JP2007103186A - 有機電解液二次電池の製造方法 - Google Patents

有機電解液二次電池の製造方法 Download PDF

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康弘 鈴木
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Abstract

【課題】リチウムとリチウムの吸蔵放出が可能な金属の合金の周縁部と中心部の合金化反応速度を一定に近づけ、リチウムとリチウムの吸蔵・放出が可能な金属の合金の濃度差を減少させることで、充放電サイクル特性に優れた有機電解液二次電池を得ることを目的とする。
【解決手段】正極とリチウム合金からなる負極とをセパレータを介して対向させ、正極缶と負極缶とにより封口した有機電解液二次電池の製造方法であって、リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属の表面にリチウム金属を対向させ圧着させる工程において、リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属の表面の中央部近傍からリチウム金属と対向しない部分まで連続的に少なくとも2段からなる凹部が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、小型電子機器の主電源、メモリのバックアップ電源などに用いられる有機電解液電池に関するものである。
有機電解液とリチウムとを組み合わせた電池は、エネルギー密度が高く、小型化、軽量化が可能なことから、小型電子機器を駆動する主電源としての使用に加え、近年では各種機器のメモリバックアップ電源として、その需要は年々増加している。特に、近年では、資源の有効利用や環境保護の観点から、充電可能な二次電池の需要が著しく増加している。
リチウムを使用した有機電解液二次電池としては、負極に金属リチウム単体を用いるもの、リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属とリチウムとの合金を用いるもの、黒鉛やピッチなどの炭素材料を用いるものなどが知られている。
一方、負極にリチウムとリチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属との合金を用いた二次電池では、充電時にリチウムイオンがリチウム合金中に電気化学的に吸蔵される。このため、負極表面にリチウムが析出することなく、デンドライトの形成を防止することができる。リチウムと合金化される金属としては、アルミニウム、鉛、ビスマス、インジウム、錫などが知られているが、特にアルミニウムとリチウムとの合金を用いる電池は、充放電サイクルなどの面で優れ、産業上の利用価値も高い。以下、公知の二次電池として、アルミニウムとリチウムとの合金からなる負極を用いた場合について説明する。
図5はリチウムアルミニウム合金を得る前の扁平型リチウム二次電池の断面図を示す。正極端子を兼ねた正極缶1、負極端子を兼ねる負極缶2、負極缶と正極缶を絶縁するガスケット3、正極4、負極を形成するアルミニウム5、負極を形成するリチウム6および正極と負極を絶縁するセパレータ7を有する。
また、図6はリチウムアルミニウム合金を得た後の扁平型リチウム二次電池の断面図を示し、アルミニウム5とリチウム6を合金化させリチウムアルミニウム合金8を形成する。
上述したリチウムアルミニウム合金8は以下の方法により合金化される。まずアルミニウム5を負極缶2の内面に配置し、アルミニウム5の表面にリチウム6を圧着する。これに電解液を注入、正極を組み込んだ正極缶1を嵌合して電池形状に組み立てる。引き続いて、電解液の存在する条件下で、電気化学的にアルミニウム5とリチウム6とを合金化することで、リチウムアルミニウム合金8からなる負極が形成される。
しかしながら、リチウムアルミニウム合金8を負極に用いる二次電池では、充放電に伴い負極に反りが発生し、負極の割れや微粉化が生じて、充放電特性が低下するという問題があった。すなわち、負極のリチウムアルミニウム合金8は、放電によってリチウムが抜け出していくと、リチウムアルミニウム合金8のセパレータ7と対向する側の部分に体積収縮が生じて、該部分が径方向に収縮する。その結果、負極のリチウムアルミニウム合金8に負極缶2側を頂点とする三日月状の反りが発生する。そして、充放電によって、リチウムがリチウムアルミニウム合金8中に吸蔵されると上記の反りが解消されるが、上記のような負極の反りとその解消が充放電によって繰り返されると、負極を構成するリチウムアルミニウム合金8の割れや微粉化が促進され、その割れた部分や微粉化した部分は集電
ができなくなるため、充放電に利用できなくなり、充放電特性が低下する。
そこで、上記のような充放電に伴う負極の反りを防止するため、負極のセパレータ8と対抗する側の面に、幅が深さより狭くなるように設定した溝を設けることが提案されている(特許文献1)。
この特許文献1に記載の溝は、溝部分の反応が生じると、溝の体積変化が生じて負極の膨張収縮を溝の体積で吸収することができなくなり、負極に反りが発生するのを抑制することができなくなるという観点から、溝の部分の反応を防止するという理由で、溝の幅を深さより狭くなるようにしているが、このような幅の方が深さより狭い溝を溝形成用金型の押圧によって負極に形成することは、非常に困難であり、生産性が悪いという問題があった。
そこで、特許文献2では、リチウムアルミニウム合金からなる負極のセパレータと対向する側に、深さが負極の厚みの10%以上で、かつ幅が深さの115〜240%である溝を設けることによって、生産性に優れ、かつ充放電に伴う負極の反りを抑制して、充放電特性の優れたリチウム二次電池を提供することを目的としている。
実開平2−119354号公報 特開平7−320788号公報
しかしながら、上記のように負極にリチウムとリチウムの吸蔵・放出が可能な金属の合金を用いた有機電解液二次電池の合金化反応はリチウムの周縁部から反応するため、リチウムの中心部では反応が進行しにくく、周縁部と中心部ではリチウムとリチウムの吸蔵放出が可能な金属の合金に濃度差が生じることになる。そのため、充放電を繰り返すと、リチウムとリチウムの吸蔵・放出が可能な金属の合金の周縁部の結晶構造が安定せず、微粉化が進行することによって劣化する。この劣化により、リチウムの吸蔵放出能力が低下し、一定以上、充放電サイクルがのびないという課題がある。
したがって、本発明は上記課題を解決するものであって、リチウムとリチウムの吸蔵放出が可能な金属の合金の周縁部と中心部の合金化反応速度を一定に近づけ、リチウムとリチウムの吸蔵・放出が可能な金属の合金の濃度差を減少させることで、充放電サイクル特性に優れた有機電解液二次電池を得ることを目的とするものである。
上記目的を達成するために本発明は、正極とリチウム合金からなる負極とをセパレータを介して対向させ、正極缶と負極缶とにより封口した有機電解液二次電池の製造方法であって、負極缶とリチウムイオンの吸蔵放出可能な金属とを接する工程と、前記リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属の表面にリチウム金属を対向させ圧着させる工程と、電解液を注液する工程と、正極缶と負極缶により封口する工程と、前記リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属と前記リチウム金属とを合金化させリチウム合金を得る工程と、を有し、前記リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属にリチウム金属を対向させ圧着させる工程において、リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属の表面の中央部近傍からリチウム金属と対向しない部分まで連続的に少なくとも2段からなる凹部が設けられていることを特徴とする。
本発明によると、リチウムとリチウムの吸蔵・放出が可能な金属の合金の周縁部と中心部の合金化反応速度を一定に近づけ、リチウムとリチウムの吸蔵・放出が可能な金属の合金の濃度差を減少させることで、充放電サイクル特性に優れた効果を奏するものである。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明は、正極とリチウム合金からなる負極とをセパレータを介して対向させ、正極缶と負極缶とにより封口した有機電解液二次電池の製造方法であって、負極缶とリチウムイオンの吸蔵放出可能な金属とを接する工程と、前記リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属の表面にリチウム金属を対向させ圧着させる工程と、電解液を注液する工程と、正極缶と負極缶により封口する工程と、前記リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属と前記リチウム金属とを合金化させリチウム合金を得る工程と、を有し、前記リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属にリチウム金属を対向させ圧着させる工程において、リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属の表面の中央部近傍からリチウム金属と対向しない部分まで連続的に少なくとも2段からなる凹部が設けられていることを特徴とする
前記リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属にリチウム金属を対向させ圧着させる工程において、まず前記リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属の一方の表面に形成された1段目の凹部に、圧着されたリチウムが力学的に入り込む。この様態では、単に平面で形成された金属を接触させるよりも密着具合が良くなり、合金化反応の途中においてリチウムと前記リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属が剥離して、合金化反応が停止することが少なくなる。従って、合金化されない未反応のリチウムは極めて少なくなり、内部抵抗値および多数の電池を同様の構成で製造した場合の各電池のばらつきは、いずれも小さくなる。
一方、合金化反応は電解液の存在下のもと、リチウムの周縁部から反応するため、リチウムの中心部では反応が進行しにくく、周縁部と中心部ではリチウムと前記リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属の合金に濃度差が生じることになる。そのため、充放電を繰り返すと、リチウムと前記リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属の合金の周縁部の結晶構造が安定せず、微粉化が進行することによって充放電サイクル特性が低下する。また、前記リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属の一方の表面に形成された1段目の凹部加工のみをしている場合では、圧着されたリチウムが力学的に入り込むため、1段目の凹部がリチウムの圧入により空間が減少し、電解液がリチウムの中心部まで浸透せず、周縁部と中心部ではリチウムと前記リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属の合金に濃度差が生じることになり、充放電サイクル特性が低下する。
しかしながら、前記リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属の表面に少なくとも2段からなり中央部近傍からリチウム金属と対向しない部分まで連続的に設けられた凹部が形成される場合は、1段目の凹部に圧着されたリチウムが力学的に入り込んだ状態であっても、その下の2段目の凹部には空間が確保され、リチウムの周縁部から電解液が2段目の空間部に入りこむことが可能となる。これにより、リチウムと前記リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属の周縁部と中心部の合金化反応速度を一定に近づけ、リチウムと前記リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属の濃度差を減少させることで、充放電サイクルを増加することができる。
また、リチウムの吸蔵放出が可能な金属の凹部形状は、中央部から放射状に複数個設けることで、リチウムと前記リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属の周縁部と中心部の合金化反応速度を一定に近づけ、リチウムと前記リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属を減少させることで、充放電サイクルを増加することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施例1)
図1は本発明のリチウムアルミニウム合金を得る工程の前の扁平型リチウム二次電池の断面図である。図1において、正極端子を兼ねた正極缶1は耐食性に優れたステンレス鋼からなる。負極端子を兼ねる負極缶2は、正極缶1と同じく、ステンレス鋼からなる。負極缶と正極缶を絶縁するガスケット3はポリプロピレンからなる。正極4は、本実施例では、五酸化バナジウムと導電材であるカーボンブラック及び結着材であるフッ素樹脂の粉末を混合し、直径3mm、厚み1mmのペレット状に成形した後、250℃中で乾燥した。負極を形成するアルミニウム5は、負極缶2のステンレス鋼とのクラッド材である。
図2は図1の凹部形状の拡大断面図である。負極を形成するアルミニウム5の表面であってリチウム金属6と対向する表面に2段からなり中央部近傍からリチウム金属と対向しない部分まで連続的に設けられた凹部が形成されており、1段目の幅を200μm、1段面目の深さを50μm、2段目の幅を50μm、2段目の深さを25μmの三角形状の凹部を1本形成した。凹部の長さは3.8mmとした。この構成の上面図を図3に示す。
その後、アルミニウム5に直径3.5mmのリチウム6を対抗させ圧着させ、プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンとの等容積混合溶媒に、過塩素酸リチウムを1モル/Lの割合で溶解した電解液を注液し、負極と正極を絶縁するポリプロピレン製不織布からなるセパレータ7を貼り合わせた後、負極缶2と正極缶1により封口した。その後、合金化工程を経ることで、アルミニウム5とリチウム6とを合金化させリチウムアルミニウム合金8を得た。図4はリチウムアルミニウム合金を得る工程の後の扁平型リチウム二次電池の断面図である。
この電池を電池Aとした。
(実施例2)
2段目の幅が50μm、2段目の深さが10μmの2段の凹部を形成した以外は、実施例1と同様に電池を作製した。この電池を電池Bとした。
(実施例3)
2段の凹部を放射状に90度の角度で、2本の凹部を形成した以外は、実施例1と同様に電池を作製した。この電池を電池Cとした。この構成の上面図を図7に示す。
(実施例4)
2段の凹部を放射状に45度の角度で、4本の凹部を形成した以外は、実施例1と同様に電池を作製した。この電池を電池Dとした。この構成の上面図を図8に示す。
(実施例5)
2段の凹部を放射状に15度の角度で、8本の凹部を形成した以外は、実施例1と同様に電池を作製した。この電池を電池Eとした。この構成の上面図を図9に示す。
(比較例1)
2段目の幅50μm、2段目の深さが10μmの2段の凹部の直径が3.5mmの2段の凹部を形成した以外は、実施例1と同様に電池を作製した。この電池を電池Fとした。
(比較例2)
1段の三角形状の凹部のみを有し、直径が3.5mmの凹部を形成した以外は、実施例1と同様に電池を作製した。この電池を電池Gとした。
なお、いずれの電池も設計上、直径6.8mm、厚さ2.1mmであり、かつ放電電圧は3V〜2.5Vであり、容量は1.5mAhである。
これらの電池A〜Gを各100個ずつ組立、常温で1週間保存した後、30kΩの定負荷で電池電圧が2.5Vになるまで放電し、3.4Vの定電圧で充電する充放電サイクルを繰り返した。充電時の電流を制限するために、2kΩの抵抗を充電回路に組みこんだ。そして、放電容量が1サイクル目の容量の50%に劣化するまでの回数を測定し、その結果を表1に示した。
Figure 2007103186
電池Gと比べ、電池A、Bは充放電サイクル数が多くなっている。2段目の加工により、電解液が凹部にもまわり、リチウムアルミニウム合金の周縁部と中心部の合金化反応速度を一定に近づけ、リチウムアルミニウム合金の濃度差を減少させることで、充放電サイクルが延びたことがわかる。また、電池Fにおいては、2段の凹部を有するにも関わらず、溝の直径がリチウムの直径と同じなので、2段目に電解液が浸透せず、充放電サイクル数にほとんど変化がないことがわかる。
電池Aと比べ、電池C、D、Eと凹部の本数が多くなるほど、充放電サイクル数が増加している。凹部の本数が増加することにより、リチウムアルミニウム合金の周縁部と中心部の合金化反応速度を一定に近づけ、リチウムアルミニウム合金の濃度差を減少させることで、充放電サイクルが延びたことがわかる。ただし、凹部の本数が多くなると、加工が困難になるので、凹部の本数は4本程度が望ましい。
このように凹部の形状は、2段の形状で、かつリチウムの直径より大きい凹部を有する形状であれば、凹部の深さ、幅等の寸法に関しても2段の加工を有していれば使用可能である。
また、上記の実施例では、負極材料としてアルミニウムを用いたが、鉛、ビスマス、インジウム、錫等のリチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属にも同様に適用できる。
さらに、上記の実施例では、正極材料として五酸化バナジウムを用いたが、これ以外に二硫化チタン、二硫化モリブデン、三酸化モリブデン、二酸化マンガン、リチウム複合酸化物、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアセン等の二次電池用の正極材料にも同様に適用できる。
以上の説明から明らかなように、リチウムイオンの吸蔵放出が可能な金属の表面であってリチウム金属と対向する表面に、少なくとも2段からなり中央部近傍からリチウム金属と対向しない部分まで連続的に設けられた凹部が形成されていることにより充放電サイクルに優れた有機電解液二次電池を得ることができる。
本発明の一実施例における扁平型電池の合金化工程前の断面図 本発明の一実施例における扁平型電池の合金化工程前の拡大断面図 本発明の一実施例における扁平型電池の上面図 本発明の一実施例における扁平型電池の合金化工程後の断面図 一比較例における扁平型電池の合金化工程前の断面図 一比較例における扁平型電池の合金化工程後の断面図 本発明の一実施例における扁平型電池の上面図 本発明の一実施例における扁平型電池の上面図 本発明の一実施例における扁平型電池の上面図
符号の説明
1 正極缶
2 負極缶
3 ガスケット
4 正極
5 アルミニウム
6 リチウム
7 セパレータ
8 リチウムアルミニウム合金

Claims (2)

  1. 正極とリチウム合金からなる負極とをセパレータを介して対向させ、正極缶と負極缶とにより封口した有機電解液二次電池の製造方法であって、
    負極缶とリチウムイオンの吸蔵放出可能な金属とを接する工程と、
    前記リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属の表面にリチウム金属を対向させ圧着させる工程と、
    電解液を注液する工程と、
    正極缶と負極缶により封口する工程と、
    前記リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属と前記リチウム金属とを合金化させリチウム合金を得る工程と、を有し、
    前記リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属にリチウム金属を対向させ圧着させる工程において、リチウムイオンの吸蔵放出可能な金属の表面の中央部近傍からリチウム金属と対向しない部分まで連続的に少なくとも2段からなる凹部が設けられていることを特徴とする有機電解液二次電池の製造方法。
  2. 前記凹部がリチウムの吸蔵放出可能な金属の中央部から放射状に複数個設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有機電解液二次電池の製造方法。
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