JP2007113136A - 繊維製品への花粉付着防止方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】予め処理しておくことで、衣料などの繊維製品への花粉の付着を抑制することができる剤及びその方法を提供する。
【解決手段】下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する繊維製品用花粉付着抑制剤を、衣類等の繊維製品にスプレーや塗布などで処理する。
(a)成分:水と共沸混合物を形成し、1013.25hPaにおける水との共沸温度が100℃未満になる有機化合物
(b)成分:水
(c)成分:(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方に溶解し、該溶液中の液体成分の蒸発により固体を生成させる固体源物質
【選択図】なし

Description

本発明は、繊維製品への花粉の付着を抑制する方法に関する。
スギやヒノキの花粉は、アレルギー症状を引き起こすアレルゲン物質であり、その特異的な症状は花粉症と呼ばれている。花粉は空気中に浮遊しているため、清掃などの方法では除去することができず、マスクなどで体内に吸引されないように注意することや、室内などの生活環境内にこれら物質が入りこまないように注意するなどの方法で防御することが行われている。しかしながら、花粉は衣料などの繊維製品に付着し室内に持ち込まれることが多く、室内に入る前に払い落とすなどの方法が行われているが、満足できる効果を得ることができない。
一方、特許文献1及び特許文献2には、花粉を含むハウスダスト中のアレルゲンを、不活性化及び/又は除去するハウスダスト処理剤を含有する溶液または分散液を空間に噴霧することでハウスダストを除去するスプレー式のハウスダスト処理剤が記載されている。以前、本出願人は特許文献3において、揮発により固体化する化合物を含む水溶液を繊維製品に接触させて乾燥させた後に、生成した固体を除去する操作を行うことにより、衣料から花粉を除去できる方法を提案している。
特開2002−128659号公報 特開2002−128680号公報 特開2004−189762号公報
しかしながら、上記特許文献には、繊維製品に予め処理しておくことで、花粉の付着を抑制することができる剤や方法については、示されていない。
このような状況に鑑み、本発明の課題は、繊維製品への花粉の付着を防止する剤及び方法を提供することである。
本発明らは、驚くべきことに、本来花粉の除去を目的としていた組成物が、予め衣料に接触させておくことで、外出の際に付着する花粉の付着率が低下させることを見出し、本発明を提供するに至った。
すなわち本発明は、下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する繊維製品用花粉付着抑制剤を繊維製品に接触させ乾燥させることによる、繊維製品への花粉の付着を抑制する方法を提供するものである。
(a)成分:水と共沸混合物を形成し、1013.25hPaにおける水との共沸温度が100℃未満になる有機化合物
(b)成分:水
(c)成分:(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方に溶解し、該溶液中の液体成分の蒸発により固体を生成させる固体源物質
本発明の効果は、繊維製品への花粉の付着を抑制することにある。
<(a)成分>
本発明に係わる(a)成分は水と共沸混合物を形成し、1013.25hPa(760mmHg)における水との共沸温度が100℃未満になる有機化合物であり、化学便覧基礎編 改訂4版 日本化学会編 丸善(株) II−147頁 表8・43に記載の水と共沸混合物を形成する化合物から共沸温度が100℃未満、好ましくは60〜90℃の化合物を用いることができる。(a)成分を併用することにより、本発明の抑制剤で処理された繊維製品の乾燥が促進され、(c)成分に由来する固体の生成が促される。(a)成分の好ましい具体例としてはエタノール、シクロヘキサン、2−ブタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、トルエン、1−ブタノール、2−ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ヘキサノール、ヘキサン、1−ヘプタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノールを挙げることができ、炭素数2〜7のアルコール化合物が好ましい。特にエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、さらに好ましくはエタノールが花粉付着抑制効果の点から最も好ましい。
<(b)成分>
本発明に係わる(b)成分は水であり、(a)成分、(c)成分及びその他成分を含有する剤の残部であるが、一部の(c)成分の溶媒でもある。水は多少の金属イオンを含んだもの(そのイオンは(c)成分となってもよい)を使用してもよいが、保存安定性の上でイオン交換水を用いることが好ましい。
<(c)成分>
本発明に係わる(c)成分は本発明において最も重要な成分である。(c)成分は(a)成分及び/又は(b)成分に溶解し、その溶液の乾燥後に(c)成分自体又は(c)成分に起因する固体を生成する性質を示す。(c)成分は、本発明の花粉付着抑制剤中の少なくとも(a)成分及び/又は(b)成分に溶解して存在し、該花粉付着抑制剤中の液体成分の蒸発により固体を生成させる固体源物質である。ここで、液体成分の蒸発とは、液状成分の全てが蒸発することではなく、固体の生成に十分な液状成分の蒸発量を意味する。すなわち、本発明の花粉付着抑制剤中の液状成分は主に(a)成分と(b)成分であるが、後述の香料等、揮発性の低い液状成分を少量含む場合、それらは必ずしも蒸発する必要はない。本出願人がこれまで行った発明では、(c)成分の固体化に伴って花粉を固め、よって除去性を高めることを達成していたが、本発明では、先に処理することによって、花粉の付着が防止できるということ見出した点にある。理由は明確ではないが、本発明者らは、繊維製品表面を予め本発明の花粉付着抑制剤で処理を施すことにより、先に付着した固体が花粉の物理的付着を邪魔する、あるいは電荷的に繊維製品の表面を変化させ、花粉を付着しにくくさせるのではないかと考えている。
本発明の花粉付着抑制剤において、(c)成分は、下記(c1)成分及び(c2)成分から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
(c1)成分:1013.25hPa、25℃で固体状態である有機化合物
(c2)成分:無機性陽イオンと無機性陰イオンの組合せ。
このうち、(c1)成分は、下記の(c1−1)成分、(c1−2)成分及び(c1−3)成分から選ばれる一種以上が好ましい。
(c1−1)成分:融点が25℃以上の有機化合物〔但し(c1−2)及び(c1−3)を除く〕
(c1−2)成分:含水率が5質量%以下で25℃において固体状態である界面活性剤
(c1−3)成分:クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、アジピン酸、乳酸、フタル酸、テレフタル酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、グルタミン酸、グルタル酸、蓚酸、グリシン及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩。
(c1−1)成分は、夏場などの暑い季節を考慮するならば、好ましくは35℃以上の融点を有するものが好ましい。
(c1−1)成分は、吸湿性の低いものが好ましい。吸湿性については、下記の吸湿性試験により測定される吸湿度が0〜2、好ましくは0〜1、特に0〜0.5の化合物が好適である。
(吸湿性試験)
(c1−1)成分を粉砕し、篩により500〜1000μmに分級する。この分級したもの1g(Wa)を直径7cm、深さ1.5cmの円柱状のガラス製シャーレに入れ、全体の質量を測定する(Wb)。次に湿度80%、温度20℃の恒温室に24時間放置した後の全体の質量を測定し(Wc)、次式により吸湿度を求める。
吸湿度=(Wc−Wb)/Wa
また、(c1−1)成分は水に対する溶解性に乏しいものが好ましい。具体的には、20℃における水への溶解度が好ましくは0.02g/100g以下、より好ましくは0.01g/100g以下であるが、(c1−1)成分は本発明の抑制剤中、溶解した状態にあることが好ましく、従って、20℃における(a)成分への溶解度が好ましくは0.05g/100g以上、より好ましくは0.1g/100g以上である。ここで溶解度は化学大辞典9(共立出版社)、399頁、溶解度試験に記載の方法で求めることができる。
(c1−1)成分の具体的に好ましい化合物としては下記(c1−1−1)成分、(c1−1−2)成分及び(c1−1−3)成分から選ばれる化合物が好適である。
(c1−1−1)成分:融点が40〜250℃、好ましくは60〜210℃、炭素数10〜25、好ましくは10〜20の脂環式化合物
(c1−1−2)成分:融点が35℃以上、好ましくは35〜200℃、炭素数8〜36、好ましくは12〜20の脂肪族化合物
(c1−1−3)成分:融点が40〜200℃、炭素数7〜24、好ましくは7〜20の芳香族化合物。
(c1−1−1)成分の具体的に好ましい化合物としてはカンフェン、l−メントール、ボルネオール、セドロール、t−ブチルシクロヘキサノール、ショウノウ、p−t−ブチルシクロヘキサノン、マルトール、シクロペンタデカノン、ヒノキチオール、カリオフィレンオキサイド、ブッコキシム(Dragoca社製)、を挙げることができる。
(c1−1−2)成分の具体的に好ましい化合物としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、n−テトラデシルアルデヒドを挙げることができる。
(c1−1−3)成分の具体的に好ましい化合物としてはジメチルフェニルカルビノール、フェニルグリコール、バニリン、エチルバニリン、ベンゾフェノン、メチルナフチルケトン、クマリン、ムスクキシレン、ムスクケトン、ムスクアンブレット、ムスクチベテン、ムスクモスケン(ジボダン社製)、セレストリド(IFF社製)、ベルサリド(ジボダン社製)、トナリド(PFWアロマケミカル社製)、ジメチルハイドロキノン、チモール、トランス−ベンジルイソオイゲノール、β−ナフトールメチルエーテル、安息香酸、桂皮酸、フェニル酢酸、ヒドロ桂皮酸、酢酸イソオイゲノール、桂皮酸シンナミル、サリチル酸フェニルエチル、アニス酸メチル、インドール、スカトール、ローズフェノン、メチルアトラレート、ラズベリーケトン、ヘリオトロピルアセトン、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、p−クロロ−m−キシレノールを挙げることができる。これら(c1−1−3)の化合物は20℃における水への溶解度が0.02g/100g以下であり、且つ20℃における(a)成分への溶解度が0.05g/100g以上のものである。
本発明の抑制剤では、(c1−1)成分として、特にセドロール、l−メントール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、カンフェン、チモールが好ましい。
(c1−1)成分には、室温で固体のポリマーも含まれ、ポリアクリル酸塩等のカルボン酸系ポリマーのほか、高分子ポリエチレングリコール、澱粉誘導体、又はセルロース誘導体等を挙げることができるが、ポリマーとしてフィルム形成性を有するものは被処理物表面からの剥離が難しいため、その配合には注意を要する。
なお、(c1−1)成分からは、後述の(c1−2)成分のような界面活性剤と後述の(c1−3)成分の有機酸又はその塩とが除かれるが、本発明の界面活性剤とはc.m.c(臨界ミセル濃度)を有するか、又は界面活性剤便覧(産業図書株、昭和35年発行)319頁に記載の方法で求めたHLBが6以上であるか、もしくはその両方の性質を有する化合物であり、これら性質を持たず、且つ融点が25℃以上の化合物は(c1−1)成分として取り扱うものとする。
(c1−2)成分は、含水率が5質量%以下において、25℃、好ましくは35℃で固体状態である界面活性剤である。(c1−2)成分としては、前記の吸湿性試験において吸湿度が0〜2、好ましくは0〜1、特に0〜0.5の化合物である。
(c1−2)成分としては、炭素数8〜20のアルキル基を有する非イオン界面活性剤及び炭素数8〜20のアルキル基を有する陰イオン界面活性剤及び陽イオン界面活性剤が好ましく、特に下記(c1−2−1)成分〜(c1−2−4)成分の界面活性剤を挙げることができる。
(c1−2−1)成分:炭素数14〜20のアルキル基と、硫酸エステル基及び/又はスルホン酸基とを有する陰イオン界面活性剤
(c1−2−2)成分:炭素数8〜20の脂肪族アルコールにアルキレンオキシド、好ましくはエチレンオキシド(以下、EOと表記する)を20〜150モル付加させたポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル
(c1−2−3)成分:炭素数14〜18の飽和脂肪酸塩。
(C1−2−4)成分: 炭素数10〜18のアルキル基を有する、陽イオン界面活性剤
(c1−2−1)成分の具体的な好ましい例としては、炭素数14〜20のアルキル硫酸エステル塩、炭素数14〜20のアルキル基及び平均付加モル数1〜6のポリオキシアルキレン(好ましくはエチレン)アルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数14〜20のα−オレフィンスルホン酸塩、炭素数14〜20のα−スルホ脂肪酸低級アルキル(炭素数1〜3)エステル塩、アルキル基の炭素数が5〜19のアルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれる1種以上であり、特にアルキル硫酸エステル塩が花粉付着抑制効果の点から好ましい。塩としてはナトリウム塩又はカリウム塩が良好である。
(c1−2−2)成分の化合物としては、下記一般式(I)の化合物が好ましい。
1−O−(R2O)a−H (I)
〔式中、R1は、炭素数8〜18、好ましくは10〜18、特に好ましくは14〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、R2は炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。aは平均付加モル数として20〜150、好ましくは30〜150、特に好ましくは30〜100の数を示す。〕
一般式(I)の化合物において特に好ましい化合物は下記一般式(I−1)の化合物又は一般式(I−2)の化合物を挙げることができる。
3−O(EO)b−H (I−1)
〔式中、R3は炭素数14〜18の一級の直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基又は二級のアルキル基である。EOはエチレンオキサイドであり、bは平均付加モル数として20〜150、好ましくは30〜150、特に好ましくは30〜100である。〕
4−O[(EO)c/(PO)d]−H (I−2)
〔式中、R4は炭素数14〜18の一級のアルキル基である。EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。cは平均付加モル数20〜150、dは平均付加モル数1〜60である。EOとPOはランダム付加又はEOを付加した後、POを付加してもよく、またその逆のようなブロック付加体でもよい。〕
(c1−2−3)成分の化合物としては、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩が好ましい。
(c1−2−4)成分の化合物としては、炭素数12〜16のモノアルキル型陽イオン界面活性剤が好ましい。
本発明に係わる(c1−2)成分としては(c1−2−1)が最も好ましく、特に炭素数14〜20のアルキル硫酸エステル塩、好ましくはナトリウム塩もしくはカリウム塩が好適である。
また、(c1−3)成分として特に好ましい化合物はクエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸及びこれらの塩(好ましくはナトリウム塩及び/又はカリウム塩)であり、特にフタル酸及びその塩が花粉付着抑制効果の点から最も好ましい。
なお、(c1−2)成分の界面活性剤は、何れも含水率〔(c1−2)成分中の水分〕が、5質量%以下の状態において、25℃、好ましくは35℃で、固体状態であることを規定しているが、含水率が5質量%を超える場合には、エタノール又はイソプロパノールを加え、エバポレーターにより減圧下共沸脱水を行い、含水率を5質量%以下にした後、そのものを直径7cm、深さ1.5cmの円柱状のガラス製シャーレに1g入れ、25℃、好ましくは35℃の恒温室に24時間放置した後、目視で(c1−2)成分の状態を観察することで確認できる。又は、DSC(示差走査熱量)測定において、25℃以上、好ましくは35℃以上の温度で、融解による熱量の吸熱ピークが存在することでも確認できる。また、水分はカールフィッシャー法(JIS K 33625)で求めることができる。
(c2)成分は、無機性陽イオンと無機性陰イオンの組合せであって、これらイオンを含有する水溶液を乾燥してできる無機化合物が潮解性を示さないものである無機陽イオンと無機陰イオンの組合せである。(c2)成分において、本発明の抑制剤を乾燥して析出する固体は、これら無機陽イオンと無機陰イオンを物質源として生成するものであり、水和物として析出する場合も考えられる。また多様な種類の無機イオンを混合する場合、その生成される固体は定かではないが、本発明では固体が析出するための無機イオン組合せであればよい。(c2)成分をこのように規定する理由は、本発明の特徴が、乾燥後に固体を生成するという点にあるためであり、例えば、配合した化合物が複数の場合、更にはpH調整としてのアルカリ剤・酸剤の添加や、イオン解離性の界面活性剤や有機酸塩を併用するような場合、固体として析出してくる物質が当初配合した物質と異なってくる可能性があるからである。しかしながら、本発明は、潮解性のない電解質の無機固体[(c2’)成分とする]を直接配合することを否定するものではない。本発明において“潮解性のない”とは後述する吸湿性が低いことを指すものとする。(c2)成分は、無機性陽イオンがアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンであり、無機性陰イオンが、硫酸イオン、炭酸イオン(炭酸水素イオンを含む)、リン酸イオン(リン酸1水素イオン、リン酸2水素イオンを含む)、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンから選ばれる1種以上であることが好ましく、特には(c2)成分は、カリウムイオン、ナトリウムイオン及びマグネシウムイオンから選ばれる陽イオン(c2−c)と硫酸イオン、炭酸イオン(特に炭酸水素イオン)、フッ素イオン及び塩素イオンから選ばれる陰イオン(c2−a)の組合せが好ましい。ただし、得られる固体が潮解性になると考えられるイオンのみの組み合わせは好ましくない。このため、本発明では、潮解性のない電解質[本発明では水に溶解し、無機性陽イオンと無機性陰イオンを生成するものとする。]の無機固体[(c2’)成分]を含有するものであってもよい。具体的には、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムから選ばれる1種以上の無機塩を配合することが好ましい。
より具体的に好ましい無機塩[(c2’)成分]としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムを挙げることができ、特に硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、フッ化ナトリウム、及び塩化ナトリウムから選ばれる1種以上が好適である。
本発明に係わる(c)成分は(c1)成分と(c2)成分の混合物であってもよく、(c1−2)成分がイオン性の界面活性剤の場合や(c1−3)成分が有機酸塩の場合は、その対イオンについては、(c2)として考慮してもよい。基本的には(c)成分を含有する本発明の抑制剤から固体が析出するような組合せであればよい。
なお、本発明に係わる(c)成分のうち、より好ましいものは、(c1−1)成分及び/又は(c2)成分であり、最も好ましいものは、(c2−c)成分と(c2−a)成分の組合せである。しかしながら、(c1)で示される有機化合物、特に(c1−2)などの界面活性剤は、対象表面へ残留することが懸念されるため、その配合量は控えめにすることが好ましい。
本発明の(c)成分は、先に出願した除去方法とは相違し、繊維製品に噴霧や塗布した後に、除去工程を行わないことが望ましい。従って、(c)成分の固体源は、白化が少ない化合物が望まれる。
また、本発明の作用機構は、既に述べた様に、先に付着した固体が花粉の物理的付着を邪魔する、あるいは電荷的に繊維製品の表面を変化させ、静電的な付着を抑制することにあると思われるが、この様な作用機構の大小は(c)成分の種類によって異なると考えられる。
本発明の花粉付着抑制剤に配合された(c1−1)成分は、主として物理的な付着抑制により効果を発揮すると考えられる。(a)成分及び(b)成分の揮発にともない析出する場合、その析出物は粒状、板状、針状といった様々な形態を取りうる。本発明における(c1−1)成分は、物理的な付着抑制の目的から、その析出物形状は粒状、針状が好ましく、特に針状が好ましい。
また、(c1−2)成分として非イオン性界面活性剤を用いた場合、物理的な付着抑制に加えて水分を保持することに伴う静電的な付着抑制効果が期待できる。(c1−2)成分としてイオン性界面活性剤を用いた場合は、これらに加えてイオン性による静電的な付着抑制効果も期待されるため、(c1−2)成分を用いる場合には特にイオン性界面活性剤が好ましい。
(c2)成分の場合も(c1−2)成分と同様に、物理的な付着抑制に加えて水分の保持、イオン性による静電的な付着抑制効果も期待できる。
水分の保持は、静電的な付着抑制効果の点で好ましいが、粘着・付着性をもたらすほどに高い水分量は、付着抑制の見地から好ましくない。
<(d)成分>
本発明の抑制剤は、前記(a)成分及び(c)成分以外の有機化合物〔以下、(d)成分という〕を含有することができる。(d)成分としては、例えば(c1−1)成分の以外の有機化合物(界面活性剤を除く)及び(c1−2)成分以外の界面活性剤を示す。例えば、香料成分、蛍光増白剤、抗菌・抗カビ剤、殺菌剤、25℃未満で液状の界面活性剤、グリコール系溶剤等の25℃で液状の有機化合物等の他、25℃で液状のシリコーンオイル等も含まれる。(d)成分の配合は、本発明の抑制剤からの固体の析出に影響を与え得るため、その種類と配合量には注意を要する。
<花粉付着抑制剤の組成>
本発明の花粉付着抑制剤において(a)成分の含有量は、(c)成分及び所望により(d)成分を花粉付着抑制剤中に均一に溶解させる目的及び噴霧や塗布後の乾燥を促進し、且つ(c)成分の対象物表面への析出を促進させる目的で、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは3〜60質量%、最も好ましくは5〜60質量%である。(b)成分の水は、花粉付着抑制剤中に好ましくは10〜99質量%、より好ましくは15〜98質量、最も好ましくは20〜96質量%含有される。また(c)成分の含有量は、(a)成分及び(b)成分の揮発に伴って迅速な析出を促し、多くの析出核形成による多数の析出物形成を得る目的から多い方が好ましく、花粉付着抑制剤中に、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。一方配合量過多は、白化や対象物の感触変化、花粉付着抑制剤の安定性をもたらす場合があり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、最も好ましくは0.01〜2質量%である。
特に、(a)成分、(b)成分及び(c)成分は、花粉付着抑制剤中に、合計で、好ましくは95〜100質量%、より好ましくは97〜100質量%、最も好ましくは98〜100質量%となるように含有されることが望ましい。
本発明の花粉付着抑制剤が(d)成分を含有する場合は、その含有量は固体の析出を抑制しない量以下とされるべきである。(d)成分の含有量は、花粉付着抑制剤中に好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.001〜3質量%、特に好ましくは0.005〜1質量%である。
特に(c)成分に由来する固体の析出は、(d)成分により影響されやすい。(d)成分が揮発性のある物質ほど影響は少ない。しかしながら界面活性剤や香料成分は配合量を抑制することが好ましい。本発明において、(c)成分と(d)成分の関係は(c)/[(c)+(d)]が質量比で0.15以上、更に0.2以上が好ましく、(d)成分が界面活性剤や香料成分の場合は、0.5以上、特に0.5〜0.98であることが好ましい。
本発明の花粉付着抑制剤は、(c)成分、必要ならば(d)成分やその他の成分を、(a)成分及び(b)成分である水及び溶剤に溶解させた水溶液の形態が好ましい。また、pHの設定は注意を要する。特に、塩類はpHにより平衡状態が変化するので、塩では固体であるが、酸やアルカリでは固化性の低い物質である場合、pHによっては固体が析出しにくくなる恐れがある。従って、本発明では花粉付着抑制剤の20℃におけるpHを3〜12、好ましくは4〜9に調整することが好適である。pH調整剤は、(c)成分を構成するものであることが好ましい。具体的な酸剤としては塩酸や硫酸などの無機酸や、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸などの有機酸が挙げられる。またアルカリ剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。酸剤とアルカリ剤を、単独もしくは複合して用いることが好ましく、特に塩酸、硫酸、クエン酸から選ばれる酸と水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤を用いることが好ましい。なお、アルカリ剤として、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミンやジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン化合物を、固体の析出に影響しない程度に配合してもよいが、液性が強いので本発明では他のアルカリ剤を用いることが好ましい。
本発明の花粉付着抑制剤は対象物への処理のし易さ及び花粉付着抑制効果を向上させる目的から、20℃における粘度を15mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下に調整することが好適である。このような粘度に調整することで対象物を均一に処理することができ、さらに乾燥や(c)成分の析出を促進させることができる。
<花粉付着抑制方法>
本発明の花粉付着抑制方法では特に(c)成分の作用が重要である。具体的には、前記(a)〜(c)成分を含有する溶液状の花粉付着抑制剤を繊維製品に、噴霧処理、浸漬処理等により接触させ、液体成分の蒸発により該処理部分が乾燥すると、繊維製品表面に(c)成分の固体が析出する。析出した固体をそのまま放置することで、花粉付着抑制効果が発揮される。生活上の一般行動による振動や、運動による衣類どうしが擦れることによる固体の脱落は仕方ないことだが、なるべく残すことが好ましい。
本発明の花粉付着抑制方法に用いる花粉付着抑制剤は、繊維製品に噴霧又は浸漬により適用されることが好ましく、該処理物の乾燥により固体を析出させる。析出する固体の形状は、粒状または針状、特に針状が好ましい。また、析出する固体は、帯電を緩和するに足り、かつ粘着性・付着性をもたらさない程度の適切な水分を保持することが好ましい。また、析出する固体はイオン性を有することが好ましい。
花粉付着抑制剤を噴霧する場合、噴霧器としては、トリガー式噴霧器を用いることが好ましい。トリガー式噴霧器を用いる場合、該噴霧器は1回のストロークで0.1g〜2.0g、好ましくは0.2〜1.5g、さらに好ましくは0.3g〜1.0g噴出するものが良好である。本発明で使用するトリガー式スプレー容器として特に好ましいものは、実開平4−37554号公報に開示されているような蓄圧式トリガーが、噴霧の均一性の点で特に良好である。
噴霧特性としては、特に地面に垂直に置いた対象物に15cm離れた場所からスプレーしたときの液のかかる面積が100〜800cm2、好ましくは150〜600cm2になるトリガー式噴霧器が好ましい。また、本発明では(c)成分を対象物1000cm2当たり1〜10mg、好ましくは2〜5mgになるように均一に対象物にスプレーし、乾燥させることで高い花粉付着抑制効果を得ることができる。
本発明の花粉付着抑制剤の好ましい処方例を以下に示す。
(A)エタノール、1−プロパノール及び2−プロパノールから選ばれる1種以上 3〜60質量%
(B)水 残部
(C)下記(1)〜(4)より選ばれる固体源物質 0.05〜5質量%(但し、(1)の場合は、花粉付着抑制剤中、1質量%を超えて配合せず、(2)の場合は、花粉付着抑制剤中、0.4質量%、好ましくは0.1質量%を超えて配合しない)
(1)セドロール、l−メントール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、カンフェン、チモール
(2)アルキル鎖の炭素数が14〜20のアルキル硫酸エステル又はその塩、炭素数14〜18の飽和脂肪酸塩(これらの塩はアルカリ金属塩が好ましい。)
(3)クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩(好ましくはアルカリ金属塩)
(4)硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム及び塩化カリウム
(D)香料、(c)成分以外の界面活性剤(但し(c)(2)との併用の場合は合計で0.4質量%を超えない)、(a)成分以外の溶剤の合計 0〜1.0質量%からなる水性組成物であって、[(a)成分、(c)成分以外の有機化合物(但し溶剤を除く)]/(c)成分質量比が0.90以下の水性組成物であり、更には、該組成物を非エアゾールタイプの噴霧装置を備えた容器に充填したもの、特には、上記組成物を上記容器に充填したものであって、対象表面から30cm離れた位置から、噴霧動作を1回行ったときに、気温23〜32℃、湿度60%RH以下の環境下において、30分以内に固体が析出するものであり、(D)成分の合計に対する(c)成分の割合が(C)成分/(D)成分が質量比0.5〜0.98である。
また、本発明の好ましい花粉付着抑制剤方法は、前記の花粉付着抑制剤を衣料などの繊維製品にスプレー(ミスト式も含む)などにより塗布する方法が好ましく、乾燥後の表面に現れた固体を実質的に除去する動作を行わないことが望ましい。但し、繊維製品の色や柄、繊維の種類、又は織り方によっては、表面の光沢や質感などが異なる場合があり、析出した固体が美観的に気になるような場合は、ブラシなどを用いて適度に除去を行ってもよい。なお、本発明の対象とする繊維製品としては、コートやジャケット等の衣類、タオル等の洗濯物、フトンやシーツ、ベッドパッド等の寝具、カーペットやラグ、マット等の敷物、カーテンや布製ソファー等のインテリア製品等が挙げられる。
花粉付着抑制のために下記配合成分からなる溶液状の花粉付着抑制剤を表1に示す組成で調製した。調製した花粉付着抑制剤を、10cm×10cmに裁断した黒ポリエステルジャージ布に対し、均一に4回スプレーした。スプレー量は、0.2g/100cm2であった。これを23℃、60%RH環境下で1時間乾燥させ、試験布を得た。次いで、試験布より2cm×2cmの試験布片を4枚切り出した。
容積134ccの広口ガラスびん(第一硝子株式会社製、PS-11K)にスギ花粉1mgを正確に量りとり、ここに試験布片4枚を入れ、2分間激しく振盪した。
振盪の後、静かに試験布片を取り出し、それぞれの試験布片の片面中心部5mm×5mmについて顕微鏡観察を行い、付着しているスギ花粉数を計数した。4枚分の試験布片より得られた計数値を合計し、花粉付着数(個/cm2)とした。実験は、各花粉付着抑制剤について3回ずつ行い、花粉付着数の平均値を求めた。
花粉付着抑制剤に代えて水を散布した場合の花粉付着数の平均値は480個、何も散布せずに同様の操作を行った場合の花粉付着数の平均値は510個であった。そこで、これらの値を参考にして、以下基準で評価を行った。
*評価基準
花粉付着数の平均値が0〜149個:優
花粉付着数の平均値が150〜299個:良
花粉付着数の平均値が300〜449個:可
花粉付着数の平均値が450個以上:効果無し
<配合成分>
a-1: エタノール
c-1: セドロール
c-2: ミリスチルアルコール
c-3: ステアリル硫酸エステルナトリウム
c-4: クエン酸3ナトリウム
c-5: 硫酸ナトリウム
c-6: 硫酸カリウム
Figure 2007113136

Claims (1)

  1. 下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する繊維製品用花粉付着抑制剤を繊維製品に接触させ乾燥させることによる、繊維製品への花粉の付着を抑制する方法。
    (a)成分:水と共沸混合物を形成し、1013.25hPaにおける水との共沸温度が100℃未満になる有機化合物
    (b)成分:水
    (c)成分:(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方に溶解し、該溶液中の液体成分の蒸発により固体を生成させる固体源物質
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