JP2007133430A - ダイヤモンドライクカーボン薄膜およびそれを利用した光学用部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】種々の光デバイス等の小型化,低コスト化,高性能化などに有用なダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜を提供する。
【解決手段】まず、DLC薄膜11の上に屈折率分布のパターンを転写したマスク12を密着させる。そのマスク12の上から、たとえばヘリウムまたはアルゴン等のイオンビームで斜方照射を行なう。マスク12の透過部分を通ってイオンビームの照射を受けた部分は、11−1のように屈折率が変化する。一方、マスク12の遮断部分によってイオンビームの照射をさえぎられた部分は、11−2のように屈折率は変化しない。このことから、マスクのパターンを変化させることにより、DLC薄膜11の屈折率分布を制御することができる。
【選択図】図10
【解決手段】まず、DLC薄膜11の上に屈折率分布のパターンを転写したマスク12を密着させる。そのマスク12の上から、たとえばヘリウムまたはアルゴン等のイオンビームで斜方照射を行なう。マスク12の透過部分を通ってイオンビームの照射を受けた部分は、11−1のように屈折率が変化する。一方、マスク12の遮断部分によってイオンビームの照射をさえぎられた部分は、11−2のように屈折率は変化しない。このことから、マスクのパターンを変化させることにより、DLC薄膜11の屈折率分布を制御することができる。
【選択図】図10
Description
この発明は、ダイヤモンドライクカーボン薄膜およびそれを利用した光学用部品に関し、より特定的には、光通信分野などにおける材料として用いられるダイヤモンドライクカーボン薄膜およびそれを利用した光学用部品に関する。
光ファイバおよび光学素子などから構成される光通信システムでは、光コネクタ接続点や光回路部品等からの反射光が光源に再入射する場合がある。この光源とりわけ半導体レーザへの戻り光により生じる雑音が、光通信システムおよび光デバイスの設計に際して大きな問題となることが多い。
この戻り光を遮断する手段として主に用いられるのが光アイソレータで、構成要素としてファラデー回転子、偏光子、検光子、および磁性体などがある。
ファラデー回転子は、磁気光学体(磁気光学材料)に、磁性体等で磁界を印加することにより磁界方向に進む入射光の偏光面を回転させる。一方、偏光子(検光子)は、特定の偏光成分のみを透過させ、それ以外の偏光成分を遮断する。
図14に示すように、光アイソレータ6は、偏光子2、ファラデー回転子3、検光子4、および磁性体5などの組み合わせで構成され、磁気光学材料の非相反特性を利用することにより、入射した光が逆方向から再入射するのを遮断する。以下に、一般的な光アイソレータの仕組みを、図14を参照しながらより具体的に述べる。
光源1からの入射光は、まず偏光子2を通ることにより偏光面がそろえられ、次にファラデー回転子3を通過することにより偏光面が45度回転する。偏光面が45度回転した入射光はそのまま検光子4を通って射出され、その一部が戻り光として再び検光子4を通ってファラデー回転子3に再入射する。戻り光はファラデー回転子3により再び偏光面が45度回転し、偏光面が合計90度回転した戻り光は偏光子2を通過することができず、戻り光はそこで遮断される。
なお、光源1からの出射光もしくは戻り光を示す矢印に対してある角度で描かれている矢印は、その出射光もしくは戻り光の偏光方向を模式的に表わしたものである。
従来のファラデー回転子(磁気光学体)には、イットリウム鉄ガーネット(Yttrium Iron Garnet:以下、YIG)結晶やビスマス置換ガーネット結晶などが主に用いられていた。また従来の偏光子(検光子)には、ルチル(酸化チタン)単結晶や表面に銀粒子を一方向に配向させたガラスなどが、磁気光学体に磁界を印加する磁性体にはサマリュウム系の希土類磁性体などが主として用いられていた。
特開平11−23841号公報
特開平11−133229号公報
特開平11−249072号公報
従来のファラデー回転子に主として用いられていたYIG結晶やビスマス置換ガーネット結晶などは、所要のファラデー回転角を得るのに一定の厚みが必要となるため、外形が大きくなる。同様に、従来の偏光子(検光子)に主として用いられていたルチル単結晶や表面に銀粒子を一方向に配向させたガラス、および磁気光学体に磁界を印加する磁性体として主に用いられていたサマリュウム系の希土類磁性体なども、やはり一定の体積を占めるので外形が大きくなる。また、これらのファラデー回転子、偏光子(検光子)および磁性体を基本的な構成要素とする従来の光アイソレータは、とりわけ外形が大きくなるという問題があった。
一方、これらのファラデー回転子、偏光子(検光子)および磁性体はそれぞれが高価であり、これらを構成要素とする従来の光アイソレータは一層コストがかかる。さらに、従来の光アイソレータは、個々の構成要素が独立しているためそれらを組み立てる工程が煩雑となり、そのためより一層コストもかかる、という問題があった。
また、従来のファラデー回転子は、原則として厚みによりファラデー回転角が決まってしまうため、単一波長にしか対応できない。このため、従来のファラデー回転子を構成要素とする従来の光アイソレータも、やはり基本的には単一波長にしか対応できないという問題があった。
この発明の目的は、偏光子をはじめ種々の光デバイス等の小型化、低コスト化、および高性能化などに有用なダイヤモンドライクカーボン薄膜を提供することである。
この発明のある局面によれば、ダイヤモンドライクカーボン薄膜は、光領域において透明で、かつ光通信用波長の1200nmから1700nmにおいて消衰係数が3×10-4以下であることを特徴とする。
好ましくは、光学用部品は、光領域において透明で、かつ光通信用波長の1200nmから1700nmにおいて消衰係数が3×10-4以下のダイヤモンドライクカーボン薄膜を利用することを特徴とする。
したがって、この発明によれば、偏光子をはじめ種々の光デバイス等の小型化、低コスト化、および高性能化などに有用な新しい材料を提供することができる。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1によるファラデー回転子を模式的に示した図である。
図1は、この発明の実施の形態1によるファラデー回転子を模式的に示した図である。
このファラデー回転子30は、図1に示すように、磁界方向に進む入射光の偏光面を回転させる磁気光学体30−1と、少なくとも1波長の入射光を磁気光学体内に局在させる誘電体多層膜30−2とを備える。
磁気光学体30−1はガドリニウム鉄ガーネット(Gadolinium Iron Garnet:以下、GIG)薄膜から構成されており、誘電体多層膜30−2は、低屈折率層として酸化シリコン、高屈折率層として酸化チタンを交互に積層することにより構成されている。
図1に示すように、ファラデー回転子30は、磁気光学体30−1の両側に誘電体多層膜30−2を配置して共振構造を作り出すことにより構成されている。この誘電体多層膜30−2の共振構造により、特定波長の入射光を磁気光学体に局在させることができる。その結果、特定波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転させることが可能となる。
また、磁気光学体30−1の厚さを調整する、もしくは磁気光学体30−1内に付加的な誘電体層を挟み込むことによって、単一のみならず複数波長の入射光の偏光面を選択的に回転させることが可能となる。さらに、磁気光学体30−1(内部に付加的な誘電体層を挟み込んだ場合はそれも含む)および誘電体多層膜30−2の厚さおよび配置を調整することによって、偏光面を回転させる入射光の波長およびその数を制御することができる。
以下に、偏光面を回転させる入射光の波長およびその数が、磁気光学体30−1(内部に付加的な誘電体層を挟み込んだ場合はそれも含む)および誘電体多層膜30−2の厚さおよび配置を調整することによって制御可能なことを、図2から図7のシミュレーション結果によって説明する。
図2から図7は、特定波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転させるファラデー回転子の機能をシミュレーションにより表わした図である。図2から図7に示すシミュレーションには、GIG薄膜の代用として酸化タンタル(Ta2O5)のデータを、また誘電体多層膜の低屈折率層として酸化シリコン(SiO2)、高屈折率層として酸化チタン(TiO2)のデータをそれぞれ使用している。この酸化タンタル,酸化シリコン,および酸化チタンからなる多層膜に波長1000〜2000nmの赤外光を入射した際に得られる透過特性をシミュレーションにより計算した。
図2は、単一波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転させるファラデー回転子の機能をシミュレーションにより表わした図である。
図2の多層膜構造は、1L (1H 1L)5 2M (1L 1H)5 1Lで表わされる。ここで、Lは酸化シリコンを、Hは酸化チタンを、MはGIG薄膜の代用としての酸化タンタルをそれぞれ表わす。L,HおよびMの前につく係数は、設計波長1500nmにおける光学膜厚を表わしており、実際の物理膜厚dは、酸化シリコンの屈折率をnとすると、光学膜厚が1Lのとき、
d=(1/4n)λ
で表わされる。また(1H 1L)5 は、酸化チタンと酸化シリコンの層が各5層、計10層交互に積層されていることを示す。
d=(1/4n)λ
で表わされる。また(1H 1L)5 は、酸化チタンと酸化シリコンの層が各5層、計10層交互に積層されていることを示す。
この多層膜構造に波長1000〜2000nmの赤外光を入射すると、図2に示すように、波長約1500nmの入射光のみが磁気光学体内で共振し、その近傍およそ1250nm〜1850nmまでの波長域の入射光は遮断される。このシミュレーション結果から、図2の多層膜構造からなるファラデー回転子は、単一波長の入射光を磁気光学体内に局在させることにより、単一波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転する作用のあることが確かめられる。
図3は、2波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転させるファラデー回転子の機能をシミュレーションにより表わした図である。
図3の多層膜構造は、1L (1H 1L)6 5.2M (1L 1H)6 1Lで表わされる。多層膜構造を表わす記号の意味は、図2と同様である。
この多層膜構造に波長1000〜2000nmの赤外光を入射すると、図3に示すように、波長約1380nmおよび波長約1710nmの入射光のみが磁気光学体内で共振し、その近傍およそ1250nm〜1850nmまでの波長域の入射光は遮断される。このシミュレーション結果から、図2の多層膜構造において磁気光学体の厚さを変えることにより、2波長の複数入射光を磁気光学体内に局在させられることがわかる。この結果から、図3の多層膜構造からなるファラデー回転子は、2波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転する作用のあることが確かめられる。
図4は、図3と同じく2波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転させるファラデー回転子の機能をシミュレーションにより表わした図である。
図4の多層膜構造は、1L (1H 1L)6 2.2M 1L 2M (1L 1H)6 1Lで表わされる。多層膜構造を表わす記号の意味は、図2と同様である。
この多層膜構造に波長1000〜2000nmの赤外光を入射すると、図4に示すように、波長約1410nmおよび波長約1670nmの入射光のみが磁気光学体内で共振し、その近傍およそ1250nm〜1850nmまでの波長域の入射光は遮断される。このシミュレーション結果から、図2の多層膜構造において磁気光学体内に誘電体層を挟み込むことによっても、2波長の複数入射光を磁気光学体内に局在させられることがわかる。この結果から、図4の多層膜構造からなるファラデー回転子は、磁気光学体内に誘電体層を挟み込むことによっても、図3と同じく2波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転する作用のあることが確かめられる。
図5は、図3と同じく2波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転させるファラデー回転子の機能をシミュレーションにより表わした図である。
図5の多層膜構造は、1L (1H 1L)6 2.3M 1L 2M (1L 1H)6 1Lで表わされる。多層膜構造を表わす記号の意味は、図2と同様である。
この多層膜構造に波長1000〜2000nmの赤外光を入射すると、図5に示すように、波長約1420nmおよび波長約1690nmの入射光のみが磁気光学体内で共振し、その近傍およそ1250nm〜1850nmまでの波長域の入射光は遮断される。このシミュレーション結果から、図4の多層膜構造において磁気光学体の厚さを調整することにより、磁気光学体内に局在する入射光の2波長の共振ピーク値を変えられることがわかる。この結果から、図5の多層膜構造からなるファラデー回転子は、磁気光学体の厚さを調整することにより、図4の場合とは異なる2波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転する作用のあることが確かめられる。
図6は、図3と同じく2波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転させるファラデー回転子の機能をシミュレーションにより表わした図である。
図6の多層膜構造は、1L (1H 1L)6 2.2M 1L 1H 1L 2M (1L 1H)6 1Lで表わされる。多層膜構造を表わす記号の意味は、図2と同様である。
この多層膜構造に波長1000〜2000nmの赤外光を入射すると、図6に示すように、波長約1450nmおよび波長約1620nmの入射光のみが磁気光学体内で共振し、その近傍およそ1250nm〜1850nmまでの波長域の入射光は遮断される。このシミュレーション結果から、図4の多層膜構造において磁気光学体内に挟み込む誘電体層の厚さを調整することによっても、磁気光学体内に局在する入射光の2波長の共振ピーク値を変えられることがわかる。この結果から、図6の多層膜構造からなるファラデー回転子は、磁気光学体内に挟み込む誘電体層の厚さを調整することによっても、図4の場合とは異なる2波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転する作用のあることが確かめられる。
図7は、3波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転させるファラデー回転子の機能をシミュレーションにより表わした図である。
図7の多層膜構造は、1L (1H 1L)6 2.2M 4L 2M (1L 1H)6 1Lで表わされる。多層膜構造を表わす記号の意味は、図2と同様である。
この多層膜構造に波長1000〜2000nmの赤外光を入射すると、図7に示すように、波長約1330nm、波長約1530nm、および波長約1760nmの入射光のみが磁気光学体内で共振し、その近傍およそ1250nm〜1850nmまでの波長域の入射光は遮断される。このシミュレーション結果から、図2の多層膜構造において、磁気光学体および磁気光学体内に挟み込む誘電体層の厚さおよび配置等を調整することにより、3波長の複数入射光を磁気光学体内に局在させられることがわかる。この結果から、図7の多層膜構造からなるファラデー回転子は、3波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転する作用のあることが確かめられる。
図2から図7のシミュレーション結果から、ファラデー回転子30を用いて偏光面を回転できる入射光の波長およびその数が、磁気光学体30−1(内部に付加的な誘電体層を挟み込んだ場合はそれも含む)および誘電体多層膜30−2の厚さおよび配置を調整することによって制御可能であることがわかる。
以上のように、実施の形態1によれば、ファラデー回転子30は、磁気光学体30−1の両側に配置された誘電体多層膜30−2の共振構造により、単一波長のみならず複数波長の入射光を磁気光学体30−2内に局在させることが可能である。
また、磁気光学体30−1および誘電体多層膜30−2はともに薄膜構造であって、両者を薄膜積層技術により一体化することも可能である。これにより、磁気光学体30−1、誘電体多層膜30−2、および両者を組み合わせたファラデー回転子30の小型化およびコスト削減が可能となり、さらにファラデー回転子30の製造工程も簡素化できる。
[実施の形態2]
図8および図9は、この発明の実施の形態2による光アイソレータを模式的に示した図である。
図8および図9は、この発明の実施の形態2による光アイソレータを模式的に示した図である。
図8の光アイソレータ60aは、実施の形態1に示したファラデー回転子30の両側に偏光子20および検光子40を配置し、さらに磁性体5を上下から配置した構造となっている。
実施の形態1において説明したように、ファラデー回転子30は特定波長の入射光の偏光面のみを選択的に回転させる機能を有する。このため、ファラデー回転子30を組み込んだ光アイソレータ60aは、特定波長の入射光の戻り光のみを選択的に遮断することが可能となる。
偏光子20および検光子40はダイヤモンドライクカーボン(Diamond-Like Carbon:以下、DLC)薄膜に斜めから粒子線とエネルギービームのいずれかを照射することにより構成することも可能である。なお、このDLC薄膜により構成された偏光子(検光子)については、実施の形態3において詳述する。
以上により、ファラデー回転子30が薄膜構造なのに加えて、偏光子20および検光子40も薄膜構造とすることが可能なので、これらを薄膜積層技術により一体化することで、光アイソレータ60aの小型化およびコスト削減が可能となり、また製造工程も簡素化できる。
図9の光アイソレータ60bは、磁性体50として室温で強磁性を示す窒化ガリウム系磁性半導体薄膜を用いている。図9に示すように、光アイソレータ60bは、この磁性体50を偏光子20および検光子40の外側に配置した構造となっている。
窒化ガリウム系磁性半導体薄膜は光に対して透明であるため、入射光の光路中に配置することが可能である。
このため、偏光子20,ファラデー回転子30,検光子40に加えて磁性体50を、図9に示すように一直線上に配置することが可能となる。したがって、薄膜積層技術によってこれらを一体化することにより、光アイソレータ60bは光アイソレータ60aに比べてさらなる小型化およびコスト削減が可能となり、また製造工程もより一層簡素化できる。
[実施の形態3]
図10は、この発明の実施の形態3による偏光子の作製過程を模式的に示した図である。
図10は、この発明の実施の形態3による偏光子の作製過程を模式的に示した図である。
この偏光子は、DLC薄膜11に斜めから粒子線とエネルギービームのいずれかを照射することにより形成されることを特徴とする。粒子線はイオンビーム,電子線,陽子線,α線,および中性子線、エネルギービームは光線,X線,およびγ線などが考えられるが、ここではイオンビームを照射する場合を例にとり、DLC薄膜に屈折率分布をつける方法を図10を参照して説明する。
図10に示すように、まずDLC薄膜11の上に屈折率分布のパターンを転写したマスク12を密着させる。そのマスク12の上から、たとえばヘリウムまたはアルゴン等のイオンビームで斜方照射を行なう。マスク12の透過部分を通ってイオンビームの照射を受けた部分は、11−1のように屈折率が変化する。一方、マスク12の遮断部分によってイオンビームの照射をさえぎられた部分は、11−2のように屈折率は変化しない。このことから、マスクのパターンを変化させることによりDLC薄膜11の屈折率分布を制御することができる。この結果を利用して、DLC薄膜11に偏光分離特性をもたせることが可能となる。
なお、水素を含むDLC薄膜にイオン照射を行なうことによりその屈折率を2.0から2.5程度の範囲内で変え得ることは、Diamond and Related Materials誌の1998年度第7号432頁から434頁に報告されている。また、イオン照射などの粒子線照射またはエネルギービーム照射などにより屈折率を変化させることは、水素を含むDLC薄膜に限らずたとえば窒素などを含むDLC薄膜においても可能であり、それらを含まないDLC薄膜においても可能である。
ここで、水素を含むDLC薄膜にイオン照射を行なうことによりその屈折率を2.0から2.5程度の範囲内で変え得るという報告を参考に、DLC薄膜を用いた偏光子の性能をシミュレーションした。シミュレーションは、高屈折率層(屈折率2.5)を1層152.5nm、低屈折率層(屈折率2.0)を1層190.63nmとして、各25層、計50層を交互に積層したDLC薄膜に、65度の入射角で波長1000nm〜2000nmの赤外光を入射するという設定で行なった。そのシミュレーション結果を図示したのが図11である。
図11より、1300nmにおいて偏光消光比が約−35dBに達していることがわかる。この結果から、DLC薄膜に斜めからイオン照射などの粒子線照射またはエネルギービーム照射などを行なうことによって、偏光子(検光子)を作製することが可能であることが確かめられる。
次に、DLC薄膜の作製条件について述べる。
水素を含有したDLC薄膜の成膜方法としては、熱,プラズマ等を利用した各種CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法、EB(Electron Beam)蒸着法、アークイオンプレーティング法(フィルタードアーク法)などが存在する。しかしながら、水素を膜中に大量に導入できること、および膜厚が20μm程度は必要となることから、高速成膜が期待できるCVD法が実際上は最適と考えられる。ここでは、平行平板式プラズマCVD法での成膜を取り上げる。
水素を含有したDLC薄膜の成膜方法としては、熱,プラズマ等を利用した各種CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法、EB(Electron Beam)蒸着法、アークイオンプレーティング法(フィルタードアーク法)などが存在する。しかしながら、水素を膜中に大量に導入できること、および膜厚が20μm程度は必要となることから、高速成膜が期待できるCVD法が実際上は最適と考えられる。ここでは、平行平板式プラズマCVD法での成膜を取り上げる。
平行平板式プラズマCVD法での成膜条件の一例として、基板サイズを30センチ角とし、成膜基板温度を摂氏200度、圧力を1.3×101〜1.3×10-1Pa、原料ガスであるメタンの流量を100sccmとして、約1000Wの電力で13.56MHzの高周波を印加する。真空槽はロータリーポンプと油拡散ポンプとオリフィスにて圧力制御する。
上記の作製条件で作製したDLC薄膜に、斜めから粒子線とエネルギービームのいずれかを照射することにより、DLC薄膜の屈折率を変化させることができる。この屈折率変化を制御することにより、DLC薄膜を偏光子として利用することが可能となる。
以上のように、実施の形態3によれば、DLC薄膜に斜めから粒子線とエネルギービームのいずれかを照射することにより、薄型で他の薄膜光学素子との積層一体構造にも適した偏光子を作製することができる。
[実施の形態4]
図12は、平行平板式プラズマCVD法を用いて実際に作製されたDLC薄膜の分光透過特性の測定結果を示した図である。このDLC薄膜は、1.5mm厚のガラス基板上に1.0μmの厚さで成膜されている。なお、このDLC薄膜は、実施の形態3において説明した平行平板式プラズマCVD法での成膜条件を変えて、水素濃度を高めることにより作製された。
図12は、平行平板式プラズマCVD法を用いて実際に作製されたDLC薄膜の分光透過特性の測定結果を示した図である。このDLC薄膜は、1.5mm厚のガラス基板上に1.0μmの厚さで成膜されている。なお、このDLC薄膜は、実施の形態3において説明した平行平板式プラズマCVD法での成膜条件を変えて、水素濃度を高めることにより作製された。
図12に示すように、今回作製されたDLC薄膜は、光通信用波長を含む波長500nmから2000nmの光に対して、100%に近い分光透過特性を有する。なお、図12の分光透過特性は、DLC薄膜の表面,ガラス基板の裏面,およびDLC薄膜とガラス基板表面との境界面、における反射の影響をすべて取り除いた「DLC薄膜の内部透過率」である。
図13は、図12の測定結果をもとに計算されたDLC薄膜の光学特性を示した図である。
図13に示すように、今回作製されたDLC薄膜は、たとえば光通信用を想定した波長1500nmにおいて、屈折率n=1.55,消衰係数k=4.48×10-5であることがわかる。
一方、DLCの光学特性を測定した最近の代表的な文献として、Diamond and Related Materials誌の2000年度第9号1758頁から1761頁がある。この文献には、波長1500nmにおけるDLCの吸収係数に関するデータとして、ヘリウムイオンを1.0×1016cm-2照射した後のDLCの吸収係数が掲載されている。このDLCの吸収係数を元に、波長1500nmにおける消衰係数kを計算したところ、k=4×10-4となった。
したがって、今回作製されたDLC薄膜は、光通信用を想定した波長1500nmにおいて、従来のDLCに比べて著しく低い消衰係数を有することが確認された。さらに、今回作製されたDLC薄膜は、波長が1500nmのみならず1200nmから1700nmの範囲においても、消衰係数が従来のDLCの4×10-4より低い3×10-4以下であることが図13から読み取れる。なお消衰係数は、低ければ低いほど、たとえば光通信分野においては信号の減衰が少なくなるなどの利点がある。
このように、従来にない優れた特性を有する今回作製のDLC薄膜は、光通信用のみならず、実施の形態3において述べた偏光子をはじめ、さまざまな用途に応用することが可能であると考えられる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 光源、2,20 偏光子、3,30 ファラデー回転子、30−1 磁気光学体、30−2 誘電体多層膜、4,40 検光子、5,50 磁性体、6,60a,60b 光アイソレータ、11 DLC薄膜、11−1 屈折率変化が生じた部分、11−2 屈折率変化が生じていない部分、12 マスク。
Claims (2)
- 光領域において透明で、かつ光通信用波長の1200nmから1700nmにおいて消衰係数が3×10-4以下であることを特徴とするダイヤモンドライクカーボン薄膜。
- 請求項1に記載されたダイヤモンドライクカーボン薄膜を利用したことを特徴とする光学用部品。
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JP2001387730 | 2001-12-20 | ||
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JPN6010031374, Diamond and Related Materials, 1996, Vol.5, p.1397−1401 * |
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