以下に本発明の実施の形態を説明するが、請求項に記載の構成要件と、発明の実施の形態における具体例との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、請求項に記載されている発明をサポートする具体例が、発明の実施の形態に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の実施の形態中には記載されているが、構成要件に対応するものとして、ここには記載されていない具体例があったとしても、そのことは、その具体例が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、具体例が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その具体例が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
さらに、この記載は、発明の実施の形態に記載されている具体例に対応する発明が、請求項に全て記載されていることを意味するものではない。換言すれば、この記載は、発明の実施の形態に記載されている具体例に対応する発明であって、この出願の請求項には記載されていない発明の存在、すなわち、将来、分割出願されたり、補正により追加される発明の存在を否定するものではない。
本発明の一側面の通信装置は、筐体に設けられている第1の周波数帯域の無線電波信号を送受信する第1のアンテナ(例えば、図6のアンテナ112)と、所定の長さの同軸ケーブルを介して前記筐体に接続されている、前記第1の周波数帯域よりも高い第2の周波数帯域の無線電波信号を送受信する第2のアンテナ(例えば、図6のアンテナ111)と、前記筐体内の基板とは別に、前記第2のアンテナのアンテナ素子に対して設けられた地板(例えば、図8の地板151)とを備えることを特徴とする。
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える切り替え手段(例えば、図15の切替部282)をさらに設けるようにさせることができる。
前記第1のアンテナまたは前記第2のアンテナのアンテナ素子(例えば、図14Bのアンテナ素子139)には、第1の方向に進行しながら、前記第1の方向に交わるように蛇行する形状とされる部分(例えば、図14Bのミアンダパターン212)と、前記第1の方向に交差する第2の方向に進行しながら、前記第2の方向に交わるように蛇行する形状とされる部分(例えば、図14Bのミアンダパターン253)とからなるアンテナ導体を含ませるようにすることができる。
前記第1のアンテナまたは前記第2のアンテナのアンテナ素子(例えば、図14Dのアンテナ素子139)には、第1の軸の方向に進行しながら、前記第1の軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分(例えば、図14Dのヘリカルパターン211−1)と、前記第1の軸に交差する第2の軸の方向に進行しながら、前記第2の軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分(例えば、図14Dのヘリカルパターン211−2)とからなるアンテナ導体を含ませるようにすることができる。
前記第1のアンテナまたは前記第2のアンテナのアンテナ素子(例えば、図13のアンテナ素子139)には、所定の方向に進行しながら、前記方向に交差するように蛇行する形状とされる部分(例えば、図13のミアンダパターン212−1)と、所定の軸の方向に進行しながら、前記軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分(例えば、図13のヘリカルパターン211)とからなるアンテナ導体(例えば、図13のアンテナ導体202)を含ませるようにすることができる。
図6は、本発明の一実施の形態の通信装置101を示す図である。通信装置101は、無線により他の装置と通信する。例えば、本発明の通信装置101は、無線LAN(Local Area Network:IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11g等に準拠するもの)、またはBluetooth、Zigbee、UWB(Ultra Wide Band)などに代表されるPAN(Personal Area Network)に対応した無線電波信号を送受信すると共に、携帯電話網、またはPHS(Personal Handyphone System)に代表されるWAN(Wide Area Network)に対応した無線電波信号を送受信する。
通信装置101には、アンテナ111およびアンテナ112が設けられている。アンテナ111は、無線LAN、またはPANに対応した無線電波信号を送受信するアンテナであり、通信装置101の本体に対して接続ケーブル113を介して電気的に機械的に接続されている。接続ケーブル113は、柔軟に形成されているので、アンテナ111は、通信装置101から垂れ下がった状態で保持されることになる。
通信装置101の本体が把持された場合であっても、アンテナ111は、通信装置101の本体に対して接続ケーブル113を介して接続されているので、手で覆われることがなく、使用者の人体の影響を受けずに、アンテナ111は、電波を放射し、電波を受信することができる。その結果、アンテナ111の放射利得の低下を防止することができる。
また、アンテナ111には、リング114が設けられている。リング114をつまむか、またはリング114にさらに紐を結び、この紐をつまむことにより、通信装置101をつり下げることができる。
アンテナ112は、WANに対応した無線電波信号を送受信するアンテナであり、通信装置101の本体に内蔵されている。
通信装置101は、アンテナ111とアンテナ112とを切り替えて、他の装置と通信する。尚、アンテナ111とアンテナ112との切り替えは時分割処理により、それぞれのアンテナにおける周波数帯域の通信を、実質的に、同時にすることもできる。
図7は、通信装置101の本体およびアンテナ111の構成の一例を示す図である。通信装置101の筐体131の内部には、基板132および無線通信モジュール133が設けられている。基板132には、各種の部品が電気的に接続されるように配置されている。例えば、基板132には、アンテナ112が配置されている。
無線通信モジュール133は、他の装置に送信しようとするデータを変調して、変調の結果得られた信号をアンテナ111またはアンテナ112に供給することにより、アンテナ111またはアンテナ112に電波を放射させる。また、無線通信モジュール133は、他の装置から放射された電波を受信したアンテナ111またはアンテナ112から供給された信号を取得し、取得した信号を復号する。
無線通信モジュール133は、アンテナ111に電波を放射させる場合、コネクタ134およびコネクタ135を介して、同軸ケーブル136に信号を伝送させる。無線通信モジュール133は、他の装置から送信されてきた信号を受信する場合、コネクタ134およびコネクタ135を介して、同軸ケーブル136を介して伝送されてきた信号を取得する。コネクタ134は、基板132に設けられ、コネクタ135と接続する。コネクタ135は、同軸ケーブル136の一端に設けられる。
このように、同軸ケーブル136の一端は、コネクタ135に固定され、コネクタ135、コネクタ134、および基板132を介して、無線通信モジュール133に電気的に接続される。
通信装置101の筐体131およびアンテナ111から露出している、同軸ケーブル136の部分は、同軸ケーブル136を保護するための外装体137により被覆される。外装体137は、シリコーンゴムなどの柔軟かつ引っ張り強度の高い(所定の弾性と所定の機械的強度を有する)素材からなり、筐体131とアンテナ111との間にかかる力を受け止めて、同軸ケーブル136の破断や切断などの損傷を防止する。
同軸ケーブル136および外装体137が柔軟に形成されているので、通信装置101の筐体131が把持された場合、アンテナ111は、筐体131から垂れ下がった状態になる。
アンテナ111の筐体138の内部には、アンテナ素子139および基板140が設けられている。アンテナ素子139は、基板140に配置されている。
同軸ケーブル136の他の一端は、後述するように基板140に接続され、基板140を介して、アンテナ素子139に接続されている。
アンテナ素子139は、同軸ケーブル136および基板140を介して、無線通信モジュール133から供給された信号を基に、電波を放射する。また、アンテナ素子139は、受信した電波に対応する信号を、同軸ケーブル136および基板140を介して、無線通信モジュール133に供給する。
このように、筐体131とアンテナ111とは、同軸ケーブル136により電気的に接続され、同軸ケーブル136の長さに対応する距離で離間されている。アンテナ111と内蔵アンテナ112とを干渉させずに通信できるようにするには、2つのアンテナの距離を、無線の電波の波長λの4分の1乃至2分の1以上とするのが好ましいと言われており、同軸ケーブル136の長さは、例えば、無線の電波の波長λの4分の1以上とされる。また、同軸ケーブル136の長さを、無線の電波の波長λの2分の1以上とするようにしてもよい。
図8は、アンテナ111の構成の一例を示す図である。アンテナ111の筐体138の内部に設けられている基板140の一端には、アンテナ素子139が設けられ、基板140の他の一端には地板151が設けられている。
地板151は、導体からなり、基板140のグランドに接続されている。例えば、地板151は、鉄、銅、アルミニウム、チタニウム、またはマグネシウムなどの金属からなる。例えば、地板151は、基板140の両面を挟むように略コの字型に形成される。
アンテナ111とアンテナ112との距離を離しても、アンテナ(イメージ)電流の流れるグランドを共通としてしまうと、アンテナ111およびアンテナ112の独立性を確保できなくなり、その結果、アンテナ111を用いた通信とアンテナ112を用いた通信との間に相互干渉が生じることがある。
そこで、アンテナ112が設けられる基板132とは別に、アンテナ111が配置される基板140を設け、さらに、基板140のグランドに接続した地板151を設けることによって、アンテナ111のアンテナ(イメージ)電流の流れるグランドと、アンテナ112のアンテナ(イメージ)電流の流れるグランドとを個々に設けるようにする。
同軸ケーブル136のアンテナ111側の一端は、コネクタ152に接続されている。より詳細には、同軸ケーブル136の芯線は、コネクタ152を介して、アンテナ素子139の後述する給電点に接続され、同軸ケーブル136のシールド線は、コネクタ152を介して、基板140のグランドに接続される。
図9は、アンテナ111の理想的な実装状態の一例を示す図である。理想的な状態にあるアンテナ111における、アンテナ素子139は、マイクロストリップライン171を介して給電点172に接続される。アンテナ素子139乃至給電点172の長さは、無線通信のキャリアとしての電波の波長λの4分の1の長さと等価なアンテナ線路長とされる。給電点172を対称の中心として、アンテナ素子139乃至給電点172に対して点対称の位置に、無線通信のキャリアとしての電波の波長λの4分の1の長さの路線長のグランドレベルの地板151が配置される。地板151は、アンテナ素子139乃至給電点172と対称の電気的イメージを作る。
アンテナ線路長を確保できなかったり、地板151の路線長を確保できなかったりすると、アンテナ111の理想的な状態から大きく外れてしまい無線通信性能が低下してしまう。
アンテナ素子139のアンテナ線路長が短い場合、または地板151の長さが短くなると、いわゆるマッチングずれ(共振周波数のずれ)が生じ、図10Aで示されるように、無線通信のキャリアの周波数におけるVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)が大きくなる。これに対して、アンテナ素子139の状態が、図9で示されるアンテナ111の理想的な状態により近い状態になると、図10Bで示されるように、無線通信のキャリアの周波数におけるVSWR(電圧定在波比)は、より1に近づく。
また、ある程度以上の放射利得を確保したアンテナを実現するためには、素子を小型化するにしても限界があり、一般に、(アンテナの体積)/((帯域)×(放射利得)×(効率))はほぼ定数値となるという経験則が知られている。
図11および図12は、地板151の形状の例を説明する図である。例えば、図11Aで示されるように、地板151には、電波の波長λと比較される地板151の長さLの方向に対して、垂直方向に、地板151の幅未満の長さのスリット181が設けられる。地板151にスリット181を設けることにより、地板151にリアクタンス成分が装荷されることになる。
また、例えば、図11Bで示されるように、地板151には、所定の方向に進行しながら、その方向に交差するように蛇行する形状とされる部分であるメアンダライン182が設けられる。より具体的には、地板151には、電波の波長λと比較される地板151の長さLの方向に対して、垂直方向である、地板151の幅の方向に進行しながら、幅の方向に交差するように蛇行する形状とされるメアンダライン182が設けられる。地板151にメアンダライン182が設けられることにより、地板151にリアクタンス成分が装荷されることになる。
図12は、基板140および地板151の断面を示す図である。
さらに、例えば、図12Aで示されるように、地板151は、両面基板である基板140の両面を挟むように略コの字型に形成される。この場合、例えば、基板140の一方の面側の地板151の部分は、基板140の他方の面側の地板151の部分の長さに比較して長く形成される。例えば、より短い長さとされる地板151の部分側の基板140の面に、アンテナ素子139が設けられ、給電点172が設けられる。
地板151が、基板140の両面を挟むように略コの字型に形成されることにより、地板151にリアクタンス成分が装荷されることになる。
さらにまた、例えば、図12Bで示されるように、地板151は、多層基板である基板140の一方の面を覆うように形成される。そして、地板151は、基板140の一端から所定の距離だけ離れた位置で、基板140の一方の面から基板140の層を横切るように延びて、さらに、基板140の層を横切った位置から、板140の一方の面を覆う部分と接しないように基板140の一端まで延びる。そして、基板140の一端に達した地板151は、基板140の一端を覆うように、地板151に覆われている面と対向する面側に延び、さらに、地板151に覆われている面と対向する面を覆うように延びる。
このように、地板151は、多層基板である基板140の層に応じて折り曲げられるように形成されるので、地板151にリアクタンス成分が装荷されることになる。
地板151にリアクタンス成分を装荷することにより、地板151の路線長が等価的に補われ、地板151の路線長を確保したまま、地板151をより小さくすることができる。その結果、アンテナ111(の基板140)をより小さくすることができる。また、無線通信のキャリアの周波数におけるVSWRを1により近づけ、共振周波数のずれを修正し、VSWRが2以下である周波数帯域をより広くする(広帯域化する)ことができる。
このように、アンテナ111(の基板140)をより小さくすることができると、アンテナ111の筐体138をより自由にデザインすることができるようになる。
次に、図13乃至図14を参照して、アンテナ素子139の構成を説明する。
図13は、アンテナ素子139の内部の構造の一例を示す図である。アンテナ素子139は、不導体の形成材201により形成される。すなわち、アンテナ素子139の外形は、形成材201により形成される。例えば、形成材201は、ガラスエポキシまたはポリフェニレンサルファイドなどの熱可塑性または熱硬化性の不導体の樹脂とすることができる。アンテナ導体202は、アンテナ線路であり、金属などの導体で構成される。アンテナ導体202は、形成材201に被覆され、アンテナ導体202は、給電点172に接続される。
例えば、形成材201としてのガラスエポキシ基板に、アンテナ導体202を形成し、スルーホールを介して、ガラスエポキシ基板を積層することにより、アンテナ導体202の立体的な構造が形成される。
アンテナ導体202を被覆し、アンテナ素子139を形成する形成材201に、比誘電率εrが4以上である高誘電体樹脂材料を用いることで、表面実装型アンテナとして、波長短縮効果が得られ、アンテナ素子139をより小型にすることができる。波長λと実効比誘電率εとの関係は、式(1)で表される。
λ=c/f/sqrt(ε)
(1)
ここで、sqrt(ε)は、εの平方根を示す。εは、実効比誘電率である(自由空間の場合、ε=1)。実効比誘電率εは、基本的には比誘電率εrに等しいが、媒質との接し方や透磁率等の影響を受ける。fは、周波数を示す。cは、光速(≒3×108m/s)である。
例えば、比誘電率εrが約4であるガラスエポキシ基板を形成材201として採用することができる。また、例えば、比誘電率εrが約10であるセラミックープラスチック複合材料を形成材201として採用することができる。さらにまた、熱可塑性樹脂の低誘導損失材料であるポリフェニレンサルファイドを形成材201として採用することができる。なお、エポキシは、熱硬化性樹脂である。
さらに加えて、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、SrTiO3、またはMgTiO3などの強誘電体フィラーを形成材201に含有させることで、形成材201の比誘電率εrを大きくし、波長短縮効果によりアンテナ素子139をより一層小型化することができる。
一方、誘電損失tanδが大きいと放射利得が低下してしまう。すなわち、より低いVSWRで、無線通信モジュール133からアンテナ素子139に効率良く電力が伝達されたとしても、誘電損失tanδが大きいと誘電体内部(形成材201)で熱として電力が損失されてしまい、電磁波として放射される電力が少なくなる。
例えば、500MHzにおいて、所定の量の強誘電体フィラーを含有する場合のポリフェニレンサルファイドの誘電損失tanδは、約0.001乃至0.004である。強誘電体フィラーの含有量が変化しても、誘電損失tanδは、ほとんど変化せず、より多い量の強誘電体フィラーを含有する場合のポリフェニレンサルファイドの誘電損失tanδは、約0.001乃至0.004である。
これに対して、例えば、500MHzにおいて、所定の量の強誘電体フィラーを含有する場合のエポキシの誘電損失tanδは、約0.016乃至0.021である。また、500MHzにおいて、より多い量の強誘電体フィラーを含有する場合のエポキシの誘電損失tanδは、約0.011乃至0.019である。
形成材201の材料として、ポリフェニレンサルファイドとエポキシとを比較すると、放射利得を優先すると、誘電損失tanδがより小さいポリフェニレンサルファイドが好ましく、波長短縮効果、すなわち、アンテナ素子139の大きさを優先するとエポキシが好ましいと言える。
なお、強誘電体フィラーは、機械的強度および形成するときの流動性などを考慮して、複数の種類を調合したうえで含有させる。
アンテナ導体202は、ヘリカルパターン211、ミアンダパターン212−1、ミアンダパターン212−2、および容量結合点213で構成される。ヘリカルパターン211の一端は、給電点172に接続される。ヘリカルパターン211は、アンテナ素子139が基板140に配置された場合の基板140の面にほぼ垂直な軸を中心とした螺旋形状に形成される。すなわち、ヘリカルパターン211は、給電点172から回転しながら上方に向かう螺旋を形成する。
ヘリカルパターン211の他の一端は、ミアンダパターン212−1の一端に接続される。
ミアンダパターン212−1は、アンテナ素子139が基板140に配置された場合の基板140の面にほぼ平行な面で蛇行する形状に形成される。すなわち、例えば、ミアンダパターン212−1は、アンテナ素子139の長手方向に進行しながら、アンテナ素子139の長手方向に直交するように蛇行する形状とされる。ミアンダパターン212−1の他の一端は、容量結合点213を介してミアンダパターン212−1の一端に接続される。
ミアンダパターン212−2は、ミアンダパターン212−1が蛇行する面と同じ面でで蛇行する形状に形成される。すなわち、ミアンダパターン212−1は、アンテナ素子139が基板140に配置された場合の基板140の面にほぼ平行な面において、アンテナ素子139の長手方向に進行しながら、アンテナ素子139の長手方向に直交するように蛇行する形状とされる。
容量結合点213は、ミアンダパターン212−1とミアンダパターン212−2とを所定の距離で切断するように形成される。すなわち、ミアンダパターン212−1とミアンダパターン212−2とを所定の距離で切断することにより、所定の容量で、ミアンダパターン212−1とミアンダパターン212−2とが接続されることになる。容量結合点213によって、リアクタンス成分がアンテナ素子139に装荷されることにより、アンテナ導体202の路線長が等価的に補われ、アンテナ素子139をより小型化でき、また、VSWRの特性を向上させ、共振周波数のずれを修正し、送信または受信できる周波数の帯域をより広くすることができる。
これにより、アンテナ素子139の周辺の実装部品や筐体の影響などにより、共振周波数がずれた場合であっても、アンテナ導体202の線路パターンを修正するだけで、周波数特性を改善することができる。容量結合点213を設けることで、専用の共振回路をアンテナ素子139の外部に設ける必要がなくなる。
ミアンダパターン212−1の他の一端は、接地点214において、基板140のグランドに接続される。
なお、ヘリカルパターン211、ミアンダパターン212−1、およびミアンダパターン212−2は、直線を直角に接続するように形成しても、曲線で形成するようにしてもよい。
以下、ミアンダパターン212−1およびミアンダパターン212−2を個々に区別する必要がないとき、単に、ミアンダパターン212と称する。
図14は、アンテナ素子139の内部の構造の他の例を示す図である。図14において、図13と同様の部分には同一の符号を付してあり、その説明は省略する。
図14Aに示す例において、アンテナ導体202には、スタブ231が設けられている。スタブ231の一端は、給電点172から立ち上がったアンテナ導体202に接続されている。スタブ231の他の一端は、接地点232において、基板140のグランドに接続される。スタブ231を設けることにより、アンテナ素子139の容量性リアクタンスを打ち消すことができる。
アンテナ導体202には、ミアンダパターン212が形成される。
固定端子233は、基板140に半田付けされる端子であり、固定端子233が基板140に半田付けされることにより、アンテナ素子139は、基板140に固定される。
なお、図14B乃至図14Dにおいて、図14Aと同様の部分には同一の符号を付してあり、その説明は省略する。
図14Bに示す例において、アンテナ素子139の給電点172は、インピーダンスを整合したマイクロスプリットライン251により接続されている。固定端子233が、固定用ランド252−1に半田付けされることにより、アンテナ素子139が固定される。アンテナ導体202には、ミアンダパターン212およびミアンダパターン253が形成される。ミアンダパターン253は、直線をほぼ60度の角度で接続するように形成される。アンテナ導体202の一端は、給電点172に接続され、アンテナ導体202の他の一端は、開放端子254とされ、固定用ランド252−2に半田付けされる。開放端子254は、グランドなどに接続されず、開放される。
図14Bに示す例においては、ミアンダパターン212の進行する方向と、ミアンダパターン253の進行する方向とが直交し、すなわち、ミアンダパターン212の蛇行する方向と、ミアンダパターン253の蛇行する方向とが直交し、共振周波数を下げることができる。
図14Cに示す例において、アンテナ素子139のアンテナ導体202には、進行する方向とが直交する2つの蛇行するパターンからなるミアンダパターン212が形成され、さらに、容量付加部271が形成される。容量付加部271は、アンテナ導体202の幅が広くなるように形成される。容量付加部271は、容量性の負荷なので、アンテナ導体202の先端側に容量性のインピーダンスが装荷されることになる。これにより、アンテナ導体202上の電流分布が変化し、インピーダンス変換の自由度が増す。
図14Dは、ヘリカルパターン211−1およびヘリカルパターン211−2が設けられたアンテナ素子139の例を示す図である。ヘリカルパターン211−1は、アンテナ素子139が基板140に配置された場合の基板140の面上の軸の方向に進行しながら、軸のまわりを回転する螺旋形状に形成される。ヘリカルパターン211−2は、アンテナ素子139が基板140に配置された場合の基板140の面上の軸であって、ヘリカルパターン211−1の軸と直交する軸の方向に進行しながら、直交する軸のまわりを回転する螺旋形状に形成される。例えば、ヘリカルパターン211−1は、図14Dの矢印Aで示される方向の軸を中心とした螺旋形状に形成され、ヘリカルパターン211−2は、矢印Aで示される方向と直交する、図14Dの矢印Bで示される方向の軸を中心とした螺旋形状に形成される。
アンテナ導体202に、ヘリカルパターン211−1およびヘリカルパターン211−2を設けることにより、インピーダンスを調整することが容易になる。
このように、異なる方向に進行する複数のミアンダパターン212を設けるか、または異なる方向の軸を中心とした螺旋形状のヘリカルパターン211を設けることにより、帯域幅が広がり、アンテナ素子139をより小さくすることができる。また、放射特性が、無指向性により近い指向性となり、通信装置101が持ち運ばれ、移動した場合であっても、通信装置101の向きを調整することなく、送受信が確実に行なえるようになる。
以上のように、アンテナ素子139に、第1の方向に進行しながら、第1の方向に交わるように蛇行する形状とされる部分であるミアンダパターン212と、第1の方向に交差する第2の方向に進行しながら、第2の方向に交わるように蛇行する形状とされる部分であるミアンダパターン253とからなるアンテナ導体202を設けることによって、無指向性により近い指向性を得ることができるようになる。
また、アンテナ素子139に、第1の軸の方向に進行しながら、第1の軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分であるヘリカルパターン211−1と、第1の軸に交差する第2の軸の方向に進行しながら、第2の軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分であるヘリカルパターン211−2とからなるアンテナ導体202を設けることによって、無指向性により近い指向性を得ることができるようになる。
さらに、アンテナ素子139に、所定の方向に進行しながら、その方向に交差するように蛇行する形状とされる部分であるミアンダパターン212と、所定の軸の方向に進行しながら、軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分であるヘリカルパターン211とからなるアンテナ導体202を設けることによって、無指向性により近い指向性を得ることができるようになる。
基板140の面上の軸の方向に進行しながら、軸のまわりを回転する螺旋形状に形成されるヘリカルパターン211が設けられたアンテナ素子139からなるアンテナ111は、基板140の面に平行な電界の電波の受信または送信に適した特性を得ることができる。基板140の面と平行する方向に進行しながら、この方向に交わるように蛇行する形状とされるミアンダパターン212またはミアンダパターン253が設けられたアンテナ素子139からなるアンテナ111は、基板140の面に平行な電界の電波の受信または送信に適した特性を得ることができる。
従って、この場合、通信装置101から垂れ下がった状態で保持されるアンテナ111の特性は、大地に垂直な電界をもつ電波である垂直偏波の電波の受信または送信に適したものとなる。
このように、アンテナ111は、筐体131から垂れ下がった状態において、垂直偏波の電波の受信または送信に適した特性を有し、接続ケーブル113を介して筐体131に接続されている。
また、アンテナ112のアンテナ素子は、アンテナ素子139と同様に構成されるので、その説明は省略する。
アンテナ112のアンテナ素子には、通信装置101が使用され、筐体131が使用者に把持される状態に応じたパターンが設けられる。
例えば、アンテナ112のアンテナ素子に、筐体131が把持された状態において、大地とほぼ平行の軸の方向に進行しながら、軸のまわりを回転する螺旋形状に形成されるヘリカルパターンが設けられるので、アンテナ112は、大地に水平な電界をもつ電波である水平偏波の電波の受信または送信に適した特性を得ることができる。または、アンテナ112のアンテナ素子に、筐体131が把持された状態において、大地とほぼ平行する方向に進行しながら、この方向に交わるように蛇行する形状とされるミアンダパターンが設けられるので、アンテナ112は、大地に水平な電界をもつ電波である水平偏波の電波の受信または送信に適した特性を得ることができる。
すなわち、アンテナ111における平均放射利得の大きい偏波面とアンテナ112における平均放射利得の大きい偏波面とが異なるように、アンテナ111およびアンテナ112が構成される。
このように、アンテナ111は、筐体131が把持された状態において、水平偏波の電波の受信または送信に適した特性を有し、筐体131に設けられている。
結果として、アンテナ111を、無線LANまたはPANなどの比較的波長の短い(すなわち、比較的高周波数帯域の)無線電波信号による通信に用い、アンテナ112を、携帯電話またはWANなどの比較的波長の長い(すなわち、比較的低周波数帯域の)無線電波信号による通信に用いることで、アンテナ111とアンテナ112の通信における相互干渉を抑制させることが可能となる。
すなわち、高い周波数帯を扱う(波長が短い)アンテナ111は、大抵の場合、端末装置本体を把持した使用者の手によって覆われることがなく、人体の影響を受けてアンテナの放射効率(利得)が低下したり指向性が変化することが抑制される。
また、低い周波数帯を扱う(波長が長い)アンテナ112は、従来の携帯電話と同様に、最も人体の影響を受けにくい端末本体装置の頂頭部に内蔵した形で構成される。このため、通信装置101の本体から離間したアンテナ111と、通信装置1の本体に内蔵されたのアンテナ112との間の距離を確保して配置できることから、アンテナ間の相互干渉が抑制され、一台の通信装置101で複数の異なる無線の通信機能を利用しても、良好な通信品質を維持することが出来る様になる。
なお、アンテナ111における、平均放射利得に対して放射利得の低い方向が、アンテナ112における、平均放射利得に対して放射利得の低い方向に対して異なる方向となるように、アンテナ111およびアンテナ112を構成するようにしてもよい。すなわち、アンテナ111およびアンテナ112の優先偏波面が同一であっても、アンテナ111の放射利得が低い方向(例えば、放射利得のヌル点)とアンテナ112の放射利得が低い方向(例えば、放射利得のヌル点)とが異なる方向とされる(例えば、アンテナ111の放射利得のヌル点の方向と、アンテナ112の放射利得のヌル点の方向とが一致しないようにする)。これにより、アンテナ111とアンテナ112の通信における相互干渉を抑制させることが可能となる。
次に、図15を参照して、通信装置101により実現される機能について説明する。
制御部281は、通信装置101の動作の全体を制御するものであり、キーボードや操作ボタンなどからなる操作部285が、使用者により操作されると、操作内容に応じて供給される信号に基づいて、切替部282を制御して、通信部283−1,283−2のいずれかを切替えて、制御して無線LANもしくはPAN、または、携帯電話通信網もしくはWANなどによる通話機能部286による通信を可能にする。
通信部283−1は、アンテナ111とWLAN(Wireless LAN)無線部291−1とを備えており、WLAN無線部291−1を制御して、無線LANもしくはPANによる通信を実現する。通信部283−2は、アンテナ112とWWAN(Wireless WAN)無線部291−2とを備えており、WWAN(Wireless WAN)無線部291−2を制御して、携帯電話通信網もしくはWANなどによる通信を実現する。
WLAN無線部291−1は、例えば2.4GHz帯の電波を送受信可能な、通信装置101の本体から離間したアンテナ111と、アクセスポイントとの間で2.4GHzの電波を用いて無線通信を行なう。
一方、WWAN無線部291−2は、例えば800MHzの電波を送受信可能な、内蔵アンテナないし棒状(ロッドorホイップ)アンテナから構成されるアンテナ112と、基地局との間で800MHz帯の電波を用いて無線通信を行なう。
また、制御部281は、操作部285により供給された指示内容や、切替部282を介して通信部283−1,283−2を制御して無線LANもしくはPAN、または、携帯電話通信網もしくはWANなどにより通信情報を画像としてディスプレイ284に表示させる。
次に、図16を参照して、通信部283−1の機能の構成を説明する。
WLAN無線部291−1は、アンテナ111を使用して、無線LANまたはPANにより送信されてくる電波を受信して、所定の復調処理施した後、切替部282を介して制御部281に供給する。また、WLAN無線部291−1は、切替部282を介して制御部281から供給されてくる信号に対して、所定の変調処理を施した後、アンテナ111を使用して、無線LANまたはPANにより電波を放射する。
電波を受信する場合、アンテナ111は、受信した電波に対応した信号を受信部301に供給する。
電波を放射する場合、送信部304は、電波を放射させるための信号をアンテナ111に供給する。
受信部301は、周波数シンセサイザ302から供給されたローカル信号を基に、アンテナ111から供給された、受信した電波に対応した信号を復調して、復調の結果得られた受信信号をベースバンド信号処理部303に供給する。
周波数シンセサイザ302は、アンテナ111において受信された電波に対応する信号である高周波信号の周波数を、中間周波数信号の周波数(中間周波数)に周波数変換するため、または、変調して得られた中間周波数信号の周波数を、アンテナ111において電波として放射させるための信号である高周波信号の周波数に変換するためのローカル信号を、受信部301および送信部304にそれぞれ供給する。
より詳細には、受信部301は、高周波増幅器311、受信ミキサ312、IF(Intermediate Frequency)増幅器313、および復調器314を含む。高周波増幅器311は、アンテナ111において受信された電波に対応する信号である高周波信号を所定の増幅率で増幅する。高周波増幅器311は、増幅した高周波信号を受信ミキサ312に供給する。
受信ミキサ312は、高周波増幅器311から供給された増幅された高周波信号と、周波数シンセサイザ302から供給されたローカル信号とをミキシングすることにより、中間周波数の中間周波数信号を生成する。受信ミキサ312は、中間周波数信号をIF増幅器313に供給する。IF増幅器313は、受信ミキサ312から供給された中間周波数信号を所定の増幅率で増幅し、増幅した中間周波数信号を復調器314に供給する。
復調器314は、IF増幅器313から供給された、所定の変調方式で変調されている中間周波数信号を対応する方式で復調し、復調の結果得られた受信信号をベースバンド信号処理部303に供給する。すなわち、復調器314は、所定の方式で符号化されている受信信号をベースバンド信号処理部303に供給することになる。
ベースバンド信号処理部303は、受信部301から供給された受信信号を復号し、復号により得られたデータを切替部282に供給する。
ベースバンド信号処理部303は、切替部282から供給されたデータまたは信号を符号化し、符号化により得られた送信信号を送信部304に供給する。
ベースバンド信号処理部303は、受信信号処理回路321および送信信号処理回路322を含む。受信信号処理回路321は、受信部301から供給された、所定の方式で符号化されている受信信号を復号することによって、データを生成する。受信信号処理回路321は、復号によって得られたデータを切替部282に供給する。
送信信号処理回路322は、切替部282から供給された、使用者の操作に応じたデータまたは信号を所定の方式で符号化することによって、送信信号を生成する。送信信号処理回路322は、符号化により得られた送信信号を送信部304に供給する。
送信部304は、周波数シンセサイザ302から供給されたローカル信号を基に、ベースバンド信号処理部303から供給された送信信号を変調して、変調の結果得られた信号を、アンテナ111に供給する。
送信部304は、変調器331、送信ミキサ332、および送信電力増幅器333を含む。変調器331は、ベースバンド信号処理部303から供給された送信信号を、所定の変調方式で変調し、変調の結果得られた中間周波数の信号を送信ミキサ332に供給する。送信ミキサ332は、変調器331から供給された中間周波数の信号と、周波数シンセサイザ302から供給されたローカル信号とをミキシングすることにより、高周波信号を生成して、生成した高周波信号を送信電力増幅器333に供給する。
送信電力増幅器333は、増幅率を可変制御して、利得が一定レベルまで上がるように、送信ミキサ332から供給された高周波信号を電力増幅して、電力増幅された高周波信号を、アンテナ111に供給する。
尚、WWAN通信部283−2の機能については、アンテナ112を用いて、異なる周波数帯域の電波を使用する以外の点は、WLAN通信部283−1を実現する機能と同様であるので、その説明は省略する。
図17および図18で示されるように、アンテナ111に接続されるリング114に、いわゆる携帯ストラップ351を結ぶことができる。このようにすると、携帯ストラップ351を持って、通信装置101を持ち運ぶことができるようになる。携帯ストラップ351を首にかければ、両手を自由にして、通信装置101を用いることができる。
さらに、図19に示されるように、通信装置101の本体に内蔵されているアンテナ112に代えて、ロッドアンテナ171を通信装置101の本体に設けるようにしてもよい。ロッドアンテナ171は、固定式であっても、引き伸ばしできるアンテナであってもよい。
尚、以上においては、図6で示されるように、表示部と通話部が一体となった通信装置101を例としてきたが、それ以外の形態であってもよく、例えば、図20A乃至図20Cで示されるように、マイクが配設された電話機本体の一端側にスピーカを有する受話部を支軸を介して回動可能に取り付けるような構成としても良い。
さらに、図20A乃至図20Cで示されるように、アンテナ111が電話機本体から引き出されていれば、アンテナ112の配置は、いずれに設けられるようにしてもよく、例えば、図20Aで示されるように、アンテナ112と同一の機能を備えた内蔵型のアンテナ371を設けるようにしても良いし、図20B,図20Cで示されるように、アンテナ112と同一の機能を備えたロッド型またはホイップ型のアンテナ371を設けるようにしても良い。
このように、本発明によれば、異なる帯域の電波を用いた異なる通信部を備えた通信装置101を、より小型にしても、相互の電波による干渉を抑制することが可能となる。また、ケーブルを介してアンテナが接続されているので、人体の影響による放射利得の低下を抑制することができる。
その結果、本発明によれば、より小型にして、かつ、異なる帯域の電波を用いて通信をする際、伝送されるデータの欠落がより少なくなるなど、より安定して通信することができるようになる。
以上のように、アンテナ素子を設けるようにした場合には、無線により通信することができる。また、第1のアンテナを筐体に設け、第2のアンテナを所定の長さの同軸ケーブルを介して筐体に接続し、地板を筐体内の基板とは別に第2のアンテナのアンテナ素子に対して設けるようにした場合には、より小型にしても、第1のアンテナと第2のアンテナとのそれぞれの帯域の電波による干渉を抑制できるので、相互の電波を用いた良好な通信を実現することが可能となる。
101 通信装置, 111 アンテナ, 112 アンテナ, 113 接続ケーブル, 131 筐体, 132 基板, 136 同軸ケーブル, 138 筐体, 139 アンテナ素子, 140 基板, 151 地板, 172 給電点, 201 形成材, 202 アンテナ導体, 211,211−1,211−2 ヘリカルパターン, 212−1,212−2,212 ミアンダパターン, 213 容量結合点, 214 接地点, 231 スタブ, 271 容量付加部