JP2007106118A - 多層構造体、及び多層構造体の製造方法 - Google Patents

多層構造体、及び多層構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶液中に形成される逆ミセルの鋳型を利用して、パターニングされ、形態、細孔の径、その密度等が制御された細孔を有する薄膜及び基板等からなる多層構造体、及び該薄膜の細孔内に機能性物質が埋め込まれた多層構造体を提供する。
【解決手段】有機ポリマー及び両親媒性物質からなりかつ細孔(P)を有する薄膜(A)、基板(B)、並びに薄膜(A)と基板(B)の層間の少なくとも一部を形成している中間層(C)から構成される多層構造体であって、薄膜(A)と相対する中間層(C)側の面に基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)から形成されるパターニングされた疎水性部(S)が設けられ、薄膜(A)中の細孔(P)が疎水性部(S)と相対する薄膜部(Ap)に偏在するようにパターニングされ、かつ両親媒性物質が細孔(P)の辺縁部に存在している多層構造体。
【選択図】なし

Description

本発明は、エレクトロニクス分野、オプテックス分野、バイオテクノロジー分野等に有用である、細孔径、細孔密度及び細孔の開口状態が制御されかつパターニングされた細孔を有する薄膜と基板等から形成される多層構造体、及び該細孔中に機能性物質等が存在する多層構造体、並びにこれらの製造方法に関する。
薄膜に細孔がパターニングされた高分子多孔質膜の製造方法として、リソグラフィー等を用いた微細加工、自己組織化を利用した方法等が知られている。
リソグラフィー法は、シリコンウェハー上にレジスト(感光剤)を薄く塗布し、集積回路パターン等を光で焼き付けて転写する。転写されたレジストパターンにイオン等を打ち込んで、配線パターンや素子を形成するものであるが、1/10μmサイズのパターンが限界であり、操作が複雑でしかも装置が高価であるという問題がある。
自己組織化を利用する分子多孔質膜の製造方法として、ブロック共重合体の形成、紫外線照射、結露を利用する方法等が挙げられる。
ブロック共重合体の形成法として、基板上に、疎水性有機溶媒に可溶なポリスチレンブロック重合体と、難溶な他のブロック重合体とからなるポリマーの疎水性有機溶媒溶液をキャストして二次元方向に規則的格子状パターンを形成した後に、機能性材料溶液をキャストするか該溶液に浸漬して格子状パターンの孔内に機能性材料を埋設する有機薄膜とその製造方法が開示されている(特許文献1)。
紫外線照射による多孔質薄膜の製造方法として、無機元素を構造中に有する有機化合物を薄膜材料とし、真空雰囲気中に前記薄膜材料の蒸気を放出させ、酸化チタン薄膜表面に薄膜を形成した後、前記薄膜に紫外線を照射し、前記薄膜を多孔質化する方法が開示されている(特許文献2)。
結露を利用する方法として、生分解性ポリマー(ポリ乳酸)が50〜99%および両親媒性ポリマーが50〜1%からなるポリマーの疎水性有機溶媒溶液を、相対湿度50〜95%の大気下で基板上にキャストし、該有機溶媒を徐々に蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させる方法、及び該方法により得られるハニカム構造体を用いたシートあるいは細胞培養基材が開示されている(特許文献3)。
特開2006−12232号公報 特開2000−203886号公報 特表2001−157574号公報
特許文献1に開示のブロック共重合体を用いた分子多孔質膜の製造方法では、格子状のパターンはポリマー構造体の構造に基づくのでパターニングに制約があり、自己支持性が十分でなく、またハニカム構造の経時的な安定性にも問題が残されている。
特許文献2に記載の紫外線照射法では紫外線照射により無機元素を構造中に有する有機化合物を分解除去して細孔を形成するので、細孔径の制御と細孔のパターニングが困難である。
特許文献3に記載の結露を利用する方法では、相対的に高湿度の条件下で結露の形成による微小水滴の孔径や細孔の密度制御に困難性があり、また、細孔の密度が増加すると隣接する細孔間で連通する現象が生ずる場合があり、更に、膜の高機能化のために薄膜の細孔へ機能性物質を導入する場合、これらの方法では膜の作製と、作成された膜の細孔部への機能性物質導入を別々の工程にて行わなければならない。
上記したように有機ポリマーからなる、逆ミセル又はその鋳型を利用して、細孔の形態、細孔の径とその密度等を制御して、パターニングされた細孔を有する薄膜を構成要素に含む多層構造体、及び該薄膜の細孔内への機能性物質が埋め込まれた多層構造体は知られていない。また、逆ミセル又はその鋳型を利用して、パターニングされた細孔を有する薄膜形成の際に薄膜の細孔内への機能性物質の埋め込みを同時に行う方法も知られていない。
本発明は上記課題に鑑みて、溶液中に形成される逆ミセルの鋳型を利用して、パターニングされ、形態(パターニングされた構造体の疎水性部と相対する薄膜部分に細孔がほぼ均一に分布して存在、該薄膜部分で細孔が開口孔又は貫通孔として存在する等)、細孔の径、その密度等が制御された細孔を有する薄膜及び基板等からなる多層構造体、及び該薄膜の細孔内に機能性物質が埋め込まれた多層構造体、並びにこれらの製造方法を提供することを目的としてなされたのであり、下記の実施形態1ないし3に関する発明である。
[1]実施形態1は、下記実施形態1−1及び1−2に記載する発明である。
実施形態1−1は、(1)有機ポリマー及び両親媒性物質からなりかつ細孔(P)を有する薄膜(A1)、基板(B)、並びに薄膜(A1)と基板(B)の層間の少なくとも一部を形成している中間層(C)から構成される多層構造体であって、薄膜(A1)と相対する中間層(C)側の面に基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)から形成されるパターニングされた疎水性部(S)が設けられ、薄膜(A1)中の細孔(P)が疎水性部(S)と相対する薄膜部(A1p)に偏在するようにパターニングされ、かつ両親媒性物質が細孔(P)の辺縁部に存在している、多層構造体(K1)に関する発明である。
実施形態1−2は、(2)有機ポリマー、両親媒性物質及び機能性物質からなりかつ細孔(P)を有する薄膜(A2)、基板(B)、並びに薄膜(A2)と基板(B)の層間の少なくとも一部を形成している中間層(C)から構成される多層構造体であって、薄膜(A2)と相対する中間層(C)側の面に基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)から形成されるパターニングされた疎水性部(S)が設けられ、薄膜(A2)中の細孔(P)が疎水性部(S)と相対する薄膜部(A2p)に偏在するようにパターニングされ、両親媒性物質が細孔(P)の辺縁部に存在し、かつ前記機能性物質が細孔(P)内部に存在する、多層構造体(K2)に関する発明である。
尚、本発明においては、上記多層構造体(K1)のうち薄膜(A1)中の細孔(P)が主に開口孔及び貫通孔からなるものについて、更に洗浄等の操作により両親媒性物質を除去して得られる下記多層構造体(K1a)、及び多層構造体(K1a)の細孔(P)内部に機能性物質が充填されている下記多層構造体(K1b)も本願発明の技術思想の範疇に含まれる。
(i)多層構造体(K1a)
有機ポリマーからなりかつ細孔(P)を有する薄膜(A1a)、基板(B)、及び薄膜(A1a)と基板(B)の層間の少なくとも一部を形成している中間層(C)から構成される多層構造体であって、薄膜(A1a)と相対する中間層(C)側の面に基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)から形成されるパターニングされた疎水性部(S)が設けられ、かつ薄膜(A1a)中の細孔(P)が当該疎水性部(S)と相対する薄膜部(A1p)に偏在するようにパターニングされていることを特徴とする多層構造体(K1a)。
(ii)多層構造体(K1b)
有機ポリマー及び機能性物質からなりかつ細孔(P)を有する薄膜(A1b)、基板(B)、並びに薄膜(A1b)と基板(B)の層間の少なくとも一部を形成している中間層(C)から構成される多層構造体であって、薄膜(A1b)と相対する中間層(C)側の面に基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)から形成されるパターニングされた疎水性部(S)が設けられ、薄膜(A1b)中の細孔(P)が当該疎水性部(S)と相対する薄膜部(A1p)に偏在するようにパターニングされ、かつ前記機能性物質が細孔(P)の内部に存在することを特徴とする多層構造体(K1b)。
また、実施形態1−1、及び1−2においては更に下記(3)〜(15)の態様とすることができる。
(3)前記有機ポリマーがポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、シクロポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、ポリアルキレンオキサイド、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、熱可塑性ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリアミドイミドから選ばれた少なくとも1種以上である。
(4)前記両親媒性物質がビス(2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムとポリスチレンスルホン酸のポリイオンコンプレックス、エチレングリコールとプロピレングリコールから得られるブロックコポリマー、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドから得られるブロックコポリマーから選ばれた少なくとも1種以上である。
(5)前記基板(B)が金属、セラミックス、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリフッ化エチレン、ポリエーテルケトン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸から選ばれた少なくとも1種以上、あるいはこれらを複合した基板である。
(6)前記パターニングされた疎水性部(S)が、(i)薄膜(A1又はA2)が形成される面と相対する面(上面)にいずれか一方が疎水性部である基板(B)又は中間層(C)を使用して、基板(B)の上面の一部に中間層(C)を設けることにより形成されている、(ii)基板(B)の上面の一部に中間層(C)を設けて、基板(B)及び/又は中間層(C)の上面の少なくとも一部を改質することにより形成されている、(iii)基板(B)の上面の全面に予め疎水性部(S)がパターニングされた中間層(C)を設けることにより形成されている、又は(iv)基板(B)の上面の全面に中間層(C)を設けて該中間層(C)の一部を改質することにより形成されている。
(7)前記中間層(C)が基板(B)上の一部に設けられた層であって、基板(B)が親水性のときに中間層(C)はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂から選ばれた少なくとも1種以上の疎水性層であり、あるいは基板(B)が疎水性のときに中間層(C)はポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリビニルスルホン、ポリエチレンオキシド、TiO層、及びガラスから選ばれた少なくとも1種以上の親水性層である。
(8)前記(2)ないし(7)において、前記機能性物質が(i)Au、Ag、Cu、Pt、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、及びTiから選択される金属、(ii)前記2種以上の金属、又は前記金属と非金属元素から得られる合金、(iii)前記金属と周期律表16族の元素(O、S、Se、Te、Po)との化合物(金属カルコゲナイド)、及び(iv)前記金属と周期律表17族の元素(F、Cl、Br、I)との化合物(金属ハロゲン化合物)、並びに(v)前記(i)ないし(iv)に示す物質を形成する前駆体、から選ばれた少なくとも1種以上である。
(9)前記(2)ないし(7)において、前記機能性物質が(i)半導体材料、金属酸化物、セラミックス材料、強誘電体材料、強磁性体材料、抵抗変化材料、相変化材料、光機能材料、及び蛍光機能材料、並びに(ii)前記(i)に示す物質を形成する前駆体、から選ばれた少なくとも1種以上である。
(10)前記(1)ないし(9)において、前記薄膜部(A1p又はA2p)における細孔(P)が、当該薄膜部(A1p又はA2p)内に均一に分布しており、その平均孔径(開口及び貫通している孔を除く)が0.1〜10μmである。
(11)前記(1)ないし(9)において、前記薄膜部(A1p又はA2p)における細孔(P)は、薄膜(A1又はA2)表面に垂直な断面における孔の全面積のうち表面で開口している孔(開口孔)の面積割合が60%以上、又は薄膜部(A1p又はA2p)における表面開口率が5%以上であり、かつ該開口孔の平均開口径が0.1〜100μmである。
(12)前記(1)ないし(9)において、前記薄膜部(A1p又はA2p)における細孔(P)は、薄膜(A1又はA2)表面に垂直な断面における孔の全面積のうち貫通している孔(貫通孔)の面積割合が60%以上、又は貫通孔に基づく薄膜部(A1p又はA2p)における表面開口率が7%以上であり、かつ該貫通孔の薄膜(A1又はA2)表面と平行方向の平均孔径が1〜50μm又は該貫通孔の平均開口径が1〜50μmである。
(13)前記薄膜(A1又はA2)の厚みが0.001〜1mmである。
(14)前記薄膜(A1又はA2)が自己支持性を有する。
(15)前記薄膜部(A1p又はA2p)に偏在するようにパターニングされた細孔(P)の配列が一次元配列、二次元配列、又はハニカム状配列である。
また、本発明は下記の実施形態2に関する発明である。
[2] 実施形態2
実施形態2は、(16)下記(i)ないし(iv)に記載する工程を含む、疎水性有機溶媒溶液中で生成した逆ミセルの鋳型を利用して形成されるパターニングされた細孔(P)を有する薄膜(A)、基板(B)、及び薄膜(A)と基板(B)の層間の少なくとも一部を形成している中間層(C)から構成される多層構造体(K)の製造方法、に関する発明である。
(i)薄膜(A)が形成される面と相対する側の面(上面)に、基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)から形成されるパターニングされた疎水性部(S)を有する、基板(B)と中間層(C)からなる構造体(D)を作製する工程(工程1)
(ii)少なくとも両親媒性物質、疎水性を有する有機ポリマー、親水性液体及び疎水性有機溶媒からなる溶液を混合撹拌して、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を得る工程(工程2)
(iii)前記疎水性有機溶媒溶液を構造体(D)の上面にキャストして、逆ミセルを該疎水性有機溶媒溶液中で前記パターニングされた疎水性部(S)と相対する部分に偏在させる工程(工程3)
(iv)構造体(D)上の疎水性有機溶媒溶液から、疎水性有機溶媒を蒸発させて、逆ミセルの鋳型から形成される細孔(P)が疎水性部(S)と相対する薄膜部(Ap)に偏在するようにパターニングされた薄膜(A)を形成する工程(工程4)
実施形態2においては更に下記(17)〜(31)の態様とすることができる。
(17)前記工程2の疎水性有機溶媒溶液が両親媒性物質、疎水性を有する有機ポリマー、疎水性有機溶媒、親水性液体、及び該親水性液体相中に選択的に分散又は溶解する機能性物質からなり、かつ工程4で得られた薄膜(A)中の薄膜部(Ap)に偏在するようにパターニングされた細孔(P)中に該機能性物質が含まれている。
(18) 前記パターニングされた疎水性部(S)が、(i)薄膜(A)が形成される面と相対する面(上面)にいずれか一方が疎水性部である基板(B)又は中間層(C)を使用して、基板(B)の上面の一部に中間層(C)を設けることにより形成される、(ii)基板(B)の上面の一部に中間層(C)を設けて、基板(B)及び/又は中間層(C)の上面の少なくとも一部を改質することにより形成される、(iii)基板(B)の上面の全面に予め疎水性部(S1)がパターニングされた中間層(C)を設けることにより形成される、又は(iv)基板(B)の上面の全面に中間層(C)を設けて該中間層(C)の一部を改質することにより形成される。
(19)前記(18)における前記パターニングされた疎水性部(S)が塗布法、真空蒸着法、分子線エピタキシー法(MBE)、化学気相成長法(CVD)、及び物理気相成長法(PVD)から選ばれた少なくとも1種以上を用いて親水部又は疎水性部を設けることにより形成される、又は前記改質が化学処理及び/又は光エネルギー照射である。
(20)前記工程2における親水性液体と両親媒性物質の重量配合比Rw(親水性液体/両親媒性物質)が0.5ないし15である。
(21)前記工程2における有機ポリマーと両親媒性物質の重量配合割合Rp(有機ポリマー/〔有機ポリマー+両親媒性物質〕)が0.1ないし0.6である。
(22)前記工程3における基板(B)上にキャストする前記疎水性有機溶媒溶液の厚みが0.01〜5mmである。
(23)前記工程4における疎水性有機溶媒の蒸発を乾燥ガス流通下で行う。
(24)前記(23)において、前記乾燥ガスが乾燥空気又は乾燥不活性ガスである。
(25)前記工程4の蒸発温度における疎水性有機溶媒の蒸気圧が親水性液体の蒸気圧の0.3倍以上である。
(26)前記工程2で使用する前記疎水性有機溶媒が、誘電率が5以下であるノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、ノルマルヘプタン、ノルマルデカン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、オルソキシレン、メタキシレン、パラキシレン、混合キシレン、四塩化炭素、クロロホルム、及びトランス1、2-ジクロロエチレン、から選ばれた少なくとも1種以上である。
(27)前記(16)ないし(26)において、前記工程2における20℃での誘電率が5以下で同温度での比重が0.65〜0.90である前記疎水性有機溶媒を使用し、かつ工程4における前記疎水性有機溶媒の蒸発を行うことにより、逆ミセルの鋳型から、前記薄膜部(Ap)に形成される細孔(P)は、当該薄膜部(Ap)内にほぼ均一に分布しており、その細孔(P)(開口及び貫通している孔を除く)の径の平均値が0.1〜10μmである。
(28)前記(16)ないし(26)において、前記工程2における比重が親水性液体の比重よりも大きい前記有機ポリマー及び/又は前記疎水性有機溶媒を使用し、かつ工程4における前記疎水性有機溶媒の蒸発により、逆ミセルの鋳型から、前記薄膜部(Ap)に形成される細孔(P)は、薄膜(A)表面に垂直な断面における孔の全面積のうち表面で開口(貫通を除く)している孔(開口孔)の面積割合が60%以上、又は薄膜部(Ap)における表面開口率が5%以上であり、その前記開口孔の平均開口径が0.1〜100μmである薄膜(A)を形成する。
(29)前記(16)ないし(26)において、前記工程2における前記Rw(親水性液体/両親媒性物質)を3ないし15とし、工程3において工程4における疎水性有機溶媒蒸発後の薄膜(A)の厚みが1〜50μmとなるように前記疎水性有機溶媒溶液を構造体(D)上にキャストし、かつ工程4における前記疎水性有機溶媒の蒸発により、逆ミセルの鋳型から、前記薄膜部(Ap)に形成される細孔(P)は、薄膜(A)表面に垂直な断面における孔の全面積のうち貫通している孔(貫通孔)の面積割合が60%以上、又は貫通孔に基づく薄膜部(Ap)における表面開口率が7%以上であり、その前記貫通孔の薄膜(A)表面と平行方向の平均孔径が1〜50μm又は前記貫通孔の平均開口径が1〜50μmである薄膜(A)を形成する。
(30)前記(17)ないし(29)において、前記機能性物質が(i)Au、Ag、Cu、Pt、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、及びTiから選択される金属、(ii)前記2種以上の金属、又は前記金属と非金属元素から得られる合金、(iii)金属と周期律表16族の元素(O、S、Se、Te、Po)との化合物(金属カルコゲナイド)、及び(iv)金属と周期律表17族の元素(F、Cl、Br、I)との化合物(金属ハロゲン化合物)、並びに(v)前記(i)ないし(iv)に示す物質を形成する前駆体、から選ばれた少なくとも1種以上である。
(31)前記(17)ないし(29)において、前記機能性物質が(i)半導体材料、金属酸化物、セラミックス材料、強誘電体材料、強磁性体材料、抵抗変化材料、相変化材料、光機能材料、及び蛍光機能材料、並びに(ii)前記(i)に示す物質を形成する前駆体、から選ばれた少なくとも1種以上である。
更に、本願発明は下記の実施形態3に関する発明である。
[3] 実施形態3
実施形態3は、(32)上記(16)に記載する工程4で得られる多層構造体中の薄膜(A)の細孔(P)、あるいは上記(16)に記載する工程4で得られる多層構造体中の薄膜(A)から両親媒性物質を除去した有機ポリマーからなる多層の構造体中の薄膜(A)の細孔(P)に更に機能性物質を充填する方法であって、該機能性物質の充填方法が、(a)電着法による金属の充填方法、又は(b)スパッタリング法による相変化材料の充填を利用した充填方法である、多層構造体中の薄膜(A)の細孔(P)に機能性物質を充填する方法、に関する発明である。
本発明によれば、逆ミセルの鋳型を利用して形成されかつパターニングされた細孔(P)で、その形態(パターニングされた疎水性部と相対する薄膜部(A1p)において、細孔が均一分布、開口孔、貫通孔で存在等)、孔径、及びその密度が制御された細孔(P)を有する薄膜(A)と基板(B)等から構成される多層構造体を提供することができる。更に薄膜(A)の細孔(P)の内部に機能性物質の埋め込みを容易に行うことができるため、比較的容易な操作で機能性を有する多層構造体の作製が可能となる。
以下、本発明の実施形態1〜3について説明する。
尚、以下の記載において、薄膜(A1)と薄膜(A2)を併せて薄膜(A)ということがあり、多層構造体K1及びK2を併せて多層構造体Kということがある。
また、以下の記載において特に示されていない限り、細孔は細孔(P)を、意味し、薄膜は薄膜(A1)、薄膜(A2)又は薄膜(A)を意味する。
本発明における疎水性有機溶媒溶液、薄膜中の細孔のパターニング、形態等についての観察は、以下の(a)ないし(d)に記載する方法に基づく。
(a)疎水性有機溶媒溶液中の逆ミセルのミセル径測定
レーザー回折装置を使用した測定による。
(b)薄膜の表面及び断面観察
走査型電子顕微鏡を使用した観察による。表面観察はそのまま、断面観察は表面に垂直に切削し断面出しした後、観察を行う。
(c)薄膜部(Ap)における下記非開口孔、非貫通開口孔、貫通孔等の各種形態の細孔を特徴付けるパラメータの測定
走査型電子顕微鏡を用いて、細孔のサイズに応じて倍率を変えて撮影された走査型電子顕微鏡写真撮影を基に、薄膜部(Ap)等における下記非開口孔、非貫通開口孔、貫通孔等の各種形態の細孔を特徴付けるパラメータの測定を、以下に記載する方法により行う。尚、以下に記載する薄膜の表面は、薄膜が基板と中間層に面していない側の表面をいう(以下、同じ)。
(i)平均開口径
薄膜の全表面の観察から開口径を測定し、その平均値を平均開口径とする。
(ii)非開口孔(薄膜部(Ap)内でほぼ均一に分布している細孔)
非開口孔の平均孔径及び断面空孔率の測定
(ii−1)平均孔径の測定
薄膜部(Ap)断面において、切断位置によるばらつきを考慮して孔部の略中心断面に相当する、孔部の孔径の大きなものを5個抽出し、それぞれの孔部の薄膜表面と平行方向の孔径(平行方向の細孔の最大長さ)を測定し、その平均値を平均孔径とする。
(ii−2)断面空孔率の測定
薄膜部(Ap)断面において、孔部面積の断面積全体に占める割合を算出し、断面空孔率とする。
(iii)非貫通開口孔(薄膜部(Ap)内で主に非貫通開口孔として存在している細孔)
薄膜部(Ap)表面の細孔密度、薄膜部(Ap)断面における孔の全面積に対する非貫通開口孔の面積割合、表面開口率、及び平均開口径の測定
(iii−1)細孔密度
薄膜部(Ap)の膜表面観察結果から、単位面積当りの細孔数から細孔密度を求めた。
(iii−2)薄膜部(Ap)断面における細孔の全面積に対する非貫通開口孔の面積割合
薄膜部(Ap)の任意の断面における孔の全面積のうち非貫通開口孔の面積割合を求める。
(iii−3)表面開口率
薄膜部(Ap)表面の非貫通開口孔の面積が表面積全体に占める割合を算出して表面開口率を求める。
(iv)貫通孔(薄膜部(Ap)内で主に貫通孔として存在いる細孔)
薄膜部(Ap)表面の細孔密度、薄膜部(Ap)断面における細孔の全面積のうち貫通孔の面積割合、表面開口率、平均開口径、及び構造体表面と平行方向の平均孔径
(iv−1)細孔密度
薄膜部(Ap)の膜表面観察結果から、単位面積当りの細孔数から細孔密度を求めた。
(iv−2)薄膜部(Ap)断面における孔の全面積に対する貫通孔の面積割合
薄膜部(Ap)の任意の断面における孔の全面積のうち貫通孔の面積割合を求める。
(iv−3)表面開口率
薄膜部(Ap)表面の貫通孔の開口面積が表面積全体に占める割合を算出して表面開口率を求める。
(iv―4)貫通孔の薄膜表面と平行方向の平均孔径
薄膜部(Ap)中の孔部の略中心断面に相当する孔部の寸法の大きなものを5個抽出し、それぞれの孔部の薄膜表面と平行方向の孔径(平行方向の細孔の最大長さ)を測定し、その平均値を平均孔径とする。
(d)ジヘキサデシルジメチルアンモニウムとポリスチレンスルホン酸のポリイオンコンプレックス由来のS(イオウ)の分析
エネルギー分散型蛍光X線分析装置をした観察による。
[1] 実施形態1
(i)実施形態1−1における薄膜(A1)は、有機ポリマー及び両親媒性物質、(ii)実施形態1−2における薄膜(A2)は、有機ポリマー、両親媒性物質及び機能性物質から構成される。
以下に本発明において使用可能な(1)薄膜(A)を形成する有機ポリマー、両新媒性物質及び、機能性物質等、(2)基板(B)、並びに(3)中間層(C)を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、本発明の基板(B)と中間層(C)における疎水性とは親水性との対比において絶対的なものではなく、基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)において疎水性と親水性との関係における相対的な意味である。これは逆ミセルを構成する疎水性基がより疎水性を有する基板(B)及び/又は中間層(C)に対し反発を受けづらい性質があるので、逆ミセルは溶液中で相対的により疎水性を有する物質の近傍に偏在する傾向があるからである。
(1)薄膜(A)
以下に実施形態1の薄膜(A)を構成する、有機ポリマー、両親媒性物質及び機能性物質について記載する。
(1−1)有機ポリマー
有機ポリマーは、基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)上に形成された薄膜(A)が自己支持性を有する程度の剛性を有するものが好ましく、その具体例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、シクロポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン塩素樹脂系ポリマー;ポリアルキレンオキサイド;ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合樹脂等のアルコール系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂;メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂等のアクリル系樹脂;ポリアミド樹脂(ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66等)、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、熱可塑性ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)等のエンジニアリングプラスチックから選ばれた少なくとも1種以上が挙げられる。
その他、用途等により、有機ポリマーとしてポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、セルロース系プラスチック、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、非晶ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド等も使用可能である。
これらの中でもコスト面からポリスチレン、前記アクリル系樹脂、透明性の観点からポリカーボネート、シクロポリオレフィン、フッ素樹脂、また、耐熱性の観点から、ポリアミド、ポリイミドが好ましい。
(1−2)両親媒性物質
実施形態1で使用する両親媒性物質は、疎水性基と親水性基を有するものであれば特に種類は限定されず、高分子両親媒性物質及び高分子以外の両親媒性物質でもよい。イオン性両親媒性物質において親水性基を構成する陰イオンとしては−COO、−SO 等があり、また陽イオンとしてはジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオンなどがある。また、非イオン性両親媒性物質における親水基としては水酸基、エーテル結合などがある。本発明の多層構造体における両親媒性物質の存在は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置をした観察により確認できる。
両親媒性物質の具体例としては、ビス(2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)(下記化学式1で示す。以下AOTと記載することがある。)、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムとポリスチレンスルホン酸のポリイオンコンプレックス(下記化学式2で示す。以下PICと記載することがある。)、エチレングリコールとプロピレングリコールから得られるブロックコポリマー、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドから得られるブロックコポリマーから選ばれた少なくとも1種以上が挙げられる。上記PICは、例えば、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムブロミドの超音波分散液とポリスチレンスルホン酸ナトリウムの水溶液を反応させて生じる白色沈殿を乾燥後、再結晶させて精製物として得ることができる。
化学式2におけるnは300〜500程度の整数である。
(1−3)機能性物質等
実施形態1−2における機能性物質としては、本発明の疎水性有機溶媒溶液中で親水性溶液中に選択的に分散又は溶解可能な物質であれば特に制限はなく、無機微粒子、有機微粒子が使用可能であるが、無機微粒子が好ましい。尚、本発明の機能性物質には、以下に記載する物質を形成する前駆体も含まれる。
前記無機微粒子としては、使用目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、金属、合金、金属カルコゲナイド、金属ハロゲン化合物、更には半導体材料、金属酸化物、セラミックス材料、強誘電体材料、強磁性体材料、抵抗変化材料、相変化材料、光機能材料、蛍光機能材料等から選択される少なくとも1種以上が挙げられる。
金属としては、Au、Ag、Cu、Pt、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、及びTi等が例示できる。合金としては、前記した2種以上の金属、又は前記金属と非金属元素から得られる合金が使用可能であるが、具体的にはAu、Ag、Cu、Pt、Pd、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、ランタノイド系列の元素及びアクチノイド系列の元素から選ばれる少なくとも1種以上との合金が例示できる。
金属カルコゲナイドとしては、前記金属及びその他の金属と周期律表16族の元素(O、S、Se、Te、Po)との化合物が例示できる。金属ハロゲン化合物としては、前記金属及びその他の金属と周期律表17族の元素(F、Cl、Br、I)との化合物が例示できる。
半導体材料としては、短周期律表3B族と5B族化合物半導体(GaN、GaP、GaSb、GaAs、InN、InP、InAs等)、短周期律表2B族と6B族化合物半導体(ZnO、ZnS、CdO、CdSHgO、HgS等)が挙げられる。更に、周期律表16族元素と、周期律表15、14、13、8、4、2族元素との化合物として、それぞれAs、As、Sb、Sb、SbSe、Bi、Bi、BiSe、BiTe等(15族元素);SnO、SnS、PbS、PbSe、PbTe等(14族元素);Ga、Ga、GaSe、GaTe、In、In等(13族元素);Fe、FeS等(8族元素);TiO、ZrO等(4族元素);MgS、MgSe等(2族元素)が挙げられる。前記半導体化合物にCu、Al、Mn、Zn、Ag等のドープ剤を含有させてもよい。
金属酸化物としては、光触媒活性を有するTiO、ZnO、ZrO等の金属酸化物微粒子、又は光触媒活性を低下又は消失させる金属、例えばAl、Si、Zr、Sn、Fe、Ga、Cd又はこれらの酸化物等が挙げられる。
セラミックス材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム(酸化物セラミック);チタン酸バリウム(電子材料セラミックス);フェライト(磁気セラミックス) 等が挙げられる。
その他、PbTiO3−PbZrO3系等の強誘電体材料、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性体材料、TiO2−x層(0<x<2)等の抵抗変化材料、Ge、Sb、Teを用いて形成されるカルコゲナイド系の相変化材料、親水性基を有する希土類錯体等の光機能材料、Sb23とBi23等の蛍光機能材料等が挙げられる。
(1−4)薄膜(A)の形状等について
薄膜(A)は、基板(B)と中間層(C)からなる構造体(D)上にキャストして形成される膜であり、この薄膜(A)の厚みは0.001〜1mmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.1mmである。この厚み範囲では薄膜(A)は十分な力学的強度を有し、薄膜部(Ap)に形成される細孔が均一に分布した薄膜(A)、又は開口孔(非貫通孔)もしくは貫通孔を有する薄膜(A)とすることの制御が比較的容易となる。このような薄膜(A)の厚みは、疎水性有機溶媒溶液中の有機ポリマー濃度、及び構造体(D)上にキャストされた疎水性有機溶媒溶液の厚みにより容易に制御することができる。
以下に薄膜部(Ap)に形成される細孔の形態について記載する。尚、これらの形態の細孔を有する薄膜の作製方法は実施形態2において説明する。
(i)薄膜部(Ap)において細孔が均一に分布している薄膜(A)
図1(A)の多層構造体断面模式図に示すように、パターニングされた疎水性部と相対する薄膜部(Ap)に、逆ミセルの鋳型から形成された細孔がほぼ均一に分布している。該細孔の平均孔径は使用目的等を考慮して0.1〜10μmに制御することが可能である。
(ii)薄膜部(Ap)において細孔が主に開口孔である薄膜(A)
図1(B)の多層構造体断面模式図に示すように、薄膜部(Ap)において薄膜表面に垂直な断面における細孔の全面積のうち表面開口孔の面積割合が60%以上、又は表面開口率が5%以上である。該開口孔の平均開口径は使用目的等を考慮して0.1〜100μmに制御することが可能である。
(iii)薄膜部(Ap)において細孔が主に貫通孔である薄膜(A)
図1(C)の多層構造体断面模式図に示すように、薄膜部(Ap)において薄膜表面に垂直な断面における細孔の全面積のうち貫通孔の面積割合が60%以上、又は貫通孔に基づく表面開口率が7%以上である。使用目的等を考慮して、該貫通孔の薄膜表面と平行方向の平均孔径を1〜50μm、又は前記開口孔の平均開口径を1〜50μmに制御することが可能である。
(iv)自己支持性を有する薄膜(A)の形成
多層構造体(K)から構造体(D)(基板(B)と中間層(C)からなる)を除去して得られる薄膜(A)は、作業性等から自己支持性を有することが望ましい。自己支持性とは、薄膜自体が自立性を有することをいい、有機ポリマーの選択及び薄膜の厚みの設計により自己支持性を付与することは可能である。
(1−5)その他
薄膜部(Ap)における細孔の密度は、その使用目的等を考慮して100〜1000/mmに制御することが可能である。
本発明において、薄膜(A)の細孔は、該薄膜(A)の表面と平行方向に空孔同士で連通せず、各細孔が該有機ポリマーからなる仕切壁により仕切られている膜とすることが可能であり、このことが本発明の特徴でもある。
又、本発明において、薄膜(A)中の細孔は、パターニングされている点が特徴である。該パターンの形状及び配列は、一次元方向及び二次元方向に形成されていることが可能で、点状、線状、多角形状、ハニカム状配列又は複雑な幾何学的形状とされていることも可能である。
(2)基板(B)
疎水性有機溶媒溶液をキャストする基板(B)は、基板(B)全体が中間層(C)でおおわれていない限り、使用する疎水性有機溶媒に対する耐溶剤性等の耐久性が要求されるが、これを満足する限り特に限定されず、親水性又は疎水性のいずれであってもよい。
一般に、疎水性材料とは水との静的接触角が60°程度以上にものをいい、親水性材料とは、水との静的接触角が30°程度以下のものをいうが、本発明の基板(B)における疎水性と親水性は絶対的なものではなく、相対的なものを意味する。従って、疎水性基板と疎水性基板の組み合わせにより、例えば、ガラスは、疎水性基板又は疎水性基板のいずれか一方に使用できる場合がある。
本発明において疎水性基板としては、ガラス基板、金属基板、セラミックス等の無機基板、プラスチック基板、木材、紙、強化プラスチック基板、ホーロー基板、水ガラス基板等が挙げられる。
プラスチック基板としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリフッ化エチレン等のフッ素樹脂、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性もしくは熱可塑性プラスチック、及びこれらのプラスチックを無機又は有機繊維等で強化した繊維強化プラスチック等が挙げられる。
金属基板としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、鉄、鋼(亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼等)が挙げられる。ガラス基板としては、石英ガラス、ナトリウムガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。無機基板としては、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。また、基板表面がアクリル系、アルキド系、ポリエステル系、ウレタン系、フェノール系、メラミン系樹脂の硬化被膜によりコーティングされていてもよい。
親水性基板としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸およびそれらの塩、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー等が挙げられる。また、親水性基板として、親水性基を有するオルガノシロキサン系高分子化合物、石英基板やガラス基板等を用いることができる。
上記した基板の中でもガラス、金属、セラミックス、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリフッ化エチレン、ポリエーテルケトン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸から選ばれた少なくとも1種以上、あるいはこれらを複合した基板が好適に使用できる。
(3)中間層(C)
中間層(C)は、薄膜(A)中の細孔をパターニングする目的で設けられる。
すなわち、中間層(C)は、薄膜(A)が形成される面と相対する中間層(C)側の面(上面)に基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)から形成されるパターニングされた疎水性部(S)を形成するために設けられる。基板(B)と中間層(C)からパターニングされる例を以下に記載するが、本発明は以下に示す例に限定されない。例えば、実質的に基板(B)材料に他の材料が組み合わされていなくとも基板(B)の一部を改質してその上面に中間層(C)に相当する親水性部又は疎水性部を形成し、その結果パターニングされた疎水性部(S)が形成されるものであってもよい。
(i)薄膜(A1又はA2)が形成される面と相対する面(上面)にいずれか一方が疎水性部である基板(B)又は中間層(C)を使用して、基板(B)の上面の一部に中間層(C)を設けることにより形成されている。
(ii)基板(B)の上面の一部に中間層(C)を設けて、基板(B)及び/又は中間層(C)の上面の少なくとも一部を改質することにより形成されている。
(iii)基板(B)の上面の全面に予め疎水性部(S)がパターニングされた中間層(C)を設けることにより形成されている。
(iv)基板(B)の上面の全面に中間層(C)を設けて該中間層(C)の一部を改質することにより形成されている。
また、上記(i)では基板(B)が薄膜(A)と相対する面の一部を形成しているので、基板(B)が親水性の場合には中間層(C)は疎水性が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂から選択される少なくとも1種以上の疎水性層を例示することができ、一方、基板(B)が疎水性のときには中間層(C)は親水性が好ましく、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリビニルスルホン、ポリエチレンオキシド、TiO層、及びガラスから選ばれた少なくとも1種以上の親水性層を例示することができる。上記(iii)においては、中間層(C)のみで薄膜(A)と相対する面を形成しているのでこの面の上部に上記したような疎水性部と親水性部から疎水性部のパターンが形成されている。薄膜(A)中の細孔は、基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)におけるより疎水性部の近傍に偏在しているので、前記した通り親水性と疎水性の区別は絶対的なものではなく相対的なものである。
前記(ii)と(iv)に記載した改質方法については実施形態2で説明する。
(4)多層構造体(K)
薄膜(A)、基板(B)、及び薄膜(A)と基板(B)の層間の少なくとも一部を形成している中間層(C)から構成される多層構造体の形状は特に限定されるものではなく、その使用目的に応じて種々の形状をとることができ、例えばシート状でも円形状、多角状、又は薄膜(A)に細孔形成後はシート表面を3次元形状とすることができる。
[2] 実施形態2
実施形態2は、下記(i)ないし(iv)に記載する工程を含む、疎水性有機溶媒溶液中で生成した逆ミセルの鋳型を利用して形成されるパターニングされた細孔を有する薄膜(A)、基板(B)、及び薄膜(A)と基板(B)の層間の少なくとも一部を形成している中間層(C)から構成される多層構造体(K)の製造方法である。
(i)薄膜(A)が形成される面と相対する側の面(上面)に、基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)から形成されるパターニングされた疎水性部(S)を有する、基板(B)と中間層(C)からなる構造体(D)を作製する工程(工程1)
(ii)少なくとも両親媒性物質、疎水性を有する有機ポリマー、親水性液体及び疎水性有機溶媒からなる溶液を混合撹拌して、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を得る工程(工程2)
(iii)前記疎水性有機溶媒溶液を構造体(D)の上面にキャストして、逆ミセルを該疎水性有機溶媒溶液中で前記パターニングされた疎水性部(S)と相対する部分に偏在させる工程(工程3)
(iv)構造体(D)上の疎水性有機溶媒溶液から、疎水性有機溶媒を蒸発させて、逆ミセルの鋳型から形成される細孔が疎水性部(S)と相対する薄膜部(Ap)に偏在するようにパターニングされた薄膜(A)を形成する工程(工程4)
実施形態2においては、先ず工程1において基板(B)と中間層(C)からなり、薄膜(A)を形成する面と相対する側の表面部にパターニングされた疎水性部が形成された構造体(D)を作製する。
次に工程2において、少なくとも両親媒性物質、疎水性を有する有機ポリマー、親水性液体及び疎水性有機溶媒からなる溶液を撹拌して、疎水性有機溶媒溶液中に比較的安定な逆ミセルを形成させる。
この逆ミセルの分布状態(逆ミセルが溶液中で構造体(D)においてパターニングされた疎水性部(S)と相対する部分に均一分布、相対的に上方に多く分布、もしくは相対的に下方に多く分布する等)、逆ミセル径、その密度等は、使用する疎水性有機溶媒(誘電率、比重、蒸発時の蒸気圧、有機ポリマーの溶解性、疎水性等の物性)、両親媒性物質、親水性液体、有機ポリマー(比重、疎水性等の物性)等の成分の種類、配合割合(例えば、親水性液体と両親媒性物質の重量配合比Rw(親水性液体/両親媒性物質)、有機ポリマーと両親媒性物質の重量配合割合Rp(有機ポリマーの有機ポリマーと両親媒性物質の合計に対する割合:有機ポリマー/〔有機ポリマー+両親媒性物質〕)、溶質全体(親水性液体+有機ポリマー+両親媒性物質)に対する親水性液体の重量配合割合Rs(親水性液体/[親水性液体+有機ポリマー+両親媒性物質])等によって制御することが可能である。また、上記条件から、比重が親水性液体より大きい疎水性有機溶媒の使用、逆ミセル径が比較的大きくなる条件と、有機ポリマーの使用割合を相対的に少なくすることにより、工程4で疎水性有機溶媒を蒸発後に薄膜表面で開口孔、又は貫通孔が多く存在する薄膜(A)を形成することも可能である。
工程3において、疎水性有機溶媒溶液を構造体(D)上にキャストするが、疎水性有機溶媒溶液中に逆ミセルを形成してから、構造体(D)上へのキャスト、更に有機溶媒の蒸発開始までの時間と、構造体(D)上への疎水性有機溶媒溶液の塗布厚み等の選択により、疎水性有機溶媒蒸発後の薄膜(A)におけるその厚みと孔の形態を制御することが可能になる。
前記キャスト後に、疎水性有機溶媒溶液中の逆ミセルは、基板(B)及び/又は中間層(C)から形成される親水性部から反発作用を受けて移動し、パターニングされた疎水性部(S)と相対する部分に偏在するようになる。
次に工程4において該基板(B)の疎水性有機溶媒溶液から先ず親水性液体(例えば水)の蒸発除去を控えめにして疎水性有機溶媒(以下、「有機溶媒」ということがある。)を蒸発除去する。この場合、有機溶媒の蒸発に伴い、疎水性有機溶媒溶液中の逆ミセルの密度は増加してくるが、本発明においては、有機溶媒蒸発により形成される細孔が有機ポリマーからなる仕切壁により仕切られていて、連通していない細孔を形成することが可能である。
有機溶媒の蒸発時間は、数分間程度であるが、有機溶媒の蒸発が比較的短時間となる温度と圧力条件を選択することにより、薄膜(A)中に形成される細孔をより立体的に均一に分布させることが可能になる。
疎水性有機溶媒溶液から有機溶媒が蒸発する際に、有機溶媒の蒸気圧が親水性液体の蒸気圧より低い場合でも、親水性液体は有機溶媒と両親媒性物質によりシールされた状態にあるので有機溶剤が選択的に蒸発する。有機溶媒がある程度蒸発した時点で逆ミセルの鋳型構造が維持できる程度に溶液の粘度が上昇すれば、薄膜(A)の形成が可能となる。結果的に細孔が開口孔又は貫通孔として形成される場合には親水性液体の蒸発除去は容易である。
また、結果的に薄膜部(Ap)に均一に分布した細孔が形成される場合でも、逆ミセル中に存在する親水性液体の量が極めて少ないので、親水性液体は有機溶剤への溶解又は有機ポリマーへの吸湿等を通して、結果的に親水性液体は薄膜(A)から除去されるものと思われる。
有機溶剤の蒸発後には、薄膜(A)中に形成された細孔の辺縁部に両親媒性物質が存在している。以下に工程1〜4について詳述する。
(1)工程1
工程1では、疎水性有機溶媒溶液をキャストするために、基板(B)と中間層(C)から構成され、該キャストする面に疎水性部がパターニングされた構造体(D)を作製する。構造体(D)の疎水性部(S)は、以下の(i)〜(iv)に記載した方法等によりパターニングすることができるが、下記のパターニング法は例示であり、本発明におけるパターニングは下記の方法に限定されるものではない。尚、実施形態2で使用する基板(B)と中間層(C)は、実施形態1に記載したと同様である。
(i)薄膜(A)が形成される面と相対する面(上面)にいずれか一方が疎水性部である基板(B)又は中間層(C)を使用して、基板(B)の上面の一部に中間層(C)を設けることにより形成される。
(ii)基板(B)の上面の一部に中間層(C)を設けて、基板(B)及び/又は中間層(C)の上面の少なくとも一部を改質することにより形成される。
(iii)基板(B)の上面の全面に予め疎水性部(S1)がパターニングされた中間層(C)を設けることにより形成される。
(iv)基板(B)の上面の全面に中間層(C)を設けて該中間層(C)の一部を疎水性に改質することにより形成される。
前記パターニングされた疎水性部(S)が塗布法、真空蒸着法、分子線エピタキシー法(MBE)、化学気相成長法(CVD)、及び物理気相成長法(PVD)から選ばれた少なくとも1種以上を用いて親水部又は疎水性部を設けることにより形成される、又は前記改質が化学処理及び/又は光エネルギー照射とすることができる。
以下に(a)疎水性基板(B)上に親水性の中間層(C)を形成する方法、及び(b)親水性基板(B)上に疎水性の中間層(C)を形成する方法を例示する。
(a)疎水性基板(B)上に親水性の中間層(C)の形成
疎水性基板(B)上に親水性皮膜を形成する水溶性高分子として、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリビニルスルホン、ポリエチレンオキシド、でん粉、カルボキシルメチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ソーダ、グルテン、コラーゲン、カゼイン等の親水性を有する各種の合成及び天然高分子が使用可能である。
また、疎水性基板(B)上に親水性皮膜として、無機物層を形成する場合に用いられる無機物としては、SiO、SiO、Al、MgO、ArO、CaO、TiO、SnO、In、WO、MoO、Ta、HfO、BaO、AnO、NiO、及びガラスから選ばれた少なくとも1種以上を用いることができる。上記の他、親水性皮膜として、窒化物や炭化物を用いることも可能である。
例えば、疎水性基板(B)への親水性ポリマーの形成方法としては、親水性ポリマーをアルコール、ケトン、エステル、アミドあるいは炭化水素のような有機溶媒中に溶解し、その溶液をスプレー又はローラーを用いたコーティング法により多孔質フッ素樹脂層の表面にその溶液を塗布した後、乾燥させる。このようにして、多孔質フッ素樹脂層等の疎水性基板(B)の外表面を親水性表面に形成することができる。ここで、多孔質フッ素樹脂に対する付着結合性の観点からは、フッ素を含有する親水性高分子の使用が有利である。
このようなフッ素を含有する親水性高分子としては、フッ素含有エチレン性不飽和モノマーと、フッ素を含有しない親水基含有ビニルモノマーを共重合させることにより得ることができる。
フッ素含有モノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、モノクロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。一方、親水基含有モノマーとしては、前記した各種の親水基を有するビニルモノマー及びそれらの親水基の活性水素にアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加反応させたモノマーも好適のものである。酢酸ビニルのように、共重合化後、加水分解することにより親水基含有コポリマーを与えるものも使用される。親水性モノマーの具体例としては、ビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸のような不飽和カルボン酸の他、以下アクリル酸やメタクリル酸のアルキレンオキシド付加体が挙げられる。
また、前記疎水性基板(B)(段落0045に記載の疎水性基板(B))への親水性無機物層の形成方法としては、たとえばポリカーボネートの基板に、前記酸化物の少なくとも1種以上を真空蒸着法で、1層又は2層以上に形成することができる。金属酸化物層は、これら材料の1種にて形成される単層や、これらの材料の2種以上を成分とする複合化合物からなる単層、あるいはこれらの単層を複数層重ねて形成される多層構造であってもよい。特に、前記酸化物層としては、SiO2 しくはSiOからなる金属酸化物層、該SiO2 もしくはSiOを含む組成物を用いて形成した金属酸化物層、又はTiO層が好ましい。金属酸化物層が上記単層を複数層重ねて形成される多層構造である場合、最外層はSiO2 またはもしくはSiOシリコン層、又はTiO層であることが望ましい。また、前記酸化物層からなる酸化膜を形成する方法としては、真空蒸着法に限定されず、陽極酸化法、CVD法、ゾルゲル法、スパッタリング法、拡散法等を適宜用いることができる。
(b)親水性基板(B)上に疎水性の中間層(C)の形成
親水性基板(B)上に、疎水性皮膜を形成する疎水性高分子としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、ポリメチルメタクリレート、PET等のポリエステル、ポリアミド、パーフルオロカーボンスルホン酸等のフッ素系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が用いられる。
親水性基板(B)上の疎水性高分子層の形成する方法としては、疎水性高分子溶液を塗布、乾燥して疎水性高分子層を作成することができる。たとえば、スクリーン印刷で、レジストインクで凹部を形成した中に疎水性高分子を塗布することにより、所定のパターンに、疎水性高分子層を形成できる。
その他の疎水性皮膜の形成方法として、親水性基板にCr、Ni等を無電解メッキにて形成する方法があり、基板に応じた下地処理を行った後、無電解メッキにてCr、Ni等の金属皮膜を形成することができる。
(c)化学処理、光エネルギー照射等による改質
前記改質は、化学処理及び/又は光エネルギー照射が例示できるが本発明はこれらの改質法に限定されない。
前記親水性又は疎水性を付与するための改質としては、下記の化学処理又は光エネルギー照射等の物理処理法が例示できる。親水性処理としては、金属表面に対して酸によるエッチング、電解エッチング等を行う方法などがある。その他に、陽極酸化法、化学気相成長法(CVD)、がある。また、化学処理としては基板表面に、疎水性または親水性の官能基を有する化合物を付着ないし結合させる。このような化合物として、例えばシランカップリング剤等を用いることができる。カップリング剤液等の塗布方法としては、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、気相法等が用いられる。
上記の他、光エネルギー照射として、紫外線、電子線、レーザー光照射などがあり、コロナ放電もしくはグロー放電を用いたプラズマ処理などがあり、これらの処理を用いることができる。例えば、プラズマ照射は、アルゴンガス雰囲気中で、基板のPETフィルムを、高周波を印加した平行平板電極内に通して行うことができる。また、紫外線照射による改質を行う場合には、中心波長が172nm〜400nmの範囲内にある紫外線ランプを使用してマスクを介し基材表面に照射することができる。本発明における改質は、前述の方法に限定させるものではなく、本発明における改質の目的を達成することができるものであれば公知のいかなる方法でも良い。
(2)工程2
工程2は、疎水性有機溶媒溶液中に逆ミセルを形成する工程である。該逆ミセルの形成は、自己組織化により規則的なパターンとして自発的に形成される。ここで自己組織化とは、外的条件のもとで逆ミセルが持つ本来の性質だけに従って自発的に秩序のある構造をつくる現象をいう。
ここで、正ミセルが例えば、水中で両親媒性物質の疎水部は、水とは混ざらないためになるべく水から遠ざかって疎水的な性質のものと相互作用しようとして球状の集合体を作るのに対し、逆ミセルとは、例えば疎水性の有機溶媒中で正ミセルとは逆の構造になり、疎水部が溶媒に突き出した構造になる分子集合体である。
疎水性有機溶媒溶液中に形成された逆ミセルは、両親媒性物質の存在により逆ミセル同士の融合が阻害され、また、横毛管力、ヴァン・デル・ワールス力、静電気力、摩擦力により逆ミセルが細密充填されるような分布で存在する。
工程2において使用可能な両親媒性物質、疎水性を有する有機ポリマー、及び有機溶媒を以下に説明する。
(a)有機ポリマー
本発明において使用可能な有機ポリマーは、工程4において有機溶媒を蒸発除去後に自己集合した逆ミセル又はその鋳型構造が維持できるものであればよく、使用目的によっては特に構造体(D)上に形成された薄膜(A)が自己支持性を有する程度の剛性を有するものが好ましい。
有機ポリマーの具体例は、実施形態1に例示したものを使用できる。疎水性と有機溶媒に適度な溶解性を有していて、工程4において有機溶媒を蒸発除去後に自己集合した逆ミセル又はその鋳型構造が維持できるものであればよく、使用目的によっては特に構造体(D)上に形成された薄膜(A)が自己支持性を有する程度の剛性を有するものが好ましい。
中でもコスト面からポリスチレン、アクリル系樹脂、透明性の観点からポリカーボネート、シクロポリオレフィン、フッ素樹脂、また、耐熱性の観点から、ポリアミド、ポリイミドが好ましい。ポリスチレン、ポリカーボネート、シクロポリオレフィンはクロロホルムなどの有機溶媒に溶けやすく、薄膜(A)を容易に得ることができるため特に好ましい。
(b)両親媒性物質
実施形態2で使用する両親媒性物質は、実施形態1に例示したものを使用できる。
(c)疎水性有機溶媒
本実施形態1で使用する有機溶媒は、疎水性を有し、疎水性の有機ポリマーをある程度溶解し、逆ミセルを小さいミセル径である程度安定的に存在させる性質を有し、かつ工程4における蒸発が比較的容易である性質を有していればその種類は特に限定されるものではない。
本発明の疎水性有機溶媒の選択に当たっては、所望の逆ミセルの形態(溶液中での均一分散性、ミセル径等)、安定性、工程4での蒸発性等から、有機溶媒の疎水性、誘電率、有機ポリマーの溶解性、蒸気圧、比重等を考慮することが望ましい。
本発明の工程2において、疎水性有機溶媒溶液中に逆ミセルを形成するので、使用する有機溶媒は疎水性であることが必要であり、親水性液体である水への溶解度が高い、酢酸メチル、テトラヒドロフランのような親水性有機溶媒は、良好な逆ミセルを形成しないため適当でない。
上記工程2で掲載された疎水性有機溶媒溶液中の逆ミセルは、工程3のキャスティング、及び工程4の該有機溶媒が蒸発して薄膜(A)の基本骨格が形成されるまで、比較的安定していることが望ましい。一般に、誘電率が低い有機溶媒中では逆ミセル同士の静電反発力が相対的に大きくなるために、逆ミセルは均一分散しようとするので、誘電率の低い無極性有機溶媒中の方が逆ミセルは比較的安定に均一分散して存在するようになる。
表1に20℃における誘電率(ε)が5以下の相対的に無極性である有機溶媒、表2に20℃における誘電率が5を越える相対的に極性である有機溶媒を例示してある。
20℃における誘電率の低いトルエン(ε:2.38)では逆ミセルが小さいミセル径で比較的安定に存在する傾向があり、混合キシレン(例えば、表1に示す組成において、ε:2.40)とクロロホルム(ε:4.81)では、ミセル径が多少変化する傾向があるが、ミセル径の経時的変化が把握できれば、それを薄膜(A)の細孔の孔径の制御に利用することが可能である。
このように、各疎水性有機溶媒中における逆ミセルのミセル径とその分布、経時的なミセル径の変化を把握することにより、疎水性有機溶媒の選択から所望の薄膜(A)を設計することが可能になる。
疎水性有機溶媒は、有機ポリマーを適度に溶解して両親媒性物質の均一分散性に優れるものが望ましい。特に、疎水性有機溶媒として、使用する疎水性の有機ポリマー及び両親媒性物質を適度に溶解するものが望ましい。この場合に疎水性有機溶媒の該有機ポリマー及び両親媒性物質の溶解度が高過ぎると工程4の蒸発工程において、有機溶媒中の有機ポリマー及び両親媒性物質が高濃度に達した段階で薄膜(A)の基本構造が形成されると細孔を均質に形成するのに不都合を生ずる場合がある、一方、疎水性有機溶媒の該有機ポリマー及び両親媒性物質の溶解度が低いと、比較的多量の有機溶媒の使用が必要となり、好ましくない場合がある。
疎水性有機溶媒の有機ポリマー及び両親媒性物質は、疎水性有機溶媒溶液で併せて0.01〜1g/ml、特に0.05〜0.5g/ml程度の濃度範囲にあることが望ましい。
また、工程4において、疎水性有機溶媒溶液から有機溶媒と親水性液体を蒸発させて薄膜(A)を形成する際に、先ず有機溶媒を選択的に蒸発させる方が細孔を確実に形成することができる。そのためには記疎水性有機溶媒と親水性液体の蒸発温度における疎水性有機溶媒の蒸気圧が親水性液体の蒸気圧よりも高い方が望ましい。
しかしながら、前述したように、親水性液体は両親媒性物質により疎水性有機溶媒溶液中にシールされた状態で存在するので、工程4の疎水性有機溶媒の蒸発温度で、該有機溶媒の蒸気圧が親水性液体より低い場合でも、結果的にみて相対的に多量に存在する有機溶媒がある程度蒸発した時点で逆ミセル形状(又はその鋳型構造)が維持できる程度に溶液の粘度が上がっていれば、細孔の形成が可能となる。工程4の蒸発温度における疎水性有機溶媒の蒸気圧は親水性液体の蒸気圧の好ましくは0.3倍以上、より好ましくは0.7倍以上、特に好ましくは1.0倍以上である、従って、このような場合には親水性液体より沸点の高いトルエン、キシレン類等の有機溶媒を使用することが可能である。
有機溶媒の比重は、形成される薄膜(A)中の細孔の垂直方向の形成位置を制御するのに利用することが可能である。
一般に薄膜(A)中で細孔を均一に分布させたい場合には、非極性溶媒を使用することが望ましい。一方、親水性液体として例えば水を使用する場合には、クロロホルムのような比重が水よりも大きいものを選択すると、逆ミセルを上方に多く分布させることが可能となり、他方、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素のような比重が水よりも小さいものを使用すると、逆ミセルを下方に多く分布させることが可能になる。
逆ミセルを上方に多く分布させる場合には、有機ポリマーの比重はポリエチレンとポリプロピレン等の一部のポリオレフィンを除いて殆どのものが水の比重よりも大きいことから、有機ポリマーの比重を利用して水の比重より小さい有機溶媒を使用することも可能である。
疎水性有機溶媒の比重が水よりも大きいものの具体例としては、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1、2−ジクロルエタン、1、1、2、2−テトラクロルエタン、1、2ジクロルエチレン、トリクロルエチレン等の塩素系溶媒;二硫化炭素が挙げられ、また、疎水性有機溶媒の比重が水よりも軽いものの具体例としては、ノルマルペンタンノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
これらの有機溶媒は単独で用いても、またはこれらの溶媒を組み合わせて均一の溶液を形成する場合等は混合溶媒を使用することが可能である。
本発明で使用可能な疎水性有機溶媒としては、表1に示す、20℃における誘電率が5以下であるノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、ノルマルヘプタン、ノルマルデカン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、オルソキシレン、メタキシレン、パラキシレン、混合キシレン、四塩化炭素、クロロホルム、及びトランス1、2、-ジクロロエチレン、並びに表2に示す、20℃における誘電率が5を越える、酢酸ブチル、ジクロロメタン、1、1、2、2−テトラクロロルエタン、シス1、2−ジクロロエタン、及びイソブチルメチルケトンまたはこれらの混合物が例示できるが、本発明で使用可能な疎水性有機溶媒はこれらに限定されるものではない。疎水性有機溶媒は、有機ポリマーの溶解能が高く、水の溶解度が低く、蒸気圧が高いことが好ましく、さらに実用性の観点から化学的に安定で、毒性が低いことが好ましい観点から、好ましい溶媒として、トルエン、クロロホルムが例示できる。
(d)親水性液体
また逆ミセルを形成する際に使用する親水性液体として、水の使用がもっとも好ましいが、本発明において両親媒性物質、有機ポリマー、疎水性有機溶媒及び親水性液体からなる疎水性有機溶媒を撹拌して、疎水性有機溶媒溶液中で逆ミセルを形成するものであれば、水以外の親水性液体、又は水に水以外の親水性液体を配合して、親水性液体の比重、蒸気圧、溶解性等を調整することが可能である。水以外の親水性液体として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ギ酸等が例示できる。
(e)疎水性有機溶媒溶液成分の配合割合
工程2における親水性液体と両親媒性物質の重量配合比Rw(親水性液体/両親媒性物質)は、逆ミセルのミセル径の設計にもよるが、0.1ないし15が好ましく、0.25ないし15がより好ましく、0.5ないし10が特に好ましい。Rwを前記0.1以上とすることにより逆ミセルの形成を容易にし、前記15以下とすることにより逆ミセルが不可逆的に凝集するのを効果的に防止することができる。
更に前記割合の範囲内で疎水性有機溶媒溶液中に形成される逆ミセルの大きさを制御することができる。すなわち、Rwを大きくすると逆ミセルの径は大きくなり、一方、Rwを小さくすることにより逆ミセルの径を小さくすることができる。
疎水性有機溶媒溶液中に溶解した有機ポリマーの濃度は、該有機溶媒と有機ポリマー中の有機ポリマーの濃度で表示すると0.01〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜5質量%である。この濃度範囲では孔径が均一になりやすく、更に孔が規則配列しやすい傾向がある。
また、工程2における有機ポリマーと両親媒性物質の重量配合割合Rp(有機ポリマー/〔有機ポリマー+両親媒性物質〕)が0.1ないし0.9が好ましく、0.1ないし0.6がより好ましい。Rpを上記配合割合とすることにより、逆ミセルの形成をより確実なものとすることができる。
薄膜部(Ap)における細孔の密度、すなわち単位体積当たりに細孔が占める割合は、親水性液体、有機ポリマーおよび両親媒性物質の相対的濃度により制御することが可能である。すなわち、溶質全体(親水性液体+有機ポリマー+両親媒性物質)に対する親水性液体の重量配合割合Rs(親水性液体/[親水性液体+有機ポリマー+両親媒性物質])が大きくなると細孔の密度は相対的に大きくなる。この際、有機ポリマーおよび両親媒性物質の濃度を一定とすると孔径が大きくなりながら細孔の密度が大きくなり、一方、水の濃度とともに両親媒性物質の濃度も大きくし、Rwを一定とすると、孔径は一定のまま細孔の密度が大きくなる。
また、Rwによる孔径制御、および疎水性有機溶媒溶液中の有機ポリマーの濃度と構造体(D)上にキャストする溶液の厚み条件による膜厚制御が可能であることから、薄膜(A)中の細孔を貫通孔もしくは非貫通孔とすることの制御が可能である。すなわち、膜厚を孔径以下とすることで貫通孔となり、膜厚を孔径以上とすることで非貫通孔とすることができる。
工程2において、両親媒性物質、有機ポリマー、親水性液体及び有機溶媒の配合順序はとくに制限はない。これらの成分を容器等の中で撹拌して逆ミセルを形成するが、撹拌法に特別な操作は必要でなく、ある程度の十分な撹拌が可能であれば、実験等に広く用いられているマグネチック・スターラー等のスターラー、回転翼、超音波を利用した撹拌等が例示できる。中でも孔径の微細化・均一化の観点から、超音波を利用した撹拌法が好ましい。
(3)工程3
工程3は、前記疎水性有機溶媒溶液を構造体(D)の上面にキャストして、逆ミセルを該疎水性有機溶媒溶液中で前記パターニングされた疎水性部(S)と相対する部分に偏在させる工程である。このような疎水性有機溶媒溶液が基板(B)と中間層(C)からなる構造体(D)上にキャストされる場合に該溶液と接触する基板(B)と中間層(C)(又は中間層(C))は、使用する有機溶媒に対する耐溶剤性等の耐久性が要求されるが、これを満足する限り、特に限定されない。
疎水性有機溶媒溶液を構造体(D)上にブレードコーター等を用い、所定の厚みに塗布することができる。この場合の溶液の厚みは、例えば0.01〜5mm程度が好ましく、さらに好ましくは0.05〜1mmである。この厚み範囲では有機溶媒は短時間で蒸発し、得られる薄膜(A)に十分な力学的強度を付与することが可能となる。また、この塗布の厚みは、疎水性有機溶媒溶液中の有機ポリマー濃度と共に薄膜(A)に形成される細孔の形態、細孔密度、及び細孔配列を制御するうえで極めて重要である。
(4)工程4
工程4は、前記基板上の疎水性有機溶媒溶液から、有機溶媒を蒸発させて、逆ミセルを鋳型とした多孔質膜を得る工程である。
(a)有機溶媒の蒸発操作
有機溶媒と親水性液体が蒸発する温度において、親水性液体の蒸気圧より高い蒸気圧の有機溶剤を用いることで、有機溶媒が相対的に多く蒸発し、その後逆ミセル内の親水性液体が蒸発することにより、逆ミセルの鋳型を利用した細孔を有する薄膜(A)が形成される。しかしながら前記したように、疎水性有機溶媒溶液から有機溶媒と親水性液体が蒸発する際に、有機溶媒の蒸気圧が親水性液体の蒸気圧より低い場合でも、親水性液体は有機溶媒と両親媒性物質によりシールされた状態にあるので、疎水性有機溶媒がある程度蒸発した時点で逆ミセル又はその鋳型構造が維持できる程度に溶液の粘度が上昇すれば、薄膜(A)の形成が可能となる。
この溶媒蒸発過程において、逆ミセル同士に働くヴァン・デル・ワールス力や静電気力、逆ミセルと基板との摩擦力、毛細管力などにより、逆ミセルは自己組織的に規則配列する。
そのため、逆ミセルを鋳型とする薄膜(A)中の細孔は比較的規則配列したものとなる。
この工程4において、周囲の温度、圧力などを変化させることにより、孔の配列規則性は制御可能である。蒸発時の温度を低くすると溶媒の蒸発速度が下がり、逆ミセルの自己組織的な配列に費やされる時間が長くなる。そのため、配列規則性は高くなる。蒸発を加圧下で行うと、溶媒の蒸発が抑制され、やはり溶媒の蒸発速度が下がるため、配列規則性は上がる。また、超音波を照射することによっても、配列規則性を上げることが可能である。
前記疎水性有機溶媒溶液と親水性液体の蒸発方法は特に制限されるものではないが、疎水性有機溶媒溶液が静置された状態で乾燥不活性ガス流通下に行うことが望ましい。乾燥不活性ガスとしては、乾燥空気又は乾燥不活性ガスが例示できる。この場合の乾燥不活性ガスは、好ましくは相対湿度70%以下、より好ましくは相対湿度50%以下、特に好ましくは相対湿度30%以下の空気又は不活性ガスである。この蒸発操作は減圧下、常圧下及び加圧下のいずれでも行うことができるが、蒸発速度を上げる場合には減圧下で行うことが望ましい。
(b)薄膜(A)の形成
疎水性有機溶媒と親水性液体の蒸発除去後に構造体(D)上に形成されるのは、通常膜状である。この場合の膜の厚みは0.001〜1mmの範囲が好ましく、0.005〜0.1mmがより好ましい。この厚み範囲では薄膜(A)はある程度の力学的強度を有し、形成される孔の貫通もしくは非貫通とすることの制御が比較的容易となる。このような薄膜(A)の厚みは、工程2における疎水性有機溶媒溶液中の有機ポリマー濃度、及び工程3における基板上の疎水性有機溶媒溶液の厚みにより制御することが可能である。
(i)薄膜部(Ap)において細孔が均一に分布している薄膜(A)の形成
前記工程2において20℃での誘電率が5以下で同温度での比重が0.65〜0.90である前記疎水性有機溶媒を使用し、かつ工程4における前記疎水性有機溶媒の蒸発を行うことにより、逆ミセルの鋳型から、図1(A)の多層構造体断面模式図に示す、前記薄膜部(Ap)に形成される細孔(P)が薄膜部(Ap)にほぼ均一に分布している薄膜(A)を形成することが可能となる。
この場合に、工程4において前記疎水性有機溶媒の約90質量%の蒸発を好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内、特に好ましくは1分以内に終了する温度と圧力条件下で行うことにより、均一分布性は向上する。疎水性有機溶媒の蒸発速度は、系内における温度と圧力条件により制御することが可能である。
上記操作により、使用目的等を考慮して前記孔の平均孔径を0.1〜10μmに制御することが可能である。
(ii)薄膜部(Ap)において細孔が主に開口孔である薄膜(A)の形成
工程2において比重が親水性液体の比重よりも大きい前記有機ポリマー及び/又は前記疎水性有機溶媒を使用し、かつ工程4における前記疎水性有機溶媒の蒸発により、図1(B)の多層構造体断面模式図に示す、薄膜部(Ap)において薄膜(A)表面に垂直な断面における孔の全面積のうち表面で開口(貫通を除く)している孔(開口孔)の面積割合が60%以上、又は薄膜部(Ap)における表面開口率が5%以上である薄膜(A)を形成することが可能になる。
この場合に、工程4において前記疎水性有機溶媒の約90質量%の蒸発を好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、特に好ましくは5分以上要する温度と圧力条件下で行うことが好ましい。疎水性有機溶媒の蒸発速度は、系内における温度と圧力条件により制御することが可能であるが、系内の減圧度又は分圧を制御して行うのが望ましい。
尚、上記表面開口率に関しては、前述したように、溶質全体(親水性液体+有機ポリマー+両親媒性物質)に対する親水性液体の重量配合割合Rs(親水性液体/[親水性液体+有機ポリマー+両親媒性物質])が大きくなると孔の密度を相対的に大きくすることが可能であり、この際、有機ポリマーおよび両親媒性物質の濃度を一定とすると孔径が大きくしながら孔の密度を大きくすることができ、一方、水の濃度とともに両親媒性物質の濃度も大きくしながらRwを一定とすると、孔径は一定のまま孔の密度を大きくすることができる。
親水性液体として水を用いる場合、この場合に疎水性有機溶媒として20℃における比重が1.0〜1.6程度のものを使用すると形成される孔のうち開口孔の割合を向上させることができる。
この場合、使用目的等を考慮して前記開口孔の平均開口径を0.1〜100μmに制御することが可能である。
(iii)薄膜部(Ap)において細孔が主に貫通孔である薄膜(A)の形成
工程2において、前記Rw(親水性液体/両親媒性物質)を3ないし15とし、工程3において工程4における疎水性有機溶媒蒸発後の薄膜(A)の厚みが1〜50μmとなるように前記疎水性有機溶媒溶液を構造体(D)上にキャストし、かつ工程4における前記疎水性有機溶媒の蒸発により、図1(C)の多層構造体断面模式図に示す、前記薄膜部(Ap)において薄膜(A)表面に垂直な断面における孔の全面積のうち貫通している孔(貫通孔)の面積割合が60%以上、又は貫通孔に基づく薄膜部(Ap)における表面開口率が7%以上である薄膜(A)を形成することが可能になる。
尚、貫通孔に基づく表面開口率については、上記「開口を有する薄膜(A)の形成」の表面開口率に関して記載したと同様である。
この場合、使用目的等を考慮して前記貫通孔の薄膜表面と平行方向の平均孔径を1〜50μm、又は前記開口孔の平均開口径を1〜50μmに制御することが可能である。
(iv)自己支持性を有する薄膜(A)の形成
多層構造体(K)から構造体(D)(基板(B)と中間層(C)からなる)を除去して得られる薄膜(A)は、作業性等から自己支持性を有することが望ましい。自己支持性とは、薄膜(A)自体が自立性を有することをいい、有機ポリマーの選択及び薄膜(A)の厚みの設計により自己支持性を付与することは可能である。
(5)機能性物質の充填
更に、本発明において、工程2の疎水性有機溶媒溶液中に両親媒性物質、有機ポリマー、有機溶媒、親水性溶液、及び該親水性溶液中に選択的に分散、又は溶解する機能性物質を含有させておくと、その後の上記工程3及び工程4を経て得られた薄膜(A)の細孔中に該機能性物質を含ませることが可能となる。この場合、該機能性物質としては、実施形態1に示した金属、合金、金属カルコゲナイド、金属ハロゲン化合物等、より具体的には、(i)Au、Ag、Cu、Pt、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、及びTiから選択される金属、(ii)前記2種以上の金属、又は前記金属と非金属元素から得られる合金、(iii)前記金属と周期律表16族の元素(O、S、Se、Te、Po)との化合物(金属カルコゲナイド)、及び(iv)金属と周期律表17族の元素(F、Cl、Br、I)との化合物(金属ハロゲン化合物)、並びに(v)前記(i)ないし(iv)に示す物質を形成する前駆体、から選択される少なくとも1種以上を好適に使用することができる。
また、実施形態1に示した、(i)半導体材料、金属酸化物、セラミックス材料、強誘電体材料、強磁性体材料、抵抗変化材料、相変化材料、光機能材料、及び蛍光機能材料、並びに(ii)前記(i)に示す物質を形成する前駆体、から選ばれる少なくとも1種以上も好適に使用することができる。
機能性物質は、粒子として、又は水溶液等の親水性溶液中に溶解させて使用することができる。また、前記前駆体として使用する場合には、例えば該前駆体を金属イオンとして細孔内に分布させた後にヒドラジン等の還元剤により還元することも可能である。
工程2において、前記細孔中に存在させる物質としては上記例示したものに限られず、ある程度の親水性を有していて、水溶液等の親水性溶液中に選択的に溶解又は分散可能な物質であれば目的に応じて使用することが可能である。
親水性溶液中に分散可能な微粒子としては、例えば粒径が1〜100nm程度のサイズのものが使用でき、このような粒子は例えばコロイド化学的に合成することができる。
また、機能性物質は、上記一次粒子が凝集した二次粒子として使用することも可能である。
工程2において上記機能性物質又は機能性物質前駆体を疎水性有機溶媒溶液に添加すると逆ミセルが形成される際に逆ミセル内の親水性溶液中に存在して、工程4の疎水性有機溶媒の蒸発除去後に細孔中に存在する。
(6)薄膜(A)中の細孔の辺縁部から両親媒性物質の除去
工程4で得られる薄膜(A)中の細孔が開口孔又は貫通孔からなる場合には多層構造体(K)の薄膜(A)の細孔の辺縁部に存在する両親媒性物質を除去することができる。細孔の辺縁部に存在する両親媒性物質の除去法としては、水等の溶媒を使用して洗浄することにより両親媒性物質を除去することが可能であるが、両親媒性物質が分子量10000未満の場合に特に水等の溶媒を使用した洗浄等による除去が容易になる。また、必要に応じて、両親媒性物質を除去せずに、後述する機能性物質を充填することも可能である。
[3] 実施形態3
実施形態3の「多層構造体中の薄膜(A)の細孔に機能性物質を充填する方法」は、前記実施形態2の工程4で得られる多層構造体の薄膜(A)中の細孔、あるいは前記工程4で得られる多層構造体の薄膜(A)から両親媒性物質を除去した有機ポリマーからなる薄膜(A)の細孔に更に機能性物質を充填する方法であって、該機能性物質の充填方法が、(i)電着法による金属の充填方法、又は(ii)スパッタリング法による相変化材料の充填を利用した充填方法であることを特徴とする。
尚、電着法による金属の充填法には、金属単体の他、交互にパルス電流を流すなどして合金を充填することも含まれる。前記(i)及び(ii)に記載する薄膜(A)の細孔に機能性物質を充填方法については公知の方法を採用することができる。
当該「機能性物質を充填する方法」を採用する際に、工程4で得られる多層構造体(K1)を使用して薄膜(A1)の細孔に機能性物質を充填すれば、実施形態1に記載する多層構造体(K2)を得ることができる。
また、工程4で得られる多層構造体(K1)から上記した両親媒性物質の除去法を採用して多層構造体(K1a)を得て、更に当該「機能性物質を充填する方法」を採用して薄膜(A2)の細孔に機能性物質を充填すれば、実施形態1に記載する多層構造体(K1b)を得ることができる。
[4] 多層構造体(K)の利用
(1)実施形態1の多層構造体(K1、K1a)
実施形態1の多層構造体(K1、K1a)では、薄膜(A)に設けられた細孔そのものを利用することが可能であり、例えば薄膜(A)の表面に形成された細孔とその細孔以外の部分の厚みの差を利用して、光学フィルターや回折素子等として利用することができる。
(2)実施形態1の多層構造体(K2、K1b)
実施形態1多層構造体(K2、K1b)では、薄膜(A)の細孔に様々な金属、機能性物質を充填して機能性を有する多層構造体とすることができる。
多層構造体の薄膜(A)の細孔を利用するものとして、光導波路や流体マイクロ流路などの用途がある。また、細孔に機能性素子を充填した機能性素子の例としては、光機能素子、磁性素子、半導体素子、導電体素子、強誘電体素子、相変化素子、フォトクロミック素子、サーモクロミック素子、エレクトロクロミック素子等が挙げられるが本発明の多層構造体はこれらに限定されない。
本発明の多層構造体の応用例としては、光機能素子、半導体素子または磁性素子が特に好ましい。例えば、光機能素子としては、フォトニック結晶に利用でき、たとえば、フォトニックバンドギャップを形成させたり、前述の光導波路や回折格子を形成させたりすることができ、さらに発光素子などへの応用が考えられる。また、フォトニック結晶を利用した光記憶媒体等への応用も考えられる。特に、細孔内に発光材料を充填することで、発光スペクトル幅の短い発光素子、低閾値レーザーなどを実現できる。半導体素子に用いた場合には高集積回路に利用することができる。
磁性素子への応用例として、磁気記録媒体等への応用が期待できる。機能性ナノ構造体の細孔中に、Co、Fe、Ni等の強磁性体粒子を充填することで、ナノパターン内の強磁性金属粒子が1記憶単位となるパターンドメディアが実現できる。また、パルスメッキ法などを利用して、強磁性層を非磁性層間に交互に形成した磁気抵抗多層膜を作成することによりGMR効果を利用した、より高密度で高感度の磁気記憶媒体等への利用も可能である。GMR効果を利用した磁気抵抗膜に使用する強磁性金属としては、例えばCo、Fe、Niあるいはそれらの少なくとも1種以上を主成分とする強磁性金属からなる材料を用いることができ、非磁性層には、Cu、Ag、Auあるいはそれらの少なくとも1種以上を主成分とする非磁性金属を用いることができる。磁気抵抗効果膜をナノ構造体の細孔中に形成した磁気記憶媒体は、例えば特開平10−283618号公報に記載されている。
その他、有機トランジスタ、バイオチップ、太陽電池、ディスプレイ、ナノワイヤー、化学物質検出センサーなど、様々な機能性素子を用いることで様々な機能を発揮しうる。
以下に本発明を実施例によって説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(A)本実施例、比較例において以下の操作方法、評価方法等を採用した。
(1)疎水性有機溶媒溶液における逆ミセルの形成
疎水性有機溶媒溶液をスターラーによる撹拌、又はシャープ(株)製超音波分散器、型式:UT-204を使用して、疎水性有機溶媒溶液の超音波分散操作を行い、逆ミセルが形成された溶液を調製した。
(2)基板と中間層からなる構造体上にキャストされた疎水性有機溶媒溶液から疎水性有機溶媒の蒸発
疎水性有機溶媒溶液がキャストされた基板を蒸発用容器内に挿入して、乾燥空気を流しながら溶媒を自然蒸発させた。蒸発用容器は、挿入した基板から3cm高い位置に乾燥空気吹込用パイプ(1mmφの孔が3cmの等間隔に斜め下方向に4個設けられたもの)が設けられており、該基板の一方の端の斜め上方向から基板に向かって、所定の温度で乾燥空気を所定の流速で流すことが可能な装置である。
(3)疎水性有機溶媒溶液中の逆ミセルのミセル径測定
レーザー回折装置(レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置、型式:LA-920、(株)堀場製作所製)を使用して測定を行った。
(4)薄膜(A)の断面観察
走査型電子顕微鏡(SEM)(型式:JSM−6330F、日本電子(株)製)を使用して、表面に垂直に切削し断面出しした薄膜断面の観察を行った。
(5)細孔の形態等の測定
(5−1)平均開口径
走査型電子顕微鏡の薄膜全表面の観察から、下記(5−3)においては非貫通開口孔、(5−4)においては貫通開口孔の開口径を測定してその平均値を平均開口径とした。
(5−2)非開口孔(薄膜部(Ap)内で主に均一分布している細孔)についての測定
(i)平均孔径の測定法
走査型電子顕微鏡による薄膜部(Ap)の膜断面観察結果から、細孔部のほぼ中心断面に近いものを任意に5個抽出し、それぞれの細孔部の薄膜表面と平行方向の孔径を測定し、その平均値を平均孔径とした。
(ii)断面空孔率の測定法
走査型電子顕微鏡による薄膜部(Ap)の膜断面観察結果から、孔部面積の膜断面積全体に占める割合を算出し、断面空孔率とした。
(5−3)非貫通開口孔(薄膜部(Ap)内で主に非貫通開口孔として存在する細孔)についての測定
(i)細孔密度
走査型電子顕微鏡による薄膜部(Ap)の膜表面観察結果から、単位面積当りの細孔数から細孔密度を求めた。
(ii)薄膜部(Ap)断面における細孔の全面積に対する非貫通開口孔の面積割合
走査型電子顕微鏡による薄膜表面に垂直な任意の薄膜部(Ap)断面における細孔の全面積のうち非貫通開口孔の面積割合を求めた(この面積割合が60%以上の薄膜を「開口孔60%以上である薄膜」という)。
(iii)表面開口率
薄膜部(Ap)の膜表面観察結果から、非貫通開口孔(以下、単に「開口孔」というときは非貫通開口孔を意味する。)の面積が膜表面積全体に占める割合を算出し、表面開口率とした。
(5−4)貫通孔(薄膜部(Ap)内で細孔が主に貫通孔として存在する細孔)についての測定
(i)細孔密度
走査型電子顕微鏡による薄膜部(Ap)の膜表面観察結果から、単位面積当りの細孔数から細孔密度を求めた。
(ii)薄膜部(Ap)断面における細孔の全面積に対する貫通孔の面積割合
走査型電子顕微鏡による薄膜表面に垂直な任意の薄膜部(Ap)断面における細孔の全面積のうち貫通開口孔の面積割合を求めた(この面積割合が60%以上の薄膜を「貫通開口孔60%以上である薄膜」という)。
(iii)表面開口率
走査型電子顕微鏡による薄膜部(Ap)の膜表面観察結果から、貫通開口孔の面積が膜表面積全体に占める割合を算出し、表面開口率とした。
(iv)平均孔径
走査型電子顕微鏡による薄膜部(Ap)断面観察結果から、細孔部のほぼ中心断面に近いものを任意に5個抽出し、それぞれの細孔部の薄膜表面と平行方向の孔径を測定し、その平均値を平均孔径とした。
(6)ジヘキサデシルジメチルアンモニウムとポリスチレンスルホン酸のポリイオンコンプレックス(PIC)由来のS(イオウ)と、ビス(2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)(AOT)由来のS(イオウ)成分濃度分布の分析
エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて、S成分濃度分布の分析を行った。
(7)紫外光照射
紫外線照射は、波長365nmの紫外線ランプを使用し、0.5mW/cmの紫外線強度で1時間照射した。
(8)プラズマ照射
プラズマ照射は、基板のPETフィルムを13.56MHzの高周波を印加したSUS製平行平板電極内に通し、アルゴンガス雰囲気中、出力200Wにて行った。
(B)本実施例、比較例において使用した試料、及びその略号を以下に示す。
(1)ポリスチレン:出光石油化学(株)製、商品名:HH30を使用した。
(2)ビス(2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)(AOT):アルドリッチ社製を使用した(分子量:444)。
(3)ジヘキサデシルジメチルアンモニウムとポリスチレンスルホン酸のポリイオンコンプレックス(PIC):ジヘキサデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)1.0 gの2%超音波分散液とポリスチレンスルホン酸ナトリウム(アルドリッチ社製)0.24 gの0.5%水溶液を60℃において撹拌し、生じた白色沈殿を吸引ろ過により回収し、クロロホルムに溶解させた。このクロロホルム溶液に無水硫酸ナトリウムを加え乾燥させ、自然ろ過により無水硫酸ナトリウムを除いた後、過剰量のエタノールと混合して再沈殿させた。デカンテーションにより無色透明なPIC(分子量:10000以上)の精製物を得た。
(4)混合キシレン:エチルベンゼン(15wt%)、オルソキシレン(22wt%)、メタキシレン(44wt%)、及びパラキシレン(19wt%)からなる混合溶液を使用した。
(5)TiO水溶液
(株)ラミーコーポレーション製、商品名:ADA BX01を使用した。
[実施例1〜3]
実施例1〜3において、疎水性有機溶媒として、トルエン(誘電率:2.38)、混合キシレン(誘電率:2.40)、及びクロロホルム(誘電率:4.81)をそれぞれ使用して以下に示す疎水性有機溶媒溶液を調製し、該溶液中に存在する逆ミセルの平均孔径の測定を行った。
実施例1において、有機ポリマーとしてポリスチレン1.00gと、両親媒性物質AOT1.00gとを混合し、この混合物をトルエン20.00mlに溶解し、さらに水0.50mlを添加して5分間超音波分散し、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製した。この溶液中の有機ポリマーと両親媒性物質の重量配合割合Rp(〔有機ポリマー〕/(〔有機ポリマー〕+〔両親媒性物質〕))は0.50、水と両親媒性物質の重量配合比Rw(水/両親媒性物質)は0.50である。得られた疎水性有機溶媒溶液のミセル径分布をレーザー回折装置により測定した。その結果を図2に示す、平均ミセル径は、1.51μmであった。
また、得られた溶液を撹拌子により撹拌しながら5分ごとに撹拌を停止してミセル径分布の経時変化をレーザー回折装置により測定した、その結果を図3に示す。平均ミセル径の経時変化は、0分後に1.51μm、5分後に1.50μm、10分後に1.48μm、15分後に1.42μmであり、安定していた。
同様に実施例2、3において、疎水性有機溶媒として実施例1におけるトルエンの代わりに、実施例2では混合キシレン、実施例3ではクロロホルムを用いた以外は実施例1に記載したと同様の方法で疎水性有機溶媒溶液を調製した。得られた溶液を実施例1で行ったと同様の方法で逆ミセルの平均孔径を測定した。その測定結果を図2に示す。
図2における平均ミセル径は、疎水性有機溶媒として混合キシレンを用いた場合には14.69μm、クロロホルムを用いた場合には159.10μmであった。測定結果から疎水性有機溶媒の誘電率が低い方が、すなわち非極性溶媒の方が逆ミセルの平均孔径は小さくなり、またその経時変化が少ない傾向になることが認められた。
[実施例4]
有機ポリマーとしてポリスチレン1.00gと、両親媒性物質AOT1.00gとを混合し、この混合物をトルエン20.00mlに溶解し、さらに水0.25mlを添加して5分間超音波分散し、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製した。この溶液中の有機ポリマーと両親媒性物質の重量配合割合Rp(〔有機ポリマー〕/(〔有機ポリマー〕+〔両親媒性物質〕))は0.50、水と両親媒性物質の重量配合比Rw(水/両親媒性物質)は0.25、Rsは、0.11である。得られた疎水性有機溶媒溶液をブレードコーターを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)基板(10cm×10cm)上に厚さ300μmになるように塗布した。逆ミセルを含む疎水性有機溶媒溶液を形成してから、ほぼ30秒経過後にこの溶液を塗布したPET基板を蒸発用容器内で、温度26℃で乾燥空気(相対湿度17%)を流速1リットル(L)/minで流しながら溶媒を約3分間で自然蒸発させ、PET基板上に膜厚1.41μmの薄膜を得た。
光学顕微鏡による観察結果を図4(A)に示す。図4(A)から得られた薄膜中にはほぼ均一に細孔が分布しており、その平均孔径は1.15μmで、断面空孔率は24.3%であった。
これらの実験条件と結果をまとめて、表3に示す。
[実施例5]
実施例5において、疎水性有機溶媒をトルエンの代わりに混合キシレンを用いた以外は実施例4に記載したと同様の方法で逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製し、該疎水性有機溶媒溶液をブレードコーターを用いてPET基板(10cm×10cm)上に厚さ300μmになるように塗布した。逆ミセルを含む疎水性有機溶媒溶液を形成してから、ほぼ30秒経過後にこの溶液を塗布したPET基板を蒸発用容器内でPET基板上に温度26℃で乾燥空気(相対湿度17%)を流速1L/minで流しながら溶媒を約7分間で自然蒸発させ、PET基板上に膜厚1.10μmの薄膜を得た。光学顕微鏡による観察結果を図4(B)に示す。図4(B)から得られた薄膜の微細孔分布は実施例4とほぼ同様で、その平均孔径は1.07μmで、断面空孔率は24.2%であった。これらの実験条件と結果をまとめて、表3に示す。
[実施例6]
実施例6において、疎水性有機溶媒をトルエンの代わりにクロロホルムを用いた以外は実施例4に記載したと同様の方法で逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製し、該疎水性有機溶媒溶液をブレードコーターを用いてPET基板(10cm×10cm)上に厚さ300μmになるように塗布した。
逆ミセルを含む疎水性有機溶媒溶液を形成してから、ほぼ30秒経過後にこの溶液を塗布したPET基板を蒸発用容器内において温度26℃で乾燥空気(相対湿度17%)を流速1L/minで流しながら溶媒を約7分間で自然蒸発させ、PET基板上に膜厚4.88μmの薄膜を得た。光学顕微鏡による観察結果を図4(C)に示す。図4(C)から得られた薄膜の細孔分布は実施例4とほぼ同様で、その平均孔径は1.00μmで、断面空孔率は22.4%であった。これらの実験条件と結果をまとめて、表3に示す。
[実施例7]
(i)基板のパターニング
PETフィルム基板(サイズ:5cm×7cm)上に約3mmφになるようにポリビニルアルコール(PVA)水溶液を64箇所ほぼ均一に塗布後、加熱乾燥して、疎水性PETフィルム上に親水性PVA部(厚み:12μm)を形成して、パターニングされた基板を作製した。
(ii)逆ミセル溶液の作製
ポリスチレン0.67gと、両親媒性物質AOT1.0gを混合し、この混合物をクロロホルム20mlに溶解し、さらに水1.0gを添加して5分間超音波分散し、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製した。水と両親媒性物質の配合比(Rw)は1.0、有機ポリマーと両親媒性物質の配合割合(Rp)は0.4である。
(iii)薄膜の形成
前記疎水性有機溶媒溶液をブレードコーターを用い厚さ100μmになるように前記パターニングされた基板上に塗布した。逆ミセルを含む疎水性有機溶媒溶液を形成後、ほぼ30秒経過後にこの溶液が塗布された基板を蒸発用容器内で、温度26℃で乾燥空気(相対湿度17%)を流速1L/minで流しながら溶媒を約3分間で自然蒸発させた。
光学顕微鏡による観察結果を図5に示す。図5から、親水性PVAが形成されていない疎水性PET部と相対する薄膜部に選択的に細孔が形成されている、貫通開口孔60%以上である薄膜であることが確認された。
[実施例8]
(i)逆ミセル溶液の作製
ポリスチレン0.08gと、両親媒性物質AOT0.18gを混合し、この混合物をクロロホルム3.06mlに溶解し、さらに水0.1gに銅微粒子(平均粒径50nm)0.7mgを分散させたものを添加して5分間超音波分散し、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製した。水と両親媒性物質の配合比(Rw)は0.57、有機ポリマーと両親媒性物質の配合割合(Rp)は0.3である。
(ii)薄膜の形成
前記溶液をブレードコーターを用いてPET基板上に厚さ100μmになるように塗布した。この溶液が塗布された基板を蒸発用容器内において温度26℃で乾燥空気(相対湿度17%)を流速3L/minで流しながら溶媒を自然蒸発させ、基板上に膜厚5.5μmの薄膜を得た。
(iii)結果
得られた薄膜の光学顕微鏡観察の結果を図6に示す。図6から細孔内に選択的に銅微粒子が存在する、貫通開口孔60%以上である薄膜であることが確認された。
[実施例9]
(a)基板の作製
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基板(サイズ:5cm×7cm)にポリビニルアルコール(PVA)水溶液をマスク上から塗布したものを加熱乾燥し、図7の平面模式図(a)と断面模式図(b)に示すような、親水性であるPVA部101(厚み:12μm、1つのPVA部の径:3mmφ)と疎水性であるPET部102とを有する構造体を作製した。
(b)逆ミセル溶液の作製
ポリスチレン0.67gと、両親媒性物質PIC1.0gを混合し、この混合物をクロロホルム20mlに溶解し、更に水1.0gを添加してスターラーで撹拌し、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製した。水と両親媒性物質の配合比(Rw)は1.0、有機ポリマーと両親媒性物質の配合割合(Rp)は0.4である。
(c)薄膜の形成
上記溶液を、ブレードコーターを用いて厚さ100μmとなるように前記基板上に塗布した。前記溶液が塗布された基板を蒸発用容器内挿入して該基板上に温度26℃で乾燥空気(相対湿度17%)を流速3L/minで流しながら溶媒と水を自然蒸発させ、基板上に膜厚5.1μmの薄膜を得た。
(d)結果
得られた薄膜を光学顕微鏡観察したところ、平均開口径は15μmであった。また、疎水性であるPET基板と相対する部分において、膜の表面に垂直な断面における細孔の全面積のうち貫通孔の面積割合:60%以上、細孔密度:414/mm2、表面開口率:7.3%であった。
同様の測定方法により、親水性であるPVA部と相対する部分の細孔について測定したところ、細孔密度:54/mm2、表面開口率:1.0%であった。
上記から、基板面がPETである疎水性部と相対する薄膜部に細孔が選択的に形成されていることが確認された。
また、エネルギー分散型蛍光X線分析装置による分析から、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムとポリスチレンスルホン酸のポリイオンコンプレックス(PIC)由来のS成分の濃度分布が細孔辺縁部において特に高いことを確認した。
[実施例10]
(a)基板の作製
ガラス基板113(サイズ:5cm×7cm)上にTiO水溶液を塗布し、加熱乾燥してガラス基板上にTiO2層を形成した。この基板にフォトマスクを介してTiO2層の一部に紫外光照射を行った。TiO層のうち紫外光照射された部分は親水性が高くなり、一方マスクされ紫外光照射されなかった部分の親水性は変化しない。このようにして、図8の平面模式図(a)と断面模式図(b)に示すような親水性の高い部分111と低い部分112(7mm×7mm)とを有するTiO2層を形成した。
(b)逆ミセル溶液の作製
ポリスチレン1.5gと、両親媒性物質AOT1gを混合し、この混合物をクロロホルム20mlに溶解し、さらに水0.5gを添加して5分間スターラーで撹拌し、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製した。水と両親媒性物質の配合比(Rw)は0.5、有機ポリマーと両親媒性物質の配合割合(Rp)は0.6である。
(c)薄膜の形成
この溶液をブレードコーターを用い厚さ300μmになるように前記基板上に塗布した。前記溶液が塗布された基板を蒸発用容器内挿入して該基板上に温度26℃で乾燥空気(相対湿度17%)を流速3L/minで流しながら溶媒を自然蒸発させ、ガラス基板上に膜厚9.1μmの薄膜を得た。
(d)結果
得られた膜を光学顕微鏡観察したところ、平均開口径は8μmであった、また、紫外光照射されなかったTiO層(疎水性部)と相対する薄膜部において、該膜の表面に垂直な任意の断面における細孔の全面積のうち非貫通開口孔の面積割合:60%以上、細孔密度:2349/mm2、表面開口率:11.8%であった。
同様の測定方法により、紫外光照射されたTiO層(親水性部)と相対する薄膜部においては、細孔密度:258/mm2、表面開口率:1.3%であった。
紫外光照射されなかったTiO層(疎水性部)と相対する薄膜部に細孔が偏在して形成されていることが確認された。
また、両親媒性物質を溶解除去する目的で、膜が形成されたガラス基板をメタノールに浸漬したところ、膜はガラス基板から剥離した。この剥離した膜は自己支持性を有していた。
この膜を走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜厚は9.1μmであった。また、エネルギー分散型蛍光X線分析装置による分析から、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムとポリスチレンスルホン酸のポリイオンコンプレックス由来のS成分は検出されなかった。
[実施例11]
(a)基板の作製
実施例10と同様にして、ガラス基板(サイズ:5cm×7cm)上にTiO2層(一辺35mmの正三角形)を形成した。この基板にフォトマスクを介して紫外光照射を行い、図9の平面模式図に示すような親水性の高い部分111と低い部分112とを有するTiO2層を形成した。疎水部112は疎水部111を時計回りに90度回転させた配置にある。
(b)逆ミセル溶液の作製
ポリスチレン0.67gと、両親媒性物質AOT1gを混合し、この混合物をクロロホルム20mlに溶解し、さらに水0.5gを添加してスターラーで撹拌し、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製した。水と両親媒性物質の配合比(Rw)は0.5、有機ポリマーと両親媒性物質の配合割合(Rp)は0.4である。
(c)薄膜の形成
この溶液をブレードコーターを用い厚さ100μmでガラス基板上に塗布した。前記溶液が塗布された基板を蒸発用容器内挿入して該基板上に温度26℃で乾燥空気(相対湿度17%)を流速3L/minで流しながら溶媒を自然蒸発させ、ガラス基板上に膜厚5.3μmの薄膜を得た。
(d)結果
得られた薄膜を光学顕微鏡観察したところ、平均開口径は7μmであった、また、親水性の低いTiO2層部(紫外光未照射部)において、薄膜表面に垂直な任意の断面における細孔の全面積のうち非貫通開口孔の面積割合:60%以上、細孔密度:4296/mm2、表面開口率:16.5%であった。
同様の測定方法により、親水性の高いTiO層部(紫外光照射部)と相対する薄膜部においては、細孔密度:462/mm2、表面開口率:1.8%であった。
[実施例12]
(a)基板の作製
ポリエチレン基板(サイズ:5cm×7cm)上にフォトマスクを介してプラズマ照射を行った後、基板を大気中にさらしてプラズマ処理部を親水化し、図10の平面模式図に示すような親水部121と疎水部122を有する基板を形成した。尚、図10において、疎水部における左側幅は4cm、右側幅は2.5cm、下部の幅は5cmである
(b)逆ミセル溶液の作製
ポリスチレン0.67gと、両親媒性物質AOT1gを混合し、この混合物をクロロホルム20mlに溶解し、さらに水0.5gに銅微粒子(平均粒径50nm)3.5mgを分散させたものを添加してスターラーで撹拌し、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製した。水と両親媒性物質の配合比(Rw)は0.5、有機ポリマーと両親媒性物質の配合割合(Rp)は0.4である。
(c)薄膜の形成
この溶液をブレードコーターを用い厚さ100μmでポリエチレン基板上に塗布した。前記溶液が塗布された基板を蒸発用容器内挿入して該基板上に温度26℃で乾燥空気(相対湿度17%)を流速3L/minで流しながら溶媒を自然蒸発させ、ポリスチレン基板上に膜厚5.8μmの薄膜を得た。
(d)結果
得られた薄膜を光学顕微鏡観察したところ、平均開口径は9μmであった、また、疎水性であるプラズマ未処理部と相対する薄膜部のみに貫通孔が形成されており、膜の表面に垂直な断面における細孔の全面積のうち貫通孔の面積割合:60%以上、細孔密度:1757/mm2、表面開口率:11.2%であった。
また、走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型蛍光X線分析装置による分析から、細孔内に選択的に銅微粒子が存在することを確認した。
[実施例13]
(a)基板の作製
実施例12と同様にして、図11の平面模式図のような親水部121と疎水部122を有する基板を形成した。マスクパターンの線幅はミセル径より25%大きい程度(10μm)とした。
尚、基板における水平方向のマスクパターンの長さは上部が約4cm、中間部が約5cm、下部が約3cmであり、垂直方向のマスクパターンの長さは右側が1.5cm、左側が3cmである。
(b)逆ミセル溶液の作製
ポリスチレン0.67gと、両親媒性物質AOT1gを混合し、この混合物をクロロホルム20mlに溶解し、さらに水0.5gにキャタリスト(奥野製薬工業(株)製、OPC−80キャタリスト)を加えたものを添加してスターラーで撹拌し、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製した。水と両親媒性物質の配合比(Rw)は0.5、有機ポリマーと両親媒性物質の配合割合(Rp)は0.6である。
(c)薄膜の形成
この溶液をブレードコーターを用い厚さ100μmでポリエチレン基板上に塗布した。前記溶液が塗布された基板を蒸発用容器内挿入して該基板上に温度26℃で乾燥空気(相対湿度17%)を流速3L/minで流しながら溶媒を自然蒸発させ、ポリエチレン基板上に膜厚10.2μmの薄膜を得た。
(d)ニッケルめっき層形成
この膜をアクセレーター(奥野製薬工業(株)製、OPC−500アクセレーターMX−1)に35℃で5分間浸漬した後、水洗し、無電解ニッケルめっき液(奥野製薬工業(株)製、トップニコロンSA98−M−LF)に90℃で5分間浸漬した。その後、水洗、乾燥した。
(e)結果
得られた膜を光学顕微鏡観察したところ、細孔の平均開口径は7μmであり、疎水性であるプラズマ未処理部と相対する薄膜部分のみに一次元に配列して存在し、該膜の表面に垂直な任意の断面における細孔の全面積のうち非貫通開口孔が60%以上であった。
また、走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型蛍光X線分析装置による分析から、細孔内部に選択的に厚み600nmのニッケル層が形成されており、また、膜内にビス(2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)(AOT)由来のイオウ(S)が存在しないことを確認した。
[実施例14]
(a)基板の作製
白金(Pt)基板(サイズ:5cm×7cm)上にポリビニルアルコール(PVA)水溶液をマスク上から塗布したものを加熱乾燥し、図12の平面模式図に示すような、親水性を有するPVA部121(厚み:4μm)と疎水性であるPt部122とを有する構造体を作製した。
(b)逆ミセル溶液の作製
ポリスチレン0.67gと、両親媒性物質AOT1gを混合し、この混合物をクロロホルム20mlに溶解し、さらに水1.0gに銅微粒子(平均粒径50nm)7.0mgを分散させたものを添加してスターラーで撹拌し、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製した。水と両親媒性物質の配合比(Rw)は1、有機ポリマーと両親媒性物質の配合割合(Rp)は0.4である。
(c)薄膜の形成
この溶液をブレードコーターを用い厚さ150μmでPt基板上に塗布した。前記溶液が塗布された基板を蒸発用容器内挿入して該基板上に温度26℃で乾燥空気(相対湿度17%)を流速3L/minで流しながら溶媒を自然蒸発させ、Pt基板上に膜厚12.3μmの薄膜を得た。
得られた膜を光学顕微鏡観察したところ、薄膜の平均開口径は7μmであり、また、疎水性でPt基板(PVA未塗布部)と相対する薄膜部において、該膜の表面に垂直な任意の断面における細孔の全面積のうち非貫通開口孔の面積割合:60%以上、細孔密度:7552/mm2、表面開口率:29.0%であった。
同様の測定方法により、親水性であるPVA部と相対する薄膜部の細孔について測定したところ、細孔密度:727/mm2、表面開口率:2.8%であった
(d)膜表面へのニッケル電着
電着法により、膜表面にニッケル層を形成した。電着条件は、メッキ浴温度50℃、電流密度10A/dm2、電着時間3分間である。細孔内部以外の膜表面に堆積した膜は、CMP法により取り除いた。走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型蛍光X線分析装置による分析から、細孔内部に選択的に厚み600nmのニッケル層が形成されていることを確認した。
[実施例15]
(a)基板の作製
ポリエチレン基板(サイズ:5cm×7cm)上にフォトマスクを介してプラズマ照射を行った後、基板を大気中にさらしてプラズマ処理部を親水化し、図13の平面模式図に示すような親水部121と疎水部122を有する基板を形成した。
(b)逆ミセル溶液の作製
ポリスチレン0.67gと、両親媒性物質AOT1gを混合し、この混合物をクロロホルム20mlに溶解し、さらに水1gを添加してスターラーで撹拌し、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を調製した。水と両親媒性物質の配合比(Rw)は1、有機ポリマーと両親媒性物質の配合割合(Rp)は0.4である。
(c)薄膜の形成
この溶液をブレードコーターを用い厚さ150μmでポリエチレン基板上に塗布した。前記溶液が塗布された基板を蒸発用容器内挿入して該基板上に温度26℃で乾燥空気(相対湿度17%)を流速3L/minで流しながら溶媒を自然蒸発させ、ポリスチレン基板上に膜厚5.6μmの薄膜を得た。
得られた薄膜を光学顕微鏡観察したところ、平均開口径は9μmであり、また、疎水性であるポリエチレン基板(プラズマ未照射部)と相対する薄膜部のみに細孔が形成されており、膜の表面に垂直な断面における細孔の全面積のうち貫通孔の面積割合:60%以上、細孔密度:3686/mm2、表面開口率:18.5%であった。
(d)膜表面へのスパッタリング
スパッタリング法により、膜表面に相変化材料としてGe−Te−Sb−S合金を堆積させた。走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型蛍光X線分析装置による分析から、膜表面にGe−Te−Sb−S合金層が形成されていることを確認した。
本発明の方法により得られる多層構造体は、光学フィルターや回折素子等として利用することが可能であり、また半導体、キャパシタ、磁気メモリ、メモリ、DVD、発光デバイス、又はバイオチップ用の分野で広く使用することができる。
基板と中間層、又は中間層によりパターニングされた疎水性部と相対する薄膜部における細孔がそれぞれ均一分布(図1(A))、非貫通開口孔(図1(B))、貫通孔(図1(C))である場合の多層構造体断面模式図である。 実施例1ないし3における疎水性有機溶媒溶液中の逆ミセルの細孔径分布をレーザー回折装置による測定結果を示す。 実施例1における疎水性有機溶媒溶液中の逆ミセルの孔径分布の経時変化をレーザー回折装置による測定結果を示す。 実施例4、5、6で得られた多孔質構造体の断面図の光学顕微鏡により観察した結果をそれぞれ図4(A)、(B)、(C)に示す。 実施例7における疎水性PET基板部とPVA部上にそれぞれ形成された細孔を示す光学顕微鏡の観察結果である。 実施例8における疎水性PET基板上に形成された細孔内に選択的に銅微粒子が存在することを示す光学顕微鏡の観察結果である。 実施例9におけるPET基板上の一部に親水性のPVA部が配置された構造体の平面模式図(a)と断面模式図(b)を示す。 実施例10でガラス基板上に設けたTiO層の一部を疎水性に改質した構造体の平面模式図(a)と断面模式図(b)を示す。 実施例11でガラス基板上に設けたTiO層の一部を疎水性に改質した構造体の平面模式図を示す。 実施例12でポリエチレン基板の一部をプラズマ処理により親水性に改質した構造体の平面模式図を示す。 実施例13でポリエチレン基板の一部をプラズマ処理により親水性に改質した構造体の平面模式図を示す。 実施例14におけるPt基板上に親水性のPVA部が配置された構造体の平面模式図を示す。 実施例15でポリエチレン基板の一部をプラズマ処理により親水性に改質した構造体の平面模式図を示す。
符号の説明
101:親水性部であるPVA部
102:疎水性部であるPET部
103:細孔
104:銅微粒子
111:親水性の高い部分
112:親水性の低い部分
113:ガラス基板
121:親水性部
122:疎水性部

Claims (32)

  1. 有機ポリマー及び両親媒性物質からなりかつ細孔(P)を有する薄膜(A1)、基板(B)、並びに薄膜(A1)と基板(B)の層間の少なくとも一部を形成している中間層(C)から構成される多層構造体であって、薄膜(A1)と相対する中間層(C)側の面に基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)から形成されるパターニングされた疎水性部(S)が設けられ、薄膜(A1)中の細孔(P)が疎水性部(S)と相対する薄膜部(A1p)に偏在するようにパターニングされ、かつ両親媒性物質が細孔(P)の辺縁部に存在している多層構造体(K1)。
  2. 有機ポリマー、両親媒性物質及び機能性物質からなりかつ細孔(P)を有する薄膜(A2)、基板(B)、並びに薄膜(A2)と基板(B)の層間の少なくとも一部を形成している中間層(C)から構成される多層構造体であって、薄膜(A2)と相対する中間層(C)側の面に基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)から形成されるパターニングされた疎水性部(S)が設けられ、薄膜(A2)中の細孔(P)が疎水性部(S)と相対する薄膜部(A2p)に偏在するようにパターニングされ、両親媒性物質が細孔(P)の辺縁部に存在し、かつ前記機能性物質が細孔(P)内部に存在する多層構造体(K2)。
  3. 前記有機ポリマーがポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、シクロポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、ポリアルキレンオキサイド、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、熱可塑性ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリアミドイミドから選ばれた少なくとも1種以上である、請求項1又は2に記載の多層構造体。
  4. 前記両親媒性物質がビス(2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムとポリスチレンスルホン酸のポリイオンコンプレックス、エチレングリコールとプロピレングリコールから得られるブロックコポリマー、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドから得られるブロックコポリマーから選ばれた少なくとも1種以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の多層構造体。
  5. 前記基板(B)が金属、セラミックス、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリフッ化エチレン、ポリエーテルケトン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸から選ばれた少なくとも1種以上、あるいはこれらのいずれかを複合した基板である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の多層構造体。
  6. 前記パターニングされた疎水性部(S)が、(i)薄膜(A1又はA2)が形成される面と相対する面(上面)にいずれか一方が疎水性部である基板(B)又は中間層(C)を使用して、基板(B)の上面の一部に中間層(C)を設けることにより形成されている、(ii)基板(B)の上面の一部に中間層(C)を設けて、基板(B)及び/又は中間層(C)の上面の少なくとも一部を改質することにより形成されている、(iii)基板(B)の上面の全面に予め疎水性部(S)がパターニングされた中間層(C)を設けることにより形成されている、又は(iv)基板(B)の上面の全面に中間層(C)を設けて該中間層(C)の一部を改質することにより形成されている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の多層構造体。
  7. 前記中間層(C)が基板(B)上の一部に設けられた層であって、基板(B)が親水性のときに中間層(C)はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂から選択される少なくとも1種以上の疎水性層であり、あるいは基板(B)が疎水性のときに中間層(C)はポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリビニルスルホン、ポリエチレンオキシド、TiO層、及びガラスから選ばれた少なくとも1種以上の親水性層である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の多層構造体。
  8. 前記機能性物質が(i)Au、Ag、Cu、Pt、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、及びTiから選択される金属、(ii)前記2種以上の金属、又は前記金属と非金属元素から得られる合金、(iii)前記金属と周期律表16族の元素(O、S、Se、Te、Po)との化合物(金属カルコゲナイド)、及び(iv)前記金属と周期律表17族の元素(F、Cl、Br、I)との化合物(金属ハロゲン化合物)、並びに(v)前記(i)ないし(iv)に示す物質を形成する前駆体、から選ばれた少なくとも1種以上である、請求項2ないし7のいずれか1項に記載の多層構造体。
  9. 前記機能性物質が(i)半導体材料、金属酸化物、セラミックス材料、強誘電体材料、強磁性体材料、抵抗変化材料、相変化材料、光機能材料、及び蛍光機能材料、並びに(ii)前記(i)に示す物質を形成する前駆体、から選ばれた少なくとも1種以上である、請求項2ないし7のいずれか1項に記載の多層構造体。
  10. 前記薄膜部(A1p又はA2p)における細孔(P)が、当該薄膜部(A1p又はA2p)内に均一に分布しており、その平均孔径(開口及び貫通している孔を除く)が0.1〜10μmである、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の多層構造体。
  11. 前記薄膜部(A1p又はA2p)における細孔(P)は、薄膜(A1又はA2)表面に垂直な断面における孔の全面積のうち表面で開口している孔(開口孔)の面積割合が60%以上、又は薄膜部(A1p又はA2p)における表面開口率が5%以上であり、かつ該開口孔の平均開口径が0.1〜100μmである、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の多層構造体。
  12. 前記薄膜部(A1p又はA2p)における細孔(P)は、薄膜(A1又はA2)表面に垂直な断面における孔の全面積のうち貫通している孔(貫通孔)の面積割合が60%以上、又は貫通孔に基づく薄膜部(A1p又はA2p)における表面開口率が7%以上であり、かつ該貫通孔の薄膜(A1又はA2)表面と平行方向の平均孔径が1〜50μm又は該貫通孔の平均開口径が1〜50μmである、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の多層構造体。
  13. 前記薄膜(A1又はA2)の厚みが0.001〜1mmである、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の多層構造体。
  14. 前記薄膜(A1又はA2)が自己支持性を有する、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の多層構造体。
  15. 前記薄膜部(A1p又はA2p)に偏在するようにパターニングされた細孔(P)の配列が一次元配列、二次元配列、又はハニカム状配列である、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の多層構造体。
  16. 下記(i)ないし(iv)に記載する工程を含む、疎水性有機溶媒溶液中で生成した逆ミセルの鋳型を利用して形成されるパターニングされた細孔(P)を有する薄膜(A)、基板(B)、及び薄膜(A)と基板(B)の層間の少なくとも一部を形成している中間層(C)から構成される多層構造体(K)の製造方法。
    (i)薄膜(A)が形成される面と相対する側の面(上面)に、基板(B)と中間層(C)、又は中間層(C)から形成されるパターニングされた疎水性部(S)を有する、基板(B)と中間層(C)からなる構造体(D)を作製する工程(工程1)
    (ii)少なくとも両親媒性物質、疎水性を有する有機ポリマー、親水性液体及び疎水性有機溶媒からなる溶液を混合撹拌して、逆ミセルが形成された疎水性有機溶媒溶液を得る工程(工程2)
    (iii)前記疎水性有機溶媒溶液を構造体(D)の上面にキャストして、逆ミセルを該疎水性有機溶媒溶液中で前記パターニングされた疎水性部(S)と相対する部分に偏在させる工程(工程3)
    (iv)構造体(D)上の疎水性有機溶媒溶液から、疎水性有機溶媒を蒸発させて、逆ミセルの鋳型から形成される細孔(P)が疎水性部(S)と相対する薄膜部(Ap)に偏在するようにパターニングされた薄膜(A)を形成する工程(工程4)
  17. 前記工程2の疎水性有機溶媒溶液が両親媒性物質、疎水性を有する有機ポリマー、疎水性有機溶媒、親水性液体、及び該親水性液体相中に選択的に分散又は溶解する機能性物質からなり、かつ工程4で得られた薄膜(A)中の薄膜部(Ap)に偏在するようにパターニングされた細孔(P)中に該機能性物質が含まれている、請求項16に記載の多層構造体の製造方法。
  18. 前記パターニングされた疎水性部(S)が、(i)薄膜(A)が形成される面と相対する面(上面)にいずれか一方が疎水性部である基板(B)又は中間層(C)を使用して、基板(B)の上面の一部に中間層(C)を設けることにより形成される、(ii)基板(B)の上面の一部に中間層(C)を設けて、基板(B)及び/又は中間層(C)の上面の少なくとも一部を改質することにより形成される、(iii)基板(B)の上面の全面に予め疎水性部(S1)がパターニングされた中間層(C)を設けることにより形成される、又は(iv)基板(B)の上面の全面に中間層(C)を設けて該中間層(C)の一部を改質することにより形成される、請求項16に記載の多層構造体の製造方法。
  19. 前記パターニングされた疎水性部(S)が塗布法、真空蒸着法、分子線エピタキシー法(MBE)、化学気相成長法(CVD)、及び物理気相成長法(PVD)から選ばれた少なくとも1種以上を用いて親水部又は疎水性部を設けることにより形成される、又は前記改質が化学処理及び/又は光エネルギー照射である、請求項18に記載の多層構造体の製造方法。
  20. 前記工程2における親水性液体と両親媒性物質の重量配合比Rw(親水性液体/両親媒性物質)が0.5ないし15である、請求項16ないし19のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
  21. 前記工程2における有機ポリマーと両親媒性物質の重量配合割合Rp(有機ポリマー/〔有機ポリマー+両親媒性物質〕)が0.1ないし0.6である、請求項16ないし20のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
  22. 前記工程3における基板(B)上にキャストする前記疎水性有機溶媒溶液の厚みが0.01〜5mmである、請求項16ないし21のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
  23. 前記工程4における疎水性有機溶媒の蒸発を乾燥ガス流通下で行う、請求項16ないし22のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
  24. 前記乾燥ガスが乾燥空気又は乾燥不活性ガスである、請求項23に記載の多層構造体の製造方法。
  25. 前記工程4の蒸発温度における疎水性有機溶媒の蒸気圧が親水性液体の蒸気圧の0.3倍以上である、請求項16ないし24のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
  26. 前記工程2で使用する前記疎水性有機溶媒が、誘電率が5以下であるノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、ノルマルヘプタン、ノルマルデカン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、オルソキシレン、メタキシレン、パラキシレン、混合キシレン、四塩化炭素、クロロホルム、及びトランス1、2-ジクロロエチレン、から選ばれた少なくとも1種以上である、請求項16ないし25のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
  27. 前記工程2における20℃での誘電率が5以下で同温度での比重が0.65〜0.90である前記疎水性有機溶媒を使用し、かつ工程4における前記疎水性有機溶媒の蒸発を行うことにより、逆ミセルの鋳型から、前記薄膜部(Ap)に形成される細孔(P)は、当該薄膜部(Ap)内に均一に分布しており、その細孔(P)(開口及び貫通している孔を除く)の径の平均値が0.1〜10μmである薄膜(A)を形成する、請求項16ないし26のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
  28. 前記工程2における比重が親水性液体の比重よりも大きい前記有機ポリマー及び/又は前記疎水性有機溶媒を使用し、かつ工程4における前記疎水性有機溶媒の蒸発により、逆ミセルの鋳型から、前記薄膜部(Ap)に形成される細孔(P)は、薄膜(A)表面に垂直な断面における孔の全面積のうち表面で開口(貫通を除く)している孔(開口孔)の面積割合が60%以上、又は薄膜部(Ap)における表面開口率が5%以上であり、その前記開口孔の平均開口径が0.1〜100μmである薄膜(A)を形成する、請求項16ないし26のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
  29. 前記工程2における前記Rw(親水性液体/両親媒性物質)を3ないし15とし、工程3において工程4における疎水性有機溶媒蒸発後の薄膜(A)の厚みが1〜50μmとなるように前記疎水性有機溶媒溶液を構造体(D)上にキャストし、かつ工程4における前記疎水性有機溶媒の蒸発により、逆ミセルの鋳型から、前記薄膜部(Ap)に形成される細孔(P)は、薄膜(A)表面に垂直な断面における孔の全面積のうち貫通している孔(貫通孔)の面積割合が60%以上、又は貫通孔に基づく薄膜部(Ap)における表面開口率が7%以上であり、その前記貫通孔の薄膜(A)表面と平行方向の平均孔径が1〜50μm又は前記貫通孔の平均開口径が1〜50μmである薄膜(A)を形成する、請求項16ないし26のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
  30. 前記機能性物質が(i)Au、Ag、Cu、Pt、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、及びTiから選択される金属、(ii)前記2種以上の金属、又は前記金属と非金属元素から得られる合金、(iii)金属と周期律表16族の元素(O、S、Se、Te、Po)との化合物(金属カルコゲナイド)、及び(iv)金属と周期律表17族の元素(F、Cl、Br、I)との化合物(金属ハロゲン化合物)、並びに(v)前記(i)ないし(iv)に示す物質を形成する前駆体、から選ばれた少なくとも1種以上である、請求項17ないし29のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
  31. 前記機能性物質が(i)半導体材料、金属酸化物、セラミックス材料、強誘電体材料、強磁性体材料、抵抗変化材料、相変化材料、光機能材料、及び蛍光機能材料、並びに(ii)前記(i)に示す物質を形成する前駆体、から選ばれた少なくとも1種以上である、請求項17ないし29のいずれかの1項に記載の多層構造体の製造方法。
  32. 請求項16に記載する工程4で得られる多層構造体中の薄膜(A)の細孔(P)、あるいは請求項16に記載する工程4で得られる多層構造体中の薄膜(A)から両親媒性物質を除去した有機ポリマーからなる多層の構造体中の薄膜(A)中の細孔(P)に更に機能性物質を充填する方法であって、該機能性物質の充填方法が、(i)電着法による金属の充填方法、又は(ii)スパッタリング法による相変化材料の充填を利用した充填方法である、多層構造体中の薄膜(A)の細孔(P)に機能性物質を充填する方法。
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