JP2007137721A - 燃料改質装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電極間に絶縁膜を設置することなく、液相において優れた改質性能を発揮しうる燃料改質装置を提供する。
【解決手段】 燃料改質装置1は、反応容器40と、液体燃料を貯留するための、燃料タンク10と、燃料タンク10に接続され、反応容器40に液体燃料100を供給するための、燃料供給路20およびポンプ30と、電源70に電気的に接続され、反応容器40に内蔵された、電極50と、電極50に対向するように反応容器40に内蔵された、電極50との間での放電によりプラズマを発生させるための、電極60と、前記液体燃料100と前記プラズマとの接触により生成した水素含有ガスを反応容器40から排出させるための、ガス回収部80およびガス排出路90と、を有する。本発明の燃料改質装置1は、電極50と電極60との電極間距離が0.1〜3.0mmである点に特徴を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料改質装置に関する。より詳細には、燃料から放電により水素含有ガスを生成させるための燃料改質装置に関する。
近年、燃料電池の燃料、種々の有機化合物の水素化、その他各種の工業用途に利用するため、燃料改質による水素含有ガスの製造に関して、様々な研究開発が盛んに行われている。
水素ガスを製造するための燃料としては、メタンやガソリンなどの炭化水素や、メタノールなどのアルコール類などが一般的に用いられている。
かような燃料を用いた燃料改質反応には、水蒸気改質、部分酸化改質、および水蒸気改質と部分酸化改質とを組み合わせたオートサーマル改質がある。メタンを部分酸化改質および水蒸気改質する場合の反応式を以下に示す。
Figure 2007137721
上記の燃料を用いて水蒸気改質により水素ガスを製造するには、従来、燃料と水とを所定の割合で混合し、この燃料と水とが気化した状態で、改質触媒を備える所定の改質器に供給する方法などが一般的に用いられる。
このような改質触媒による従来の方法では、700〜900℃といった高温で反応を進行させる必要がある。このため、得られる水素含有ガス中のCO濃度が、平衡により高くなってしまう。その結果、燃料改質装置の後段に設置される、COを除去するためのシフト反応器が大型化するという問題があった。また、改質触媒を所定の温度に加熱する必要があり、装置の起動性や応答性に劣るという問題があった。
改質触媒を用いた従来の方法における上記のような問題を解決すべく、放電により発生するプラズマを利用して気相で水素含有ガスを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。前記文献1には、メタノールなどの原料と水蒸気とを、放電装置内に導入してプラズマ化した後に再結合させることによって、水素含有ガスを製造する方法が開示されている。
しかしながら、放電プラズマを用いて気相で燃料を改質するには、燃料を気化させる必要がある。従って、液体状の燃料を気化させるための気化器を設置しなければならず、また、燃料を気化させるための熱エネルギも必要となる。このため、例えば燃料電池自動車などに適用する際に装置が大型化し、また、エネルギ効率を充分に向上させることができず、さらなる改善が求められていた。さらに、燃料の気化に伴う起動時間や応答時間の延長も問題となっていた。
かような問題を解決すべく、本発明者らは、液体燃料を気化させることなく、液相にて改質を達成しうる手段として、放電によりプラズマを発生させうる、反応容器内に備えられた一対の電極間に、ピンホールを有する絶縁膜が配置されてなる燃料改質装置を開発し、報告している(非特許文献1を参照)。かような改質装置によれば、液相においても燃料が改質され、水素含有ガスが発生しうる。
特開2001−167784号公報 第13回日本エネルギー学会大会予稿集、p.228
しかしながら、かような燃料改質装置は、絶縁膜を備えることにより以下のような問題を抱えている。すなわち、改質により発生したガスの気泡が、絶縁膜の有するピンホール部分に付着する場合があり、充分な時間にわたって安定した放電が維持できない虞がある。また、絶縁膜の設置に伴い、反応容器の形状や液体燃料の供給形態が制約され、放電時の出力を充分に向上させることができない虞がある。さらに、絶縁膜を設置すること自体、製造コストの高騰の原因ともなる。
本発明は、絶縁膜の設置に伴う上記の問題を解決することを目的とする。具体的には、本発明は、電極間に絶縁膜を設置することなく、液相において優れた改質性能を発揮しうる燃料改質装置を提供することを目的とする。
本発明は、反応容器と、液体燃料を貯留するための、燃料貯留手段と、前記燃料貯留手段に接続され、前記反応容器に液体燃料を供給するための、燃料供給手段と、電圧印加手段に電気的に接続され、前記反応容器に内蔵された、第1の電極と、前記第1の電極に対向するように前記反応容器に内蔵された、前記第1の電極との間での放電によりプラズマを発生させるための、第2の電極と、前記液体燃料と前記プラズマとの接触により生成した水素含有ガスを前記反応容器から排出させるための、ガス排出手段と、を有する、燃料改質装置であって、前記第1の電極と前記第2の電極との電極間距離が0.1〜3.0mmであることを特徴とする、燃料改質装置である。
本発明によれば、液相において燃料をプラズマ改質するには従来必要であるとされていた電極間の絶縁膜を設置しなくとも、液相において安定に燃料が改質され、水素含有ガスを発生させうる。また、絶縁膜を設置する必要がないことから、改質装置の製造コストが削減されうる。
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。なお、各図において同一要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、説明の都合上、図面の寸法比率は誇張されており、図示する形態が実際とは異なる場合がある。
図1は、本発明の燃料改質装置の好ましい一実施形態を示す概略図である。燃料改質装置1は、液体燃料100を放電プラズマにより改質し、水素含有ガスを生成させる装置である。なお、図1は、燃料改質装置1の定常運転状態を示す図であり、反応容器40の内部には、液体燃料100が充填されている。
燃料改質装置1は、燃料タンク10を備える。この燃料タンク10は、液体燃料100を貯留するための燃料貯留手段として機能する。本実施形態において、液体燃料100は炭化水素系化合物であるイソオクタンである。ただし、その他の化合物が液体燃料100として用いられてもよく、例えば、ガソリン、灯油、ナフサなどの炭化水素系化合物や、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類が液体燃料100として用いられうる。入手が容易であるという観点からは、メタノールやエタノールが好ましく用いられうる。特にエタノールは、それ自体に毒性がなく、かつバイオマスからの入手が可能であるため、環境保全の観点からも好ましく用いられうる。これらの燃料は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。2種以上の燃料が併用される場合、それぞれの燃料は、別々の燃料タンクに貯留されて別々の燃料供給路20(後述)を通じて反応容器40に供給されてもよいし、混合燃料として1つの燃料タンクに貯留されて、1つの燃料供給路20を通じて反応容器40に供給されてもよい。
燃料タンク10には、燃料供給路20が接続されている。そして燃料供給路20の途中には、図示しない電子制御ユニット(ECU)により電気的に制御を受けるポンプ30が設けられている。ポンプ30は、液体燃料100を反応容器40へ供給するための燃料供給手段として機能する。すなわち、ポンプ30の作動により、燃料タンク10から液体燃料100が吸い上げられ、燃料供給路20を通じて所定の流量で反応容器40に供給される。
ポンプ30の下流側には、円筒状の反応容器40が設けられている。なお、反応容器40の形状や、反応容器40への燃料供給路20の接続位置、燃料供給路20上へのポンプ30の設置位置などが、図示する形態のみに制限されることはない。
反応容器40は、自身の円筒形状の両底面から挿入された、一対の電極(50、60)を備えている。このうち、一方の電極50は、反応容器40の外部に設置された電源70に電気的に接続されている。この電源70は、図示しないECUにより電気的に制御され、当該電源70に接続された電極50に電圧を印加するための電圧印加手段として機能する。また、他方の電極60は、上記の一方の電極50に対向するように設置されており、この電極60の端部はアースされている。これらの電極(50、60)および電源70は、放電により反応容器40内でプラズマを発生させるためのプラズマ発生手段として機能する。
本実施形態の燃料改質装置1において用いられる電極は、図1に示すように一対である。ただし可能であれば、複数対の電極を反応容器40に設置してもよい。なお、複数対の電極を反応容器40に設置する場合には、各電極対間に発生する放電プラズマが互いに干渉しないように、位置をずらすなどして各電極対を配置することが好ましい。
本実施形態において、一対の電極(50、60)は、ともにステンレス製である。ただし、その他の材料により電極が構成されてもよく、電極は例えば、ステンレスの他にも、アルミニウムと銅との合金、チタニウム合金、アルミニウム、銅、炭素などの材料により構成されうる。燃料や生成する水素含有ガスに対して悪影響を及ぼさず、プラズマ発生手段として機能しうるのであれば、その他の材料により電極が構成されてもよい。
本実施形態において、電極の形状は円柱状である。ただし、プラズマ発生手段として機能しうるのであれば、直方体状、三角柱状などのその他の形状が採用されてもよい。
また、本実施形態において、電極(50、60)の直径はともに2mmである。ただし、かような値のみに制限されるわけではなく、燃料の種類、反応容器の内圧、印加電圧、および製造コストなどを考慮して、適宜調節されうる。一例を挙げると、電極の直径は、通常は1〜7mm程度であり、好ましくは2〜5mmである。ただし、これらの値を外れる形態の電極が採用されてもよいことは勿論である。
さらに、本実施形態において、対向する電極の電極間距離は2.0mmである。本発明においては、この「電極間距離」が規定される。本願において、この電極間距離は0.1〜3.0mmであり、好ましくは1.0〜2.5mmであり、より好ましくは1.5〜2.0mmである。また、他の好ましい形態によれば、電極間距離は、好ましくは電極の直径の0.2〜2.0倍であり、より好ましくは電極の直径の0.5〜1.5倍であり、さらに好ましくは1.0〜1.2倍である。電極間距離が小さすぎると、対向する電極間で短絡が発生する虞がある。一方、電極間距離が大きすぎると、プラズマを発生させるのに必要な印加電圧が上昇し、改質効率が低下する虞がある。なお、対向する電極間の「電極間距離」とは、一方の電極(図1に示す電極50)上の任意の点と、他方の電極(図1に示す電極60)上の任意の点とを結ぶ線分のうち、最短の線分の長さを意味する。
反応容器40の上部には、ガス回収部80が設けられている。このガス回収部80の下流側には、ガス排出路90が設けられている。これらガス回収部80およびガス排出路90は、液体燃料とプラズマとの接触により生成した水素含有ガスを、反応容器40から排出させるためのガス排出手段として機能する。なお、生成する水素含有ガスの比重は、一般的に液体燃料よりも小さい。このため、通常、生成したガスは反応容器40の上部へ移動する。従って、本実施形態においては、反応容器上部の中央部にガス回収部80およびガス排出路90が設けられている。ただし、反応容器40へのガス回収部80およびガス排出路90の設置位置は、図示する形態のみには制限されない。
続いて、図1に示す燃料改質装置1の動作について説明する。
まず、ECUからポンプ30に作動信号が出力され、ポンプ30が駆動する。このポンプ30の駆動により、燃料タンク10から液体燃料100が吸い上げられ、燃料供給路20の上流側に向けて流通する。そして、液体燃料100は、反応容器40へ圧送される。
本実施形態において、液体燃料100の供給方式は、連続流通式である。液体燃料100の供給量は、放電プラズマによって生成し、ガス排出路90から排出される水素含有ガスの量に応じて制御されうる。かような制御により、図1に示す定常運転状態においては、反応容器40内に液体燃料100が充填された状態が維持されうる。なお、液体燃料100の供給量は、ECUに接続されたポンプ30により、制御されうる。また、液体燃料100の供給量の具体的な値は、改質による反応容器40内の液体燃料100の消費速度に応じて変動しうるため、一概には規定されない。ただし、燃料を圧送するポンプ30の圧力は、例えば10〜20kPa・G程度である。
上述したように、定常運転状態においては、反応容器40内に液体燃料100が充填されている。この状態でECUから電源に作動信号が出力され、電源70が作動する。この電源70の作動によって、当該電源70に接続された電極50に電圧が印加され、当該電極50と、他方の電極60(アースされている)との間に電位差が生じる。その結果、一対の電極(50、60)の間において放電が起こり、プラズマが発生する。反応容器40内に充填された液体燃料100は、このプラズマと接触することにより改質され、水素含有ガスを生成しうる。生成した水素含有ガスは、反応容器40に設置されたガス回収部80およびガス排出路90を通じて反応容器40から排出され、種々の用途(例えば、燃料電池の燃料)に用いられうる。
電源70の作動により電極50に印加される電圧の大きさは特に制限されず、所望の改質性能などを考慮して適宜設定されうる。一例を挙げると、印加電圧は、通常は0.1〜50kV程度であり、好ましくは1〜10kVである。印加電圧が小さすぎると、プラズマが充分に発生せず、燃料の改質が充分に進行しない虞がある。一方、印加電圧が大きすぎると、危険性が増大し、さらに、効率が低下する虞がある。ただし、場合によっては、この範囲を外れる大きさの電圧が印加されてもよい。プラズマを発生させるための放電の種類についても特に制限はない。採用されうる放電の種類としては、例えば、パルス放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電などが挙げられる。バリア放電などのその他の放電によりプラズマを発生させてもよい。エネルギ効率や改質コストの観点から、好ましくはパルス放電が用いられうる。パルス放電が用いられる場合、パルス放電のパルス数は特に制限されないが、好ましくは5〜500回/秒であり、より好ましくは50〜100回/秒である。このパルス数が少なすぎると、プラズマが充分に発生せず、改質が充分に進行しない虞がある。ただし、場合によっては、この範囲を外れるパルス数でパルス放電を行ってもよい。
本発明の燃料改質装置1を用いて燃料の改質を行う場合には、放電により発生したプラズマとの接触により燃料が改質されうる。従って、反応容器40自体を加熱しなくとも改質反応が進行しうる。このため、本発明の燃料改質装置によれば、ヒータ等の加熱手段の設置が省略されうるため、本発明は装置のコンパクト化にも有効に寄与しうる。ただし、必要に応じてヒータ等の加熱手段を設置して、液体燃料100や反応容器40を加熱することは差し支えない。例えば液体燃料を加熱したい場合には、燃料供給路20の途中にヒータを設置すればよい。反応容器40を加熱したい場合には、反応容器40の周囲にヒータを設置すればよい。反応容器40内の温度(反応温度)は特に制限されないが、一例を挙げると、好ましくは0〜50℃程度、より好ましくは5〜30℃である。すなわち、本発明の燃料改質装置1によれば、室温条件下において燃料の改質が進行しうる。
本実施形態の燃料改質装置1においては、上述したように、対向する電極(50、60)間の電極間距離が、所定の範囲内の値に制御されている。かような構成によれば、放電プラズマを用いた液体燃料の改質に従来必要であるとされていた絶縁膜を設けなくとも、効率的に改質が進行し、水素含有ガスを発生させることが可能となる。本発明の構成によりかような効果が得られるメカニズムについては、未だ明らかとはなっていない。ただし、以下のメカニズムが推測されている。すなわち、電極間距離の大きい燃料改質装置を用いて放電を行うと、電極の表面の全てに分散した形で放電が起こりうる。このため、局所に集中したプラズマを発生させることが困難である。従来の燃料改質装置の反応容器が備えていたピンホールを有する絶縁膜は、この分散した放電をピンホール部分に集中させることで、局所における集中的なプラズマの発生を可能としていたと考えられる。これに対し、本発明の燃料改質装置においては、電極間距離が所定の範囲内の値に制御されている。このため、対向する電極に比較的近い部位において放電が発生しうる。その結果、電極間の放電の分散が抑制されうる。すなわち、局所に集中してプラズマが発生し、燃料が効率的に改質されうるものと推測される。ただし、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、本発明による改質効率の向上効果が、上記のメカニズム以外のメカニズムにより得られていたとしても、本発明の技術的範囲は何ら影響を受けることはない。
以上、液体燃料100を単独で反応容器40に供給し、プラズマとの接触により水素含有ガスを生成させる形態について説明したが、場合によっては、改質効率の向上などを目的として、液体燃料100以外の成分を反応容器40に供給してもよい。反応容器40に供給されうる液体燃料以外の成分の例としては、例えば水が挙げられる。これらの成分の供給形態は特に制限されない。例えば、燃料タンク10の他にタンクを別途設け、燃料供給路20の他に供給路を別途設けることにより、これらの他の成分を供給してもよい。また、燃料と混和しうる成分を供給する場合には、当該成分を燃料との混合物として燃料タンク10中に貯留させておき、当該混合物を燃料供給路20から反応容器40へ供給してもよい。ここで、他の成分の供給量は特に制限されず、所望の改質性能などを考慮することにより、適宜調節されうる。なお、プラズマ放電による燃料改質反応の反応速度を向上させるという観点からは、水の供給量は少ないほど好ましい。
本発明の燃料改質装置1において生成した水素含有ガスは、水素ガスを必要とする種々の用途に用いられうる。かような用途としては、例えば、燃料電池用燃料、化学工業合成用原料、内燃機関用燃料などが挙げられる。
具体的には、上記の水素含有ガスは、高温作動型の溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)や固体酸化物型燃料電池(SOFC)などの燃料として用いられうる。かような場合には、水素ガス以外の一酸化炭素ガスや炭化水素ガスなども燃料として利用されうる。従って、かような用途においては、本発明の燃料改質装置から得られた水素含有ガスに対してさらに特段の処理を施さず、そのまま燃料として用いればよい。
これに対し、上記の水素含有ガスを、低温作動型の固体高分子型燃料電池(PEFC)などの燃料としてそのまま用いると、当該ガス中に含まれる一酸化炭素が、PEFCのスタックを構成する電極触媒層中の白金触媒に対して、触媒毒として作用する場合がある。従って、上記の水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減させるための手段を本発明の燃料改質装置の後段に設置し、その後に燃料電池に燃料として供給するとよい。かような一酸化炭素濃度低減手段としては、COシフト反応(CO+HO→CO+H)によりCOをCOへと転化しうるシフト反応器や、一酸化炭素の選択酸化反応(2CO+O→2CO)によりCOをCOへと転化しうる選択酸化反応器などが挙げられる。これらの一酸化炭素濃度低減手段の具体的な形態は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。なお、上記の手段以外にも、例えば深冷分離法、PAS法、水素貯蔵合金、またはパラジウム膜拡散法などの手段により、高純度の水素ガスを得ることも可能である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の実施例のみには制限されない。
<実施例1>
図1に示す形態の燃料改質装置1を用いて液相でイソオクタンを改質し、水素含有ガスを生成させた。
反応容器40内の温度を30℃に維持し、電源70の作動により電極(50、60)間に5kVの電圧を印加した。これにより、電極(50、60)間において安定して放電が発生し、イソオクタンが改質されて水素含有ガスが生成した。なお、図1に示す形態の燃料改質装置1において、対向する電極の電極間距離は、上述したように2.0mmである。
生成したガスはガス回収部80およびガス排出路90を通じて反応容器40の外部に排出させた。この排出された水素含有ガスを回収し、ガスクロマトグラフィにより当該ガスの成分組成を分析した。また、水素含有ガスの生成速度を測定した。分析により得られた水素含有ガスの成分組成を下記の表1に示す。さらに、本実施例における改質時間の経過に伴う水素生成速度の変化を、図4のグラフに示す。
<比較例1>
図2に示す形態の燃料改質装置1を用いて気相でイソオクタンを改質し、水素含有ガスを生成させた(特許文献1に記載の技術)。
図2に示す形態の燃料改質装置1は、燃料供給路20のポンプ30の下流側に、液体状態のイソオクタンを気化させるための気化器32が設置されている点で、図1に示す形態の燃料改質装置1とは異なる。また、図2に示す形態の燃料改質装置1において、対向する電極の電極間距離は、5.0mmである。
気化器32によりイソオクタンを気化させて反応容器40に供給したこと以外は、上記の実施例1と同様の条件により改質を行い、水素含有ガスを生成させた。なお、図2に示す燃料改質装置1の定常運転状態では、気体燃料110が反応容器40内に充填されている。得られた水素含有ガスの比重は前記気体燃料よりも小さいため、上記の実施例と同様に、反応容器40の上部に設置されたガス回収部80およびガス排出路90を通じて水素含有ガスを反応容器40から排出させた。
改質により得られた水素含有ガスの成分組成を分析した。また、水素含有ガスの生成速度を測定した。分析により得られた水素含有ガスの成分組成を下記の表1に示す。さらに、本比較例における改質時間の経過に伴う水素生成速度の変化を、図4のグラフに示す。
<比較例2>
図3に示す形態の燃料改質装置1を用いて液相でイソオクタンを改質し、水素含有ガスを生成させた(非特許文献1に記載の技術)。
図3に示す形態の燃料改質装置1は、反応容器40の中央部に絶縁膜42が設置されている点で、図1に示す形態の燃料改質装置1とは異なる。この絶縁膜42は、絶縁性材料であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成されており、サイズは直径が500mm、厚さが1mmである。そしてこの絶縁膜42の中心部には、直径が1mmのピンホール(細孔)44が設けられている。なお、一対の電極(50、60)は、これらの電極どうしを結んだ直線がピンホール44の中心を通過するように設置されており、前記直線と絶縁膜42との交差角は90°である。また、図3に示す形態の燃料改質装置1において、対向する電極の電極間距離は、5.0mmである。
この燃料改質装置1を用いて、上記の実施例1と同様の条件により改質を行い、水素含有ガスを生成させ、当該ガスの成分組成を分析した。また、水素含有ガスの生成速度を測定した。分析により得られた水素含有ガスの成分組成を下記の表1に示す。さらに、本比較例における改質時間の経過に伴う水素生成速度の変化を、図4のグラフに示す。図4において、横軸は改質時間(分)を示し、縦軸は水素生成速度(ミリモル/分)を示す。
Figure 2007137721
表1に示す結果から、実施例1の燃料改質装置1によれば、気相にて燃料の改質を行う従来の燃料改質装置(比較例1)や、反応容器40内に絶縁膜42を設置して燃料の改質を行う従来の燃料改質装置(比較例2)とほぼ同様の組成を有する水素含有ガスが得られることがわかる。
また、図4に示す結果から、比較例1の燃料改質装置による改質では、水素の生成が開始するまでに時間がかかり、起動性に劣ることがわかる。これは、気化器32によってイソオクタンを気化させる必要があるためと考えられる。しかも、図4に示すように、比較例1では、一定時間経過後に水素生成速度が低下し、最終的にはゼロになってしまう。これは、気相で改質を行っているために電極表面に炭素が析出し、最終的に電極どうしが短絡してしまうことによると考えられる。
一方、比較例2の燃料改質装置による改質では、起動性はよいものの、一定時間経過後に水素生成速度が低下してしまう。これは、絶縁膜42に設けられたピンホール44に生成したガスの気泡が付着し、放電が不安定化されることによると考えられる。
これに対し、本発明(実施例1および2)の燃料改質装置1では、上記の種々の問題を引き起こす虞がない。このため、本発明の燃料改質装置は、起動性に優れ、かつ、長時間にわたって改質を持続させうる。
本発明の燃料改質装置は、例えば、固体高分子型燃料電池(PEFC)などの水素ガスを必要とする装置に対して水素含有ガスを供給するための水素供給装置として好ましく用いられうる。
本発明の燃料改質装置の好ましい一実施形態を示す概略図である。実施例1では、この形態の装置を用いた。 従来の燃料改質装置の一形態を示す概略図である。比較例1では、この形態の装置を用いた。 従来の燃料改質装置の他の形態を示す概略図である。比較例2では、この形態の装置を用いた。 実施例1、並びに比較例1および2における改質時間の経過に伴う水素生成速度の変化を示すグラフである。
符号の説明
1 燃料改質装置、
10 燃料タンク、
20 燃料供給路、
30 ポンプ、
32 気化器、
40 反応容器、
42 絶縁膜、
44 ピンホール、
50、60 電極、
70 電源、
80 ガス回収部、
90 ガス排出路、
100 液体燃料、
110 気体燃料。

Claims (4)

  1. 反応容器と、
    液体燃料を貯留するための、燃料貯留手段と、
    前記燃料貯留手段に接続され、前記反応容器に液体燃料を供給するための、燃料供給手段と、
    電圧印加手段に電気的に接続され、前記反応容器に内蔵された、第1の電極と、
    前記第1の電極に対向するように前記反応容器に内蔵された、前記第1の電極との間での放電によりプラズマを発生させるための、第2の電極と、
    前記液体燃料と前記プラズマとの接触により生成した水素含有ガスを前記反応容器から排出させるための、ガス排出手段と、
    を有する、燃料改質装置であって、
    前記第1の電極と前記第2の電極との電極間距離が0.1〜3.0mmであることを特徴とする、燃料改質装置。
  2. 前記燃料が液体燃料であり、前記水素含有ガスの生成が液相で行われる、請求項1に記載の燃料改質装置。
  3. 前記放電がパルス放電である、請求項1または2に記載の燃料改質装置。
  4. 前記パルス放電のパルス数が5〜500回/秒である、請求項3に記載の燃料改質装置。
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