以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
[変性エポキシ樹脂の製造方法]
まず、好適な実施形態に係る変性エポキシ樹脂の製造方法について説明する。
変性エポキシ樹脂は、ジイソシアネート化合物、ジオール化合物及び二塩基酸の反応により得られた第1の中間生成物と、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物との反応により第2の中間生成物を得る第1工程と、第2の中間生成物に酸無水物を付加する第2工程とを含む製造方法により得ることができる。
(準備工程)
まず、第1の工程において用いる第1の中間生成物を製造するための準備工程について説明する。この準備工程では、ジイソシアネート化合物と、ジオール化合物と、二塩基酸とを重合反応させて第1の中間生成物を得る。
ジイソシアネート化合物は、2つの末端にそれぞれイソシアナト基を有する化合物である。このジイソシアネート化合物は、下記一般式(4)で表すことができる化合物である。下記式(4)中、R
22は、2価の有機基である。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物;1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、変性エポキシ樹脂の可とう性を向上させる観点から、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートがより好ましい。
また、ジオール化合物は、2つの末端にそれぞれヒドロキシル基を有する化合物である。このジオール化合物は、下記一般式(5)で表すことができる化合物である。下記式(5)中、R
23は2価の有機基である。
ジオール化合物としては、カーボネートジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,2,4−トリメチル−1,ペンタンジオール、1,4−ビス−β−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
さらに、二塩基酸としては、2つの末端に酸性官能基をそれぞれ有する化合物が好ましく、酸性官能基としてカルボキシル基を有するジカルボン酸がより好ましい。ジカルボン酸は、下記一般式(6)で表すことができる化合物である。下記式(6)中、R
21は2価の有機基である。
二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの二塩基酸のなかで、副反応を起こし難いことから、アジピン酸、セバシン酸がより好ましい。
準備工程においては、上述したジイソシアネート化合物と、ジオール化合物と、二塩基酸との反応を生じさせるが、かかる反応は、主に、ジイソシアネート化合物におけるイソシアナト基とジオール化合物におけるヒドロキシル基との間、並びに、ジイソシアネート化合物におけるイソシアナト基と二塩基酸における酸性官能基(例えばカルボキシル基)との間で生じる。そして、準備工程の反応は、これらの官能基間の反応が繰り返し生じる重合反応となる。
準備工程の反応は、常法により行うことができる。ジイソシアネート化合物、二塩基酸及びジオール化合物の好適な配合比は、例えば、二塩基酸がジカルボン酸である場合、まず、ジイソシアネート化合物とジカルボン酸との間のカルボキシル基/イソシアネート基の値が、モル比で0.45〜1.25となるようにすることが好ましい。また、ジイソシアネート化合物とジオール化合物との間のイソシアナト基/ヒドロキシル基の値が、モル比で0.95〜1.85となるようにすることが好ましい。これにより、変性エポキシ樹脂の分子量、希アルカリ水溶液による現像性、貯蔵安定性及び塗膜性等が良好となる。
準備工程の反応は、特に触媒を用いても用いなくても進行するが、触媒を用いると、上述した重合反応がより良好に進行する傾向にある。触媒としては、例えば、ホスフィン類、アルカリ金属化合物及びアミン類等が挙げられる。具体的には、例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属化合物、トリエタノールアミン、N,N´−ジメチルピペラジン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムブロマイド、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジンなどのアミン類が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
触媒を用いる場合、その使用量は、重合反応の速度や、感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の耐熱性及び電食絶縁性等を良好にする観点から、ジイソシアネート化合物、ジオール化合物及び二塩基酸の総量100重量部に対し、0.1〜10重量部であると好ましい。
また、準備工程の反応における反応温度及び反応時間の条件は、良好な重合反応速度を得るとともに、副反応を十分に防止する観点から、70〜90℃で1.5〜5時間反応させた後、更に150〜200℃で反応させる条件とすることが好ましい。
このような準備工程により得られる第1の中間生成物は、ジイソシアネート化合物、ジオール化合物及び二塩基酸に由来する構造単位を有するものとなるが、少なくとも2つの末端が二塩基酸により形成されていることが好ましい。このような第1の中間生成物は、両末端に二塩基酸に由来する酸性官能基(例えばカルボキシル基)を有することとなり、後述するジグリシジルエーテル型エポキシ化合物との反応を生じ易いものとなる。第1の中間生成物としては、例えば、下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
式(7)中、R21、R22及びR23は、それぞれ二塩基酸、ジイソシアネート化合物及びジオール化合物の残基に該当し、上述したこれらの化合物におけるR21、R22及びR23とそれぞれ同様の基が例示できる。また、m及びpはそれぞれ独立に1以上の整数であり、nは1以上の整数である。m及びpは、第1の中間生成物の重量平均分子量が後述する好適な範囲となるような値であると好ましい。
このような第1の中間生成物の重量平均分子量は、500〜4000であると好ましく、600〜3000であるとより好ましい。第1の中間生成物の重量平均分子量が500〜3000であることにより、最終的に得られる変性エポキシ樹脂におけるアミド基及びウレタン結合の含有率が十分に高くなり、この変性エポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物等の硬化膜が十分な可とう性を有するようになる。
また、第1の中間生成物の酸価は、50〜200mgKOH/gであると好ましく、70〜170mgKOH/gであるとより好ましい。第1の中間生成物の酸価が50〜200mgKOH/gであると、最終的に得られる変性エポキシ樹脂の酸価を十分に高くすることが可能となり、感光性樹脂組成物からなる硬化膜の希アルカリ水溶液による現像がより確実にできるようになる。
(第1工程)
第1工程においては、上述した準備工程で得られた第1の中間生成物と、グリシジルエーテル型エポキシ化合物とを反応させる。ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物は、2つの末端にそれぞれグリシジル基を有する化合物である。例えば、下記一般式(8)で表される化合物が例示できる。下記式(8)中、R
11は2価の有機基である。
ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、一分子中に1つ以上のフェノキシ基を有するものが好ましく、2つ以上のフェノキシ基を有するものがより好ましい。これらのフェノキシ基は、例えば式(8)においてR11で表される基が有している。
ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び、これらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、耐熱性、耐薬品性に優れ、硬化による収縮が比較的少ないことからビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
より具体的には、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとして、エピコート828、エピコート1001及びエピコート1002(いずれもジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を挙げることができる。ビスフェノールFジグリシジルエーテルとしては、エピコート807(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を挙げることができる。ビスフェノールSジグリシジルエーテルとしては、EBPS−200(日本化薬社製、商品名)及びエピクロンEXA−1514(大日本インキ化学工業社製、商品名)等を挙げることができる。また、ビフェノールジグリシジルエーテルとしては、YL−6121(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を挙げることができる。ビキシレノールジグリシジルエーテルとしては、YX−4000(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を挙げることができる。さらに、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルとしては、ST−2004及びST−2007(いずれも東都化成社製、商品名)等を挙げることができる。上述した二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ST−5100及びST−5080(いずれも東都化成社製、商品名)等を挙げることができる。
ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物のエポキシ当量(1当量のエポキシ基を含む化合物のグラム重量)は、希アルカリ水溶液による現像性を良好にする観点から、160〜3300であることが好ましく、180〜980であることが更に好ましい。このエポキシ当量は、JIS K 7236「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」により測定することができる。
第1工程においては、ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂と、第1の中間生成物とを反応させる。ここで、第1の中間生成物は、上述のように、好適な場合、両末端に二塩基酸に由来する酸性官能基を有しており、二塩基酸に該当するが、第1の工程においては、このような第1の中間生成物に加え、これ以外の二塩基酸を併用してもよい。
第1の中間生成物は、準備工程における重合反応によって合成されるので、分子量が大きい場合が多い。そのため、この第1の中間生成物を用いて得られる変性エポキシ樹脂は酸価が小さくなり易く、その結果、感光性樹脂組成物の現像性が悪くなる場合もある。そこで、上述のように、第1工程において二塩基酸を併用することで、変性エポキシ樹脂の酸価が高まるように調節することができる。これにより、変性エポキシ樹脂は良好な酸価を有するようになり、その結果、希アルカリ水溶液による現像性に優れた感光性樹脂組成物が得られるようになる。
第1工程において併用する二塩基酸としては、ジカルボン酸が好ましく、具体的には、例えば、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの二塩基酸のなかで、テトラヒドロフタル酸が特に好ましい。
第1工程における反応は、常法により行うことができる。この反応において、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と第1の中間生成物との配合比は、前者のエポキシ基に対する後者のカルボキシル基の官能基の当量比(カルボキシル基/エポキシ基)が、1.03〜1.30となるようにすることが好ましい。また、上述のように二塩基酸を併用する場合は、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物のエポキシ基に対する、第1の中間生成物のカルボキシル基及び二塩基酸のカルボキシル基の合計の当量比(カルボキシル基/エポキシ基)が、上記の範囲となるようにすることが好ましい。これにより、変性エポキシ樹脂の分子量や貯蔵安定性が良好となるほか、感光性樹脂組成物の希アルカリ溶液による現像性や塗膜性も良好となる。
第1工程の反応は、触媒の存在下で行うこともできる。触媒としては、例えば、ホスフィン類、アルカリ金属化合物及びアミン類等が挙げられる。具体的には、例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属化合物、トリエタノールアミン、N,N´−ジメチルピペラジン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムブロマイド、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジンなどのアミン類が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、触媒としては、9.0以下のpKaを有する三級アミンが好ましく、7.3以下のpKaを有する三級アミンがより好ましい。このような触媒を用いることによって、変性エポキシ樹脂中に、上述した一般式(1)で表される構造単位がより選択的に形成されるようになる。また、上述した触媒のなかでも、得られる変性エポキシ樹脂中の結合種(エーテル型網目結合及び/又はエステル型網目結合)によるゲル化を防止する観点から、ホスフィン類、アルカリ金属化合物以外のもの、或いは三級アミンであって9.0以下のpKaを有するものを用いることが好ましい。なお、「Ka」は酸解離定数を示し、「pKa」は、pKa=−log(Ka)で定義される数値を示す。
この第1工程の反応においては、主にジグリシジルエーテル型エポキシ化合物のグリシジル基と第1の中間生成物のカルボキシル基との間の反応が生じる。そして、この反応が繰り返し生じることによって、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と第1の中間生成物との重合反応が進行する。その結果得られる第2の中間生成物には、例えば、下記一般式(9)で表される構造単位が含まれる。
式(9)中、R11は、上記と同義であり、これはジグリシジルエーテル型エポキシ化合物から両末端のグリシジル基を除いた残基に該当する。また、R12は、第1の中間生成物の反応後の残基である。この残基は、例えば、第1の中間生成物が上記一般式(7)で表される化合物である場合、当該化合物から両末端のカルボキシル基を除いてなる2価の基であり、上記一般式(2)で表される基がこれに該当する。このように、第1工程においては、グリシジル基とカルボキシル基との間で反応が生じ、これにより形成されたエステル結合を含む鎖状の構造単位が第2の中間生成物中に導入される。
なお、第1工程においては、このような鎖状の構造単位が形成される反応のほか、かかる反応で生じた鎖状の構造単位中の水酸基と、原料であるジグリシジルエーテル型エポキシ化合物のグリシジル基や、第1の中間生成物のカルボキシル基との反応も平行して生じ得る。そして、これらの反応によって、第1の中間生成物中に、水酸基とグリシジル基との反応により生成したエーテル結合による網目構造や、水酸基とカルボキシル基との反応により生成したエステル結合による網目構造等が形成されることもある。
第2の中間生成物にこれらの網目構造が多く形成される場合、第2の中間生成物は、全体として3次元網目構造を有するようになる。ところが、3次元網目構造を有する第2の中間生成物やこれを用いて得られる変性エポキシ樹脂は、ゲル化を生じ易い。そのため、このような変性エポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物等を用いて形成された感光性樹脂組成物層は、希アルカリ水溶液を用いた現像の際に未硬化部分が除去され難く、精細なパターンを有する硬化膜の形成が困難な傾向にある。
しかし、第1工程において上述したような触媒を併用すれば、第2の中間生成物は、上記式(9)で表される鎖状構造を主として有し、全体としても主に鎖状構造からなる構造を有するようになる。このような第2の中間生成物を用いて得られる変性エポキシ樹脂は、ゲル化し難い傾向にある。そのため、この変性エポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物等は、その未硬化部分が希アルカリ水溶液による現像により良好に除去されるようになる。
第1工程において触媒を用いる場合、その使用量は、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物及び第1の中間生成物の総量、或いは、二塩基酸を併用する場合は更に二塩基酸を含む総量100重量部に対して、1〜10重量部とすることが好ましい。これにより、良好な重合反応速度が得られるほか、変性エポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物の硬化膜の耐熱性及び電食絶縁性が良好となる。
また、第1工程における好適な反応温度は、良好な重合反応速度を得るとともに、副反応を十分に防止する観点から、100〜150℃とすることが好ましい。
(第2工程)
第2工程においては、第1工程で得られた第2の中間生成物と、酸無水物とを反応させ、変性エポキシ樹脂を得る。酸無水物としては、二塩基性酸無水物が好ましく、ジカルボン酸無水物がより好ましい。ジカルボン酸無水物は、下記一般式(10)で表すことができる化合物である。式(10)中、R
31は、2価の有機基である。
酸無水物としては、具体的には、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの二塩基性酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物、その他これに付随する、例えば5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物のような多価カルボン酸無水物誘導体等が挙げられる。なお、酸無水物としては、一種のものを単独で、又は2種以上を組み合わせて適用することができる。
第2工程においては、酸無水物における酸無水物基と、第2の中間生成物中の水酸基との間の反応が主に生じる。第2の中間生成物中の水酸基は、主として、第1工程におけるグリシジル基とカルボキシル基との反応の結果生じたもの(上記一般式(9)中の水酸基)である。そして、このような反応の結果、上記一般式(1)で表される構造単位を有する変性エポキシ樹脂が得られる。この変性エポキシ樹脂は、第1の中間生成物における鎖状構造(上記一般式(9)の鎖状構造)から形成された主鎖と、この鎖状構造の水酸基に酸無水物が付加することにより形成された上記一般式(3)で表される側鎖とを有する。
第2工程における酸無水物の使用量は、酸無水物中の酸無水物基と第2の中間生成物中の水酸基との官能基当量比(酸無水物基/水酸基)が、モル比で0.6〜1.3となるように調整することが好ましい。こうすることで、得られた変性エポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物の希アルカリ水溶液による現像性が良好となる。また、この感光性樹脂組成物から得られた硬化膜の耐熱性及び電食絶縁性が優れるようになる。
また、第2工程における好適な反応温度は、良好な反応速度を得るとともに副反応を防止する観点からは、80〜130℃の範囲である。
以上、準備工程、第1工程及び第2工程についてそれぞれ説明したが、これらの工程の反応は、全て適当量の溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン若しくはメチルシクロヘキサノン等のケトン化合物、トルエン、キシレン若しくはテトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル若しくはトリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル化合物、上記グリコールエーテル化合物の酢酸エステル化合物等のエステル化合物、エチレングリコール若しくはプロピレングリコール等のアルコール化合物、または、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ若しくはソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。
[変性エポキシ樹脂]
次に、好適な実施形態に係る変性エポキシ樹脂について説明する。好適な実施形態の変性エポキシ樹脂は、上述した実施形態の製造方法により得られたものであり、上記一般式(1)で表される構造単位を有する。
上記一般式(1)中のR11は、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物の残基である2価の基であり、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物が上記一般式(7)で表される化合物である場合、当該化合物におけるR11と同じ基となる。また、R12は、上記一般式(2)で表される2価の基であり、第1の工程で用いる第1の中間生成物の残基である。例えば、第1の中間生成物の一例である上記一般式(6)で表される化合物から両末端のカルボキシル基を除いてなる2価の基がこれに該当する。さらに、R13は、上記一般式(3)で表される基であり、第2工程で用いた酸無水物から形成された基である。なお、変性エポキシ樹脂には、R13として水素原子を有する式(1)の構造単位が含まれていてもよいが、R13の全てが水素原子であることはない。
このように、変性エポキシ樹脂は、R11で表される基とR12で表される基とが結合した主鎖と、この結合部分の構造単位に酸無水物が付加して形成された一般式(3)で表される側鎖とを含む構造を有している。変性エポキシ樹脂は、このようなエステル型鎖状構造を有し、分子全体としても鎖状構造を有することから、ゲル化し難い傾向にある。
したがって、かかる変性エポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物は、レジスト膜等の硬化膜を形成する際、希アルカリ水溶液を用いた現像において、未硬化部を良好に除去することができる。そのため、精細なパターンを有する硬化膜の形成に有利である。また、この変性エポキシ樹脂は、アミド基を多数有することから、これを含む感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、FPCの永久マスクとして十分な可とう性を有するものとなる。さらに、変性エポキシ樹脂は、ウレタン結合も含むことから、これを含む感光性樹脂組成物の硬化膜の弾性率が低くなり、例えばFPCの片面にのみ硬化膜を形成した場合であってもFPCの反り等が生じ難くなる。さらにまた、アミド結合やウレタン結合を含むことによって、FPCの難燃性をも高めることが可能となる。
また、変性エポキシ樹脂における一般式(1)で表される構造単位において、一般式(2)で表される基中、R21は、二塩基酸であるジカルボン酸に由来する2価の基であると特に好ましい。このような変性エポキシ樹脂は、特に良好な酸価を有することから、感光性樹脂組成物に適用した場合に一層優れた現像性が得られるようになる。
なお、変性エポキシ樹脂は、必ずしも上述した鎖状構造のみから形成されたものでなくてもよい。例えば、上記主鎖同士がジグリシジルエーテル型エポキシ化合物や第1の中間生成物によって結合された架橋構造が一部に形成されていてもよい。ただし、このような架橋構造は、上述したような変性エポキシ樹脂のゲル化が極力生じない程度に含まれていることが好ましい。
好適な実施形態の変性エポキシ樹脂は、その重量平均分子量(Mw)が10000〜70000であることが好ましく、20000〜50000であることがより好ましい。ここで、Mwとしては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された値を適用することができる。変性エポキシ樹脂のMwが上記範囲であると、これを含む感光性樹脂組成物の塗膜性及び希アルカリ水溶液による現像性が一層良好となる。
なお、上記一般式(1)で表される構造単位を含む変性エポキシ樹脂における、一般式(2)で表される基中のnの値は、変性エポキシ樹脂のMwの上限値が70000となるような数値であることが好ましい。かかる好適なnの値は、変性エポキシ樹脂中のR11、R12、R13、R21、R22、R23及びR31の構造によって異なるが、上述したMwの好適な上限値が得られるような値であると好ましい。
また、変性エポキシ樹脂は、その酸価が70〜150mgKOH/gであると好ましく、90〜135mgKOH/gであるとより好ましい。変性エポキシ樹脂の酸価がこの範囲であると、この変性エポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物の希アルカリ水溶液による現像性が良好となるほか、この感光性樹脂組成物の硬化膜の電気絶縁性、耐薬品性及びめっき耐性が良好となる。
変性エポキシ樹脂の酸価は、以下のようにして測定することができる。すなわち、まず、の変性エポキシ樹脂の溶液約1gを精秤した後、この樹脂溶液にDMFを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解させる。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加した後、この溶液を0.1NのKOH水溶液を用いて滴定する。そして、得られた滴定結果を、下記式;
A=10×Vf×56.1/(Wp×I)
に代入して酸価を算出する。なお、式中Aは酸価(mgKOH/g)を示し、Vfは滴定量(mL)を示し、Wpは変性エポキシ樹脂溶液の重量(g)を示し、Iは変性エポキシ樹脂溶液中の不揮発分の割合(重量%)を示す。
[感光性樹脂組成物]
次に、好適な実施形態に係る感光性樹脂組成物について説明する。本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)変性エポキシ樹脂と、(B)少なくとも一つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを含有する。この感光性樹脂組成物における(A)成分は、上述した実施形態の変性エポキシ樹脂と同様である。以下、好適な(B)成分及び(C)成分について説明する。
まず、(B)成分について説明する。
(B)成分である光重合性化合物としては、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーが挙げられ、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β´−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β´−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が例示可能である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらのうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業製、商品名)として商業的に入手可能である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH2−CH2−O−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH2−CH(CH3)−O−)のブロック構造を有することを意味する。
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル等が挙げられる。上記のα,β−不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。なお、上述した(B)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
次に(C)成分について説明する。
(C)成分である光重合開始剤は、光の照射により上記(B)成分の重合を生じさせる化合物である。このような(C)成分としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヘラーケトン)、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4´−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−モルホリノフェノン)−ブタノン−1,2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9´−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体;クマリン系化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
次に、感光性樹脂組成物中の(A)、(B)及び(C)成分の好適な含有割合について説明する。まず、(A)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分との総量100重量部に対して、10〜70重量部であることが好ましく、35〜55重量部であることがより好ましい。この含有量が10重量部未満では、光感度が不十分となる傾向があり、70重量部を超えると、光硬化物が脆くなる傾向がある。
また、(B)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分との総量100重量部に対して、10〜70重量部であることが好ましく、35〜55重量部であることがより好ましい。この含有量が10重量部未満では、光感度が不十分となる傾向があり、70重量部を超えると、光硬化物が脆くなる傾向がある。
さらに、(C)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分との総量100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.2〜10重量部であることがより好ましい。(C)成分の含有量が上記範囲であると、良好な光感度及びはんだ耐熱性が得られるようになる。
なお、感光性樹脂組成物は、(A)〜(C)成分以外に、所望とする特性に応じて種々の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、メラミン樹脂若しくはイソシアネートのブロック体等の熱硬化成分、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン若しくはロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、フタロシアニングリーン若しくはフタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アゾ系等の有機顔料若しくは二酸化チタン等の無機顔料、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム若しくは硫酸バリウム等の無機顔料からなる充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、酸化防止剤、香料或いはイメージング剤等が挙げられる。
これらのその他成分は、(A)成分と(B)成分との総量100重量部に対して各々0.01〜70重量部程度含有することができる。また、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、感光性樹脂組成物は、上記以外にアクリル系共重合体、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂等の、(A)成分以外のポリマー成分を更に含有していてもよい。
さらに、感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤やこれらの混合溶剤を含んでいてもよく、固形成分がこれらの溶媒に溶解された、固形分30〜70重量%程度の溶液の形態であってもよい。これにより、感光性樹脂組成物の塗布等が容易となる。
[感光性エレメント]
次に、好適な実施形態の感光性エレメントについて図面を参照して説明する。図1は、好適な実施形態の感光性エレメントの断面構成を模式的に示す図である。図1に示されるように、感光性エレメント1は、支持体10と、この支持体10上に形成された感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層20とを備えるものである。また、図示のように、感光性樹脂組成物層20上には、当該層を被覆する保護フィルム30を更に備えていてもよい。
感光性樹脂組成物層20は、上述した好適な実施形態の感光性樹脂組成物からなる層である。この感光性樹脂組成物層20は、感光性樹脂組成物を上述したような溶剤又は混合溶剤に溶解して固形分30〜70重量%程度の溶液とした後に、この溶液を支持体10上に塗布して形成することが好ましい。
感光性樹脂組成物層20の厚みは、用途により異なるが、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去した乾燥後の厚みで、10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。この厚みを10μm未満とするのは、工業的に塗工が難しいため、困難な傾向にある。一方、100μmを超える場合、上述した実施形態の感光性樹脂組成物を用いることにより奏される効果が小さくなり易く、特に、可とう性及び解像度が低下する傾向にある。
また、感光性エレメント1が備える支持体10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルム等が挙げられる。
この支持体10の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。この厚みが5μm未満では現像前に支持体10を剥離する際に当該支持体10が破れやすくなる傾向がある。一方、100μmを超えると解像度及び可とう性が低下する傾向がある。
上述したような支持体10と感光性樹脂組成物層20との2層からなる感光性エレメント1又は支持体10と感光性樹脂組成物層20と保護フィルム30との3層からなる感光性エレメントは、例えば、そのまま貯蔵してもよく、又は、保護フィルムを介在させた上で巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。
[レジストパターンの形成方法]
上述した感光性エレメントを用いたレジストパターンの形成方法は、感光性エレメントを感光性樹脂組成物層、支持体の順となるように回路形成用基板上に積層する積層工程と、活性光線を、感光性樹脂組成物層の所定の部分に照射し、感光性樹脂組成物層に光硬化部を形成させる露光工程と、光硬化部以外の感光性樹脂組成物層を除去する現像工程とを含むものである。なお、積層工程前には、必要に応じて感光性エレメントから保護フィルムを除去する除去工程を行ってもよい。
図2は、レジストパターンの形成方法の一実施形態を示す工程断面図である。レジストパターンを形成させる基板100は、絶縁層102と、この絶縁層102上に形成された導電体層104とから構成される基板である。導電体層104は、特に制限されないが、例えば、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金からなる層である。
レジストパターンの形成においては、まず、必要に応じて、除去工程において、上述した感光性エレメント1から保護フィルム30を剥離する。
次いで、積層工程において、感光性エレメント1を、その感光性樹脂組成物層20を加熱しながら、基板100に圧着して積層させる(図2(a))。かかる積層の際の雰囲気は特に制限されないが、密着性及び追従性等を良好にする見地から、減圧下で積層を行うことが好ましい。感光性エレメント1が積層される表面は、通常、基板100の導電体層104の面であるが、導電体層104以外の面であってもよい。
感光性樹脂組成物層20の加熱温度は70〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は0.1〜1.0MPa程度とすることが好ましく、周囲の気圧は4000Pa以下とすることが好ましい。ただし、必ずしもこれらの条件には制限されない。また、積層工程の前には、積層性を更に向上させるために、基板100の予熱処理を行ってもよい。ただし、感光性樹脂組成物層20を上記のように70〜130℃に加熱する場合は、基板100の予熱処理は必ずしも必要ではない。
積層完了後、露光工程において感光性樹脂組成物層20の所定部分に活性光線Lを照射して光硬化部20bを形成する(図2(b))。この光硬化部20bの形成方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターン(アートワーク200)を通して活性光線Lを画像状に照射する方法が挙げられる。このアートワーク200は、感光性樹脂組成物層20に形成すべきパターンに対応するように光透過部202及び光遮蔽部204を有している。
この際、感光性樹脂組成物層20上に存在する支持体10が透明の場合には、図示のようにそのまま活性光線Lを照射することができる。一方、支持体10が不透明の場合には、支持体10を除去した後、感光性樹脂組成物層20に活性光線Lを照射する。この露光工程において、活性光線Lが照射されなかった部分は、未硬化部20aとなる。
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものを用いることができる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものを用いることもできる。
露光工程後、感光性樹脂組成物層20上に支持体10が存在している場合には、支持体10を除去した後、現像工程において、光硬化部20b以外の感光性樹脂組成物層20(未硬化部20a)を除去する現像を行い、レジストパターン22を形成させる(図2(C))。現像方法としては、ウエット現像、ドライ現像等が挙げられる。
例えば、ウエット現像の場合は、アルカリ性水溶液、水系現像液や有機溶剤等、感光性樹脂組成物に対応した現像液を用い、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像を行う。現像液としては、安全かつ安定であり、操作性が良好なものが好ましく、例えば、20〜50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(1〜5重量%水溶液)等が好適である。
このようにしてレジストパターン22を形成した後には、例えば、このレジストパターン22をマスクとして導体層104のエッチング等を行うことで、基板100において所定の回路パターンを形成することができる。なお、導体層104が予め所定の回路パターンに加工されたものである場合は、このようなエッチング等を行わなくてもよい。
基板100上に形成されたレジストパターン22は、上記の導体層104(回路パターン)等を保護するための永久マスクとして機能することができる。例えば、基板100が可とう性を有するフィルム状の基板、例えばFPCである場合、レジストパターン22は、FPCを保護するためのカバーレイとして適用される。
レジストパターン22がFPCのカバーレイとして用いられる場合、レジストパターン22に対しては、上述した現像工程後に、高圧水銀ランプによる紫外光の照射や加熱を更に行うことが好ましい。これにより、レジストパターン22が、FPCのカバーレイとして優れたはんだ耐熱性及び耐薬品性を有するようになる。
紫外線を照射する場合は、必要に応じてその照射量を調整することが好ましく、例えば0.2〜10J/cm2程度の照射量で照射を行うことができる。また、レジストパターンの加熱は、100〜170℃程度の範囲で、15〜90分間程度の範囲で行うことが好ましい。紫外線照射及び加熱の両方を行ってもよく、この場合、両方を同時に行ってもよく、いずれか一方を実施した後に他方を実施してもよい。紫外線照射と加熱とを同時に行う場合は、はんだ耐熱性、耐薬品性等をより良好に付与する観点から、60〜150℃に加熱することがより好ましい。
このようにして形成されたカバーレイは、基板にはんだ付けを施した後の配線の保護膜を兼ね、優れた可とう性及び絶縁性等を有するので、FPCの永久マスクとして有効である。そして、レジストパターン(カバーレイ)が形成された基板は、その後、LSIなどの部品実装(例えば、はんだ付け)がなされ、更に、例えばカメラ等の電子機器へ装着される。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[変性エポキシ樹脂の製造]
(調製例1)
まず、以下に示す方法により変性エポキシ樹脂を製造した。すなわち、まず、攪拌機、還流冷却機、温度計及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(ヒュルスジャパン社製、商品名「VESTANAT TMDI」)1重量部、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートT−80」23.2重量部、γ−ブチロラクトン80.0重量部、ポリカーボネートジオール(ダイセル化学社製、商品名「PLACCEL CD220PL」)76重量部、アジピン酸(和光純薬工業社製)14.8重量部、イソフタル酸(和光純薬工業社製)16.8重量部を仕込んだ。この混合物に対し、窒素ガスを吹き込みながら、80℃で4時間の加熱攪拌を行った。攪拌後の混合物を190℃に昇温し、5時間保温させることにより、アミド基含有二塩基酸を得た(準備工程)。続いて、このアミド基含有二塩基酸をγ−ブチロラクトン40重量部で希釈した。得られた溶液中の固形分は52.4重量%であり、また酸価は100mgKOH/gであった。
また、攪拌機、還流冷却機、温度計及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1001、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量478.9g/eq、商品名)181.2重量部、シクロヘキサノン20重量部及びトルエン120.0重量部を仕込み、この混合物に対し、窒素ガスを吹き込みながら、130℃に加熱した状態で攪拌を行い、これによりエポキシ樹脂に含まれる水分の還流脱水を行った。
次いで、還流脱水後のエポキシ樹脂溶液に、上記で得られたアミド基含有二塩基酸(固形分52.4重量%)を160.3重量部とテトラヒドロフタル酸(新日本理化社製)24重量部とジメチルパラトルイジン(三星化学社製)12重量部を添加し、140℃で4時間保温した(第1工程)。
そして、保温後の混合物に、テトラヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製)113.5重量部を添加し、120℃で3時間保温させることにより(第2工程)、(A)成分である変性エポキシ樹脂(エポキシ(1))を得た(第2工程)。その後、変性エポキシ樹脂をシクロヘキサノンで固形分が41重量%になるよう希釈した。
得られた変性エポキシ樹脂の重量平均分子量は34000であり、酸価は109mgKOH/gであった。なお、重量平均分子量は、(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC))により測定した。
[評価用積層体の作製;実施例1、比較例1及び2]
(感光性樹脂組成物の調製)
樹脂成分(表中、「(A)成分」と示す)、(B)成分(光重合性化合物)及び(C)成分(光重合開始剤)を、表1に示す種類及び配合比(重量基準)で混合することにより、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
なお、表1中、(A)成分であるエポキシ(1)は、上記調製例1で得られた変性エポキシ樹脂であり、樹脂(1)は、メタクリル酸/アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/スチレン(重量比;26/20/34/20)共重合体(重平均分子量67000)であり、樹脂(2)は酸変性ビスフェノールA型エポキシアクリレートの65重量%カルビトールアセテート/ソルベントナフサ溶液(日本化薬社製、商品名「ZAR−1035」)である。(B)成分中、樹脂(3)は、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名「BPE−10」)であり、樹脂(4)は、カルボキシル基含有ウレタンアクリレート(共栄社化学株式会社、商品名「UF−TCB−50」)である。(C)成分であるI−369は、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフェリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「I−369」)であり、BL−3175はヘキサメチレンジイソシアネートをベースイソシアネートとするイソシアヌレート体のメチルエチルケトンオキシムブロック体の75重量%メチルエチルケトン溶液(住化バイエルウレタン社製、商品名「BL3175」)である。
(感光性エレメントの製造)
次いで、各感光性樹脂組成物を、支持体である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人社製、商品名「G2−16」)上にそれぞれ別々に均一に塗布することにより、感光性樹脂組成物層を形成した。この層を、熱風対流式乾燥機を用いて100℃で約10分間乾燥させた。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、25μmであった。
続いて、感光性樹脂組成物層の支持層と接している側とは反対側の表面上に、ポリエチレンフィルム(タマポリ社製、商品名「NF−13」)を保護フィルムとして貼り合わせ、各実施例及び比較例にそれぞれ対応する感光性エレメントを得た。
(評価用積層体の製造)
まず、18μm厚の銅箔をポリイミド基材に積層したフレキシブルプリント配線板用基板(ニッカン工業社製、商品名「F30VC1」)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗した後、乾燥した。そして、上記で得られた各感光性エレメントを、このフレキシブルプリント配線板用基板上に、連続式真空ラミネータ(日立化成工業社製、商品名「HLM−V570」)を用い、ヒートシュー温度100℃、ラミネート速度0.5m/分、気圧4000Pa以下、圧着圧力0.3MPaの条件の下、感光性エレメントにおけるポリエチレンフィルムを剥離しながら積層した。これにより、実施例1、比較例1及び2の評価用積層体を得た。
[特性評価]
実施例1、比較例1及び2の評価用積層体を用いて、以下に示す方法により各評価用積層体における感光性樹脂組成物層の光感度、解像度及び塗膜性を評価し、更に感光性樹脂組成物層の硬化膜のはんだ耐熱性、耐折性(可とう性)、伸び率、引張弾性率及び引張強度を評価した。得られた結果をまとめて表2に示す。
(光感度)
まず、評価用積層体上に、ネガとしてストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールを密着させた。それから、評価用積層体に対し、フォトツールを介して、オーク製作所社製HMW−201GX型露光機を使用し、このストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。続いて、常温で一時間静置し、PETフィルムを剥離した後、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を60秒間スプレーして現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。光感度を評価する数値としては、露光に要したエネルギー量を用いた。この数値が低いほど、光感度が高いことを示す。
(解像度)
まず、評価用積層体上に、ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、解像度評価用ネガであるライン幅/スペース幅が30/30〜200/200(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールとを密着させた。続いて、評価用積層体に対し、上記フォトツールを介して、上述した露光機を用い、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。次いで、常温で一時間静置し、PETフィルムを剥離した後、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を60秒間スプレーして現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。解像度は、現像処理によって矩形のレジスト形状(断面形状)が得られていたライン間のスペース幅の最も小さい値(単位:μm)により評価した。この値が小さいほど、解像度に優れていることを示す。
(塗膜性)
得られた評価用積層体に対し、露光を行わずに、その積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、その感光性樹脂組成物層に指を軽く押し付け、指に対する張り付き程度を以下の基準で評価した。すなわち、指に対する張り付きが認められなかった、又は、ほとんど認められなかったものは「○」とし、指に対する張り付きが認められたものは「×」とした。
(はんだ耐熱性)
まず、各実施例又は比較例の評価用積層体をそれぞれ用いて評価用FPCを作製した。すなわち、評価用積層体上に、ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、カバーレイの信頼性評価用ネガである配線パターンを有するフォトツールとを密着させた。続いて、評価用積層体に対し、上記フォトツールを介して、上述した露光機を使用し、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。次いで、常温で1時間静置した後、この積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、光感度評価の場合と同様の現像液及び現像条件でスプレー現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。その後、オーク製作所社製紫外線照射装置を使用して1J/cm2のエネルギー量で紫外線照射を行い、更に160℃で60分間加熱処理を行った。これにより、評価用積層体の表面上にカバーレイが形成された評価用FPCを得た。
このようにして得られた評価用FPCに、ロジン系フラックス(タムラ化研社製、商品名「MH−820V」)を塗布した後、300℃のはんだ浴中に30秒間浸漬してはんだ処理を行った。そして、はんだめっきを施されたFPC上のカバーレイのクラック発生状況、並びに、基板からのカバーレイの浮き程度及び剥離程度をそれぞれ目視により観察し、次の基準で評価した。すなわち、カバーレイのクラックの発生が認められず、カバーレイの浮き及び剥離も認められなかったものは「○」とし、それらのいずれかが認められたものは「×」とした。
(耐折性(可とう性))
上記と同様にして得られた各評価用FPCを、ハゼ折りにより180°折り曲げ、その際のカバーレイにおけるクラック発生状況を目視により観察し、次の基準で評価した。すなわち、カバーレイにクラックが認められなかったものは「○」とし、クラックが認められたものは「×」とした。
(伸び率、引張弾性率及び引っ張り強度)
各評価用積層体に対し上記と同様の条件で露光を行い、感光性樹脂組成物層を硬化させて硬化膜を形成した。この硬化膜から、長さ70mm、幅10mmの試験片(硬化膜単体)を準備した。次いでチャック幅50mmとしてFUDOH RHEO METER RT−3010D−CWにセットし、室温で延伸し、破断点までの変位を求めることにより、硬化膜の伸び率、引張弾性率及び引っ張り強度を導き出した(JIS K7120に準拠する方法)。
表2より、調製例1の変性エポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物を用いた実施例1では、変性エポキシ樹脂を用いなかった比較例1及び2の場合と比べて、上記の全ての特性を良好に満たしていることが判明した。
1…感光性エレメント、10…支持体、20…感光性樹脂組成物層、20a…未硬化部、20b…硬化部、22…レジストパターン、30…保護フィルム、100…基板、102…絶縁層、104…導電体層、200…アートワーク、202…光透過部、204…光遮蔽部。