JP2007121941A - ファイバ状位相格子素子、ファイバ状位相格子および位相格子モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】光学的特性に優れ、かつその光学的特性が安定した光学部品を、少ない部品点数で、簡易に製造できるようにする。
【解決手段】円柱状の光ファイバ内に複数の回折格子12が形成されたファイバ状位相格子素子1において、回折格子12の光入射面を、光ファイバの軸心Lの垂直方向に対して傾斜させた。複数の回折格子12における光入射面は、たとえば一定の間隔を隔てて、軸心Lの垂直方向に対して同一の角度で傾斜している。回折格子における光入射面の傾斜角度αは、4〜86度の範囲に設定するのが好ましい。
【選択図】図2
【解決手段】円柱状の光ファイバ内に複数の回折格子12が形成されたファイバ状位相格子素子1において、回折格子12の光入射面を、光ファイバの軸心Lの垂直方向に対して傾斜させた。複数の回折格子12における光入射面は、たとえば一定の間隔を隔てて、軸心Lの垂直方向に対して同一の角度で傾斜している。回折格子における光入射面の傾斜角度αは、4〜86度の範囲に設定するのが好ましい。
【選択図】図2
Description
本発明は、光通信用機器あるいは光センシングシステム用機器などに使用するファイバ状位相格子素子、ファイバ状位相格子および位相格子モジュールに関する。
光通信用機器における光回路の小型・集積化に向けて、各種の光通信用部品が使用されており(たとえば特許文献1参照)、このような集積化された光通信用部品のうち、3芯のフィルタモジュールとして図15に示したものがある。
同図に示したフィルタモジュール9は、屈折率分布型ロッドレンズ90,91の間に、フィルタ機能を有する光学素子92を設けたものである。光学素子92は、屈折率分布型ロッドレンズ90の端面90Aに膜形成されているとともに、屈折率分布型ロッドレンズ91の端面91Aに対して、接着剤を介して接合され、あるいは隙間を介した対面させられている。
屈折率分布型ロッドレンズ90の端面90Bには、光ファイバ93,94が装着されている一方で、屈折率分布型ロッドレンズ91の端面91Bには、光ファイバ95が装着されている。光ファイバ93〜95は、ファイバサポート96,97を介して屈折率分布型ロッドレンズ90,91に装着されている。
フィルタモジュール9では、光ファイバ93から波長がλ1,λ2の光を入射させた場合、それらの波長λ1,λ2の光が屈折率分布型ロッドレンズ90に入射する。この屈折率分布型ロッドレンズ90の内部では、入射光が広がりながら伝搬し、平行光の状態で光学素子92に入射する。この光学素子92においては、波長λ1の光が反射し、屈折率分布型ロッドレンズ90において集光されてから光ファイバ94に分波される。一方、波長λ2の光は、光学素子92を透過した後に、屈折率分布型ロッドレンズ91において集光されてから、光ファイバ95から分波される。
しかしながら、フィルタモジュール9では、屈折率分布型ロッドレンズ90,91の端面、光学素子92の端面、および光ファイバ93〜95の端面で反射が生じ得るために反射減衰量が大きく、その反射減衰量は通常−30〜−35dB程度である。そのため、増幅器用光回路の近傍等の通信機器において通常求められている−45dB以下の低反射減衰量を達成することができず、先の通信機器において採用できない。
また、屈折率分布型ロッドレンズ91と光学素子92との間の固定に接着剤を使用する場合には、温湿度変動により接着剤の膨張・収縮が生じやすく、損失等の光学特性の安定性に難がある。一方、屈折率分布型ロッドレンズ91と光学素子92との間に隙間を設け、接着剤を用いずにそれを位置固定した場合には、温度変動により隙間の大きさが変化して光学特性が変動するため、光学的特性の安定性に難がある。
さらに、フィルタモジュール9では、屈折率分布型ロッドレンズ90,91、光学素子92、ファイバサポート96,97、および光ファイバ93〜95を使用しており、フィルタモジュール9において目的とする光学的特性を発揮させるためには、それらの部品の間での精密な位置決めが必要で、製造時における作業性が悪い。また、ロッドレンズ90,91は、光ファイバ93〜95に比べて外径寸法が大きなものであるため、フィルタモジュール9では、ロッドレンズ90,91によって小型化が阻害される。
そこで、本発明は、光学的特性に優れ、かつその光学的特性が安定した小型化された光学部品を、少ない部品点数で、簡易に製造できるようにすることを課題としている。
本発明の第1の側面においては、光ファイバ内に1または複数の回折格子が形成されたファイバ状位相格子素子であって、前記回折格子は、光入射面が前記光ファイバの軸心の垂直方向に対して、傾斜させられていることを特徴としている、位相格子素子が提供される。
複数の回折格子は、たとえば一定の間隔を隔てて、前記軸心の垂直方向に対して、光入射面が同一の角度で傾斜している。この場合、回折格子における光入射面の傾斜角度は、前記軸心の垂直方向に対して、4〜86度の範囲に設定するのが好ましい。
複数の回折格子は、一定の間隔を隔てて、前記軸心の垂直方向に対して同一の角度で光入射面が傾斜した複数の回折格子からなる第1の回折格子群と、第1の回折格子群の回折格子とは異なる角度で光入射面が傾斜し、かつ前記軸心の垂直方向に対して同一の角度で光入射面が傾斜した複数の回折格子からなる第2の回折格子群と、を含んだものとすることもできる。
第1の回折格子群における回折格子の光入射面と、第2の位相回折群における回折格子の光入射面とは、たとえば互いに反対方向に傾斜させられる。
第1および第2の回折格子群における回折格子の光入射面の傾斜角度は、前記軸心の垂直方向に対して、4〜86度の範囲に設定するのが好ましい。
本発明の第2の側面においては、本発明の第1の側面に係る1または複数のファイバ状位相格子素子と、前記ファイバ状位相格子素子の端面に融着接続された1または複数の屈折率分布型光ファイバと、を備えていることを特徴とする、ファイバ状位相格子が提供される。
複数のファイバ状位相格子素子は、それらの軸心が互いに平行となる位置関係に固定するのが好ましい。この場合、複数のファイバ状位相格子素子は、透光性材料によって互いに密着させるのが好ましい。
本発明の第3の側面においては、本発明の第2の側面に係るファイバ状位相格子と、前記ファイバ状位相格子の屈折率分布型光ファイバに光を入射させ、あるいは前記屈折率分布型光ファイバからの光を出射させるための1または複数の入出力用光ファイバと、を備えたことを特徴とする、位相格子モジュールが提供される。
入出力用ファイバは、その外径が前記屈折率分布型光ファイバと同一又は前記屈折率分布型光ファイバよりも小さく設定するのが好ましい。この場合、入出力用ファイバは、たとえば屈折率分布型光ファイバに端面に融着される。
本発明の位相格子モジュールは、ファイバ状位相格子を収容するための外套部材をさらに備えたものとされる。
本発明のファイバ状位相格子素子は、回折格子を有するために、その回折格子において、入射光を透過光と回折光とに分離することができる。そして、回折格子における光入射面を傾斜させた場合には、回折格子における回折光(全反射光)は、ファイバの軸心に対して傾斜した方向に向けて進行させられる。そのため、回折格子において全反射した回折光は、戻り光として入力側に導入されることはない。すなわち、回折格子における光入射面を傾斜させることにより、戻り光により生じる不具合を抑制しつつも、適切なフィルタ機能を持たせることができる。
さらに、ファイバ状位相格子素子に対して、光入射面の傾斜角度の異なる回折格子からなる第1および第2回折格子群を形成すれば、それぞれの回折格子群において、異なる方向に光を回折させることができる。そのため、本発明のファイバ状位相格子素子では、1つの素子によって、異なる波長に対するフィルタ機能を持たせることができる。
また、本発明のファイバ位相格子素子では、回折格子における回折光を透過光とは異なる出力ポートに導くことによって、入射光を分波することが可能となる。すなわち、回折格子における光入射面を傾斜させることによって、ファイバ状位相格子素子に分波機能を持たせることも可能となる。たとえば、複数のファイバ状位相格子素子を、それらの軸心が互いに平行となる位置関係に固定すれば、一方のファイバ状位相格子素子での回折光を、他方のファイバ状位相格子素子に入射させることができる。すなわち、複数のファイバ状位相格子素子間において、光の分岐・結合を行なうことができるようになり、単なる波長カットフィルタとして使用できるばかりでなく、光分岐器および光結合器に適用することが可能となる。そして、複数のファイバ状位相格子素子を、透光性材料によって互いに密着させることにより、一方のファイバ状位相格子素子からの回折光を、ファイバ状位相格子素子相互の密着部分および透光性材料部分において、他方のファイバ状位相格子素子に導入することが可能となる。これにより、ファイバ状位相格子素子間において、低損失で分岐・結合することができるようになる。また、複数のファイバ状位相格子素子の軸心が互いに平行となる位置関係は、精密なアライメント調整なしに容易に達成することができる。
また、本発明のファイバ状位相格子素子は、光ファイバから形成されているために、グレーデッドインデックスファイバなどの屈折率分布型光ファイバに対して、融着により直接接続することができる。そして、融着によりファイバ状位相格子素子と屈折率分布型光ファイバとを接続した場合には、屈折率分布型ファイバの端面、およびフィルタ機能を有する素子(ファイバ状位相格子素子)の端面において、反射が生じる可能性が著しく低減する。また、融着による接続の場合には、ファイバ状位相格子素子と屈折率分布型光ファイバとの間に接着剤や空気層が介在することもない。そのため、湿気や熱によりファイバ状位相格子素子と屈折率分布型光ファイバとの間が膨張・収縮することもないため、光学的特性が安定化する。
そして、本発明の位相格子モジュールのように、屈折率分布型光ファイバと入出力用ファイバとのが融着により接続すれば、屈折率分布型ファイバの端面、および入出力用ファイバの端面において、反射が生じる可能性をも低減させることができる。
したがって、本発明のファイバ状位相格子素子を用いたファイバ状位相格子および位相格子モジュールは、光学的特性において優れたものとなり、たとえば増幅器用光回路の近傍等の通信機器において通常求められている−45dB以下の低反射減衰量を達成することが可能となる。その結果、本発明のファイバ状位相格子素子を採用したファイバ状位相格子および位相格子モジュールは、反射減衰特性がシビアに要求される通信機器においても採用することができる。
また、ファイバ状位相格子素子と屈折率分布型レンズとを融着接続したファイバ状位相格子、このファイバ状位相格子に入出力用ファイバを融着接続した位相格子モジュールは、1本の光ファイバ体として扱うことができるため、それらを構成する部品どうしを位置決め固定するために、特別な部品を使用する必要なはい。この点において、本発明では部品点数を少なくすることが可能となる。また、先の光ファイバ体をフェルールなどの外套部材に収容させる場合であっても、外套部材に光ファイバ体を収容させる作業は極めて容易であり、また外套部材に光ファイバ体を収容させた構成を採用することにより、さらに取り扱い性が良好なものとなって、光コネクタ接続用部品としても扱うことも可能となる。
さらに、本発明に係るファイバ状位相格子素子に接続させる屈折率分布型光ファイバは、光ファイバから形成されるものであり、従来のフィルタモジュールにおいて屈折率分布型レンズとして使用されていたロッドドレンズに比べて、サイズの小さなものである。そのため、屈折率分布型レンズとして屈折率分布型光ファイバを用いた場合には、ファイバ状位相格子および位相格子モジュールの小型化を達成することが可能となる。
以下においては、本発明について、第1から第7の実施の形態として、図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明の第1の実施の形態に係るファイバ状位相格子について、図1ないし図6を参照して説明する。
図1および図2に示したファイバ状位相格子X1は、ファイバ状位相格子素子1の両端面10,11にグレーデッドインデックスファイバ2A,2Bを融着したものである。
ファイバ状位相格子素子1は、円柱状の光ファイバ内の屈折率を、光ファイバの軸心Lに沿った方向に対して周期的に変動させたものである。このファイバ状位相格子素子1は、屈折率の大きな部分が回折格子12として機能するものである。すなわち、ファイバ状位相素子1は、軸心Lに沿った方向の屈折率を周期的に変化させることにより、一定間隔隔てて、複数の回折格子12が形成されたものである。
複数の回折格子12は、軸心Lの垂直方向に対して光入射面が同一の角度αで傾斜している。各回折格子12における光入射面の傾斜角度αは、軸心Lの垂直方向に対して、4〜86度の範囲、より好ましくは4〜60度の範囲に設定されている。これは、回折格子12における光入射面の傾斜角度αが不当に小さい場合には所期の目的を十分に達成することができない一方で、回折格子12における光入射面の傾斜角度αが不当に大きい場合にはファイバ状位相格子素子10の軸心Lの方向の長さ寸法が大きくなるからである。
上述のように、ファイバ状位相格子素子1は、軸心Lに沿った方向の屈折率を周期的に変動させたものであるが、その屈折率分布は周期Λの正弦波状とされており、その屈折率の変化量は0.01〜0.001程度である。ここで、屈折率分布は、下記数式1で示すことができる。
回折格子12は、光入射面が角度αで軸心Lの垂直方向に傾斜しているために、ブラッグ条件を満たす光が、1次回折光として軸心Lに対し2αの方向に回折(全反射)される一方で、0次回折光は回折格子12をそのまま透過する。なお、ファイバ状位相格子素子1における1次回折光の回折効率ηは、一般的に下記数式2で示される。
ここで、図3に、ファイバ状位相格子素子1の回折効率を、光ファイバの屈折率n=1.487、入射光の中心波長1555nm、屈折率変調度δn=2500ppm、α=10度、ファイバ状位相格子素子1の長さ2mmの場合について、回折効率特性として示した。図3より、ファイバ状位相格子素子1の回折効率は、矩形状のスペクトラム特性を有し、回折光の波長選択性が高いことがわかる。
本発明のファイバ状位相格子素子1は、成分的には、ガラスに屈折率を増大させるための光熱反応性材料を添加したものである。ガラスとしては、石英ガラスを用いることができ、その場合には、光熱反応性材料としてGeO5、TiO2、Al2O3等が使用される。また、ファイバ状位相格子素子1は、PTR(Photo-Thermo-Refractive)ガラスにより形成することもできる。このPTRガラスは、Ce、Agを添加した蛍光性のシリカガラスである。
このようなファイバ状位相格子素子1は、光熱反応性材料を含ませた円柱状ガラスに対して、部分的にUV光を照射(露光)することによって屈折率を変調させることにより形成される。すなわち、ファイバ状位相格子素子1は、FBG(Fiber Bragg Grating)の製法に準じて、光学干渉法あるいはフェーズドマスク法により形成することができる。ただし、FBGが光ファイバのコアの光軸に対し垂直に回折格子を形成するのに対し、本発明の位相格子素子1は、軸心Lの垂直方向に対して角度αで光入射面を傾斜させた回折格子12が形成されている点において異なっている。
図4には、光学干渉法によりファイバ状位相格子素子1を形成する場合に概略構成図を示した。
光学干渉法の場合、ファイバ状位相格子素子1は、位相の揃ったコヒーレントなUV光の平行光を合波し、光ファイバ(13)を露光することにより形成される。光ファイバ(23)は、水平方向に対して角度αだけ傾斜させた状態で、光ファイバと同程度の屈折率を有する媒体内に配置される。光ファイバ(13)としては、円柱状ガラスに光熱反応性材料を添加したものが使用され、UV光としては、中心波長が320〜500nmのものが使用される。
先の光学干渉法においては、光ファイバ(13)において露光された部分の屈折率が増加させられる結果、光ファイバ(13)の軸心Lの垂直方向に対して角度αで光入射面が傾斜した複数の回折格子12が、一定間隔隔てて形成される。複数の回折格子12の間隔Λは、下記数式3に示した通りである。すなわち、光ファイバ(13)を透過させるUV光の傾斜角度(光ファイバ(13)に対するUV光の入射角度)を選択することにより、複数の回折格子12の間隔Λの間隔を選択することができるとともに、回折格子12において回折させるべき光の波長を選択することができる。
一方、図5には、フェーズドマスク法によるファイバ状位相格子素子1を形成する場合の概略構成図を示した。
フェーズドマスク法の場合、ファイバ状位相格子素子1は、フェーズドマスク14の平面方向に対して角度αで光ファイバ(13)を配置した状態で、フェーズドマスク14の上面にUV光を垂直入射させて、フェーズドマスク14からの±1次回折光により光ファイバ(13)を露光することにより形成される。
ここで、フェーズマスク14は、一定の格子間隔Λ(mask)を有する回折格子である。光ファイバ(13)としては、円柱状ガラスに光熱反応性材料を添加したものが使用され、UV光としては、中心波長が320〜500nmのものが使用される。
先のフェーズドマスク法においては、光ファイバ(13)において露光された部分の屈折率が増加させられる結果、光ファイバ(13)の軸心Lの垂直方向に対して光入射面が角度αで傾斜した複数の回折格子12が、一定間隔隔てて形成される。複数の回折格子12の間隔Λは、下記数式4に示したように、フェーズマスク14の格子間隔Λ(mask)の半分となる。すなわち、フェーズマスク14の格子間隔Λ(mask)を選択することにより、複数の回折格子12の間隔Λの間隔を選択することができるとともに、回折格子12において回折させるべき光の波長を選択することができる。
図1および図2に示したように、一対のグレーデッドインデックスファイバ2A,2Bは、レンズとしての役割を果たすものであり、ファイバ状位相格子素子1の端面10,11に対して融着されている。各グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bは、軸対称かつ略2乗の屈折率分布をもつ光ファイバであり、それを必要な長さで切断して用いることにより、屈折率分布型レンズとされている。
グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bとしては、ファイバ状位相格子素子1と同程度の外径を有するもの、すなわちファイバ外径125〜500μm、コア径100〜450μm程度のものを使用することができる。ロッドレンズなどの従来の屈折率分布型レンズは、小径でも外径が1mm程度あり、光ファイバとの融着接続は困難であるが、グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bを用いた場合、接続対象となる光ファイバとの外径差を小さくできるため、高周波放電によるファイバ接続面での加熱融着が可能である。
ここで、図6として、グレーデッドインデックスファイバ2A,2B内の光線追跡の例を示した。グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bでは、コア20A,20B中の光線は、ほぼサインカーブを描くように進行する。ここで、図6の横軸Pは、1周期を1としたときのピッチを表し、縦軸はグレーデッドインデックスファイバ2A,2Bでの光線の位置を、最も光線の広がった位置を1として相対的に表したものである。
図6から分かるように、グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bに点状光を入射させた場合、それを平行光に変換するには、グレーデッドインデックスファイバ2A,2BとしてP=0.25の長さのものを使用すればよく、グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bの出射端面に焦点を結ばせるためにはP=0.5の長さのものを使用すればよい。換言すれば、グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bをレンズとして機能させるには、0.25≦P<0.5の間の長さのものを使用すればよいことが分かる。
ここで、グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bの焦点距離は、屈折率分布、すなわち比屈折率(コア20A,20B(図6参照)の中心軸上の屈折率とコア20A,20Bの外表面の屈折率との比)に依存するものであり、比屈折率が大きいほど小さくなり、開口数NAが大きくなって焦点でのスポット径をより小さく絞ることができる。そのため、グレーデッドインデックスファイバ20A,20Bをコア径の小さいシングルモードファイバに接続する場合には、それらのファイバでの挿入損失を小さくするためにも、グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bとしては、コアの比屈折率が大きなものを使用するのが好ましい。
次に、本発明の第2の実施の形態に係るファイバ状位相格子を、図7および図8を参照して説明する。ただし、図7および図8においては、図1ないし図6を参照して先に説明したファイバ状位相格子X1と同様な要素および部材については同一の符号を付してあり、重複説明は省略する。
図7および図8に示したファイバ状位相格子X2は、ファイバ状位相格子素子3の端面30,31にグレーデッドインデックスファイバ2A,2Bを融着接続したものである点において先に説明したファイバ状位相格子X1(図1および図2参照)と同様であるが、ファイバ状位相格子素子3の構成が、先に説明したファイバ状位相格子X1(図1および図2参照)とは異なっている。
ファイバ状位相格子素子3は、先に説明したファイバ状位相格子素子1と同様な複数の回折格子32(図1および図2の符号12参照)からなる第1の回折格子群に加えて、複数の回折格子32における光入射面とは傾斜方向が異なる光入射面を有する複数の回折格子33からなる第2の回折格子群が設けられたものである。
第2の回折格子群における複数の回折格子33は、第1の回折格子群における複数の回折格子と同一の間隔Λだけ隔てて設けられているとともに、それぞれが第1の回折格子群の回折格子32と軸心Lにおいて交差している。そして、回折格子33は、回折格子32とは反対方向に、かつ同一角度αだけ光入射面が傾斜させられている。
このようなファイバ状位相格子素子X2は、先に説明したファイバ状位相格子素子1(図1および図2参照)と同様に水平方向に角度αだけ傾斜させて光ファイバを露光した後(図4および図5参照)、先とは反対の方向に角度αだけ傾斜させて光ファイバを再び露光することにより形成することができる。
このようなファイバ状位相格子素子3(ファイバ状位相格子X2)では、回折光を軸心Lに対して2つの方向(角度±2α方向)に偏向させることができる。
なお、図7および図8においては、第1の回折格子群の複数の回折格子32と、第2の回折格子群の複数の回折格子33とが、互いに同一間隔Λだけ隔てて設けられていたが、それぞれ回折格子群における回折格子の間隔を異ならせることにより、各々の回折格子群において、異なる波長の光を回折させるようにしてもよい。また、第1および第2の回折格子群の回折格子32,33における光入射面の傾斜角度は、絶対値において同一とされていたが、それらの回折格子32,33における光入射面の傾斜角度は絶対値において異なっていてもよい。さらに、第1および第2の回折格子群に加えて、1以上の回折格子群を追加して設けてもよい。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る位相格子モジュールを、図9および図10を参照して説明する。ただし、図9および図10においては、図1ないし図6を参照して先に説明したファイバ状位相格子X1と同様な要素および部材については同一の符号を付してあり、重複説明は省略する。
図9に示した位相格子モジュールY1は、光学フィルタ、光分岐・結合器あるいは光合分波器として使用可能なものであり、一対の光ファイバ体4A,4Bを備えている。
各光ファイバ体4A,4Bは、図1および図2を参照して説明したファイバ状位相格子X1の両端部に、グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bと同様な外径寸法を有する入出力用ファイバ40,41,42,43を接続したものである。入出力用ファイバ40,41,42,43としては、たとえばシングルモードファイバが使用される。
一対の光ファイバ体4A,4Bは、それらの軸心Lの垂直方向に並んで設けられている。より具体的には、一対の光ファイバ体4A,4Bは、図9および図10に示したように、各光ファイバ体4A,4Bのファイバ状位相格子素子1を位置合わせした状態で、それらの光ファイバ体4A,4Bの表面が相互に接するように、透光性材料44によって固定させられている。
ファイバ状位相格子素子1相互の位置合わせは、一対の光ファイバ体4A,4Bを軸心Lの垂直方向に並べた状態で、一方の光ファイバ体4Aの位置を固定した上で、他方の光ファイバ体4Bを、軸心Lの方向に調整するとともに周方向に回転させることにより容易に行なうことができる。すなわち、ファイバ状位相格子素子1(光ファイバ体4A,4B)相互での高精度なアライメント調整は不要である。
透光性材料44は、たとえばファイバ状回折格子素子1と同一または略同一な屈折率を有するものであり、一対の光ファイバ体4A,4Bを相互に固定するとともに、一方の光ファイバ体4A(4B)のファイバ状位相格子素子1からの回折光を、他方の光ファイバ体4B(4A)のファイバ状位相格子素子1に導く役割をも果たすものである。すなわち、透光性材料44は、ファイバ状位相格子素子1の回折格子12における回折光が、ファイバ状位相格子素子1の外表面において端面反射するのを防止する役割をも果たすものである。透光性材料44としては、たとえばUV接着剤あるいはエポキシ樹脂系等有機系接着剤、透光性の低融点ガラスを使用することができる。
図9に示したように、位相格子モジュールY1を光分岐器あるいは光学フィルタとして使用する場合には、入出力用ファイバ40から複数の波長の光を含む光が入射される。この入射光は、光ファイバ体4Aのグレーデッドインデックスファイバ2Aを介して、光ファイバ体4Aのファイバ状位相格子素子1に入力される。このファイバ状位相格子素子1では、回折格子12において、ブラッグ条件を満たす波長の光が回折(全反射)される一方、それ以外の波長の光は回折格子12を透過する。
光ファイバ体4Aの回折格子12において回折した光は、光ファイバ体4Aのファイバ状位相格子素子1から出射して光ファイバ体4Bのファイバ状位相格子素子1(回折格子12)に入射する(図10参照)。この入射光は、光ファイバ体4Bの回折格子12において回折させられた後にファイバ状位相格子素子1から出射され、光ファイバ体4Bのグレーデッドインデックスファイバ2Bを介して入出力用ファイバ42に導かれる。
一方、光ファイバ体4Aにおけるファイバ状位相格子素子1の回折格子12を透過した光は、光ファイバ体4Aのグレーデッドインデックスファイバ2Bを介して入出力用ファイバ41に導かれる。
このように、位相格子モジュールY1では、入出力用ファイバ40から入射させた光を、光ファイバ体4Aの回折格子12において回折する光、回折格子12を透過する光に分岐することができる。そのため、位相格子モジュールY1は、光分岐器あるいは分波機能を有する光学フィルタとして使用することができる。
また、位相格子モジュールY1は、光の入力方向と出力方向を変えることにより、光結合器、あるいは合波器として使用することもできる。
ここで、ファイバ状位相格子素子1における回折格子12の光入射面の傾斜角度αは、第1の実施の形態に係るファイバ状位相格子素子1と同様な理由からは、4〜86度の範囲、好ましくは4〜60度の範囲に設定される。ただし、2つのファイバ状位相格子素子1を軸心Lの方向の垂直方向並べて配置する場合には、以下に説明するように、回折格子12における光入射面の傾斜角度αは、45度もしくはそれに近い角度に設定するのが好ましい。
上述のように、位相格子モジュールY1では、たとえば入出力用ファイバ40からの入射光は、光ファイバ体4Aにおけるファイバ状位相格子素子1の回折格子12を透過する光と、回折格子12において回折して光ファイバ体4Bにおけるファイバ状位相格子素子1に入射する光に分けられる。すなわち、光ファイバ体4Aにおける回折格子12を透過して入出力用ファイバ41に入力され光と、それぞれ光ファイバ体4A,4Bにおける回折格子12,12において回折して入出力用ファイバ42に入力される光の間には光路差が生じる。この行路差は、各入出力ファイバ41,42に光が入力されるまで間における損失差を生じさせる。この損失差はさらに、結合効率に差を生じさせ、結果として、光学特性上において悪影響を及ぼす。
その一方で、光路差は、一方の光ファイバ体4Aの回折格子12から他方の光ファイバ体4Bの回折格子12との間の光路Δ1と軸心L方向のずれ量Δ2との和として表される。回折格子12の回折光の全反射角度は2αであり、軸心L間の距離は、光ファイバ体4A,4Bの外径寸法Dと同一であるから、Δ1=(D2+Δ22)1/2となる。そのため、全体の光路差は、Δ1+Δ2=(D2+Δ22)1/2+Δ2となる。この式から分かるように、光路差は軸心Lの方向のずれ量Δ2に依存するものであり、Δ2が大きいほど大きくなる。また、Δ2は、D/tan2αであり、Δ2はα=45度のときに最小となる。したがって、透過光側と出射光側の光路差を小さくして結合効率を高め、光学的特性を良好なものとするためには、回折格子12における光入射面の傾斜角度αを45度もしくはそれに近い角度に設定するのが好ましい。
次に、本発明の第4の実施の形態に係る位相格子モジュールを、図11を参照して説明する。ただし、図11においては、図7および図8を参照して先に説明したファイバ状位相格子X2と同様な要素および部材については同一の符号を付してあり、重複説明は省略する。
図11に示した位相格子モジュールY2は、光学フィルタ、光分岐器あるいは光結合器として使用可能なものであり、ファイバ状位相格子X2におけるグレーデッドインデックスファイバ2A,2Bの端面21A,21Bに、4本の入出力用ファイバ45,46,47,を接続したものである。
各入出力用ファイバ45〜48は、グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bよりも外径寸法が小さなものであり、たとえばシングルモードファイバが使用される。
入出力用ファイバ45〜47はグレーデッドインデックスファイバ2Aの端面21Aに対して、軸心Lの垂直方向に並んだ状態で接続されており、入出力用ファイバ44は軸心L上に配置している一方で、入出力用ファイバ46,47は軸心Lから変位した位置に配置されている。
一方、入出力用ファイバ48は、グレーデッドインデックスファイバ2Bの端面21Bに対して、軸心L上に位置するように入出力用ファイバ45に対向して接続されている。
位相格子モジュールY2を光分岐器あるいは光学フィルタとして使用する場合には、入出力用ファイバ45から複数の波長の光を含む光が入射される。この入射光は、グレーデッドインデックスファイバ2Aを介して、ファイバ状位相格子素子3に入力される。ファイバ状位相格子素子3では、回折格子32,33において、ブラッグ条件を満たす波長の光が回折(全反射)される一方、それ以外の波長の光は回折格子32,33を透過する。
ファイバ状位相格子素子3では、光入射面の傾斜方向の異なる2種類の回折格子32,33が設けられており、それぞれの回折格子32,33において異なる2方向に回折分離され、グレーデッドインデックスファイバ2Aによって、それらの回折光が入出力用ファイバ46,47に導入される。
一方、ファイバ状位相格子素子3の回折格子32,33を透過した光は、グレーデッドインデックスファイバ2Bを介して入出力用ファイバ48に導かれる。
このように、位相格子モジュールY2では、入出力用ファイバ45から入射させた光を、回折格子32,33において回折する光、回折格子32,33を透過する光に分岐することができるとともに、回折した光をさらに2つの光に分岐させることができる。そのため、位相格子モジュールY2は、光分岐器あるいは分波機能を有する光学フィルタとして使用することができる。
また、位相格子モジュールY2は、光の入力方向と出力方向を変えることにより、光結器または合波器として使用することもできる。
次に、本発明の第5の実施の形態に係る位相格子モジュールを、図12を参照して説明する。
図12に示した位相格子モジュールY3は、光学フィルタとして使用可能なものであり、たとえば半導体レーザなどの光源からの光をフィルタリングするために使用される。この位相格子モジュールY3は、図1ないし図6を参照して説明したファイバ状位相格子X1を、円筒形状のフェルール5の内部に収容した構成を有している。
フェルール5としては、たとえばジルコニア、結晶化ガラス、ステンレスにより形成されたもの使用することができる。
この位相格子モジュールY3では、入射端面50を研磨しておくのが好ましく、また入射端面50にARコートを施してもよい。また、入射端面を傾斜面、半球状面、又は屈曲面(楔状)に加工し、あるいは入射端面50に半球状部材や楔状部材を接合してもよい。この場合、半導体レーザ等の光源との結合を高効率に行うことができる。さらに、一方の端面にのみに接続用光ファイバを融着してもよい。
位相格子モジュールY3では、入射端面50から光が入射された場合、ブラッグ条件を満たす波長の光がファイバ状位相格子X1の回折格子12において回折され、それ以外の波長の光が回折格子12を透過する。そのため、位相格子モジュールY1では、回折成分を除去し、回折成分以外の光を選択的に透過させる光学フィルタとして使用することができる。
次に、本発明の第6の実施の形態に係る位相格子モジュールを、図13を参照して説明する。
図13に示した位相格子モジュールY4は、図12を参照して説明した位相格子モジュールY3に対して、入出力用ファイバ60,61,62,63を接続したものである。入出力用ファイバ60〜63は、グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bに融着されているとともに、硬化性樹脂51によって、フェルール5の端面52にも固定されている。
この位相格子モジュールY4は、光分岐・結合器又は光合分波器として使用可能なものである。たとえば、位相格子モジュールY4を光分岐器として使用する場合には、入出力用ファイバ60から入力した光を回折格子12において回折または透過させ、回折光を入出力用ファイバ61から出射させる一方で、透過光を入出力用ファイバ62から出射させるように構成される。また、位相格子モジュールY4を光結合器として使用する場合には、光分岐器として使用する場合と、入力および出力が反対とされる。
次に、本発明の第7の実施の形態に係る位相格子モジュールを、図14を参照して説明する。
図14に示した位相格子モジュールY5は、フェルール5の内部に、図9および図10を参照して説明した位相格子モジュールY1を収容させたものであり、この位相格子モジュールY1と、その機能において同様である。また、入出力用ファイバ64,65,66,67は、グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bに融着されているとともに、硬化性樹脂51によって、フェルール5の端面52にも固定されている。
なお、本発明の第5ないし第7の実施の形態において説明した位相格子モジュールY3,Y4,Y5のフェルール5に代えて、スリーブ状などの他の形態の外套部材を使用してもよい。
本実施例では、図14に示した位相格子モジュールY5を複数個製造し、それらの特性について評価した。
先ず、図1および図2に示したファイバ状位相格子X1を、図4を参照して説明した光学干渉法を利用して複数個形成した。
この光学干渉法においては、外径D=125μm、屈折率n=1.487であるPTRガラス製の光ファイバを長さ5cmに切断してファイバ片を複数個準備した。それらのファイバ片は、治具上に並置固定した状態で、ファイバ片とほぼ同様な屈折率(n0=1.49)を有するマッチングオイルの中に浸け、水平面に対し角度α=10度で傾斜させて設置固定した。
露光用光源としては、波長325nmのコヒーレント長30cm、出力50mWのHe−Cdレーザを用いた。露光光学系は、ピンホール付き集光レンズを用いたものであり、レーザ出射光をコリメータレンズで出力強度1/e2で径20mmの平行光に拡大し、光源からの各光路長がほぼ同じとなる分離平行光学系として構成した。
ファイバ状位相格子X1は、波長1555±5nmの光を、光軸に対して角度20度で反射するものとして形成した。この場合の回折格子12における光入射面の傾斜角度αは10度であり、先の波長の光を回折させるために必要な回折格子12の間隔Λは、下記数式5から計算できるように、3(μm)である。
一方、露光するレーザ光波長λは、325nmであるから、ファイバ片(屈折率n=1.487)での波長λm’は、218.6(nm)である(λm’= λ/n=325/1.487)。
また、ファイバ片での水平方向に対するレーザ光の傾斜角度Θ0は、スネルの法則から、下記数式6の通り、Θ0=2.1度として演算される。
すなわち、レーザ光は、マッチングオイル媒体内で屈折角度Θ0=2.1度で入射する。一方、空気中でのレーザ光の水平方向に対する傾斜角度Θ’は下記数式7の通り、3.1度として演算される。
すなわち、空気中では入射角約3度でマッチングオイルに入射させる。
上記条件の下に、ファイバ片を、光学系を用いてマッチングオイル内で10〜20分間露光する。その後、治具を取り出し電気炉で450〜500℃で3時間程度加熱することで、周期的な正弦波状の屈折率変動を有するファイバ状位相格子素子1となる。ファイバ状位相格子素子1の長さは、ブラッグ回折効率に影響するが、2mm程度あればほぼ100%近い回折効率を得ることができ、1次回折光の回折効率特性は、中心波長1555nmで、図3に示した通りである。
次いで、2mm長のファイバ状位相格子素子1の両端とグレーデッドインデックスファイバ2A,2Aを高周波放電の融着接続器による融着接続し、図1および図2に示したファイバ状位相格子X1とした。
ここで、グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bは、図6に示した外径125μm、コア径105μm、Δ=0.0027、ピッチ長P=0.25である。ここで、ピッチ長P=0.25は、グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bの長さとして1.12mmに相当する。
次いで、各グレーデッドインデックスファイバ2A,2Bの端面に入出射用光ファイバ40,41(42,43)を融着接続して1通の光ファイバ体4A(4B)(図9参照)とし、そうした光ファイバ体4A(4B)を複数本準備した。
続いて、2本の光ファイバ体4A,4Bを並列治具上において、それらの光ファイバ体4A,4Bのファイバ状位相格子素子1どうしが密着するように設置する。このとき、ファイバ状位相格子X1の間に形成される溝に対して、ファイバ状位相格子素子1に対応する部分にUV接着剤を塗布し、波長が1.55μm光を光ファイバ体4Aの入出射用光ファイバ40から入射し、光ファイバ体4Bからの出力をモニターしながら、光ファイバ体4Bの光軸方向と回転調整により最適な位置を設定した。その後、UV光の照射によりUV接着剤を硬化させ、二つの光ファイバ体4A,4Bを、ファイバ状位相格子素子1の部分で一体に固定して図9および図10に示した位相格子モジュールY1を形成した。
位相格子モジュールY1は、外径1.25mm、断面の内径が126×252μmである長円形穴を有する長さ5mmのジルコニア製フェルール5に挿通し、フェルール5の内面と両端面52を熱硬化型接着剤にて封止固定し、図14に示した構成の位相格子モジュールY5を形成した。この位相格子モジュールY5は、フェルール5の両端のそれぞれから入出力用ファイバ64,65,66,67が2本出ている2×2ポートものであり、長さ5mm、外径1.25mmのものである。このような位相格子モジュールY5は、合計5個製作した。
位相格子モジュールY5としての機能は、波長1.48〜1.50μmと1,55〜1.56μmが合波した入射光に対し、1.55μm帯の光を反射分離(入出力用ファイバ64→入出力用ファイバ67)、1.48μm帯の光を透過出射(入出力用ファイバ64→入出力用ファイバ66)するものである。製作した5個の位相格子モジュールY5の5個の光学特性は、下記表1に示したものであった。
一方、図15を参照して説明した従来のフィルタモジュール9の代表的な特性は、下記表2に記した通りである。この表2に示した特性を有するフィルタジュール9のサイズは、外径3.2mm 長さ30mmのものである。
表1および表2から分かるように、本発明の位相格子モジュールY5は、表2に記した従来のフィルタモジュール9に比較して、より小型、低挿入損失、低反射減衰な光フィルタモジュールを実現することができた。
さらに、先の5個の位相格子モジュールY5を用いて、+75℃、90%RHで1000時間の高温高湿サイクル試験サイクル行った。その結果、光学特性の変動は、損失±0.1dB以内 アイソレーション±1dB以内 反射減衰量±2dB以内であり、安定した特性を有する、高信頼な構造の小型光モジュールであることが示せた。
X1,X2 ファイバ状位相格子
Y1〜Y5 位相格子モジュール
1,3 ファイバ状位相格子素子
12,32,33 回折格子
2A,2B グレーデッドインデックスファイバ(屈折率分布型光ファイバ)
40〜43,45〜48,60〜67 入出力用ファイバ
44 透光性材料
5 フェルール(外套部材)
L 軸心
Y1〜Y5 位相格子モジュール
1,3 ファイバ状位相格子素子
12,32,33 回折格子
2A,2B グレーデッドインデックスファイバ(屈折率分布型光ファイバ)
40〜43,45〜48,60〜67 入出力用ファイバ
44 透光性材料
5 フェルール(外套部材)
L 軸心
Claims (12)
- 光ファイバ内に1または複数の回折格子が形成されたファイバ状位相格子素子であって、
前記回折格子は、光入射面が前記光ファイバの軸心の垂直方向に対して、傾斜していることを特徴とする、ファイバ状位相格子素子。 - 前記複数の回折格子は、一定の間隔を隔てて、前記軸心の垂直方向に対して同一の角度で、光入射面が傾斜している、請求項1に記載のファイバ状位相格子素子。
- 前記回折格子における光入射面の傾斜角度は、前記軸心の垂直方向に対して、4〜86度の範囲に設定されている、請求項1または2に記載のファイバ状位相格子素子。
- 前記複数の回折格子は、一定の間隔を隔てて、前記軸心の垂直方向に対して同一の角度で光入射面が傾斜した複数の回折格子からなる第1の回折格子群と、前記第1の回折格子群の回折格子とは異なる角度で光入射面が傾斜し、かつ前記軸心の垂直方向に対して同一の角度で光入射面が傾斜した複数の回折格子からなる第2の回折格子群と、を含んでいる、請求項1に記載のファイバ状位相格子素子。
- 前記第1の回折格子群における回折格子の光入射面と、前記第2の回折格子群における回折格子の光入射面とは、互いに反対方向に傾斜させられている、請求項4に記載のファイバ状位相格子素子。
- 前記第1および第2の回折格子群における回折格子の光入射面の傾斜角度は、前記軸心の垂直方向に対して、4〜86度の範囲に設定されている、請求項4または5に記載のファイバ状位相格子素子。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の1または複数のファイバ状位相格子素子と、
前記ファイバ状位相格子素子の端面に融着接続された1または複数の屈折率分布型光ファイバと、
を備えていることを特徴とする、ファイバ状位相格子。 - 前記複数のファイバ状位相格子素子は、それらの軸心が互いに平行となる位置関係に固定されている、請求項7に記載のファイバ状位相格子。
- 前記複数のファイバ状位相格子素子は、透光性材料によって互いに密着させられている、請求項8に記載のファイバ状位相格子。
- 請求項8ないし10のいずれかに記載のファイバ状位相格子と、
前記ファイバ状位相格子の屈折率分布型光ファイバに光を入射させ、あるいは前記屈折率分布型光ファイバからの光を出射させるための1または複数の入出力用光ファイバと、
を備えたことを特徴とする、位相格子モジュール。 - 前記入出力用ファイバは、その外径が前記屈折率分布型光ファイバと同一又は前記屈折率分布型光ファイバよりも小さく設定されており、かつ前記屈折率分布型光ファイバに端面に融着されている、請求項10に記載の位相格子モジュール。
- 前記ファイバ状位相格子を収容するための外套部材をさらに備えている、請求項10ないし13のいずれかに記載の位相格子モジュール。
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