JP2007120112A - 鉄筋コンクリート造外断熱建物に於ける片持ち支持バルコニー、及び片持ちバルコニーの構築方法 - Google Patents

鉄筋コンクリート造外断熱建物に於ける片持ち支持バルコニー、及び片持ちバルコニーの構築方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 通気性と断熱性を備えた複合パネルでコンクリート躯体外周を被覆した鉄筋コンクリート外断熱建物に於いて、複合パネルを損傷することなく、コンクリート壁から片持ち支持の鉄筋コンクリートバルコニーを突設形成する。

【解決手段】 高さ方向が短尺の複合パネル20に、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとを、中間傾斜部1Sを備えたZトラス筋1Mで一体化したZ筋1を貫通装着し、バルコニーB下方の高さ方向が長尺の複合パネル2の上端に複合パネル20を載置接続し、且つ、複合パネル20から突出した一方をコンクリート躯体CF内に、他方をバルコニー床スラブSB内にコンクリート打設で一体化し、Z筋1のZトラス筋1Mによって、複合パネル20の断熱層2B部を剛構造化して、バルコニー床スラブSBの基端Bbを複合パネル20の外面の成形セメント板2Aの表面と一体化状態で固定する。

【選択図】 図1

Description

本発明は、鉄筋コンクリート造外断熱建物のバルコニー、庇、外廊下など、建物の外壁より突出する片持ち床スラブ(以下、本明細書中では、バルコニーと総称する)、及びその構築方法であり、より詳しくは、鉄筋コンクリート外断熱建物の外壁面に、熱橋を最小限に抑制して付設したバルコニーと、その構築方法に関するものであり、建築の技術分野に属するものである。
鉄筋コンクリート造の外断熱建物は、コンクリート躯体の外側を断熱層で被覆するため、太陽日射のコンクリート躯体への熱応力が微少となってコンクリート躯体のひび割れを抑制すること、コンクリート躯体が空気に接触しないためにコンクリートの中性化が抑制出来、鉄筋棒鋼の腐蝕が防止出来て建物の耐久性が向上すること、更には、建物内の温度環境が維持出来ると共に、結露が少なくて、カビ、ダニの発生が抑制出来て健康面でも優れているため、省エネルギーの高性能建物として評価されている。
しかし、建物外壁より突出するバルコニー、外廊下などのコンクリート床スラブがコンクリート躯体への熱橋(ヒートブリッジ)となり易く、従って、外部の熱環境のバルコニーを介した建物内部への熱伝達(熱橋)を抑制する必要があり、バルコニー床スラブからコンクリート躯体内部への熱橋抑制手段としては、本出願人が特願2002−272879号として提案し、特開2004−108031号として開示された、図10、図11に示す従来例がある。
即ち、従来例は、図10(B)に示す如く、バルコニー先端中央に補助壁を配置し、バルコニー床スラブの長辺基端及び両側端とコンクリート躯体の耐力壁とを支持棒群で支持し、バルコニー長辺先端中央を補助壁で支持するものである。
そして、各支持棒群による支持は、図10(A)、図11(A)に示す如く、セメント板と断熱層とから成る複合パネルで被覆した耐力壁に於いて、バルコニー床スラブを突設する部位では、バルコニー床スラブの若干の撓みにより複合パネルのセメント板を割るため、セメント板のみを切除してバルコニー床スラブの基端をコンクリート打設で断熱層と一体化し、支持棒群は、基端側を居住部床スラブ内で、先端側をバルコニー床スラブ内で打設コンクリートと一体化したものであり、バルコニー床スラブをコンクリート躯体、即ち居住部床スラブと断熱層で熱的に遮断したものである。
また、図11に示す如く、支持棒は、1階分の高さを有する複合パネルの断熱層に挿入用孔を穿設しておき、複合パネルを、コンクリート外壁の外側型枠としてコンクリート壁型枠組みした後、型枠上の作業として、バルコニー側の断熱層挿入用孔部に、支持棒挿入用孔を穿設する円板を接着固定して、断熱層及び円板を貫通して支持棒を取付けし、断熱層と支持棒との隙間に耐火被覆材を充填するもので、円板が耐火被覆材の突出を阻止し、居住部側に於いては、断熱層に布テープを張着して耐火被覆材の突出を阻止するものである。
特開2004−108031号公報
従来例(図10、図11)のバルコニーは、バルコニー床スラブとコンクリート躯体(居住部床スラブ)とが断熱層で熱的に完全遮断され、熱橋作用が極端に低減化された画期的なバルコニーではあるが、バルコニー床スラブの長辺基端及び両側端からの耐力壁への支持棒群の配置、及び長辺先端中央への補助壁の配置が必要であり、外壁から突出する片持ちスラブ形式のバルコニー床スラブへの適用は、構造に起因する強度上から不適当である。
また、バルコニー床スラブを支持する支持棒群の配置も、1階分の高さの複合パネルを立設して型枠組みした後に、型枠上の作業として、複合パネルに手作業で支持棒群を定位置に貫通し、各支持棒と複合パネル断熱層との隙間に手作業で耐火被覆材を充填するため、複雑、且つ、心労の伴う困難な作業であった。
また、バルコニー床スラブの外壁への当接部位では、バルコニーの耐用中の撓みに対処するために複合パネルのセメント板を切除するため、外壁の複合パネルは、セメント板による通気構造が、各階のバルコニー床スラブで遮断され、従って、外断熱建物の外壁の通気構造は、各階のバルコニー床スラブ間毎での完結形式とする必要があり、各階のバルコニー床スラブ部位毎での、バルコニー床スラブ上端部での空気流入孔付きの水切金具の配置、及びバルコニー床スラブ下端部での空気流出構造の施工が必要となり、施工が煩雑である。
しかも、外壁の下端から上端への通気構造は、各階のバルコニー間での寸断形態となるため、風力換気は奏するものの、温度差換気(ドラフト換気)は、外壁の最下端から最上端まで連通した構造よりも低下したものであった。
本発明は、従来例のこれら問題点を解決、又は改善するものであって、従来例同様の画期的な熱橋遮断機能を奏しながら、片持ち床スラブ形式にも適用出来、且つ、外壁の通気構造も、最下端から最上端までの連通形態を維持した状態に施工出来るバルコニー構造を提供するものである。
本発明は、例えば図1に示す如く、成形セメント板2Aと断熱層2Bとから成る複合パネル2,20で外面を熱的に被覆したコンクリート躯体CFの外壁Wに、鉄筋コンクリート造のバルコニー床スラブSBを突出付設して支持用のZ筋1群のみによって片持ちスラブ形式で支持したバルコニーBであって、複合パネル2,20は、成形セメント板2Aの内面に通気用の条溝G,G´群を備えて断熱層2Bと層着した通気性断熱パネルであり、且つ、複合パネル20は、Z筋1を貫通装着した上下方向短寸パネルであり、Z筋1は、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとを、水平上辺部1U´、中間傾斜部1S及び水平下辺部1D´から成るZトラス筋1Mで固着一体化したものであり、バルコニーBは、複合パネル20を貫通して基端側をコンクリート躯体CF内に一体化固着し、先端側をバルコニー床スラブSB内に一体化固着したZ筋1群のみにより、且つ、バルコニー床スラブSBの基端Bbを複合パネル20の成形セメント板2A表面と一体化状態で、固定支持した片持ち支持バルコニーである。
尚、「バルコニー」は、バルコニー、ベランダ、外廊下等、建物外壁から突出した床を備えたものの総称である。
この場合、複合パネル(Z筋パネル)20は、バルコニー床スラブSBの基端Bbを規定するパネルであって、典型的には、複合パネル2を、バルコニー床スラブSBの厚さと近似の寸法に切断した、複合パネル2と断面構造が同一で、高さ方向短尺のパネルにZ筋1を貫通配置したものであり、バルコニーBの下方の複合パネル2の上端に接続配置するものであって、複合パネル2+複合パネル20の高さが一般外壁部の複合パネル1枚の高さである。
また、通気性と断熱性を備えた各複合パネル2と複合パネル20との上下接続連結は、例えば、図8に示す、空気連通用の十字ジョイント9で実施すれば良い。
また、バルコニー床スラブSBを片持ち形態で支持するZ筋1は、Z上端筋1Uが曲げモーメントに起因する引張り力に対抗し、Z下端筋1Dが曲げモーメントに起因する圧縮力に対抗するものであり、Zトラス筋1Mは、Z上端筋1UとZ下端筋1D間に曲げモーメントの応力中心距離を付与し、且つ、居住部床スラブSAとバルコニー床スラブSB間に存在する複合パネル20のパネル幅T1(標準:100mm)内で剛構造を提供するものであるから、Zトラス筋1Mは、実施形態(図2)の如く、傾斜部1Sがバルコニー側のZ上端筋1Uから居住部側のZ下端筋1Dに斜行する引張り力対抗形態としても、或いは、傾斜部1Sがバルコニー側のZ下端筋1Dから居住部側のZ上端筋1Uに斜行する圧縮応力対抗形態としても、バルコニー床スラブSBの曲げモーメント対抗の機能を奏する。
また、Z筋1を構成する各Z上端筋1U、Z下端筋1D、Zトラス筋1Mの長さ、太さは、Z筋1の配置間隔、バルコニー床スラブ重量等からの構造計算で決定すれば良く、Z筋1の各構成筋1U,1D,1Mは、コンクリート付着抵抗の面から、共に異形棒鋼を採用すれば良い。
例えば、図5に示すように、複合パネル20に規格品(AW、標準:480mm)のセメント板2Aを採用し、Z筋1の配置位置が一定であれば、セメント板2A中央の広幅a4(標準:40mm)部、Z筋1の配置間隔(セメント板の幅(AW480mm)+縦目地(dy)の幅10mm=490mm)は決定する。
従って、バルコニー床スラブ重量等、即ち、バルコニーBの奥行寸法LB、及び要求撓の性能によって、一般的(部分的な負荷がバルコニー床スラブに掛らない場合等)には、Z筋1を構成する各Z上端筋1U、Z下端筋1D、Zトラス筋1Mの長さ、太さは決定される。
バルコニーBの固定荷重及び積載荷重の算定は、日本国内同一条件であることから、Z筋1と複合パネル2とを構成する複合パネル20は、バルコニーの奥行寸法LB(標準:1500mm長)によって、Z筋1を構成する各Z上端筋1U、Z下端筋1D、Zトラス筋1Mの長さ、太さを適宜採用するので、複合パネル20の種類は少なくてすみ、予め工場で造り置きが出来る。
また、Z筋1の複合パネル20に対する貫通形態は、複合パネル20がZ筋1に構造力学的に何ら寄与しないため、複合パネル20の通気機能及び断熱機能への支障に配慮して実施すれば良く、成形セメント板2Aの通気用条溝G,G´の位置を外してZ筋を貫通し、断熱層2BにはZ筋1貫通後にZ筋1の周囲を断熱補修すれば良い。
従って、本発明にあっては、バルコニー床スラブSB構築用のZ筋パネル(複合パネル)20は、高さ方向が短寸の小型パネルであって、予め、単体として工場生産出来るため、Z筋1を備えた均質な複合パネル20の準備、保管、供給が合理的に遂行出来、現場での型枠上の煩雑、且つ、困難な作業が合理化出来、信頼性のあるバルコニーBの構築が合理化出来る。
そして、Z筋1を適切に選定実施することにより、居住部床スラブSAとバルコニー床スラブSB間に存在する複合パネル20には、Zトラス筋1Mによって、あたかもコンクリートが配置された如き剛性が付与出来る。
しかも、バルコニー床スラブSBは、外壁Wの外側の複合パネル2とZ筋1を備えた複合パネル20とが、共に通気用条溝G,G´群を備えているため、複合パネル2及び複合パネル20の通気、断熱機能に何ら損傷を与えることなく、片持ち支持形態で強固に付設した形態となり、従来例の如き、複合パネルの各階のバルコニー毎での通気用条溝Gの遮断が無いため、バルコニーの上方と下方での個々の通気構造施工が不要となり、施工が合理化出来るばかりでなく、通気構造も、外壁の最下端の水切りから最上端の笠木までの連通形態と出来、有効なドラフト換気(温度差換気)を奏する外壁が得られ、優れた通気性を備えた外断熱の外壁に、片持ち床スラブ形式のバルコニーBが、通気性能に支障を与えることなく、合理的に実施出来る。
そして、バルコニー床スラブSBは、Z筋1の強大な曲げモーメント抗力のため、バルコニー床スラブ基端Bbの応力変位は、実質上無視出来る状態(標準:0.3mm以下)に片持ち支持出来、鉄筋コンクリートのバルコニー床スラブSBは、複合パネル20の成形セメント板2Aに一体化付設形態と出来るため、機能美に富む、優れた外観となる。
そのため、通気性の複合パネル2及び複合パネル20で、下端の水切りから上端の笠木まで通気性外断熱構造を備え、且つ、外壁Wの外側の適所にバルコニーBを備えた、高品質で、外観の優れた鉄筋コンクリート外断熱建物の合理的構築が可能となる。
また、本発明のバルコニーにあっては、Z筋1が、複合パネル20の断熱層2Bでは、上下方向に長孔形態の挿通用孔H3を、成形セメント板2Aでは、Z筋挿通用の円孔H1,H1´,H2を介して複合パネル2を貫通するのが好ましい。
複合パネル2及び複合パネル20にあって、成形セメント板2Aは、複合パネル2,20自体の強度及び通気性を保証するものであり、断熱層2Bはコンクリート壁Wを外断熱被覆するものであるため、複合パネル20にあって、Z筋1を貫通する挿通用孔H1,H1´,H2,H3は、機能面からは、共に小さい程好ましく、断熱層2BはZ筋1のZトラス筋1Mを配置するため、挿通用孔H3は、上下方向の長孔とすれば良い。
また、複合パネル2及び複合パネル20は、図5(B)に示す如く、成形セメント板2Aは中央に広幅a4(標準:40mm)の肉厚部2Dを有しているため、複合パネル20の1枚当りに1本のZ筋1を配置するようにZ筋の径を選定すれば、Z筋挿通用孔H1,H1´,H2は、成形セメント板2Aの中央の広幅の肉厚部2Dに穿孔すれば、強度損失を最小に抑えて実施出来、断熱層2Bの挿通用孔H3は、上下方向長孔であるためZ筋1の貫通作業が容易であり、Z筋1挿通後に、別途断熱材を充填補修すれば良い。
そして、図4(A),(C)の如く、成形セメント板2Aの、上側には挿通用孔H1とH1´を上下連通形態で、下側には挿通用孔H2を配置しておけば、図9(A)の如く、工場製作時に、断熱層2B側からZ筋1を複合パネル20に貫通出来、挿通用孔H1にはZ上端筋1Uが、挿通用孔H1´にはZトラス筋1Mの水平上辺部1U´が、挿通用孔H2にはZ下端筋1Dが挿通出来、Z筋1の貫通後は、各挿通用孔H1,H1´,H2は共に挿通鉄筋で略密閉形態となるため、断熱層2Bの長孔形態の挿通用孔H3に対する耐火断熱材のカオウール(イソライト工業(株)、商品名)の充填補修や、現場発泡ウレタンの充填補修施工時には、成形セメント板2Aがストッパーとしての型機能を奏し、Z筋1の貫通後の複合パネル20の補修作業が容易となる。
また、成形セメント板2AのZ筋挿通用の各円孔H1,H1´,H2径が、各挿通筋1U,1M,1Dの最大径より若干大であるのが好ましい。
この場合、各挿通用の円孔H1,H1´,H2の径は、各挿通筋径より略3mm大とすれば良く、断熱層2Bの挿通用孔H3に対する断熱機能修復施工で、現場発泡ウレタン充填すれば、各円孔H1,H1´,H2と各挿通筋1U,1M,1Dとの隙間にもウレタンフォームの流入充填が生じ、バルコニー床スラブSBは、基端部BbでのZ筋1の変位量(撓み量)が0.3mm以下に設定施工するが、地震時の成形セメント板2Aの揺れや、Z筋1の動きでも、該各円孔の隙間に充填介在するウレタンフォームが、成形セメント板2Aにクッション材としての機能を奏し、成形セメント板2Aのひび割れ損傷が抑制出来る。
また、本発明にあって、Z筋1は、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとを固着一体化したZトラス筋1Mの中間傾斜部1Sが、Z上下端筋1U,1Dに対して、実質上45°傾斜であるのが好ましい。
本発明にあっては、バルコニー床スラブSBに働く曲げ応力により、Z上端筋1Uには引張り応力が、Z下端筋1Dには圧縮応力が作用し、曲げ応力と圧縮応力の界面の中立軸に生ずる剪断応力は理論上45°となるため、45°傾斜配置のZトラス筋1Mが剪断応力に有効に対抗出来、Z筋1の合理的な選定実施が可能となる。
また、Z筋1のZトラス筋中間傾斜部1Sを、複合パネル20の断熱層2Bの幅T3の全幅に亘って傾斜配置し、断熱層2Bに剛構造機能を付与するのが好ましい。
この場合、複合パネル20の断熱層幅T3(標準:75mm)全幅に亘ってZトラス筋1Mによるトラス構造が導入出来、それ自体は強度の小さな断熱層2Bが、力学上コンクリート体に置換した剛構造となるため、バルコニー床スラブSBは、力学上、コンクリート壁Wとの間の断熱層2B域が剛構造域の構造となり、Zトラス筋1MによるZ上端筋1UとZ下端筋1D間への十分な曲げモーメント中心距離の付与と相俟って、バルコニー床スラブ基端Bbの曲げモーメントによる撓み量(標準:0.3mm以下)が極端に低減出来、バルコニー床スラブSBの強固な片持ち支持が可能となる。
また、Z筋1は、Z上端筋1UとZトラス筋1Mとの固着部ZUがバルコニー床スラブSB内で、Z下端筋1DとZトラス筋1Mとの固着部ZDがコンクリート躯体CF内で、打設コンクリートと一体化しているのが好ましい。
この場合は、図2(B)に示す如く、Zトラス筋1Mの傾斜部1Sは、バルコニー床スラブ側から居住部床スラブ側へと傾斜下降する形態となり、バルコニー床スラブSBの降下曲げ応力でバルコニー床スラブSBの上下厚さTBの上半部に生ずる引張り力には、Z上端筋1Uの抗引張力とZトラス筋1Mの抗引張力が協同作用し、Z筋1がバルコニー床スラブSBの降下変位を合理的に抑制出来る。
また、Z筋1は、図9(B)に示す如く、複合パネル20の断熱層2B内では耐火被覆するのが好ましい。
この場合、耐火被覆材2Eとしては、耐火性、断熱性に富み、鋏で切断出来る、例えばカオウール(イソライト工業(株)、商品名)やフイブロック(積水化学工業(株)、商品名)等でZ筋1を被覆し、現場発泡のウレタンを注入充填すれば良い。
そして、Z筋1は、バルコニー床スラブSBの降下撓みに対抗する強度を常時負担しているが、断熱層2B部位では耐火被覆材2Eによって保護されているため、火災時の断熱層2Bの燃焼に対しても、Z筋1の加熱劣下による支持力低下が阻止出来、バルコニーBの耐火性が保証出来ると共に、断熱層2Bの挿通用孔H3の断熱機能修復も出来る。
また、Z筋1は、図9(A)に示す如く、複合パネル2内に位置する中間部には耐火塗料1Aを塗布し、打設コンクリート内に位置する両側部には錆止め塗料1Bを施すのが好ましい。
この場合、耐火塗料1Aとしては、SK耐火コート上塗材((株)エスケー化研、商品名)を用いれば良く、錆止め塗料1Bとしては、防食、断熱性のエポキシ樹脂塗料である耐火コート下塗材((株)エスケー化研、商品名)を用いれば良い。
従って、断熱層2BのZ筋挿通用孔H3を、耐火被覆材、又は現場発泡ウレタンの充填で断熱機能修復すれば、火災時の断熱層2Bの燃焼の際にも、Z筋1の火災劣下が好適に阻止出来、Z筋1のコンクリート内での腐蝕も抑制出来、高耐久性の外断熱鉄筋コンクリート建物にあって、バルコニーBの耐久性も向上する。
また、片持ち支持バルコニーBの構築方法の発明は、図5に示す如く、内面に通気用の条溝G,G´群を縦設した成形セメント板2Aの内面側に断熱層2Bを層着した複合パネル2を、図6に示す如く、成形セメント板2Aを外面にして外壁外側型枠F0として立設して外壁内側型枠F1と共に外壁型枠FWを構成し、外壁型枠FW上の複合パネル2の内側には居住部床スラブ型枠FAを、複合パネル2の外側にはバルコニー床スラブ型枠FBを構成し、複合パネル2と同一断面形態で、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとを、水平上辺部1U´、中間傾斜部1S及び水平下辺部1D´から成るZトラス筋1Mで固着一体化したZ筋1を貫通装着した複合パネル20を、外壁型枠FWの複合パネル2上に、空気連通用の十字ジョイント9を介して載置接続し、複合パネル20から前後に突出したZ筋1を、それぞれ、バルコニー床スラブ型枠FB内、及び居住部床スラブ型枠FA内に配置し、各型枠FW,FA,FBにコンクリート打設するものである。
この場合、外壁型枠FWの複合パネル2上に載置接続するZ筋1を備えた複合パネル(Z筋パネル)20は、予め工場生産品として用意されるものであるが、バルコニー床スラブSBの上部が外壁Wの場合は、即ち、図2(A),(B)に示す如く、Z筋パネル20が上下の複合パネル2で挟着使用する場合にあっては、高さが短尺のZ筋パネル20の上方に、高さが長尺の複合パネル2が嵌合載置されるため、Z筋パネル20は、図4(A),(B)に示す如く、上端面では断熱層2Bが成形セメント板2Aより突出(d1)したタイプ(成形セメント板2Aの標準高さAh:169mm)を用い、上方の複合パネル2と相欠け接合させる。
また、図3(A),(B)の如く、Z筋パネル(複合パネル)20の上方に出入口戸7を配置する場合、即ち、バルコニー床スラブSBの上部に外壁Wの無い場合には、Z筋パネル(複合パネル)20は、図4(C),(D)の如く、上端面では、断熱層2Bと成形セメント板2Aとが面一のタイプ(成形セメント板2Aの標準高さBh:242mm)を用いる。
即ち、出入口戸7とコンクリート外壁Wとを備えたバルコニーBの構築に際しては、図4(A),(B)の相欠け接続用のZ筋パネル20と、図4(C),(D)の出入口戸7載置用のZ筋パネル20との2種類を用意しておく。
また、図4(A),(B)のタイプのZ筋パネル20も、図4(C),(D)のZ筋パネル20も、共に、複合パネル2と同一断面形態で、パネル幅AW(成形セメント板幅)も複合パネル2と同一(標準:480mm)であり、パネル20の高さAh,Bhは、上下接続形態に応じて決定すれば良い。
従って、本発明にあっては、型枠組みが、図6に示す如く、長尺の複合パネル2で外壁の外側型枠F0を立設した後、図7に示す如く、短尺のZ筋パネル20を複合パネル2上に載置接続する仕方となるため、複合パネル(Z筋パネル)20の配置は、バルコニーB及び居住部Aへの配筋時に施工出来、単体としてのZ筋パネル20が小型であるため取扱い易いことと相俟って、型枠構築の作業性が良い。
しかも、工場製造品としての複合パネル20を型枠組み時に外壁型枠FWの複合パネル2上に載置するだけであるので、従来例(図10,11)での、型枠上での配筋作業や、耐火断熱材の充填被覆作業等が、画期的に合理化出来る。
そして、バルコニー床スラブSBの型枠組み、配筋、コンクリート打設の各作業が、建物コンクリート躯体(コンクリート壁W及び居住部床スラブSA)側の構築作業と同時平行的に実施出来、従来周知の、内断熱で、居住部床スラブとバルコニー床スラブとが連続一体となった、バルコニーから床スラブへの熱橋作用の大なバルコニーと略同等の作業性で施工実施出来る。
即ち、得られるバルコニーは、外断熱建物に熱橋を生じない形態の、画期的な片持ち支持バルコニーでありながら、従来例(図10,11)が提案される以前の、従来から慣用の、内断熱建物への熱橋作用を生ずる形態でのバルコニーの構築と、同等の作業性で構築出来る。
また、複合パネル20のZ筋1は、従来例(図10,11)の如き補強筋が不要であるため、バルコニー床スラブSB内の配筋も容易であり、バルコニー床スラブSB自体が、Z上端筋1Uと、Z下端筋1Dとを、Zトラス筋1Mで十分な応力中心距離を保って一体化したZ筋1によって強固な支持機能を奏するため、片持ち床スラブ形式でありながら、従来例(図10,11)の如き支持用の補助壁も不要となり、本発明は、美観上優れ、設計の自由度も大なバルコニーBの提供を可能とする。
また、Z筋1を備えた複合パネル20は、工場生産品として、Z筋1を貫通し、貫通部の耐火被覆材2E等での修復により、通気性、断熱性を損なうことなく均質に実施出来、バルコニーBの突出形成も、外壁Wの被覆材としての、同一断面形状を備えた複合パネル2と複合パネル20との断熱機能及び通気機能を損なうことなく実施出来る。
従って、バルコニーBは、従来例の如く、バルコニーの上方及び下方に、バルコニーの突設によって、複合パネルの一部を欠損したために必要であった、手間のかかる空気の流出入設備の施工も不要となって、構築が合理化出来、建物の下端から上端までのドラフト換気を奏する外壁に突出したバルコニーBとなる。
また、Z筋1は、図9(A)の如く、予め、複合パネル2内に位置する部分には耐火塗料1Aを塗布し、打設コンクリート内に位置する部分には錆止め塗料1Bを施して複合パネル20に貫通配置し、複合パネル断熱層2Bの長孔形態の挿通用孔H3には断熱性に富む耐火被覆材2Eを充填して、複合パネル20を形成するのが好ましい。
この場合、Z筋1の全長に亘って、防食性、付着性、及び断熱性に優れたエポキシ樹脂塗料((株)エスケー化研、商品名:耐火コート下塗材)を2回塗布し、Z筋1の中央部の複合パネル2内に位置する部分には、さらに耐火塗料((株)エスケー化研、商品名:SK耐火コート)を塗布すれば、Z筋1への錆止め塗料1B及び耐火塗料1Aの処理となる。
また、挿通用孔H3へ充填する耐火被覆材としては、耐火性、断熱性に富み、鋏で切断出来るフイブロック(積水化学工業(株)、商品名)やカオウール(イソライト工業(株)、商品名)を用いれば良く、現場発泡ウレタン充填でも良い。
そして、耐火被覆材2Eの充填施工は、居住部床スラブ型枠FA側から成形セメント板2Aをストッパーとして実施すれば良い。
従って、Z筋1は、複合パネル20内では、耐火被覆されているため、例え、火災で断熱層2Bが燃焼してもZ筋1の加熱劣下が抑制出来、また、コンクリート内では、防食性、付着性及び断熱性に富む塗料1Bのため、塗料1Bの断熱性により、バルコニー床スラブSBからコンクリート躯体CF内への唯一の熱橋作用部材である、Z筋1へのコンクリートからの熱伝達も抑制出来、且つ、塗料1Bの防食性によって、Z筋1の機能の耐用劣下も抑制出来、バルコニーBは、熱橋作用が極端に抑制出来た、高耐久性バルコニーとなる。
また、Z筋1は、バルコニー床スラブ型枠FB内及び居住部床スラブ型枠FA内では、スペーサー12A,12Bで位置保持し、且つ、バルコニー床スラブ型枠FB内では、Z上端筋1Uは長辺方向上端筋11Aに、Z下端筋1Dは長辺方向下端筋11Bに針金で結束するのが好ましい。
この場合、スペーサーとしては、Z上端筋1U用スペーサー12Aには、パテントスペーサー(丸井産業(株)、商品名)の型式35を、Z下端筋1D用スペーサー12Bにはパテントスペーサー(商品名)の型式130を採用すれば良い。
従って、予め用意した複合パネル20を外壁型枠FWの複合パネル2上に十字ジョイント9で載置連結した際に、Z筋1の姿勢が若干変位していても、型枠FB,FA内への配置時の姿勢の修正が容易であり、片持ちスラブで、機能上重要な引張り鉄筋としてのZ上端筋1Uが、コンクリートの設計被り厚を保持する位置に確保出来、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとの設計間隔を保った姿勢保持が出来、Z筋1が適正姿勢の下に、バルコニーBの長辺方向の上端筋11A及び下端筋11Bと一体化出来るため、バルコニーBの配筋組立に於ける結束不良、型枠作業、及びコンクリート打設作業に於けるZ筋及び引張り鉄筋の踏みつぶしや配筋の定着不良等、に起因する、耐用中でのバルコニーBの落下事故が阻止出来る。
また、複合パネル2と複合パネル20との上下連結は、図8(B)に示す如く、両側に水平当接板9Mを突設し、上下に嵌入用垂直片9F,9F´を備え、且つ、上下の嵌入用垂直片9F,9F´の内側には空気連通用の切開部CAを備えた十字ジョイント9を、図2(B)、図3(B)の如く、成形セメント板2Aの上下端の条溝Gへの嵌入で実施し、且つ、上下の成形セメント板2Aの板状部2C間には、ゴム板15を介在させて実施するのが好ましい。
この場合、下方の複合パネル2と上方の複合パネル(Z筋パネル)20との当接連結部では、図2(B)、図3(B)に示す如く、水平当接板9Mが成形セメント板2Aの上端内側の条溝G部間に、ゴム板15が成形セメント板2Aの上端外側の板状部2C間に、それぞれ上下複合パネル2,20間での挟着形態となるため、ゴム板15は、成形セメント板2Aの板状部2Cの幅(標準:12mm)と同幅寸法のブチルゴムで、厚さは水平当接板9Mの厚さ(標準:3mm)と同厚か、若干厚くすれば良く、また、十字ジョイント9の水平当接板9Mの、上下条溝G間からの側方突出長X3は、両側の通気用条溝G´に干渉しない寸法(標準:20mm)とすれば良い。
従って、上方複合パネル20の下端と下方複合パネル2の上端とを本発明の連結形態とすることにより、十字ジョイント9が、上側嵌入用垂直片9F及び下側嵌入用垂直片9F´の各内部を上下に貫通する切開部CAによって、十字ジョイント9を嵌入した通気用条溝Gでも、上下空気貫流を保証し、ゴム板15が地震時の成形セメント板2Aの動きに追従対応出来る。
そして、複合パネル2の上下連結を水平当接板9Mの薄い厚さ(標準:3mm)で達成することにより、通常の目地幅(標準:20mm)の如き段部の発生が抑制出来、図1に示す如く、バルコニーBの基端上面の立上り部の防水層3´の処理が簡単、且つ平滑に実施出来る。
本発明の片持ち支持バルコニーBは、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとを、曲げモーメントの応力中心距離を十分に保った形態に、Zトラス筋1Mで一体化したZ筋1でコンクリート躯体CFに片持ち支持するため、強固な支持が可能となり、バルコニーBの先端側での補助壁、柱等の支持構造物が不要となり、設計の自由度の高い、且つ、美観上優れたバルコニーが提供出来る。
また、バルコニー床スラブSB構築用の複合パネル(Z筋パネル)20は、予め単体として工場生産出来るため、Z筋1を貫通装着した均質な複合パネル20の準備、保管、供給が合理的に実施出来、信頼性のあるバルコニーBの構築の合理化が可能となる。
また、Z筋1は、外壁Wの外側を被覆した通気性と断熱性を備えた複合パネル20を貫通し、高い曲げ抗力を発揮してバルコニーBを支持するため、バルコニー床スラブ基端Bbは、複合パネルの外面の成形セメント板2Aと付設形態であっても、成形セメント板2Aにはひび割れを生ずることが無く、従って、複合パネル20は、Z筋貫通部のみの修復で良く、外壁Wの通気機能も断熱機能も損傷しないで、バルコニーBが鉄筋コンクリート外断熱建物の外壁に、きれいに突出付設出来る。
また、片持ち支持バルコニーの構築に際しても、Z筋1を備えた複合パネル(Z筋パネル)20の配置は、バルコニー床スラブSB及び居住部床スラブSAへの配筋時に施工出来、バルコニー床スラブSBの型枠組み、配筋、コンクリート打設の各作業が、建物コンクリート躯体構築作業と同時並行的に実施出来、従来一般の、内断熱で、居住部床スラブとバルコニー床スラブとが連続一体となって、バルコニーから床スラブへの熱橋作用の大な鉄筋コンクリートバルコニーと、略同等の作業性で施工出来る。
しかも、工場生産によって、Z筋1の貫通装着、及びZ筋周囲への耐火充填材の充填補修が均質に施されたZ筋パネル20を、型枠組み時に、外壁型枠FWの複合パネル2上へ、空気連通用の新規な十字ジョイント9によって載置接続するだけでZ筋1の型内配置作業が完了するため、作業環境の悪い型枠上でのZ筋1の挿通作業、Z筋1周囲への耐火被覆材充填作業等の煩雑、且つ、心労の伴う困難な作業が、画期的に合理化出来る。
また、曲げモーメントの応力中心距離を十分に保ったZ筋1の適用によって、従来例(図11)の如き、支持棒用補助筋も不要となり、バルコニー床スラブSBへの配筋作業も容易となる。
即ち、コンクリート床スラブSB構築用の、高さ方向短尺のZ筋パネル(複合パネル)20を採用したことにより、次の効果がある。
1.現場での、Z筋1の取付け、断熱層2Bの挿通用孔H3の補修を、予め工場で行うので、現場作業が省力化される。
2.Z筋パネル20のセメント板2Aが小型、且つ軽量なので製作作業(断熱層2Bの層着、挿入用円孔H1,H1´,H2の孔開け)が容易である。
3.バルコニーBの奥行長さLBが1500mm以下であれば、固定荷重(コンクリート、防水層、手摺の重さ:492kg/m)、積載荷重(人、備品の建築基準法重量:180kg/m)の基準が国内同一で(バルコニーは外壁から突出する庇状となるため積雪荷重を無視する)あるため、Z筋1を形成する異形棒鋼の径、長さも同一で、基準製品として全国供給用に製作出来、在庫準備も出来る。
また、バルコニーBの奥行長さLBが1500mm超であっても、Z筋1の径、長さを予め計算しておけば、対応Z筋パネルの製造が容易である。
4.尚、従来例(図10,11)に於いては、バルコニーの形状(奥行長さL3及び幅L1)の変化、及び出入口戸の位置の変化により、美観上から、パネルの割付け位置が変わるため、また、支持棒の位置が寸法指定となるために、セメント板2Aの幅AWのどの位置に支持棒が配置されるか判断しにくいので、条溝G部に支持棒が配置されると、通気層を閉止する問題が生じる。
また、上記のことから支持棒の位置は、現場で位置出しをし、支持棒の挿入用孔の穿設、断熱層2Bの切欠けを行うので支持棒の取付作業性の問題があった。
しかし、本発明では、セメント板2Aの中央の肉厚部2Dに、原則的にZ筋1を配置するため、取付位置の違いや、充填域2Eの配置に好都合に対応出来る。
〔バルコニーの形状(図1)〕
図1は、バルコニーの斜視説明図であって、バルコニーBは、図1に示す如く、コンクリート躯体CFの耐力壁としての、壁厚TWが180mmのコンクリートの外壁Wの外面を、厚さT1が100mmの複合パネル2と複合パネル(Z筋パネル)20とを上下連結形態で被覆張設し、Z筋パネル20の外面から片持ち支持形式で突設したものであり、バルコニー床スラブSBをコンクリート躯体CF側の居住部床スラブSAからZ筋パネル20を貫通して延びるZ筋1のみで支持したものであり、Z筋1は、Z筋パネル(複合パネル)20の左右幅方向中央に配置し、Z筋パネル20の1枚当り1本を配置したものである。
そして、バルコニーBは、奥行きLBが1500mm、厚さTBが180mmであって、長辺先端縁には、高さT7が50mm、幅T6が150mmのパラペットPを立設し、パラペットPの上面には、慣用のアングル笠木5を配置し、底板6Aに立設した手摺柱6Bを介して手摺6を形成し、バルコニーBの表面(上面)Sfには防水層3を、バルコニー基端Bbからの立上り部にも腰水切4まで防水層3´を張設したものである。
〔複合パネル2(図5)〕
複合パネル2は、図1に示す如く、Z筋パネル20と上下接続してコンクリート外壁Wの外面を被覆するものであり、Z筋パネル20がバルコニー床スラブSBの基部を、複合パネル2がZ筋パネル20の下部及び上部の被覆を行うパネルである。
複合パネル2は、図5(B)に示す如く、厚さT2が25mm、幅Awが480mmの成形セメント板2Aと、厚さT3が75mm、幅Bwが490mmの発泡プラスチック系断熱層(JIS9511の硬質ウレタンフォーム)とを層着した、厚さT1が100mmのパネルであって、標準サイズは、成形セメント板2Aの幅Awが480mm、高さ2hが2485mmである。
即ち、複合パネル2は、後述の複合パネル20(標準高さ:195mm)を上部に載置接続して、一般外壁部(バルコニーBの存在しない外壁部)に採用する複合パネル1枚の高さ(標準:2680mm)と同一となるものである。
成形セメント板2Aは、図5(B)の如く、両側の広幅a3(45mm)の肉厚部2Dと中央の広幅a4(40mm)の肉厚部2Dを備え、そして、成形セメント板の内面には深さ13mm(T5)の通気用条溝G,G´群を備えており、両側端部の条溝G及び中央肉厚部2Dの両側の条溝Gは、複合パネル2を上下に連結する際の十字ジョイント8,9を嵌入するために、図5(C)に示す如く、両側縁が60°で傾斜する開口幅a1が32.2mm、底部幅GBが42.8mmの断面台形である。
また、複合パネル2は、並列接続して壁コンクリートの外側型枠として用いるため、壁型枠組み用のセパレータ挿入用孔hsを中央に、壁コンクリート(耐力壁W)に固着する皿ボルト挿入用孔hbを両端部に備えたものである。
また、成形セメント板2Aと断熱層2Bとの層着形態は、左右方向では、図5(B)に示す如く、複合パネル2の左右連結により、各パネル2間に10mmの縦目地dy(図5(D))が形成出来るように、断熱層2Bが、成形セメント板2Aに対して、一側では10mm(d1´)入り込み、他側では20mm(d2´)突出し、上下方向では、図5(A)に示す如く、断熱層2Bが、成形セメント板2Aに対して、上端では面一で、下端では20mm(d1)突出し、図2(B)に示す如く、複合パネル20の上端と相欠け接続可能とする。
〔複合パネル20(図4)〕
複合パネル(Z筋パネル)20は、バルコニー床スラブSB支持用のZ筋1を貫通装着したパネルであって、図2(A),(B)に示す如く、下方の複合パネル2と上方の複合パネル2とで挟着施工する挟着タイプと、図3(A),(B)に示す如く、下方の複合パネル2上に接続し、上方には出入口戸7を配置する載置タイプとがある。
図4(A)は、挟着タイプの全体斜視図であり、図4(B)は、図4(A)のB−B縦断面図であり、図4(C)は、載置タイプの全体斜視図であり、図4(D)は、図4(C)のD−D縦断面図である。
図4(A),(B)の挟着タイプも、図4(C),(D)の載置タイプも、共に、下端に複合パネル2を接続使用するものであるため、複合パネル2と断面構造及びパネル幅は同一であり、また、挟着タイプの複合パネル20と載置タイプの複合パネル20とは、Z筋1の配置構造が同一であって、使用形態上、上下寸法及び上端形状が異なるだけである。
尚、複合パネル20は、前後を居住部床スラブSAとバルコニー床スラブSBとで挟着配置となるため、セパレータ挿入用孔hs及び皿ボルト挿入用孔hbは不要である。
即ち、挟着タイプの複合パネル20は、図4(A),(B)に示す如く、成形セメント板2Aの高さAhが169mmであり、下端では、断熱層2Bがd5(3mm)突出し、上端では、断熱層2Bがdb(23mm)突出し、下端の段差d5(3mm)が複合パネル2との接続に用いる十字ジョイント9の水平当接板9M(図8)用のスペースを提供し、上端の段差db(23mm)が、図2(B)の如く、上方の複合パネル2と十字ジョイント9で接続した際の相欠け段差d1、即ち、複合パネル2の下端の段差d1と整合する形態である。
また、載置タイプの複合パネル20は、図4(C),(D)の如く、成形セメント板2Aの高さBhが242mmであり、下端では、断熱層2Bがd5(3mm)突出し、上端では、断熱層2Bと成形セメント板2Aとは面一であり、下端の段差d5(3mm)が十字ジョイント9の水平当接板9M用のスペースを提供し、上端の面一形態が、図3(A)の如く、出入口戸7の水切り7Aのスムーズな配置を可能とした形態である。
そして、Z筋1を貫通装着してバルコニー床スラブSBを支持する部位に位置する複合パネル20、即ち、図4(A)、図4(C)の複合パネル20にあっては、図5(A),(B)に示す如く、成形セメント板2Aの中央の、肉厚T2(25mm)で幅a4(40mm)の幅広の肉厚部2Dに、図9(A)の如く、上側の上下連接形態の円孔H1,H1´と下側の円孔H2とを、Z上端筋1U挿通用円孔H1の下端とZ下端筋1D挿通用円孔H2の上端とが間隔L14を保つ形態に穿設し、間隔L14(70mm)をZトラス筋1Mの介在域としている。
尚、円孔H1と円孔H2とは孔径27mm、H1´の孔径は20mmとし、連接形態の円孔H1,H1´で、22mm径の異形棒鋼のZ上端筋1Uと、16mm径の異形棒鋼のZトラス筋1Mの水平上辺部1U´との溶接固着部ZU(図9(B))を挿通可能とし、円孔H2で、異形棒鋼22mm径のZ下端筋1Dの挿通を可能としている。
そして、複合パネル20の断熱層2Bには、図9(A)の如く、円孔H1,H1´,H2に亘る上下方向長孔形態のZ筋1挿通用孔H3を、幅40mm、高さ135mmの短形孔として穿設し、Z筋1の挿入を可能としている。
図9(A)は、図4(A)の挟着タイプの複合パネル20の製作説明図であって、複合パネル20は、上方の連接円孔H1,H1´と下方の円孔H2を穿孔し、高さAhが169mmの成形セメント板2Aと、各円孔に亘る幅45mm、高さ135mmの縦長孔の挿通用孔H3を穿孔した高さ195mmの断熱層2Bとを、成形セメント板2Aの内側の条溝G,G´間の肉厚部2Dに接着剤を塗布して、断熱層2Bが成形セメント板2Aに対し、上端ではdb(23mm)突出し、下端ではd5(3mm)突出した形態に、プレス機を用いて層積一体化する。
次いで、図9(A)に示す如く、Z筋1を断熱層2B側から嵌入して、Z上端筋1Uを円孔H1に、Zトラス筋水平上辺部1U´を円孔H1´に、Z下端筋1Dを円孔H2に、且つ、断熱層2Bを中間として両側に等長突出した形態に、Z筋1を複合パネル20に装着し、Z筋1と断熱層2Bの挿通用孔H3との間にウレタンフォーム剤を充填発泡させて養生し、Z筋1を貫通装着した複合パネル20とする。
尚、この場合、ウレタンフォーム剤の充填に先立って、断熱層内のZ筋1にカオウール(商品名)等の耐火性被覆材を施しても良い。
図4(C)に示す載置タイプの複合パネル20も、図4(A)の複合パネル20と同一手段で製作すれば良い。
〔十字ジョイント(図8(A),(B)〕
十字ジョイントは、外壁パネルの上下を接続する部材として、従来より慣用されているが、該慣用物は、パネルの上下端の嵌入孔を介してパネル相互を上下接続するだけであって、例え、通気用条溝を備えたパネルであっても、該通気用条溝を介して慣用の十字ジョイントで上下パネルを接続すれば、該通気用条溝は、十字ジョイントで閉止されて通気機能を喪失していた。
図8(A),(B)に示すA十字ジョイント8、及びB十字ジョイント9は、本発明の開発過程で案出したものであり、本発明の複合パネル2と複合パネル20との上下接続に採用すれば、複合パネル2,20の条溝Gの通気性を保証するものである。
即ち、図8(A)のA十字ジョイント8は、通気性及び断熱性を備えたバルコニーBの存在しない、一般壁用複合パネル2の上下接続に用いるものであり、図8(B)は、図4(A),(C)に示す、Z筋1を貫通装着した複合パネル20と複合パネル2の上下連結に用いるものである。
A十字ジョイント8は、一般肉厚3mmのプラスチック成形品であって、図8(A)に示す如く、中間から両側に突出した、横目地形成用の、側板8Sと底板B8から成る水平当接部8Mと、各側板8Sと底板B8から成る上部パネル2の条溝Gへの嵌入用の上方垂直片8Fと、下部パネル2の条溝Gへの嵌入用の下方垂直片8F´とを、水平当接部8Mから上下に突出した十字形状の箱形態であって、上下垂直片8F,8F´全体に亘る全高縦寸法Y1が100mm、水平当接部8Mの両端間の長さX1が75mm、箱形の深さ(奥行き)Z1が11.8mmであり、水平当接部8Mの高さ(上下幅)Y2が20mm、両側の突出長X3が20mm、上方垂直片8Fの高さY3が50mm、下方垂直片8F´の高さY4が30mmである。
そして、成形セメント板2Aの通気用条溝Gに挿入する上下垂直片8F、8F´は、断面形態が、成形セメント板2Aの条溝Gの底面に当接する側板8Sの開放側端縁から側板8Sが、条溝Gの拡開角60°に整合する傾斜角度で底板B8に傾斜する台形である。
また、上下垂直片8F,8F´の側板8Sは、上下端では嵌入をスムーズにするためのテーパー8S´を備え、且つ、両側板8S間には、上下垂直片8F,8F´の先端部を切欠き8Cで開放して、上下に空気流を貫流させるための切開部CAを形成し、水平当接部8Mの各基端を補強する仕切片8Pを、上下垂直片8F,8F´の側板8S間に配置したものである。
また、上下垂直片8F,8F´の断面寸法は、側板8Sの両側開放側端縁間を37.6mmとし、底板B8側での幅を28mmとして、成形セメント板2Aの両側端及び中央肉厚部2Dの両側の条溝Gに、寸法的にゆとりを持たせて、複合パネル2の幅(横)方向調整の下に嵌入可能としたものである。
また、図8(B)に示すB十字ジョイント9は、バルコニーB部の複合パネル2と複合パネル20との上下連結に用いるものであって、バルコニー部Bでは、上下複合パネル2,20は、横目地を形成しない形態で連結するため、B十字ジョイント9は、A十字ジョイント8の横目地形成用の上下厚さ(上下高さ)Y2が20mmの水平当接部8Mを、厚さ3mmの水平当接板9Mに変更したものである。
即ち、B十字ジョイント9は、底板B9と両側板9Sから成る箱形本体に当接板9Mを両側にX3(20mm)突出した十字形態であって、両側板9S間には、上下端を切欠き9Cで開放した、空気流を貫流させるための切開部CAを形成している。
また、B十字ジョイント9は、全高Y5が、高さY3が50mmの上方垂直片9Fと、高さY4が30mmの下方垂直片9F´と厚さY2が3mmとの、計83mmであり、A十字ジョイント8より小寸である。
〔Z筋(図9)〕
Z筋1は、図9(A)に示す如く、引張り応力負担用のZ上端筋1Uと、圧縮応力を負担するZ下端筋1Dとを、水平上辺部1U´、中間傾斜部1S及び水平下辺部1D´を備えた屈曲形態のZトラス筋1Mで一体化したものである。
Z筋1は、片持ち支持形式のコンクリートバルコニー床スラブSBを支持する部材であり、バルコニーBが負担する固定荷重+積載荷重によって生ずる曲げ応力(圧縮応力、引張応力)に対する抵抗は、バルコニーBから居住部床スラブSAに定着する棒鋼の径と間隔によって決まり、曲げモーメントMは、M=at×ft×jで表示される。
ここで、atは、引張鉄筋の断面積、ftは、鉄筋棒鋼の許容引張応力度、jは、曲げ材の応力中心距離である。
そして、同一の鉄筋棒鋼を採用しても、鉄筋棒鋼の応力中心距離を保持するのが重要であるため、本発明にあっては、図9(A),(B)の如く、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとを、水平上辺部1U´と中間傾斜部1Sと水平下辺部1D´とから成るZトラス筋1Mで溶接固定し、曲げ材(Z上端筋1U+Z下端筋1D)の応力中心距離L15(Z上端筋1UとZ下端筋1Dとの軸心間距離)を確保する。
また、鉄筋棒鋼の径、長さは、適用するバルコニー床スラブSBに対する経済性と性能(変位1/400以下)から決定すれば良く、例えば、図1の奥行きLBが1500mm、厚さTBが180mmの鉄筋コンクリートバルコニーBに、490mm間隔(各複合パネル2に1本)にZ筋1本配置の場合、Z上端筋1U及びZ下端筋1Dは、鉄筋径22mmの採用に対して、径25mmの鉄筋を採用すれば、定着長さは、Z上端筋1Uでは50mm、Z下端筋1Dでは30mm短縮出来るが、重量は1.5kg増大し、材料コストが高くなる。
勿論、25mm径の棒鋼は、強度的に64%の余裕(径22mmは55%)が生じ、バルコニーB基端部の変位では径22mmと同じ0.3mmであるが、バルコニー先端部の変位量は2.1mm(径22mmは2.7mm)、変位は1/580(径22mmは1/450)となり、強度、変位性能は向上する。
以下、使用鉄筋棒鋼の径19mm、径22mm、径25mmで図1のバルコニーBに適用する場合を試算比較すれば次のとおりである。
径19mm 径22mm 径25mm
Z上端筋1Uの全長(mm) 1300 1200 1150
Z下端筋1Dの全長(mm) 820 760 730
重量(kg/個所) 4.8 6.0 7.5
出願時価格(円/個所) 305 381 477
強度の余裕 38% 54% 64%
バルコニー先端の変位量(mm) 3.7 2.7 2.1
居住部床スラブSAと断熱層2B
との当接部の変位量(mm) 0.3 0.3 0.2
変位 1/348 1/458 1/580
尚、Zトラス筋1Mは、全て径16mmの異形棒鋼を、且つ、同一形態で採用する。
また、Zトラス筋1Mは、中間の傾斜部1Sが、図9(B)の如く、複合パネル20の断熱層2Bの全幅T3(75mm)に亘って剛性を付与し、力学上、断熱層2Bに、打設コンクリートと同効の剛性機能を付与し、且つ、バルコニー床スラブSBの曲げモーメントにより生ずるZ上端筋1Uの引張り応力を負担させ、Z上端筋1UとZ下端筋1D間に応力中心距離L15を付与させるものである。
従って、本発明の実施例(図1)のZ筋1は、奥行きLBが1500mmで、床スラブSBの厚さTBが180mmの床スラブSB内に、各複合パネル1枚の1本配置、即ち、490mm間隔で配置するため、図9(A)に示す如く、Z上端筋1Uとして、長さL10が1200mmで、径22mmの異形棒鋼を、Z下端筋1Dとして、長さL12が760mmで、径22mmの異形棒鋼を、Zトラス筋1Mとして、径16mmの異形棒鋼で、中間傾斜部1Sが45°傾斜で、Z字形状の高さL14が70mm、水平上辺部1U´及び水平下辺部1D´が80mmのものを用い、Z上端筋1U及びZ下端筋1Dの長さ方向中間部に、それぞれ、水平上辺部1U´をZ上端筋1Uの下面に当接して両側から溶接して固着部ZUとし、水平下辺部1D´をZ下端筋1Dの上面に当接して両側から溶接して固着部ZDとし、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとの応力中心距離L15を92mmとしたものである。
そして、図9(A)の如く、Z筋1の全長に亘って防食性、付着性、断熱性に優れたエポキシ樹脂塗料((株)エスケー化研、商品名:耐火コート下塗材)を錆止め塗料1Bとして2回塗布し、複合パネル2内に位置する部分には、更に、耐火塗料1A((株)エスケー化研、商品名:SK耐火コート)を塗布したものである。
〔バルコニー躯体の形成(図6、図7)〕
図6は、固化した下階のバルコニー床スラブSB及び居住部床スラブSA上に、耐力壁用の外壁型枠FW、居住部床スラブ型枠FA及びバルコニー床スラブ型枠FBを構築した状態、即ち、複合パネル(Z筋パネル)20の配置前の状態の縦断面図であり、図7は、複合パネル20を配置した状態の縦断面図である。
外壁型枠FWは、外側の型枠兼用の複合パネル2と内側の型枠板(型枠合板10A)とを、慣用のセパレータ10Hで間隔規定して横端太(パイプ)10F及びリブ座金10Kで型締めする。
また、居住部床スラブ型枠FA及びバルコニー床スラブ型枠FBは、慣用の、パイプサポート10Dで大引パイプ10C及び根太パイプ10Bを介して型板合板10A´を支持する。
外壁型枠FWとしての複合パネル2の立設は、バルコニーBの存在しない一般外壁部では、複合パネル2と同一構成で、高さが複合パネル2の高さ+複合パネル20の高さのパネル(図示せず)のみを、空気連通用のA十字ジョイント8で上下接続実施し、バルコニーBの存在する部分、即ち、図6、図7の図示部では、図5(A)に示す複合パネル2を外側型枠F0として立設し、それぞれ、各パネル2の断熱層2Bが左右に密接形態で、且つ、上端がバルコニー床スラブ型枠FBの下型板10A´よりd20(5mm)突出する形態で配置し、図6の如く、慣用の内側型枠F1と共に外壁型枠FWを構築する。
この場合、バルコニーBの上方にコンクリート外壁Wを配置する場合は、図6の型組み状態の複合パネル2の上端に、図4(A)の挟着タイプのZ筋パネル20を、B十字ジョイント9を用いて載置接続し、バルコニーBの上方に出入口戸7を配置する場合は、図6の型組み状態の複合パネル2の上端に、図4(C)の載置タイプのZ筋パネル20を、B十字ジョイント9を用いて載置接続する。
この場合、下方複合パネル2とZ筋パネル20との上下接続は、図8(B)に示すB十字ジョイント9を用いて、1枚の複合パネル2とZ筋パネル20当り、両側端の条溝Gの計2個で実施すれば良く、必要に応じて中央肉厚部2D両側の条溝Gを用いて計4個所で嵌入実施しても良い。
この場合、B十字ジョイント9での複合パネル2とZ筋パネル20との上下連結時には、B十字ジョイント9の挟着板9M(3mm厚)より若干厚いブチルゴム板15(標準:厚さ5mm)を成形セメント板2Aの板状部2Cに介在させ、成形セメント板2A端面間での地震等による衝撃力を緩和するように配置する。
そして、居住部床スラブ型枠FA内、及びバルコニー床スラブ型枠FB内に、長辺方向下端筋11B、短辺方向下端筋11D、短辺方向上端筋11C、及び長辺方向上端筋11Aを慣用の手段で配筋結束し、各複合パネル20の幅方向中央に貫通装着されたZ筋1の両側への突出部を、居住部床スラブ型枠FA内と、バルコニー床スラブ型枠FB内とに等長に配置し、Z筋1をスペーサー12A,12Bで支持し、且つ、型枠FB内では、直交する長辺方向の上下端筋11A,11Bと針金で結束し、図7に示す如く、外壁外側型枠F0は、下方の複合パネル2の上端にZ筋1を装着した複合パネル20が接続し、且つ、複合パネル20の前方には、バルコニー床スラブ型枠FBが、後方には居住部床スラブ型枠FAの形成された状態とする。
次いで、外壁型枠FW、居住部床スラブ型枠FA及びバルコニー床スラブ型枠FB内にコンクリート打設して、コンクリート固化後に型枠を解体すれば、コンクリート外壁Wが、バルコニーB部にあっては、下方の複合パネル2と上方の複合パネル20とで一体化被覆され、複合パネル20の外側にバルコニー床スラブSBが突設され、一般壁部では複合パネルのみで一体化被覆され、且つ、コンクリート外壁Wは、全面が通気性及び断熱性を備えた複合パネル2,20で被覆された建物が得られる。
〔バルコニーの仕上げ(図1)〕
構築したバルコニーBの床スラブコンクリート表面Sfには、図1に示す如く、慣用の合成高分子ルーフィングを載置して歩行用シート防水層3を張設し、バルコニー立上り部にも、立上り防水層3´を張着立設し、笠木と同様の役目の慣用の腰水切4(タイセイ商工(株)、商品番号TA−206)を配置する。
この場合、下方の複合パネル2と上方の複合パネル20との上下連結部は、3mmの継目幅(B十字ジョイントの水平当接板9Mの厚さ)であるため、継目部には、立上り防水層3´の貼着が、支障無くきれいに実施出来る。
また、幅T6が150mm、高さT7が50mmのパラペットPにも、慣用の手段で、前端上部にはアングル笠木5を、上面には底板6Aに手摺柱6Bを立設し、手摺6を形成する。
尚、図3(A)に示す如く、アルミ製出入口戸7の下方に於いては、予めコンクリート壁Wのコンクリート表面Wfを、居住部床スラブSAの表面Sf´よりd4´(50mm)上方に形成し、バルコニー床スラブSBの表面Sfより上方d4(60mm)の位置となるアルミ製出入口戸7の水切り7A下端、まで防水層3´を立上げ、防水層3´と水切り7Aとの接合部にシーリングを施せば、水切り7A下端は、高さT7(図1)が50mmのパラペットPの上端より上方に位置するため、万一、バルコニーBに排水が詰まって雨水が溢れても、雨水による影響は無く、且つ、下方の複合パネル2上端に開口する条溝Gは、出入口戸7の水切り7Aに穿設する空気排出孔から支障無く排気出来る。
従って、本発明バルコニーBは、通気性及び断熱性を有する複合パネル2及び複合パネル20の通気機能も断熱機能も何ら損なうことなく付設出来、複合パネル20に貫通装着したZ筋1のみで、バルコニーBを片持ち支持形態で実施するため、バルコニーBからコンクリート躯体CFへの熱橋も、外気→バルコニー床スラブSBのコンクリート→断熱性錆止め塗料1Bを塗布したZ筋→居住部床スラブSAのコンクリート→室内空気、のルートのみとなり、Z筋1も複合パネル1枚に1本、即ち、490mm間隔配置で達成出来たため、鉄筋コンクリートの片持ち支持タイプでありながら、熱橋作用が画期的に抑制出来たものとなる。
しかも、一般壁部もバルコニーB付設壁部も、共に通気性を損なうことの無い、新規な、A十字ジョイント8及びB十字ジョイント9で上下連結したため、片持ち支持タイプのバルコニーBを備え、熱橋作用が画期的に抑制出来、且つ、外壁が均斉な通気性、断熱性を備えた、高品質の通気性外断熱鉄筋コンクリート造建物の提供が可能となる。
本発明バルコニーの縦断斜視図である。 本発明バルコニーの説明図であって、(A)は縦断面図、(B)は、(A)の部分拡大図である。 本発明バルコニーの出入口戸部の説明図であって、(A)は縦断面図、(B)は、(A)の部分拡大図である。 本発明に用いる複合パネル20の説明図であって、(A)は図2に用いた複合パネル20の斜視図、(B)は図4(A)のB−B線断面拡大図、(C)は、図3に用いた複合パネル20の斜視図、(D)は、図4(C)のD−D線断面拡大図である。 本発明に用いる複合パネルの説明図であって、(A)は、バルコニー下方に張着する複合パネル2の斜視図、(B)は、複合パネル2,20の横断面図、(C)は、図5(B)の部分拡大図、(D)はパネル相互の並列連結状態説明図である。 本発明の型枠構築途中状態の縦断面図である。 本発明の型枠構築完了状態の縦断面図である。 本発明に用いる十字ジョイントの斜視図であって、(A)は、一般壁部用のA十字ジョイントを、(B)は、バルコニー部用のB十字ジョイントを示す図である。 本発明の複合パネル20の説明図であって、(A)は分解図、(B)は要部拡大図である。 従来例図であって、(A)は斜視図、(B)は平面図である。 図10の従来例の要部説明図であって、(A)は縦断面図、(B)は図11(A)の矢印B視図、(C)は図11(A)の矢印C視図である。
符号の説明
1 Z筋
1A 耐火塗料
1B 錆止め塗料
1D Z下端筋(挿通筋)
1D´ 水平下辺部
1M Zトラス筋(挿通筋)
1S 中間傾斜部(傾斜部)
1U Z上端筋(挿通筋)
1U´ 水平上辺部
2 複合パネル(パネル)
2A 成形セメント板(セメント板)
2B 断熱層
2C 板状部
2D 肉厚部
2E 耐火被覆材(充填材)
3,3´ 防水層
4 腰水切
5 アングル笠木
6 手摺
6A 底板
6B 支柱(手摺柱)
7 アルミ製出入口戸(出入口戸、戸口)
7A 水切り
7B 雨切り
8 A十字ジョイント(十字ジョイント)
9 B十字ジョイント(十字ジョイント)
8C,9C 切欠き
8F,9F 上方垂直片(嵌入用垂直片)
8F´,9F´ 下方垂直片(嵌入用垂直片)
8M 水平当接部(挟着片)
9M 水平当接板(当接板、挟着板)
8S,9S 側板
8S´,9S´ テーパー
10A,10A´ 型板(合板)
10B 根太(パイプ)
10C 大引き(パイプ)
10D パイプサポート
10E 縦端太(パイプ)
10F 横端太(パイプ)
10G,10g 桟木
11 床スラブ筋
11A 長辺方向上端筋(上端筋)
11B 長辺方向下端筋(下端筋)
11C 短辺方向上端筋(上端筋)
11D 短辺方向下端筋(下端筋)
11E 壁縦筋
11F 壁横筋
12A,12B スペーサー
14 タイル
15 ゴム板(ブチルゴム板)
20 Z筋パネル(複合パネル、パネル)
A 居住部
B バルコニー
Bb 基端
B8,B9 底板
CA 切開部
CF コンクリート躯体
dy 縦目地
F0 外壁外側型枠
F1 外壁内側型枠
FA 居住部床スラブ型枠(型枠)
FB バルコニー床スラブ型枠(型枠)
FW 外壁型枠(型枠)
G,G´ 通気用条溝(条溝)
hb 皿ボルト挿入用孔
hs セパレータ挿入用孔
H1,H1´,H2 挿通用円孔(挿通用孔,円孔)
H3 挿通用孔
P パラペット
SA 居住部床スラブ(床スラブ)
SB バルコニー床スラブ(床スラブ)
Sf,Sf´ 床スラブ表面
W 外壁(コンクリート壁、コンクリート外壁)
ZD,ZU 固着部

Claims (12)

  1. 成形セメント板(2A)と断熱層(2B)とから成る複合パネル(2,20)で外面を熱的に被覆したコンクリート躯体(CF)の外壁(W)に、鉄筋コンクリート造のバルコニー床スラブ(SB)を突出付設して支持用のZ筋(1)群のみによって片持ちスラブ形式で支持したバルコニー(B)であって、複合パネル(2,20)は、成形セメント板(2A)の内面に通気用の条溝(G,G´)群を備えて断熱層(2B)と層着した通気性断熱パネルであり、且つ、複合パネル(20)は、Z筋(1)を貫通装着した上下方向短寸パネルであり、Z筋(1)は、Z上端筋(1U)とZ下端筋(1D)とを、水平上辺部(1U´)、中間傾斜部(1S)及び水平下辺部(1D´)から成るZトラス筋(1M)で固着一体化したものであり、バルコニー(B)は、複合パネル(20)を貫通して基端側をコンクリート躯体(CF)内に一体化固着し、先端側をバルコニー床スラブ(SB)内に一体化固着したZ筋(1)群のみにより、且つ、バルコニー床スラブ(SB)の基端(Bb)を複合パネル(20)の成形セメント板(2A)表面と一体化状態で、固定支持した、鉄筋コンクリート造外断熱建物に於ける片持ち支持バルコニー。
  2. Z筋(1)が、複合パネル(20)の断熱層(2B)では、上下方向に長孔形態の挿通用孔(H3)を、成形セメント板(2A)では、Z筋挿通用の円孔(H1,H1´,H2)を介して複合パネル(20)を貫通した、請求項1のバルコニー。
  3. 成形セメント板(2A)のZ筋挿通用の各円孔(H1,H1´,H2)径が、各挿通筋(1U,1M,1D)の最大径より若干大である、請求項2のバルコニー。
  4. Z筋(1)は、Z上端筋(1U)とZ下端筋(1D)とを固着一体化したZトラス筋(1M)の中間傾斜部(1S)が、Z上下端筋(1U,1D)に対して、実質上45°傾斜である、請求項1又は2又は3のバルコニー。
  5. Z筋(1)のZトラス筋中間傾斜部(1S)を、複合パネル(20)の断熱層(2B)の幅(T3)の全幅に亘って傾斜配置し、断熱層(2B)に剛構造機能を付与した、請求項1乃至4のいずれか1項のバルコニー。
  6. Z筋(1)は、Z上端筋(1U)とZトラス筋(1M)との固着部(ZU)がバルコニー床スラブ(SB)内で、Z下端筋(1D)とZトラス筋(1M)との固着部(ZD)がコンクリート躯体(CF)内で、打設コンクリートと一体化している、請求項1乃至5のいずれか1項のバルコニー。
  7. Z筋(1)は、複合パネル(20)の断熱層(2B)内では耐火被覆した、請求項1乃至6のいずれか1項のバルコニー。
  8. Z筋(1)は、複合パネル(20)内に位置する中間部には耐火塗料(1A)を塗布し、打設コンクリート内に位置する両側部には錆止め塗料(1B)を施した、請求項1乃至7のいずれか1項のバルコニー。
  9. 内面に通気用の条溝(G,G´)群を縦設した成形セメント板(2A)の内面側に断熱層(2B)を層着した複合パネル(2)を、成形セメント板(2A)を外面にして外壁外側型枠(F0)として立設して外壁内側型枠(F1)と共に外壁型枠(FW)を構成し、外壁型枠(FW)上の複合パネル(2)の内側には居住部床スラブ型枠(FA)を、複合パネル(2)の外側にはバルコニー床スラブ型枠(FB)を構成し、複合パネル(2)と同一断面形態で、Z上端筋(1U)とZ下端筋(1D)とを、水平上辺部(1U´)、中間傾斜部(1S)及び水平下辺部(1D´)から成るZトラス筋(1M)で固着一体化したZ筋(1)を貫通装着した複合パネル(20)を、外壁型枠(FW)の複合パネル(2)上に、空気連通用の十字ジョイント(9)を介して載置接続し、複合パネル(20)から前後に突出したZ筋(1)を、それぞれ、バルコニー床スラブ型枠(FB)内、及び居住部床スラブ型枠(FA)内に配置し、各型枠(FW,FA,FB)にコンクリート打設する片持ち支持バルコニーの構築方法。
  10. Z筋(1)は、予め、複合パネル(20)内に位置する部分には耐火塗料(1A)を塗布し、打設コンクリート内に位置する部分には錆止め塗料(1B)を施して複合パネル(20)内に貫通配置し、複合パネル断熱層(2B)の長孔形態の挿通用孔(H3)には断熱性に富む耐火被覆材(2E)を充填する、請求項9の構築方法。
  11. Z筋(1)は、バルコニー床スラブ型枠(FB)内及び居住部床スラブ型枠(FA)内では、スペーサー(12A,12B)で位置保持し、且つ、バルコニー床スラブ型枠(FB)内では、Z上端筋(1U)は長辺方向上端筋(11A)に、Z下端筋(1D)は長辺方向下端筋(11B)に針金で結束する、請求項9又は10の構築方法。
  12. 複合パネル(2)と複合パネル(20)との上下連結は、両側に水平当接板(9M)を突設し、上下に嵌入用垂直片(9F,9F´)を備え、且つ、上下の嵌入用垂直片(9F,9F´)の内側には空気連通用の切開部(CA)を備えた十字ジョイント(9)を、成形セメント板(2A)の上下端の条溝(G)への嵌入で実施し、且つ、上下の成形セメント板(2A)の板状部(2C)間には、ゴム板(15)を介在させる、請求項9乃至11のいずれか1項の構築方法。
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