JP2007118840A - 車両用リクライナ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】遠心力によってクラッチ機構を機能させ、シートバックの作動速度を緩和する。
【解決手段】シートクッション11側に取付けられた第1の部材(ロアアーム15、シートクッションフレーム17)と、シートバック12側に取付けられた第2の部材(アッパアーム16、シートバックフレーム18)との間に配置され、第2の部材の回転作動に伴う遠心力作用に基づいて作動されて第2の部材に回転抵抗を付与するクラッチ機構39、139を備えた。
【選択図】図2

Description

本発明は、シートバックをシートクッションに対して角度調整可能に支持する車両用リクライナ装置に関するものである。
一般に、車両用リクライナ装置においては、シートバックがリターンスプリングにより自動的に戻ることにより、任意の角度位置にシートバックを素早く固定できる利点があるが、シートバックの素早い戻りによってシートバックが乗員に強い力で衝突する恐れがあり、乗員に不快感を与える場合がある。
このために、例えば、特許文献1あるいは特許文献2に記載されているように、シートバックの戻り速度を緩慢にしたものが種々提案されている。特許文献1に記載のものは、シートバックの起き上がりスピードを緩和させるために、クラッチケースに内包したスプリング端部を拡径方向に変形させてシートバックをロックするとともに、板ばねの弾性変形により反対側のスプリング端部を縮径方向に変形させて回動させ、これを繰り返し行うことにより、シートバックを適宜制動を加えながら前傾させるようにしたものである。一方、特許文献2に記載のものは、シートバックの起き上がりスピードを緩和させるために、ドラム状のカバー内にコイルばねを、シートバック引き起こしリターンスプリングと逆方向に付勢して設け、シートバックが起き上がるにつれてコイルばねがカバー内壁に拡径するようにして、シートバックが起き上がる際のスピードをコイルばねとカバーとの摩擦抵抗により、徐々に遅くなるようにしたものである。
特開平7−137564号公報(段落0022〜0024、図4) 特開平9−252868号公報(段落0012〜0014、図1)
上記した特許文献1に記載のものにおいては、シートバックは、ロック、回動の繰り返しにより、起き上がりスピードに制動が加えられる構成であるため、実際のシートバックの作動はぎこちない動きとなり、使用に際し乗員に不快感を与える恐れがある。また、起き上がりスピードに制動を加えるための付加装置は、乗員が行う通常のシートバックの角度調整の際も機能してしまうため、倒す場合には縮径方向とはいえスプリングを引き連れる抵抗が加わり、起こす場合には起き上がってくる加速がない分、起き上がりトルクがリクライナ装置の作用荷重に負け、調整をうまく行えなくなる恐れがある。
また、上記した特許文献2に記載のものにおいては、シートバックの起き上がりスピードを緩和させるのは、カバー内のスプリングを拡径させることによるため、フルフラット近傍からの勢いのついたスピードを落とすには、通常使用領域において十分な抵抗を発生(スプリングを拡径)させておく必要があるが、その抵抗のために、通常使用領域において乗員がシートバックの角度を調整しようとしても、シートが起きてこなく、調整をうまく行えなくなる恐れがある。
本発明は、上述した従来の問題を解消するためになされたもので、遠心力によってクラッチ機構を機能させ、シートバックの作動速度を緩和できるようにした車両用リクライナ装置を提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、シートバックをシートクッションに対して前方または後方に付勢するリターンスプリングを備えた車両用リクライナ装置において、前記シートクッション側に取付けられた第1の部材と前記シートバック側に取付けられた第2の部材との間に配置され、前記第2の部材の回転作動に伴う遠心力作用に基づいて作動されて前記第2の部材に回転抵抗を付与するクラッチ機構を備えたことを特徴とするものである。
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記クラッチ機構を、前記第1の部材に取付けられた円筒ケースの内周面に摺接可能な摩擦ばねと、前記円筒ケース内に収納され前記第2の部材の回転による遠心力作用によって作動され前記摩擦ばねに作動的に連結される錘体とによって構成したものである。
請求項3に係る発明は、請求項2において、前記クラッチ機構を、前記円筒ケースの内周面に摺接可能な摩擦ばねと、前記円筒ケース内に回転可能に収納され前記摩擦ばねの一端に係合する嵌合体と、前記第2の部材に取付けられ遠心力作用によって前記嵌合体に係合する錘体とによって構成したものである。
請求項4に係る発明は、請求項1において、前記クラッチ機構を、前記第1の部材との間で相対回転可能なケース部材と、該ケース部材と前記第1の部材との間で回転抵抗を付与する抵抗部と、前記第2の部材に設けられたくさび部に収納され遠心力作用によって前記ケース部材に係合する錘体とによって構成したものである。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記クラッチ機構は、前記シートバックが前方に戻る方向に作動される場合にのみ、前記第2の部材に回転抵抗を付与するワンウェイクラッチ機能を有するものである。
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、第1の部材と第2の部材との間に配置され、第2の部材の回転作動に伴う遠心力作用に基づいて作動されるクラッチ機構により、第2の部材に回転抵抗を付与するようにしたので、遠心力作用によってクラッチ機構が作動された場合のみ、シートバックの作動速度を緩和することができ、シートバックが急激に作動することに伴う不測の事態を防止できる。しかも、シートバックの通常の使用時においては、クラッチ機構が作動しないため、シートバックは何らの抵抗もなく作動されるようになり、違和感のない角度調整を行うことができる。
上記のように構成した請求項2に係る発明によれば、クラッチ機構を、第1の部材に取付けられた円筒ケースの内周面に摺接可能な摩擦ばねと、円筒ケース内に収納され遠心力作用によって作動され摩擦ばねに作動的に連結される錘体とによって構成したので、遠心力作用によって錘体が作動されることによって、摩擦ばねによる摺動摩擦抵抗により、シートバックの作動速度を緩和できる。
上記のように構成した請求項3に係る発明によれば、クラッチ機構を、円筒ケースの内周面に摺接可能な摩擦ばねと、円筒ケース内に回転可能に収納され摩擦ばねの一端に係合する嵌合体と、第2の部材に取付けられ遠心力作用によって嵌合体に係合する錘体とによって構成したので、請求項2と同様な効果が得られるとともに、嵌合体によって摩擦ばねによる摺動摩擦抵抗を安定的に機能させることができる。
上記のように構成した請求項4に係る発明によれば、クラッチ機構を、第1の部材との間で相対回転可能なケース部材と、ケース部材と第1の部材との間で回転抵抗を付与する抵抗部と、第2の部材に設けられたくさび部に収納され遠心力作用によってケース部材に係合する錘体とによって構成したので、クラッチ機構をレイアウトの制約を受けることなく付設することができ、クラッチ機構を小スペースに配置することができ、リクライナ装置の小形化を可能にできる。
上記のように構成した請求項5に係る発明によれば、クラッチ機構は、シートバックが前方に戻る方向に作動される場合にのみ、第2の部材に回転抵抗を付与するワンウェイクラッチ機能を有するので、シートバックの起き上がる方向の作動に対してのみ、作動速度が緩和され、シートバックを寝かせる方向については回転抵抗が付与されることを回避できる。
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図2に示すように、車両用リクライナ装置10は、シートクッション11と、シートバック12と、シートクッション11に対するシートバック12の傾きを乗員の好みに応じて調整するリクライニング調整機構13とを備えている。
リクライニング調整機構13は、円盤状のロアアーム15およびアッパアーム16を備え、アッパアーム16はロアアーム15に相対回動可能に嵌合されている。ロアアーム15は、シートクッション11に取付けられたシートクッションフレーム17に溶接等によって固定され、アッパアーム16は、シートバック12に取付けられたシートバックフレーム18に溶接等によって固定されている。
なお、ロアアーム15およびシートクッションフレーム17の少なくとも一方は、請求項における第1の部材を構成しており、アッパアーム16およびシートバックフレーム18の少なくとも一方は、請求項における第2の部材を構成している。
ロアアーム15には、アッパアーム16側に開口して凹部21が半抜き形成され、凹部21はアッパアーム16とロアアーム15の回動軸線Cを中心とする内周面21aを有している。アッパアーム16は、その外周面16aでロアアーム15の内周面21aと摺接するように嵌合され、ロアアーム15とアッパアーム16の摺接面は、互いの回動における軸と軸受として機能している。一方、アッパアーム16には、ロアアーム15側に開口して凹部23が半抜き形成され、凹部23の回動軸線Cを中心とする内周部には全周に亘って内歯23aが形成されている。
ロアアーム15の外周を覆うようにリング部材25がかしめ固定され、リング部材25の一側面はアッパアーム16の外周部を抱きかかえるように回転支持している。これによって、ロアアーム15とアッパアーム16を互いに回動可能に組付けた状態に保持している。
ロアアーム15およびアッパアーム16の凹部21、23内には、シートバック12を調整された角度位置にロックする公知のロック機構27が配設されている。ロック機構27は、主として、ロアアーム15に形成された内歯23aに係脱可能に噛合う係合歯を有するポールと、操作レバーの操作により回転軸28を介して回動されるポールプレートと、ポールプレートの回動によってポールを内歯23aに対して係脱させるカムとによって構成されている。かかるロック機構27は、例えば、特開2003−9978号公報に記載されているように公知の技術であるので、その詳細については省略する。
上記したシートクッションフレーム17には、シートバックフレーム18に対向してプレート30が取付けられている。プレート30には、有底の円筒ケース31が一体的に取付けられ、円筒ケース31は回動軸線Cを中心とする内周面31aを有している。円筒ケース31内には、図3にも示すように、リング状の嵌合体32が回転可能に遊嵌されている。嵌合体32の外周面と円筒ケース31の内周面31aとの間には、摩擦ばね33が円筒ケース31の内周面31aに沿ってうず巻状に巻装され、摩擦ばね33の一端は半径方向内方に折り曲げられて嵌合体32に係止され、他端は円筒ケース31に係止されている。
摩擦ばね33は、円筒ケース31内に縮径した状態で挿入され、常時円筒ケース31の内周面31aに接触されている。これにより、嵌合体32が図3の矢印方向(シートバック12が前方に起き上がる際のシートバックフレーム18の回転方向)に回転されると、摩擦ばね33による摺動摩擦抵抗によって制動力が作用されるようになる。
嵌合体32の内周には円周上等角度間隔に複数の係合凹部32aが形成されている。係合凹部32aの回転方向両端部には、回転方向に直交する係合端面32a1と傾斜端面32a2がそれぞれ形成され、係合端面32a1は図3の矢印方向の前方に、傾斜端面32a2は矢印方向の後方に配置されている。
シートバックフレーム18には、プレート30を貫いて円筒ケース31内に突入する支持ブロック36が固定されている。支持ブロック36には、支持ピン37が回動軸線Cと平行にねじ止めされ、支持ピン37に揺動アーム35の一端が揺動可能に支持されている。揺動アーム35は、シートバックフレーム18の回転作動により発生する遠心力によってその先端部35aが拡径方向に揺動する錘体として機能するもので、図3に示すように、嵌合体32内に円周上2か所配設されている。支持ピン37にはトーションスプリング38が嵌合され、トーションスプリング38の一端は支持ピン37に係止され、他端は揺動アーム35の先端部35aに係止されている。
揺動アーム35は、トーションスプリング38の付勢力によって通常、その先端部35aが半径方向内方に引っ込んだ角度状態に保持され、この状態においては、揺動アーム35は嵌合体32の内周に当接せず、嵌合体32内で自由に回転可能である。しかるに、揺動アーム35にトーションスプリング38の付勢力に打ち勝つ遠心力が作用すると、揺動アーム35はその先端部35aが拡径方向に揺動するように支持ピン37を支点にして揺動される。
これにより、揺動アーム35はその先端部35aが嵌合体32の係合凹部32a内に突入する。そして、このとき、シートバックフレーム18が図3の矢印方向に回転している場合には、揺動アーム35の先端部35aが係合凹部32aの係合端面32a1に係合し、嵌合体32を揺動アーム35とともに回転させる。しかしながら、シートバックフレーム18が図3の反矢印方向に回転している場合には、揺動アーム35の先端部35aは係合凹部32aの傾斜端面32a2に乗り上げて逃げるため、嵌合体32は揺動アーム35とともに回転されない。
従って、シートバックフレーム18が図3の矢印方向に回転する場合、すなわち、シートバック12が前方に戻る場合には、嵌合体32が揺動アーム35とともに矢印方向に回転されるため、摩擦ばね33の摺動抵抗により、嵌合体32およびそれと一体に回転する部材に制動力を作用させる。
上記した円筒ケース31、嵌合体32、摩擦ばね33、揺動アーム35、およびトーションスプリング38等によってクラッチ機構39が構成され、このクラッチ機構39は、シートバック12が勢いよく起こされた場合に発生する遠心力に基づいて作動され、シートバック12の起き上がりスピードを緩和させるように機能する。
41は、シートバックフレーム18に固定されたブラケット42に一端を係止されたリターンスプリングで、リターンスプリング41は、シートバックフレーム18にシートバック12が前方に倒れる方向の付勢力を常に作用しており、従って、上記した操作レバーによる操作によってロック機構27のロックが解除されると、シートバック12はリターンスプリング41の付勢力によって前方に戻されるようになっている。
次に、上記した第1の実施の形態における動作について説明する。乗員が着座した状態でシートバック12の傾斜角度を調整する通常使用領域(図1に示す角度範囲Z1の領域)においては、傾斜角度の調整量が比較的小さいため、シートバック12を前方に戻す際のシートバックフレーム18の回転スピードは低い。従って、揺動アーム35に働く遠心力は小さく、揺動アーム35に作用する遠心力はトーションスプリング38の付勢力に打ち勝つまでには至らない。その結果、揺動アーム35はトーションスプリング38の付勢力によって、先端部35aが半径方向内方に位置する通常の角度状態に保持され、嵌合体32の係合凹部32aに当接しない。
これにより、操作レバーによるシートバック12を前方に戻す操作によって、シートバック12はリターンスプリング41の付勢力により素早く戻され、シートバック12の角度調整を迅速に行い得る。
一方、シートバック12を、例えば、図1の2点鎖線で示すフルフラット状態から勢いよく起き上がらせるような場合には、シートバックフレーム18の回転スピードが高くなるため、揺動アーム35にはトーションスプリング38の付勢力に打ち勝つ遠心力が作用し、この遠心力作用によって揺動アーム35は支持ピン37を支点にして揺動され、図3の2点鎖線で示すように、先端部35aが嵌合体32の係合凹部32aの係合端面32a1に係合する。これにより、嵌合体32は揺動アーム35とともに回動軸線Cの回りに回転される。このようにして、揺動アーム35は嵌合体32を介して摩擦ばね33に作動的に連結されるが、嵌合体32には摩擦ばね33による摺動抵抗が作用するため、シートバック12の戻り速度が摩擦ばね33による摺動抵抗により緩和されるようになり、シートバック12が前傾位置まで急激に回動されることによって、乗員に強い力で衝突する事態を確実に防止できるようになる。
遠心力が小さくなると、揺動アーム35はトーションスプリング38の付勢力によって半径方向内方に揺動され、嵌合体32との係合が解かれるため、摩擦ばね33による摺動抵抗を受けることなく、シートバック12が作動できる。
なお、シートバック12を、逆に勢いよく寝かせたような場合、すなわち、シートバックフレーム18が図3の反矢印方向に速く回転したような場合にも、揺動アーム35が遠心力によって揺動され、嵌合体32の内面に当接するようになるが、シートバックフレーム18の回転方向が揺動アーム35を嵌合体32の傾斜面32a2によって逃がすように作用するため、クラッチ機構39が作動せず、シートバック12を寝かせる方向に素早く作動できるようになる。このように、クラッチ機構39は、ワンウェイクラッチとしての機能も有する。
上記した第1の実施の形態によれば、シートバックフレーム18の回転スピードによって揺動アーム35に作用する遠心力の大きさに基づいてクラッチ機構39が作動される。従って、乗員の通常の使用時においては、クラッチ機構39が作動せず、シートバック12は何らの抵抗なく前方に戻せるようになり、違和感のない角度調整を行うことができる。
これに対して、シートバック12を、勢いよく起き上がらせたような場合には、揺動アーム35に働く遠心力作用に基づいてクラッチ機構39が作動するため、摩擦ばね33と円筒ケース31の内周面31aとの摺動抵抗によって、シートバック12の起き上がりスピードが緩和され、これによって、シートバック12が乗員に強い力で衝突する事態を確実に回避できるようになる。
なお、クラッチ機構39を構成する揺動アーム35あるいはトーションスプリング38等の設定如何によっては、通常使用領域からの比較的短い距離におけるシートバック12の起き上がりの際にも、速度を緩和させるようにすることは可能であり、通常使用領域でクラッチ機構39を作動させないことに限定されるものではない。また、クラッチ機構39が作動して摺動抵抗を発生させるタイミングも、例えば、係合端面32a1の位置や数を調整することにより、適宜設定可能である。
さらに、第1の実施の形態の変形例として、上記した嵌合体32および揺動アーム(錘体)35とは別に、シートバックフレーム18が前記と逆方向に回転した場合に、嵌合体に係合する揺動アーム(錘体)を追加することにより、シートバック12の前方および後方の両方向への急激回転に対応することができる。これにより、シートバック12を手で勢いよく後方に押し倒した場合や全体重をあずけた場合も、所定のスピードや加速度を超えた際には、シートバック12の作動速度を緩和することができ、延いては、シートバック12が後方に急激に倒れることによって乗員が転倒することを防止できるようになる。
図4および図5は、クラッチ機構39の変形例を示すものである。図4に示すものは、円筒ケース31に遊嵌された嵌合体32の内周面に鋸歯状の内歯32bを形成し、一方、揺動アーム35の先端部35aには、遠心力によって拡径方向に揺動された際に、嵌合体32の内歯32bに噛合う係合歯35bを形成したものである。この変形例においても、揺動アーム35の係合歯35bが図4の2点鎖線で示すように、嵌合体32の内歯32bに噛合うと、摩擦ばね33の一端を係止した嵌合体32が揺動アーム35と一体的に回転されるようになり、摩擦ばね33による摺動抵抗が作用する。
また、図5に示すものは、上記した嵌合体を省略するとともに、摩擦ばね33の一端を、揺動アーム35に当接可能な半径方向内方まで延在させたものである。これにより、揺動アーム35が遠心力によって拡径方向に揺動されると、その先端部35aが摩擦ばね33の一端に直接係合し、揺動アーム35が摩擦ばね33に作動的に連結される。なお、図5においては、揺動アーム35と摩擦ばね33の一端との回転方向の遊びを少なくするために、円周上2か所に配設した揺動アーム35にそれぞれ係合する2つの摩擦ばね33a、33bを設けた例で示してあるが、揺動アーム35もしくは摩擦ばね33の本数をさらに増加することもできる。
なお、図4および図5においては、第1の実施の形態で述べた構成部材と同一のものについては同一の符号を付すに止め、その説明は省略する。
次に、本発明の第2の実施の形態を図6、図7および図8に基づいて説明する。第2の実施の形態における車両用リクライナ装置10は、シートバック12を勢いよく起き上がらせた場合に作動するクラッチ機構139の構成が、第1の実施の形態におけるクラッチ機構39と異なるものである。なお、図6においては、ロアアーム15およびアッパアーム16の凹部内に配設されるロック機構の図示を省略してある。
図6および図7において、ロアアーム15とアッパアーム16は、第1の実施の形態で述べたと同様に、ロアアーム15の外周にかしめ固定されたリング部材25によって、相対回動可能に組付け状態に保持されている。リング部材25の外周には、リング状のケース部材51がリング部材25を覆うように配置され、ケース部材51はリング部材25に対して軸方向の移動が規制されている。ケース部材51には、リング部材25の外周面に隙間を有して遊嵌する第1の内周面51aと、アッパアーム16の段付外周面16bに隙間を有して遊嵌する第2の内周面51bが形成されている。
ケース部材51の第1の内周面51aとリング部材25の外周面との間には、例えば樹脂リングからなる摺動抵抗部材52が介在され、ケース部材51は摺動抵抗部材52により摺動抵抗を与えられながら、リング部材25に対して相対回転できるようになっている。ケース部材51の第2の内周面51bに対向するアッパアーム16の段付外周面16bには、くさび部53が円周上複数凹設されている。くさび部53の底面には、図8に詳細図示するように、回転方向に傾斜するくさび面53aが形成され、これによって、くさび部53の深さは、シートバック12が前方に起き上がる際のアッパアーム16の回転方向(図7、図8の矢印方向)に向かって漸次深くなっている。くさび部53内には、錘体としてのローラベアリング54が、くさび面53aに沿って深さが深い位置と浅い位置の間で移動可能に収納されている。ローラベアリング54は、コイルスプリング55の付勢力によってアッパアーム16の回転方向に向けて押圧され、これによって、ローラベアリング54は通常深さが深い方のくさび部53の端面に当接する位置に保持されている。
ローラベアリング54が、くさび部53の深い側の端面に位置している通常の状態においては、ローラベアリング54とケース部材51の第2の内周面51bとの間には隙間が存在し、アッパアーム16はケース部材51と無関係に回転可能である。しかしながら、アッパアーム16(シートバックフレーム18)の回転速度の増加に伴う遠心力作用によって、ローラベアリング54がコイルスプリング55の付勢力に抗してくさび面53aに沿って半径方向外方に移動されると、ローラベアリング54が図8の2点鎖線で示すように、ケース部材51の第2の内周面51bに食い込み、その結果、アッパアーム16の回転がローラベアリング54を介してケース部材51に一体的に伝えられる。これにより、ケース部材51およびアッパアーム16は、摺動抵抗部材52により摺動抵抗を与えられながら、リング部材25に対して相対回転するようになる。
上記したケース部材51、摺動抵抗部材52、くさび部53、ローラベアリング54、およびコイルスプリング55等によってクラッチ機構139が構成され、このクラッチ機構139は、シートバック12が勢いよく起こされた場合に発生する遠心力に基づいて作動され、シートバック12の起き上がりスピードを緩和するように機能する。
第2の実施の形態における車両用リクライナ装置10は、上記したように構成されているので、乗員が着座した状態でシートバック12の傾斜角度を調整する通常使用領域(図1に示す角度範囲Z1の領域)においては、調整角度範囲が比較的小さいため、シートバック12を前方に戻す際のアッパアーム16の回転スピードは低く、ローラベアリング54に働く遠心力は小さい。従って、ローラベアリング54はコイルスプリング55の付勢力によって、くさび部53の深い側の端面に当接する位置に保持され、ローラベアリング54はケース部材51の第2の内周面51bには当接しない。
従って、操作レバーによるシートバック12を前方に戻す操作によって、シートバック12はリターンスプリング41の付勢力により素早く戻され、シートバック12の角度調整を迅速に行い得る。
一方、シートバック12を、勢いよく起き上がらせたような場合には、アッパアーム16の回転スピードが高くなるため、遠心力も大きくなり、この遠心力作用によってローラベアリング54がコイルスプリング55の付勢力に抗してくさび面53aに沿って半径方向外方に移動される。その結果、図8の2点鎖線で示すように、ローラベアリング54がケース部材51の第2の内周面51bに食い込み、アッパアーム16の回転がローラベアリング54を介してケース部材51に伝えられるため、ケース部材51がアッパアーム16と一体的に回転される。この際、ケース部材51は、摺動抵抗部材52により摺動抵抗を与えられているため、シートバック12の戻りスピードが緩和される。
なお、シートバック12を、勢いよく寝かせたような場合、すなわち、アッパアーム16が図7および図8の反矢印方向に速く回転した場合にも、ローラベアリング54が遠心力によってケース部材51の第2の内周面51bに当接されるようになるが、アッパアーム16の回転方向がくさび部53に対してローラベアリング54を逃がす方向に作用するので、ケース部材51は摺動抵抗部材52による摺動抵抗により、アッパアーム16と一体に回転されることがない。このように、クラッチ機構139は、上記したクラッチ機構39と同様に、ワンウェイクラッチとしての機能を有する。
上記した第2の実施の形態によれば、クラッチ機構139が、第1の実施の形態で述べたクラッチ機構39と同様に、アッパアーム16(シートバックフレーム18)の回転作動に伴う遠心力が大きい場合にのみ作動され、シートバック12の起き上がりスピードを緩和させるように機能する。しかも、第1の実施の形態におけるロアアーム15の外周部に、クラッチ機構139をユニット配置するだけで、車両用リクライナ装置10を構成できるため、第1の実施の形態における円筒ケース31を廃止でき、レイアウトの制約を受けることなく、小スペースにクラッチ機構139を配置できるようになり、リクライナ装置10の小形化を可能にできる。
さらに第2の実施の形態の変形例として、上記したくさび部53に併設して逆向きのくさび部を追加するとともに、このくさび部に錘体としてのローラベアリングを収納することにより、シートバック12の前方および後方の両方向への急激回転に対応することができる。これにより、上述したと同様に、シートバック12が後方に急激に倒れることによって乗員が転倒することを防止できるようになる。
なお、第2の実施の形態においては、摺動抵抗部材52によってシートバック12の作動に抵抗(摺動摩擦抵抗)を与えるようにしたが、かかる抵抗は、摺動摩擦抵抗に限定されるものではなく、例えば、流体のせん断抵抗を利用した流体抵抗手段等、他の抵抗部材によっても付与できるものである。
上記した実施の形態においては、シートバックをリターンスプリングによって前方に付勢した例について説明したが、本発明は、シートバックのみならず、例えば、リヤシートのアレンジ手段(前倒しされたシートバックとともにシートクッションを前方に起き上がらせて、シートをタンブル状態にする手段)として後方付勢されたシートへの適用も可能である。
また、上記した実施の形態においては、ケース部材51とリング部材25の間に、例えば樹脂リングからなる摺動抵抗部材52を設けて回転抵抗を付与するようにしたが、摺動抵抗部材等をわざわざ設けることなく、もともとリクライナ装置が持っているリング部材25等のカシメリング自体を抵抗部材として利用することもできるものである。
斯様に、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
車両用シートを示す図である。 本発明の第1の実施の形態を示す車両用リクライナ装置の断面図である。 図2のA−A線に沿って切断した断面図である。 図3の変形例を示す断面図である。 図3のさらに別の変形例を示す断面図である。 本発明の第2の実施の形態を示す車両用リクライナ装置の断面図である。 図6のB−B線に沿って切断した断面図である。 図7の要部を拡大した断面図である。
符号の説明
10…車両用リクライナ装置、11…シートクッション、12…シートバック、13…リクライニング調整機構、15、17…第1の部材(ロアアーム、シートクッションフレーム)、16、18…第2の部材(アッパアーム、シートバックフレーム)、25…リング部材、27…ロック機構、31…円筒ケース、31a…内周面、32…嵌合体、33…摩擦ばね、35…錘体(揺動アーム)、37…支持ピン、38…トーションスプリング、39、139…クラッチ機構、41…リターンスプリング、51…ケース部材、52…摺動抵抗部材、53…くさび部、54…錘体(ローラベアリング)、55…コイルスプリング。

Claims (5)

  1. シートバックをシートクッションに対して前方または後方に付勢するリターンスプリングを備えた車両用リクライナ装置において、前記シートクッション側に取付けられた第1の部材と前記シートバック側に取付けられた第2の部材との間に配置され、前記第2の部材の回転作動に伴う遠心力作用に基づいて作動されて前記第2の部材に回転抵抗を付与するクラッチ機構を備えたことを特徴とする車両用リクライナ装置。
  2. 請求項1において、前記クラッチ機構を、前記第1の部材に取付けられた円筒ケースの内周面に摺接可能な摩擦ばねと、前記円筒ケース内に収納され前記第2の部材の回転による遠心力作用によって作動され前記摩擦ばねに作動的に連結される錘体とによって構成してなる車両用リクライナ装置。
  3. 請求項2において、前記クラッチ機構を、前記円筒ケースの内周面に摺接可能な摩擦ばねと、前記円筒ケース内に回転可能に収納され前記摩擦ばねの一端に係合する嵌合体と、前記第2の部材に取付けられ遠心力作用によって前記嵌合体に係合する錘体とによって構成してなる車両用リクライナ装置。
  4. 請求項1において、前記クラッチ機構を、前記第1の部材との間で相対回転可能なケース部材と、該ケース部材と前記第1の部材との間で回転抵抗を付与する抵抗部と、前記第2の部材に設けられたくさび部に収納され遠心力作用によって前記ケース部材に係合する錘体とによって構成してなる車両用リクライナ装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記クラッチ機構は、前記シートバックが前方に戻る方向に作動される場合にのみ、前記第2の部材に回転抵抗を付与するワンウェイクラッチ機能を有する車両用リクライナ装置。

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