JP2007113471A - 内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】圧縮行程長よりも膨張行程長の方を大きくしつつ、燃焼室内に残留するガスの掃気効率を向上させること。
【解決手段】この内燃機関1は、第1歯車11及びこれと噛み合って、回転しながら第1歯車11の周囲を公転運動する第2歯車12を備える。第1歯車11に対する第2歯車12のギヤ比は1である。ピストン3はコンロッド4の大端部4lが、第2歯車12に設けられるコンロッド取付ピン12Pに組み付けられる。コンロッド取付ピン12Pは、第2歯車12の自転中心軸Z2に対して偏心した位置に配置される。また、コンロッド取付ピン12Pは、第2歯車12と前記ピストン3との間に第1歯車11が位置する関係において第2歯車12の自転中心軸Z2がシリンダ2のシリンダ軸Zc上にある場合には、シリンダ軸Zcに対してオフセットする位置に配置される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、圧縮行程長よりも膨張行程長の方が大きい内燃機関に関する。
圧縮行程長よりも膨張行程長を大きくして、燃焼のエネルギーを仕事としてより有効に取り出す技術が知られている。例えば、特許文献1には、固定ギヤの周囲を公転する移動ギヤを備えてなり、コンロッドの大端部を移動ギヤの偏心位置に連結するとともに、固定ギヤに対する移動ギヤのギヤ比を2としたエンジンのクランク機構が開示されている。
特開2002−242602号公報
しかし、特許文献1に開示された技術では、特許文献1に開示された技術では、排気上死点と圧縮上死点とが同じ位置であるため、燃焼室内に残留するガスの掃気が不十分になる。さらに、特許文献1に開示された技術では、排気上死点と圧縮上死点とが同じ位置であるため、例えば、軽負荷において圧縮比を高く設定することにより燃料消費を低減するようにしても、負荷が高くなると吸入空気量が不十分になったりノッキングが発生したりして、燃料消費の低減が図れず、また出力を低下してしまう。このように、特許文献1に開示されている技術では、内燃機関の運転条件の広い範囲で、内燃機関の性能を向上させるためには限界がある。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、圧縮行程長よりも膨張行程長の方を大きくしつつ燃焼室内に残留するガスの掃気効率を向上させること、圧縮行程長よりも膨張行程長の方を大きくしつつ、内燃機関の運転条件の広い範囲で内燃機関の性能を向上させることのうち、少なくとも一つを達成できる内燃機関を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る内燃機関は、シリンダ内を往復運動するピストンと、第1歯車と、前記第1歯車と噛み合って、回転しながら前記第1歯車の周囲を公転運動する第2歯車と、第1端部が前記ピストンに組み付けられ、また、前記第1端部とは反対側の第2端部が、前記第2歯車に組み付けられるコンロッドと、前記第2歯車に設けられて、前記第2歯車の自転中心軸に対して偏心する位置に前記第2端部を組み付け、さらに、前記第2歯車と前記ピストンとの間に前記第1歯車が位置する関係において前記第2歯車の自転中心軸が前記シリンダのシリンダ軸上にある場合には、前記シリンダ軸に対してオフセットする位置に配置されるコンロッド組み付け部材と、前記第2歯車の公転運動を、前記第2歯車の公転運動の公転中心軸を回転中心とする回転運動に変換するクランクと、を含むことを特徴とする。
この内燃機関は、上記構成により、排気上死点と圧縮上死点との位置を異ならせることができる。そして、排気上死点を圧縮上死点よりもシリンダヘッドに近づければ、圧縮行程長よりも膨張行程長の方を大きくしつつ燃焼室内に残留するガスの掃気効率を向上させることができる。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記第2歯車の公転中心軸が、前記シリンダ軸に対してオフセットすることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記コンロッド組み付け部材は、前記第2歯車の回転方向に対して反対方向にオフセットすることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、シリンダと、前記シリンダ内を往復運動するピストンとを備える内燃機関であり、第1歯車と、前記第1歯車と噛み合って、回転しながら前記第1歯車の周囲を公転運動する、前記第1歯車に対するギヤ比が1の第2歯車と、第1端部が前記ピストンに組み付けられ、また、前記第1端部とは反対側の第2端部が前記第2歯車に組み付けられるコンロッドと、前記第2歯車に設けられ、前記第2歯車の回転中心に対して偏心する位置に前記第2端部を組み付けるコンロッド組み付け部材と、前記第2歯車の公転運動を、前記第2歯車の公転運動の公転中心軸を回転中心とする回転運動に変換するクランクと、前記内燃機関の運転条件に応じて、前記第1歯車を所定の角度回転させる第1歯車駆動手段と、を含むことを特徴とする。
この内燃機関は、上記構成により、例えば、軽負荷時には高圧縮比、かつ吸排気行程長を短くして燃料消費を低減し、高負荷時には低圧縮比、かつ吸排気行程を長くして燃料消費の低減及びトルクの向上を図ることができる。このように、この内燃機関は、圧縮行程長よりも膨張行程長の方を大きくしつつ、内燃機関の運転条件の広い範囲で内燃機関の性能を向上させることができる。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記第1歯車駆動手段は、前記内燃機関の排気温度の昇温が要求される場合、前記第1歯車を前記第2歯車の回転方向に対して逆方向に所定の角度回転させることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記第1歯車回転手段は、前記内燃機関の負荷が軽い場合には、前記第1歯車を、負荷が高い場合に対して前記第2歯車の回転方向に対して逆方向に所定の角度回転させることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記内燃機関は、火花点火を併用するディーゼル機関であり、前記第1歯車回転手段は、前記内燃機関が火炎伝播燃焼領域で運転される場合には、前記第1歯車を、ディーゼル燃焼領域に対して前記第2歯車の回転方向と同じ方向に所定の角度回転させ、前記内燃機関がディーゼル燃焼領域で運転される場合には、前記第1歯車を、火炎伝播領域に対して前記第2歯車の回転方向と反対方向に所定の角度回転させることを特徴とする。
本発明に係る内燃機関によれば、圧縮行程長よりも膨張行程長の方を大きくしつつ燃焼室内に残留するガスの掃気効率を向上させること、圧縮行程長よりも膨張行程長の方を大きくしつつ、内燃機関の運転条件の広い範囲で内燃機関の性能を向上させることのうち、少なくとも一つを達成できる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態に開示する構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。本発明は、ピストンの往復運動を回転運動に変換する、いわゆるレシプロ式の内燃機関に対して好適に適用でき、火花点火式、ディーゼル式は問わない。
(実施形態1)
実施形態1に係る内燃機関は、次の点に特徴がある。すなわち、コンロッドを介してシリンダ内におけるピストンの往復運動を出力軸へ伝達するものであり、第1歯車に噛み合って回転しながらその周囲を公転する第2歯車の回転中心に対して偏心した位置に、連結棒の第2端部(大端部)が取り付けられる。第1歯車に対する第2歯車のギヤ比は1である。そして、第2歯車とピストンとの間に第1歯車が位置する関係、かつ、第2歯車の自転中心軸がシリンダのシリンダ軸上にある場合において、連結棒の第2端部はシリンダ軸に対してオフセットした位置に取り付けられる。ここで、シリンダ軸とは、内部をピストンが往復運動するシリンダの中心軸をいい、ピストンの往復方向と平行な軸である。
図1は、実施形態1に係る内燃機関の一部を示す正面図である。図2は、実施形態1に係る内燃機関の一部を示す側面図である。実施形態1に係る内燃機関1は、ガソリンを燃料とする火花点火式のレシプロ式の内燃機関である。なお、上述したように、内燃機関1は、ディーゼル式であってもよいし、火花点火を併用するディーゼル機関であってもよい。また、内燃機関1の気筒数及び気筒配置は限定されるものではない。
この内燃機関1は、吸気通路を構成する吸気ポート5iに、ポート噴射弁8を備える。このポート噴射弁8は、シリンダ2内の燃焼室2b内へ空気を導入するための吸気ポート5i内へ燃料Fを噴射して、混合気を形成する。ここで、燃焼室2bは、燃料Fと空気Aとの混合気が燃焼する空間をいう。なお、内燃機関1は、ポート噴射弁8の代わりに、燃焼室2b内へ直接燃料Fを噴射する直噴燃料噴射弁を備えてもよい。また、ポート噴射弁8と、前記直噴燃料噴射弁との両方を備えてもよい。
吸気ポート5iは、吸気通路を構成するインテークマニホールド5imと接続されており、インテークマニホールド5imから導入される空気Aを燃焼室2b内へ導く。インテークマニホールド5imの空気入口側にはスロットル弁18が取り付けられており、これによって内燃機関1へ供給する空気量を調整する。また、スロットル弁18の入口側に設けられる吸気通路5pには、内燃機関1の燃焼室2b内へ導入される空気の流量を計測するエアフローセンサ41が取り付けられる。
内燃機関1の燃焼室2bへ導入される空気Aは、エアフローセンサ41で質量流量が計測される。そして、スロットル弁18を通過してからインテークマニホールド5imを通って吸気ポート5iへ導入される。吸気ポート5iに設けられたポート噴射弁8は、エアフローセンサ41で計測された前記空気Aの質量流量に応じた量の燃料Fを噴射する。
吸気ポート5i内の空気Aと燃料Fとは吸気ポート5i内で混ざり合い、混合気となって吸気口6iから燃焼室2b内へ流入する。この混合気は、火花点火手段である点火プラグ7によって点火されて燃焼し、燃焼ガスの圧力がピストン3を往復運動させる。燃焼後の混合気は排ガスExとなり、排気通路を構成する排気ポート5eから排出される。
ピストン3には、ピストンピン3pが取り付けられている。ピストンピン3pは、連結棒(以下コンロッドいう)4の第1端部(以下小端部という)4sに貫通している。これによって、コンロッド4は、ピストン3へ揺動可能に組み付けられる。ピストン3の往復運動は、コンロッド4を介してこの実施形態に係るクランク機構10へ伝達される。そして、ピストン3の往復運動は、クランク機構10で回転運動に変換されて、内燃機関1の出力として取り出される。次に、この実施形態に係るクランク機構10の構成を説明する。
このクランク機構10は、支持部(クランクケース9)に取り付けられる第1歯車11と、第1歯車と噛み合って、その周囲を回転しながら公転運動する第2歯車12と、第2歯車12の公転運動を、第2歯車12の公転中心軸Z1を回転中心軸とする回転運動に変換するクランク13とを含んで構成される。第1歯車11は、第1歯車支持部材11Sによって、クランクケース9に固定される。
第1歯車11に対する第2歯車12ギヤ比は1である。すなわち、第1歯車11の歯数と第2歯車12の歯数との比は1:1である。第2歯車12は、歯車部12Gと、歯車部12Gと一体に構成されるコンロッド取付部12Bとを含んで構成される。また、コンロッド取付部12Bには、コンロッド4の大端部4lを第2歯車12に組み付けるコンロッド組み付け部材であるコンロッド取付ピン12Pが設けられる。
コンロッド取付ピン12Pは、歯車部12Gの取り付け側とは反対側であって、第2歯車12の自転中心軸Z2に対して偏心して設けられる。そして、コンロッド4の第2端部(以下大端部)4lにコンロッド取付ピン12Pがはめ込まれて、コンロッド4は、コンロッド取付ピン12Pに対して回転可能に組み付けられる。これによって、コンロッド4の大端部4lは、第2歯車12と一体となって回転運動し、第1歯車の周りを公転運動する。
また、この実施形態においては、大端部4lの中心の偏心量、すなわちコンロッド取付ピン12Pの中心と、第2歯車12の自転中心軸Z2との距離r1は、第1歯車11の半径(第1歯車11のピッチ円半径)rよりも大きくなっている。ここで、第1歯車11に対する第2歯車12のギヤ比は1なので、大端部4lの中心の偏心量は、第2歯車12の半径(第2歯車12のピッチ円半径)r2よりも大きくなっている。
なお、前記偏心量は、第1歯車11の半径rより小さくてもよいが、あまり小さくすると吸気行程における行程長を十分に確保できなくなる。したがって、前記偏心量は、第1歯車11の半径r以上の大きさとすることが好ましく、より好ましくは第1歯車11の半径rの1.5倍以上、さらには第1歯車11の半径rの2倍以上が好ましい。また、前記第1歯車11の直径(2×r)に対する前記偏心量の割合を変更することによって、圧縮行程における行程長に対する膨張行程における行程長を変化させることができる。
図2に示すように、クランク13には第1歯車支持部材11Sが貫通しており、第1歯車支持部材11Sの周りをクランク13は回転する。これによって、クランク13は、第2歯車12が第1歯車11の周りを回転しながら公転する公転運動を、第2歯車12の公転中心軸Z1を回転中心軸とする回転運動に変換する。この回転運動は、出力軸15に取り付けられる伝達ギヤ14を介して取り出される。
図1に示すように、第2歯車12が第1歯車11に対してピストン3の反対側に位置する関係、すなわち、第2歯車12とピストン3との間に第1歯車11が位置する関係にあり、かつ、第2歯車12の自転中心軸Z2がシリンダ2のシリンダ軸Zc上にある場合(この位置を膨張下死点位置という)、コンロッド取付ピン12Pは、シリンダ軸Zcとオフセットした位置に設けられる。コンロッド取付ピン12Pに組み付けられるコンロッド4の大端部4lは、膨張下死点位置においてシリンダ軸Zcに対してオフセットした位置に設けられる。この実施形態においては、第2歯車12の回転方向(図1中の矢印R方向)とは反対側にオフセットした位置にコンロッドの大端部4lが設けられる。
図3−1、図3−2は、実施形態1に係るクランク機構を用いた場合におけるコンロッドの大端部の軌跡を示す説明図である。このクランク機構10の第2歯車12に設けられるコンロッド取付ピン12Pは、第2歯車12の自転中心軸Z2を中心として旋回しながら、第2歯車12の公転中心軸Z1を中心としても旋回する。これにしたがって、コンロッド取付ピン12Pに取り付けられるコンロッド4の大端部4lは、図3−1に示すような軌跡を描いて第1歯車11の周りを移動する。これにより、膨張行程長(圧縮上死点から膨張下死点位置までの行程長)を、圧縮行程長(吸気下死点から圧縮上死点までの行程長)よりも大きくすることができる。その結果、混合気の燃焼によるエネルギーを有効に利用して、内燃機関1の熱効率を向上させることができる。
この実施形態に係る内燃機関1が備えるクランク機構10では、膨張下死点位置において、コンロッド4の大端部4lは、第2歯車12の回転方向(図1中の矢印R方向)とは反対側にオフセットした位置に設けられる。これによって、図3−1に示すように、ピストン3は、圧縮上死点TDC−Cよりも排気上死点TDC−Eの方がシリンダヘッド2hに接近する。その結果、燃焼後の排ガスをより確実に燃焼室2bから掃気することができるので、燃焼室2b内に残留する燃焼ガス(残留ガス)を低減して、ノッキング等の異常燃焼を抑制できる。
図3−2に示すコンロッドの大端部の軌跡は、コンロッド4の大端部4lを、膨張下死点位置において、第2歯車12の回転方向(図1中の矢印R方向)に向かってオフセットした位置に設けた場合のものである。この場合、図3−2に示すように、排気上死点TDC−Eよりも圧縮上死点TDC−Cの方が、ピストン3はシリンダヘッド2hに接近する。これによって、内燃機関1の圧縮比を大きくすることができる。このように、膨張下死点位置において、コンロッド4の大端部4lをシリンダ軸Zcに対してオフセットさせることにより、排気上死点TDC−E及び圧縮上死点TDC−Cの位置を変更することができる。
図4、図5は、膨張行程長/圧縮行程長と、偏心量/第1歯車径との関係を示す説明図である。図4は、第1歯車に対する第2歯車のギヤ比が2の場合を示す。図5は、第1歯車に対する第2歯車のギヤ比が1の場合を示す(この実施形態に係るクランク機構)。図6は、実施形態1に係る内燃機関が備えるクランク機構におけるピストン位置とクランク角との関係を示す説明図である。図7は、第1歯車に対する第2歯車のギヤ比が2の場合におけるピストン位置とクランク角との関係を示す説明図である。なお、図6、図7は、偏心量/第1歯車径をパラメータとしており、クランク角は1サイクルを1として表してある。
図6に示すように、第1歯車に対する第2歯車のギヤ比を2とした場合には、膨張行程長/圧縮行程長が最大1.6に制限される。なお、第1歯車に対する第2歯車のギヤ比を2よりも大きくすると、膨張行程長/圧縮行程長は、最大でも1.6に制限される。一方、この実施形態に係る内燃機関1が備えるクランク機構10は、第1歯車に対する第2歯車のギヤ比を1としているので、図5に示すように、膨張行程長/圧縮行程長を1.6よりも大きくすることができる。
また、第1歯車に対する第2歯車のギヤ比を2とした場合、膨張行程長/圧縮行程長を大きくしようとすると、偏心量/第1歯車径を2に近づける必要がある(図5)。しかし、第1歯車に対する第2歯車のギヤ比を2とした場合、偏心量/第1歯車径を2に近づけようとすると、図7に示すように、吸気下死点近傍でピストン3が1往復余計に動くため、ピストン3とシリンダ2との摩擦が増加する。この実施形態に係る内燃機関1が備えるクランク機構10は、第1歯車に対する第2歯車のギヤ比を1としている。これによって、膨張行程長/圧縮行程長を大きくするために偏心量/第1歯車径を変更しても、吸気下死点近傍でピストン3が1往復余計に動くことはなく、ピストン3とシリンダ2との摩擦の増加を抑制できる。
(第1変形例)
図8は、この実施形態の第1変形例に係るクランク機構の構成を示す概念図である。この変形例に係るクランク機構は、シリンダ軸と第2歯車の公転中心軸とがオフセットする点に特徴がある。他の構成は実施形態1に係るクランク機構と同様の構成である。この変形例に係るクランク機構10aでは、図8に示すように、シリンダ軸Zcに対して、クランク機構10aを構成する第2歯車12aの公転中心軸Z1がオフセットしている。
この変形例においては、排気上死点がシリンダヘッド2hに接近する方向に第2歯車12aの公転中心軸Z1をオフセットさせる。すなわち、第2歯車12aとピストン3aとの間に第1歯車11aが位置する関係において第2歯車12aの自転中心軸Z2がシリンダ2のシリンダ軸Zc上にある場合には、第2歯車12aの公転中心軸Z1を、シリンダ軸Zcに対して公転方向とは反対方向にオフセットさせる。これによって、図8に示すように、ピストン3は、圧縮上死点TDC−Cよりも排気上死点TDC−Eの方がシリンダヘッド2hに接近する。その結果、燃焼ガスをより確実に燃焼室2bから掃気することができるので、燃焼室2b内の残留ガスを低減して、ノッキング等の異常燃焼を抑制できる。ここで、第2歯車12aの公転中心軸Z1のオフセットを規定するときに用いる公転方向とは、膨張下死点近傍における第2歯車12aが第1歯車11aの周りを公転する方向(図8中のRp)において、第2歯車12aの公転円(例えば自転中心軸Z2の軌跡)とシリンダ軸Zcの軸線とが交差する位置における前記公転円の接線方向と平行な方向をいう。
なお、第2歯車12aの公転中心軸Z1を、シリンダ軸Zcに対して第2歯車の公転する方向とは反対方向にオフセットさせると、膨張行程において、ピストン3aのスラスト力が増加する。このため、上記実施形態1に係るクランク機構10のように、膨張下死点位置において、コンロッド4の大端部4lを、第2歯車12aの回転方向(図8中の矢印R方向)とは反対方向にオフセットした位置に組み付ける。これによって、ピストン3aは、圧縮上死点TDC−Cよりも排気上死点TDC−Eの方がシリンダヘッド2hに接近するので、シリンダ軸Zcに対する第2歯車12の公転中心軸Z1のオフセット量を少なくしても、排気上死点TDC−Eをシリンダヘッド2h側へ接近させることができる。その結果、膨張行程におけるピストン3aのスラスト力増加を抑制しつつ排気上死点TDC−Eをシリンダヘッド2h側へ接近させて、燃焼室2b内の燃焼ガスをより確実に掃気できる。
(第2変形例)
図9−1、図9−2は、実施形態1の第2変形例に係るクランク機構の構成を示す概念図である。この変形例に係るクランク機構は、シリンダ軸と第2歯車の公転中心軸とがオフセットする点では上記第1変形例と同様であるが、オフセットの方向が異なる。この変形例に係るクランク機構10bでは、図9に示すように、シリンダ軸Zcに対して、クランク機構10bを構成する第2歯車12bの公転中心軸Z1がオフセットしている。
この変形例においては、膨張行程におけるピストン3のスラスト力が減少し、かつ圧縮上死点がシリンダヘッド2hに接近する方向に第2歯車12bの公転中心軸Z1をオフセットさせる。すなわち、第2歯車12bとピストン3bとの間に第1歯車11bが位置する関係において、第2歯車12bの自転中心軸Z2がシリンダ2のシリンダ軸Zc上にある場合には、第2歯車12bの公転中心軸Z1を、シリンダ軸Zcに対して公転方向と同じ方向にオフセットさせる。これによって、図9−1に示すように、ピストン3bは、排気上死点TDC−Eよりも圧縮上死点TDC−Cの方がシリンダヘッド2hに接近する。その結果、膨張行程におけるピストン3bのスラスト力を低減できるとともに、圧縮比を大きくすることができる。
なお、上記第2変形例の構成では、膨張行程におけるピストン3bのスラスト力を低減できるが、圧縮上死点TDC−Cが排気上死点TDC−Eよりもシリンダヘッド2hに接近するため、燃焼ガスの掃気効率を向上させにくくなる。したがって、膨張行程におけるピストン3bのスラスト力を低減しつつ燃焼ガスの掃気効率を向上させたい場合、上記実施形態1に係るクランク機構10のように、膨張下死点位置において、コンロッド4の大端部4lを、第2歯車12aの回転方向(図9−2中の矢印R方向)とは反対方向にオフセットした位置に組み付ける。
これによって、ピストン3bは、圧縮上死点TDC−Cよりも排気上死点TDC−Eの方をシリンダヘッド2hに接近させることができるので、膨張行程におけるピストン3bのスラスト力を低減しつつ、排気上死点TDC−Eをシリンダヘッド2h側へ接近させることができる。その結果、排気上死点TDC−Eをシリンダヘッド2h側へ接近させて、燃焼室2b内の燃焼ガスをより確実に掃気でき、また、膨張行程におけるピストン3bのスラスト力増加を抑制できる。
以上、実施形態1及びその変形例では、第2歯車とピストンとの間に第1歯車が位置する関係において、第2歯車の自転中心軸がシリンダのシリンダ軸上にある場合には、シリンダ軸に対してコンロッドの大端部をオフセットして第2歯車に組み付ける。これによって、排気上死点と圧縮上死点との位置を異ならせることができる。そして、排気上死点を、圧縮上死点よりもシリンダヘッドに近づければ、圧縮行程長よりも膨張行程長の方を大きくしつつ燃焼室内に残留するガスの掃気効率を向上させることができる。
なお、この実施形態では、次の発明が開示される。この発明に係る内燃機関は、シリンダ内を往復運動するピストンと、第1歯車と、前記第1歯車と噛み合って、回転しながら前記第1歯車の周囲を公転運動する、前記第1歯車に対するギヤ比が1の第2歯車と、第1端部が前記ピストンに組み付けられ、また、前記第1端部とは反対側の第2端部が、前記第2歯車に組み付けられるコンロッドと、前記第2歯車に設けられて、前記第2歯車の自転中心軸に対して偏心する位置に前記第2端部を前記第2歯車に組み付けるコンロッド組み付け部材と、前記第2歯車の公転運動を、前記第2歯車の公転中心軸を回転中心とする回転運動に変換するクランクと、を含み、さらに、前記第2歯車と前記ピストンとの間に前記第1歯車が位置する関係において前記第2歯車の自転中心軸が前記シリンダのシリンダ軸上にある場合には、前記第2歯車の公転運動の公転中心軸が、前記シリンダのシリンダ軸に対して公転方向とは反対方向にオフセットすることを特徴とする。
これにより、排気上死点が圧縮上死点よりもシリンダヘッドに近づくので、残留ガスの掃気効率が向上する。このとき、次の発明に係る内燃機関のように、前記内燃機関において、前記第2歯車と前記ピストンとの間に前記第1歯車が位置する関係において前記第2歯車の自転中心軸が前記シリンダのシリンダ軸上にある場合には、前記コンロッド組み付け部材は、前記シリンダ軸に対し、前記第2歯車の回転方向とは反対方向にオフセットする位置に配置されるようにすることが好ましい。これによって、膨張行程においてピストンに発生するスラスト力を緩和できる。
(実施形態2)
実施形態2は、上記実施形態と同様の構成であるが、第1歯車を回転させることによりピストンの排気上死点、圧縮上死点及び吸排気行程長を変更する点が異なる。他の構成は、上記実施形態1と同様である。図10は、実施形態2に係る内燃機関の一部を示す正面図である。図11は、実施形態2に係る内燃機関の一部を示す側面図である。
この内燃機関1Cが備えるクランク機構は、第1歯車11cが、第1歯車回転軸Z3を中心として回転可能に構成されている。なお、第1歯車回転軸Z3は、第2歯車12cの公転中心軸Z1と同一である。すなわち、第1歯車11cは、第2歯車12cの公転中心軸Z1を中心として回転可能に構成される。第1歯車11cは、第1歯車軸16に接続されたアクチュエータ(例えばステッピングモータや油圧シリンダ等)17によって駆動され、回転する。アクチュエータ17は、機関ECU(Electronic Control Unit)30に組み込まれている内燃機関の運転制御装置50によって制御される。内燃機関の運転制御装置50の構成については後述する。
図12は、第1歯車の回転方向と、ピストンの排気上死点、圧縮上死点及び吸排気行程長との関係を示す説明図である。図12に示すように、第1歯車11cを第2歯車12cの回転方向と同じ方向に回転させると(図10の矢印R1方向)、排気上死点はシリンダヘッド2hに近づき(上昇)、圧縮上死点はシリンダヘッド2hから遠ざかる(下降)。そして、吸排気行程長は増加する。一方、第1歯車11cを第2歯車12cの回転方向とは反対方向に回転させると(図10の矢印R2方向)、排気上死点はシリンダヘッド2hから遠ざかり(下降)、圧縮上死点はシリンダヘッド2hに近づく(上昇)。そして、吸排気行程長は減少する。
このように、実施形態2に係る内燃機関1Cは、クランク装置10cの第1歯車11cを回転させることで、ピストン3cの排気上死点、圧縮上死点及び吸排気行程長を変化させることができる。また、吸排気行程長の変化にともない、圧縮比を変化させることもできる。そして、この実施形態においては、内燃機関1Cの運転条件や、内燃機関1Cを搭載した車両の走行条件に応じて、排気、圧縮上死点や吸排気行程長等を制御することにより、内燃機関1Cの諸性能を向上させることができる。次に、この実施形態に係る内燃機関の運転制御装置50について説明する。
図13は、実施形態2に係る内燃機関の運転制御装置である。内燃機関の運転制御装置50は、機関ECU30に組み込まれて構成されている。なお、機関ECU30とは別個に、この実施例に係る内燃機関の運転制御装置50を用意し、これを機関ECU30に接続してもよい。そして、この実施例に係る内燃機関の運転制御方法を実現するにあたっては、機関ECU30が備える内燃機関1の制御機能を、前記内燃機関の運転制御装置50が利用できるように構成してもよい。
内燃機関の運転制御装置50は、運転条件判定部51と、行程変更部52とを含んで構成される。これらが、この実施例に係る内燃機関の運転制御を実行する部分となる。運転条件判定部51と、行程変更部52とは、機関ECU30の入出力ポート(I/O)39を介して接続される。これにより、運転条件判定部51と、行程変更部52とは、それぞれ双方向でデータをやり取りできるように構成される。なお、装置構成上の必要に応じて片方向でデータを送受信するようにしてもよい(以下同様)。
内燃機関の運転制御装置50と機関ECU30の処理部30Pと記憶部30Mとは、機関ECU30に備えられる入出力ポート(I/O)39を介して接続されており、これらの間で相互にデータをやり取りすることができる。これにより、内燃機関の運転制御装置50は機関ECU30が有する内燃機関1Cの負荷(あるいは負荷率)や機関回転数その他の内燃機関の運転制御データを取得したり、内燃機関の運転制御装置50の制御を機関ECU30の内燃機関の運転制御ルーチンに割り込ませたりすることができる。
また、入出力ポート(I/O)39には、エアフローセンサ41、クランク角センサ42、アクセル開度センサ43、吸気温度計44、冷却水温センサ45その他の、内燃機関1Cの運転に関する情報を取得するセンサ類が接続されている。これにより、機関ECU30や内燃機関の運転制御装置50は、内燃機関1Cの運転制御に必要な情報を取得することができる。また、入出力ポート(I/O)39には、アクチュエータ17等の、内燃機関1Cの制御対象が接続されており、内燃機関の運転制御装置50が備える行程変更部52や、機関ECU30の処理部30Pからの制御信号によりこれらの動作が制御される。
記憶部30Mには、この実施形態に係る内燃機関の運転制御の処理手順を含むコンピュータプログラムや、内燃機関1Cの運転制御に用いる判定マップ等が格納されている。ここで、記憶部30Mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。また、内燃機関の運転制御装置50や機関ECU30の処理部30Pは、メモリ及びCPUにより構成することができる。
上記コンピュータプログラムは、運転条件判定部51や行程変更部52や処理部30Pへ既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、この実施形態に係る内燃機関の運転制御の処理手順を実現できるものであってもよい。また、この内燃機関の運転制御装置50は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、運転条件判定部51、行程変更部52の機能を実現するものであってもよい。次に、この内燃機関の運転制御装置50を用いて、この実施形態に係る内燃機関の運転制御を実現する手順を説明する。なお、この説明にあたっては、適宜図10〜図14を参照されたい。
図14−1〜図14−4は、実施形態2に係る内燃機関の運転制御の手順を示すフローチャートである。実施形態2に係る内燃機関の運転制御は、実施形態2に係る内燃機関の運転制御装置50によって実現できる。まず、図14−1に示す内燃機関の運転制御を説明する。この内燃機関の運転制御は、浄化触媒19の暖機や浄化触媒(特にNOx吸蔵還元触媒)をS(硫黄)被毒から回復させる場合等のように、浄化触媒19の温度を上昇させる必要がある場合の制御(以下、触媒昇温制御という)である。
触媒昇温制御を実行するにあたり、実施形態2に係る内燃機関の運転制御装置(以下運転制御装置という)50が備える運転条件判定部51は、触媒の昇温が必要であるか否かを判定する(ステップS101)。例えば、浄化触媒19の暖機が必要か否かを判定する場合は、運転条件判定部51が冷却水温センサ45から内燃機関1Cの冷却水温度Tcを取得する。そして、Tcが所定の暖機終了判定温度Tcfよりも低い場合には、浄化触媒19の暖機が必要であると判定する。また、S被毒からの回復のため浄化触媒19の昇温が必要であるか否かを判定する場合には、例えば、内燃機関1Cの運転時間を昇温制御のパラメータとし、予め設定した運転時間が経過したら、浄化触媒19を昇温させる必要があると判定する。
浄化触媒を昇温させる必要がない場合には(ステップS101:No)、通常の運転制御とする(ステップS102)。例えば、ピストン3cの排気上死点と圧縮上死点とを同じ位置とし、吸排気行程長も同じ長さとする。浄化触媒を昇温させる必要がある場合には(ステップS101:Yes)、行程変更部52は、通常の運転制御時よりも圧縮上死点がシリンダヘッド2hに近づくように第1歯車11cを制御する。すなわち、行程変更部52は、アクチュエータ17を駆動して、第1歯車11cを、第2歯車12cの回転方向とは反対方向に所定の角度回転させる(ステップS103)。
これにより、内燃機関1Cの圧縮比が増加する。また、排気上死点は通常の運転制御時よりもシリンダヘッド2hから遠ざかるので、残留ガスも増加する。内燃機関1Cの圧縮比が増加すること及び残留ガスが増加することにより圧縮温度が上昇する。これによって、火花点火式の内燃機関においては点火時期の遅角可能領域が拡大し、また、ディーゼル機関においては、燃料噴射時期の遅角可能領域が拡大する。その結果、点火時期や燃料噴射時期を大幅に遅角しても安定した燃焼が得られるので、点火時期等を大幅に遅角することによって排気温度をより高い温度に上昇させることができる。そして、浄化触媒19の昇温を促進することができる。
次に、図14−2に示す内燃機関の運転制御を説明する。この内燃機関の運転制御は、内燃機関1Cの負荷に応じて排気、圧縮上死点や吸排気行程長等を制御することにより、燃料消費の低減、エミッションの改善、出力向上を図るものである。なお、この制御の概念は、火花点火式、ディーゼル式を問わず適用できるが、次の説明においては内燃機関1Cが火花点火式である場合を例とする。
この運転制御を実行するにあたり、運転制御装置50が備える運転条件判定部51は、エアフローセンサ41から内燃機関1Cの吸入空気量を取得し、内燃機関1Cの負荷KLを算出する(ステップS201)。図15−1、図15−2は、内燃機関の負荷に対する第1歯車の角度を記述した制御マップである。図15−1に示す制御マップ60において、第1歯車11cの角度が0度であるときは、圧縮上死点と排気上死点とが同じ位置であることを示し、この位置を第1歯車11cの中立位置とする。符号の+は、第2歯車12cと同じ方向に第1歯車11cを回転させることを意味し、符号の−は、第2歯車12cとは反対方向に第1歯車11cを回転させることを意味する。
この制御マップ60は記憶部30Mに格納されており、運転条件判定部51がステップS201で算出した負荷KLを与えると、それに対応した第1歯車11cの角度を行程変更部52に返すようになっている。制御マップ60に記述される内燃機関1Cの負荷KLと第1歯車11cの角度との関係は、予め実験やシミュレーション等により求めておく。
運転条件判定部51が負荷KLを算出したら、これを制御マップ60に与える。制御マップは、与えられた負荷KLから、そのときの第1歯車11cの角度θを決定する(ステップS202)。制御マップ60は、決定された第1歯車11cの角度(例えば−θa)を行程変更部52へ返す。行程変更部52は、アクチュエータ17を駆動して、第1歯車11cの角度が決定された角度となるように、第1歯車11cを所定の角度回転させる(ステップS203)。
この実施形態において、第1歯車11cの角度は次のように決定される。すなわち、内燃機関1Cが軽負荷であるときには、第1歯車を第2歯車の回転方向とは反対方向(−方向)に回転させて、圧縮上死点がシリンダヘッド2hに近づくように第1歯車11cを制御する。これによって、内燃機関1が火花点火式である場合には、内燃機関1の圧縮比が高くなるので理論熱効率が向上する。また、燃料の蒸発性が改善されるとともに、吸気行程が短くなるのでポンピングロスも低減する。これらの作用により、燃料消費を低減でき、また、NOxの発生量も低減できる。
内燃機関1がディーゼル機関である場合には、内燃機関1の圧縮比が高くなることによるシリンダ内の温度上昇によって燃焼騒音を低減できる。また、内燃機関1の圧縮比が高くなることによって理論熱効率の向上、燃料の蒸発性向上、及び吸気行程が短くなることによるポンピングロスの低減といった作用が得られる。これらの作用により、燃料消費を低減でき、また、NOxの発生量も低減できる。
内燃機関1Cが高負荷であるときには、第1歯車11cを第2歯車12cの回転方向と同じ方向(+方向)に回転させて、排気上死点がシリンダヘッド2hに近づくように、第1歯車11cを所定の角度回転させる。これによって、内燃機関1が火花点火式である場合には、内燃機関1の圧縮比が低くなるとともに、掃気効率が向上して残留ガスの量も低減できる。その結果、ノッキングが抑制されるとともに、掃気効率の向上によって充填効率も向上するので、内燃機関1Cのトルクが向上する。また、燃料消費も抑制できる。内燃機関1がディーゼル機関である場合には、内燃機関1の圧縮比が低くなることによる最大シリンダ内圧力の低減、シリンダ内への吸入空気量の増加により、トルクが向上する。また、スモークの発生も低減できる。
図15−2に示す制御マップ61は、内燃機関1の負荷(負荷率)KLが、最小負荷KLminから最大負荷KLmaxまで変化する過程で、第1歯車11cの回転方向を、第2歯車12cの回転方向とは逆方向(−)から、第2歯車12cの回転方向と同じ方向(+)まで徐々に変化させる。このようにすると、内燃機関1の負荷に応じてより細かい制御ができるので、燃料消費をさらに低減できる。ここで、軽負荷とは、負荷率で25%程度までをいい、中負荷とは負荷率で25%程度から75%程度までをいい、高負荷とは負荷率で75%程度を超えることをいう。
次に、図14−3に示す運転制御を説明する。この内燃機関の運転制御は、内燃機関1Cが、火花点火を併用するディーゼル機関である場合の制御であり、燃焼モードに応じて排気、圧縮上死点や吸排気行程長等を制御するものである。この内燃機関の運転制御を実行するにあたり、運転制御装置50が備える運転条件判定部51は、内燃機関1Cの負荷KLを算出する(ステップS301)。
図16−1、図16−2は、内燃機関の負荷に対する第1歯車の角度を記述した制御マップである。図16に示す制御マップ62において、第1歯車11cの角度が0度であるときは、圧縮上死点と排気上死点とが同じ位置であることを示し、この位置を第1歯車11cの中立位置とする。この制御マップ62は記憶部30Mに格納されており、運転条件判定部51がステップS301で算出した負荷KLを与えると、それに対応した第1歯車11cの角度を行程変更部52に返すようになっている。制御マップ60に記述される内燃機関1Cの負荷KLと第1歯車11cの角度との関係は、予め実験やシミュレーションにより求めておく。
運転条件判定部51が負荷KLを算出したら、これを制御マップ62に与える。制御マップは、与えられた負荷KLから、そのときの第1歯車11cの角度(例えば+θb)を決定する(ステップS302)。制御マップ62は、決定された第1歯車11cの角度θを、行程変更部52へ返す。行程変更部52は、アクチュエータ17を駆動して、第1歯車11cの角度が決定された角度となるように、第1歯車11cを所定の角度回転させる(ステップS303)。
この実施形態において、第1歯車11cの角度は次のように決定される。すなわち、内燃機関1Cが火炎伝播燃焼領域(軽負荷)であるときには、第1歯車を第2歯車の回転方向と同じ方向(+)に回転させて、排気上死点がシリンダヘッド2hに近づくように第1歯車11cを制御する。これによって、内燃機関1の圧縮比が低くなるので、圧縮行程における温度が低下する。また、排気上死点がシリンダヘッド2hに近づくので、残留ガスが低減されて、シリンダ内の温度が低下する。これらの作用により、ノッキングが抑制されるので、安定した火炎伝播燃焼が実現できる。
内燃機関1Cがディーゼル燃焼領域(高負荷)であるときには、第1歯車を第2歯車の回転方向とは反対方向(−)に回転させて、圧縮上死点がシリンダヘッド2hに近づくように第1歯車11cを制御する。これによって、内燃機関1の圧縮比が高くなるとともに、残留ガスが増加する。これによって、ディーゼル燃焼領域(高負荷)においては圧縮行程における温度が上昇するので、着火遅れ期間の短いディーゼル燃焼が実現できる。このように、この制御においては、火花点火を併用するディーゼル機関において、燃焼モードに応じて排気、圧縮上死点や吸排気行程長等を制御するので、異なる燃焼モードを安定して両立させることができる。
図16−2に示す制御マップ63は、このとき、内燃機関1の負荷(負荷率)KLに応じて燃焼モードを火花点火による火炎伝播燃焼又はディーゼル燃焼のいずれか一方に決定する。そして、燃焼モードを切り替える際には、所定の負荷KLcを境として、第1歯車11cを不連続的に差動させる。このようにすると、内燃機関1Cの燃焼モードに応じてより細かい制御ができるので、異なる燃焼モードをさらに安定して両立させることができる。なお、決定した燃焼モードにおいては、内燃機関1の負荷(負荷率)KLに応じて第1歯車11cを徐々に回転させる。
次に、図14−4に示す運転制御を説明する。この内燃機関の運転制御は、内燃機関1Cが搭載される車両の運転状態に応じて、内燃機関1Cの排気、圧縮上死点や吸排気行程長等を制御するものである。なお、この制御の概念は、火花点火式、ディーゼル式を問わず適用できるが、次の説明においては内燃機関1Cが火花点火式である場合を例とする。
この運転制御を実行するにあたり、運転制御装置50が備える運転条件判定部51は、アクセル開度センサ43、ブレーキセンサ46から情報を取得し、内燃機関1Cが搭載されている車両の走行条件を判定する。アクセル開度センサ43からの情報から、車両が加速状態にあると運転条件判定部51が判定した場合(ステップS401:Yes)、行程変更部52は、吸排気行程長が増加する方向に制御する(ステップS402)。具体的には、行程変更部52は、アクチュエータ17を駆動して、第1歯車11cを第2歯車12cの回転方向と同じ方向に、所定の角度回転させる。これによって、吸排気行程長が大きくなるので、吸入空気量が増加して、加速性が向上する。内燃機関1Cが過給機を備える場合には、過給圧力の立ち上がりも改善するので、より加速性が向上する。
車両が加速状態にないと運転条件判定部51が判定した場合(ステップS401:No)、運転条件判定部51は、車両が減速状態にあるか否かを判定する(ステップS403)。例えば、ブレーキセンサ46の情報から、ブレーキが踏まれたと判定された場合や、アクセル開度センサ43の情報から、エンジンブレーキが要求されていると判定された場合が、車両が減速状態にある状態である。
車両が減速状態にある場合(ステップS403:Yes)、行程変更部52は、吸排気行程長が大きくなるように制御する(ステップS404)。具体的には、行程変更部52は、アクチュエータ17を駆動して、第1歯車11cを第2歯車12cの回転方向と同じ方向に、所定の角度回転させる。これによって、ポンピング仕事が増加するので、エンジンブレーキの効きが向上し、より確実に車両を制動することができる。
車両が減速状態にない場合(ステップS403:No)、運転条件判定部51は、車両が定速走行していると判定する(ステップS405)。この場合、行程変更部52は、吸排気行程長が減少するように、第1歯車11cを所定の角度回転させる(ステップS406)。これによって、ポンピング仕事が減少するので、燃料消費を低減できる。
以上、実施形態2では、第1歯車を回転させることによりピストンの排気上死点、圧縮上死点及び吸排気行程長を変更する。これによって、例えば、軽負荷時には高圧縮比、かつ吸排気行程長を短くして燃料消費を低減し、高負荷時には低圧縮比、かつ吸排気行程を長くして燃料消費の低減及びトルクの向上を図ることができる。このように、実施形態2では、圧縮行程長よりも膨張行程長の方を大きくしつつ、内燃機関の運転条件の広い範囲で内燃機関の性能を向上させることができる。
以上のように、本発明に係る内燃機関は、シリンダ内をピストンが往復する、いわゆるレシプロ式の内燃機関に有用であり、特に、圧縮行程長よりも膨張行程長の方を大きくする内燃機関に適している。
実施形態1に係る内燃機関の一部を示す正面図である。 実施形態1に係る内燃機関の一部を示す側面図である。 実施形態1に係るクランク機構を用いた場合におけるコンロッドの大端部の軌跡を示す説明図である。 実施形態1に係るクランク機構を用いた場合におけるコンロッドの大端部の軌跡を示す説明図である。 膨張行程長/圧縮行程長と、偏心量/第1歯車径との関係を示す説明図である。 膨張行程長/圧縮行程長と、偏心量/第1歯車径との関係を示す説明図である。 実施形態1に係る内燃機関が備えるクランク機構におけるピストン位置とクランク角との関係を示す説明図である。 第1歯車に対する第2歯車のギヤ比が2の場合におけるピストン位置とクランク角との関係を示す説明図である。 実施形態1の第1変形例に係るクランク機構の構成を示す概念図である。 実施形態1の第2変形例に係るクランク機構の構成を示す概念図である。 実施形態1の第2変形例に係るクランク機構の構成を示す概念図である。 実施形態2に係る内燃機関の一部を示す正面図である。 実施形態2に係る内燃機関の一部を示す側面図である。 第1歯車の回転方向と、ピストンの排気上死点、圧縮上死点及び吸排気行程長との関係を示す説明図である。 実施形態2に係る内燃機関の運転制御装置である。 実施形態2に係る内燃機関の運転制御の手順を示すフローチャートである。 実施形態2に係る内燃機関の運転制御の手順を示すフローチャートである。 実施形態2に係る内燃機関の運転制御の手順を示すフローチャートである。 実施形態2に係る内燃機関の運転制御の手順を示すフローチャートである。 内燃機関の負荷に対する第1歯車の角度を記述した制御マップである。 内燃機関の負荷に対する第1歯車の角度を記述した制御マップである。 内燃機関の負荷に対する第1歯車の角度を記述した制御マップである。 内燃機関の負荷に対する第1歯車の角度を記述した制御マップである。
符号の説明
1、1C 内燃機関
2 シリンダ
2h シリンダヘッド
2b 燃焼室
3、3a、3b、3c ピストン
3p ピストンピン
4 コンロッド
4l 大端部
9 クランクケース
10、10a、10b、10c クランク機構
11、11a、11b、11c 第1歯車
11S 歯車支持部材
12、12a、12b、12c 第2歯車
12P コンロッド取付ピン
12B コンロッド取付部
12G 歯車部
13 クランク
17 アクチュエータ
19 浄化触媒
30 機関ECU
50 内燃機関の運転制御装置
51 運転条件判定部
52 行程変更部

Claims (7)

  1. シリンダ内を往復運動するピストンと、
    第1歯車と、
    前記第1歯車と噛み合って、回転しながら前記第1歯車の周囲を公転運動する第2歯車と、
    第1端部が前記ピストンに組み付けられ、また、前記第1端部とは反対側の第2端部が、前記第2歯車に組み付けられるコンロッドと、
    前記第2歯車に設けられて、前記第2歯車の自転中心軸に対して偏心する位置に前記第2端部を組み付け、さらに、前記第2歯車と前記ピストンとの間に前記第1歯車が位置する関係において前記第2歯車の自転中心軸が前記シリンダのシリンダ軸上にある場合には、前記シリンダ軸に対してオフセットする位置に配置されるコンロッド組み付け部材と、
    前記第2歯車の公転運動を、前記第2歯車の公転運動の公転中心軸を回転中心とする回転運動に変換するクランクと、
    を含むことを特徴とする内燃機関。
  2. 前記第2歯車の公転中心軸が、前記シリンダ軸に対してオフセットすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
  3. 前記コンロッド組み付け部材は、前記第2歯車の回転方向に対して反対方向にオフセットすることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。
  4. シリンダと、前記シリンダ内を往復運動するピストンとを備える内燃機関であり、
    第1歯車と、
    前記第1歯車と噛み合って、回転しながら前記第1歯車の周囲を公転運動する、前記第1歯車に対するギヤ比が1の第2歯車と、
    第1端部が前記ピストンに組み付けられ、また、前記第1端部とは反対側の第2端部が前記第2歯車に組み付けられるコンロッドと、
    前記第2歯車に設けられ、前記第2歯車の回転中心に対して偏心する位置に前記第2端部を組み付けるコンロッド組み付け部材と、
    前記第2歯車の公転運動を、前記第2歯車の公転運動の公転中心軸を回転中心とする回転運動に変換するクランクと、
    前記内燃機関の運転条件に応じて、前記第1歯車を所定の角度回転させる第1歯車駆動手段と、
    を含むことを特徴とする内燃機関。
  5. 前記第1歯車駆動手段は、
    前記内燃機関の排気温度の昇温が要求される場合、前記第1歯車を前記第2歯車の回転方向に対して逆方向に所定の角度回転させることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関。
  6. 前記第1歯車回転手段は、
    前記内燃機関の負荷が軽い場合には、前記第1歯車を、負荷が高い場合に対して前記第2歯車の回転方向に対して逆方向に所定の角度回転させることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関。
  7. 前記内燃機関は、火花点火を併用するディーゼル機関であり、
    前記第1歯車回転手段は、前記内燃機関が火炎伝播燃焼領域で運転される場合には、前記第1歯車を、ディーゼル燃焼領域に対して前記第2歯車の回転方向と同じ方向に所定の角度回転させ、
    前記内燃機関がディーゼル燃焼領域で運転される場合には、前記第1歯車を、火炎伝播領域に対して前記第2歯車の回転方向と反対方向に所定の角度回転させることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関。
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