JP2007129859A - 周波数安定化システムと方法、およびプログラム - Google Patents

周波数安定化システムと方法、およびプログラム Download PDF

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開一郎 平山
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Abstract

【課題】系統容量の小さな電力系統に適用した場合でも、系統周波数を目標値以上に維持可能で、過周波数になることのない高精度の制御を可能とする。
【解決手段】中央演算装置は、定常時における各発電機の有効電力出力と各負荷の有効消費電力および母線電圧を取得し(S110)、事故発生時には(S120のYES)、各負荷の母線電圧を取得し、事故前に記憶した脱落電源Mの初期有効電力出力PG0M、各負荷の初期有効消費電力PL0j、各負荷の初期母線電圧V0j、および電源脱落後に記憶した各負荷の母線電圧Vjに基づき、低下量制御条件式の条件を満足し、かつ、遮断負荷の初期有効消費電力の合計ΣPC0jが最小となる組合せを求める低下量制御条件式に基づき、最大周波数低下量制御のための遮断負荷を選択する(S130)。負荷端末装置102に当該負荷の負荷遮断指令を送出することにより、負荷遮断を実施させる(S140)。
【選択図】図3

Description

本発明は、電力系統に電源脱落事故または系統分離事故が発生した場合に事故発生に伴う周波数低下を負荷遮断により防止する周波数安定化技術に関するものである。
電力系統において、系統周波数を目標値以上に維持することは重要であるが、発電機および負荷を接続してなる複数の母線を有するというその構成上、電源脱落事故または系統分離事故が発生した場合には、事故発生に伴い周波数が急激に大きく低下してしまう。このような事故発生に伴う周波数低下を防止するために、従来から、系統内の一部の負荷を高速遮断する周波数安定化技術が存在している。
図12は、従来の周波数安定化システムの構成図である(例えば、非特許文献1参照)。この図12において、1(1A〜1C)は発電機、2(2A〜2G)は母線、3(3A〜3G)は変圧器または送電線、4(4A〜4F)は遮断器、5(5A〜5F)は電流計測器(CT)、6(6A〜6F)は電圧計測器(PT)、7(7D〜7F)は負荷、8(8A〜8F)は伝送系である。また、11(11A〜11C)は発電機端末装置、12(12D〜12F)は負荷端末装置、13は中央演算装置である。このような従来の周波数安定化システムの作用は、次の通りである。
事故発生前の定常状態において、発電機端末装置11、負荷端末装置12は、電流計測器5、電圧計測器6から電圧・電流を入力し、発電機の有効電力出力と負荷の有効消費電力を演算し、伝送系8を介して中央演算装置13に入力する。事故により発電機脱落が発生したことを、遮断器4の開極情報により発電機端末装置11が検出すると、その結果は中央演算装置13に伝送される。
中央演算装置13では、前記計測された発電機の有効電力出力、負荷の有効消費電力および予め設定された系統定数、最大周波数低下量の目標値から、例えば、以下の(1)式により必要負荷遮断量を算出し、遮断すべき負荷を選択する。そして、負荷遮断指令が伝送系8を介して負荷端末装置12に送信され、負荷遮断が実施される。
C=(PG0−Kf・Δfbm・PL0)/(1−Kf・Δfbm) … (1)
ここで、各符号が示す値は次の通りである。
C:必要負荷遮断量、
G0:脱落した発電機の事故発生前の有効電力出力、
f:系統定数、
Δfbm:最大周波数低下量の目標値、
L0:事故発生前における負荷の有効消費電力の合計。
また、特許文献1〜2では、必要負荷遮断量を高精度に求めるため、系統状態に応じて系統定数Kfを切替える等の工夫がなされている。
特開平7−184324 特開平11−234904 大田宏次著「電力系統の保護制御システム」、電気書院、1975年 関根泰二他「電力系統工学」、コロナ社、1979年
しかしながら、上記のような従来の周波数安定化システムにおいては、電源脱落あるいは系統分離に伴う電圧変動を何等考慮することなしに、負荷遮断量を演算し、フィーダを選択遮断していた。しかしながら、このような周波数安定化システムを系統容量の小さな電力系統に適用すると、電源脱落などに伴う電圧変化により負荷の消費電力が変化、すなわち、負荷遮断量に誤差が発生し、系統周波数を目標値以上に維持できない可能性、あるいは、過剰遮断により過周波数になる可能性がある。
以上のように、従来の周波数安定化システムにおいては、電源脱落あるいは系統分離に伴う電圧変動が考慮されていないため、特に、系統容量の小さな電力系統に適用した場合、系統周波数を目標値以上に維持できない可能性や、過剰遮断により過周波数になる可能性があった。
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、系統容量の小さな電力系統に適用した場合でも、系統周波数を目標値以上に維持可能で、過周波数になることのない高精度の制御が可能な周波数安定化システムと方法、およびプログラムを提供することである。
本発明は、上記のような目的を達成するために、実測または予測した負荷母線電圧を用いて、事故直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を選択することにより、事故直後の電圧変動に伴う負荷の消費電力変化を反映した遮断負荷を選択可能とし、高精度の制御を実現可能としたものである。
本発明の周波数安定化方法は、基本的に、発電機および負荷を接続してなる複数の母線を有する電力系統に設置された電流計測手段および電圧計測手段で計測された電流・電圧から発電機および負荷に関する指標値をそれぞれ求める発電機端末装置および負荷端末装置と、電源脱落事故または系統分離事故の発生時にこれらの端末装置で得られた発電機および負荷に関する指標値に基づき遮断すべき負荷を選択して負荷遮断を実施する中央演算装置を用いて、事故発生に伴う周波数低下を負荷遮断により防止する周波数安定化方法において、以下のような特徴的な処理を行うものである。
本発明の周波数安定化方法の一つの態様は、負荷端末装置により、定常時と事故発生時に負荷母線電圧を算出する定常時と事故発生時の負荷指標値算出処理を行い、中央演算装置により、定常時に負荷端末装置から負荷母線電圧を取得する定常時情報取得処理を行い、事故発生時に遮断負荷選択処理および負荷遮断処理を行うことを特徴としている。
ここで、遮断負荷選択処理は、事故発生時に、負荷端末装置から負荷母線電圧を取得し、定常時および事故発生直後の負荷母線電圧と予め設定された負荷に関する特性定数に基づき、事故直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を選択する処理である。また、負荷遮断処理は、選択した遮断負荷の負荷端末装置に負荷遮断指令を送信することにより負荷遮断を実施させる処理である。
本発明の周波数安定化方法の別の態様は、発電機端末装置により、定常時の発電機の電力・電圧を算出する定常時発電機指標値算出処理を行い、負荷端末装置により、定常時の負荷の電力・電圧を算出する定常時負荷指標値算出処理を行い、中央演算装置により、低常時にモデル作成処理および遮断負荷事前選択処理を行い、想定事故発生時に負荷遮断処理を行うことを特徴としている。
ここで、モデル作成処理は、定常時に、発電機端末装置および負荷端末装置で得られた定常時の発電機および負荷の電力・電圧を取得し、取得した発電機および負荷の電力・電圧に基づき過渡時系統モデルを作成する処理である。また、遮断負荷事前選択処理は、過渡時系統モデルに基づき想定事故発生直後の負荷母線電圧を算出し、算出した負荷母線電圧と予め設定された負荷に関する特性定数に基づき想定事故発生直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を事前選択する処理である。また、この態様における負荷遮断処理は、想定事故発生時に、当該想定事故の検出信号を起動信号として当該想定事故に対して事前選択されている遮断負荷の前記負荷端末装置に負荷遮断指令を送信することにより負荷遮断を実施させる処理となる。
本発明の周波数安定化システムおよび周波数安定化プログラムは、上記の方法の特徴を、システムおよびコンピュータプログラムの観点からそれぞれ把握したものである。
本発明によれば、系統容量の小さな電力系統に適用した場合でも、系統周波数を目標値以上に維持可能で、過周波数になることのない高精度の制御が可能な周波数安定化システムと方法、およびプログラムを提供することができる。
以下には、本発明を適用した複数の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、図12に示した従来技術と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
[第1の実施形態]
[システム構成]
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係る周波数安定化システムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る周波数安定化システムにおいて、発電機1(1A〜1C)〜伝送系8(8A〜8F)に至る構成、および、発電機端末装置11(11A〜11C)の構成は、図12の従来システムと同一である。
本実施形態の周波数安定化システムにおいて、図12の従来システムの構成と異なる点は、電源脱落や系統分離に伴う電圧変化を考慮するために、従来の負荷端末装置12(12D〜12F)および中央演算装置13と異なる機能を有する負荷端末装置102(102D〜102F)および中央演算装置103が使用されている点である。
すなわち、本実施形態において、負荷端末装置102は、定常時の負荷の有効消費電力を算出するだけでなく、定常時と事故発生時に負荷母線電圧を算出する機能を有する。また、中央演算装置103は、事故発生時に、発電機端末装置11で得られた定常時の発電機の有効電力出力、負荷端末装置102で得られた定常時の負荷の有効消費電力と定常時および事故発生直後の負荷母線電圧、および、予め設定された負荷に関する特性定数に基づき、事故直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を選択する機能を有する。中央演算装置103はまた、選択した遮断負荷の負荷端末装置102に負荷遮断指令を送信することにより負荷遮断を実施させる機能を有する。
[本発明の基本的な原理]
以上のような周波数安定化システムの構成は、本発明の基本的な原理に基づいて導出されたものである。以下には、図2を用いて、本発明の基本的な原理について説明する。なお、図2は、電源脱落後、一部の負荷を遮断した場合の周波数の変化と負荷母線電圧の変化を示す波形図である。
この図2に示すように、電源脱落後、周波数は急激に低下するが、一部負荷の高速遮断と非脱落電源に通常設置されている調速機系の応答により周波数は上昇に転じ、一定時間経過後定常周波数に落ち着く。一方、負荷母線電圧は、電源脱落により低下するが、非脱落電源に通常設置されている自動電圧調整器AVRの動作により徐々に回復して行く。周波数、電圧が、例えば、図2のように変化すると、負荷iの有効消費電力PLiも変化し、その値は、系統の周波数偏差と負荷母線電圧を用いて以下の(2)式で表現できる。
なお、図2において、Δfbは最大周波数低下量、Δfsは系統の基準周波数(例えば60Hz)と一定時間経過後の定常周波数との差、すなわち、定常周波数偏差であり、電源脱落後の系統を安定に運転継続するためには、最大周波数低下量だけではなく、定常周波数偏差も必要に応じてコントロールすることが望ましい。
Lj=PL0j(1+Kf・Δf)(Vj/V0jn … (2)
ここで、各符号が示す値は次の通りである。
L0j:負荷jの電源脱落前の有効消費電力(以降、初期有効消費電力と呼ぶ)、
f:負荷の周波数特性定数、
Δf:系統の周波数偏差、
j:電源脱落後の負荷母線電圧の大きさ(以降、単に母線電圧と呼ぶ)、
0j:電源脱落前の負荷母線電圧の大きさ(以降、初期母線電圧と呼ぶ)、
n:負荷の電圧特性定数。
ところで、図2に示す最大周波数低下量Δfbの発生時点では、非脱落電源の初期有効電力出力と非遮断負荷の有効消費電力はバランスしなければならない。したがって、Δfbの目標値をΔfbmとすると、最適な負荷遮断制御は、以下の(3)式(低下量制御条件式)の条件を満足し、かつ、遮断負荷の有効消費電力の合計ΣPC0jが最小となる組合せになる。この(3)式において、左辺第2項は負荷遮断によって失われる有効消費電力、左辺第3項は周波数、電圧変化に伴う非遮断負荷の有効電力消費の変化である。
PG0M−ΣPC0j (1+Kf・Δfbm)(VCj/VC0j)n−ΣPR0k{Kf・Δfbm+(1−(VRk/VR0k)n)}≦0 … (3)
ここで、各符号が示す値は次の通りである。
G0M:脱落電源Mの初期有効電力出力、
C0j:遮断負荷jの初期有効消費電力、
R0k:非遮断負荷kの初期有効消費電力、
Cj:遮断負荷jの母線電圧、
C0j:遮断負荷jの初期母線電圧、
Rk:非遮断負荷kの母線電圧、
R0k:非遮断負荷kの初期母線電圧。
[システム動作]
図3は、第1の実施形態に係る周波数安定化システムの動作の概略を示すフローチャートであり、中央演算装置103によるメインの処理の流れと、それに関連する発電機端末装置11および負荷端末装置102の処理を表現したものである。
この図3に示すように、まず、事故前の定常時において、発電機端末装置11と負荷端末装置102は、定常時発電機指標値算出処理および定常時負荷指標値算出処理として、定周期で、各発電機および各負荷の電流・電圧を、電流計測器5、電圧計測器6により計測し、各発電機の有効電力出力と各負荷の有効消費電力および母線電圧の大きさを算出し、算出結果を、伝送系8を介して中央演算装置103に伝送する(S101,S102)。
中央演算装置103においては、定常時情報取得処理として、発電機端末装置11および負荷端末装置102から上記のような定常時の各指標値の算出結果を取得し、各発電機の初期有効電力出力PG0i、各負荷の初期有効消費電力PL0j、各負荷の初期母線電圧V0jとして記憶する(S110)。
次に、電源脱落事故または系統分離事故が発生したことを、遮断器4の開極情報により発電機端末装置11が検出し、この事故発生を示す信号が、伝送系8を介して中央演算装置103に入力されると(S120のYES)、中央演算装置103は、遮断負荷選択処理(S130)を開始する。
この遮断負荷選択処理(S130)において、中央演算装置103はまず、事故発生を示す信号を、伝送系8経由で負荷端末装置102に伝送することにより、負荷端末装置102に事故発生時負荷指標値算出処理(S103)を行わせて各負荷の母線電圧を取得し、負荷母線電圧Vjとして記憶する(S131)。この場合、負荷端末装置102は、この事故発生を示す信号を起動信号として起動し、事故発生時負荷指標値算出処理(S103)として、事故発生時における各負荷の電圧を電圧計測器6により計測し、その大きさを算出し、この算出結果を、伝送系8を介して中央演算装置103に伝送する。
遮断負荷選択処理(S130)において、中央演算装置103は次に、前記(3)式(低下量制御条件式)に基づき、最大周波数低下量制御のための遮断負荷を選択する。すなわち、事故前に記憶した脱落電源Mの初期有効電力出力PG0M、各負荷の初期有効消費電力PL0j、各負荷の初期母線電圧V0j、および電源脱落後に記憶した各負荷の母線電圧Vjに基づき、前記(3)式(低下量制御条件式)の条件を満足し、かつ、遮断負荷の初期有効消費電力の合計ΣPC0jが最小となる組合せを求める(S132)。
例えば、図1に示すシステムにおいて、負荷7の一部を遮断した時、前記(3)式(低下量制御条件式)の左辺の値が表1の関係になった場合は、その値が負で、初期有効消費電力の合計が最小となる負荷7D,7Eの組合せが選択される。
Figure 2007129859
最後に、中央演算装置103は、負荷遮断処理として、伝送系8を介して選択した遮断負荷の負荷端末装置102に当該負荷の負荷遮断指令を送出することにより、負荷端末装置102により負荷遮断を実施させる(S140)。この場合に、負荷端末装置102は、負荷遮断実施処理として、負荷遮断指令に基づき遮断器4を開極し、負荷遮断を実施する(S104)。表1の例では、負荷端末装置102(102D,102E)により遮断器4D,4Eが開極され、負荷7D,7Eが遮断される。
[効果]
以上のような第1の実施形態によれば、電源脱落または系統分離後の電圧変化を実測し、この結果をもとに、遮断すべき負荷として、負荷の消費電力変化を反映した遮断負荷を選択できるので、従来の周波数安定化システムに比べて高精度な制御が可能になる。これにより、電源脱落時に大きな電圧変動が発生するような、系統容量の小さな電力系統に適用した場合でも、系統周波数を目標値以上に維持可能であり、過周波数になることも防止できる。
[第2の実施形態]
[システム構成]
図4は、本発明を適用した第2の実施形態に係る周波数安定化システムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る周波数安定化システムにおいて、発電機1(1A〜1C)〜伝送系8(8A〜8F)に至る構成は、図1に示した第1の実施形態と同一である。
本実施形態の周波数安定化システムにおいて、第1の実施形態の構成と異なる点は、第1の実施形態の発電機端末装置11、負荷端末装置102、および中央演算装置103と異なる機能を有する発電機端末装置201(201A〜201C)、負荷端末装置202(202D〜202F)、および中央演算装置203が使用されている点である。
すなわち、本実施形態において、発電機端末装置201は、定常時における発電機の有効・無効電力出力および母線電圧を算出する機能を有する。また、負荷端末装置202は、定常時における負荷の有効・無効消費電力および母線電圧を算出する機能を有する。
また、中央演算装置203は、定常時に、発電機端末装置201および負荷端末装置202で得られた定常時の発電機および負荷の電力・電圧に基づき過渡時系統モデルを作成する機能と、過渡時系統モデルに基づき想定事故発生直後の負荷母線電圧を算出し、算出した負荷母線電圧と予め設定された負荷に関する特性定数に基づき想定事故発生直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を事前選択する機能を有する。中央演算装置203はまた、想定事故発生時に、当該想定事故の検出信号を起動信号として当該想定事故に対して事前選択されている遮断負荷の負荷端末装置202に負荷遮断指令を送信することにより負荷遮断を実施させる機能を有する。
[システム動作]
図5は、第2の実施形態に係る周波数安定化システムの動作の概略を示すフローチャートであり、中央演算装置203によるメインの処理の流れと、それに関連する発電機端末装置201および負荷端末装置202の処理を表現したものである。
この図5に示すように、まず、事故前の定常時において、発電機端末装置201および負荷端末装置202は、定常時発電機指標値算出処理および定常時負荷指標値算出処理として、定周期で、各発電機および各負荷の電流・電圧を、電流計測器5、電圧計測器6により計測し、各発電機の有効・無効電力出力、発電機母線電圧の大きさ、および各負荷の有効・無効消費電力、負荷母線電圧の大きさを算出し、算出結果を、伝送系8を介して中央演算装置203に伝送する(S201,S202)。
中央演算装置203においては、モデル作成処理(S210)として、まず、発電機端末装置201および負荷端末装置202から上記のような定常時における発電機および負荷の電力・電圧の算出結果を取得し、各発電機の初期有効電力出力PG0i、初期無効電力出力QG0i、初期端子電圧VG0i、各負荷の初期有効消費電力PL0j、初期無効消費電力QL0j、初期母線電圧V0jとして記憶する(S211)。
続いて、中央演算装置203は、記憶した発電機および負荷の電力・電圧情報に基づき、想定される電源脱落事故または系統分離事故などの想定事故発生後の負荷母線電圧を事前に算出するための過渡時系統モデルを作成する(S212)。
次に、中央演算装置203は、遮断負荷事前選択処理(S220)として、まず、作成した過渡時系統モデルに基づき、想定される電源脱落事故または系統分離事故などの想定事故に対して、当該想定事故発生後の潮流計算を実施し、それぞれのケースにおける負荷母線電圧を算出する(S221)。
続いて、中央演算装置203は、前記(3)式(低下量制御条件式)に基づき、最大周波数低下量制御のための遮断負荷を選択する。すなわち、算出した負荷母線電圧と、記憶した想定脱落電源Mの初期有効電力出力PG0M、各負荷の初期有効消費電力PL0j、各負荷の初期母線電圧V0jに基づき、前記(3)式(低下量制御条件式)の条件を満足し、かつ、遮断負荷の初期有効消費電力の合計ΣPC0jが最小となる組合せを求める(S222)。
中央演算装置203は、遮断負荷選択結果登録処理として、選択した遮断負荷の組合せを、遮断負荷選択テーブルに登録する(S230)。
なお、以上のような遮断負荷事前選択処理(S220)および遮断負荷選択結果登録処理(S230)は、全ての想定事故に対して実施される(S240)。
次に、電源脱落事故または系統分離事故が実際に発生したことを、遮断器4の開極情報により発電機端末装置201が検出し、この事故発生を示す信号が、伝送系8を介して中央演算装置203に入力されると(S250のYES)、中央演算装置203は、負荷遮断処理(S260)として、まず、該当事故に対する遮断負荷を、事故発生前に作成した遮断負荷選択テーブルから抽出する(S261)。
最後に、中央演算装置203は、伝送系8を介して抽出した遮断負荷の負荷端末装置202に当該負荷の負荷遮断指令を送出する(S262)。この場合に、負荷遮断端末202は、負荷遮断指令に基づき遮断器4を開極し、負荷遮断を実施する(S203)
[処理の詳細]
以下には、図5に示した処理のうち、特に、モデル作成処理(S210)における過渡時系統モデルの作成に関する詳細、および、遮断負荷事前選択処理(S220)における過渡時系統モデルから事故発生後の負荷母線電圧を算出する方法の詳細について順次説明する。
[過渡時系統モデルの作成]
まず、過渡時系統モデルの作成に関する詳細について説明する。一般的に、計測した系統情報から母線電圧を求める手段として、潮流計算が広く用いられている(例えば、非特許文献2参照)。この潮流計算は、図4に示すような系統構成に対して、図6の定常時系統モデルを作成し、発電機ノード2A〜2Cには有効電力出力と電圧の大きさ、負荷ノード2D〜2Fには有効消費電力、無効消費電力を指定し、Newton−Raphson法等により、非線形代数方程式を解いて負荷の母線電圧、発電機の無効電力出力を求めるものである。
図6において、円形の要素はノードを示しており、図4の母線2に対応している。また、直線の要素はブランチを示しており、図4の変圧器あるいは送電線3に対応している。また、四角の要素はノードで消費する負荷を示しており、図4の負荷7に対応している。しかしながら、図6に示すような定常時系統モデルは、事故発生前、あるいは、事故後一定時間経過した定常状態(発電機の端子電圧が自動電圧調整器AVRの動作により、その指令値と完全に一致する状態)を対象としており、本実施形態で必要な事故発生直後の状態には適用できない。
そこで、本実施形態においては、発電機の内部電圧は事故前後で変化しないという発電機の特性を利用して、発電機を過渡リアクタンス背後電圧一定モデルで取り扱う。すなわち、事故発生前に計測した各発電機の有効電力出力PG0i、無効電力出力QG0i、端子電圧VG0iからその背後電圧ベクトルEGiを次式により求める。
EGi=(VG0i+Xd'i・QG0i/VG0i)+j(Xd'i・PG0i/VG0i) … (4)
ここで、Xd’は発電機の過渡リアクタンスである。
次に、(4)式で求めた電圧ベクトルを持つ発電機内部ノードを図6に追加して、事故直後の電圧計算が可能な過渡時系統モデル(図7)を作成する。図7において、2X〜2Zは、新たに追加した発電機内部ノード、3X〜3Zは、発電機内部ノードと端子ノードを結ぶブランチ(インピーダンス値はjXd'i)である。
一方、負荷ノードで消費する有効および無効電力は、通常の潮流計算では電圧の大きさに依存しない定電力特性でモデル化されているが、本実施形態では、電圧依存性を考慮した次式でモデル化する。なお、発電機や負荷のないその他のノード(例えば、図7の2H,2G)は、有効消費電力、無効消費電力ともゼロの負荷ノードとして取り扱う。
Lj=PL0j・(Vj/V0jnp … (5)
Lj=QL0j・(Vj/V0jnq … (6)
ここで、各符号が示す値は次の通りである。
L0j:負荷jの電源脱落前の有効消費電力、
L0j:同、無効消費電力、
j:同、母線電圧の大きさ、
0j:同、電源脱落前の母線電圧の大きさ、
np:負荷の有効電力消費の電圧特性定数、
nq:負荷の無効電力消費の電圧特性定数。
[過渡時系統モデルからの事故発生後の負荷母線電圧の算出法]
次に、以上説明した過渡時系統モデルから電源脱落後の負荷母線電圧を算出する方法の詳細について説明する。
ここでは、一例として、一台の発電機がその昇圧トランスの開極により脱落した場合を考える。例えば、発電機1Aが脱落したと仮定すると、発電機端子ノード2A、発電機内部ノード2X(電圧源)、ブランチ3A(昇圧トランス)、ブランチ3X(発電機内部インビーダンス)を、図7の過渡時系統モデルから除外し、新しい過渡時系統モデルを作成する。
そして、このモデルを用いて潮流計算により電源脱落後の負荷母線電圧を求める。具体的には、発電機内部ノードの電圧ベクトルをEG、負荷ノードへの注入電流ベクトルをIとすると、以下の非線形連立方程式を解くことにより、負荷ノードの電圧ベクトルVを得ることができる。
(YLL−YLG・YGG -1・YGL)・V=I … (7)
ただし、
j=(PLj−jQLj)/Vj *
Lj=PL0j・(Vj/V0jnp
Lj=QL0j・(Vj/V0jnq
ここで、各符号が示す値は次の通りである。
LL:負荷ノード間のアドミッタンス行列、
LG:負荷ノードと発電機ノード間のアドミッタンス行列、
GG:発電機ノード間のアドミッタンス行列、
GL:発電機ノードと負荷ノード間のアドミッタンス行列、
*:共役複素数。
このようにして得られた電圧ベクトルVより、前記(3)式(低下量制御条件式)の演算に必要な負荷母線電圧の大きさは、次の(8)式により求められる。
V=√(VR 2+VI 2) … (8)
ただし、
V=VR+jVI
[効果]
以上のような第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、さらに、事故発生前に電源脱落後の電圧変化を予測演算し、遮断すべき負荷を事前選択できるので、事故発生後に遮断負荷を選択する場合に比べて、より高速の周波数制御が可能になる。
[第3の実施形態]
[システム構成]
図8は、本発明を適用した第3の実施形態に係る周波数安定化システムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る周波数安定化システムにおいて、発電機1(1A〜1C)〜伝送系8(8A〜8F)に至る構成、および、発電機端末装置201(201A〜201C)と負荷端末装置202(202D〜202F)の機能は、図4に示した第2の実施形態と同一である。
本実施形態の周波数安定化システムにおいて、第2の実施形態の構成と異なる点は、第2の実施形態における中央演算装置203に機能を若干追加した中央演算装置303が使用されると共に、中央給電指令所300が追加された点である。
すなわち、本実施形態において、中央演算装置303は、第2の実施形態の中央演算装置203と同様の機能に加えて、さらに、伝送系8G経由で接続された中央給電指令所300から、各発電機のガバナフリー容量すなわち瞬動予備力を取得し、取得した瞬動予備力を用いて、想定事故後一定時間経過後の定常周波数偏差を目標値以内に制御するための遮断負荷を事前選択する機能を有する。
[システム動作]
図9は、第3の実施形態に係る周波数安定化システムの動作の概略を示すフローチャートであり、中央演算装置303によるメインの処理の流れと、それに関連する発電機端末装置201および負荷端末装置202の処理を表現したものである。
この図9に示すように、事故前の定常時における発電機端末装置201および負荷端末装置202による定常時発電機指標値算出処理(S201)および定常時負荷指標値算出処理(S202)の詳細は、第2の実施形態と同様である。
中央演算装置303において、モデル作成処理(S210a)として、発電機端末装置201および負荷端末装置202から、定常時における発電機および負荷の電力・電圧の算出結果を取得する点は、第2の実施形態と同様であるが、本実施形態においては、これらの情報に加えて、中央給電指令所300から各発電機の瞬動予備力を取得する点が異なる。
すなわち、モデル作成処理(S210a)においては、まず、発電機端末装置201および負荷端末装置202からの情報を、各発電機の初期有効電力出力PG0i、初期無効電力出力QG0i、初期端子電圧VG0i、各負荷の初期有効消費電力PL0j、初期無効消費電力QL0j、初期母線電圧V0jとして記憶すると共に、中央給電指令所300からの情報を、各発電機の瞬動予備力ΔPRiとして記憶する(S211a)。なお、中央演算装置303が、記憶した発電機および負荷の電力・電圧情報に基づき、想定事故発生後の負荷母線電圧を事前に算出するための過渡時系統モデルを作成する点は、第2の実施形態と同様である(S212)。
次に、中央演算装置303は、遮断負荷事前選択処理(S220a)として、まず、第2の実施形態と同様に、作成した過渡時系統モデルに基づき、想定事故に対して、当該想定事故発生後の潮流計算を実施し、それぞれのケースにおける負荷母線電圧を算出した(S221)後、前記(3)式(低下量制御条件式)に基づき、最大周波数低下量制御のための遮断負荷を選択する(S222)。
本実施形態の遮断負荷事前選択処理(S220a)においては、このような、最大周波数低下量制御のための遮断負荷を選択した(S221,S222)後、さらに、この選択した遮断負荷の負荷遮断後に一定時間経過した場合の潮流計算を実施し、それぞれのケースにおける負荷母線電圧を算出し(S223)、続いて、後述する(9)式(低下量制御条件式)に基づき、定常周波数偏差制御のための追加の遮断負荷を選択する(S224)。
したがって、続く遮断負荷選択結果登録処理(S230)において、中央演算装置303は、この遮断負荷事前選択処理(S220a)において選択した全ての遮断負荷、すなわち、最大周波数低下量制御のための遮断負荷、および、定常周波数偏差制御のための追加の遮断負荷を、遮断負荷選択テーブルに登録する。例えば、処理S222で最大周波数低下量制御のための遮断負荷として負荷7Fが選択され、処理S224で定常周波数偏差制御のための追加の遮断負荷として負荷7Dが追加選択された場合は、遮断負荷選択テーブルには、両方の負荷7D,7Fが登録される。
なお、以上のような遮断負荷事前選択処理(S220a)および遮断負荷選択結果登録処理(S230)が、全ての想定事故に対して実施される(S240)点もまた、第2の実施形態と同様である。
なお、電源脱落事故または系統分離事故が実際に発生した後の中央演算装置303の負荷遮断処理(S260)は、第2の実施形態と同様であるため、図9中では、定義済みの処理として一つのボックスで簡略に示している。また、中央演算装置303の負荷遮断処理(S260)からの遮断指令に基づく負荷端末装置の負荷遮断実施処理(S203)も、第2の実施形態と同様である。
[処理の詳細]
以下には、図9に示した処理のうち、特に、遮断負荷事前選択処理(S220a)における定常周波数偏差制御の詳細と、そのための条件式の求解に必要となる負荷母線電圧の計算方法の詳細について順次説明する。
[定常周波数偏差制御の詳細]
前述したように、電源脱落後の電力系統を安定に運転継続させるためには、事故直後の最大周波数低下量制御に加えて、負荷遮断後一定時間経過した後の定常周波数偏差もコントロールすることが望ましい。
例えば、定常周波数偏差ΔfSの目標値をΔfsmとすると、この時点で非脱落電源の有効電力出力と非遮断負荷の有効消費電力がバランスしなければならない。したがって、最適な追加負荷遮断制御は、以下の(9)式(偏差制御条件式)を満足し、かつ、追加遮断負荷の有効消費電力の合計ΣPCA0lが最小となる組合せである。この(9)式(偏差制御条件式)において、左辺第3項は図9の処理(S222)により既に求められている最大周波数低下量制御のための負荷遮断量、左辺第4項は定常周波数制御のための追加負荷遮断量、左辺第5項は周波数・電圧変化に伴う非遮断負荷の有効電力消費の変化である。
PG0M−ΣΔPRi−ΣPC0j−ΣPCA0l(1+K・Δfsm)(VCAl/VCA0l)n
−ΣPR0k{Kf・Δfsm+(1−(VRk/VR0kn)} ≦ 0 … (9)
ここで、各符号が示す値は次の通りである。
G0M:脱落電源Mの初期有効電力出力、
ΔPRi:非脱落電源iの瞬動予備力、
C0j:最大出力低下量制御のための遮断負荷jの初期有効消費電力、
CA0l:定常周波数偏差制御のための追加遮断負荷lの初期有効消費電力、
R0k:非遮断負荷kの初期有効消費電力、
CAl:追加遮断負荷lの母線電圧、
CA0l:追加遮断負荷lの初期母線電圧、
Rk:非遮断負荷kの母線電圧、
R0k:非遮断負荷kの初期母線電圧。
[偏差制御条件式に用いる負荷母線電圧の計算方法の詳細]
次に、上記の(9)式(偏差制御条件式)の求解に必要となる負荷母線電圧VCAl、VRkの計算方法について説明する。
(9)式(偏差制御条件式)において、VCAl、VRkは最大周波数低下量制御のための負荷遮断を実施した後、一定時間(例えば5〜10秒)経過後の負荷母線電圧の大きさであり、これらの値は、以下の条件を考慮した潮流方程式を、Newton−Raphson法などにより求解することで得られる。
(条件1):非脱落電源の有効電力出力は、発電機調速機系の応答により、初期出力PG0+瞬動予備力ΔPRiとなる。
(条件2):同じく、端子電圧は、自動電圧調整器AVRの応答により、電源脱落前の値VG0に復帰する。
具体的には、まず、図6の定常時系統モデルから、電源脱落に対応するノード/ブランチと最大周波数低下量制御による遮断負荷を削除し、新たな定常時系統モデルを作成する。例えば、電源2Aの脱落に伴い負荷7Eを遮断したとすると、ノード2A、ブランチ3A、負荷7Eを、図6のモデルから削除する。
次に、このモデルに対して、非脱落電源iの有効電力出力をPG0i+ΔPRi、端子電圧をVG0iに指定し、非遮断負荷の有効電力消費量PLj、無効電力消費量QLjを、最大周波数低下量制御と同じく、前記の(5)式および(6)式でモデル化し、Newton−Raphson法などにより負荷母線の電圧ベクトルを求める。そして、前記(8)式より負荷母線電圧の大きさを求める。
[効果]
以上のような第3の実施形態によれば、第2の実施形態の効果に加えて、さらに、負荷遮断後一定時間経過した後の定常周波数偏差も制御できるため、より高精度の周波数制御が可能になる。
[第4の実施形態]
[システム構成]
図10は、本発明を適用した第4の実施形態に係る周波数安定化システムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る周波数安定化システムにおいて、発電機1(1A〜1C)〜伝送系8(8A〜8F)に至る構成、および、発電機端末装置201(201A〜201C)の機能は、図8に示した第3の実施形態と同一である。
本実施形態の周波数安定化システムにおいて、第3の実施形態の構成と異なる点は、第3の実施形態における負荷端末装置202および中央演算装置303に機能をそれぞれ若干追加した負荷端末装置402および中央演算装置403が使用される点である。
すなわち、本実施形態において、負荷端末装置402は、事故発生時に負荷母線電圧を算出する機能を有する。また、中央演算装置403は、事故発生後に実測した母線電圧より遮断負荷を再選択し、不足遮断時には再選択した遮断負荷の負荷端末装置402に追加の負荷遮断指令を送信することにより追加の負荷遮断を実施させる機能を有する。
[システム動作]
図11は、第4の実施形態に係る周波数安定化システムの動作の概略を示すフローチャートであり、中央演算装置403によるメインの処理の流れと、それに関連する発電機端末装置201および負荷端末装置402の処理を表現したものである。
この図11に示すように、本実施形態において、モデル作成処理から負荷遮断処理に至るまでの一連の処理(S210a〜S260)は、第3の実施形態において同一符号で示した一連の処理と同様であるため、負荷遮断処理(S260)に加えて、モデル作成処理(S210a)および遮断負荷事前選択処理(S220a)についても、定義済みの処理として一つのボックスで簡略に示している。
本実施形態においては、想定事故発生時の負荷遮断処理(S260)後に、以下の処理を追加的に行う点で、第3の実施形態と異なる。
中央演算装置403は、遮断負荷再選択処理(S270)として、まず、事故発生後の負荷母線電圧を取得する。すなわち、伝送系8経由で負荷端末装置402に起動信号を伝送することにより、負荷端末装置402により事故発生後の負荷母線電圧を算出させて(S204)、算出結果を取得し、この情報を、事故発生後の負荷母線電圧Vjとして記憶する(S271)。
中央演算装置403は、次に、前記(3)式(低下量制御条件式)に基づき、最大周波数低下量制御のための遮断負荷を再選択する。すなわち、事故前に記憶した脱落電源Mの初期有効電力出力PG0M、各負荷の初期有効消費電力PL0j、各負荷の初期母線電圧V0j、および事故発生後に記憶した各負荷の母線電圧Vjに基づき、前記(3)式(低下量制御条件式)の条件を満足し、かつ、遮断負荷の初期有効消費電力の合計ΣPC0jが最小となる組合せを再選択する(S272)。
中央演算装置403は、次に、求めた合計負荷遮断量が、事故前の遮断負荷事前選択処理(S220a)中の処理(S222)において最大周波数低下量制御のための遮断負荷として選択した遮断量よりも多い場合は、追加遮断必要と判定して(S280のYES)、追加負荷遮断指令を負荷端末装置402に送出する(S290)。この場合に、負荷遮断端末402は、追加負荷遮断指令に基づき遮断器4を開極し、追加負荷遮断を実施する(S205)。
[効果]
以上のような第4の実施形態によれば、第3の実施形態の効果に加えて、さらに、次のような効果が得られる。すなわち、事故発生後に実測した負荷母線電圧をもとに遮断すべき負荷を再選択し、必要に応じて追加負荷遮断を実施できるので、より信頼性の高い周波数制御が可能になる。
[他の実施形態]
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他にも多種多様な変形例が実施可能である。例えば、前記実施形態で示した発電機端末装置、負荷端末装置、中央演算装置の具体的な構成や処理手順は、一例にすぎない。すなわち、本発明は、実測または予測した負荷母線電圧を用いて、事故直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を選択するものである限り、具体的な構成や処理手順は自由に変更可能である。
また、本発明の周波数安定化システムは、前述したように、特に、系統容量の小さな電力系統に最適であるが、本発明の適用対象となる電力系統の具体的な系統構成は何等限定されるものではなく、多様な構成の電力系統に適用可能である。
本発明を適用した第1の実施形態に係る周波数安定化システムの構成を示すブロック図。 本発明の基本的な原理を説明するために、電源脱落後に一部負荷を遮断した場合の周波数の変化と負荷母線電圧の変化を示す波形図。 第1の実施形態に係る周波数安定化システムの動作の概略を示すフローチャート。 本発明を適用した第2の実施形態に係る周波数安定化システムの構成を示すブロック図。 第2の実施形態に係る周波数安定化システムの動作の概略を示すフローチャート。 第2の実施形態におけるモデル作成処理を説明するための定常時系統モデルの一例を示す図。 第2の実施形態におけるモデル作成処理により作成される過渡時系統モデルの一例を示す図。 本発明を適用した第3の実施形態に係る周波数安定化システムの構成を示すブロック図。 第3の実施形態に係る周波数安定化システムの動作の概略を示すフローチャート。 本発明を適用した第3の実施形態に係る周波数安定化システムの構成を示すブロック図。 第4の実施形態に係る周波数安定化システムの動作の概略を示すフローチャート。 従来の周波数安定化システムの構成例を示すブロック図。
符号の説明
1A〜1C…発電機
2A〜2G…母線
3A〜3G…変圧器あるいは送電線
4A〜4F…遮断器
5A〜5F…電流計測器
6A〜6F…電圧計測器
7D〜7F…負荷
8A〜8G…伝送系
11A〜11C,201A〜201C,401A〜401C…発電機端末装置
12D〜12F,102D〜102F,202D〜202F,402D〜402F…負荷端末装置
13,103,203,303,403…中央演算装置
300…中央給電指令所

Claims (10)

  1. 発電機および負荷を接続してなる複数の母線を有する電力系統に設置された電流計測手段および電圧計測手段で計測された電流・電圧から発電機および負荷に関する指標値をそれぞれ求める発電機端末装置および負荷端末装置と、電源脱落事故または系統分離事故の発生時にこれらの端末装置で得られた発電機および負荷に関する指標値に基づき遮断すべき負荷を選択して負荷遮断を実施する中央演算装置を用いて、事故発生に伴う周波数低下を負荷遮断により防止する周波数安定化方法において、
    前記負荷端末装置により、定常時と事故発生時に負荷母線電圧を算出する定常時と事故発生時の負荷指標値算出処理を行い、
    前記中央演算装置により、
    定常時に、前記負荷端末装置から負荷母線電圧を取得する定常時情報取得処理を行い、
    事故発生時に、前記負荷端末装置から負荷母線電圧を取得し、定常時および事故発生直後の負荷母線電圧と予め設定された負荷に関する特性定数に基づき、事故直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を選択する遮断負荷選択処理と、
    選択した遮断負荷の前記負荷端末装置に負荷遮断指令を送信することにより負荷遮断を実施させる負荷遮断処理を行う
    ことを特徴とする周波数安定化方法。
  2. 前記発電機端末装置により、定常時の発電機の有効電力出力を算出する定常時発電機指標値算出処理を行い、
    前記定常時負荷指標値算出処理は、定常時の負荷の有効消費電力を算出する処理を含み、
    前記遮断負荷選択処理は、前記発電機端末装置で得られた定常時の発電機の有効電力出力、前記負荷端末装置で得られた定常時の負荷の有効消費電力と定常時および事故発生直後の負荷母線電圧、および、予め設定された負荷に関する特性定数に基づき、事故直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を選択する処理を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の周波数安定化方法。
  3. 発電機および負荷を接続してなる複数の母線を有する電力系統に設置された電流計測手段および電圧計測手段で計測された電流・電圧から発電機および負荷の電力関連情報をそれぞれ求める発電機端末装置および負荷端末装置と、電源脱落事故または系統分離事故の発生時にこれらの端末装置で得られた発電機および負荷の電力関連情報に基づき遮断すべき負荷を選択して負荷遮断を実施する中央演算装置を用いて、事故発生に伴う周波数低下を負荷遮断により防止する周波数安定化方法において、
    前記発電機端末装置により、定常時の発電機の電力・電圧を算出する定常時発電機指標値算出処理を行い、
    前記負荷端末装置により、定常時の負荷の電力・電圧を算出する定常時負荷指標値算出処理を行い、
    前記中央演算装置により、
    定常時に、前記発電機端末装置および前記負荷端末装置で得られた定常時の発電機および負荷の電力・電圧を取得し、取得した発電機および負荷の電力・電圧に基づき過渡時系統モデルを作成するモデル作成処理と、
    前記過渡時系統モデルに基づき想定事故発生直後の負荷母線電圧を算出し、算出した負荷母線電圧と予め設定された負荷に関する特性定数に基づき想定事故発生直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を事前選択する遮断負荷事前選択処理を行い、
    想定事故発生時に、当該想定事故の検出信号を起動信号として当該想定事故に対して事前選択されている遮断負荷の前記負荷端末装置に負荷遮断指令を送信することにより負荷遮断を実施させる負荷遮断処理を行う
    ことを特徴とする周波数安定化方法。
  4. 前記遮断負荷事前選択処理は、
    前記過渡時系統モデルに基づき想定事故発生直後および負荷遮断後の予め設定された一定時間経過後の負荷母線電圧をそれぞれ算出し、算出した各時点の負荷母線電圧と予め設定された負荷に関する特性定数に基づき、想定事故発生直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御し、かつ、想定事故後前記一定時間経過後の定常周波数偏差を目標値以内に制御するための遮断負荷を事前選択する処理を含む
    ことを特徴とする請求項3に記載の周波数安定化方法。
  5. 前記モデル作成処理は、中央給電指令所から発電機の瞬動予備力を取得する処理を含み、
    前記遮断負荷事前選択処理は、取得した発電機の瞬動予備力を用いて、想定事故後前記一定時間経過後の定常周波数偏差を目標値以内に制御するための遮断負荷を事前選択する処理を含む
    ことを特徴とする請求項4に記載の周波数安定化方法。
  6. 前記負荷端末装置により、想定事故発生時に負荷母線電圧を算出する事故発生時負荷指標値算出処理を行い、
    前記中央演算装置により、
    想定事故発生時に、前記負荷端末装置から負荷母線電圧を取得し、定常時および事故発生直後の負荷母線電圧と予め設定された負荷に関する特性定数に基づき、事故直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を再選択する遮断負荷再選択処理と、
    再選択した遮断負荷の前記負荷端末装置に負荷遮断指令を送信することにより追加の負荷遮断を実施させる追加負荷遮断処理を行う
    ことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の周波数安定化方法。
  7. 発電機および負荷を接続してなる複数の母線を有する電力系統に設置された電流計測手段および電圧計測手段で計測された電流・電圧から発電機および負荷に関する指標値をそれぞれ求める発電機端末装置および負荷端末装置と、電源脱落事故または系統分離事故の発生時にこれらの端末装置で得られた発電機および負荷に関する指標値に基づき遮断すべき負荷を選択して負荷遮断を実施する中央演算装置を備え、事故発生に伴う周波数低下を負荷遮断により防止する周波数安定化システムにおいて、
    前記負荷端末装置は、定常時と事故発生直後の負荷母線電圧をそれぞれ算出するように構成され、
    前記中央演算装置は、事故発生時に、前記負荷端末装置で得られた定常時および事故発生直後の負荷母線電圧と予め設定された負荷に関する特性定数に基づき、事故直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を選択して、選択した遮断負荷の前記負荷端末装置に負荷遮断指令を送信することにより負荷遮断を実施させるように構成されている
    ことを特徴とする周波数安定化システム。
  8. 発電機および負荷を接続してなる複数の母線を有する電力系統に設置された電流計測手段および電圧計測手段で計測された電流・電圧から発電機および負荷の電力関連情報をそれぞれ求める発電機端末装置および負荷端末装置と、電源脱落事故または系統分離事故の発生時にこれらの端末装置で得られた発電機および負荷の電力関連情報に基づき遮断すべき負荷を選択して負荷遮断を実施する中央演算装置を備え、事故発生に伴う周波数低下を負荷遮断により防止する周波数安定化システムにおいて、
    前記発電機端末装置は、定常時の発電機の電力・電圧を算出するように構成され、
    前記負荷端末装置は、定常時の負荷の電力・電圧を算出するように構成され、
    前記中央演算装置は、前記発電機端末装置および前記負荷端末装置で得られた定常時の発電機および負荷の電力・電圧に基づき過渡時系統モデルを作成し、この過渡時系統モデルに基づき想定事故発生直後の負荷母線電圧を算出し、算出した負荷母線電圧と予め設定された負荷に関する特性定数に基づき想定事故発生直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を事前選択しておき、想定事故発生時には、当該想定事故の検出信号を起動信号として当該想定事故に対して事前選択されている遮断負荷の前記負荷端末装置に負荷遮断指令を送信することにより負荷遮断を実施させるように構成されている
    ことを特徴とする周波数安定化システム。
  9. 発電機および負荷を接続してなる複数の母線を有する電力系統に設置された電流計測手段および電圧計測手段で計測された電流・電圧から発電機および負荷に関する指標値をそれぞれ求める発電機端末装置および負荷端末装置と、電源脱落事故または系統分離事故の発生時にこれらの端末装置で得られた発電機および負荷に関する指標値に基づき遮断すべき負荷を選択して負荷遮断を実施する中央演算装置を備え、事故発生に伴う周波数低下を負荷遮断により防止する周波数安定化システムの前記中央演算装置を制御する周波数安定化プログラムにおいて、
    定常時に、前記負荷端末装置から負荷母線電圧を取得する定常時情報取得処理と、
    事故発生時に、前記負荷端末装置から負荷母線電圧を取得し、定常時および事故発生直後の負荷母線電圧と予め設定された負荷に関する特性定数に基づき、事故直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を選択する遮断負荷選択処理と、
    選択した遮断負荷の前記負荷端末装置に負荷遮断指令を送信することにより負荷遮断を実施させる負荷遮断処理
    を前記中央演算装置に実行させることを特徴とする周波数安定化プログラム。
  10. 発電機および負荷を接続してなる複数の母線を有する電力系統に設置された電流計測手段および電圧計測手段で計測された電流・電圧から発電機および負荷の電力関連情報をそれぞれ求める発電機端末装置および負荷端末装置と、電源脱落事故または系統分離事故の発生時にこれらの端末装置で得られた発電機および負荷の電力関連情報に基づき遮断すべき負荷を選択して負荷遮断を実施する中央演算装置を備え、事故発生に伴う周波数低下を負荷遮断により防止する周波数安定化システムの前記中央演算装置を制御する周波数安定化プログラムにおいて、
    定常時に、前記発電機端末装置および前記負荷端末装置で得られた定常時の発電機および負荷の電力・電圧を取得し、取得した発電機および負荷の電力・電圧に基づき過渡時系統モデルを作成するモデル作成処理と、
    前記過渡時系統モデルに基づき想定事故発生直後の負荷母線電圧を算出し、算出した負荷母線電圧と予め設定された負荷に関する特性定数に基づき想定事故発生直後の最大周波数低下量を目標値以内に制御するための遮断負荷を事前選択する遮断負荷事前選択処理と、
    想定事故発生時に、当該想定事故の検出信号を起動信号として当該想定事故に対して事前選択されている遮断負荷の前記負荷端末装置に負荷遮断指令を送信することにより負荷遮断を実施させる負荷遮断処理
    を前記中央演算装置に実行させることを特徴とする周波数安定化プログラム。
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