃至260頁(1985年)に報告しているヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bのシグナルペプチドをコードする配列表における配列番号24に示す塩基配列に基づき、センスプライマー1及びアンチセンスプライマー1として5´−ACACCTCGAGCCACCATGGCCTTGACCTTTGCTTTAAC−3´及び5´−TTGCCAAAGTAGCCCACAGAGCAGCTTG−3´で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドをそれぞれ化学合成した。次いで、0.5ml容反応管に染色体DNAを1μg、10×PCR緩衝液を10μl、そして、25mM dNTPミックスを1μlそれぞれとり、さらに、センスプライマー1及びアンチセンスプライマー1をそれぞれ適量加え、滅菌蒸留水を加えて全量を99μlとし、2.5単位/μl Pfu DNAポリメラーゼを1μl加えた後、94℃、60℃及び72℃の順序でそれぞれ1分間インキュベートするサイクルを30回繰返してPCR反応させたところ、配列表における配列番号24に示す塩基配列と、その塩基配列の5´末端に連結された制限酵素XhoIによる認識部位及び3´末端に連結された配列番号25に示す塩基配列の第1乃至11番目の塩基配列をそれぞれ含んでなるDNA断片1を得た。
別途、同じ特許出願人による特開平8−193098号公報に記載された方法にしたがって、配列表における配列番号4に示すアミノ酸配列を有する野生型ポリペプチドをコードする、配列表における配列番号25に示す塩基配列を含む組換えDNA『pHIGIF』を調製した。配列表における配列番号4のアミノ酸配列の野生型ポリペプチドは、その第16乃至21番目、第30乃至35番目及び、第51乃至55番目のアミノ酸よりなる部分に、それぞれ、部分アミノ酸配列としての、配列番号1、2及び3に示すアミノ酸配列を含んでいる。一方、配列表における配列番号25及び26に示す塩基配列に基づき、常法にしたがって、センスプライマー2及びアンチセンスプライマー2として5´−CTGCTCTGTGGGCTACTTTGGCAAGCTTGAATC−3´及び5´−ACACGCGGCCGCCTAGTCTTCGTTTTGAACAG−3´で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドをそれぞれ化学合成した。0.5ml容反応管に組換えDNA『pHIGIF』を1ng、10×PCR緩衝液を10μl、そして、25mM dNTPミックスを1μlをとり、さらに、センスプライマー2及びアンチセンスプライマー2をそれぞれ適量加え、滅菌蒸留水を加えて全量を99μlとし、2.5単位/μl Pfu DNAポリメラーゼを1μl加えた後、94℃、60℃及び72℃の順序でそれぞれ1分間インキュベートするサイクルを30回繰返してPCR反応させたところ、配列表における配列番号25に示す塩基配列と、その塩基配列の3´末端に連結された終止コドンTAG及び制限酵素NotIによる認識部位並びに5´末端に連結された配列番号24に示す塩基配列の第57乃至69番目の塩基配列をそれぞれ含んでなるDNA断片2を得た。
0.5ml容反応管にこのようにして得たDNA断片1及び2をそれぞれ1ng、10×PCR緩衝液を10μl、さらに、25mM dNTPミックスを1μlとり、滅菌蒸留水で99μlとし、94℃で3分間インキュベートし、37℃まで徐々に冷却し、15分間インキュベートした後、2.5単位/μl Pfu DNAポリメラーゼを1μl加え、72℃まで徐々に昇温し、2分間インキュベートし、センスプライマー1及びアンチセンスプライマー2をそれぞれ適量加え、94℃で1分間、60℃で1分間及び72℃で1分30秒間の順序でインキュベートするサイクルを30回繰返してさらにPCR反応させたところ、配列表における配列番号26に示す塩基配列を含んでなるDNA断片3が得られた。
次に、常法にしたがって、配列表における配列番号26に示す塩基配列の第287番目のグアニンをシトシンに置換するための変異センスプライマーとしての5´−CTCTGTGAAGTCTGAGAAAATTTCAACTC−3´で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドを化学合成した。そして、DNA断片3を鋳型とし、センスプライマー2に代えてこの変異センスプライマーを用いた以外はDNA断片2の場合と同様にPCR反応させたところ、配列表における配列番号26に示す塩基配列の第287番目の塩基がシトシンであること以外は配列番号26の塩基配列における第276乃至570番目と同一の塩基配列を含有するDNA断片4が得られた。
別途、常法にしたがって、配列表における配列番号26に示す塩基配列の第287番目のグアニンをシトシンに置換するための変異アンチセンスプライマーとしての5´−GAGTTGAAATTTTCTCAGACTTCACAGAG−3´で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドを化学合成した。そして、DNA断片3を鋳型とし、アンチセンスプライマー1に代えてこの変異アンチセンスプライマーを用いた以外はDNA断片1の場合と同様にPCR反応させたところ、配列表における配列番号26に示す塩基配列の第287番目の塩基がシトシンであること以外は配列番号26の塩基配列における第1乃至304番目と同一の塩基配列を含有するDNA断片5が得られた。
このようにして得たDNA断片4及び5を鋳型にした以外は、DNA断片3の場合と同様にPCR反応させたところ、配列表における配列番号6に示すアミノ酸をコードする塩基配列を含むDNA断片6を得た。このDNA断片6は、配列表における配列番号15に示す塩基配列と、その塩基配列の5´末端に連結された配列番号24に示す塩基配列及び制限酵素XhoIによる認識部位と、3´末端に連結された終止コドンTAG及び制限酵素NotIによる認識部位からなっていた。
その後、常法にしたがって、このDNA断片6を制限酵素XhoI及びNotIにより切断し、得られた555塩基対からなるDNA断片を25ngとり、予め制限酵素XhoI及びNotIにより同様に切断しておいたインビトロジェン製プラスミドベクター『pCDM8』を10ng加え、宝酒造製ライゲーション・キット『ライゲーション・キット・バージョン2』を用いて16℃で30分間インキュベートした後、クローニングしたところ、4,494塩基対からなる自律複製可能な組換えDNA『pCSHIGIF/MUT12』が得られた。図1に示したように、この組換えDNAにおいては、配列表における配列番号15に示す塩基配列を含むcDNA『IGIF/MUT12』がヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bのシグナルペプチドをコードする塩基配列IFNssの下流に連結されていた。配列表における配列番号15に示す塩基配列は、そこに併記したアミノ酸配列に見られるように、配列番号4に示すアミノ酸配列の野生型ポリペプチドにおける第68番目のシステインがセリンに置換された、配列番号6に示すアミノ酸配列をコードするものである。
対照として、DNA断片6に代えてDNA断片3を用いた以外は上記と同様に処置して、4,494塩基対からなる自律複製可能な組換えDNA『pCSHIGIF/WT』を得た。図2に見られるように、この組換えDNAにおいては、野生型ポリペプチドをコードする配列表における配列番号25に示す塩基配列を有するcDNA『IGIF/WT』がヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bのシグナルペプチドをコードする塩基配列IFNssの下流に連結されていた。
<実施例A−1(b):形質転換体によるポリペプチドの製造>
実施例A−1(a)の方法により得た組換えDNA『pCSHIGIF/MUT12』を通常のコンピテントセル法によりインビトロジェン製大腸菌MC1061/P3株に導入し、得られた形質転換体を20μg/mlアンピシリン及び10μg/mlテトラサイクリンをそれぞれ含むL培地(pH7.2)に接種し、37℃で18時間振盪培養した。培養物を遠心分離して菌体を分離し、これに通常のアルカリ−SDS法を適用して組換えDNAを抽出した。
6ウェルマイクロプレートに10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したDME培地(pH7.4)を2.5ml/ウェルずつ分注し、アフリカミドリザルの腎臓に由来する株化細胞の一種であるCOS−1細胞(ATCC CRL1650)を1.8×105個/ウェルの割合で接種した後、5%CO2インキュベーター中、37℃で24時間培養した。培養物から上清を除き、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)により平衡化したDME培地により洗浄した後、2.8μg/mlの上記で抽出した組換えDNA、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)、0.4mg/ml DEAE−デキストラン及び0.1mMクロロキンをそれぞれ含むDME培地を1.8ml/ウェルずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で4時間培養した。上清を除き、10%(v/v)ジメチルスルフォキシド及び140mM NaClをそれぞれ含む10mM燐酸緩衝液(pH7.4)を2.5ml/ウェルずつ加え、室温下で2分間静置し、再度上清を除き、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)を含むDME培地により細胞を洗浄した後、コスモバイオ製培養培地『COS培地』を2.5ml/ウェル加え、5%CO2インキュベーター中、37℃で3日間培養した。培養物を同じ特許出願人による特開平8−231598号公報に記載されたモノクローナル抗体を用いるウェスタンブロッティング法により分析したところ、配列表における配列番号4に示すアミノ酸配列の第68番目のシステインがセリンに置換されたアミノ酸配列を有し、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するこの発明のポリペプチドが培養物1ml当り約20ng産生していた。
対照として、実施例A−1(a)の方法により得た組換えDNA『pCSHIGIF/WT』を組換えDNA『pCSHIGIF/MUT12』と同様に処置したところ、培養物1ml当り、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する野生型ポリペプチドが約1ng産生していた。このポリペプチド産生量は、組換えDNA『pCSHIGIF/MUT12』を用いた場合の約5%に過ぎないものである。このことは、本実施例で得たこの発明のポリペプチドが、野生型ポリペプチドと比較して、安定性及び生理活性が高いことを示している。
<実施例A−1(c):ポリペプチドの精製>
実施例A−1(b)の方法により得たこの発明のポリペプチドを含む培養物を遠心分離し、上清を採取した。別途、同じ特許出願人による特開平8−231598号公報に記載された方法にしたがってモノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィー用ゲルを調製し、プラスチック製円筒管にカラム状に充填し、燐酸緩衝生理食塩水(以下、「PBS」と言う。)で洗浄した後、上記上清を負荷した。カラムを新鮮なPBSで洗浄した後、1M塩化ナトリウムを含む0.1Mグリシン−塩酸緩衝液(pH2.5)を通液し、溶出画分から免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するポリペプチドを含む画分を採取し、PBSに対して4℃で18時間透析し、膜濾過により濃縮した後、凍結乾燥して、純度約95%のポリペプチド固状物を得た。収量は原料培養物当り約50%であった。並行して、組換えDNA『pCSHIGIF/WT』を用いて得た野生型ポリペプチドを含む培養物を同様にして精製し、後記理化学的性質の解明において対照として用いた。
<実施例A−1(d):分子量>
実施例A−1(c)の方法により得たこの発明のポリペプチドをユー・ケー・レムリが『ネイチャー』、第227巻、680乃至685頁(1970年)に報告している方法に準じ、還元剤として2%(w/v)ジチオトレイトールの存在下でSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動したところ、分子量18,000乃至19,500ダルトンに相当する位置にIFN−γ誘導能あるポリペプチドの主バンドが観察された。なお、このときの分子量マーカーは、ウシ血清アルブミン(67,000ダルトン)、オボアルブミン(45,000ダルトン)、カーボニックアンヒドロラーゼ(30,000ダルトン)、大豆トリプシンインヒビター(20,100ダルトン)及びα−ラクトアルブミン(14,400ダルトン)であった。
<実施例A−1(e):N末端アミノ酸配列>
パーキン・エルマー製プロテイン・シーケンサー『473A型』を使用し、常法にしたがって分析したところ、実施例A−1(c)の方法により得たこの発明のポリペプチドは、N末端に配列表における配列番号27に示すアミノ酸配列を有していた。
<実施例A−1(f):安定性>
実施例A−1(c)の方法により得たこの発明のポリペプチド及び野生型ポリペプチドをCOS培地にポリペプチド固形物として約10ng/mlになるようにそれぞれ別々に溶解し、溶液を40℃で24時間インキュベートした。インキュベート開始から0時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間及び24時間後にそれぞれの溶液からサンプリングし、そのIFN−γ誘導能を後記実施例A−1(g)の方法により測定することにより活性経時変化を調べた。そして、インキュベート開始から0時間後のIFN−γ誘導能を基準にして、各個のインキュベーション時間における残存活性の百分率(%)を計算した。結果を図3に示す。
図3の結果に見られるように、本実施例のポリペプチドは野生型ポリペプチドと比較して安定性が有意に高く、生理活性がより長時間持続した。このことは、本実施例におけるアミノ酸の置換が、野生型ポリペプチドの生理活性を損なうことなく安定性を高めるのに有効であることを物語っている。
<実施例A−1(g):免疫担当細胞におけるIFN−γの産生>
ヒト急性骨髄性白血病に由来する株化細胞の一種であるKG−1細胞(ATCC CCL246)を血清無含有のRPMI−1640培地(pH7.4)に細胞密度3×105個/mlになるように接種し、10%CO2インキュベーター中、37℃で4日間培養した後、細胞を採取し、10%仔牛血清アルブミンを補足したRPMI−1640培地(pH7.4)に細胞密度3×106個/mlになるように浮遊させた。この浮遊液を96ウェルマイクロプレートに0.1ml/ウェルずつ分注し、実施例A−1(c)の方法により得たこの発明のポリペプチドか野生型ポリペプチドのいずれかを適宜希釈して0.1ml/ウェル加えた後、10%CO2 インキュベーター中、37℃で24時間培養した後、各ウェルから培養上清を0.1mlずつ採取し、通常の酵素免疫測定法によりIFN−γを測定した。並行して、ポリペプチドを一切省略した系を設け、上記と同様に処置して対照とした。結果を表1に示す。なお、表1中のIFN−γ含量は、米国国立衛生研究所(NIH)から入手したIFN−γ標品(Gg23−901−530)に基づき国際単位(IU)に換算している。
表1の結果は、この発明のポリペプチドを作用させると、免疫担当細胞としてのKG−1細胞においてIFN−γの産生が誘導されたことを示している。そして、このときのIFN−γ産生は野生型ポリペプチドの場合と同等以上であった。
<実施例A−1(h):NK細胞による細胞障害性の増強>
ヘパリン加注射器により健常者から血液を採取し、PBSにより2倍希釈した後、フィコール上に重層し、遠心分離して高密度リンパ球を得た。このリンパ球を細胞密度1×106個/mlになるように10μg/mlカナマイシン、5×10−5M 2−メルカプトエタノール及び10%(v/v)ウシ胎児血清をそれぞれ含むRPMI−1640培地(pH7.2)に浮遊させ、12ウェルマイクロプレートに0.5ml/ウェルずつ分注した。そして、実施例A−1(c)の方法により得たこの発明のポリペプチドか野生型ポリペプチドのいずれかを上記と同一の新鮮な培地に適宜希釈してマイクロプレートに1.5ml/ウェルずつ加え、さらに、50単位/ml組換え型ヒトインターロイキン2を含むか含まない上記と同一の新鮮な培地を0.5ml/ウェル加えた後、5%CO2インキュベーター中、37℃で24時間培養し、PBSで洗浄して効果細胞としてのNK細胞を含む培養リンパ球を得た。
次いで、常法により51Cr標識したNK細胞感受性標的細胞としてのヒト慢性骨髄性白血病に由来する株化細胞の一種であるK−562細胞(ATCC CCL243)を96ウェルマイクロプレートに1×104個/ウェルずつとり、上記で調製した培養リンパ球を効果細胞/標的細胞比で2.5:1、5:1又は10:1の割合となるように加え、5%CO2インキュベーター中、37℃で4時間培養した後、常法にしたがって培養上清の放射能を測定して死滅標的細胞数を求めた。そして、各々の系につき、細胞障害性の目安とすべく、試験に供した標的細胞数に対する死滅標的細胞数の百分率(%)を計算した。結果を表2に示す。
表2の結果は、この発明のポリペプチドにNK細胞による細胞障害性を増強する性質があり、しかも、この性質は野生型ポリペプチドと同等以上であることを示している。表2の結果に見られるように、この細胞障害性の増強は、インターロイキン2が共存すると、一段と増強される。
<実施例A−1(i):LAK細胞の生成誘導>
常法により51Cr標識したNK細胞非感受性標的細胞としてのヒトバーキットリンパ腫に由来する株化細胞の一種であるRaji細胞(ATCC CCL86)を96ウェルマイクロプレートに1×104個/ウェルずつとり、72時間培養した以外は実施例A−1(g)と同様にして調製した効果細胞としてのLAK細胞を含む培養リンパ球を効果細胞/標的細胞比で5:1、10:1又は20:1の割合で加え、5%CO2インキュベーター中、37℃で4時間培養した後、常法にしたがって培養上清の放射能を測定し、実施例A−1(h)と同様にして細胞障害性(%)を計算した。結果を表3に示す。
表3の結果は、この発明のポリペプチドにLAK細胞の生成を誘導する性質があり、しかも、この性質は野生型ポリペプチドと同等以上であることを示している。表3の結果に見られるように、この誘導は、インターロイキン2が共存すると、一段と増強される。
<実施例A−1(j):急性毒性試験>
常法にしたがって、8週齢のマウスに実施例A−1(c)の方法により得たこの発明のポリペプチドを経皮、経口又は腹腔内に注射投与した。その結果、この発明のポリペプチドのLD50は、いずれの投与経路によっても約1mg/kgマウス体重以上であることが判明した。このことは、この発明のポリペプチドがヒトに対する医薬品に配合して安全であることを裏付けている。
<実施例A−2:ポリペプチドの製造>
実施例A−1(a)の方法により得たDNA断片6を鋳型に用い、配列表における配列番号4に示すアミノ酸配列の第38番目のシステインをセリンに置換するための変異センスプライマー及び変異アンチセンスプライマーとして、それぞれ5´−CTGATTCTGACTCTAGATAATGC−3´及び5´−GCATTATCTCTAGAGTCAGAATCAG−3´で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドを用いた以外は実施例A−1(a)と同様にして、配列表における配列番号16に示す塩基配列を含む自律複製可能な組換えDNA『pCSHIGIF/MUT21』を得た。図4に示すように、この組換えDNAにおいては、配列表における配列番号7に示すアミノ酸配列をコードするcDNA『IGIF/MUT21』がヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bのシグナルペプチドをコードする塩基配列IFNssの下流に連結されていた。
この組換えDNAを実施例A−1(b)と同様にしてCOS−1細胞に導入し、得られた形質転換体を培養したところ、配列表における配列番号7に示すアミノ酸配列を含有するポリペプチドが培養培地1ml当り約50ng産生していた。この培養物を実施例A−1の方法により精製し、理化学的性質を調べたところ、本実施例のポリペプチドは実施例A−1の方法により得たこの発明のポリペプチドと同様の分子量とN末端アミノ酸配列を有し、同様に毒性が低かった。さらに、実施例A−1(f)の方法により安定性を調べたところ、図3に見られるように、本実施例のポリペプチドは野生型ポリペプチドと比較して安定性が有意に高かった。これらの事実は、本実施例におけるアミノ酸の置換が、野生型ポリペプチドの生理活性を損なうことなく安定性を高めるのに有効であることを物語っている。
<実施例A−3:ポリペプチドの製造>
実施例A−1(a)の方法により得たDNA断片6を鋳型に用い、配列表における配列番号4に示すアミノ酸配列の第127番目のシステインをセリンに置換するための変異センスプライマー及び変異アンチセンスプライマーとして、それぞれ5´−CTTTCTAGCTTCTGAAAAAGAGAGAG−3´及び5´−CTCTCTCTTTTTCAGAAGCTAGAAAG−3´で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドを用いた以外は実施例A−1(a)と同様にして、配列表における配列番号17に示す塩基配列を含む自律複製可能な組換えDNA『pCSHIGIF/MUT25』を得た。図5に示すように、この組換えDNAにおいては、配列表における配列番号8に示すアミノ酸配列をコードするcDNA『IGIF/MUT25』がヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bのシグナルペプチドをコードする塩基配列IFNssの下流に連結されていた。
この組換えDNAを実施例A−1(b)と同様にしてCOS−1細胞に導入し、得られた形質転換体を培養したところ、配列表における配列番号8に示すアミノ酸配列を含有するポリペプチドが培養培地1ml当り約30ng産生していた。この培養物を実施例A−1の方法により精製し、理化学的性質を調べたところ、本実施例のポリペプチドは実施例A−1の方法により得たこの発明のポリペプチドと同様の分子量とN末端アミノ酸配列を有し、同様に毒性が低かった。さらに、実施例A−1(f)の方法により安定性を調べたところ、図3に見られるように、本実施例のポリペプチドは野生型ポリペプチドと比較して安定性が有意に高かった。これらの事実は、本実施例におけるアミノ酸の置換が、野生型ポリペプチドの生理活性を損なうことなく安定性を高めるのに有効であることを物語っている。
<実施例A−4:ポリペプチドの製造>
実施例A−2の方法により得た組換えDNA『pCSHIGIF/MUT21』における配列表の配列番号7に示すアミノ酸配列をコードするcDNA『IGIF/MUT21』を鋳型に用い、配列表における配列番号4に示すアミノ酸配列の第127番目のシステインをセリンに置換するための変異センスプライマー及び変異アンチセンスプライマーとして、それぞれ5´−CTTTCTAGCTTCTGAAAAAGAGAGAG−3´及び5´−CTCTCTCTTTTTCAGAAGCTAGAAAG−3´で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドを用いた以外は実施例A−1(a)と同様にして、配列表における配列番号18に示す塩基配列を含む自律複製可能な組換えDNA『pCSHIGIF/MUT32』を得た。図6に示すように、この組換えDNAにおいては、配列表における配列番号9に示すアミノ酸配列をコードするcDNA『IGIF/MUT32』がヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bのシグナルペプチドをコードする塩基配列IFNssの下流に連結されていた。
この組換えDNAを実施例A−1(b)と同様にしてCOS−1細胞に導入し、得られた形質転換体を培養したところ、配列表における配列番号9に示すアミノ酸配列を含有するポリペプチドが培養培地1ml当り約80ng産生していた。この培養物を実施例A−1の方法により精製し、理化学的性質を調べたところ、本実施例のポリペプチドは実施例A−1の方法により得たこの発明のポリペプチドと同様の分子量とN末端アミノ酸配列を有し、同様に毒性が低かった。さらに、実施例A−1(f)の方法により安定性を調べたところ、図3に見られるように、本実施例のポリペプチドは野生型ポリペプチドと比較して安定性が有意に高かった。これらの事実は、本実施例におけるアミノ酸の置換が、野生型ポリペプチドの生理活性を損なうことなく安定性を高めるのに有効であることを物語っている。
<実施例A−5:ポリペプチドの製造>
実施例A−4の方法により得た組換えDNA『pCSHIGIF/MUT32』における配列表の配列番号18に示す塩基配列のcDNA『IGIF/MUT32』を鋳型に用い、配列表における配列番号4に示すアミノ酸配列の第76番目のシステインをセリンに置換するための変異センスプライマー及び変異アンチセンスプライマーとして、それぞれ5´−CAACTCTCTCCTCTGAGAACAA−3´及び5´−TTGTTCTCAGAGGAGAGAGTTG−3´で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドを用いた以外は実施例A−1(a)と同様にして、配列表における配列番号19に示す塩基配列を含む自律複製可能な組換えDNA『pCSHIGIF/MUT41』を得た。図7に示すように、この組換えDNAにおいては、配列表における配列番号10に示すアミノ酸配列をコードするcDNA『IGIF/MUT41』がヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bのシグナルペプチドをコードする塩基配列IFNssの下流に連結されていた。
この組換えDNAを実施例A−1(b)と同様にしてCOS−1細胞に導入し、得られた形質転換体を培養したところ、配列表における配列番号10に示すアミノ酸配列を含有するポリペプチドが培養培地1ml当り約6ng産生していた。この培養物を実施例A−1の方法により精製し、理化学的性質を調べたところ、本実施例のポリペプチドは実施例A−1の方法により得たポリペプチドと同様の分子量とN末端アミノ酸配列を有し、同様に毒性が低かった。さらに、実施例A−1(f)の方法により安定性を調べたところ、図3に見られるように、本実施例のポリペプチドは野生型ポリペプチドと比較して安定性が著しく高かった。これらの事実は、本実施例におけるアミノ酸の置換が、野生型ポリペプチドの生理活性を損なうことなく安定性を高めるのに極めて有効であることを物語っている。
<実施例A−6:ポリペプチドの製造>
実施例A−2の方法により得た組換えDNA『pCSHIGIF/MUT21』における配列表の配列番号7に示すアミノ酸配列をコードするcDNA『IGIF/MUT21』を鋳型に用い、配列表における配列番号4に示すアミノ酸配列における第76番目のシステインをアラニンに変換するための変異センスプライマー及び変異アンチセンスプライマーとして、それぞれ、5´−CTCTCCGCTGAGAACAAAATTATTTCC−3´及び5´−TTTGTTCTCAGCGGAGAGAGTTG−3´で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドを用いた以外は実施例A−1(a)と同様にして、配列表における配列番号20に示す塩基配列を含む自律複製可能な組換えDNA『pCSHIGIF/MUT35』を得た。図8に示すように、この組換えDNAにおいては、配列表における配列番号11に示すアミノ酸配列をコードするcDNA『IGIF/MUT35』がヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bのシグナルペプチドをコードする塩基配列IFNssの下流に連結されていた。
この組換えDNAを実施例A−1(b)と同様にしてCOS−1細胞に導入し、得られた形質転換体を培養したところ、配列表における配列番号11に示すアミノ酸配列を含有するポリペプチドが培養培地1ml当り約60ng産生していた。この培養物を実施例A−1の方法により精製し、理化学的性質を調べたところ、本実施例ポリペプチドは実施例A−1の方法により得たこの発明のポリペプチドと同様の分子量とN末端アミノ酸配列を有し、同様に毒性が低かった。さらに、実施例A−1(f)の方法により安定性を調べたところ、図3に見られるように、本実施例のポリペプチドは野生型ポリペプチドと比較して安定性が著しく高かった。これらの事実は、本実施例におけるアミノ酸の置換が、野生型ポリペプチドの生理活性を損なうことなく安定性を高めるのに極めて有効であることを物語っている。
<実施例A−7:ポリペプチドの製造>
実施例A−4の方法により得た組換えDNA『pCSHIGIF/MUT32』における配列表の配列番号18に示すアミノ酸配列をコードするcDNA『IGIF/MUT32』を鋳型に用い、配列表における配列番号4に示すアミノ酸配列の第76番目のシステインをアラニンに置換するための変異センスプライマー及びアンチセンスプライマーとして、それぞれ、5´−CTCTCCGCTGAGAACAAAATTATTTCC−3´及び5´−TTTGTTCTCAGCGGAGAGAGTTG−3´で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドを用いた以外は実施例A−1(a)と同様にして、配列表における配列番号21に示す塩基配列を含む自律複製可能な組換えDNA『pCSHIGIF/MUT42』を得た。図9に示すように、この組換えDNAにおいては、配列表における配列番号12に示すアミノ酸配列をコードするcDNA『IGIF/MUT42』がヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bをシグナルペプチドをコードする塩基配列IFNssの下流に連結されていた。
この組換えDNAを実施例A−1(b)と同様にしてCOS−1細胞に導入し、得られた形質転換体を培養したところ、配列表における配列番号12に示すアミノ酸配列を含有するポリペプチドが培養培地1ml当り約30ng産生していた。この培養物を実施例A−1の方法により精製し、理化学的性質を調べたところ、本実施例ポリペプチドは実施例A−1の方法により得たこの発明のポリペプチドと同様の分子量とN末端アミノ酸配列を有し、同様に毒性が低かった。さらに、実施例A−1(f)の方法により安定性を調べたところ、図3に見られるように、本実施例のポリペプチドは野生型ポリペプチドと比較して安定性が著しく高かった。これらの事実は、本実施例におけるアミノ酸の置換が、野生型ポリペプチドの生理活性を損なうことなく安定性を高めるのに極めて有効であることを物語っている。
<実施例A−8:ポリペプチドの製造>
<実施例A−8(a):組換えDNAの構築>
実施例A−1(a)に記載のDNA断片1を得るためのPCR反応において、アンチセンスプライマー1に代えて、5′−CGGCCAAAGTTGCCCACAGAGCAGCTTG−3′で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドを用いた以外は同様にしてPCR反応を行った。その結果、配列表における配列番号24に示す塩基配列と、その塩基配列の5´末端に連結された制限酵素XhoIによる認識部位及び3´末端に連結された配列番号28に示す塩基配列の第1乃至11番目の塩基配列をそれぞれ含んでなるDNA断片7を得た。
同じ特許出願人による特開平8−27189号公報に記載された方法にしたがって、配列表における配列番号5に示すアミノ酸配列を有する野生型ポリペプチドをコードする配列表における配列番号28に示す塩基配列を含む組換えDNA『pMGTG−1』を調製した。配列表における配列番号5に示すアミノ酸配列の野生型ポリペプチドは、その第16乃至21番目、第29乃至34番目及び、第50乃至54番目のアミノ酸よりなる部分に、それぞれ、部分アミノ酸配列として、配列表における配列番号1、2及び3に示すアミノ酸配列を含んでいる。一方、センスプライマー3及びアンチセンスプライマー3として、5′−CTGCTCTGTGGGCAACTTTGGCCGACTTCACTG−3′及び5′−ACACGCGGCCGCCTAACTTTGATGTAAGTTAG−3′で表されるオリゴヌクレオチドを化学合成した。実施例A−1(a)に記載のDNA断片2を得るためのPCR反応において、組換えDNA『pHIGIF』、センスプライマー2及びアンチセンスプライマー2に代えて、ここで得た組換えDNA『pMGTG−1』、センスプライマー3及びアンチセンスプライマー3をそれぞれ用いた以外は同様にしてPCR反応を行った。その結果、配列表における配列番号28に示す塩基配列と、その塩基配列の3´末端に連結された終止コドンTAG及び制限酵素NotIによる認識部位並びに5´末端に連結された配列番号24に示す塩基配列の第57乃至69番目の塩基配列をそれぞれ含んでなるDNA断片8を得た。
実施例A−1(a)に記載のDNA断片3を得るためのPCRにおいて、DNA断片1、DNA断片2及びアンチセンスプライマー2に代えて、上記で得たDNA断片7、DNA断片8及びアンチセンスプライマー3をそれぞれ用いたこと以外は同様にしてPCR反応を行った。その結果、配列表における配列番号29に示す塩基配列を含んでなるDNA断片9を得た。
実施例A−1(a)に記載のDNA断片4を得るためのPCR反応において、DNA断片3に代えて上記で得たDNA断片9を用いるとともに、変異センスプライマーとして配列表における配列番号29に示す塩基配列の第103番目のチミンをグアニンに、第104番目のグアニンをシトシンに置換するための5′−GGCCGACTTCACGCTACAACC−3′で表されるオリゴヌクレオチドを化学合成して用い、そしてアンチセンスプライマー2に代えて上記のアンチセンスプライマー3を用いたこと以外は同様にしてPCR反応を行った。その結果、配列表における配列番号29に示す塩基配列の第103番目及び第104番目の塩基がそれぞれグアニン及びシトシンであること以外は配列番号29の塩基配列における第91乃至570番目の塩基からなる配列と同一の塩基配列を含有するDNA断片10を得た。
実施例A−1(a)に記載のDNA断片5を得るためのPCR反応において、DNA断片3に代えて上記で得たDNA断片9を用いるとともに、変異アンチセンスプライマーとして配列表における配列番号29に示す塩基配列の第103番目のチミンをグアニンに、第104番目のグアニンをシトシンに置換するための5′−GGTTGTAGCGTGAAGTCGGCC−3′で表されるオリゴヌクレオチドを化学合成して用いたこと以外は同様にしてPCR反応を行った。その結果、配列表における配列番号29に示す塩基配列の第103番目及び第104番目の塩基がそれぞれグアニン及びシトシンであること以外は配列番号29の塩基配列における第1乃至111番目の塩基からなる配列と同一の塩基配列を含有するDNA断片11を得た。
実施例A−1(a)に記載のDNA断片3を得るためのPCR反応において、DNA断片1、DNA断片2及びアンチセンスプライマー2に代えて、上記で得たDNA断片10、DNA断片11及びアンチセンスプライマー3をそれぞれ用いた以外はすべて同様にしてPCR反応を行った。その結果、配列表における配列番号13に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNA断片12を得た。このDNA断片12は、配列表における配列番号22に示す塩基配列と、その塩基配列の5′末端に連結された配列番号24に示す塩基配列及び制限酵素XhoIによる認識部位と、3′末端に連結された終止コドンTAG及び制限酵素NotIによる認識部位からなっていた。
実施例A−1(a)に記載の組換えDNA『pCSHIGIF/MUT12』を得るための一連の処理において、DNA断片6に代えて上記で得たDNA断片12を用いた以外は同様にして処理したところ、自律複製可能な組換えDNA『pCSMIGIF/MUT11』が得られた。図10に示すように、この組換えDNAにおいては、配列表における配列番号22に示す塩基配列を含むcDNA『mIGIF/MUT11』がヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bのシグナルペプチドをコードする塩基配列IFNssの下流に連結されていた。配列表における配列番号22に示す塩基配列は、そこに併記したアミノ酸配列に見られるように、配列番号5に示すアミノ酸配列の野生型ポリペプチドにおける第7番目のシステインがアラニンに置換されたアミノ酸配列をコードするものである。
対照として、実施例(a)に記載の組換えDNA『pCSHIGIF/MUT12』を得た一連の処理において、DNA断片6に代えて上記で得たDNA断片9を用いた以外は同様にして処理したところ、自律複製可能な組換えDNA『pCSMIGIF/WT』が得られた。図11に示すようにこの組換えDNAにおいては、野生型ポリペプチドをコードする配列表における配列番号28に示す塩基配列を含有するcDNA『mIGIF/WT』がヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bのシグナルペプチドをコードする塩基配列『IFNss』の下流に連結されていた。
<実施例A−8(b):形質転換体によるポリペプチドの製造>
実施例A−1(b)に記載のポリペプチドの製造において、組換えDNA『pCSHIGIF/MUT12』に代えて実施例A−8(a)で得た組換えDNA『pCSMIGIF/MUT11』を用いた以外は同様にして、組換えDNAを抽出し、組換えDNAをCOS−1細胞に導入し、組換えDNAの導入されたCOS−1細胞を培養して培養物を得た。培養物を、同じ特許出願人による特開平8−217798号公報に記載されたモノクローナル抗体を用いるウェスタンブロッティング法により分析したところ、配列表における配列番号5に示すアミノ酸配列の第7番目のシステインがアラニンに置換されたアミノ酸配列を有し、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するこの発明のポリペプチドが培養物1ml当り約20ng産生していた。
対照として、実施例A−8(a)の方法により得た組換えDNA『pCSMIGIF/WT』を、組換えDNA『pCSMIGIF/MUT11』と同様に処理したところ、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するポリペプチドが産生された。このポリペプチド産生量は、『pCSMIGIF/MUT11』を用いた場合と比較して有意に低かった。このことは、本実施例で得たこの発明のポリペプチドが、野生型ポリペプチドと比較して、安定性及び生理活性が高いことを示している。
<実施例A−8(c):ポリペプチドの精製>
実施例A−8(b)の方法により得たこの発明のポリペプチドを含む培養液を遠心分離し、上清を採取した。別途、同じ特許出願人による特開平8−217798号公報に記載された方法にしたがってモノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィー用ゲルを調製し、プラスチック製円筒管にカラム状に充填し、PBSで洗浄した後、上記上清を負荷した。カラムを新鮮なPBSで洗浄した後、35mMエチルアミン水溶液(pH10.8)を通液し、溶出画分から免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するポリペプチドを含む画分を採取し、PBSに対して透析し、膜濾過により濃縮し、凍結乾燥して純度約95%のポリペプチド固状物を得た。並行して、組換えDNA『pCSMIGIF/WT』を用いて得た野生型ポリペプチドを含む培養物を同様にして精製し、後記理化学的性質の解明における対照として用いた。
<実施例A−8(d):分子量>
実施例A−8(c)での方法により得たこの発明のポリペプチドを、実施例A−1(d)に準じてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ、分子量18,500乃至19,500ダルトンに相当する位置にIFN−γ産生能あるポリペプチドの主バンドが観察された。
<実施例A−8(e):N末端アミノ酸配列>
実施例A−1(e)に準じて分析したところ、実施例A−8(c)の方法により得たこの発明のポリペプチドは、N末端に配列表における配列番号30に示すアミノ酸配列を有していた。
<実施例A−8(f):安定性>
実施例A−8(c)の方法により得たこの発明のポリペプチド及び野生型ポリペプチドを、0.2g/mlマルトースを含むPBSにポリペプチド固形物として約100ng/mlになるようにそれぞれ別々に溶解し、溶液を40℃で24時間インキュベートした。インキュベート開始から0時間、3時間、9時間及び24時間にそれぞれの溶液から一部をサンプリングしてそのIFN−γ産生の誘導能の経時変化を調べた。IFN−γ産生の誘導能は、後記実施例A−8(g)に詳述した方法により求め、インキュベート開始後0時間の値を基準にして、各インキュベーション時間における残存活性の百分率(%)を計算した。結果を図12に示す。
図12の結果に見られるように、本発明のポリペプチドは野生型ポリペプチドと比較して安定性が有意に高く、生理活性がより長時間持続した。このことは、本実施例におけるアミノ酸の置換が、野生型ポリペプチドの生理活性を損なうことなく安定性を高めるのに有効であることを物語っている。
<実施例A−8(g):免疫担当細胞におけるIFN−γの産生>
C3H/HeJマウスより免疫担当細胞として脾細胞を採取し、細胞を10%(v/v)牛胎児血清を補足したRPMI−1640培地に浮遊させ、細胞浮遊液に実施例A−8(a)の方法で得たこの発明のポリペプチド又は野生型ポリペプチドを、コンカナバリンA又はインターロイキン2の存在するか又はしない条件下で添加し、培養した後、産生したIFN−γを酵素免疫測定法により測定することにより、IFN−γの産生の誘導能を調べた。その結果、この発明のポリペプチドは、免疫担当細胞としてのマウス脾細胞におけるIFN−γの産生を誘導し、その誘導能は、野生型ポリペプチドの場合と同等以上であることが確認された。
<実施例A−8(h):急性毒性試験>
実施例A−1(j)に記載の方法にしたがって、実施例A−8(a)の方法で得たこの発明のポリペプチドの急性毒性試験を実施した。その結果、当該ポリペプチドのLD50は、いずれの投与経路によっても約1mg/kgマウス体重以上であり、哺乳動物に対する医薬品に配合して安全であることが確認された。
<実施例A−9:ポリペプチドの製造>
実施例A−8(a)の方法により得たDNA断片9を鋳型に用い、配列表における配列番号5に示すアミノ酸配列の125番目のシステインをセリンに置換するための変異センスプライマー及び変異アンチセンスプライマーとして、それぞれ、5′−GGACACTTTCTTGCTAGCCAAAAGG−3′及び5′−CCTTTTGGCTAGCAAGAAAGTGTCC−3′で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドを用いた以外は実施例A−8(a)と同様にして処理し、配列表における配列番号23に示す塩基配列を含む自律複製可能な組換えDNA『pCSMIGIF/MUT12』を得た。図13に示すように、この組換えDNAにおいては、配列表における配列番号14に示すアミノ酸配列をコードするcDNA『mIGIF/MUT12』がヒトインターフェロン−αにおけるサブタイプα2bのシグナルペプチドをコードする塩基配列IFNssの下流に連結されていた。
この組換えDNAを実施例A−1(b)と同様にしてCOS−1細胞に導入し、得られた形質転換体を培養したところ、配列表における配列番号14に示すアミノ酸配列を含有するポリペプチドが培養培地1ml当り約50ng産生していた。この培養物を実施例A−8の方法により精製し、理化学的性質を調べたところ、本実施例のポリペプチドは実施例A−8の方法により得たこの発明のポリペプチドと同様の分子量とN末端アミノ酸配列を有し、同様に毒性が低かった。さらに、実施例A−8(f)の方法により安定性を調べたところ、図12に見られるように、本実施例のポリペプチドは野生型ポリペプチドと比較して安定性が有意に高かった。これらの事実は、本実施例におけるアミノ酸の置換が野生型ポリペプチドの生理活性を損なうことなく安定性を高めるのに有効であることを物語っている。
<実施例B−1:液剤>
安定剤として1%(w/v)ヒト血清アルブミンを含む生理食塩水に実施例A−1乃至A−9の方法により得たこの発明の精製ポリペプチドのいずれかを1mg/mlになるように溶解し、常法にしたがって精密濾過により滅菌して7種類の液剤を得た。
安定性に優れた本品は、ヒトを含む哺乳動物の、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、感染症及び免疫疾患を含む感受性疾患を治療・予防するための注射剤、点眼剤及び点鼻剤として有用である。
<実施例B−2:乾燥注射剤>
安定剤として1%(w/v)精製ゼラチンを含む生理食塩水100mlに実施例A−1乃至A−9の方法により得たこの発明の精製ポリペプチドのいずれかを100mg溶解し、常法にしたがって精密濾過により除菌し、バイアル瓶に1mlずつ分注し、凍結乾燥した後、密栓して7種類の乾燥製剤を得た。
安定性に優れた本品は、ヒトを含む哺乳動物の、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、感染症及び免疫疾患を含む感受性疾患を治療・予防するための乾燥注射剤として有用である。
<実施例B−3:軟膏剤>
滅菌蒸留水に和光純薬工業製カルボキシビニルポリマー『ハイビスワコー104』と林原製結晶トレハロース粉末『トレハロース』をそれぞれ濃度1.4%(w/w)及び2.0%(w/w)になるように溶解し、実施例A−1乃至A−9の方法により得たこの発明の精製ポリペプチドのいずれかを均一に混合した後、pH7.2に調整して、1g当り精製ポリペプチドを約1mg含む7種類のペースト状物を得た。
延展性と安定性に優れた本品は、ヒトを含む哺乳動物の、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、感染症及び免疫疾患を含む感受性疾患の治療・予防するための軟膏剤として有用である。
<実施例B−4:錠剤>
林原製無水結晶α−マルトース粉末『ファイントース』に実施例A−1乃至A−9の方法により得たこの発明の精製ポリペプチドのいずれかと細胞賦活剤としてのルミンを均一に混合し、得られる混合物を常法により打錠して製品1錠(約200mg)当り精製ポリペプチド及びルミンをそれぞれ約1mg含む7種類の錠剤を得た。
摂取性、安定性に優れ、細胞賦活作用も含有する本品は、ヒトを含む哺乳動物の、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、感染症及び免疫疾患を含む感受性疾患を治療・予防するための錠剤として有用である。
<実施例B−5:養子免疫療法剤>
悪性リンパ腫患者の末梢血から単核球を単離し、37℃に予温した10%(v/v)ヒトAB血清を補足したRPMI−1640培地(pH7.2)に細胞密度約1×106 個/mlになるように浮遊させ、養子免疫療法剤として実施例A−1乃至A−7の方法により得たこの発明の精製ポリペプチドのいずれかを約10ng/mlと組換え型ヒトインターロイキン2を約100単位/ml加え、5%CO2
インキュベーター中、37℃で1週間培養した後、遠心分離したLAK細胞を採取した。
このLAK細胞は、元の悪性リンパ腫患者の体内に移入すると、リンパ腫細胞に顕著な細胞障害性を示し、インターロイキン2のみ用いる養子免疫療法と比較して有意に高い治療効果を発揮する。なお、ヒト単核球に代えて腫瘍組織浸潤リンパ球を同様に処置して得られる細胞障害性T細胞も、元の患者の体内に移入すると、LAK細胞と同様の効果を発揮する。本実施例の養子免疫療法剤は、悪性リンパ腫以外に、例えば、悪性腎腫瘍、悪性黒色腫、大腸癌、肺癌などの固形悪性腫瘍にも有利に適用できる。
IFN−γはウイルス、細菌などに対する感染防御、悪性腫瘍の増殖抑制、免疫機能の調節作用を通じてヒトの生体防御、さらには、イムノグロブリンE抗体の産生阻害に多大の関与をすることが知られている。しかも、前述のとおり、IFN−γはヒトの感受性疾患剤としてすでに実用化されており、その対象疾患、用量、用法及び安全性はほぼ確立した状況にある。一方、フランセス・アール・バークウィル著、渡部好彦訳、『サイトカインとがん治療』、1991年、東京化学同人発行などにも記載されているように、NK細胞及びLAK細胞などのキラー細胞を利用する療法は、抗腫瘍免疫療法を始めとして、多種多様のヒト疾患に対して試みられ、総じて良好な成果が報告されている。最近では、サイトカインを用いるキラー細胞による細胞障害性の増強又はキラー細胞の精製の誘導と治療効果との関連性が注目されており、例えば、ティー・フジオカら『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ユーロロジー』、第73巻、第1号、23乃至31頁(1994年)には、LAK細胞とインターロイキン2を併用する抗腫瘍免疫療法において、インターロイキン2がLAK細胞の生成を顕著に誘導し、重篤な毒性や副作用を惹起することなく、ヒトの転移癌に格別の効果を発揮したことが報告されている。
このように、多種多様のヒト疾患の治療・予防にIFN−γやキラー細胞が深く係わり、その完治又は緩解への多大の寄与が明らかになっている。斯かる状況において、実施例A−1乃至A−9の結果に見られるように、当該ポリペプチドが顕著な毒性を示すことなく、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するとともに、NK細胞による細胞障害性の増強又はLAK細胞の生成を誘導したことは、この発明の感受性疾患剤が重篤な副作用を惹起することなくヒトを含む哺乳動物に長期間連用でき、IFN−γ及び/又はキラー細胞が関与する疾患の治療・予防に効果を発揮することを示している。