JP2007100100A - 熱硬化性粉体塗料組成物 - Google Patents

熱硬化性粉体塗料組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】耐衝撃性、耐候性及び外観特性に優れ、特に車両塗装用途に好適な粉体塗料組成物を提供する。
【解決手段】アクリル系共重合体を含む連続相(海相)と、熱可塑性エラストマー(a-2)を含む分散相(島相)から成る海島型ミクロ相分離構造を有する樹脂組成物(A)及び硬化剤(B)を含有し、熱可塑性エラストマー(a-2)は芳香族ビニル炭化水素を重合して成るハードセグメントS及び共役ジエンを重合して成るソフトセグメントBから構成されるS-B-S型3元ブロック共重合体の水素添加物であるスチレン系熱可塑性エラストマー(a-2-1a)を主鎖とした熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a-2-2a)であり、熱可塑性エラストマー(a-2)の量は樹脂組成物(A)100重量部に対し0.5〜20重量部である熱硬化性粉体塗料組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱硬化性粉体塗料組成物に関し、さらに詳細には、優れた塗膜特性(耐衝撃性、耐チッピング性、密着性、耐候性等)、及び、塗膜外観を有し、特に車両塗装用途に好適な焼付塗膜を与えることのできる熱硬化性粉体塗料組成物に関する。
[エコロジー等の観点からの塗料の技術分野における研究開発動向と粉体塗料への期待]
従来、物の塗装には溶剤型の塗料が使用され、自動車用などの厳しい品質が要求される分野に使用するために、種々の要求を満足させる塗料が開発され、使用されてきた。また近年、塗料の技術分野において、ローカル又はグローバルな環境保全、労働安全衛生環境改善、火災や爆発の予防、省資源等の観点から、溶剤型塗料にかわって、粉体型塗料(以下「粉体塗料」という。)への変更が期待されてきた。
そして、歴史的又は社会的要請により、粉体塗料の高機能化・多様化への期待が大きくなるに従い、粉体塗料にも、溶剤型塗料に匹敵する高度な塗膜性能(例えば、耐衝撃性、耐酸性雨性等)が要求されるようになってきた。
しかしながら、粉体塗料に要求される塗膜性能が厳しくなってきたにもかかわらず、必ずしも、このような要求を完全に満足する粉体塗料が上市されてきたとはいえない。
[粉体塗料一般の技術的背景]
従来の粉体塗料の具体例としては、例えば、ビスフェノ−ルAを主体とするエポキシ樹脂及びポリエステル樹脂粉体塗料が挙げられる。しかしながら、これらは耐候性に問題があるばかりでなく、最近特に問題となってきた酸性雨に対する耐性にも問題があり、自動車車体塗装等の屋外での使用を前提とした用途において問題があった。
その欠点を改良すべく、特許文献1(特公昭48−38617号公報)においてアクリル系粉体塗料が提案され、顕著な耐候性の改善が実現した。しかしながら、耐衝撃性、耐チッピング性の観点からは、このアクリル系粉体塗料も、従来のポリエステル系粉体塗料と比較して劣っていた。すなわち、耐候性、耐衝撃性及び耐チッピング性を同時に満足する粉体型塗料が、必ずしも上市されているとはいえなかった。
このように、耐候性及び耐衝撃性を同時に満足する粉体塗料が市場から要望され、このような塗料を上市すべく研究開発も精力的にすすめられてきた。
[アクリル系粉体塗料塗膜の耐衝撃性の改良に関する技術的背景]
アクリル系粉体塗料に関する開発経緯の中、例えば、特許文献2(特開平5−112743号公報)に、二塩基酸等を混合することにより、また例えば、特許文献3(特開昭63−165463号公報)に、アルキルチタネートを混合する事により、それぞれ、低温硬化性やリコート性の改善を図る技術が開示された。しかし、いずれも、耐衝撃性は二次的な効果にとして挙げているに過ぎず、その効果は必ずしも充分なものではなかった。以下、特許文献2、特許文献3について説明する。
(1)特許文献2(特開平5−112743号公報)
ここには、硬化性に優れた粉末形の被覆組成物を得る技術が開示されている。すなわち、(A)グリシジル基を含有する共重合体、(B)脂肪族又は脂環式二塩基酸、その無水物又は二塩基酸のポリオール変性無水物、及び、(C)場合により顔料及び他の添加剤、を含む粉末形の被覆組成物が開示されている。この共重合体(A)は、1,000〜10,000の数平均分子量(Mn)及び30〜90℃のガラス転移温度を有し、(a)少なくとも20重量%のグリシジルアクリレート又はグリシジルメタアクリレート、(b)35〜50重量%のスチレン、(c)10〜45重量%の脂肪族不飽和モノカルボン酸又はジカルボン酸の1又は多数のアルキルエステル、及び、(d)0〜50重量%の不飽和な一又は多数の他のオレフィン単量体、から得られる共重合体である。
(2)特許文献3(特開昭63−165463号公報)
ここには、特定のグリシジル基官能性アクリル樹脂、脂肪族二塩基酸(無水物)及びアルキルチタネート化合物を主成分とする、低温で溶融、硬化し、しかも、硬度、耐衝撃性、耐屈曲性等に優れた塗膜を与える熱硬化性アクリル粉体塗料組成物が開示されている。すなわち、(A)(メタ)アクリル酸の炭素原子数1〜14のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸のグリシジルエステルとを主成分として共重合させて得られるグリシジル基官能性アクリル樹脂、(B)脂肪族二塩基酸(好ましくはアジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ムコン酸等)もしくはその酸無水物、及び、(C)Ti(OR)4(Rは、炭素原子数15〜20のアルキル基)で示されるアルキルチタネート化合物(例えばテトラペンタデシルチタネート)を主成分とする熱硬化性アクリル樹脂粉体塗料組成物が開示されている。
本発明者らは、例えば自動車等の車両のボディーやシャシー表面のように、走行中に砂利や小石が大きな相対速度で衝突し、又、遮蔽物のない屋外で太陽光線や厳しい気象条件に暴露される塗膜について鋭意検討を重ねた結果、この技術の最も好ましい態様(ベスト・モード)では、耐衝撃性については優れるものの、耐チッピング性については劣り、さらには、塗膜外観又は塗膜の耐候性が劣ることを確認した。すなわち、この粉体塗料組成物は、上記のような用途には必ずしも適していない。
[熱可塑性エラストマーを含有する塗料塗膜の耐衝撃性の改良に関する技術的背景]
熱可塑性エラストマーを含有する塗料塗膜の耐衝撃性の改良については、例えば、以下のような技術が特許文献4〜特許文献7に開示されている。しかしながら、これらの技術を熱硬化性粉体塗料組成物やアクリル系熱硬化性粉体塗料組成物に応用することは困難である。
(1)特許文献4(特公平4−74367号公報)及び特許文献5(特公平7−17721号公報)
ここには、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物、又は、マレイン酸又はその酸無水物でグラフト変性されたスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(A)を溶解した不活性溶媒中で、炭素原子数1〜8のアルキル基又はシクロヘキシル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを50重量%以上含有するビニル単量体(B)を重合して得られる塗料用樹脂組成物〔重量比(A/B)=2/8〜7/3〕が開示されている。この塗料用樹脂組成物は、耐候性に優れ、金属やプラスチックの被着に好適とされている。
しかし、ここには、この塗料用樹脂組成物を熱硬化性粉体塗料に応用する開示や示唆は一切ない。また、実際にここに開示されているような組成比で熱可塑性エラストマー成分を使用し、熱硬化性粉体塗料に応用しようとしても、被混練物の常温粉砕が困難になること、粉体塗料の耐ブロッキング性が劣ること、塗膜の外観や耐候性が損なわれるなどの問題が生じる。
(2)特許文献6(特公平4−55630号公報)
ここには、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、又は、その水素添加物に、α,β−不飽和カルボン酸、又は、その無水物をグラフト重合して得られた樹脂(A)と、アミノ樹脂、重合性不飽和基含有化合物、カルボキシル基・水酸基・アミノ基・メチロール基含有アクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、及び、ブロック化イソシアネート化合物からなる群から選択された少なくとも一種からなる架橋剤(B)と、エポキシ化合物(C)とを必須成分とし、固形分重量比で、A/B=99/1〜60/40、かつ、(A+B)/C=100/1〜100/50としたプライマー組成物が開示されている。
しかし、ここにはこのプライマー組成物を熱硬化性粉体塗料に応用する開示や示唆は一切ないし、また、実際にここに開示されているような組成比で熱可塑性エラストマー成分を使用し、熱硬化性粉体塗料に応用しようとしても、前記技術(1)と同様な問題が生じる。さらに、このような水素添加されていないスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を、例えば自動車等の車両のボディーや自動車部品の上塗り塗料のように遮蔽物のない屋外で太陽光線や厳しい気象条件に暴露されるような用途に使用した場合、塗膜の耐候性が極めて劣る。その理由の一つとして、例えば、紫外線による不飽和二重結合への攻撃が考えられる。
(3)特許文献7(特開昭62−236869号公報)
ここには、(A)共重合ポリエステル100重量部に対して、(B)共役ジエンの水添重合体、又は、共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素の水添共重合体に対し0.01〜10重量%の不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフトして得た変性オレフィン系重合体0.5〜30重量部、を混合した樹脂組成物からなる熱可塑性粉体塗料用ポリエステル組成物が開示されている。ここで、「水添」とは、水素添加、不飽和二重結合に水素原子を付加する概念を包含する。このポリエステル組成物は、良好な接着性、耐衝撃性、耐ヒートサイクル性を有するとされている。
しかしながら、このポリエステル組成物は、耐衝撃性、耐チッピング性については優れているものの、耐候性が必ずしも充分ではなく、熱可塑性粉体塗料であるために、耐熱性や耐溶剤性の側面から、その用途が制限されることが予想される。用途が制限されることが予想される具体例としては、自動車等の車両のボディーやシャシー表面が挙げられる。この用途では、遮蔽物のない屋外で太陽光線や厳しい気象条件に暴露され、車両走行中に砂利や小石が大きな相対速度で衝突するので、塗膜に、例えば、硬度、耐ガソリン性、耐候性、耐チッピング性等が要求されるからである。
[耐チッピング性]
本出願において用いる「チッピング」なる語の概念は、ピンポイントに短時間で荷重を負荷したの際の衝撃破壊の現象を包含し、特に自動車塗料の技術分野においては、飛来してくる小石と衝突した際に自動車車体塗膜が被る傷付きの現象をも包含する。「耐チッピング性」なる語の概念は、「チッピング」に対する塗膜の抵抗性を包含する。
耐チッピング性の評価方法の具体例としては、例えば、米国で採用されている、自動車用塗膜の試験法SAE−J400、ASTM D−370に従ったグラベロメーターによるグラベロショット試験が挙げられる。この評価法では、所定粒度の小石を、所定の力で、所定温度で冷却された塗膜に衝突させて、それにより生じた塗膜傷直径を評価することにより判定される。
[耐衝撃性]
本出願において用いる「耐衝撃性」なる語の概念は、広い面積に短時間で荷重を負荷した際の衝撃破壊の現象を包含し、特に自動車塗料の技術分野においては、大きな物と衝突した際に自動車車体塗膜が被る傷付きの現象をも包含する。
耐衝撃性の評価方法の具体例としては、例えば、耐衝撃性試験(デュポン式衝撃性試験)JIS K5400 6.13.3に従ったものが挙げられる。この評価法では、おもり(500g又は1kgの2種類)を塗膜に落下した際に、塗膜に割れやはがれが発生する落下高さを評価することにより判定される。
[耐衝撃性と耐チッピング性との相関関係]
従来、粉体塗料の技術分野においては、塗膜の耐衝撃性と耐チッピング性の概念の違いがほとんど認識されず、また、塗膜の耐衝撃性が重視されることはあったが、塗膜の耐チッピング性の重要性については、ほとんど注意されることがなかった。
すなわち、塗膜の耐衝撃性について評価しても、塗膜の耐チッピング性について評価することはほとんどなかった。また、耐衝撃性に優れることが、必ずしも耐チッピング性の十分条件になるとはいえなかった。
特公昭48−38617号公報 特開平5−112743号公報 特開昭63−165463号公報 特公平4−74367号公報 特公平7−17721号公報 特公平4−55630号公報 特開昭62−236869号公報
本発明者らは、これらの技術的背景に立脚し、また、先に述べた各従来技術において、耐衝撃性向上を目的とすることはあったが、耐チッピング性向上を目的とすることが殆どなかったことに着目し、粉体塗料により形成した塗膜に、耐衝撃性のみならず耐チッピング性をも付与することを新たな目的とした。
すなわち、本発明の目的は、エポキシ樹脂粉体塗料やポリエステル粉体塗料により形成される塗膜の欠点である耐候性を改善し、かつ、ポリエステル粉体塗料により形成される塗膜に匹敵する優れた耐衝撃性を有し、さらには、従来ほとんど当業者により注目されなかった耐チッピング性についても優れた塗膜を形成できる熱硬化性粉体塗料組成物を提供することにある。
このような目的の下、本発明者らは、「ポリマーアロイ」の分野におけるミクロ相分離構造によるタフニング機構の概念を、粉体塗料の技術分野に応用し、塗膜に耐衝撃性と耐チッピング性を同時に付与するという、全く新規な技術的思想に基づき鋭意検討を進めた。その結果、本発明者らは、アクリル系共重合体成分中に、不飽和二重結合を有さない熱可塑性エラストマーを特定の割合で均一分散させるという新しい試みにより、上記目的が達成できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記目的は、
樹脂組成物(A)と硬化剤(B)を含有してなる熱硬化性粉体塗料組成物であって、
樹脂組成物(A)は、アクリル系共重合体(a−1)を含有する連続相と、熱可塑性エラストマー(a−2)を含有する分散相とから構成される海島型ミクロ相分離構造を有し、
連続相を構成するアクリル系共重合体(a−1)は、分子内に硬化剤(B)に対して反応性のある官能基を有さず、且つ、ラジカル重合性ビニル基を少なくとも1つ有するビニル単量体(a−1−1)40〜99重量%、及び、分子内に硬化剤(B)に対して反応性のある官能基を有し、且つ、ラジカル重合性ビニル基を少なくとも1つ有するビニル単量体(a−1−2)60〜1重量%を重合して成るものであり、
分散相を構成する熱可塑性エラストマー(a−2)は、主鎖に不飽和二重結合を有さない共重合体であって、芳香族ビニル炭化水素を重合して成るハードセグメントS、及び、共役ジエンを重合して成るソフトセグメントBから構成されるS−B−S型3元ブロック共重合体の水素添加物から構成されるスチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)を主鎖とした熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)であり、
分散相を構成する熱可塑性エラストマー(a−2)の合計量は、樹脂組成物(A)100重量部を基準として、0.5〜20重量部である熱硬化性粉体塗料組成物により達成される。
従来技術とは対照的に、本発明の熱硬化性粉体塗料組成物は、主鎖に不飽和二重結合を有さない熱可塑性エラストマーを分散相(島)として、連続相(海)であるアクリル系共重合体成分中に均一に特定量で分散させ、適宜選択した硬化剤と組み合わせることにより得られる。このような構造は、硬化塗膜全体に優れた耐衝撃性及び耐チッピング性を付与する。
本発明と、特許文献6(特公平4−55630号公報)に記載の発明とは、次の各点で異なっている。特許文献6に開示されるプライマー組成物は、自動車車体塗装の用途に使用するものである点で、本発明の粉体塗料組成物と共通する。しかし、本発明の粉体塗料組成物が、厳しい塗膜性能が要求される「上塗り塗装」に使用する場合も好適であるのとは対照的に、特許文献6に開示されるプライマー組成物は、厳しい塗膜性能が要求されないプライマー(例えば、中塗り塗装用塗料、下地塗装用塗料、下塗り塗装用塗料、サビ止め塗装用塗料等)に使用するものである点で明確に異なる。すなわち、本発明の粉体塗料組成物は、特許文献6に開示されるプライマー組成物よりも、より厳しい水準を達成しようとするものである。
また両者は、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の誘導体、すなわち熱可塑性エラストマー(a−2)の組成比(重量%)が異なる。本発明においては、熱可塑性エラストマー(a−2)の合計量を、樹脂組成物(A)100重量部を基準として0.5〜20重量部という低い範囲に抑制している。これにより、塗膜を形成した際に優れた耐候性等の塗膜性能を達成することができるのである。
また両者は、塗料の形態において異なる。特許文献6においては、塗料形態として、溶剤型塗料(塗料用樹脂、硬化剤等を有機溶剤に溶解し、塗装後に、有機溶剤を揮発せしめることにより塗膜を形成するタイプの塗料)のみが開示されており、熱硬化性粉体塗料用樹脂として使用するといった開示や示唆は一切ない。通常、溶剤型塗料と粉体型塗料(熱硬化性粉体塗料)は、塗膜形成メカニズムが全く異なるので、塗料組成物を構成する樹脂成分の分子的性質(例えば、重合の際の単量体の処方、重合後の分子量や分子量分布、分子内の反応性官能基の種類や量、融点やガラス転移点等の熱的性質)と組成比や、硬化剤成分の種類と組成比は、大幅に異なる。
本発明の粉体塗料組成物は、エポキシ樹脂粉体塗料やポリエステル粉体塗料により形成される塗膜の欠点である耐候性を改善し、かつ、ポリエステル粉体塗料により形成される塗膜に匹敵する優れた耐衝撃性を有し、さらには、従来ほとんど当業者により注目されなかった耐チッピング性についても優れる。
本発明の粉体塗料組成物により形成される塗膜は、優れた耐候性、耐チッピング性、耐衝撃性、外観特性を同時に実現できるので、例えば、自動車等の車両の車体等の塗装用途に好適である。特に、自動車等の車両のボディーやシャシー表面のように、走行中に砂利や小石が大きな相対速度で衝突し、又、遮蔽物のない屋外で太陽光線や厳しい気象条件に暴露される塗膜にきわめて好適に応用できる。具体的には、自動車等の車両の車体、及び、自動車等の車両の部品(アルミホイール、ワイパー、ピラー、ドアハンドル、フェンダー、ボンネット、エアスポイラー、スタビライザー、フロントグリル等)の塗装−特に、中塗り及び上塗り塗装−に好適に適用される。
上記各用途の上塗り塗装に使用した際、形成される塗膜の、(1)外観特性(平滑性、鮮映性等)、(2)物理特性(耐衝撃性、耐チッピング性、密着性等)、(3)化学特性(耐酸性、耐酸性雨、耐溶剤性等)、(4)耐候性や耐紫外線性、に関し、品質管理における厳しい品質要求に対し、粉体塗料であるにもかかわらず、溶剤型塗料と比較して、同等以上に、充分に応えることができる。また、その中塗り塗装に使用した際にも同様の良好な効果が得られる。また、上記各用途の下塗り塗料(例えば、水性下塗り塗料等)により形成された下塗り塗膜の上に、その中塗り及び/又は上塗り塗装し、焼き付けた際にも同様の良好な効果が得られる。
[熱可塑性エラストマー(a−2)]
本発明で用いる熱可塑性エラストマー(a−2)の主鎖は、不飽和二重結合を有さず、ポリオレフィン鎖を分子内に少なくとも50重量%以上含有する、ポリオレフィンが主体のものであることが好ましい。主鎖が不飽和二重結合を有さない場合は、塗膜の耐候性が向上する。この熱可塑性エラストマー(a−2)は、スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)を主鎖とした熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)である。
[スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)]
スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)は、主鎖に不飽和二重結合を有さない共重合体であって、芳香族ビニル炭化水素を重合して成るハードセグメントS、及び、共役ジエンを重合して成るソフトセグメントBから構成されるS−B−S型3元ブロック共重合体の水素添加物から構成される。
本願の請求の範囲及び明細書において用いる「スチレン系熱可塑性エラストマー」なる語の概念は、例えば、「実用プラスチック事典第2刷」(実用プラスチック事典 編集委員会編、産業調査会刊、1994年)に記載されているスチレン系の熱可塑性エラストマーに関する概念一般(例えば、該書・186〜187頁に記載されている一般概念)も包含する。その記載は全て、引用文献及び引用範囲を明示したことにより本明細書の開示の一部とし、明示した引用範囲を参照する事により、本明細書に記載した事項又は開示からみて、当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項又は開示とする。
スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)の好ましい例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の製造法は従来より知られており、その典型的な方法は米国特許3,265,765号に開示されている。このブロック共重合体の分子内の不飽和二重結合に水素原子を付加する、いわゆる水素添加によって、熱安定性の向上したエラストマーを得ることができる。このような水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマーの製造法は、例えば特公昭42−8704号、特公昭43−6636号、特公昭45−20504号、特公昭48−3555号等に記載されている。かかる水素添加物は、例えば、Shell Chemical Companyより“Kraton G”のグレード名で、例えば#1652のコード名で販売されている。
スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)中のジエン系重合体部分のオレフィン性不飽和結合の水添率は、塗膜の耐候性等の点から、90%以上が好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)中のジエン系重合体ブロックは、例えば、ブタジエン及び/又はイソプレンを主体とする共重合体ブロックであって、他の共役ジエン類やプロピレン等のα−オレフィン類がランダムに共重合していてもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)中の共役ジエン成分と芳香族ビニル炭化水素成分の共重合比(重量比)は、50/50〜80/20が好ましい。共重合比を上記範囲内にすると、アクリル系共重合体(a−1)との相溶性がさらに良好となる。
[スチレン系熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)]
スチレン熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)は、上述したスチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)を主鎖とした熱可塑性エラストマーのグラフト化物である。
スチレン系熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)を用いると、ビニル単量体(a−1−2)や硬化剤(B)との架橋反応を可能ならしめたり、硬化剤(B)との相溶化に寄与し、塗膜外観、塗膜の耐衝撃性や耐溶剤性等がさらに向上する。
スチレン系熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)としては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)の主鎖の水添部分に、アクリル系共重合体(a−1)を得る為に反応系に加えたビニル単量体(a−1−1)やビニル単量体(a−1−2)、または他のビニル単量体がグラフト重合して得られるグラフト化物であってもよいし、スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)の側鎖としてα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物等の反応性官能基を含む化合物をまず導入して、これをアクリル系重合体(a−1)の官能基と結合させ、あるいはビニル単量体をグラフト重合させて得られるグラフト化物であってもよい。
例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーのビニル単量体グラフト化物の好ましい例としては、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性されたスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性されたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。これらはスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及び/又はスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のジエン系重合体部分を水素添加し、さらに、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性することにより得られる。このようなグラフト化物は、例えば、特開昭61−192743号に記載されている。
グラフト変性に用いるα,β−不飽和カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。マレイン酸、フマル酸等の多塩基酸であるときは、そのハーフアルキルエステルであってもよい。
α,β−不飽和カルボン酸又はその酸無水物の量(変性量)は、0.1〜10重量%が好ましい。この変性量が10重量%以下であると、樹脂組成物(A)の製造時にゲル物が生じ難く、塗膜の外観劣化を防止できる。特に、グラフトさせる成分にエポキシ基及び/又はグリシジル基を有するビニル単量体を使用する場合、変性量を上記範囲とすることが特に好ましい。また、この変性量は0.1〜5重量%がより好ましい。
グラフト変性には、α,β−不飽和カルボン酸又はその酸無水物の代わりに、他のビニル単量体を用いてもよい。その具体例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、及びこれらのメタクリレート相当物、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルブチルマレエート等のヒドロキシル基含有ビニル単量体;グリシジルメタクリレ−ト、グリシジルアクリレ−ト、β−メチルグリシジルメタクリレ−ト、β−メチルグリシジルアクリレ−ト、アクリルグリシジルエ−テル等のグリシジル基含有ビニル単量体;が挙げられる。
グラフト変性法としては、例えば、熱可塑性エラストマーと上記ビニル単量体をラジカル重合開始剤と共に押し出し機内で反応させる方法や、熱可塑性エラストマーを、ラジカル重合開始剤を溶解したトルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒中に分散させ、これに上記のビニル単量体とラジカル重合開始剤を供給し、加熱してラジカル反応させる方法がある。なお、ここでいうグラフト反応とは、上記のビニル単量体がスチレン系熱可塑性エラストマーと化学的に結合することを意味する。
グラフト変性に用いるラジカル重合開始剤の具体例としては、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などが挙げられる。
[熱可塑性エラストマー(a−2)の重量平均分子量]
熱可塑性エラストマー(a−2)の重量平均分子量は、2,000〜400,000が好ましく、10,000〜200,000がより好ましい。この重量平均分子量が上記範囲であると、塗膜の耐チッピング性が良好で、且つ、塗膜の平滑性が損なわれない。この重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
[熱可塑性エラストマー(a−2)の使用量]
分散相(島相)を構成する熱可塑性エラストマー(a−2)の使用量は、粉体塗料用樹脂成分(A)100重量部を基準として、0.5〜20重量部である。この使用量が0.5重量部未満では耐チッピング性の改良が不十分であり、20重量部を越えると連続相(海相)であるアクリル系共重合体(a−1)中への分散が不十分となり、塗膜の平滑性や耐候性、粉体塗料の耐ブロッキング性が損なわれる傾向にある。この使用量は0.5〜15重量部であることが好ましい。
熱可塑性エラストマー(a−2)の使用量0.5〜20重量部は、グラフト部分も含む。熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)は、特定の溶媒によりアクリル系重合体(a−1)と分離可能であり、これにより組成比(使用量)を確認できる。
[アクリル系共重合体(a−1)]
アクリル系共重合体(a−1)は、分子内に硬化剤(B)に対して反応性のある官能基を有さず、且つ、ラジカル重合性ビニル基を少なくとも1つ有するビニル単量体(a−1−1)40〜99重量%、及び、分子内に硬化剤(B)に対して反応性のある官能基を有し、且つ、ラジカル重合性ビニル基を少なくとも1つ有するビニル単量体(a−1−2)60〜1重量%を重合して成る。
このアクリル系共重合体(a−1)は、後に詳述する硬化剤(B)と共に、例えば自動車等の車両のボディーやシャシー表面のように、優れた外観(平滑性、鮮映性等)が要求され、走行中に砂利や小石が大きな相対速度で衝突し、又、遮蔽物のない屋外で太陽光線や厳しい気象条件に暴露される用途において、優れた外観、耐候性、塗膜特性(耐衝撃性、耐酸性等)を発揮することに大きく寄与する。
[ビニル単量体(a−1−1)]
ビニル単量体(a−1−1)は、分子内に硬化剤(B)に対して反応性のある官能基を有さず、且つ、ラジカル重合性ビニル基を少なくとも1つ有する単量体であれば、特に制限されない。このビニル単量体(a−1−1)は、得られる塗膜の耐候性の向上、基剤への密着性、硬度に寄与すると考えられる。
ビニル単量体(a−1−1)としては、炭素原子数1〜14のアルキル基及び/又はシクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを、ビニル単量体(a−1−1)100重量%中に50重量%〜100重量%使用することが好ましい。その具体例として、メチル−、エチル−、n−プロピル−、n−ブチル−、イソブチル−、n−アミル−、イソアミル−、n−ヘキシル−、シクロヘキシル−、2−エチルヘキシル−、オクチル−、2−エチルオクチル−、デシル−、ドデシル−、シクロヘキシル−、イソボルニル−等の基を有する(メタ)アクリル酸又はその誘導体等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
炭素原子数1〜14のアルキル基及び/又はシクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの使用量を50重量%以上にすると、得られる塗膜の耐候性、塗膜の着色防止の点でより優れた結果が得られる。
また、ビニル単量体(a−1−1)の他の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル類、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸のエステル類、ふっ化ビニル、モノクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロプレン等のハロゲン化エチレン系不飽和単量体類、アクリロニトリル、メタアクリロニトルなどのニトリル類、ラウリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン、4−ビニルピロリドン等の含窒素ビニル類、ビニルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート等の水酸基含有ビニル単量体類等のエチレン系不飽和単量体類を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
[ビニル単量体(a−1−2)]
ビニル単量体(a−1−2)は、分子内に硬化剤(B)に対して反応性のある官能基を有し、且つ、ラジカル重合性ビニル基を少なくとも1つ有する単量体であれば特に制限されない。硬化剤(B)に対して反応性のある官能基としては、例えば、グリシジル基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基等の非ラジカル重合性の官能基を挙げることができる。
ビニル単量体(a−1−2)としては、分子内に少なくとも1つのエポキシ基及び/又はグリシジル基を有し、且つ、少なくとも1つのラジカル重合性ビニル基を分子内に有するビニル単量体が好ましい。その具体例としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレ−ト、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレ−ト、アクリルグリシジルエ−テル等が挙げられる。グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
ビニル単量体(a−1−2)の他の具体例としては、例えば、サイクロマーM100、サイクロマーM101、サイクロマーA−200(以上、ダイセル石油化学工業株式会社製、商品名)等の脂環型エポキシ基を有する単量体等が挙げられる。これらビニル単量体(a−1−2)は単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
[ビニル単量体(a−1−1)及び(a−1−2)の使用量]
ビニル単量体(a−1−1)(例えば、(メタ)アクリル系モノマー)の使用量は、アクリル系共重合体(a−1)の全量に対し40〜99重量%であり、60〜99重量%が好ましく、80〜99重量%がより好ましい。
[誘導体]
本願において用いる「誘導体」なる語の概念には、特定の化合物の水素原子が、他の原子あるいは原子団Rによって置換されたものを包含する。ここでRは、少なくとも1個の炭素原子を含む1価の炭化水素基であり、より具体的には、脂肪族、実質的に芳香族度の低い脂環族、これらを組み合わせた基、又はこれらが水酸基、カルボキシル基、アミノ基、窒素、硫黄、けい素、りんなどで結合されるような2価の残基であってもよく、これらのうち特に、狭義の脂肪族系の構造のものが好ましい。Rは、上記のものに、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アルコキシル基、シクロアルコキシル基、アリルオキシル基、ハロゲン(F、Cl、Br等)基等が置換した基であってもよい。
これらの置換基を適宜選択することにより、本発明に係る粉体塗料組成物により形成される塗膜の諸特性を制御することができる。
[ガラス転移点]
粉体塗料組成物の貯蔵安定性、粉体塗料焼付時に塗料組成物流動性低下に起因する塗膜平滑性等を考慮して、アクリル系共重合体(a−1)のガラス転移点計算値(Tg)が、30〜120℃(好ましくは40〜110℃)になるように、ビニル単量体(a−1−1)及び(a−1−2)を選択することが望ましい。ここで、ガラス転移点計算値は、ビニル単量体(a−1−1)及び(a−1−2)のみを共重合させた場合の計算値をいう。
[ガラス転移点計算値 ヘテロポリマーのガラス転移点(Tg)の評価]
特定の単量体組成を有する重合体のガラス転移点(Tg)は、フォックス(Fox)の式により計算により求めることができる。ここで、フォックスの式とは共重合体を形成する個々の単量体について、その単量体の単独重合体のTgに基づいて、共重合体のTgを算出するためのものであり、その詳細は、ブルテン・オブ・ザ・アメリカン・フィジカル・ソサエティー, シリーズ2(Bulletin of the American Physical Society, Series 2)1巻・3号・123頁(1956年)に記載されている。
フォックスの式による共重合体のTgを評価するための基礎となる各種エチレン性不飽和単量体についてのTgは、例えば、新高分子文庫・第7巻・塗料用合成樹脂入門(北岡協三著、高分子刊行会、京都、1974年)168〜169頁の表10−2(塗料用アクリル樹脂の主な原料単量体)に記載されている数値を採用することができる。
それら記載は全て、引用文献及び引用範囲を明示したことにより本出願明細書の開示の一部とし、明示した引用範囲を参照することにより、本出願明細書に記載した事項又は開示からみて、当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項又は開示とする。
[アクリル系共重合体(a−1)の数平均分子量]
アクリル系共重合体(a−1)の数平均分子量は、約1,000〜約20,000の範囲が好ましく、約2,000〜約10,000の範囲がより好ましい。この数平均分子量が約1,000以上であると、一般的には、塗料組成物の貯蔵安定性が良好になる。この数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として評価することができる。
アクリル系共重合体(a−1)の分子量を調整する方法としては、例えばドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、ジベンゾイルスルフィドなどのジスルフィド類、チオグリコール酸2−エチルヘキシルなどのチオグリコール酸の炭素原子数1〜18のアルキルエステル類、四臭化尿素などのハロゲン化炭化水素類の連鎖移動剤、イソプロピルアルコール、イソプロピルベンゼン、トルエン等の連鎖移動効果の大なる有機溶剤の存在下に重合する等の手段を用いることができる。
[アクリル系共重合体(a−1)の合成法]
アクリル系共重合体(a−1)の合成法は、実質的に所望の特性を有するものが得られるのであれば、特に限定されないが、ラジカル溶液重合法が好適に用いられる。
[ラジカル重合開始剤]
ラジカル重合を行う際に使用する、ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾニトリル等を挙げることができる。有機過酸化物には、アルキルパーオキシド、アリールパーオキシド、アシルパーオキシド、アロイルパーオキシド、ケトンパーオキシド、パーオキシカボネート、パーオキシカーボキシレート等が含まれる。アルキルパーオキシドとしては、ジイソプロピルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシド、ジターシャリーアミルパーオキシド、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリーアミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルヒドロ−パーオキシド、アリールパーオキシドとしては、ジクミルパーオキシド、クミルヒドロパーオキシド、アシルパーオキシドとしては、ジラウロイルパーオキシド、アロイルパーオキシドとしては、ジベンゾイルパーオキシド、ケトンパーオキシドとしては、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等を挙げることができる。アゾニトリルとしては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピルニトリル等が挙げられる。
[熱可塑性エラストマー(a−2)の分散方法について]
連続相(海相)であるアクリル系共重合体(a−1)中に、分散相(島相)である熱可塑性エラストマー(a−2)を、特定の重量比で分散させ樹脂組成物(A)を製造する方法としては、特に制限は無く、実質的に所望の樹脂組成物(A)を製造できればよい。ただし、好ましい方法としては、具体的に、次のような方法(1)〜(4)が挙げられる。
(1)所望の混練温度範囲において、所望量の熱可塑性エラストマー(a−2)とアクリル系共重合体(a−1)のみを予め溶融混練し、樹脂組成物(A)を製造する方法。なお、溶融混練装置としては、加熱ニーダー機、スクリュー押し出し機等が使用できる。
(2)アクリル系共重合体(a−1)を、芳香族系有機溶剤等の有機溶剤溶液とした後、これに熱可塑性エラストマー(a−2)を所定量溶解させることにより加熱下(100〜180℃)で均一分散し、この混合溶液(またはスラリー)から有機溶剤を脱溶剤することで、実質的に揮発分の残存しない樹脂組成物(A)を製造する方法。
(3)所望量の熱可塑性エラストマー(a−2)を、芳香族系有機溶剤等の有機溶剤溶液とした後、これにアクリル系共重合体(a−1)を溶解させ、加熱下(100〜180℃)で均一分散し、この混合溶液(またはスラリー)から有機溶剤を脱溶剤することで、実質的に揮発分の残存しない樹脂組成物(A)を製造する方法。
(4)所望量の熱可塑性エラストマー成分(a−2)を溶解した不活性溶媒中に、ラジカル重合開始剤を溶解したビニル単量体(a−1−1)及びビニル単量体(a−1−2)を一括又は徐々に滴下し、撹拌下、60〜160℃に加熱し、1〜24時間ラジカル溶液重合を行う方法。このラジカル重合により得た生成物は、樹脂組成物(A)が不活性溶媒により溶解された溶液なので、有機溶剤を脱溶剤することで、実質的に、揮発分の残存しない樹脂組成物(A)を得る。
上記方法(1)、(2)及び(3)において、例えば、熱可塑性エラストマー(a−2)として、ビニル単量体成分(a−1−2)の反応性官能基と反応可能な熱可塑性エラストマーを使用した場合、熱可塑性エラストマーとアクリル系共重合体(a−1)中の反応性官能基と反応し、連続相であるアクリル系共重合体(a−1)中に、分散相として熱可塑エラストマーのアクリル系共重合体が均一に分散したポリマーアロイが形成される。
一方、方法(4)において、例えば、熱可塑性エラストマー(a−2)として、ビニル単量体成分(a−1−2)の反応性官能基と反応しない熱可塑性エラストマーを使用した場合、連続相であるアクリル系共重合体(a−1)中に、分散相として、熱可塑性エラストマー(a−2)とビニル単量体(a−1−1)及び(a−1−2)のビニル基部分との反応により、熱可塑性エラストマーに、ビニル単量体(a−1−1)及び(a−1−2)の一部が反応したグラフト化物が均一に分散したポリマーアロイが形成される。
また例えば、熱可塑性エラストマー(a−2)として、ビニル単量体成分(a−1−2)の反応性官能基と反応する熱可塑性エラストマーを使用した場合、熱可塑性エラストマーとアクリル系共重合体(a−1)中の反応性官能基及び/又はビニル単量成分(a−1−2)の反応性官能基とが反応し、連続相であるアクリル系共重合体(a−1)中に、分散相として、熱可塑性エラストマーのアクリル系共重合体グラフト化物及び/又は熱可塑性エラストマーのビニル単量体グラフト化物等が均一に分散したポリマーアロイが形成される。
特に、熱可塑性エラストマー成分(a−2)の分散性をより高めるには、上記方法(2)、(3)及び(4)が好ましい。また、各成分の使用量は、得られる樹脂組成物(A)が規定する組成比になるように、適宜決定すればよい。一般的には、ビニル単量成分(a−1−1)及び(a−1−2)と熱可塑性エラストマーとの合計100重量部に対して、熱可塑性エラストマーを0.5〜20重量部使用すればよい。
[分散相の粒子径]
可塑性エラストマー(a−2)により構成される分散相において、その一次粒子としての平均直径が1nm〜30μmであることが好ましく、1nm〜10μmがより好ましい。その平均直径が上記範囲であると、塗膜の耐チッピング性の改良が充分で、且つ、塗膜の平滑性が良好である。
[硬化剤成分(B)]
硬化剤(B)としては、ビニル単量体(a−1−2)の反応性官能基の種類により適宜選択すればよい。ビニル単量体(a−1−2)が有する反応性官能基が水酸基の場合は、ヘキサメトキシメチルメラミンなどのアミノ樹脂、あるいはε−カプロラクタムでブロックされたイソホロンジイソシアネート等のブロック化ポリイソシアネート等などが挙げられ、カルボキシル基である場合は、ポリエポキシ化合物等が挙げられ、エポキシ基及び/又はグリシジル基である場合は、多価カルボン酸(b−1)及び/又は多価カルボン酸無水物(b−2)が代表的なものである。
本発明の熱硬化性粉体塗料の好ましい態様としては、アクリル系共重合体(a−1)が有する反応性官能基としてエポキシ基及び/又はグリシジル基を選択し、硬化剤(B)として、多価カルボン酸(b−1)及び/又は多価カルボン酸無水物(b−2)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物から選択する熱硬化性粉体塗料が挙げられる。以下、多価カルボン酸(b−1)及び/又は多価カルボン酸無水物(b−2)の例について説明する。
[多価カルボン酸(b−1)]
多価カルボン酸(b−1)としては、脂肪族、芳香族、脂環族の何れの化合物も使用できる。芳香族多価カルボン酸の具体例としては、例えば、イソフタル酸、トリメリット酸等が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて使用する事ができる。脂環式多価カルボン酸の具体例としては、例えば、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−ヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて使用する事ができる。また、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂等も使用できる。但し、本発明においては、脂肪族多価カルボン酸を用いることが、平滑性、耐候性等の塗膜特性の点で好ましい。
本出願の明細書において用いる「脂肪族」なる語の概念には、狭義の脂肪族のみならず、実質的に芳香族度が低い脂環族をも包含する。すなわちこの「脂肪」なる語の概念には、少なくとも1個の炭素原子を含む2価の炭化水素基を分子内に有する、実質的に芳香族度の低い化合物からなる群をも包含し、具体的には、狭義の脂肪族基のみならず、実質的に芳香族度の低い脂環族基、これらを組み合わせた基、又はこれらが水酸基、窒素、硫黄、けい素、りんなどで結合されるような2価の残基を分子内に有する化合物からなる群をも包含し、さらに具体的には、上記のものに例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アルコキシル基、シクロアルコキシル基、アリルオキシル基、ハロゲン(F,Cl,Br等)基等が置換した基を分子内に有する化合物からなる群をも包含する。これらの置換基を適宜選択することにより、本発明に係る共重合体の諸特性(耐熱性、強靭性、分解性、強度特性等)を制御することができる。本願の明細書において用いる「脂肪族化合物」なる語の概念には、一種類の化合物のみならず、二種類以上の組合せによるものをも包含する。
[脂肪族多価カルボン酸]
脂肪族多価カルボン酸は、実質的に、分子内にカルボキシル基を、少なくとも2個有する脂肪族化合物であれば、特に制限されず、1種類又は2種類以上を用いることができる。
脂肪族多価カルボン酸(b−1)のとしては、脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、クエン酸、ウンデカン2酸、ドデカン2酸、ブラシリン酸、エイコサン2酸、オクタデカン2酸等が挙げられ、これらの中では、ドデカン2酸が好ましく、これらは単独で又は組み合わせて使用する事ができる。
平滑性、耐衝撃性、耐候性等の塗膜特性に関して、脂環式多価カルボン酸については、芳香族度が高くなるに従い、塗膜特性が劣化する。
[多価カルボン酸無水物(b−2)]
本願明細書において用いる「酸無水物」、「アンヒドリド基」、「アンヒドリド結合」及び「ポリアンヒドリド」なる語の概念には、「MARUZEN高分子大辞典−Concise Encyclopedia of PolymerScience and Engineering(Kroschwitz編、三田 達監訳、丸善、東京、1994年)」・996〜998頁の「ポリアンヒドリド」の項に記載されているそれぞれの語に関する概念をも包含する。本願の明細書において用いる「酸無水物」なる語の概念には、化学大辞典・第3巻(共立出版刊・1963年)・996頁左欄〜997頁右欄記載の「酸無水物」の項に記載されている概念をも包含する。
本発明においては、橋架け効果等の点から、線状の脂肪族多価カルボン酸無水物が好ましい。脂肪族多価カルボン酸線状酸無水物は、実質的に、分子内にカルボキシル基を有するか又は有しない、線状の2量体以上のオリゴ又はポリの脂肪族の酸無水物であって、分子内に実質的に存在するカルボキシル基及び/又は酸無水物基を、少なくとも2個有する化合物であれば、特に制限されず、1種類または2種類以上を用いることができる。
本出願の明細書において、「線状」なる語の概念には、線状のみならず、線状の2量体以上のオリゴまたはポリの脂肪族の酸無水物が、線状と同様の作用を奏する大環状を形成している場合をも包含する。
脂肪族多価カルボン酸線状酸無水物の具体例としては、1種類または2種類以上の脂肪族ジカルボン酸を脱水縮合して得られる線状重縮合物が挙げられる。脂肪族多価カルボン酸線状酸無水物として使用することができる、耐チッピング性改善に特に有効な無水物としては、1種類の脂肪族多価カルボン酸を脱水縮合して得られる線状重縮合物のある種のものは、以下の一般式(1)で表すことができる。
HO−[OC(CH2)mCOO]n−H (1)
ここでmは1以上、nは2以上の、それぞれ自然数であり、好ましくはmは30以下である。
脂肪族ジカルボン酸の線状酸無水物の耐チッピング性改善に有効な具体例としては、上記脂肪族多価カルボン酸の脱水線状縮合物が挙げられる、これらの中では、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、エイコサン2酸及びドデカン2酸等の脱水線状縮合物が好ましく、ドデカン2酸の脱水線状縮合物がさらに好ましい。
多価カルボン酸無水物のその他の具体例として、例えば、欧州特許公開公報695,771号に記載のポリイソシアネート変性のジカルボン酸(ポリ)無水物や、欧州特許公開公報299,420号に記載のポリオール変性ポリマー状ポリ酸無水物等の変性ポリ酸無水物も好適に使用することができる。
脂肪族ジカルボン酸無水物は、融点が40〜150℃の範囲にあるように調製することが好ましい。
[脂肪族ジカルボン酸線状酸無水物による架橋結合形成]
無水こはく酸や無水フタル酸のような、多価カルボン酸の環状無水物を、アクリル系共重合体(a−1)中のグリシジル基と反応させると、この無水物はアクリル系共重合体(a−1)分子中の特定のグリシジル基のエポキシ環とのみ反応する確率が高いため、複数のアクリル系共重合体(a−1)分子を橋架けする効果が小さい。
一方、脂肪族ジカルボン酸の(共)重縮合物をグリシジル基と反応させると、この縮合物はアンヒドリド基部分で開裂して複数のフラグメントとなり、それぞれが別々のアクリル系共重合体(a−1)分子中のグリシジル基と反応し、複数のアクリル系共重合体(a−1)分子を橋架けする効果が発揮されるため、塗膜の耐溶剤性、耐酸性等の化学的特性が向上する。
[多価カルボン酸系化合物の使用量]
樹脂組成物(A)中のグリシジル基1当量に対し、多価カルボン酸(b−1)中のカルボキシル基は、0.1〜1.2当量が好ましく、0.2〜1.1当量がより好ましく、0.3〜1.0当量が最も好ましい。また、樹脂組成物(A)中のグリシジル基1当量に対し、多価カルボン酸無水物(b−2)中の酸無水物基は、0.1〜1.2当量が好ましく、0.2〜1.1当量がより好ましく、0.4〜1.0当量が最も好ましい。さらに、樹脂組成物(A)中のグリシジル基1当量に対し、多価カルボン酸系化合物分子中に存在するカルボキシル基及び/又は酸無水物基の合計当量は、0.5〜1.3当量が好ましく、0.6〜1.2当量がより好ましく、0.7〜1.0当量が最も好ましい。多価カルボン酸系化合物の使用量がこの範囲内であれば、塗膜の耐溶剤性や耐衝撃性などの特性が優れる傾向にある。
[添加剤]
本発明の熱硬化性粉体塗料組成物には、通常、塗料に添加される種々の添加剤を添加することができる。例えば、目的に応じ、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミドなどを包含する合成樹脂組成物、繊維素又は繊維素誘導体などを包含する天然樹脂又は半合成樹脂組成物を配合して塗膜外観又は塗膜物性を向上させることもできる。
本発明の熱硬化性粉体塗料には、目的に応じ、硬化触媒、顔料、流動調整剤、チクソ剤(チクソトロピー調整剤)、帯電調整剤、表面調整剤、光沢付与剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、ワキ防止剤(脱ガス剤)、酸化防止剤等の添加剤を配合してもよい。またクリアコートとして使用する場合に少量の顔料を配合し、完全に隠ぺい性の発現しない程度に着色していてもよい。
[粉体塗料組成物の混練]
樹脂組成物(A)及び硬化剤(B)を含む組成物を機械的に混練する際の被混練物の温度は、実質的に均一な粉体塗料組成物を製造できれば特に制限されない。溶融混練装置としては、通常、加熱ロール機、加熱ニーダー機、押出機(エクストルーダー)等を使用する。
本発明の熱硬化性粉体塗料組成物を配合する方法の具体例としては、ロール機、ニーダー機、ミキサー(バンバリー型、トランスファー型等)、カレンダー設備、押出機(エクストルーダー)等の混練機を、適宜組み合わせ、各工程の条件(温度、溶融若しくは非溶融、回転数、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気等)を、適宜、設定して、充分に均一に混合し、その後、粉砕装置により、均一な微細粉末状態の粉体塗料組成物を得る方法を採用することができるが、これらに限定されるものではない。
混練により得られた塊状塗料は、冷却の後、平均粒径10〜90μm程度となるように粉砕される。使用される粉砕器としては、ハンマーミル等が挙げられる。本発明の粉体塗料組成物に添加剤等を加える配合混練工程の一態様として、本発明の熱硬化性粉体塗料組成物に、必要に応じ、硬化触媒、ブロッキング防止剤、表面調整剤、可塑剤、帯電調整剤、顔料、充填剤、増量剤等の添加剤を加え、40〜140℃の範囲で、充分に溶融混練し、冷却後、適当な粒度(通常、100メッシュ以下)に均一に粉砕する方法が挙げられる。
[塗装方法及び焼付方法]
粉砕により得られた粉体塗料は、静電塗装法、流動浸漬法等の塗装方法によって、熱硬化性粉体塗料組成物の粉末を、塗装対象物に付着せしめ、加熱して熱硬化させ塗膜を形成させる。本発明の熱硬化性粉体塗料組成物の焼き付けは、通常、約100℃〜約180℃、より好ましくは、約120℃〜約160℃の温度において、通常、約10分間〜約60分間行うことにより、共重合体(a−1)と硬化剤(B)との架橋反応を行うことができる。焼き付け後、室温までに冷却後、優れた特性を有する塗膜を得ることができる。
この塗膜は、分散相として、熱可塑性エラストマー成分を有し、連続相としてアクリル系共重合体成分と硬化剤成分が、三次元架橋網目構造及び/又はIPN(interpenetrating network)構造を有する有機高分子を形成しており、分散相を連続相内に均一に保持している。この塗膜は、通常、前記連続相の三次元架橋網目構造及び/又はIPN構造により、分散相を連続相内に均一に保持し、分散相の有する耐衝撃性により、塗膜全体に耐衝撃性及び耐チッピング性を発現する機能を有する。
また、本発明の熱硬化性粉体塗料組成物を上塗り塗料として用いる場合、その下塗り塗料として、従来の溶剤型塗料のみならず、水性塗料を用いた場合においても、焼き付け後の塗膜は溶剤型塗料を用いた場合と同様に、本発明の塗料は優れた特性を有する。
即ち、水性下塗り塗料(顔料入り及び/又は金属粉入りを含む)を塗装し、所定の時間乾燥させた後、本発明の熱硬化性粉体塗料組成物を上記の方法によって下塗り塗料の上に付着せしめ、加熱して熱硬化させ塗膜を形成させる。
本発明の熱硬化性粉体塗料組成物の塗装は、自動車の車体又は自動車部品(アルミホイール、ワイパー、センターピラー等)へも用いられる。また、自動車の車体又は自動車部品を本発明の熱硬化性粉体塗料を用いて中塗り及び上塗り用の塗装へも用いられる。
以下、本発明の実施例について説明する。実施例及び製造例は、本出願に係る発明の内容の理解を支援するためのものであって、その記載によって、本発明が何ら限定される性質のものではない。また、「部」及び「%」は、特に説明のない限り、重量による値である。
[性能評価の為の塗装板の調製]
ポリエステル−メラミン架橋の黒色溶剤型塗料を、りん酸亜鉛処理を施した0.8mm厚の梨地鋼板に、20μm厚で塗装し、その後、170℃、30分間焼付けをして、下地処理鋼板を調製した。
[性能評価]
性能評価は、次のようにして行なった。
(1)耐衝撃性試験(デュポン式衝撃性試験)
JIS K5400 6.13.3に従って実施した。おもりの重量は1kgと、評価結果の数値は、塗膜に割れやはがれの発生した落下高さで示した。
(2)チッピング試験(グラベロショット試験)
米国の自動車用塗膜の試験法SAE−J400及びASTM D−370に従ったグラベロメーター(スガ試験機(株)製)を使用した。ここでは、塗装した鋼板を−30℃の冷凍庫中4時間放置し、さらに、その後、直ちに−30℃のドライアイス・メタノール浴中で5分間冷却し、塗装鋼板をドライアイスメタノール浴から引き上げ、グラベロメ−タ−にセット、直ちに砕石を吹き付けて試験した。ドライアイスメタノール浴からの引き上げから、砕石を吹き付けまでの所要時間は5秒以内とした。砕石はJIS A5001に規定された道路用砕石7号を使用した。塗装鋼板毎に50gの砕石を使用し、一気に衝突させた。吹き付けのために使用した圧縮空気の圧力は、390kPa(ゲージ)とした。砕石の衝突により傷を受けた鋼板は、10分間室温で放置した後、剥離しかけた塗膜をマスキングテープを用いて完全に剥した。耐チッピング性の良否は、傷の平均直径により表した。したがって、傷の直径が小さいほど、耐チッピング性が良好である。この傷の平均直径が2.0mm未満であれば耐チッピング性が優れており、2.0mm以上では耐チッピング性が劣るものと判定される。
(3)耐候性試験
QUVテスターによる2000時間の促進テストを行い、促進テスト前後の塗膜の光沢度を測定し、光沢残存率(%)を求めた。光沢残存率は次式により計算した。
光沢残存率[%] =
(促進試験後の60゜光沢度)÷(促進試験前の60°光沢度)×100
(4)耐酸性試験
10vol%の硫酸を塗膜表面に滴下し、室温にて1日放置した後拭き取り、外観を観察した。その結果、痕跡の無いものを○、痕跡の付いているものを×として示した。
(5)目視外観
塗膜外観を観察して、特に平滑性が優れているものを◎、平滑性が良好なものを○、平滑性が普通のものを△、平滑性が劣るものを×として示した。
(6)光沢
光沢計での測定値(60°グロス)で示した。
(7)耐溶剤性
キシロールを含浸させたガーゼで塗膜表面を往復50回擦った後、その塗膜を観察して、痕跡がないものを○、痕跡があるものを×として示した。
(8)鉛筆引っ掻き試験
JIS K5400 6.14により実施した。表示は鉛筆の硬度記号で示した。
(9)粉体塗料の耐ブロッキング性試験
粉体塗料6.0gを内径20mmの円筒形容器に入れ、30℃で7日間貯蔵後粉体を取り出し粉体塗料のブロッキング状態を目視及び指触で観察し、全く異常がないものを◎、ややブロッキングが観測されるものを○、劣るものを×として示した。
[製造例1〜3](アクリル系共重合体(a−1)の製造)
撹拌機、温度計、還流コンデンサ−及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコにキシレン66.7部を仕込み、還流温度まで昇温した。ここに、表1に示す単量体(部)に、重合開始剤としてt−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商標名パーブチルO、日本油脂株式会社製)4.5重量部を溶解し、その混合溶液を5時間に渡り滴下して、さらに、その後パーブチルOを0.5部滴下し、100℃で5時間保持した。得られた重合溶液の溶剤を加熱減圧下で除去することにより固体のアクリル系共重合体(製造例1〜3)を得た。表1に、得られた共重合体の特性値も併せて記載した。
Figure 2007100100
共重合体の諸物性は、以下の方法により測定した。
(1)ガラス転移温度(Tg):モノマー組成に基き、Foxの式に計算により求めた。
(2)数平均分子量(Mn):GPCにより、ポリスチレンを標準として測定した。
[製造例4](ヒドロキシルエチルメタクリレートグラフト変性熱可塑性エラストマー(a−2)の製造)
撹拌機、温度計、環流コンデンサー及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコにキシレン1,000部、シェルケミカル社製のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(商標名KRATON G1652)100部を仕込み、系内を窒素ガス置換し、130℃に昇温した後、ポンプを用いて、ヒドロキシエチルメタクリレート6.6g及びジクミルパーオキシド0.6gを溶解したキシレン溶液100gを、5時間かけて系内に供給した。反応終了後、系を室温付近まで冷却し、アセトンを加えてヒドロキシエチルメタクリレートグラフト変性熱可塑性エラストマーを濾取後、さらに、アセトンで沈殿を繰り返し洗浄した。洗浄後の沈殿物を昇温下に減圧乾燥すると、白色粉末状の変性樹脂が得られた。この変性樹脂の水酸基価測定を行った結果、ヒドロキシエチルメタクリレートの含量は2.3重量%であった。
[製造例5](グリシジルメタクリレートグラフト変性熱可塑性エラストマー(a−2)の製造)
撹拌機、温度計、環流コンデンサー及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコにキシレン1,000部、シェルケミカル社製のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(商標名KRATON G1652)100部を仕込み、系内を窒素ガス置換し、130℃に昇温した後、ポンプを用いて、グリシジルメタクリレート6.5g及びジクミルパーオキシド0.6gを溶解したキシレン溶液100gを、5時間かけて系内に供給した。反応終了後、系を室温付近まで冷却し、アセトンを加えてグリシジルメタクリレートグラフト変性熱可塑性エラストマーを濾取後、さらに、アセトンで沈殿を繰り返し洗浄した。洗浄後の沈殿物を昇温下に減圧乾燥すると、白色粉末状の変性樹脂が得られた。この変性樹脂のエポキシ価測定を行った結果、グリシジルメタクリレートの含量は2.0重量%であった。
[製造例6〜8](樹脂組成物の製造1)
製造例1〜3で製造したアクリル系共重合体(a−1)と、熱可塑性エラストマー(a−2)を表2に示す配合比で配合し、ヘンシェルミキサーで均一にドライブレンドした後、ブッス社のエクストルーダーTCS30を用い、シリンダー温度を140℃、スクリューの回転数を280rpmに設定し、3回混練(3パス)する事により粉体塗料用樹脂組成物(製造例6〜8)を得た。
Figure 2007100100
TUFTEC H1031:(旭化成工業株式会社製のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物、商標名)
TUFTEC M1962:(旭化成工業株式会社製のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物の無水マレイン酸グラフト変性品、商標名)。
[製造例9〜16](粉体塗料用樹脂組成物の製造2)
撹拌機、温度計、環流コンデンサー及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコにキシレンを66.7部を仕込み系内を窒素ガス置換し、さらに、熱可塑性エラストマー成分(a−2)を表3、表4に示す重量部で仕込み、環流温度まで昇温した。そして表3、表4に示す単量体に、重合開始剤としてt−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商標名パーブチルO、日本油脂株式会社製)7.0重量部を溶解し、その混合溶液を5時間にわたり滴下して、さらに、その後パーブチルOを0.5部滴下し、100℃で5時間保持した。得られた重合溶液の溶剤を加熱減圧下で除去することにより、固体の粉体塗料用樹脂組成物(製造例9〜16)を得た。
Figure 2007100100
TUFTEC M1962:(旭化成工業株式会社製のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物の無水マレイン酸グラフト変性品、商標名)
Figure 2007100100
TUFTEC M1962:(旭化成工業株式会社製のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物の無水マレイン酸グラフト変性品、商標名)。
[製造例17〜20](粉体塗料用樹脂組成物の製造3)
撹拌機、温度計、環流コンデンサー及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコにキシレンを100重量部を仕込み、さらに製造例1で製造したアクリル系共重合体と熱可塑性エラストマー成分(a−2)を表5に示す配合比で添加し、系内を窒素ガス置換し、環流温度まで昇温した。昇温後5時間保持し、アクリル系共重合体及び熱可塑性エラストマー成分を均一に溶解した。得られた樹脂のキシレン溶液中の溶剤を加熱減圧下で除去する事により、固体の粉体塗料樹脂組成物(製造例17〜20)を得た。
Figure 2007100100
TUFTEC H1031:(旭化成工業株式会社製のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物、商標名)。
[製造例21](脂肪族2価カルボン酸の線状酸無水物硬化剤の製造)
ドデカン2酸1モル、無水酢酸0.8モルを反応容器に装入し、150℃まで昇温し、無水酢酸が系外に流失しないように、生成してくる酢酸を真空ラインで除去しながら、5時間反応させた。その後、直ちに、冷却し、白色の固形物を回収した。この化合物の融点は73〜82℃であった。
[実施例1、3〜5、7〜10]
製造例で製造した粉体塗料用樹脂(A)とドデカン2酸及び酸化チタン(商標名タイピュアR960、デュポン社製)を表6に示す割合(部)配合比で配合し、RESIMIX RL−4(三井化学株式会社製、商標名、低粘度アクリル樹脂、流動調整剤)、TINUVIN 144(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商標名)、及び、ベンゾイン(ワキ防止剤)を各1重量部ずつ、TINUVIN 900(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商標名)を2重量部添加し、上記混合物をヘンシェルミキサーを用いて均一にドライブレンドした後、加熱ロールにて90℃の条件下で溶融混練を行った。溶融混練物を冷却後、粉砕機にて微粉砕し、150メッシュの篩いを通過した区分を集め粉体塗料を得た。
得られた粉体塗料を下地処理鋼板上に静電塗装機にて60〜70μmの膜厚になるように塗装後、160℃で30分間加熱しテスト板を得た。
[実施例2、6]
製造例で製造した粉体塗料用樹脂(A)、硬化剤(B)としてIPDI・B1530(ε−カプロラクタム・ブロックド・イソホロンジイソシアネート、ダイセル・ヒュルス株式会社製)を表6に示す配合比で配合し、硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート(商標名ネオスタンU−100、日東化成株式会社製)を0.1重量部添加した以外は、実施例1と同様の手法でテスト板を得た。
[比較例1]
製造例1で製造したアクリル系共重合体及び硬化剤としてドデカン2酸を表7に示す配合比で用いた以外は、実施例1と全く同様な手法でテスト板を得た。
[比較例2]
製造例2で製造したアクリル系共重合体、及び、硬化剤(B)として、製造例21で製造したドデカン2酸無水物を表7に示す配合比で配合し、硬化触媒としてオクタン酸錫(商標名ネオスタンU−28、日東化成株式会社製)を0.2重量部添加した以外は、実施例1と同様の手法でテスト板を得た。
[比較例3]
製造例3で製造したアクリル系共重合体、硬化剤としてIPDI・B1530(ε−カプロラクタム・ブロックド・イソホロンジイソシアネート、ダイセル・ヒュルス株式会社製)を、表7に示す配合比で配合し、硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート(商標名ネオスタンU−100、日東化成株式会社製)を0.1重量部添加した以外は、実施例2と同様の手法でテスト板を得た。
[比較例4〜8]
各製造例で製造した粉体塗料用樹脂組成物、硬化剤としてドデカン2酸を表7に示す配合比で用いた以外は、実施例1と同様の手法でテスト板を得た。
[比較例9]
ポリエステル系粉体塗料の主剤(商品名ER−8105、ユニチカ株式会社製)74.1部と硬化剤であるトリグリシジルイソシアヌレート5.9部と二酸化チタン(商標名タイピュアR−960、デュポン社製)20.0部とを配合した。これに実施例1と同様の添加剤を加え、さらに、実施例1と同様の方法により粉体塗料とし、下地処理鋼板に静電スプレーにて60〜70μmの膜厚になるよう塗装後、200℃で20分間加熱しテスト板を得た。
Figure 2007100100
Figure 2007100100
[評価]実施例1〜10で形成した熱硬化性粉体塗料及び塗膜の評価を行った結果を表8〜9に示す。また、これに関連する比較例1〜8で形成した熱硬化性粉体塗料及び塗膜の評価を行った結果を表10に示す。
Figure 2007100100
Figure 2007100100
Figure 2007100100
表8〜9に示した実施例1〜10の本発明の粉体塗料組成物は、アクリル系粉体塗料の特徴である耐候性を損なうことなく、耐衝撃性、耐チッピング性についてはポリエステル系塗料と同等或いはそれ以上の性能を示しており、また、塗膜の外観、光沢、耐酸性及び耐溶剤性、粉体塗料の耐ブロッキング性等も何等問題無く、塗料としての実用的な通常物性も兼ね備えている。
比較例1〜3は、熱可塑性エラストマー成分を使用しない粉体塗料用樹脂の評価結果であるが、この場合、塗膜の耐衝撃性や耐チッピング性が劣っている。
比較例4〜8は、熱可塑性エラストマー成分の使用量が本発明の規定する範囲外である粉体塗料用樹脂組成物を使用した例であり、比較例4、比較例6、及び、比較例8は、塗膜外観、耐候性などの塗膜の諸物性、及び、粉体塗料の耐ブロッキング性が劣っており、比較例5、及び、比較例7は、耐衝撃性及び耐チッピング性の改良が不十分である。
比較例9は、ポリエステル系の粉体塗料の塗膜及び粉体塗料の評価を行った結果であり、この場合塗膜の耐候性が劣っている。

Claims (10)

  1. 樹脂組成物(A)と硬化剤(B)を含有してなる熱硬化性粉体塗料組成物であって、
    樹脂組成物(A)は、アクリル系共重合体(a−1)を含有する連続相と、熱可塑性エラストマー(a−2)を含有する分散相とから構成される海島型ミクロ相分離構造を有し、
    連続相を構成するアクリル系共重合体(a−1)は、分子内に硬化剤(B)に対して反応性のある官能基を有さず、且つ、ラジカル重合性ビニル基を少なくとも1つ有するビニル単量体(a−1−1)40〜99重量%、及び、分子内に硬化剤(B)に対して反応性のある官能基を有し、且つ、ラジカル重合性ビニル基を少なくとも1つ有するビニル単量体(a−1−2)60〜1重量%を重合して成るものであり、
    分散相を構成する熱可塑性エラストマー(a−2)は、主鎖に不飽和二重結合を有さない共重合体であって、芳香族ビニル炭化水素を重合して成るハードセグメントS、及び、共役ジエンを重合して成るソフトセグメントBから構成されるS−B−S型3元ブロック共重合体の水素添加物から構成されるスチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)を主鎖とした熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)であり、
    分散相を構成する熱可塑性エラストマー(a−2)の合計量は、樹脂組成物(A)100重量部を基準として、0.5〜20重量部である熱硬化性粉体塗料組成物。
  2. 熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)が、スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)ビニル単量体を押し出し機内であるいは溶媒中で反応させることによりグラフト変性させて得たグラフト化物(コア/シェル構造を有する粒子を除く)である請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  3. 熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)が、ビニル単量体(a−1−2)又は硬化剤(B)との架橋反応が可能である請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  4. 熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)が、スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)にビニル単量体をグラフト重合してなるグラフト化物である請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  5. 熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)が、スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)の側鎖として反応性官能基を含む化合物をまず導入し、これをアクリル系重合体(a−1)の官能基と結合させ、あるいはビニル単量体をグラフト重合してなるグラフト化物である請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  6. 熱可塑性エラストマーのグラフト化物(a−2−2a)が、主鎖に対し0.1〜10重量%のα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性された構造を含む請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  7. スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)が、スチレン−ブタジエン−スチレン3元ブロック共重合体の水素添加物、及び/又は、スチレン−イソプレン−スチレン3元ブロック共重合体の水素添加物である請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  8. 樹脂組成物(A)が、スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)にグラフト変性の為の基を導入して得たエラストマーの存在下で、単量体(a−1−1)及び単量体(a−1−2)をラジカル重合せしめることにより得られる海島型ミクロ相分離構造を有する組成物である請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  9. スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2−1a)に対し0.1〜10重量%のα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物を用いてグラフト変性することにより、前記グラフト変性の為の基を導入したエラストマーを得る請求項8に記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  10. 請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料組成物を製造するための方法であって、樹脂組成物(A)及び硬化剤(B)を含む原料を溶融混練する工程、並びに、該溶融混練物を冷却し粉砕する工程を有する熱硬化性粉体塗料組成物の製造方法。
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