JP2007107633A - オルタネータ用プーリ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 クランクシャフトの回転速度変動をより効果的に緩和することができるオルタネータ用プーリ装置を提供する。
【解決手段】 本発明のオルタネータ用プーリ装置1は、外周面にベルト50が巻き掛けられるとともに内周に外側軌道面31を有するプーリ部材3と、外周に内側軌道面21を有し、プーリ部材3に対して相対回転可能に配設されたプーリボス2と、外側軌道面31と内側軌道面21との間に転動可能に介在した円筒ころ4とを備えている。内側軌道面21及び外側軌道面31には、プーリ部材3とプーリボス2との相対回転に伴い円筒ころ4を転動させつつ円筒ころ4の挟持間隔を漸次狭くして、前記相対回転により生じたプーリ部材3とプーリボス2との間の位相差を解消する方向の回動付勢力をプーリ部材3とプーリボス2との間に付与する各異形軌道面2k、3kが形成されている。
【選択図】 図2
【解決手段】 本発明のオルタネータ用プーリ装置1は、外周面にベルト50が巻き掛けられるとともに内周に外側軌道面31を有するプーリ部材3と、外周に内側軌道面21を有し、プーリ部材3に対して相対回転可能に配設されたプーリボス2と、外側軌道面31と内側軌道面21との間に転動可能に介在した円筒ころ4とを備えている。内側軌道面21及び外側軌道面31には、プーリ部材3とプーリボス2との相対回転に伴い円筒ころ4を転動させつつ円筒ころ4の挟持間隔を漸次狭くして、前記相対回転により生じたプーリ部材3とプーリボス2との間の位相差を解消する方向の回動付勢力をプーリ部材3とプーリボス2との間に付与する各異形軌道面2k、3kが形成されている。
【選択図】 図2
Description
本発明はエンジンのオルタネータに用いられるオルタネータ用プーリ装置に関する。
自動車等のエンジンの補機として用いられるオルタネータは、クランクシャフトから取り出された回転力によって駆動されて、自動車の走行に必要な電力を供給するものである。このオルタネータの入力軸には、オルタネータ用プーリ装置が取り付けられており、このオルタネータ用プーリ装置と、クランクシャフトに取り付けられたプーリとの間にベルトを架け渡すことで、オルタネータにエンジンの回転力を伝達している。
一般に、自動車等のエンジンのクランクシャフトは、シリンダの爆発力によって回転力が付与されるので、その回転速度に変動が生じる。その一方、オルタネータは、内部に比較的重量の重いアーマチュア等が入力軸と一体に回転しており、クランクシャフトの回転速度の変動が急激であると、アーマチュアは、自身の回転によって生じる慣性力によって、クランクシャフトの回転速度の変動に追従できない場合があった。
オルタネータが上記回転速度の変動に追従できないと、クランクシャフトの回転速度とオルタネータとの間で一時的に回転速度に差が生じてしまい、オルタネータ用プーリ装置とベルトの間でスリップが生じたり、ベルトの張力が過大に変動することがあった。このようなベルトのスリップや張力の過大な変動は、ベルトの異音の発生や寿命低下等の原因となる。また、ベルトのスリップを防止するために、当該ベルトの初期張力を比較的高く設定することがあり、この場合には、クランクシャフトの回転抵抗が増大し、エンジンの燃費性能を低下させることもあった。
一般に、自動車等のエンジンのクランクシャフトは、シリンダの爆発力によって回転力が付与されるので、その回転速度に変動が生じる。その一方、オルタネータは、内部に比較的重量の重いアーマチュア等が入力軸と一体に回転しており、クランクシャフトの回転速度の変動が急激であると、アーマチュアは、自身の回転によって生じる慣性力によって、クランクシャフトの回転速度の変動に追従できない場合があった。
オルタネータが上記回転速度の変動に追従できないと、クランクシャフトの回転速度とオルタネータとの間で一時的に回転速度に差が生じてしまい、オルタネータ用プーリ装置とベルトの間でスリップが生じたり、ベルトの張力が過大に変動することがあった。このようなベルトのスリップや張力の過大な変動は、ベルトの異音の発生や寿命低下等の原因となる。また、ベルトのスリップを防止するために、当該ベルトの初期張力を比較的高く設定することがあり、この場合には、クランクシャフトの回転抵抗が増大し、エンジンの燃費性能を低下させることもあった。
このため、従来のオルタネータ用プーリ装置には、クランクシャフトから伝達される回転速度の変動を許容するために、外周面にベルトが巻き掛けられるプーリ溝が設けられたプーリ部材と、このプーリ部材に対して相対回転自在に配設されるとともにオルタネータの入力軸に一体回転可能に取り付けられるプーリボスと、前記プーリ部材と前記プーリボスとの間を連結するねじりコイルばねとを有するものが提案されていた。
上記従来のオルタネータ用プーリ装置において、ねじりコイルばねは、その一端がプーリ部材に、他端がプーリボスに固定されており、プーリ部材とプーリボスとが相対回転したときにこのねじりコイルばねが捻られるように構成されている。そしてねじりコイルばねが捻られることによって生じる弾性力によって、一時的にプーリ部材とプーリボスとを周方向に弾性的に相対回転させることで、回転速度の変動を緩和していた(例えば特許文献1参照)。
上記従来のオルタネータ用プーリ装置において、ねじりコイルばねは、その一端がプーリ部材に、他端がプーリボスに固定されており、プーリ部材とプーリボスとが相対回転したときにこのねじりコイルばねが捻られるように構成されている。そしてねじりコイルばねが捻られることによって生じる弾性力によって、一時的にプーリ部材とプーリボスとを周方向に弾性的に相対回転させることで、回転速度の変動を緩和していた(例えば特許文献1参照)。
上記従来例のオルタネータ用プーリ装置によれば、プーリ部材のプーリボスに対する回転変動の緩和特性は、上記ねじりコイルばねに依存しているが、このねじりコイルばねは、当該オルタネータ用プーリ装置に組み込むことができる程度の大きさに制限されるため、その線径や自由長、巻き数等が制限され、ねじりコイルばねの特性を自由に設定することができなかった。このため、オルタネータ用プーリ装置としての回転変動の緩和特性を設定する際の自由度が制限されてしまい、クランクシャフトの回転速度変動を十分に緩和できない恐れがあった。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、クランクシャフトの回転速度変動をより効果的に緩和することができるオルタネータ用プーリ装置を提供することを目的とする。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、クランクシャフトの回転速度変動をより効果的に緩和することができるオルタネータ用プーリ装置を提供することを目的とする。
本発明のオルタネータ用プーリ装置は、外周にベルトが巻き掛けられるとともに内周に外側軌道面を有する円筒状のプーリ部材と、外周に前記外側軌道面と対向する内側軌道面を有し、前記プーリ部材に対して相対回転可能に配設されるとともにオルタネータの入力軸に一体回転可能に取り付けられる内側部材と、前記外側軌道面と前記内側軌道面との間に転動可能に介在した転動体とを備え、前記内側軌道面及び外側軌道面の少なくとも一方が、前記プーリ部材と前記内側部材との相対回転に伴い転動体を転動させつつ当該転動体の挟持間隔を漸次狭くして、前記相対回転により生じた前記プーリ部材と前記内側部材との間の位相差を解消する方向の回動付勢力を前記プーリ部材と前記内側部材との間に付与する異形軌道面を少なくとも一部に有していることを特徴としている。
上記のように構成されたオルタネータ用プーリ装置によれば、ねじりコイルばね等を用いることなく簡素な構成で回動付勢機能(ねじりばね性)を付与することができる。すなわち、このねじりばね性によって、プーリ部材と内側部材とを周方向に弾性的に相対回転させることができ、クランクシャフトによる回転速度の変動を緩和して、オルタネータの入力軸に回転力を伝達することができる。また、上記構成により得られるねじりばね性の特性は、異形軌道面の形状や転動体の外径等を変更することで、多様に変化させることができ、その設定の自由度が極めて高くなる。従って、当該オルタネータ用プーリ装置が取り付けられるオルタネータの仕様やエンジンの特性等に応じて、好適な弾性力特性を当該オルタネータ用プーリ装置に付与することができる。
また、上記オルタネータ用プーリ装置において、前記プーリ部材と、前記内側部材との間には、これらを互いに相対回転可能に支持する転がり軸受が介装されていることが好ましい。
この場合、前記プーリ部材に作用するラジアル方向の負荷荷重を前記転がり軸受によって支持することができるので、異形軌道面及び転動体に作用する外部からの負荷荷重を低減できる。従って、上記ねじりばね性をより安定して得ることができる。
この場合、前記プーリ部材に作用するラジアル方向の負荷荷重を前記転がり軸受によって支持することができるので、異形軌道面及び転動体に作用する外部からの負荷荷重を低減できる。従って、上記ねじりばね性をより安定して得ることができる。
以上のように、本発明に係るオルタネータ用プーリ装置によれば、プーリ部材と内側部材との間に付与される弾性力を、オルタネータの仕様やエンジンの特性等に応じて、好適に設定することができるので、クランクシャフトによる回転速度の変動をより効果的に緩和できる。
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第一の実施形態であるオルタネータ用プーリ装置の要部構成を示す軸方向断面図である。オルタネータ用プーリ装置1(以下、単にプーリ装置1ともいう)は、自動車などの補機として用いられるオルタネータの入力軸に取り付けられ、エンジンのクランクシャフトからの回転力を伝えるためのベルトが巻き掛けられるものである。
このプーリ装置1は、ほぼ円筒状に形成された内側部材としてのプーリボス2と、このプーリボス2の外周側に同軸に配置された円筒状のプーリ部材3と、これらの間に転動可能に介在した転動体としての円筒ころ4と、この円筒ころ4の軸方向両側においてプーリボス2とプーリ部材3との間に介装された二つの転がり軸受51,52と、を備えている。
このうち、プーリ部材3の外周面には、自動車エンジンのクランクシャフトからの回転力を伝達するためのベルト50が巻き掛けられるための波状溝3aが形成されている。また、このプーリ部材3の内周面には、円筒ころ4が転動する外側軌道面31が形成されている。
プーリボス2の外周面には、円筒ころ4が転動する内側軌道面21が、外側軌道面31に対向して形成されている。また、このプーリボス2の内周側には、図示しないオルタネータから突設された入力軸Sが挿入されている。プーリボス2の内周面における軸方向中央部には、雌ねじ部25が一体的に形成されており、入力軸Sの端部に設けられた雄ねじ部S1を雌ねじ部25に螺合することにより、プーリボス2は、入力軸Sと一体回転可能に取り付けられている。また、プーリボス2の内周側の端部には、プーリボス2を入力軸Sに螺合するための六角レンチを挿入するために内周面が正六角形とされたレンチ挿入部26が形成されている。
転がり軸受51、52は、プーリボス2とプーリ部材3との間に介装されることで、これらを互いに相対回転可能とするとともに、プーリ部材3に作用するラジアル方向の荷重を支持している。
このうち、プーリ部材3の外周面には、自動車エンジンのクランクシャフトからの回転力を伝達するためのベルト50が巻き掛けられるための波状溝3aが形成されている。また、このプーリ部材3の内周面には、円筒ころ4が転動する外側軌道面31が形成されている。
プーリボス2の外周面には、円筒ころ4が転動する内側軌道面21が、外側軌道面31に対向して形成されている。また、このプーリボス2の内周側には、図示しないオルタネータから突設された入力軸Sが挿入されている。プーリボス2の内周面における軸方向中央部には、雌ねじ部25が一体的に形成されており、入力軸Sの端部に設けられた雄ねじ部S1を雌ねじ部25に螺合することにより、プーリボス2は、入力軸Sと一体回転可能に取り付けられている。また、プーリボス2の内周側の端部には、プーリボス2を入力軸Sに螺合するための六角レンチを挿入するために内周面が正六角形とされたレンチ挿入部26が形成されている。
転がり軸受51、52は、プーリボス2とプーリ部材3との間に介装されることで、これらを互いに相対回転可能とするとともに、プーリ部材3に作用するラジアル方向の荷重を支持している。
次に、プーリボス2及びプーリ部材3にそれぞれ設けられた内側軌道面21及び外側軌道面31について説明する。図2は、図1中II−II線の断面図である。プーリボス2の内側軌道面21は、プーリボス2及びプーリ部材3の回転軸Xを中心とする円周面とは異なる4個の異形軌道面としての内側異形軌道面2kを連続的に形成することにより構成されている。外側軌道面31は、4個の異形軌道面としての外側異形軌道面3kを連続的に形成することにより構成されている。
内側軌道面21を構成する各内側異形軌道面2kはすべて同一形状であり、外側軌道面31を構成する各外側異形軌道面3kもすべて同一形状である。内側軌道面21は周方向に均等に(90度ごとに)4分割され、各分割部分がそれぞれ内側異形軌道面2kとされている。同様に、外側軌道面31も周方向に均等に(90度ごとに)4分割され、各分割部分がそれぞれ外側異形軌道面3kとされている。そして、各異形軌道面2k、3k間に1個ずつ円筒ころ4が配置されている。
また、プーリボス2とプーリ部材3との間には、内側異形軌道面2k及び外側異形軌道面3kにより、軌道面間隔が周方向に漸次狭くなる漸縮空間部(くさび状空間部)が形成され、プーリボス2とプーリ部材3との相対回転に伴い所謂くさび効果によって円筒ころ4が圧縮弾性変形する。上記の如く、内側軌道面21及び外側軌道面31をそれぞれ異形軌道面2k、3kの連続により形成することで、内側軌道面21及び外側軌道面31はそれぞれ異形軌道面2k、3kのみによって占められている。しかも、各異形軌道面2k,3kは周方向に等配されている。よって、各異形軌道面2k,3kの周方向範囲はそれぞれ最大限に拡げられており、回動付勢力を得られる周方向範囲の拡大に寄与している。
内側軌道面21を構成する各内側異形軌道面2kはすべて同一形状であり、外側軌道面31を構成する各外側異形軌道面3kもすべて同一形状である。内側軌道面21は周方向に均等に(90度ごとに)4分割され、各分割部分がそれぞれ内側異形軌道面2kとされている。同様に、外側軌道面31も周方向に均等に(90度ごとに)4分割され、各分割部分がそれぞれ外側異形軌道面3kとされている。そして、各異形軌道面2k、3k間に1個ずつ円筒ころ4が配置されている。
また、プーリボス2とプーリ部材3との間には、内側異形軌道面2k及び外側異形軌道面3kにより、軌道面間隔が周方向に漸次狭くなる漸縮空間部(くさび状空間部)が形成され、プーリボス2とプーリ部材3との相対回転に伴い所謂くさび効果によって円筒ころ4が圧縮弾性変形する。上記の如く、内側軌道面21及び外側軌道面31をそれぞれ異形軌道面2k、3kの連続により形成することで、内側軌道面21及び外側軌道面31はそれぞれ異形軌道面2k、3kのみによって占められている。しかも、各異形軌道面2k,3kは周方向に等配されている。よって、各異形軌道面2k,3kの周方向範囲はそれぞれ最大限に拡げられており、回動付勢力を得られる周方向範囲の拡大に寄与している。
次に、外側異形軌道面3k及び内側異形軌道面2kの輪郭形状について詳述する。
外側軌道面31を構成する4個の外側異形軌道面3kは、それぞれ凹曲面とされている。具体的には、外側異形軌道面3kはプーリボス2及びプーリ部材3の回転軸X(以下、軸中心Xともいう)よりも軌道面(当該外側異形軌道面3k)に近い側に位置する外輪軌道曲率中心Coを中心とする円周面とされている。この外側異形軌道面3kの曲率半径groは、外側軌道面31と軸中心Xとの距離の最大値であって外側軌道面31の断面輪郭線に外接する円の半径である外側軌道基準半径Roよりも小さい。また、断面視において、3つの各外側異形軌道面3kのそれぞれに関し、外側軌道曲率中心Coは、軸中心Xからの距離が最大値となる外側軌道最大径位置3mと軸中心Xとを含む直線p3上にある。
外側軌道面31を構成する4個の外側異形軌道面3kは、それぞれ凹曲面とされている。具体的には、外側異形軌道面3kはプーリボス2及びプーリ部材3の回転軸X(以下、軸中心Xともいう)よりも軌道面(当該外側異形軌道面3k)に近い側に位置する外輪軌道曲率中心Coを中心とする円周面とされている。この外側異形軌道面3kの曲率半径groは、外側軌道面31と軸中心Xとの距離の最大値であって外側軌道面31の断面輪郭線に外接する円の半径である外側軌道基準半径Roよりも小さい。また、断面視において、3つの各外側異形軌道面3kのそれぞれに関し、外側軌道曲率中心Coは、軸中心Xからの距離が最大値となる外側軌道最大径位置3mと軸中心Xとを含む直線p3上にある。
内側軌道面21を構成する4個の内側異形軌道面2kは、それぞれ凸曲面とされている。具体的には、内側異形軌道面2kは軸中心Xよりも軌道面(当該内側異形軌道面2k)から遠い側に位置する内側軌道曲率中心Ciを中心とする円周面とされている。この内側異形軌道面2kの曲率半径griは、内側軌道面21と軸中心Xとの距離の最小値であって内側軌道面21の断面輪郭線に内接する円の半径である内側軌道基準半径Riよりも大きい。また、断面視において、3つの各内側異形軌道面2kのそれぞれに関し、内側軌道曲率中心Ciは、軸中心Xからの距離が最小値となる内側軌道最小径位置2mと軸中心Xとを含む直線p2上にある。
以上のような形状の内側軌道面21と外側軌道面31とを有するプーリ装置1は、回動付勢機能(ねじりばね機能)を有している。以下、この点について説明する。
内側軌道面21及び外側軌道面31は、上述したように、いずれも軸中心Xを中心とする円周面ではないので、内側軌道面21と外側軌道面31との間の空間(転動空間)の形状はプーリボス2とプーリ部材3との相対位相関係により変化するが、図2の状態は、外側軌道面31の外側軌道最大径位置3mと内側軌道面21の内側軌道最小径位置2mとが同位相とされた状態である。以下、この状態を基準状態ということとする。この基準状態において、各円筒ころ4は、内側軌道最小径位置2m及び外側軌道最大径位置3mと接する周方向位置に配置される。この基準状態は、外側異形軌道面3kと内側異形軌道面2kとによる円筒ころ4の挟持間隔(円筒ころ4の接触位置における軌道面間隔)が最も広い状態である。よって、この基準状態では、両軌道面2k、3kから円筒ころ4に作用する圧縮力は最小値(たとえば0)となる。
なお、基準状態における内側軌道最小径位置2mと外側軌道最大径位置3mとの間の径方向距離は円筒ころ4の直径と略一致させるが、若干のラジアル隙間(プラス隙間又はマイナス隙間)を与えても良い。
内側軌道面21及び外側軌道面31は、上述したように、いずれも軸中心Xを中心とする円周面ではないので、内側軌道面21と外側軌道面31との間の空間(転動空間)の形状はプーリボス2とプーリ部材3との相対位相関係により変化するが、図2の状態は、外側軌道面31の外側軌道最大径位置3mと内側軌道面21の内側軌道最小径位置2mとが同位相とされた状態である。以下、この状態を基準状態ということとする。この基準状態において、各円筒ころ4は、内側軌道最小径位置2m及び外側軌道最大径位置3mと接する周方向位置に配置される。この基準状態は、外側異形軌道面3kと内側異形軌道面2kとによる円筒ころ4の挟持間隔(円筒ころ4の接触位置における軌道面間隔)が最も広い状態である。よって、この基準状態では、両軌道面2k、3kから円筒ころ4に作用する圧縮力は最小値(たとえば0)となる。
なお、基準状態における内側軌道最小径位置2mと外側軌道最大径位置3mとの間の径方向距離は円筒ころ4の直径と略一致させるが、若干のラジアル隙間(プラス隙間又はマイナス隙間)を与えても良い。
次に、この基準状態からプーリボス2とプーリ部材3とを相対回転させると、円筒ころ4が転動するとともに、当該円筒ころ4の挟持間隔は漸次狭くなる。よってこの相対回転に伴い円筒ころ4は内側軌道面21及び外側軌道面31により圧縮されて弾性圧縮変形し、この相対回転により生じた位相差を解消する方向の回動付勢力(弾性力;ねじりばね力)をプーリボス2とプーリ部材3との間に付与する。
上記の回動付勢力(ねじりばね力)が生じる点について更に詳細に説明する。図3は、プーリボス2とプーリ部材3との相対回転により発生する回動付勢力について説明するための断面図であり、理解しやすいように内側異形軌道面2k及び外側異形軌道面3kと円筒ころ4の断面線のみを示している。図3では、プーリボス2を固定し、プーリ部材3を反時計回りに角度θだけ回転させて静止させた釣り合い状態を示している。基準状態では、外側軌道最大径位置3mは図3のx軸上の位置3miに位置し、且つ内側軌道最小径位置2mもx軸上にある。またこの基準状態では円筒ころ4の中心Prもx軸上にある。かかる基準状態からプーリ部材3を角度θだけ反時計回りに回転させると、円筒ころ4が図4に示す位置まで反時計回りに転動する。この転動による円筒ころ4の公転角度は、内側軌道曲率中心Ciに対して角度φiである。
このとき、内側異形軌道面2kと円筒ころ4との接触位置の中心をPi、外側異形軌道面3kと円筒ころ4との接触位置の中心をPoとすると、PiとPoとの間の間隔は、基準状態における内側軌道最小径位置2mと外側軌道最大径位置3mとの間の間隔よりも狭くなっており、且つ、円筒ころ4の直径2Rr(円筒ころ4の半径Rrの2倍)よりも狭くなっている。よって、円筒ころ4は、内側軌道面21から垂直力Qiを受けるとともに、外側軌道面31から垂直力Qoを受けて圧縮弾性変形する。釣り合って静止している状態では、円筒ころ4に接線力は殆ど働かず、図3に示すように点Ci,Co,Pi,Pr,Poは直線L1上に並ぶこととなる。そして、上記垂直力Qi及び垂直力Qoのベクトルの向きも直線L1と同じ向きとなり、プーリボス2が円筒ころ4から受ける垂直力Qi′、及び、プーリ部材3が円筒ころ4から受ける垂直力Qo′も直線L1と同じ向きとなる。そして、プーリ部材3が円筒ころ4から受ける垂直力Qo′は、プーリ装置1の径方向(円筒ころ4との接触位置の中心Poと軸中心Xとを結ぶ方向)と相違しており、当該径方向の成分とともに時計回りの成分を有することとなる。このようにして、プーリ部材3は、回動付勢部材(ねじりばね性)を発生させる時計回り方向のモーメント(以下、回動付勢モーメントともいう)を受ける。回動付勢モーメントの大きさは、〔(ベクトルQo′の大きさ)×(軸中心Xから直線L1までの距離U1)〕となる。
上述したように、内側異形軌道面2kは凸曲面であり、且つ、外側異形軌道面3kは凹曲面である。しかも、内側異形軌道面2k及び外側異形軌道面3kは滑らかに連続した曲面を構成している。内側軌道面21において滑らかに連続した曲面となっていないのは、隣り合った内側異形軌道面2k同士間の境界位置21bのみであり(図2参照)、外側軌道面31において滑らかに連続した曲面となっていないのは、隣り合った外側異形軌道面3k同士間の境界位置31bのみである(図2参照)。したがって、円筒ころ4と軌道面との接触位置がこれら境界位置21b,31bに達しない限り、プーリボス2とプーリ部材3との相対回転に伴う円筒ころ4接触位置における軌道面間隔は漸次(徐々に)変化することとなる。そして、図3を用いて説明した上記機構により、プーリボス2とプーリ部材3との相対回転により生じた位相差を解消する方向の回動付勢力がプーリボス2とプーリ部材3との間に付与される。
上記のように構成されたプーリ装置1によれば、ねじりコイルばね等を用いることのない簡素な構成で回動付勢機能(ねじりばね性)を付与することができる。すなわち、このねじりばね性によって、プーリ部材3とプーリボス2とを周方向に弾性的に相対回転させることができ、ベルト50を介して伝達されるクランクシャフトによる回転速度の変動を緩和して、オルタネータの入力軸Sに回転力を伝達することができる。また、上記構成により得られるねじりばね性の特性は、両異形軌道面2k、3kの形状や円筒ころ4の外径等を変更することで、多様に変化させることができ、その設定の自由度が極めて高くなる。従って、オルタネータの仕様やエンジンの特性等に応じて、好適な弾性力特性を当該オルタネータ用プーリ装置1に付与することができ、クランクシャフトから伝達される回転速度の変動をより効果的に緩和できる。
また、このオルタネータ用プーリ装置1によれば、上記のようにクランクシャフトからの回転速度の変動を効果的に緩和できるので、従来のプーリ装置を用いた場合よりも、ベルト50との間に生じるスリップを効果的に抑制することができる。従って、従来のプーリ装置の場合よりも、ベルト50の初期張力を低く設定することが可能となり、これによって、クランクシャフトの負荷を低減し、エンジンの燃費性能を向上させることができる。
また、上記実施形態のプーリ装置1は、円筒ころ4と、内側軌道面21及び外側軌道面31との転動部位を、オイルやグリース等の潤滑剤で潤滑した場合、円筒ころ4が転動する際の潤滑剤の転がり粘性抵抗や撹拌抵抗によって減衰機能を付与することができ、ねじりばね性を有するとともに、作用する外力及び前記外力の反力としての回動付勢力を減衰する減衰機能を兼ね備えたものとすることができる。これにより、本実施形態のプーリ装置1は、ねじりばね性によって生じる共振等を減衰、緩和することができる。
また、このプーリ装置1において、プーリボス2とプーリ部材3との間には、転がり軸受51、52が介装されており、これらによって、プーリ部材3に作用するラジアル方向の荷重を支持している。これによって、両異形軌道面2k、3k及び円筒ころ4に作用する外部からの負荷荷重を低減できるので、回動付勢力を生じさせるために必要な負荷を、これら両異形軌道面2k、3k及び円筒ころ4に安定的に作用させることができる。従って、当該プーリ装置1により得られる回動付勢力をより安定したものにできる。
また、従来のねじりコイルばねを用いたプーリ装置と比較して、連続使用や経時変化による劣化を抑制することができ、長寿命化が可能となる。更に、周辺構造が簡素化でき、部品点数や組み立てコストの低減化や、信頼性の向上、当該装置の小型化等を図ることができる。
図4は、本発明の第二の実施形態であるプーリ装置1の断面図である。本実施形態と第一の実施形態との主な相違点は、ねじりばね性が得られる相対回転方向が一方向に制限されるように内側軌道面21及び外側軌道面31を形成した点である。その他の点については、第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
本実施形態のプーリ装置1の各異形軌道面2k、3kは、それぞれ単一の曲率半径を有する曲面ではなく、2種類の曲率半径を有する曲面により形成されている。すなわち、内側異形軌道面2kのそれぞれは、曲率半径Griの内側転動面2k1と、円筒ころ4の半径Rrと同じ曲率半径を有する内側転動体保持面2k2とから構成されている。内側転動面2k1の一方側の(小径側の)端部は内側軌道最小径位置2mとなっており、この内側軌道最小径位置2mが内側転動面2k1と内側転動体保持面2k2との境界とされている。またこの内側軌道最小径位置2mにおいて、内側転動面2k1と内側転動体保持面2k2とは滑らかに連続している。
また、外側異形軌道面3kのそれぞれは、曲率半径Groの外側転動面3k1と、円筒ころ4の半径Rrと同じ曲率半径を有する外側転動体保持面3k2とから構成されている。外側転動面3k1一方側の(大径側の)端部は外側軌道最大径位置3mとなっており、この外側軌道最大径位置3mが外側転動面3k1と外側転動体保持面3k2との境界とされている。またこの外側軌道最大径位置3mにおいて、外側転動面3k1と外側転動体保持面3k2とは滑らかに連続している。
また、外側異形軌道面3kのそれぞれは、曲率半径Groの外側転動面3k1と、円筒ころ4の半径Rrと同じ曲率半径を有する外側転動体保持面3k2とから構成されている。外側転動面3k1一方側の(大径側の)端部は外側軌道最大径位置3mとなっており、この外側軌道最大径位置3mが外側転動面3k1と外側転動体保持面3k2との境界とされている。またこの外側軌道最大径位置3mにおいて、外側転動面3k1と外側転動体保持面3k2とは滑らかに連続している。
図4に示す状態は、円筒ころ4が外側軌道最大径位置3mと内側軌道最小径位置2mとに接し且つ内側転動体保持面2k2及び外側転動体保持面3k2と面接触した状態であり、この状態が本実施形態のプーリ装置1における基準状態である。この基準状態においては、軌道面21,31から円筒ころ4に作用する圧縮力は最小値(たとえば0)となっている。この基準状態からは、プーリボス2とプーリ部材3とは一方向にのみ相対回転できるようにされている。すなわち、例えばプーリボス2を固定してプーリ部材3を回転させる場合を考えると、プーリ部材3は、図4の基準状態から反時計回りにのみ回転させることができ、時計回りに回転させることはできない。
次に、外側異形軌道面3k及び内側異形軌道面2kの輪郭形状について詳述する。本実施形態のプーリ装置1における異形軌道面2k、3kの内、円筒ころ4が転動しうる軌道面である内側転動面2k1及び外側転動面3k1の曲率中心位置は、第一の実施形態で示したものとは異なっている。
図4の基準状態の断面において、外側軌道最大径位置3mと内側軌道最小径位置2mとを結ぶ直線t1に平行でかつ軸中心Xを通る直線を第一直線x1及び第二直線y1とする。図4に示すように、第一直線x1と第二直線y1とは互いに直交することとなり、これら第一直線x1及び第二直線y1によって図4の断面図は、等配数と同じ数(つまり4つ)の領域(図4の右上の領域から時計回りの順で領域A1、右下の領域A2、左下の領域A3、左上の領域A4)に区切られる。このとき、例えば領域A1に主として属する内側転動面2k1の曲率中心Ci1は領域A4に属している。また、例えば領域A2に主として属する外側転動面3k1の曲率中心Co1は領域A1に属している。つまり、上記直線x1及びy1で区切られた4領域のいずれかの領域に主として属する内側転動面2k1の曲率中心は、ねじりばね性が得られるプーリ部材回転方向(当該プーリ装置1においては反時計回り方向)に隣接する他の領域に配置されている。同様に、上記4領域のいずれかに主として属する外側転動面3k1の曲率中心は、ねじりばね性が得られるプーリ部材回転方向に隣接する他の領域に配置されている。
図4の基準状態の断面において、外側軌道最大径位置3mと内側軌道最小径位置2mとを結ぶ直線t1に平行でかつ軸中心Xを通る直線を第一直線x1及び第二直線y1とする。図4に示すように、第一直線x1と第二直線y1とは互いに直交することとなり、これら第一直線x1及び第二直線y1によって図4の断面図は、等配数と同じ数(つまり4つ)の領域(図4の右上の領域から時計回りの順で領域A1、右下の領域A2、左下の領域A3、左上の領域A4)に区切られる。このとき、例えば領域A1に主として属する内側転動面2k1の曲率中心Ci1は領域A4に属している。また、例えば領域A2に主として属する外側転動面3k1の曲率中心Co1は領域A1に属している。つまり、上記直線x1及びy1で区切られた4領域のいずれかの領域に主として属する内側転動面2k1の曲率中心は、ねじりばね性が得られるプーリ部材回転方向(当該プーリ装置1においては反時計回り方向)に隣接する他の領域に配置されている。同様に、上記4領域のいずれかに主として属する外側転動面3k1の曲率中心は、ねじりばね性が得られるプーリ部材回転方向に隣接する他の領域に配置されている。
図5は、基準状態にある本実施形態のプーリ装置1のプーリボス2を固定した上で、プーリ部材3を反時計回りに角度θだけ回転させて静止した釣り合い状態を示す図である。このプーリ部材3の回転により、円筒ころ4は転動して内側転動面2k1の曲率中心Ci1に対して角度φiだけ公転する。このとき、図4で説明したのと同様に、プーリ部材3が円筒ころ4から受ける垂直力Qo′は、円筒ころ4と外輪軌道面31との接触位置の中心Poと内側転動面2k1の曲率中心Ci1とを結ぶ直線L1と同じ向きとなる。よって、垂直力Qo′は、図5において時計回りの成分を有することとなり、ねじりばね性を発生させる回動付勢モーメントが発生する。ここで、図4の場合の内側軌道曲率中心Ciと異なり、図5における内側転動面2k1(上述した領域A1に主として属する内側転動面2k1)の曲率中心Ci1は、軸中心Xから第二直線y1方向に距離hだけズレている。この距離hのズレにより、垂直力Qo′のベクトルの向きは、図4の場合と比較してより水平に近くなる。換言すれば、軸中心Xから直線L1に下ろした垂線の長さは、上記垂直力Qo′の向きに対して直交するモーメントの腕の長さとなるが、図4の場合におけるモーメントの腕の長さU1よりも、図5の場合におけるモーメントの腕の長さU2のほうが長くなっている。
従って、垂直力Qo′の大きさが同一の場合、図3の場合における回動付勢モーメント〔(垂直力Qo′の大きさ)×(長さU1)〕よりも、図5の場合における回動付勢モーメント〔(垂直力Qo′の大きさ)×(長さU2)〕のほうが大きくなる。よって、図3の場合よりも図5の場合の方が、外力(トルク)に対して、効率よく回動付勢力を生じさせることができる。すなわち、垂直力Qo′の割合を減少させて回動付勢力を増加させることで、回動付勢力と減衰機能のバランスを適宜調整し、効率的に回動付勢力を生じさせることができる。
従って、垂直力Qo′の大きさが同一の場合、図3の場合における回動付勢モーメント〔(垂直力Qo′の大きさ)×(長さU1)〕よりも、図5の場合における回動付勢モーメント〔(垂直力Qo′の大きさ)×(長さU2)〕のほうが大きくなる。よって、図3の場合よりも図5の場合の方が、外力(トルク)に対して、効率よく回動付勢力を生じさせることができる。すなわち、垂直力Qo′の割合を減少させて回動付勢力を増加させることで、回動付勢力と減衰機能のバランスを適宜調整し、効率的に回動付勢力を生じさせることができる。
上記のように構成された本実施形態のプーリ装置1によれば、外力に対して効率よく回動付勢力を生じさせることができるので、より効果的に回転速度変動を緩和することができる。
また本実施形態のプーリ装置1は、上述のように、プーリボス2とプーリ部材3との相対回転を一方向のみに規制される。さらに、プーリボス2とプーリ部材3との位相関係に関わらず、プーリボス2とプーリ部材3との相対回転により生じた位相差を解消する方向の回動付勢力は、図4における時計回りの向きにのみ生じ、反時計回りには生じない。一方、当該プーリ装置1が取り付けられるオルタネータは、一定方向のみに回転するエンジンのクランクシャフトの回転力が伝達されるため、一方方向のみに相対回転した場合に回動付勢力が生じるものであっても用いることができる。
また本実施形態のプーリ装置1は、上述のように、プーリボス2とプーリ部材3との相対回転を一方向のみに規制される。さらに、プーリボス2とプーリ部材3との位相関係に関わらず、プーリボス2とプーリ部材3との相対回転により生じた位相差を解消する方向の回動付勢力は、図4における時計回りの向きにのみ生じ、反時計回りには生じない。一方、当該プーリ装置1が取り付けられるオルタネータは、一定方向のみに回転するエンジンのクランクシャフトの回転力が伝達されるため、一方方向のみに相対回転した場合に回動付勢力が生じるものであっても用いることができる。
尚、本発明のプーリ装置は上記各実施形態のみに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、転動体として円筒ころを用いたが、例えば球や円すいころ等を用いてもよく、プーリボスとプーリ部材との相対回転に伴い転動するものであれば、転動体の形状等は特に限定されない。また、ねじり剛性の設定自由度を高めるため、弾性圧縮変形しやすい中空の転動体(例えば中空の円筒ころや中空の球)等を用いることもできる。また、転動体の材質は、当該プーリ装置に求められる性能に合わせて適宜選択される。
次に、本発明者らが行った、本発明のオルタネータ用プーリ装置による回転速度変動の緩和性能を検証するための試験結果について説明する。
本試験に供したプーリ装置としては、図1及び図2に示したプーリ装置を用意した。このプーリ装置のプーリボス、プーリ部材、及び円筒ころは、ヤング率207900MPa、ポアソン比0.3の鋼材を用い、以下に示す仕様として作製した。
内輪軌道基準半径Ri :13.5mm
外輪軌道基準半径Ro :20 mm
ころ半径Rr(図2) :3.25mm
ころ有効長さ :10 mm
軌道平均径 :33.5mm
ラジアル隙間 :0 mm
内輪異形軌道面2kの曲率半径gri :15.2mm
外輪異形軌道面3kの曲率半径gro :18 mm
内輪軌道基準半径Ri :13.5mm
外輪軌道基準半径Ro :20 mm
ころ半径Rr(図2) :3.25mm
ころ有効長さ :10 mm
軌道平均径 :33.5mm
ラジアル隙間 :0 mm
内輪異形軌道面2kの曲率半径gri :15.2mm
外輪異形軌道面3kの曲率半径gro :18 mm
上記プーリ装置の回転速度変動の緩和性能の評価方法としては、以下のような方法を採った。すなわち、オルタネータと同等のマスを有するとともに回転自在に支持されたシャフトに上記プーリ装置を取り付け、入力側であるプーリ部材にベルトを巻き掛けて、所定の振幅、周波数をもって回転速度が経時的に変動するようにプーリ部材を回転させる。そしてこの時プーリ部材の回転に伴って回転するシャフト(プーリボス)の回転速度の経時変化を測定し、当該シャフトの回転速度の振幅を把握することで、回転速度変動の緩和性能の評価を行った。尚、プーリ部材及びシャフトの回転速度は、同一径における周速として測定した。
試験条件としては、入力側であるプーリ部材の回転速度を、周速毎分320〜370mの振幅をもって一定周期で変動するように設定した。
試験条件としては、入力側であるプーリ部材の回転速度を、周速毎分320〜370mの振幅をもって一定周期で変動するように設定した。
図6は、プーリ部材の回転速度の経時変化と、シャフトの回転速度と経時変化を測定した結果の一例を示すグラフ図である。図において、縦軸は回転速度を示しており、横軸は経過時間を示している。また、波形H1は、プーリ部材の回転速度の経時変化を示しており、波形I1はシャフトの回転速度の経時変化を示している。
波形H1を見ると、周速毎分320〜370mの振幅をもって一定周期で変動していることが判る。また、波形H1と波形I1とを比較すると明らかなように、プーリ部材の回転速度を示す波形Hの振幅hに対して、シャフトの回転速度を示す波形Iの振幅iは非常に小さくなっており、プーリ部材が有する回転速度の変動が緩和されていることが判る。
波形H1を見ると、周速毎分320〜370mの振幅をもって一定周期で変動していることが判る。また、波形H1と波形I1とを比較すると明らかなように、プーリ部材の回転速度を示す波形Hの振幅hに対して、シャフトの回転速度を示す波形Iの振幅iは非常に小さくなっており、プーリ部材が有する回転速度の変動が緩和されていることが判る。
上記図6のようにして得られる振幅h及び振幅iについて、プーリ部材の回転速度の周期変動における周波数を30〜70Hzの範囲で設定し、各周波数に対するシャフトの回転速度の振幅を測定した。
図7は、上記のようにして得られた、各周波数に対する振幅h及び振幅iをプロットしたグラフ図である。図中、縦軸は回転速度の有する振幅を示しており、横軸はプーリ部材の回転速度の周期変動における周波数を示している。線図H2はプーリ部材、線図I2はシャフトにおける測定結果を示している。両線図H2、I2を比較すると、測定した各周波数において、プーリ部材の振幅に対して、シャフトの振幅は非常に小さくなっていることが判る。
図7は、上記のようにして得られた、各周波数に対する振幅h及び振幅iをプロットしたグラフ図である。図中、縦軸は回転速度の有する振幅を示しており、横軸はプーリ部材の回転速度の周期変動における周波数を示している。線図H2はプーリ部材、線図I2はシャフトにおける測定結果を示している。両線図H2、I2を比較すると、測定した各周波数において、プーリ部材の振幅に対して、シャフトの振幅は非常に小さくなっていることが判る。
以上の試験結果より、本発明によるプーリ装置は、種々の条件下において、プーリ部材に伝達される回転速度変動に伴う振幅を非常に小さくしてシャフト(プーリボス)に伝達でき、回転速度変動を効果的に緩和できることが確認できた。すなわち、上記のような特性を有する当該プーリ装置は、エンジンのオルタネータに用いることで、クランクシャフトの回転速度変動を効果的に緩和することができる。
1 オルタネータ用プーリ装置
2 プーリボス(内側部材)
21 内側軌道面
2k 内側異形軌道面
3 プーリ部材
31 外側軌道面
3k 外側異形軌道面
4 円筒ころ(転動体)
50 ベルト
51,52 転がり軸受
2 プーリボス(内側部材)
21 内側軌道面
2k 内側異形軌道面
3 プーリ部材
31 外側軌道面
3k 外側異形軌道面
4 円筒ころ(転動体)
50 ベルト
51,52 転がり軸受
Claims (2)
- 外周にベルトが巻き掛けられるとともに内周に外側軌道面を有する円筒状のプーリ部材と、
外周に前記外側軌道面と対向する内側軌道面を有し、前記プーリ部材に対して相対回転可能に配設されるとともにオルタネータの入力軸に一体回転可能に取り付けられる内側部材と、
前記外側軌道面と前記内側軌道面との間に転動可能に介在した転動体とを備え、
前記内側軌道面及び外側軌道面の少なくとも一方が、前記プーリ部材と前記内側部材との相対回転に伴い転動体を転動させつつ当該転動体の挟持間隔を漸次狭くして、前記相対回転により生じた前記プーリ部材と前記内側部材との間の位相差を解消する方向の回動付勢力を前記プーリ部材と前記内側部材との間に付与する異形軌道面を少なくとも一部に有していることを特徴とするオルタネータ用プーリ装置。 - 前記プーリ部材と前記内側部材との間には、これらを互いに相対回転可能に支持する転がり軸受が介装されている請求項1記載のオルタネータ用プーリ装置。
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JP2014055599A (ja) * | 2012-09-11 | 2014-03-27 | Nok Corp | トルク変動吸収ダンパ |
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JPS59107346A (ja) * | 1982-12-13 | 1984-06-21 | Ube Ind Ltd | 耐熱性感光材料 |
JP2005172183A (ja) * | 2003-12-15 | 2005-06-30 | Koyo Seiko Co Ltd | 動力伝達装置 |
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- 2005-10-14 JP JP2005299916A patent/JP2007107633A/ja active Pending
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2006
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