JP2007119874A - 銅系合金及び銅系合金の製造方法 - Google Patents

銅系合金及び銅系合金の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 環境に負荷を与えないものの疲労特性の優れた銅系合金を得る。
【解決手段】 高温でβ相単相あるいはβ+α2相になり、低温でβ相がβ’マルテンサイト相になる銅系合金であって、α相の体積分率が5〜80%とされ、少なくともAl及びMnを含有した組成を有する。好ましい組成として、3〜10重量%のAl、5〜20重量%のMn及び、10重量%以下のNiまたはCoを含有し、残部を銅(Cu)及び不可避的不純物とした。
【選択図】 図1

Description

本発明は、環境に負荷を与えないものの疲労特性の優れた銅系合金及びその製造方法に関し、特に、高歪、低周波における耐疲労特性が要求される例えば制振装置や免震装置などを構成する部材に有用な銅系合金及びその製造方法に関するものである。
従来より、地震の揺れを低減する為に、建築物とこの建築物を支持する地盤との間に配置される制振装置や免震装置が知られている。そして、これら制振装置や免震装置には、弾性体とされるゴム体だけでなく、揺れに伴う振動を抑える為の制振合金が内蔵されていて、これらの部材の複合的な作用で地震の揺れを低減し、建築物側に地震の揺れを伝達し難くしていた。
しかし、従来の制振装置や免震装置の制振合金として、制振特性の面から一般に鉛材が使用されていたが、環境面への配慮が近年重要視されるのに伴い、他の材料に置き換えることが検討されるようになった。尚、鉛の降伏点は5MPa程度と低く柔らかく、単純な曲げ変形で挫屈してしまう虞がある為、制振合金として鉛材を使用する場合には、その周囲を拘束し剪断変形した形とする必要があった。
他方、鉛以外の他の一般的な金属材料、例えばステンレス鋼、鉄、黄銅などを制振合金として用いることが考えられるが、これらの金属材料では、塑性変形域に入るような高歪で繰り返して変形させた場合、数十回程度のサイクルで破壊に至る為、制振装置や免震装置などに用いられる制振合金として、これらの一般的な金属材料は不適当であった。
特開2001−20026号公報
以上より、制振装置や免震装置に採用される制振合金として、環境に負荷を与えずに従来の制振合金と同等以上の制振特性を有する金属材料を開発する必要が生じていた。但し、この制振合金として、上記のように塑性変形域に入るような高歪で繰り返して変形させた場合でも、容易に破壊に至らないような優れた疲労特性が求められていた。
本発明は上記事実を考慮し、環境に負荷を与えないものの疲労特性の優れた銅系合金及び、このような特性を有する銅系合金の製造方法を提供することが目的である。
請求項1に係る銅系合金は、β’マルテンサイト相中にα相が析出している銅系合金において、α相の体積分率が5〜80%であることを特徴とする。ただし、β’マルテンサイト相中とは、β相中に熱や応力などにより誘起される全てのマルテンサイトを含む。
請求項1に係る銅系合金の作用を以下に説明する。
本請求項によれば、β’マルテンサイト相中にα相が析出している銅系合金において、α相の体積分率を5〜80%としたことにより、銅系合金の疲労特性が改善されて、特に高歪、低周波での耐疲労特性に優れた銅系合金となる。
従って、本請求項の銅系合金は、塑性変形域に入るような高歪で繰り返して変形させた場合でも、容易に破壊に至らないような優れた疲労特性を有するので、制振装置や免震装置に採用される制振合金として、最適なものとなる。これに伴い、鉛材を用いないで上記のような疲労特性が得られる為、本請求項の銅系合金は環境に負荷を与えることのない優れた制振合金となり得る。そして、鉛材ではないので、周囲を拘束して剪断変形した形で使用する必要もなくなり、制振合金として使用する際の自由度も高くなる。
請求項2に係る銅系合金の作用を以下に説明する。
本請求項では請求項1と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、3〜10重量%のAl、5〜20重量%のMn、10重量%以下のNiまたはCo及び、残部をCuとした組成を有するという構成を有している。
つまり、Al元素の含有量が3重量%未満の銅系合金では、β単相領域を形成できず、またAl元素の含有量が10重量%を超えると、銅系合金は極めて脆くなる。そして、Mn元素を含有することにより、β相が存在し得る組成範囲が低Al側へ広がり、銅系合金の冷間加工性は著しく向上する。但し、Mn元素の添加量が5重量%未満では満足な冷間加工性が得られず、かつβ単相領域を形成することができない。一方、Mn元素の添加量が20重量%を超えると、十分な耐疲労特性が得られないようになる。
さらに、Ni元素又はCo元素は、冷間加工性を維持したまま固溶強化して、銅系合金の強度を向上させる効果を発揮する。但し、これらの元素の添加量が10重量%を超えた場合には、満足な効果が得られない。以上より、本請求項では上記の各範囲の重量%が銅系合金として、最適な範囲となる。
請求項3に係る銅系合金の作用を以下に説明する。
本請求項では請求項1及び請求項2と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、合金全体を100重量%としたとき、Ni、Co、Fe、Ti、V、Cr、Si、Ge、Nb、Mo、W、Sn、Sb、Mg、P、Be、Zr、Zn、B、C、Ag及びミッシュメタルからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を合計で、0.001〜10重量%含有するという構成を有している。
つまり、本請求項の銅系合金は、Ni、Co、Fe、Ti、V、Cr、Si、Ge、Nb、Mo、W、Sn、Sb、Mg、P、Be、Zr、Zn、B、C、Ag及びミッシュメタルからなる群から選ばれた1種又は2種以上をさらに含有することになる。但し、これらの添加元素の合計含有量が10重量%を超えると、マルテンサイト変態温度が低下し、β’マルテンサイト相が不安定になる。また、0.001重量%未満ではこれらの添加元素による効果が乏しくなる。従って、これらの添加元素の含有量は、上記のように合計で0.001〜10重量%の範囲が好ましい。
請求項4に係る銅系合金の作用を以下に説明する。
本請求項では請求項1から請求項3と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、螺旋状のコイルスプリングとされたという構成を有している。つまり、銅系合金を螺旋状のコイルスプリングとしたことで、より確実に変形するようになるので、この銅系合金に引張力や剪断力が加わった際に、バネ定数が低くなると共に減衰係数が高くなって、より大きな制振特性を有するようになる。
請求項5に係る銅系合金の製造方法の作用を以下に説明する。
請求項1から請求項4の何れかに記載の銅系合金を製造する際に、銅系合金に焼鈍及び冷間加工をした後、β+αの2相温度域でこの銅系合金を熱処理するという構成を有する。
つまり、銅系合金の製造に際して、この手順を経ることにより、β’マルテンサイト相マトリックス中にα相が析出したβ’+αの2相組織が得られるが、銅系合金をこのβ’+αの2相組織としたときに、高い耐疲労特性が得られるようになる。尚、熱処理温度が高い900℃とすると共に水冷で冷却した場合には、金属組織がβ単相で結晶粒が大きく、耐疲労特性が低下する。また、熱処理温度が低い600℃とした場合には、金属組織がα相になり、同様に耐疲労特性が低下する。
以上説明したように本発明の上記構成によれば、環境に負荷を与えないものの疲労特性の優れた銅系合金及び、このような特性を有する銅系合金の製造方法を提供できるという優れた効果を有する。
本発明に係る銅系合金及びその製造方法の一実施の形態を、図1から図6に基づき説明する。
本実施の形態に係る銅系双晶合金である銅系合金は、高温でβ(体心立方)単相あるいはβ+α(面心立方)の2相組織になり、低温でβ相がβ’マルテンサイト相になる合金であって、α相の体積分率が5〜80%とされ、少なくともAl及びMnを含有した組成を有している。また、本実施の形態の銅系合金の好ましい組成として、3〜10重量%のAl、5〜20重量%のMn及び、10重量%以下のNiまたはCoを含有し、残部の60〜92%程度を銅(Cu)及び不可避的不純物としたものが例えば挙げられる。
このAl元素の含有量が3重量%未満では銅系合金がβ単相を形成できず、また、Al元素の含有量が10重量%を超えると銅系合金は極めて脆くなる。但し、Al元素のより好ましい含有量は、Mn元素の含有量により変化する。
つまり、Mn元素を含有することにより、β相が存在し得る組成範囲が低Al側へ広がり、銅系合金の冷間加工性は著しく向上する。但し、Mn元素の添加量が5重量%未満では満足な冷間加工性が得られず、かつβ単相領域を形成することができない。また、Mn元素の添加量が20重量%を超えると、十分な耐疲労特性が得られない。従って、好ましいMnの含有量は5〜20重量%となる。
さらに、Ni元素又はCo元素は、冷間加工性を維持したまま固溶強化して、銅系合金の強度を向上させる効果を発揮する。但し、これらの元素の添加量が10重量%を超えた場合には、満足な効果が得られない。
上記基本組成の元素以外に、本実施の形態の銅系合金は、Ni、Co、Fe、Ti、V、Cr、Si、Ge、Nb、Mo、W、Sn、Sb、Mg、P、Be、Zr、Zn、B、C、Ag及びミッシュメタルからなる群から選ばれた1種又は2種以上をさらに含有することができる。
これらの添加元素の含有量は、合計で0.001〜10重量%であるのが好ましく、特に0.001〜5重量%が好ましい。つまり、これらの添加元素の合計含有量が10重量%を超えると、マルテンサイト変態温度が低下し、β’マルテンサイト相が不安定になる。また、これらの添加元素の合計含有量が0.001重量%未満では添加元素による満足な効果が得られない。
ここで、Ni、Co、Fe、Sn及びSbは基地組織の強化に有効な元素である。Ni及びFeの好ましい含有量はそれぞれ0.001〜3重量%である。CoはまたCoAlの形成により析出強化するが、過剰になると銅系合金の靭性を低下させる。Coの好ましい含有量は0.001〜2重量%である。Sn及びSbの好ましい含有量はそれぞれ0.001〜1重量%である。
Tiは合金特性を阻害する元素であるN及びOと結合して、酸化物及び窒化物を形成する。またBと複合添加するとボライドを形成し、析出強化に寄与する。Tiの好ましい含有量は0.001〜2重量%である。
W、V、Nb、Mo及びZrは硬さを向上させて、耐摩耗性を向上させる効果を有する。またこれらの元素はほとんど合金基地に固溶しないので、bcc 結晶として析出し、析出強化に有効である。W、V、Nb、Mo及びZrの好ましい含有量はそれぞれ0.001〜1重量%である。
Crは耐摩耗性及び耐食性を維持するのに有効な元素である。Crの好ましい含有量は0.001〜2重量%である。Siは耐食性を向上させる効果を有する。Siの好ましい含有量は0.001〜2重量%である。Geはマルテンサイト変態温度を上昇させるのに有効な元素である。Geの好ましい含有量は0.001〜2重量%である。
Mgは合金特性を阻害する元素であるN及びOを除去するとともに、阻害元素であるSを硫化物として固定し、熱間加工性や靭性の向上に効果があるが、多量の添加は粒界偏析を招き、脆化の原因となる。Mgの好ましい含有量は0.001〜0.5重量%である。
Pは脱酸剤として作用し、靭性向上の効果を有する。Pの好ましい含有量は0.01〜0.5重量%である。Beは基地組織を強化する効果を有する。Beの好ましい含有量は0.001〜1重量%である。Znの好ましい含有量は0.001〜5重量%である。
B及びCは粒界に偏析し、粒界を強化する効果を有する。B及びCの好ましい含有量はそれぞれ0.001〜0.5重量%である。Agは冷間加工性を向上させる効果を有する。Agの好ましい含有量は0.001〜2重量%である。ミッシュメタルは脱酸剤として作用し、靭性向上の効果を有する。ミッシュメタルの好ましい含有量は0.001〜5重量%である。
以上より、本実施の形態によれば、β’マルテンサイト相中にα相が析出している銅系合金であって、α相の体積分率を5〜80%としたことにより、銅系合金の疲労特性が改善されて、塑性変形域に入るような高歪で繰り返して変形させた場合でも、容易に破壊に至らないような優れた疲労特性を有する銅系合金となる。
次に、本実施の形態に係る銅系合金の製造方法を説明する。
上記組成の銅系合金を一旦溶解してから鋳造し、ビレットを作製した後、850℃の温度で熱間圧延等により熱間加工する。この後、熱処理空冷し冷間圧延等により冷間加工すると共に600℃空冷で焼鈍をするというサイクルを数回繰り返して、板材を作製する。
このようにして得られた板材を再度加熱して、β+αの2相温度域である700〜850℃の温度で熱処理してから、空冷又は水冷により冷却して(β’+α)の2相組織の銅系合金とする。つまり、β’マルテンサイト相中にα相が析出していて、このα相の体積分率が5〜80%とした銅系合金を作製する。従って、銅系合金の製造に際して、上記手順を経ることにより、β’マルテンサイト相マトリックス中にα相が析出したβ’+αの2相組織が得られることになるが、銅系合金をこのβ’+αの2相組織としたときに、高い耐疲労特性が得られるようになる。必要に応じて100〜400℃の温度で時効することにより、マルテンサイト変態温度の安定化あるいは時効硬化による強度上昇が可能である。
次に、以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
まず、(Cu−17.5Al−8.5Mn)−2Ni(at%)の組成を有する銅系合金を一旦溶解した後に凝固して、縦横がそれぞれ約100mmで厚さが12mmの板状のビレットを作製する。次いで、850℃の温度で厚さ2.5mmまでこのビレットを熱間圧延した。
さらに、冷間圧延及び600℃で15分間の焼鈍空冷からなるサイクルを3回繰り返すことで、厚さ1mmの板材を作製した。このようにして得られた厚さ1mmの板材を切断等して試験片に加工し、700〜850℃の温度で5分間の熱処理をした後、空冷又は水冷して(β’+α)の2相組織を有する銅系合金を実施例として作製した。
尚、この際、熱処理温度が高い例えば900℃とすると共に水冷で冷却した場合には、金属組織がβ単相で結晶粒が大きく、耐疲労特性が低下する。また、熱処理温度が低い例えば600℃とした場合には、金属組織がα相になり、同様に耐疲労特性が低下する。この為、700〜850℃の温度範囲が最適なことが、これらの事からも裏付けられたことになる。
次に、上記のようにして得られた板材を加工して形成された実施例の試験片及び比較例の試験片に対して、以下の繰り返し屈曲試験を行った結果を説明する。
まず、サンプルとしては、M2052(Mn系合金)、Brass(黄銅)、SUS304(ステンレス鋼)、SUS430(ステンレス鋼)、Pb、Cu、Fe等の金属を比較例とする他、上記実施例の銅系合金を二種類作製した。具体的には、実施例の銅系合金として、700〜850℃の温度での熱処理をした後、空冷したサンプルと水冷したサンプルをそれぞれ作製した。
また、上記の各サンプルを試験する為の試験片1は、幅寸法を10mmとし、図1に示す厚さTを1mmとし、二箇所の直線部1Aの長さLをそれぞれ40mmとし、曲げ部1Bの外径Dを25mmとしたU字型形状に、それぞれ形成する。そして、図2(A)に示すようなそれぞれ左右方向に延びる一対の固定部材3の中間に、同様に左右方向に沿って延び且つ左右方向に沿って往復動可能な可動部材4を配置した試験装置2に、2つの試験片1を取り付けて繰り返し屈曲試験を行った。
つまり、図2(A)に示すように、試験片1の二箇所の直線部1Aの内の一方の直線部1Aを固定部材3に固定し、他方の直線部1Aを可動部材4に固定するという形で、2つの試験片1を試験装置2にそれぞれ取り付ける。そして、表面最大歪が4%に対応するストロークSが±25mmで周波数が0.3Hzとなるように、図2(B)の状態と図2(C)の状態との間で可動部材4を往復動させて、1往復を1回と計測する形で繰り返し屈曲試験を行った。
この繰り返し屈曲試験の結果、図3に示すグラフのように、空冷された実施例及び水冷された実施例のサンプルは耐疲労特性が高く、空冷した実施例のサンプル(Cu(Ni)ACと表す)の破断までの屈曲回数は1111回であり、また、水冷した実施例のサンプル(Cu(Ni)WQと表す)の破断までの屈曲回数は1000回であった。
尚、図3に示すグラフのように、他の比較例の金属は、数十回〜300回程度の屈曲回数で破断した。以上より、実施例の銅系合金の耐疲労特性が他の比較例のサンプルの耐疲労特性より三倍以上高いことが、この繰り返し屈曲試験により確認された。また、上記のU字型の試験片1による繰り返し屈曲試験において、表面最大歪4%、周波数0.3Hzという条件における破断までの繰り返し屈曲回数が500回以上あれば、十分な性能と言えるので、この点でも実施例の銅系合金は問題が無いことが確認された。
さらに、上記組成の銅系合金を空冷したサンプル及び、同様の銅系合金を水冷したサンプルを熱処理温度を変えて、それぞれ複数種類の作製した。つまり、熱処理の温度条件として、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃、900℃の7条件のサンプルをそれぞれ作製した。そして、上記と同様の試験装置2により上記と同様の試験条件で、各サンプルを繰り返し屈曲試験した。
この繰り返し屈曲試験の結果、図4に示すグラフのように、空冷した実施例のサンプルの特性曲線ACにおいて、熱処理温度が約800℃で、破断までの屈曲回数が1000回以上のピークとなり、また、水冷した実施例のサンプルの特性曲線WQにおいて、熱処理温度が約750℃で、破断までの屈曲回数が同じく1000回以上のピークとなった。
従って、700〜850℃の温度で熱処理をした実施例の銅系合金の内でも、水冷したサンプルに関しては約750℃で熱処理し、空冷したサンプルに関しては約800℃で熱処理したときにおけるβ’相及びα相の混在の2相組織により、最高の耐疲労特性が得られることが、この繰り返し屈曲試験の結果として確認された。
次に、本実施の形態の銅系合金を制振合金として採用した免震装置10を、図5及び図6に基づき説明する。これらの図に示すように、この免震装置10の上下部分をそれぞれ円板状に形成された連結板12、14が構成している。この内の下側の連結板12が地盤と当接し、また上側の連結板14が建築物の下部に当接するような構造になっている。
また、これら一対の連結板12、14の間には、中心部分に円形の穴部16Aを有しつつ円筒状に形成されたゴム体16が配置されている。このゴム体16は、リング状に形成されて弾性変形し得るゴム製のゴムリング18と、リング状に形成されて剛性を維持する為の金属製の金属リング20とが、交互に複数枚ずつ配置された形の構造になっている。
一方、これら一対の連結板12、14は、ゴム体16の上下端にそれぞれ加硫接着されて取り付けられており、また、これら一対の連結板12、14の中心には、それぞれ途中に段部を有した円形の貫通穴12A、14Aが形成されている。但し、これら貫通穴12A、14Aに対応した大きさであって外周側にフランジを有した蓋材30が、ボルト32によるねじ止めによって、一対の連結板12、14にそれぞれ固定されることで、貫通穴12A、14Aがそれぞれ閉鎖されている。
このゴム体16の中心に存在する円形の穴部16Aには、円筒状に形成された制振部材26が嵌まり込むように、配置されており、また、この制振部材26には、銅系合金で弾性変形可能な螺旋状のコイルスプリングの形に形成された制振合金22が内蔵されている。つまり、制振合金22の周囲にゴム材が加硫接着されて、このゴム材によって円筒状に形成された加硫ゴム部24で制振合金22が覆われた形とされている。
次に、本実施の形態の銅系合金を制振合金22として採用した免震装置10の作用を以下に説明する。本実施の形態によれば、弾性変形可能な螺旋状のコイルスプリングとされた銅系合金の制振合金22が、加硫ゴム部24により覆われた形とされており、さらに、この制振合金22と並列的にゴム体16が配置された構造の免震装置10となっている。
これに伴い、本実施の形態に係る免震装置10によれば、地震が生じた場合でも、制振合金22と並列的に配置されて弾性変形するゴム体16とこの制振合金22との間の複合的な作用で地震の揺れを低減し、建築物側に地震の揺れが伝達し難くなる。
つまり、本実施の形態の銅系合金による制振合金22は、地震に際して塑性変形域に入るような高歪で繰り返して変形されることになるが、このような場合でも、容易に破壊に至らないような優れた疲労特性を有するので、免震装置10に採用される制振合金として、最適なものとなる。
一方、本実施の形態の免震装置10に用いられる制振合金22は、銅系合金で弾性変形可能なバネ状に形成されたことで、鉛材を用いずとも上記のような良好な制振特性及び疲労特性を得られる。この為、本実施の形態の免震装置10によれば環境に負荷を与えることもない。そして、鉛材ではなく銅系合金とされているので、周囲を拘束して剪断変形した形で使用する必要もなくなり、制振合金として使用する際の自由度も高くなる。
他方、本実施の形態では、制振合金22が螺旋状のコイルスプリングとされたことで、制振合金22がより確実に変形するようになるので、この制振合金22に引張力や剪断力が加わった際に、より一層、バネ定数が低くなると共に減衰係数が高くなって、より良好な制振特性を有するようにもなる。尚、本実施の形態では、銅系合金にNiが含有された例を基にして説明したが、Niの替わりにCoを含有した銅系合金を制振合金22として用いても良い。
さらに、上記実施の形態では、制振合金22が螺旋状のコイルスプリングとなっているが、制振合金22を他の構造としても良い。また、上記実施の形態では、制振合金22の周囲にゴム材を加硫接着したが、必要な特性が得られれば、ゴム材を用いないようにしたり、或いはゴム材の替わりに合成樹脂で制振合金22の周囲を覆っても良い。そして、上記実施の形態では、免震装置に使用される例を説明したが、制振装置に本発明の銅系合金を用いても良い。
本発明の実施の形態に係る銅系合金等で作製した試験片の正面図である。 本発明の実施の形態に係る銅系合金等で作製した試験片を試験する試験装置を示す図であって、(A)は試験片を取り付ける状態を示す図であり、(B)は試験装置の可動部材が左側に最大限寄った状態を示す図であり、(C)は試験装置の可動部材が右側に最大限寄った状態を示す図である。 繰り返し屈曲試験における実施例と比較例の破断までの回数をそれぞれ表すグラフを示す図である。 繰り返し屈曲試験における破断までの回数と熱処理温度との関係を表すグラフを示す図である。 本発明の実施の形態に係る銅系合金が採用された免震装置の分解斜視図である。 本発明の実施の形態に係る銅系合金が採用された免震装置の断面図である。
符号の説明
1 試験片
2 試験装置
10 免震装置
22 制振合金

Claims (5)

  1. β’マルテンサイト相中にα相が析出している銅系合金において、α相の体積分率が5〜80%であることを特徴とする銅系合金。
  2. 3〜10重量%のAl、5〜20重量%のMn、10重量%以下のNiまたはCo及び、残部をCuとした組成を有することを特徴とする請求項1記載の銅系合金。
  3. 合金全体を100重量%としたとき、Ni、Co、Fe、Ti、V、Cr、Si、Ge、Nb、Mo、W、Sn、Sb、Mg、P、Be、Zr、Zn、B、C、Ag及びミッシュメタルからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を合計で、0.001〜10重量%含有することを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の銅系合金。
  4. 螺旋状のコイルスプリングとされたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の銅系合金。
  5. 請求項1から請求項4の何れかに記載の銅系合金を製造する銅系合金の製造方法であって、
    銅系合金に焼鈍及び冷間加工をした後、
    β+αの2相温度域でこの銅系合金を熱処理することを特徴とする銅系合金の製造方法。
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