(1)画像形成装置例の全体的な概略構成
図2は本実施例の画像形成装置の概略模式図である。この画像形成装置は、電子写真プロセスを用いた、プロセスカートリッジ着脱式のレーザープリンタである。図1はプロセスカートリッジ部分の拡大模式図と、制御系統のブロック図である。
このプリンタはホスト装置としてのコンピュータ100から画像形成装置制御部(制御手段)101に入力した画像情報(入力画像信号)107をハードコピーとして出力するプリント動作を実行する。
Aはプリンタ本体(以下、装置本体と記す)、Bは装置本体Aに対して着脱可能なプロセスカートリッジ(以下、スカートリッジと記す)である。以下の説明において、カートリッジBまたはこれを構成している部材の短手方向とはカートリッジBを装置本体Aに着脱する方向である。また、長手方向とはカートリッジBを装置本体Aに装着する方向と交差する方向である。カートリッジBに関し、背面とはカートリッジBを正面から見てその反対側の面、左右とはカートリッジBを正面から見て左又は右である。カートリッジBの上面とはカートリッジBを装置本体Aに装着した状態で上方に位置する面であり、下面とは下方に位置する面である。
本実施例におけるカートリッジBは、電子写真プロセス機器のうちの、像担持体1と、帯電手段2と、現像手段4と、クリーニング手段6と、の4つの機器を内包させて構成してある。像担持体1は、回転ドラム型の感光像形成担持体(以下、感光体と記す)であり、OPC、アモルファスSi等の感光材料をアルミニウムやニッケル等のシリンダ状の基板上に形成して構成されている。帯電手段2は、本実施例では、帯電ローラを使用した接触帯電装置であり、回転する感光体1の周囲を所定の極性・電位に一様に帯電処理する。現像手段4は、回転する感光体1の面に形成された静電潜像をトナー像として現像する。クリーニング手段6は、本実施例では、ブレードクリーニング装置であり、被記録材に対するトナー像転写後の感光体1の面から転写残留トナーを除去して感光体面を清掃する。
上記のカートリッジBは、装置本体Aの上部の開閉カバー7をヒンジ7aを中心に2点鎖線示のように開いて装置本体A内を開放することで着脱操作される。すなわち、カバー7を開くと、装置本体A内のカートリッジ装着部Sが見える。装着部Sの左右壁には、カバー7が開いた開口から見ると、前下がりのガイドレール(不図示)が見える。カートリッジBを、正面側を手で掴み、背面側を先にして装着部Sに差し入れる。カートリッジ左右側の、感光体1の軸線上で外方へ突出する位置決めボス(不図示)及びこの位置決めボスよりもカートリッジ装着方向後方にある回り止めガイド(不図示)を、上記のガイドレールに係合させる。カートリッジBを十分に挿入して、前記位置決めボスを装置本体側の位置決め溝(不図示)に嵌合させて、カートリッジBを装置本体A内の所定の位置に装着する。所定の装着位置において、カートリッジ上面の露光開口部8が画像情報露光手段としてのレーザービームスキャナー(以下、スキャナーと記す)3に正対する。カートリッジ下面から露出した感光体下面が接触転写帯電部材(転写手段)としての転写ローラ5に正対して当接した状態になる。開閉カバー7を閉じ込む。
カートリッジBは装置本体Aに対して所定に装着されることで、装置本体A側と機械的・電気的にカップリング状態になる。これにより、カートリッジB側の被駆動部材(感光体・現像ローラ・現像剤攪拌部材等)が装置本体A側の駆動機構により駆動可能状態になる。また、カートリッジB側の帯電ローラ・現像ローラ等に対して装置本体A側の高圧電源から所定のバイアスを印加することが可能となる。また、カートリッジB側のセンサーや記憶装置が装置本体A側の制御部と導通状態になる。
カートリッジBの装置本体Aからの取り外しは、上記の装着の手順と逆である。図2において、カバー7を開いてカートリッジBを右上方へ引き出すと、カートリッジBは前述のガイドレールに導かれて装置本体Aの外へ出る。
図3において、9はドラムシャッタであり、カートリッジBが装置本体Aから取り出されているときは、感光体下面を覆う閉じ位置に移動していて、感光体下面を防護している。カートリッジBの装置本体Aに対する挿入移動過程において、開き位置に移動される。また、10は露光部シャッタであり、カートリッジBが装置本体Aから取り出されているときは、露光開口部8を閉鎖する閉じ位置に移動している。カートリッジBの装置本体Aに対する挿入移動過程において、開き位置に移動して、露光開口部8が開かれる。
プリント動作を説明する。感光体1は駆動手段(不図示)により矢印aの時計方向に所定の周速度で回転駆動される。
その感光体1の外周面が、高圧電源S1から所定の帯電バイアスが印加された帯電ローラ2により、所定の極性・電位に帯電される。本実施例において、帯電ローラ2に印加される帯電バイアスは、感光体1の帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧VP−PPを有するAC成分VP−ACとDC成分VP−DCとの重畳電圧(VP−AC+VP−DC)である。これにより、回転駆動されている像形成担持体112の外周面が、AC印加方式で、DC成分VP−DCの電位に均一に接触帯電処理される。本実施例においては、感光体1の外周面を、負の所定電位に均一に帯電させている。
その感光体1の均一帯電面に対して、スキャナー3により走査露光がなされて画像情報に対応した静電潜像が形成される。スキャナー3は、半導体レーザー・ポリゴンミラー・F−θレンズを有してなり、ホストコンピュータ100から制御部101へ入力された画像情報107の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調(ON/OFF変換)されたレーザー光Lを出力する。そのレーザー光Lがミラー3aを介してカートリッジ上面の露光窓部8からカートリッジ内に入光して、感光体面が走査露光される。レーザー光が照射された感光体面部分(露光明部)の電位が減衰して画像情報に対応した静電潜像が感光体面に形成される。
その静電潜像は、現像装置4によってトナー像として現像される。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法等が用いられる。プリンタにおいては、イメージ露光と反転現像との組み合わせで用いられることが多い。本実施例では、画像情報部を露光するイメージ露光により静電潜像を形成し、その静電潜像を現像剤Tとして負帯電性磁性一成分トナー(ネガトナー)を用いたジャンピング現像方式の現像装置により反転現像している。現像ローラ41には、高圧電源S2から現像バイアスとして、ピーク間電圧VD−PPを有するAC成分VD−ACとDC成分VD−DCとの重畳電圧(VD−AC+VD−DC)が印加される。この現像装置4については、次の(2)項で詳述する。
一方、所定の制御タイミングにて、ピックアップローラ12が駆動されて、給紙カセット11に積載収納されている被記録材Pが繰り出され、リタードローラ13により最上位の被記録材のみが1枚分離される。その被記録材Pが、シートパス14を通って、プレフィードセンサ19に至る。あるいは手差し給紙モードが選択されている場合には、手差し給紙トレイ15側の給紙ローラ16が駆動されて、分離パッド17との協働で、トレイ15上の積載の被記録材Pが1枚分離されて給送される。その被記録材Pが、シートパス18を通って、プレフィードセンサ19に至る。
給紙カセット11側または手差し給紙トレイ15側から給送された被記録材Pはプレフィードセンサ19とレジストローラ20で一時待機する。その後、レジストローラ20、レジストセンサ21、転写前ガイド22を通過して、感光体1と転写ローラ5との当接ニップ部である転写ニップ部N(画像形成部)に給紙される。
転写ローラ5は、弾性層を有する回転体形状の接触帯電部材であり、感光体1に対して加圧接触させて転写ニップ部Nを形成させている。転写ローラ5は駆動手段(不図示)により矢示bの反時計方向に感光体1の回転速度に対応した所定の周速度で回転駆動される。被記録材Pは、レジストセンサ21によって感光体1の表面に形成されたトナー像と同期取りされて転写ニップ部Nに供給される。そして、被記録材Pが転写ニップ部Nを挟持搬送されていく過程において、転写ローラ5に対して高圧電源(不図示)からトナーと逆極性の所定の転写バイアスが印加されて、感光体1面のトナー像が被記録材Pの面に順次に静電転写されていく。
転写ニップ部Nを出た被記録材Pは、感光体1面から分離され、シートパス23を通って定着装置(定着手段)24へ導入される。
一方、被記録材Pに対するトナー像転写後の感光体1の表面は、クリーニング装置6のクリーニングブレード6aにより拭掃される。これにより、感光体1は、転写残留トナーの除去を受けて清掃されて、繰り返して作像に供される。
本実施例において、定着装置24は、加熱フィルムユニット24aと加圧ローラ24bとの圧接からなるフィルム加熱方式の定着装置である。トナー像を保持した被記録材Pは上記の圧接部である定着ニップ部Tで挟持搬送されて加熱・加圧を受けることで、トナー像が被記録材P上に定着されて永久画像となる。
そして、画像面上向きの排紙モードが選択されているときは、定着装置24を出た被記録材Pは、フラッパ25により直進シートパス26側に案内されて、FU排紙ローラ27でフェイスアップトレイ28に排出される。
また、画像面下向きの排紙モードが選択されているときは、定着装置24を出た被記録材Pは、フラッパ25により上行シートパス29側に案内されて、FD排紙ローラ30でフェイスアップトレイ31に排出される。
(2)現像装置4
本実施例の現像装置4は、現像剤Tとして、負帯電性磁性一成分トナーを用いたジャンピング現像方式の反転現像装置である。像担持体である感光体1に現像剤担持体である中空の現像ローラ(現像スリーブ)41を所定の僅少な間隔を保って対向させて配置する。そして、高圧電源S2から現像ローラ41に直流と交流を重畳した現像バイアスを印加してトナー粒子を往復させる電界を形成する。これにより、現像ローラ41上に薄層に塗布されたトナーが感光体1上の静電潜像に飛翔、付着して、潜像が反転現像されたトナー像として可視化される。
現像装置4は、開口部に現像ローラ41を回転自在に配設した現像容器(現像室)42と、現像剤Tを収納させた現像剤収納容器(以下、トナー容器という)43とを結合(連結)させている。現像ローラ41の長手方向両端部には間隔保持部材(スペーサコロ:不図示)が取り付けられている。そして、その間隔保持部材が感光体1に当接する方向に押圧付勢されている。これにより、現像ローラ41は感光体1に対して所定のギャップ(間隔:50〜500μm))をもって対向配置される。
トナー容器43内の現像剤Tは、回転駆動されるトナー容器内攪拌部材44で攪拌されながら現像容器42側へ搬送される。現像容器42に搬送された現像剤Tは、現像容器内攪拌部材45によって攪拌されながら現像ローラ41側に搬送される。現像ローラ41側に搬送された現像剤は、中空の現像ローラ41に内包させた、磁界発生手段である非回転のマグネットロール41aの磁界によって現像ローラ41に引き寄せられる。現像ローラ41に磁気付着した現像剤Tは、現像ローラ41の回転に伴って、現像ローラ41と現像剤規制部材である現像ブレード46との当接部に搬送される。そして、現像ローラ41上の現像剤は現像ブレード46によってトリボ付与を受けるとともに、薄層として層厚規制を受ける。さらに、感光体1と現像ローラ41との対向部である現像領域部に搬送されて、感光体1面の静電潜像の現像に供される。現像ローラ41には高圧電源S2から所定の現像バイアスが印加される。現像に供されずに現像ローラ41上に残った現像剤は現像ローラ41の回転で現像容器42に戻し搬送される。そして、現像ローラ41は現像容器42で現像剤の再供給を受ける。
図3は、未使用新品状態のカートリッジBである。この状態時のカートリッジBは、現像装置4の現像容器42とトナー容器43の間にトナー封止部材47が貼着されている。トナー封止部材47の存在により現像容器42とトナー容器43は完全に隔離されていて、現像剤Tはトナー容器43だけに封入されていて、現像容器42には現像剤が全く存在していない状態に保持される。これにより、カートリッジBの輸送中等に激しい衝撃が発生した場合等でも現像剤漏れのトラブルが防止される。トナー封止部材47はカートリッジBを装置本体Aに装着する際に所定の手順で開封されて、現像容器42とトナー容器43が連通化される。或いは、カートリッジBが装置本体Aに装着されたとき、カートリッジ状態検知手段により装着カートリッジが未使用新品状態で検知されると、自動開封機構が動作して、トナー封止部材47が自動開封されて、現像容器42とトナー容器43が連通化される。
(3)制御系統
画像形成装置制御部101は、装置本体Aのプリント動作を行う中央処理演算装置である本体CPU103と、カートリッジBに搭載されている記憶装置(読み出し/書き込み可能な不揮発性記憶手段:メモリ)111と通信を行うIO制御部104を有する。また、ホストコンピュータ100から入力した画像情報107を画像処理する画像処理制御部105、帯電バイアスや現像バイアスなどの高圧出力を供給する電圧装置である高圧電源S1・S2等の出力制御を行う高圧出力制御部123を有する。また、出力する画像情報に応じてスキャナー3の発光制御を行うレーザー駆動制御部106を有する。また、画像形成のプロセス条件などの設定値や、画像処理方法、ホストコンピュータから送信された画像情報などを記憶する記憶装置部(読み出し/書き込み可能な不揮発性記憶手段)124等を有する。
カートリッジBが装置本体Aに装着された場合、および、装置本体Aに電源が投入された場合、IO制御部104はカートリッジBに付随する記憶装置111と通信を行う。そして、IO制御部104は、プロセス条件や使用履歴(現像手段の使用履歴に関する情報)といった種々の記憶値を取得する。
IO制御部104によって得られた記憶値は、記憶装置部124の記憶値とともに本体CPU103に送信され、画像形成を行う際の、データとして使われる。
ホストコンピュータ100より送信された画像情報107は、画像処理制御部105において、エッジ処理や濃度調整などといった画像処理を行い最適な画像形成を行えるような画像情報として処理される。本体CPU103は、装置本体Aに装着されたカートリッジBの記憶装置111から得られた記憶値と、画像処理を終えた画像情報とから、最適なプロセス条件値を算出し、最適なプロセス条件値で画像を形成する。
図4は、帯電バイアスが印加された帯電ローラ2による感光体1面の帯電電位、スキャナー3の走査によって感光体1面に形成された潜像電位、および現像バイアスの関係図である。この図により、静電潜像のトナーによる可視化について説明する。ただし、図4は負極性の静電潜像を負極性に帯電したトナーで反転現像する場合のバイアス電圧波形である。
図4において、VDは静電潜像の背景部の電位(帯電電位、暗電位)、VLは静電潜像の被可視部の電位(露光電位、明電位)である。電位VLの領域、即ちスキャナー3で走査露光がなされた領域にトナーを付着させて可視化する(反転現像)。
本実施例で説明する現像バイアスは図4に示されるように、振動バイアス電圧一周期Cにおいて、現像ローラ41から感光体1に向かう方向にトナーを付勢する電圧VMAXが時間T1現れる。ついで、感光体1から現像ローラ41に向かう方向にトナーを付勢する電圧VMINが時間T2現れる。
上記の電圧VMAXが現像ローラ(現像剤担持体)2から感光体(像担持体)1へ向かう方向にトナー(現像剤)Tを付勢(飛翔)させる第一のピーク電圧である。また、電圧VMINが逆方向に付勢(飛翔)させる第二のピーク電圧である。
この時、振動バイアス電圧の一周期Cにおいて、現像バイアスを積分した電位を時間平均電位VAVEといい、VDとVLとの間に必ず含まれる。
また、電圧VMAXが印加される時間T1と電圧VMINが印加される時間T2はトナーの現像特性や、カートリッジ構成によって最適な比率があり、
Duty=T1/(T1+T2)
で表す比を本明細書ではデューティー比という。
また、本明細書における時間平均電位VAVEというのは、以下の式において定義する。
即ち、時間tの関数である振動バイアス電圧V(t)を、振動1周期分について時間積分する。その積分値を振動1周期の時間Tで割った値VAVEを、本明細書では便宜上振動バイアス電圧の時間平均電圧と呼ぶ。
潜像電位VLと現像バイアス電圧一周期Cの時間平均電圧VAVEとの差分を現像コントラストVCONTと言い、現像コントラストVCONTの現像効率が大きいほど、静電電位VLに飛翔するトナー量は大きくなる。
ここで、デューティー比Dutyについて述べる。従来採用されてきた現像バイアスは第一のピーク電圧VMAXの印加時間T1と第二のピーク電圧VMINの印加時間T2とが同じ割合の50%を使用してきた。しかし、デューティー比を最適化することで、トナー消費量や画像品質に影響することが確認されてきた。
具体的に述べると、50%のデューティー比に対し、例えば、ピーク間電圧VD−PPや、高圧直流成分VD−DCを変化させ、時間平均電圧VAVEが一定となるよう、デューティー比を変えてみた。そうすると、黒部濃度および広範囲にトナー現像させる静電潜像におけるトナー乗り量を大幅に変化することなく、ライン幅などの低印字率画像パターンの再現性を選択的に向上させることが可能であることがわかってきた。そのため、1枚あたりのトナー消費量や画像品質の向上を行うために、広範囲な現像領域とライン幅画像のような低印字率画像パターンを独立して制御できることから、デューティー比を50%から変化させることも積極的に行われている。
さらに、時間平均電圧VAVEと現像バイアスに重畳されている直流成分VD−DCについて述べる。VMAXとVMINとのそれぞれの印加時間T1およびT2が等しい場合、Duty比は50%となり、VAVEとVD−DCも等しくなる。しかしながら、VMAXとVMINとのそれぞれの印加時間T1およびT2はトナーや現像装置構成に応じて最適な条件は異なる。その結果、Duty比はT1とT2の大きさで変化するため、VAVEとVD−DCの値は異なる。具体的に説明すると、T1>T2の場合、|VAVE|>|VD―DC|となる。以上が繰り返されて静電潜像が現像される。
ところで、電子写真で用いられる現像剤であるトナーは、常に安定した帯電電荷量を付与できるわけではなく、とくにカートリッジBが新品で使い始めの段階では、トナーの現像性能は低い。そこで、現像バイアスの時間平均電圧VAVEや、スキャナー3の露光量を変化させるなどして、露光電位VLと時間平均電圧VAVEの差である現像コントラストVCONTを大きくする。これにより、再現性の確保を可能としていた。特に、静電潜像の形成されている範囲が狭い、細線やドットパターンなどの低印字率画像パターンについて、効果的に再現性向上を可能とした。
しかしながら、上記従来例では以下に示す問題が生じる場合がある。すなわち、上記のように、トナーの帯電電荷量を安定して付与しがたい場合に生じる現像性能の悪化は、カートリッジなどを使い始めた使用初期に多く発生する。そこで、現像コントラストVCONTを大きくすることで、画質を確保することができた。その反面、黒部画像などのように比較的静電潜像が広範囲な印字率パターンでは、使用初期における帯電電荷量が不安定な状態でも、大きく濃度を悪化させるような現象は生じにくい。しかしながら、低印字率パターンの現像性を向上させるために、現像コントラストVCONTを大きくした結果、広範囲な印字率画像パターンにおけるトナーの現像量が増大してしまい、結果として1枚当たりのトナー消費量が多くなってしまう。
詳細に検討を進めると、使用初期における帯電電荷量が不安定な場合に生じる問題は、8ドット以下程度の幅をもつ印字パターンに多く見受けられることが明確となった。加えて、10ドット幅や12ドット幅の印字パターンによる横線画像を印刷する場合、現像コントラストVCONTを大きくしてしまうと、現像過多となる。そのため、最終的にトナーが静電潜像の形成されていない隣接する白地部に飛翔してしまう、飛び散りや爆発、尾引と言った画像不良を生じさせる可能性が高いことがわかった。
更に、静電潜像に対するトナーの現像量は、現像コントラストVCONTの大きさに比例することは既に知られているが、低印字率画像パターンには、第一のピーク電圧(VMAX)が大きく寄与し現像コントラストVCONTと同様な効果を得ることができた。それに加え、既に述べてある通り、広範囲な印字率画像パターンには、あまり影響を及ぼさずに低印字率画像パターンを選択的に現像性能を向上させる効果があることが新たにわかった。
これは、現像コントラストVCONTだけでは、低印字画像パターンのようなエッジ効果の強い場合、高さ方向へトナーが積層されてしまい、満足のゆく静電潜像の再現が難しかった。しかし、VMAXによって現像効率を大きくすることにより、エッジ効果の強い低印字画像パターンにおいても、選択的に低印字画像パターンへ現像する。これとともに、トナーのほぐし効果によって、エッジ効果を和らげ、静電潜像に対するトナーの現像量が均一化され、現像性能の向上が図られたのであると推測される。
また、VMAXの現像効率を大きくし続けた場合、現像性能の向上が図れていることから、静電潜像を形成していない箇所に不正にトナーが飛翔してしまう、現像かぶりのレベルが徐々に悪化することもわかった。
故に、VMAXの現像効率を上げることは、トナーの帯電電荷量が不安定なときに行うことが最適であり、十分な帯電電荷量を得た後は、VMAXを戻すことが望ましい。
そこで、本実施例では、カートリッジBやトナーの使用初期に生じる帯電電荷量付与不足の極初期の期間に、低印字画像パターンの現像性を選択的に向上させる。そのために、現像バイアスの周波数成分の一つである、現像ローラから感光体へ向かう方向へトナーを飛翔させる第一のピーク電圧VMAXを飛翔促進する方向へ増大させる。そのために、現像バイアス成分を構成するAC成分VD−ACとDC成分VD−DCとの重畳電圧におけるDC成分VD−DCを変化させるとともに、時間平均電圧であるVAVEは変化させることのないよう、デューティー比を変化させることを特徴とする。
はじめに、従来採用されている現像コントラストVCONTを変化させる方法について効果と弊害について確認を行う。
ここで、本明細書において使用する画出し条件は、既に図1〜3を用いて述べた構成を用いるため、ここでの詳細な説明は除外する。
本実施例では、図5に示すような現像バイアス条件にて画像評価を行う。図5において、高圧電源S2より出力される直流電圧VD−DCを−500Vとし、交流電圧を重畳することで、第一のピーク電圧VMAX=−1200V、第二のピーク電圧VMIN=200Vとする。さらに、かぶり画像を生じさせず、かつ、画質や消費量を安定させるため、ディーティー比を最適化し、Duty=T1/(T1+T2)=43%とする。その結果、時間平均電圧VAVE=−400Vとなる。さらに、感光体1上の帯電電位VDが−600V、露光電位VLが−150Vとなるよう、帯電バイアス設定を調節して行う。その結果、現像コントラストVCONT=−250Vにて行う。
その他の条件として、カートリッジBの現像装置4のトナー容器43にトナーTを当初量600gにて収納する。そして、連続印刷にて、ライン幅、黒部濃度推移とともにトナーが減少し、白抜け(静電潜像では形成されているはずの文字などがトナーの供給不足により出力されなくなる画質劣化)までの枚数を確認する。ただし、トナーの帯電電荷量不足による推移を確認するため、0枚から2000枚までは250枚毎に、それ以降は2000枚毎に測定サンプルを印刷する。
また、本検討で用いる印刷パターンを図6に示す。図6の(a)は画像品質測定用サンプルパターンであり、中央部に4ドット幅で構成されたライン幅測定用のパターンと、それに隣接するように、5cm四方の黒部濃度パターンにて構成する。ライン幅について、600dpiおける4ドットは理論上約180μmであることから、平均で180μm以上を目標値とする。また、黒部濃度については、反射濃度測定器であるMacbeth RD918を用いて、測定値1.4を目標として行う。(b)はトナー消費量測定サンプルパターンで、単位面積当たりの画像形成ドットの割合を4%とする。
その結果、図7Aに示すように、現像コントラストVCONTによる最適化を行わない構成では、0枚から1000枚までの間に、ライン幅が大きく変動していることがわかる。それに対し、図7Bに示すように、黒部濃度は、0枚から2000枚までは、若干薄目に推移するが、問題のないレベルであった。また、印刷可能枚数としては、10000枚を若干超える程度で白抜けを生じた。
そこで、上記構成においてライン幅を満足するための現像コントラストVCONTを調節して同様な試験を行った。簡易的に、本検討では500枚目のライン幅が180μmに近づくよう、現像バイアスの時間平均電圧VAVEを−450Vとして、0枚から1000枚までの間印加を行った。
その結果、図8Aに示すように、ライン幅推移は良好な結果を得られた。しかしながら、図8Bに示すよう、黒部画像については、1.5を超える値であり、更に、印刷可能枚数については、8000枚を若干超える程度である。したがって、時間平均電圧VAVEを変化させることは、ライン幅を確保するためには効果的な手段ではあるものの、通紙枚数に現れるように、過剰なトナー消費が行われていることがわかった。なお、図8A・図8Bにおいて、×−×のクラフは図7のグラフを重ねである。
そこで、ライン画像の様な低印字率画像パターンに対する現像性を向上させるために、上記と同様に500枚目のライン幅が180μmに近づくように条件出しを行い、図9に示すような現像バイアスを用いる。すなわち、飛翔効果を向上する方向にVMAXを垂直移動するために、高圧出力から出力される直流成分VD−DCを−700Vとする。かつ、現像コントラストVCONTを一定に保つため、デューティー比を変化させ、時間平均電圧VAVEを−400V一定値とした現像バイアスを用いる。
図9で示す現像バイアスを0枚から1000枚まで印加したところ、図10Aと図10Bの様な結果が得られた。図10Aにおいて、ライン幅推移は、現像コントラストVCONTを変化させたときと同様な効果を得ることができ、それに加え、図10Bに示すよう、黒部濃度推移がほとんど変化していない。さらに、白抜けを生じるまでの印刷枚数は10000枚を若干切ってしまうものの、消費量に大きな変化を与えず良好な画像を得ることが可能となった。
カートリッジBの比較的初期の段階での0枚から1000枚までの間は、黒部濃度に対しライン幅のような低印字率画像パターンの現像性能は極端に低い。そこで、その間は、VMAXの現像効率が大きくライン幅のような低印字率パターンの現像性を選択的に向上させるバイアスを用いる。そして、通紙枚数が増加し、1000枚目以降はVMAXの現像効率が大きい現像バイアスを使い続けた場合、かぶりなどの問題が生じてしまうため、図5に示すような、極初期以外では満足の行く結果を得られる現像バイアスに切り換える。
本実施例における、現像バイアス切り換えから印刷動作までの制御フローの説明を図11を用いて行う。
ホストコンピュータ100から制御部101の本体CPU103へ印刷開始信号が送信される(1001)。
印刷開始信号と伴に画像情報(元画像)107が送られ、画像情報が本体CPU103で受け取られ、全ての画像情報が得られたかどうかを判別する(1002)。
全ての画像情報が得られれば、カートリッジBの記憶装置111から制御部101へ印刷枚数履歴(積算印刷枚数:そのカートリッジの使用履歴情報=現像手段の使用履歴に関する情報)が取得される(1003)。
制御部101は、印刷枚数履歴情報と、予め定めた閾値を比較し(1004)、カートリッジBが使用初期状態のものであるか否かを検出する。ここでは、カートリッジBの積算印刷枚数履歴が0枚から1000枚の間であるものを使用初期状態と判断する。比較の結果から、使用初期状態の場合とそうでない場合のそれぞれに適した現像バイアス条件を取得する。
カートリッジBの使用履歴(現像手段の使用履歴に関する情報)が使用初期段階である0枚から1000枚の間であると判断された場合、微少ドットを優先的に再現可能な現像バイアスにするためのルーチン1011が選択される。そして、VMAXが大きい現像バイアス条件となるよう現像VD−DCを変化する(1009)。このとき、時間平均電圧VAVEが変化してしまうため、時間平均電圧VAVEが変化せぬようVMAXの印加時間T1を調節する(1010)。
また、カートリッジBの使用履歴が1000枚目を越えていると判断された場合は、通常の現像バイアスに決定される。
例えば、1000枚未満の場合、図9に示すような現像バイアスを採用し、1000枚以上の場合、図5に示すような現像バイアスを採用する。
現像バイアス条件決定(1005)の後、画像形成動作が行われ(1006)、全ての画像情報を印刷した後、終了処理がなされる(1007)。
このように、トナーの帯電電荷量が不安定で、ライン幅のような低印字率画像パターンに対する現像性能が低下しているカートリッジ使用初期においてはVD−DCを変化させる。すなわち、現像バイアスのVMAXの現像効率を大きくする方向に現像バイアスの重畳されているVD−DCを変化させる。さらに、時間平均電圧VAVEが一定であるよう、現像バイアスの1周期における第一のピーク電圧の時間T1の比率を調節する。これにより、トナー消費量に影響を及ぼすことなく、画質の向上を行うことを可能とした。
本実施例で説明した内容は、一例であって、これに限られるものではない。例えば、VMAXの切り換えタイミングを、カートリッジBの積算印刷枚数(使用履歴)で説明を行ったが、これはカートリッジBの使用状態、または、トナーの攪拌状態が時系列的にわかる指標であればよい。たとえば、感光体1や現像ローラ41の積算回転数や積算回転時間、現像バイアスや帯電バイアスの積算印加時間などの指標、及びそれらを組み合わせて使うことも有効である。
さらに、バイアス値に関しても実施例に限られたものではない。本体構成やカートリッジ構成に対し、最適なバイアス条件は異なるため、最適なバイアス条件に対し、本実施例の説明にある補正手段(図11のルーチン1011)を用いることで同様な効果が得られる。
また、切り替えの条件やタイミングなどは、本体CPU103の内部でカウントする手段でもよいものの、カートリッジBの使用状態(使用履歴、現像手段の使用履歴に関する情報)を正確に判断する。そして、最適な切り替え制御を行うために、カートリッジBに付随の記憶装置111などの情報を使用することも効果的である。さらに、切り替えの閾値タイミング情報を記憶装置111に、同様に記憶させることも非常に有効である。
次に、実施例2について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1のものと同様であるので、同一機能、構成を有する要素には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
実施例1では、現像バイアスを第一のピーク電圧であるVMAXの現像効率を大きくさせるために、現像バイアスに重畳されているVD−DCのレベルを変化させることで現像バイアス波形を垂直移動させる。かつ、時間平均電圧VAVEを切り換え前後で一定となるよう、第一のピーク電圧の印加時間T1と第2のピーク電圧の印加時間T2とのデューティー比を変化させた。
本実施例2では、現像バイアス波形において、ピーク間電圧VD−PPを変えることで、VMAXを変化させ、かつ、時間平均電圧VAVEを切り換える前後で一定となるよう、デューティー比を変化させることを特徴とする。
はじめに、図12を用いて本実施例2で用いる、現像バイアスを説明する。図5において、前記実施例1で用いた、0枚から1000枚程度はライン幅が若干細くなってしまうが、1000枚目以降は良好なライン幅推移を示す通常のバイアスがある。
それに対し、実施例1の図12で示したような、VMAXの現像効率を大きくすることで、選択的に低印字率画像パターンの現像性能を向上させることが可能であることがわかった。このため、VD−PPを現状1400V(図5の1400V)からVMAXが−1400Vとなるように、1800Vへ変更する。しかしながら、時間平均電圧VAVEが、−400Vから−430Vへ変化してしまうため、消費量が増大してしまう。そこで、デューティー比を45%に変更し、時間平均電圧VAVEが−400V一定となるよう最適化を行う。変更前のデューティー比は図5のDuty比で43%である。
図5の波形を図9にしたことで、0〜1000枚まで、ライン幅が向上した。その効果はVMAXの値が支配的であることがわかっているので、図12に示すようにVMAXを図9と同等のVMAXとなるように、VD−PPを変化させる。その場合、VAVEもともに変化するため、Dutyを43%から45%にして、VAVEを一定に保つ。
上記現像バイアスを用いた効果を確認する。効果の確認方法については前記実施例1で述べた方法と同一の手段を用いるため、その詳細は割愛する。
その結果、図13A・図13Bに示すように、黒部濃度推移およびライン幅推移ともに、安定した推移を得ることができ、更に、白抜け画像が生じるまでの印刷枚数は前記実施例1と同様に10000枚程度まで印刷することが可能となった。
本実施例における、現像バイアス切り換えから印刷動作までの制御フローの説明を図14を用いて行う。
ホストコンピュータ100から制御部101の本体CPU103へ印刷開始信号が送信される(1301)。
印刷開始信号と伴に画像情報(元画像)107が送られ、画像情報が本体CPU103で受け取られ、全ての画像情報が得られたかどうかを判別する(1302)。
全ての画像情報が得られれば、カートリッジBの記憶装置111から制御部101へ印刷枚数履歴(積算印刷枚数:そのカートリッジの使用履歴情報)が取得される(1303)。
制御部101は、印刷枚数履歴情報と、予め定めた閾値を比較し(1304)、カートリッジBが使用初期状態のものであるか否かを検出する。ここでは、カートリッジBの積算印刷枚数履歴が0枚から1000枚の間であるものを使用初期状態と判断する。比較の結果から、使用初期状態の場合とそうでない場合のそれぞれに適した現像バイアス条件を取得する。
使用履歴がカートリッジBの使用初期段階である0枚から1000枚の間であると判断された場合、微少ドットを優先的に再現可能な現像バイアスにするためのルーチン(1311)が選択される。そして、VMAXが大きい現像バイアス条件となるよう現像VD−PPを変化する(1309)。このとき、時間平均電圧VAVEが変化してしまうため、時間平均電圧VAVEが変化せぬようVMAXの印加時間T1を調節する(1310)。
また、カートリッジBの使用履歴が1000枚目を越えていると判断された場合は、通常の現像バイアス(図5の現像バイアス)に決定される。
現像バイアス条件決定(1305)の後、画像形成動作が行われ(1306)、全ての画像情報を印刷した後、終了処理がなされる(1307)。
以上説明したように、トナーの帯電電荷量が不安定で、ライン幅のような低印字率の画像パターンの現像性能が低下しているカートリッジ使用初期において、現像バイアスのピーク間電圧VD−PPを変化させる。すなわち、現像バイアスのVMAXの現像効率を大きくする方向に現像バイアスのピーク間電圧VD−PPを変化させる。さらに、時間平均電圧VAVEが一定であるよう、現像バイアスの1周期における第一のピーク電圧の時間T1の比率を調節する。これにより、トナー消費量に影響を及ぼすことなく、画質の向上を行うことを可能とした。
本実施例で説明した内容は、一例であって、これに限られるものではない。例えば、VMAXの切り換えタイミングを、カートリッジBの積算印刷枚数(使用履歴)で説明を行ったが、これはカートリッジBの使用状態、または、トナーの攪拌状態が時系列的にわかる指標であればよい。たとえば、感光体1や現像ローラ41の積算回転数や積算回転時間、現像バイアスや帯電バイアスの積算印加時間などの指標、及びそれらを組み合わせて使うことも有効である。
さらに、バイアス値に関しても実施例に限られたものではない。本体構成やカートリッジ構成に対し、最適なバイアス条件は異なるため、最適なバイアス条件に対し、本実施例の説明にある補正手段を用いることで同様な効果が得られる。
次に、実施例3について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1のものと同様であるので、同一機能、構成を有する要素には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
前記実施例1および実施例2では、黒部濃度が立ち上がりを持たない構成について説明を行った。しかしながら、トナー容器構成やトナー物性によっては、黒部濃度推移においても立ち上がりを持つ場合があることが知られている。そこで、従来から用いられている手段として、前記実施例1で述べたように、ライン幅補正と同様の現像コントラストVCONTを大きくすることで載り量を増加させ、濃度水準を確保する手段が採用されてきた。特に、現像バイアスの時間平均電圧VAVEを変化させる手段による現像コントラストVCONTを大きくした場合、静電潜像に対する載り量は確実に増加する。黒部濃度とライン幅などの低印字率画像パターンの再現性を両立しようとすると、前記実施例1の従来例で示したように消費量が増加してしまう問題点が残る。
そこで、本実施例3では、カートリッジBの使用履歴に応じて、現像バイアスの時間平均電圧VAVEを変化させる構成とする。これともに、低印字率画像パターンの再現性の乏しい、カートリッジの使用初期段階において、第一のピーク電圧VMAXの現像効率を大きくする。これにより、黒部濃度を確保するために変化した時間平均電圧VAVEに影響を与えず、低印字率画像パターンの再現性の確保と、消費量増加の防止を行うことを特徴とする。
はじめに、黒部濃度について立ち上がりのある構成について説明を行う。低印字率画像パターンに比較して現像性能の高い、高印字率画像パターンが立ち上がりを持つ原因は、低印字率画像パターン同様帯電電荷量が不足している場合に生じる。その一因として、トナーの帯電電荷はカートリッジ内部でトナーを攪拌しトナー同士の摺擦により付与されるが、トナー量が多く、攪拌力が発揮しにくいカートリッジ状態では、トナー同士の摺擦が少ないために生じる場合がある。また、トナー自体の特性の違いから立ち上がりを生じる場合などもある。
本実施例3では、前記実施例1で示したトナー容器43に対し、当初のトナー収納量を600gから1150gに増量し、攪拌構成に対するトナーの重量負荷を増加させて通紙試験を試みた。なお、今回のトナー収納量1150gは次の事項により設定した。すなわち、実施例1で行った通紙試験の結果、白抜けが生じるまでに使用されるトナー量が550gであった。このことから、白抜け時にトナー容器内に残るトナー量が50gとし、実使用量の550gの2倍に残トナー量を加えた1150gとして行った。
その結果、図15A・図15Bに示すように、黒部濃度とライン幅推移においてトナー収納量が600gの場合にはない立ち上がりを見せている。さらに、通紙可能枚数も、黒部濃度やライン幅などの画像品質が劣化しているため、22000枚印刷することができた。図15A・図15Bは、図5に示す通常の現像バイアス条件による実験結果である。
黒部濃度の立ち上がりを改善するための、現像バイアスの時間平均電圧VAVEの値を変化させた場合、現像バイアスの時間平均電圧VAVEを次ぎのように変化させる。すなわち、図16A・図16Bに示す結果より、0枚から6000枚までの間、現像バイアスの時間平均電圧VAVEを通常−400Vの条件(図5に示す通常のバイアス)から、−500Vとする。この場合、現像直流成分のVD−DCのみを変更させて、VAVEを変化させる。その結果、図16Bに示すように、黒部濃度の推移は1.4以上を確保することが可能となった。
しかしながら、ライン幅推移については、0枚から2000枚までの区間で、170μmを下回ってしまう結果となった。そこで、上記条件に加え、0枚から2000枚の期間は、現像バイアスの時間平均電圧VAVEを−600Vとする。その結果、図17Aに示すよう、ライン幅推移は立ち上がりは残るものの、170μmを確保することができた。しかしながら、黒部濃度推移は非常に高水準となり、それに伴って通紙枚数も18000枚と非常に消費量が多い結果となってしまった。
そこで、図16A・図16Bの結果より、0枚から6000枚の現像バイアスの時間平均電圧VAVEが−500Vの設定の中で、特にライン幅水準の悪い0枚から1000枚までの範囲で、次のようなバイアスを採用する。すなわち、時間平均電圧VAVEを変化させることなく、ライン画像を選択的に現像性を向上させるVMAXの値を大きくするバイアスを採用する。
具体的に、図18に示す現像バイアスを0枚から1000枚の区間採用する。これは、実施例1に示すVAVEを黒部濃度を補正するために変更した−500Vの条件に加え、次ぎの処置をした現像バイアスである。すなわち、VMAXの現像効率を200V大きくするための、直流成分VD−DCとともに、VAVEが−500V一定であるようVMAXの印加時間の最適化を行った現像バイアスである。
その結果、図19A・19Bに示すように、黒部濃度推移とともに、ライン幅推移ともに満足のゆく結果を得るとともに、白抜けまでの通紙可能枚数についても20000枚を印刷可能となった。
なお、図16A・図16B、図17A・図17B、図19A・図19Bにおいて、×−×のクラフは図15に示すグラフの重ねである。
本実施例において、現像バイアス切り換えから印刷動作までの制御フローの説明を図20を用いて行う。
ホストコンピュータ100から制御部101の本体CPU103へ印刷開始信号が送信される(1801)。
印刷開始信号と伴に画像情報(元画像)107が送られ、画像情報が本体CPU103で受け取られ、全ての画像情報が得られたかどうか判別する(1802)。
全ての画像情報が得られれば、カートリッジの記憶装置111から制御部101へ印刷枚数履歴が取得される(1803)。
印刷枚数履歴情報と、閾値1を比較し(1804)、比較の結果それぞれに適した現像バイアス条件を取得する。
たとえば、閾値1では、黒部濃度に対する現像バイアスの最適条件の選択が行われる(1811)。本実施例におけるカートリッジBの使用初期段階である0枚から6000枚の間であると判断された場合、VD−DCを変化させ、現像コントラストが大きい現像バイアス条件が選択される(1809)。それ以外である場合は、現像バイアス条件が選択される(1810)。また、通紙枚数が6000枚以上である場合、別の現像バイアス条件2が選択される(1810)。
さらに、閾値1にて通紙枚数が少ない状態である場合(1809)、第二の閾値2とを比較する(1812)。閾値2では、低印字画像パターンに対する最適条件の選択が行われる(1811)。比較の結果、現像バイアス条件(1809)で得られた条件を補正する。たとえば、本実施例にあるようにカートリッジの極使用初期段階である0枚から1000枚であると判断された場合、VMAXが大きい現像バイアス条件となるよう現像VD−DCを変化する(1813)。このとき、時間平均電圧VAVEが変化してしまうため、時間平均電圧VAVEが変化せぬようVMAXの印加時間T1を調節する(1814)。
現像バイアス条件決定(1805)の後、画像形成動作が行われ(1806)、全ての画像情報を印刷した後、終了処理がなされる(1807)。
上記のように、使用履歴に応じて、プロセス条件を選択し、そのプロセス条件に応じた現像バイアス出力を選択する。ここで、閾値毎に選択される条件をプロセス条件と言う。このプロセス条件には、現像バイアス条件だけでなく、帯電バイアスや転写バイアスなどのその他様々なバイアスなどの条件が含まれる。そのプロセス条件のなかで、VD−DCやDutyなどの設定値をプロセス条件に応じた現像バイアス出力としている。
以上説明したように、トナーの収納量の違いなどによるトナーの帯電電荷量不安定で、ライン幅とともに黒部濃度の現像性能が低下しているカートリッジにおいて、黒部濃度を確保するための時間平均電圧VAVEの現像効率をVD−DCを用いて大きくする。さらに、低印字画像パターンの現像性を選択的に向上させる為の第一のピーク電圧の最大値VMAXの現像効率を大きくする方向に現像バイアスのVD−DC、または、VD−PPを変化させる。これとともに、黒部濃度を確保するための時間平均電圧VAVEの現像効率を大きくした状態を変化せぬよう現像バイアスの1周期における第一のピーク電圧の時間T1の比率を調節する。これにより、トナー消費量に影響を及ぼすことなく、画質の向上を行うことを可能とした。
本実施例で説明した内容は、一例であって、これに限られるものではない。例えば、黒部濃度を確保するための時間平均電圧VAVEやVMAXの切り換えタイミングを、
カートリッジBの積算印刷枚数(使用履歴)で説明を行ったが、これはカートリッジBの使用状態、または、トナーの攪拌状態が時系列的にわかる指標であればよい。たとえば、感光体1や現像ローラ41の積算回転数や積算回転時間、現像バイアスや帯電バイアスの積算印加時間などの指標、及びそれらを組み合わせて使うことも有効である。
さらに、バイアス値に関しても実施例に限られるものではなく、本体構成やカートリッジ構成に対し、最適なバイアス条件は異なるため、最適なバイアス条件に対し、本実施例の説明にある補正手段を用いることで同様な効果が得られる。
加えて、本実施例でのVMAXの変更の手段として、実施例1で示した現像バイアスに重畳されているVD−DCを変化させることで実現しているが、実施例2で示すVD−PPを変化させる手段でもその効果は変わらない。
上述した実施例1〜3の画像形成装置は、現像手段である現像装置4をプロセスカートリッジBに包含させているが、現像装置4を単独で現像カートリッジ化して装置本体に装着可能にした画像形成装置にすることもできる。この現像カートリッジの使用履歴(現像手段の使用履歴に関する情報)を該現像カートリッジに付属させた記憶装置あるいは装置本体側の記憶装置124に記憶させる。また、現像装置4は画像形成装置に作り付けとし、トナー容器43中のトナーTが消費されたら、トナーカートリッジにより新規トナーを投入補給するものであってもよい。この場合は、新規トナーの投入補給の都度、現像装置4の使用履歴を更新するシステムにする。
画像形成装置は、像担持体として静電記録誘電体を用いた静電記録画像形成装置であってもよい。
A・・プリンタ本体、B・・プロセスカートリッジ、1・・感光体(像担持体)、2・・帯電ローラ、3・・レーザービームスキャナー、4・・現像装置、41・・現像ローラ(現像剤担持体)、T・・現像剤(トナー)、5・・転写ローラ、6・・クリーニング装置、24・・定着装置、S1・・帯電バイアス印加用高圧電源、S2・・現像バイアス印加用高圧電源、100・・ホストコンピュータ、101・・画像形成装置制御部、103・・本体CPU、111・・カートリッジ側記憶装置、124・・本体側記憶装置