JP2007126442A - 癌特異的抗原 - Google Patents
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Abstract
【課題】手術不可能な進行・再発肺癌等に対し、癌において特異的に発現する癌特異的抗原ペプチド及びそれを用いたワクチン療法を提供する。
【解決手段】癌特異的抗原ペプチドは、特定の塩基配列を有する癌特異的抗原遺伝子の遺伝子配列にコードされ、特定のアミノ酸配列を有する癌特異的抗原蛋白に由来する特定のアミノ酸配列を有する。該ペプチドはHLA−B15拘束性に癌特異的細胞障害性T細胞を誘導し、および/または癌特異的細胞障害性T細胞によって認識されると共に抗腫瘍活性を有しかつ、癌細胞に発現する。さらに、上記癌特異的抗原ペプチドを含むワクチンを提供する。
【選択図】図1
【解決手段】癌特異的抗原ペプチドは、特定の塩基配列を有する癌特異的抗原遺伝子の遺伝子配列にコードされ、特定のアミノ酸配列を有する癌特異的抗原蛋白に由来する特定のアミノ酸配列を有する。該ペプチドはHLA−B15拘束性に癌特異的細胞障害性T細胞を誘導し、および/または癌特異的細胞障害性T細胞によって認識されると共に抗腫瘍活性を有しかつ、癌細胞に発現する。さらに、上記癌特異的抗原ペプチドを含むワクチンを提供する。
【選択図】図1
Description
本発明は癌特異的抗原に関し、さらに詳しくは、HLA−B15拘束性に癌特異的細胞傷害性T細胞を誘導し、および/または癌特異的細胞傷害性T細胞によって認識されるとともに抗腫瘍活性を有しかつ、癌細胞に高率に発現している癌特異的抗原に関する。また、前記癌特異的抗原ペプチドを含有してなる癌ワクチンに関するものである。
現在、日本で死亡原因疾患の第一位である癌に対して、従来の、手術療法、抗癌剤による化学療法、放射線療法に加えて、新しい治療法として癌特異的抗原を用いた免疫療法(ペプチドワクチン療法)が考えられている。
生体内での癌拒絶には細胞性免疫に係る細胞傷害性リンパ球(CTL:cytotoxic T lymphocyte)が重要な役割を果たすことが明らかになってきている。即ち、CTLが癌細胞上に提示される癌抗原を認識し、その癌細胞を殺傷することによって癌が排除される。
腫瘍抗原としては、1991年にベルギーのLudwig癌研究所のBoon,T.らが、自己腫瘍特異的CTLをプローブとしたcDNA発現クローニング法を用いることにより、悪性黒色腫の癌拒絶抗原をコードするMAGE遺伝子を初めて同定した。それ以来、癌抗原をコードする多くの遺伝子が同定されてきている。それらのうちの一部の癌抗原については、主要組織適合性抗原(MHC:major histocompatibility complex)クラスI分子に提示されるペプチドエピトープも同定されており、そのような癌抗原ペプチドの刺激によってin vitroで癌細胞を傷害するCTLを誘導できることも報告されている。さらに、それら癌抗原ペプチドを用いたワクチン療法についても、主に悪性黒色腫患者において、一部その臨床効果が報告されている。
一般に、癌拒絶においては、癌抗原は先ず癌細胞内で蛋白質として産生された後、細胞内で分解されて8箇〜11箇のアミノ酸からなるペプチド(腫瘍抗原ペプチド)になり、主要組織適合性抗原(MHC)であるヒト白血球抗原(HLA:human leukocyte antigen)クラスI分子と結合して腫瘍細胞上に提示される。細胞傷害性T細胞(CTL)はHLAクラスI分子と腫瘍抗原ペプチドとの複合体を認識して腫瘍細胞を傷害する。この現象は、HLA拘束性と呼ばれている。而して、抗腫瘍効果を期待できる免疫療法を行うためには、癌細胞のみに発現する癌特異的抗原をターゲットとして用いることが必須である。
HLA−B52分子および/またはHLA−B62分子との複合体を認識する腫瘍特異的細胞傷害性T細胞を活性化させる腫瘍抗原に関しては、既に提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この先行技術は、HLA−B52拘束性および/またはHLA−B62拘束性に腫瘍特異的細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導しおよび/または腫瘍特異的細胞傷害性T細胞(CTL)によって認識される腫瘍抗原(テスティン関連遺伝子(GenBankアクセション番号AY143171))のエピトープを有するペプチドに関している。
特開2004−141154号公報
上記先行技術は、HLA−B52拘束性および/またはHLA−B62拘束性に腫瘍特異的細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導しおよび/または腫瘍特異的細胞傷害性T細胞(CTL)によって認識される腫瘍抗原のエピトープを有するペプチドを開示するに止まり、抗癌剤による化学療法や放射線療法に感受性が低い肺癌等に対し、手術療法以外の新たな治療法を確立するという課題に必ずしも十分な解決手段を与えるものではない。本発明は、手術不可能な進行・再発肺癌等に対し、癌において特異的に発現する抗原ペプチドを用いたワクチン療法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための、請求項1に記載の発明は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する癌特異的抗原ペプチドである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の癌特異的抗原ペプチドにおいて、前記癌特異的抗原ペプチドが、配列表の配列番号2に記載の塩基配列を有する癌特異的抗原遺伝子の遺伝子配列にコードされている癌特異的抗原ペプチドである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の癌特異的抗原ペプチドにおいて、前記癌特異的抗原ペプチドが、配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を有する癌特異的抗原蛋白に由来する癌特異的抗原ペプチドである。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3何れかに記載の癌特異的抗原ペプチドにおいて、前記癌特異的抗原ペプチドが、HLA−B15拘束性に癌特異的細胞傷害性T細胞を誘導し、および/または癌特異的細胞傷害性T細胞によって認識されるとともに抗腫瘍活性を有しかつ、癌細胞に発現することを特徴とする癌特異的抗原ペプチドである。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4何れかに記載の癌特異的抗原ペプチドを含有してなる癌ワクチンである。
本発明によれば、抗癌剤による化学療法や放射線療法に感受性が低い肺癌等に対し、手術療法以外の新たな治療法である免疫療法(ペプチドワクチン療法)の確立に大きく資することができる。本発明は、手術不可能な進行・再発肺癌等に対し、癌において特異的に発現する抗原ペプチドを用いたワクチン療法を提供するものであり、患者の体力的負担からも有用と考えられる。
本発明により、日本人の約20%の癌患者に、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する抗原ペプチドを用いた癌ペプチドワクチン療法を施すことが可能である。しかも、対象患者の生検或いは切除された癌組織を極少量使用してRT−PCR(reverse transcription-polymerase chain reaction:逆転写複製連鎖反応)法で解析するため、患者の大きな負担になることなく本発明による治療の有効性を検討できる。また、本発明の抗原ペプチドを用いた癌予防ワクチンの開発は、今後さらなる増加が予想される癌発生の予防に繋がる。
本発明に係る癌特異的抗原ペプチドは、HLA−B15拘束性に細胞傷害性T細胞を誘導しおよび/または前記細胞傷害性T細胞に認識されるとともに、抗腫瘍活性を有しかつ、癌細胞に発現する癌特異的抗原ペプチド(配列表の配列番号1)である。本発明の抗原ペプチドは、癌特異的遺伝子の配列表の配列番号2に記載の塩基配列にコードされ、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する抗原蛋白に由来している。
本発明の抗原ペプチドは、肺癌細胞由来のcDNAライブラリーからHLA−B15拘束性に細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導し、および/または細胞傷害性T細胞(CTL)によって認識される抗腫瘍活性を有しかつ、癌細胞に高率に発現している癌特異的抗原として同定された。さらに、本発明の抗原ペプチドは、肺癌細胞の他に、乳癌などの癌細胞においても発現することが認められた。
本発明のペプチドは、当該技術分野で慣用されているペプチド合成法、たとえば固相法または液相法などにより容易に調製することができる(たとえば、社団法人日本生化学会編「新生化学実験講座」、第1巻、「タンパク質VI」、第3〜44頁、1992年、東京化学同人)。これらのペプチド合成法のうちでも、たとえば、ペプチド合成機を用い、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)固相合成法を使用するのがよい。
また、本発明のペプチドは、上記ペプチド合成法に加えて、当該技術分野で慣用されている組換えDNA技術により調製することもできる。組換えDNA技術は、たとえば、上記ペプチドのアミノ酸配列をコードするDNAを調製し、得られたDNAを自立増殖可能なベクターに挿入して得られた産物を大腸菌、枯草菌、放線菌、酵母等の宿主に適宜導入して形質転換体を得、その形質転換体を培養することからなっている。本発明のペプチドは、得られた培養物から採取することによって得ることができる。
上記のようにして得られたペプチドは、ヒトなどの動物に対して抗原となる蛋白質(抗原蛋白質)を含むワクチンとして使用することができ、動物に投与したときにその血中に抗原蛋白質に対する抗体や細胞性免疫が誘導されることによって、ワクチンを投与された動物は疫病から予防され、治療することができることが期待できる。
本発明に係るワクチンは、本発明のペプチドを0.01%〜100%(w/w)、好ましくは0.05%〜50%(w/w)、さらに好ましくは0.5%〜5.0%(w/w)の割合で含んでいるのがよい。本発明のワクチンは、当該ペプチド単独の形態であってもまた、生理的に許容される、たとえば、血清アルブミン、ゼラチン、マンニトールなどの担体、賦形剤、免疫助成剤、安定剤などを含む組成物の形態であってもよい。また、本発明のワクチンは、たとえば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、点眼剤、点鼻剤、注射剤などの剤形で、一般に、経皮、経口、点眼、点鼻、注射によって投与することができる。さらに、たとえば、ヒトに対する投薬量は、投与の目的や症状などによっても変わるが、通常、対象者の症状や投与後の経過を観察しながら、成人1回当たり0.01g〜1.0g、好ましくは0.01g〜0.1gを通常1回〜数回投与するのがよい。
本発明においては、HLA−B15陽性患者の生検或いは切除された癌組織を用いて逆転写複製連鎖反応(RT−PCR)法で本抗原のメッセンジャーRNAの発現を検出することによって、治療対象者を選定する。
本発明は、本抗原ペプチドを用いて細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導し大量増殖させた後に、治療対象者へ戻す養子免疫療法にも適用することができる。
肺癌患者F1121の手術切除標本から肺癌細胞株F1121Lを樹立し、手術後に採取・凍結保存していた自己所属リンパ節リンパ球を週1回、放射線照射で不活性化した肺癌細胞株F1121Lで刺激することによって、図1に示すように、自己腫瘍細胞を殺傷し自己正常細胞を殺傷しない自己腫瘍特異的CTLクローン(H1/10)を誘導した。図1は、CTL H1/10による自己腫瘍細胞特異的細胞傷害活性を、4時間の51Cr放出試験によって様々なエフェクタ/ターゲット比(E/T比)で調べた結果を示すものである。図1から明らかなように、CTL H1/10は自己腫瘍細胞株F1121Lを傷害し、自己正常細胞の代用である自己EBウィルス形質導入細胞(F1121EBV)やK562を傷害しない。
この自己腫瘍特異的CTLクローン(H1/10)は、図2に示すように、HLA−B15拘束性に他家肺癌細胞株(B203L、B1203L)も認識した。従って、肺癌における共通抗原を認識していると考えられる。
図2(a)、(b)は、他家肺癌細胞株に対するCTL H1/10の認識を示す状況を示すものである。図2(a)は、HLA−B15陽性肺癌細胞株に対するCTL H1/10の反応を示す図であり、図2(a)から明らかなように、CTL H1/10は、自己腫瘍細胞株F1121LとともにHLA−B15陽性他家肺癌細胞株2株も認識し、TNF(tumor necrosis factor:腫瘍壊死因子)を産生する。図2(b)は、HLA−B15陰性肺癌細胞株に対するCTL H1/10の反応を示す図であり、図2(b)から明らかなように、CTL H1/10は、HLA−B15遺伝子を導入することで他家肺癌細胞株4株中2株も認識し、TNFを産生する。
(HLA−B15拘束性腫瘍抗原をコードする遺伝子の同定および抗原ペプチドの同定)
そこで発明者は、肺癌細胞株B203L由来のcDNAライブラリーからcDNA発現クローニング法を用いることによって、このCTLクローンに認識される342bp(base pair)の抗原遺伝子(KK−LC−1)を単離しさらに、この遺伝子の抗原提示部位(エピトープ)として9アミノ酸からなる、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する抗原ペプチドを同定した。図3に、CTL H1/10に認識される抗原ペプチドの同定(IFN−γ産生)を行った結果を示す。図3から明らかなように、CTL H1/10は、この実施例において同定したペプチドを認識するが、irrelevant peptide(変異型p53ペプチド;negative control)は認識しない。
そこで発明者は、肺癌細胞株B203L由来のcDNAライブラリーからcDNA発現クローニング法を用いることによって、このCTLクローンに認識される342bp(base pair)の抗原遺伝子(KK−LC−1)を単離しさらに、この遺伝子の抗原提示部位(エピトープ)として9アミノ酸からなる、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する抗原ペプチドを同定した。図3に、CTL H1/10に認識される抗原ペプチドの同定(IFN−γ産生)を行った結果を示す。図3から明らかなように、CTL H1/10は、この実施例において同定したペプチドを認識するが、irrelevant peptide(変異型p53ペプチド;negative control)は認識しない。
上記遺伝子(配列表の配列番号2に記載の塩基配列)は、GenBankに登録されている精巣由来の552bpの遺伝子(Accession No.BC062223)と蛋白翻訳領域(open reading frame)が一致していた。なお、この遺伝子の生体内での詳細な機能は未だ判っていない。この抗原遺伝子の他家肺癌細胞株における発現をRT−PCR法によって解析した処、図4に示すように、18細胞株中9株(50%)と高頻度に発現を認めた。図4から明らかなように、同定した抗原遺伝子KK−LC−1のmRNAは、自己腫瘍細胞株F1121Lに発現し、F1121EBVには発現しない。また、他家肺癌細胞株18細胞株中9株に発現を認める。
さらに、図2に示すように、そのうち4例には実際にこのCTL H1/10によるサイトカイン(TNF)を認めたため、図5に示すように、この抗原ペプチドは、癌ペプチドワクチン療法に用いることが可能であると考えられる。因みに、日本人において、HLA−B15陽性の割合は約20%である。
図5は、他家肺癌細胞株における抗原遺伝子の発現をRT−PCR法によって解析した結果を示すものであるが、同定した遺伝子のmRNAは、この実施例において解析した肺癌18症例の正常組織では発現しなかった。一方、同じ肺癌18症例の腫瘍組織においては、7症例(38.9%)に発現を認めた。図中、矢印は発現を示している。
図5は、他家肺癌細胞株における抗原遺伝子の発現をRT−PCR法によって解析した結果を示すものであるが、同定した遺伝子のmRNAは、この実施例において解析した肺癌18症例の正常組織では発現しなかった。一方、同じ肺癌18症例の腫瘍組織においては、7症例(38.9%)に発現を認めた。図中、矢印は発現を示している。
実施例1において同定した抗原遺伝子KK−LC−1の、各種癌腫における発現をRT−PCR法によって調べた。その結果を、表−1に示す。
表1から明らかなように、各種癌組織において、実施例1において同定した抗原遺伝子KK−LC−1は、肺癌33.4%、乳癌23%、食道癌28.6%、胃癌57.6%、および大腸癌41.7%と高頻度に発現している。
(ペプチド合成)
本発明のペプチドは、ペプチド合成機を用いて、ペプチドの合成樹脂に固定したアミノ酸誘導体に、1箇ずつアミノ酸をカルボキシル末端側から結合させていくペプチド固相合成法(Fmoc法)でペプチドを化学合成した。本発明のペプチドのC末端残基に相当するアミノ酸(Lys)が導入されているFmoc−Lys(Boc)−レジン樹脂(0.44mmol/g):島津製作所(株)社製)の30mgを上記ペプチド合成機の反応容器にセットし、ジメチルホルムアミド(DMF)で1回洗浄した。次に、デプロテクション溶液(30%(v/v)ピペリジン/DMF)を5分間、3分間と2回反応させ、樹脂に結合しているアミノ酸のFmocを除き、DMFで5回洗浄した。C末端側から2番目のアミノ酸に相当する150μmolのFmoc−Asn(Trt)−OH/PyBOP
に、アクチベータ溶液を加えて活性化したものと、先のFmoc基を除いた樹脂に結合しているアミノ酸を30分間、室温で反応させた。ここで生成したFmoc−Asn(Trt)−Lys(Boc)−レジン樹脂をDMFで4回洗浄後、活性化Fmoc−Val−OH/PyBOP溶液と反応させた。同様の操作を繰り返すことにより、目的とする保護ペプチド樹脂を合成した。
本発明のペプチドは、ペプチド合成機を用いて、ペプチドの合成樹脂に固定したアミノ酸誘導体に、1箇ずつアミノ酸をカルボキシル末端側から結合させていくペプチド固相合成法(Fmoc法)でペプチドを化学合成した。本発明のペプチドのC末端残基に相当するアミノ酸(Lys)が導入されているFmoc−Lys(Boc)−レジン樹脂(0.44mmol/g):島津製作所(株)社製)の30mgを上記ペプチド合成機の反応容器にセットし、ジメチルホルムアミド(DMF)で1回洗浄した。次に、デプロテクション溶液(30%(v/v)ピペリジン/DMF)を5分間、3分間と2回反応させ、樹脂に結合しているアミノ酸のFmocを除き、DMFで5回洗浄した。C末端側から2番目のアミノ酸に相当する150μmolのFmoc−Asn(Trt)−OH/PyBOP
に、アクチベータ溶液を加えて活性化したものと、先のFmoc基を除いた樹脂に結合しているアミノ酸を30分間、室温で反応させた。ここで生成したFmoc−Asn(Trt)−Lys(Boc)−レジン樹脂をDMFで4回洗浄後、活性化Fmoc−Val−OH/PyBOP溶液と反応させた。同様の操作を繰り返すことにより、目的とする保護ペプチド樹脂を合成した。
次に、上記で得られた保護ペプチド樹脂にデプロテクション溶液を5分間と、3分間と2回反応させて、N末端Fmoc基を脱保護した後、DFMにて5回、メタノールで2回、t−ブチルメチルエーテルにて1回洗浄した。その後、窒素ガスを吹きつけ10分間乾燥させて樹脂を取り出した。さらに、クリページ溶液を0.5ml加え、室温で2時間反応させることにより樹脂からペプチドを切断し、アミノ酸側鎖保護基の除去を行ってペプチド溶液を得た。このペプチド溶液に、10mlの冷エーテルを加え、ペプチドを沈澱させ、2000×gで10分間遠心して沈澱物を得、再び冷エーテルを加えて分散させては回収した。この回収操作を4回繰り返し、得られたペプチドを洗浄し、凍結乾燥して目的とするペプチドを得た。
(製剤例)
実施例3で得たペプチドを、安定剤として1%(w/v)ヒト血清アルブミンを含む生理食塩水に最終濃度が0.01mg/ml、0.1mg/mlまたは1mg/mlとなるように溶解し、濾過滅菌した後、滅菌バイアル瓶に2mlずつ分注し、凍結乾燥し、密栓する。投与に際しては、バイアル瓶内に注射用蒸留水を1ml加え、次いで内容物を均一に溶解して使用する。
実施例3で得たペプチドを、安定剤として1%(w/v)ヒト血清アルブミンを含む生理食塩水に最終濃度が0.01mg/ml、0.1mg/mlまたは1mg/mlとなるように溶解し、濾過滅菌した後、滅菌バイアル瓶に2mlずつ分注し、凍結乾燥し、密栓する。投与に際しては、バイアル瓶内に注射用蒸留水を1ml加え、次いで内容物を均一に溶解して使用する。
本発明によって個々の癌細胞において本抗原の発現を検出することで、従来の癌治療に加え、本発明の抗原を用いた癌特異的免疫療法を検討することが可能となった。治療抵抗性の再発癌または手術不能進行癌に対し、本発明の抗原ペプチドを用いた癌特異的免疫療法が有効な治療法となる。
Claims (5)
- 配列表の配列番号1に記載するアミノ酸配列を有する癌特異的抗原ペプチド。
- 請求項1に記載の癌特異的抗原ペプチドにおいて、前記癌特異的抗原ペプチドが、配列表の配列番号2に記載の塩基配列を有する癌特異的抗原遺伝子の遺伝子配列にコードされていることを特徴とする癌特異的抗原ペプチド。
- 請求項1または請求項2に記載の癌特異的抗原ペプチドにおいて、前記癌特異的抗原ペプチドが、配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を有する癌特異的抗原蛋白に由来することを特徴とする癌特異的抗原ペプチド。
- 請求項1乃至請求項3何れかに記載の癌特異的抗原ペプチドにおいて、前記癌特異的抗原ペプチドが、HLA−B15拘束性に癌特異的細胞傷害性T細胞を誘導し、および/または癌特異的細胞傷害性T細胞によって認識されるとともに抗腫瘍活性を有しかつ、癌細胞に発現することを特徴とする癌特異的抗原ペプチド。
- 請求項1乃至請求項4何れかに記載の癌特異的抗原ペプチドを含有してなる癌ワクチン。
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