JP2007113934A - 電子線照射方法および電子線照射装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電子線照射領域内に発生させた複数の磁場を繋ぎ合せて形成した磁場バリヤMF内で飲料容器30(対象物)に電子線EBを照射する。
【選択図】図1
Description
特許文献1に記載の技術では、電子線照射領域に向けて電子線を照射する電子線照射手段と、電子線照射領域の周囲に配置されて複数の磁場を発生させる複数の磁場偏向器とを備えている。そして、立体的な対象物を電子線照射領域内に搬送する搬送手段をさらに備えた電子線照射装置が開示されている。
これら特許文献1、特許文献2に開示されている構成によれば、搬送手段にて対象物を電子線照射領域内に搬送し、次いで、電子線照射手段にて電子線を発生して電子線照射領域内に照射し、この照射された電子線をそれぞれの磁場偏向器にて偏向することによって、対象物の各所に電子線を照射することができる。
また、対象物が、例えば複雑な凹凸がある立体物である場合やシート状部材である場合は、電子線照射手段の照射部に対し、対象物の反対面側への照射は、電子を偏向した場合であっても、ラーマ半径が大きく、フリンジングがあるため照射が困難である。なお、対象物や反射板での二次電子によって、対象物の反対面側に電子線を照射する提案もされているものの、このような二次電子は空間距離による損失が大きいため、その照射量を確保し且つ均一に照射することはやはり難しい。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、低エネルギーの電子線であっても、電子線を対象物に均一に照射できる電子線照射方法および電子線照射装置を提供することを目的としている。
また、本発明は、対象物に電子線を照射する電子線照射装置であって、対象物が設置される電子線照射領域内に電子線を照射する電子線照射手段と、前記電子線照射領域内に発生させる複数の磁場を繋ぎ合せて前記対象物を取り囲むような磁場バリヤを形成する磁場バリヤ形成手段とを備えていることを特徴としている。
また、前記磁場バリヤ形成手段は、その発生させる磁場の強度を調整して前記磁場バリヤ内での電子線の反射距離および反射方向の少なくとも一方を変えられるようになっていることが好ましい。このような構成であれば、電子反射方向の無秩序性をさらに効果的に得られる。そのため、対象物にさらに効率的で均一な電子線の照射が可能となる。
また、このような磁場発生体は、永久磁石、電磁石または円形コイルのいずれかを備えて構成されていることが好ましい。このような構成であれば、所望の磁場を適宜の条件に合わせて効率良く形成することができる。
また、前記対象物を前記電子線照射領域を通過可能に搬送する対象物搬送手段をさらに備えていることが好ましい。このような構成であれば、当該対象物を流している、バッチ式の生産ラインあるいは連続式の生産ラインの途中にて本発明を適用できる。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る電子線照射装置を示す概略構成図である。なお、同図では、電子線照射装置の本体部分をなす略円筒形状の電子線の照射槽を、その軸線を含む断面にて示している。
この電子線照射装置では、まず、飲料容器30を対象物搬送装置にて、その固定具13に係止しつつ対象物搬入口からチャンバ1内に搬入し、チャンバ1内での所定の位置に設置した後に対象物搬入口を閉じる。このとき、チャンバ1内には、カスプ磁場による磁場バリヤMFを、チャンバ1に設置(この例では、外壁面)された複数の永久磁石4によって、飲料容器30を取り囲むようにチャンバ内周壁18に沿って発生させている。そして、飲料容器30は、チャンバ1内で固定具13によって垂下して、いわば浮いている状態にしている。
ここで、図2に、磁場バリヤMF内での電子の軌道をシミュレーションした結果を示す。なお、同図に示すシミュレーションの条件は、チャンバ1内部の寸法が直径φ200mm、高さ200mmとし、磁石には、幅8mm、高さ40mm(ヨーク付きでは約20mm)のネオジウム磁石を用いる設定とした。なお、その残留磁束密度は13000ガウスである。そして、上記所定の位置として、この磁石の取り付けピッチ(カスプ磁場のピッチ)を約30mmに設定した。また、チャンバ1内部の雰囲気条件は、0.01MPaの低真空状態、雰囲気ガスは空気としている。同図は、この設定で形成した磁場バリヤMF内に向けてエネルギー100kVの電子を磁場の最も弱い所に対して当てた際の軌跡を計算したものである。
図3は、本発明の第二の実施形態に係る電子線照射装置を示す概略構成図である。なお、上記第一の実施形態と同様の構成については同一の符号を附し、その説明については適宜省略する。
この第二の実施形態は、上記第一の実施形態に対し、チャンバ1の底部に取り付けたカスプ磁場発生用の磁場発生体である永久磁石の配置距離や方向を変更可能に構成することにより、チャンバ1内に突入した電子EBをさらに無秩序に運動させ得る構成とした点が異なっている。
図4は、本発明の第三の実施形態に係る電子線照射装置を示す概略構成図であり、同図(a)はその正面図、同図(b)はその平面図を示し、それぞれ電子線の照射槽を断面にて図示している。なお、上記各実施形態と同様の構成については同一の符号を附し、その説明については適宜省略する。
この第三の実施形態は、電子線照射領域を囲むチャンバ内に上記第一の実施形態での磁場バリヤ形成手段を備えており、特に、バッチ式の生産ラインで飲料容器30に電子線を照射するのに好適な装置構造とした例である。
さらに、この電子線照射装置は、対象物搬入口21aからチャンバ21内に飲料容器30を搬入するとともに、対象物搬出口21bから飲料容器30を搬出する対象物搬送手段である対象物搬送装置28を備えている。この対象物搬送装置28は、不図示の駆動機構と、上記同様の固定具13とを有する。これにより、対象物搬送装置28は、不図示の駆動機構を稼働させることによって、飲料容器30の首部分を固定具13で係止しつつ搬送して対象物搬入出口21a,21bから搬入出可能になっている。このとき、飲料容器30は、同図(b)に示すように、上記第一実施形態同様に、固定具13によってチャンバ21内で垂下されることで、いわば浮いている状態でチャンバ21内での所定の位置に設置可能になっている。なお、対象物搬入出口21a,21b部分には、各遮蔽扉27の開閉に対して固定具13および飲料容器30が扉と干渉しないように、非干渉領域にこれらを退避できる不図示の退避機構を備えている。
このような構成を備えた電子線照射装置によれば、まず、チャンバ21の対象物搬入出口21a,21bの各遮蔽扉27が開いた状態で、固定具13に係止されているライン上の各飲料容器30を、対象物搬送装置28によって流れ方向に所定量だけ移動する。次いで、対象物搬入出口21a,21bの各遮蔽扉27をそれぞれ閉じる。そして、上記各実施形態同様に、チャンバ21内を負圧状態にする。なお、残留する酸素分子に電子線EBが当たって発生するオゾンによる匂いや腐食などが問題となるような対象物に電子線EBを照射する場合には、必要性に応じて、比重の軽いヘリウムガスを空気に替えて封入する。次いで、広い電子線照射窓20全面よりチャンバ21内の電子線照射領域に電子線EBを照射する。これにより、電子線EBが電子線照射領域内の飲料容器30に照射される。このとき、電子線照射窓20より電子線照射領域に照射された電子線EBは、チャンバ21内の各磁石支持部材22内側に形成されたカスプ磁場による磁場バリヤMFおよび底部の磁場バリヤMF2によって、上記各実施形態同様、電子線EBが磁場バリヤMF、MF2内をランダム反射して、磁場バリヤMF、MF2内を、いわば電子シャワー状態にすることができる。したがって、電子線照射領域内の各飲料容器30に、ムラ無く、均一に電子線EBを照射することができる。次いで、電子線EBを所定時間照射した後に、チャンバ21内を大気圧に戻してから、チャンバ21の対象物搬入出口21a,21bの各遮蔽扉27をそれぞれ開く。
また、この電子線照射装置によれば、対象物搬送装置28の対象物回転機構26により、飲料容器30を回転させている。これにより、飲料容器30にさらに効率良く電子EBを照射することができる。
また、この電子線照射装置によれば、チャンバ21に対象物搬入出口21a,21bを設けそれぞれに遮蔽扉27を備えている。これにより、チャンバ21内を低真空や特定ガスの雰囲気にする等、対象物まわりの雰囲気を所定の状態に保つことがより容易になる。
なお、本発明に係る電子線照射方法および電子線照射装置は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
また、上記各実施形態では、電子線の照射槽は、対象物まわりの雰囲気を所定の状態に管理可能な耐圧構造の密封容器であるチャンバを例に説明したが、これに限定されず、電子線の照射槽を開放型に構成してもよい。このような構成であっても、対象物を取り囲むように発生させた磁場によって磁場バリヤを形成し、対象物に照射する電子線をその磁場バリヤ内で反射させれば、本発明に係る電子線照射方法および電子線照射装置の作用・効果を奏することができる。しかし、電子線のエネルギーロスをより軽減する上では、上記実施形態のように、対象物まわりの雰囲気を所定の状態に管理可能な照射槽(チャンバ)とすることが好ましい。
また、上記各実施形態では、磁場発生体は、永久磁石で構成されている例で説明したが、これに限定されず、磁場発生体は、例えば、電磁石、円形コイル、あるいは永久磁石を含めてこれらの組合わせで構成されていてもよい。
また、上記各実施形態は、それぞれの構成を適宜に選択して相互に組み合わせることができるのは勿論である。
3 電子線照射手段
4、19、23 永久磁石(磁場発生体)
5、20 電子線照射窓
5 電子線照射手段
6 ガス封入口
7 ガス吸引口
10 電子偏向器(照射角度変更手段)
11 真空排気装置
12 (ヘリウムガス)ボンベ
13 固定具
14 ターンテーブル
15 支持軸
18 チャンバ内周壁
22 磁石支持部材
26 対象物回転機構
27 遮蔽扉
28 対象物搬送装置(対象物搬送手段)
30 飲料容器(対象物)
50 空気導入口
51 フィルタ
EB 電子線
MF、MF2 磁場バリヤ
Claims (11)
- 電子線照射領域内に発生させた複数の磁場を繋ぎ合せた磁場バリヤを形成し、該磁場バリヤ内で対象物に電子線を照射することを特徴とする電子線照射方法。
- 対象物が設置される電子線照射領域内に電子線を照射する電子線照射手段と、前記電子線照射領域内に発生させる複数の磁場を繋ぎ合せて前記対象物を取り囲むような磁場バリヤを形成する磁場バリヤ形成手段とを備えていることを特徴とする電子線照射装置。
- 前記磁場バリヤ形成手段は、前記磁場バリヤを、カスプ磁場またはミラー磁場から形成することを特徴とする請求項2に記載の電子線照射装置。
- 前記磁場バリヤ形成手段は、その発生させる磁場の強度を調整して前記磁場バリヤ内での電子線の反射距離および反射方向の少なくとも一方を変えられるようになっていることを特徴とする請求項2または3に記載の電子線照射装置。
- 前記磁場バリヤ形成手段は、その発生させる磁場の方向の調整、および回転磁界の発生の有無の少なくとも一方によって、前記磁場バリヤ内での電子線の反射方向を変えられるようになっていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の電子線照射装置。
- 前記磁場バリヤ形成手段は、前記電子線照射領域内での対象物を取り囲むように配置されて前記磁場をそれぞれ発生する複数の磁場発生体を有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の電子線照射装置。
- 前記磁場発生体は、永久磁石、電磁石または円形コイルのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項6に記載の電子線照射装置。
- 前記対象物を内部に収容するとともに、当該対象物まわりの雰囲気を真空の状態、または、負圧から正圧までの雰囲気ガスで充満された状態に管理する照射槽をさらに備え、前記雰囲気ガスは、空気、酸素、窒素、水素、二酸化炭素、アルゴン、およびヘリウムから選ばれる一または複数のものであることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の電子線照射装置。
- 前記電子線照射手段は、その照射する電子線の照射角度を変えられる照射角度変更手段を有することを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の電子線照射装置。
- 前記対象物を前記電子線照射領域を通過可能に搬送する対象物搬送手段をさらに備えていることを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載の電子線照射装置。
- 前記対象物は容器またはシート状部材であり、当該容器またはシート状部材に電子線を照射してこれの殺菌に用いることを特徴とする請求項2〜10のいずれか一項に記載の電子線照射装置。
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