JP2007099763A - ピペラシリンナトリウム・1水和物の新規な結晶及びその製造方法 - Google Patents

ピペラシリンナトリウム・1水和物の新規な結晶及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】医薬として優れた作用を有するピペラシリンナトリウム・1水和物の新規な結晶及びその製造方法並びにそれを充填した粉末充填注射用製剤を提供すること。
【解決手段】粉末X線回折において、2θで表される3.9、4.6、5.6、6.7、7.6及び9.8°の回折角度を有するピペラシリンナトリウム・1水和物の新規な結晶及び7.3及び7.9°の回折角度を有するピペラシリンナトリウム・1水和物の新規な結晶は、優れた溶解性及び低吸湿性を有し、帯電性が小さく、原薬の製造時及び製剤化での充填時の取り扱いが非常に容易であり、安定性に優れるため、それらを充填した注射用製剤は、有用である。

Description

本発明は、(2S,5R,6R)−6−((2R)−2−((4−エチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−カルボニル)アミノ)−2−フェニルアセチルアミノ)−3,3−ジメチル−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸(以下、ピペラシリンと称する。)ナトリウム・1水和物の新規な結晶及びその製造方法に関する。
ピペラシリン及びその塩は、広い抗菌活性、特にグラム陰性微生物、シュードモナスアルギノーサ、尋常変形菌、セラチア種、腸バクテリア及びその他の臨床上重要な嫌気性バクテリアに対し効果があることが知られている。例えば、肺炎、化膿性髄膜炎及び敗血症等の治療にピペラシリンのナトリウム塩が効果的に使用されている。
一般に、薬物の注射剤としては、水をはじめとする液体に溶解、乳化又は分散させて使用する液体注射剤、及び、使用時に液体に溶解、乳化又は分散させて使用する用時溶解型の粉末注射剤が知られている。
しかし、ピペラシリン又はその塩は、溶液中で不安定であり、ピペラシリン又はその塩の液体注射剤を製造することは難しい。
また、ピペラシリンの塩は、これまで、非晶質でのみ固形物として得られていた。そのため、粉末充填製剤には、例えば、凍結乾燥末が用いられていた。しかしながら、非晶質の固形物は、吸湿性を有し、用時溶解性に劣っていた。更に、凍結乾燥による製造は、長時間を要し、製造コストを上昇させるだけでなく、精製が困難であるという問題があった。
特開平2−32082号(特許文献1)及びUS2003028016(特許文献2)等の公報に、ピペラシリンの塩を結晶として得たとの記載があるが、それらが結晶であることを示唆するデータは一切記載が無い。本発明者らは、上記文献の実施例を追試したが、ピペラシリンの塩の結晶を得ることはできなかった。これまで、ピペラシリンの塩の結晶は、全く知られていない。
特開平2−32082号公報 US2003028016号公報 特開昭51−023284号公報
本発明は、医薬として優れた作用を有するピペラシリンナトリウム・1水和物の新規な結晶及びその製造法並びにそれを充填した注射用製剤を提供することにある。
本発明者らは、上記問題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、ピペラシリンナトリウム・1水和物に結晶体が存在し、その結晶体に結晶多形が存在することを見出し、本発明を完成した。以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のピペラシリンナトリウム・1水和物の新規な結晶は、優れた溶解性及び低吸湿性を有し、かつ、非晶質よりも粉末の嵩が小さく、帯電性が小さいことから、原薬の製造時及び製剤化での充填時の取り扱いが非常に容易である。また、これらの結晶は、濾過及び乾燥が容易で、残留溶媒の含量が少ない。更に、これらの結晶は、安定性に優れ、非晶質よりも外観の着色(白色度、黄色度)が少ない。
これらの点より、本発明のピペラシリンナトリウム・1水和物の新規な結晶及びそれらを充填した注射用製剤は、有用である。
本発明において、特にことわらない限り、低級アルコールとは、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール又はプロピレングリコールを;アルキルケトンとは、例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンを;エーテルとは、例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル又はジイソプロピルエーテルを;塩基とは、例えば、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム又は水酸化ナトリウムを;有機酸とは、例えば、酢酸、プロピオン酸又は酪酸を;有機塩基とは、例えば、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム又は酪酸ナトリウムを意味する。
本発明は、粉末X線回折において、2θで表される3.9、4.6、5.6、6.7、7.6及び9.8°の回折角度を有するピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(以下、I型結晶と称する。)並びに粉末X線回折において、2θで表される7.3及び7.9°の回折角度を有するピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(以下、II型結晶と称する。)に関する。これらは、これまで知られていなかった新規な結晶である。なお、粉末X線回折による特徴的なピークは、測定条件によって変動することがある。そのため、本発明化合物の粉末X線回折のピークは、上記の値と異なる場合がある。
I型結晶、II型結晶及びピペラシリンナトリウムの凍結乾燥末(以下、非晶質と称する。)の粉末X線回折の測定結果並びにI型結晶の下面照射粉末X線回折の測定結果を図7〜10に示す。
粉末X線回折測定条件
使用X線:CuKα
カウンター:シンチレーションカウンター
ゴニオメーター: 縦型ゴニオメーター(1軸)
加電圧:40kV
加電流:80mA
スキャンスピード:2°/分
走査軸:2θ
走査範囲:2θ=3〜50°
発散スリット:1°
散乱スリット:1°
受光スリット:0.15mm
下面照射粉末X線回折測定条件
使用X線:CuKα
試料台:下面照射試料台
カウンター:シンチレーションカウンター
加電圧:40kV
加電流:30mA
走査軸:2θ
走査範囲:2θ=2〜20°
発散スリット:0.5°
散乱スリット:0.5°
受光スリット:0.1mm
本発明のI型結晶及びII型結晶は、以下の条件において測定した赤外吸収スペクトルにおける吸収波長(cm−1)によっても特徴付けられる新規な結晶である。I型結晶、II型結晶及び非晶質の赤外吸収スペクトル測定結果を図11〜13に示す。
赤外吸収スペクトル測定条件
日本薬局方、一般試験法、赤外吸収スペクトルATR法に従って測定した。
次に、本発明化合物の有用性を明らかにするため、溶解試験、吸湿性試験、着色安定性試験及び純度(類縁物質含量)試験の結果を説明する。
(1)溶解試験(静置)
被験物質として、II型結晶(実施例7)及び非晶質(比較例1)を用いた。
被験物質2.2gを第一硝子(株)製C2バイアル瓶に入れ、注射用水10mLを添加した後、静置下、完全溶解を肉眼にて判定し、完全溶解に要する時間を計測した。
結果を表1に示す。
(2)溶解試験(振とう)
被験物質として、II型結晶(実施例7)及び非晶質(比較例1)を用いた。
被験物質2.2gを第一硝子(株)製C2バイアル瓶に入れ、注射用水10mLを添加した後、バイアル瓶を横向きに固定し、MRKインキュバスシェイカーで振とうした(幅4cm、振とう速度48回/分)。完全溶解を肉眼にて判定し、完全溶解に要する時間を計測した。
結果を表1に示す。
比較例1の物質の振とう時の溶解時間は、5分であった。一方、実施例7の物質の溶解時間は、50秒であった。II型結晶は、非晶質よりも短時間で溶解した。
(3)吸湿性試験
被験物質として、II型結晶(実施例7)及び非晶質(比較例1)を用いた。
被験物質を、7、11、22、33及び57%相対湿度下、25℃で3日間放置し、日本薬局方、一般試験法、水分測定法(カール・フィッシャー法)に従って水分含量を測定し、重量変化率(w/w%)を算出した。結果を表2に示す。
実施例7の物質は、比較例1の物質よりも重量変化率が小さかった。II型結晶は、非晶質よりも吸湿安定性に優れていた。
(4)着色安定性試験
被験物質として、II型結晶(実施例7)及び非晶質(比較例1)を用いた。
被験物質2.2gを第一硝子(株)製C2バイアル瓶に入れ、60℃で保存した。同様に、被験物質2.2gを第一硝子(株)製C2バイアル瓶に入れ、窒素を充填した後、60℃で保存した。試験開始後、1週間及び2週間後に、各被験物質の色差(ΔE)、白色度(W)及び黄色度(YI)を色差計により測定した。
結果を表3に示す。
実施例7の物質は、比較例1の物質よりも色差が小さく、白色度が大きく、黄色度が小さかった。II型結晶は、非晶質よりも外観の色の変化が小さく、安定であった。
(5)純度(類縁物質含量)試験
被験物質として、I型結晶(実施例2)、II型結晶(実施例7)及び非晶質(比較例1)を用いた。
被験物質の純度を高速液体クロマトグラフィー法によって測定した(平成13年4月4日医薬発第340号厚生省医薬安全局長通知)。
検出器:紫外吸光光度計
測定波長:254nm
カラム:Nucleosil−5C18、内径4.6×長さ150mm
カラム温度:室温
副成物I及び分解物I測定用移動相:21%アセトニトリル緩衝溶液(0.05mol/L酢酸、0.025mol/Lトリエチルアミン)
副成物II測定用移動相:30%アセトニトリル緩衝溶液(0.05mol/L酢酸、0.025mol/Lトリエチルアミン)
流量:1mL/分
結果を表4に示す。
実施例2及び実施例7の物質は、比較例1の物質よりも類縁物質が少なかった。
次に、本発明のI型結晶及びII型結晶の製造法について説明する。I型結晶及びII型結晶は、例えば、以下の製造法で製造することができる。
[製造法1]I型結晶の製造
ピペラシリンナトリウムの溶液に、有機酸を添加することにより、I型結晶を製造することができる。
この製造に用いられる溶媒としては、アルキルケトン及びエーテルから選ばれる少なくとも1種の溶媒、低級アルコール並びに水の混合溶媒が挙げられる。
低級アルコールとしては、メタノール、エタノール又はプロピレングリコールが好ましい。
アルキルケトンとしては、アセトン又はメチルエチルケトンが好ましい。
エーテルとしては、テトラヒドロフランが好ましい。
アルキルケトン及びエーテルから選ばれる少なくとも1種の溶媒としては、メチルエチルケトン又はテトラヒドロフランが好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。
有機溶媒及び水の混合比は、特に限定されないが、例えば、有機溶媒の含率が50〜99(v/v)%が好ましく、80〜99(v/v)%がより好ましく、90〜98(v/v)%が更に好ましい。
ピペラシリンナトリウムの溶液は、例えば、ピペラシリン・1水和物を低級アルコール及び水の混合溶媒に懸濁し、この懸濁液に塩基を添加して溶解し、この溶液にアルキルケトン及びエーテルから選ばれる少なくとも1種の溶媒を添加することにより調製することができる。
ピペラシリン・1水和物は、例えば、特開昭51−023284号公報(特許文献3)記載の方法で製造することができる。
塩基としては、2−エチルヘキサン酸ナトリウム又は酢酸ナトリウムが好ましい。塩基の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、ピペラシリン・1水和物に対して、1〜3当量、より好ましくは、1〜2当量である。
調製の温度は、特に限定されないが、0〜30℃が好ましく、5〜20℃がより好ましい。
また、ピペラシリンナトリウムの溶液は、例えば、ピペラシリンナトリウムを低級アルコール及び水の混合溶媒に溶解し、この溶液にアルキルケトン及びエーテルから選ばれる少なくとも1種の溶媒を添加することによっても調製することができる。
ピペラシリンナトリウムは、例えば、特開昭51−023284号公報(特許文献3)記載の方法で製造することができる。
調製の温度は、特に限定されないが、0〜30℃が好ましく、5〜20℃がより好ましい。
このようにして調製したピペラシリンナトリウムの溶液に、有機酸を添加することにより、I型結晶を製造することができる。
有機酸としては、酢酸が好ましい。
有機酸は、アルキルケトン及びエーテルから選ばれる少なくとも1種の溶媒、低級アルコール又は水で希釈して添加してもよい。
有機酸の添加量は、ピペラシリン・1水和物又はピペラシリンナトリウムに対して、0.1〜3当量が好ましく、0.1〜2当量がより好ましい。
有機酸添加及び結晶化の温度は、特に限定されないが、0〜30℃が好ましく、5〜20℃がより好ましい。
結晶化の溶媒量は、特に限定されないが、ピペラシリン・1水和物又はピペラシリンナトリウムに対して、5〜20倍量が好ましく、5〜15倍がより好ましい。
この製造において、I型結晶の種晶を使用することもでき、その量は、特に限定されない。
[製造法2]II型結晶の製造
ピペラシリンの塩の溶液に、有機塩基を添加することにより、II型結晶を製造することができる。
この製造に用いられる溶媒としては、低級アルコール及び水の混合溶媒が挙げられる。
低級アルコールとしては、メタノール、エタノール又はプロピレングリコールが好ましく、エタノールがより好ましい。
低級アルコール及び水の混合比は、特に限定されないが、例えば、低級アルコールの含率が50〜99(v/v)%が好ましく、80〜99(v/v)%がより好ましく、90〜99(v/v)%が更に好ましい。
ピペラシリンの塩としては、例えば、ナトリウム塩及びトリエチルアミン塩が挙げられる。
ピペラシリンの塩の溶液は、例えば、ピペラシリン・1水和物を低級アルコール及び水の混合溶媒に懸濁し、この懸濁液に、炭酸水素ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酪酸ナトリウム又はトリエチルアミンなどの試薬を添加することにより、製造することができる。試薬の使用量は、特に限定されないが、ピペラシリン・1水和物に対して、1〜3当量が好ましく、1〜2当量がより好ましい。
調製の温度は、特に限定されないが、0〜30℃が好ましく、5〜20℃がより好ましい。
また、ピペラシリンの塩の溶液は、例えば、ピペラシリンナトリウムを低級アルコール及び水の混合溶媒に溶解することによっても調製することができる。
調製の温度は、特に限定されないが、0〜30℃が好ましく、5〜20℃がより好ましい。
このようにして調製したピペラシリンの塩の溶液に、有機塩基を添加することにより、II型結晶を製造することができる。
有機塩基としては、酢酸ナトリウム又は酪酸ナトリウムが好ましく、酢酸ナトリウムがより好ましい。
有機塩基は、低級アルコール又は水で希釈して添加してもよい。
有機塩基の添加量は、ピペラシリン・1水和物又はピペラシリンナトリウムに対して、0.1〜3当量が好ましい。
有機塩基添加及び結晶化の温度は、特に限定されないが、0〜30℃が好ましく、5〜20℃がより好ましい。
結晶化の溶媒量は、特に限定されないが、ピペラシリン・1水和物又はピペラシリンナトリウムに対して、5〜20倍量が好ましい。
この製造において、II型結晶の種晶を使用することもでき、その量は、特に限定されない。
更に、I型結晶は、上記製造法でII型結晶に変換することができる。また、II型結晶は、同様に、I型結晶に変換することができる。
本発明のピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶は、常法にしたがって、注射剤にすることができる。更に、本発明のピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶は、公知のβ−ラクタマーゼ阻害剤、例えば、クラブラン酸、スルバクタム又はタゾバクタム等と配合して、配合剤とすることもできる。好ましいβ−ラクタマーゼ阻害剤としては、タゾバクタムが挙げられ、その配合比は、特に限定されないが、重量比でタゾバクタム1に対して、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶4〜8が好ましい。
以下、代表的な実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は、本発明を何ら制限するものではない。
実施例1
ピペラシリンナトリウム60gをエタノール120mL及び水12mLの混合液に加えた。不溶物を濾去した後、テトラヒドロフラン300mLを加え、酢酸6mL及びテトラヒドロフラン60mLの混合液を滴下した。次いで、15〜20℃で24時間撹拌した。結晶を濾取し、エタノール20mLで洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(I型結晶)35gを得た。これをI型結晶の種晶とした。
含水率:3.2%
IR(ATR)1777,1715cm-1
粉末X線回折のパターンは、実施例2と一致した。
実施例2
ピペラシリン・1水和物120gをエタノール240mL及び水24mLの混合液に懸濁し、10〜20℃で、2−エチルヘキサン酸ナトリウム38.4gを添加した。不溶物を濾去した後、テトラヒドロフラン600mLを加え、酢酸12.8mL及びテトラヒドロフラン120mLの混合液を滴下した。次いで、I型結晶の種晶を添加し、15〜20℃で5時間撹拌した。結晶を濾取し、エタノール240mLで洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(I型結晶)78.0gを得た。
含水率:3.2%
IR(ATR)1777,1717cm-1
偏光顕微鏡写真を図1に、走査型電子顕微鏡写真を図3に、下面照射粉末X線回折のパターンを図7に、粉末X線回折のパターンを図8に、赤外吸収スペクトル(ATR法)を図11に示す。
実施例3
ピペラシリンナトリウム120gをエタノール240mL及び水24mLの混合液に加えた。不溶物を濾去した後、テトラヒドロフラン600mLを加え、酢酸12mL及びテトラヒドロフラン120mLの混合液を滴下した。次いで、I型結晶の種晶を添加し、15〜20℃で5時間撹拌した。結晶を濾取し、エタノール240mLで洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(I型結晶)64.9gを得た。
含水率:3.2%
IR(ATR)1777,1715cm-1
粉末X線回折のパターンは、実施例2と一致した。
実施例4
ピペラシリンナトリウム15gをエタノール34mL及び水4mLの混合液に加えた。不溶物を濾去した後、メチルエチルケトン50mLを加え、酢酸2mL及びメチルエチルケトン70mLの混合液を滴下した。次いで、I型結晶の種晶を添加し、30℃で1時間、15〜20℃で5時間撹拌した。結晶を濾取し、90%エタノール15mL及びメチルエチルケトン48mLの混合液で洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(I型結晶)5.6gを得た。
含水率:3.2%
IR(ATR)1774,1715cm-1
粉末X線回折のパターンは、実施例2と一致した。
実施例5
ピペラシリンナトリウム2.0gをプロピレングリコール4mL及び水0.5mLの混合液に加えた。不溶物を濾去した後、テトラヒドロフラン80mLを加え、酢酸0.5mLを滴下した。次いで、I型結晶の種晶を添加し、15〜20℃で24時間撹拌した。結晶を濾取し、90%エタノール5mL及びテトラヒドロフラン16mLの混合液で洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(I型結晶)0.8gを得た。
含水率:3.2%
IR(ATR)1776,1716cm-1
粉末X線回折のパターンは、実施例2と一致した。
実施例6
ピペラシリンナトリウム2.0gをエタノール4mL及び水1mLの混合液に加えた。不溶物を濾去した後、酢酸ナトリウム0.03gを添加し、エタノール12mLを加えた。5℃で24時間撹拌した。結晶を濾取し、エタノール20mLで洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)0.5gを得た。これをII型結晶の種晶とした。
含水率:3.2%
IR(ATR)1774,1720cm-1
粉末X線回折のパターンは、実施例7と一致した。
実施例7
ピペラシリン・1水和物120gをエタノール240mL及び水72mLの混合液に懸濁し、10〜20℃で、酢酸ナトリウム36.8gを添加した。不溶物を濾去した後、エタノール720mLを加え、II型結晶の種晶を添加し、15℃で24時間静置した。結晶を濾取し、エタノール240mLで洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)87.4gを得た。
含水率:3.2%
IR(ATR)1774,1720cm-1
偏光顕微鏡写真を図2に、走査型電子顕微鏡写真を図4及び図5に、粉末X線回折のパターンを図9に、赤外吸収スペクトル(ATR法)を図12に示す。
実施例8
ピペラシリン・1水和物20gをエタノール90mL及び水10mLの混合液に懸濁し、10〜20℃で、酢酸ナトリウム9.2gを添加した。不溶物を濾去した後、エタノール20mLを加え、II型結晶の種晶を添加し、5℃で24時間静置した。結晶を濾取し、エタノール40mLで洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)20gを得た。
含水率:3.2%
IR(ATR)1774,1720cm-1
粉末X線回折のパターンは、実施例7と一致した。
実施例9
ピペラシリン・1水和物2.0gをメタノール2mL、エタノール3mL及び水0.05mLの混合液に懸濁し、10〜20℃で、酢酸ナトリウム0.34gを添加した。不溶物を濾去した後、II型結晶の種晶を添加し、5℃で24時間静置した。結晶を濾取し、エタノール20mLで洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)1.2gを得た。
含水率:3.2%
IR(ATR)1774,1720cm-1
粉末X線回折のパターンは、実施例7と一致した。
実施例10
ピペラシリン・1水和物50gをエタノール100mL及び水25mLの混合液に懸濁し、10〜20℃で、2−エチルヘキサン酸ナトリウム16g及び酢酸ナトリウム3.8gを添加した。不溶物を濾去した後、エタノール300mLを加え、II型結晶の種晶を添加し、5℃で24時間静置した。結晶を濾取し、エタノール100mLで洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)26gを得た。
含水率:3.2%
IR(ATR)1774,1721cm-1
粉末X線回折のパターンは、実施例7と一致した。
実施例11
ピペラシリンナトリウム2.0gをエタノール4mL及び水1.2mLの混合液に加えた。不溶物を濾去した後、酢酸ナトリウム0.31gを添加し、エタノール12mLを加えた。次いで、II型結晶の種晶を添加し、15℃で24時間静置した。結晶を濾取し、エタノール20mLで結晶を洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)1.4gを得た。
含水率:3.2%
IR(ATR)1774,1720cm-1
粉末X線回折のパターンは、実施例7と一致した。
実施例12
ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(I型結晶)50gをエタノール100mL及び水25mLの混合液に加えた。不溶物を濾去した後、エタノール300mLを加え、II型結晶の種晶を添加し、5℃で24時間静置した。結晶を濾取し、エタノール100mLで洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)33gを得た。
含水率:3.2%
IR(ATR)1774,1720cm-1
粉末X線回折のパターンは、実施例7と一致した。
実施例13
ピペラシリン・1水和物2.0gをエタノール4mL及び水1.2mLの混合液に懸濁し、10〜20℃で、トリエチルアミン0.38gを添加した。不溶物を濾去した後、酢酸ナトリウム0.45gを添加し、エタノール12mLを加えた。次いで、II型結晶の種晶を添加し、5℃で24時間静置した。結晶を濾取し、エタノール20mLで洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)1.3gを得た。
含水率:3.2%
IR(ATR)1774,1720cm-1
粉末X線回折のパターンは、実施例7と一致した。
実施例14
ピペラシリン・1水和物2.0gをエタノール4mL及び水0.5mLの混合液に懸濁し、10〜20℃で、酪酸ナトリウム0.49gを添加した。不溶物を濾去した後、エタノール16mLを加え、II型結晶の種晶を添加し、5℃で24時間静置した。結晶を濾取し、エタノール20mLで結晶を洗浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)1.7gを得た。
含水率:3.2%
IR(ATR)1774,1720cm-1
粉末X線回折のパターンは、実施例7と一致した。
比較例1(凍結乾燥)
ピペラシリン・1水和物90gを水180mLに加えた。炭酸水素ナトリウム14gを6〜10℃で2時間で添加した。不溶物を濾去した後、凍結乾燥し、ピペラシリンナトリウム(非晶質)89gを得た。
含水率:0.5%
IR(ATR)1765,1713cm-1
走査型電子顕微鏡写真を図6に、粉末X線回折のパターンを図10に、赤外吸収スペクトル(ATR法)を図13に示す。
比較例2(特開平2−32082号公報、実施例追試)
ピペラシリン・1水和物1.1gをアセトン30mLに溶解し、2−エチルヘキサン酸ナトリウム0.33gの酢酸エチル10mL溶液を室温下、10分間で滴下した。固体を濾取し、酢酸エチル20mLで洗浄し、ピペラシリンナトリウム(非晶質)1.0gを得た。
含水率:0.5%
IR(ATR)1764,1714cm-1
粉末X線回折のパターンは、比較例1と類似し、明確なピークは認められなかった。
比較例3(US2003028016号公報、Example 1追試)
ピペラシリン・1水和物3.0gをアセトン45mL及びメタノール0.45mLの混合液に加えた。水0.06mLを加えた後、2−エチルヘキサン酸ナトリウム0.99gのアセトン11mL及び水0.06mLの混合溶液を室温下、30分間で滴下した。次いで、アセトン21mL及び水0.06mLの混合液を滴下し、0〜3℃で2時間撹拌した。固体を濾取し、アセトン20mLで洗浄し、ピペラシリンナトリウム(非晶質)2.0gを得た。
含水率:0.5%
IR(ATR)1764,1713cm-1
粉末X線回折のパターンは、比較例1と類似し、明確なピークは認められなかった。
製剤例1
実施例7で得たピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)をガラス製バイアルに小分け充填(1g/vial、2g/vial)し、減圧下、ゴム栓にて密封し、更にアルミキャップで巻き締めし、ピペラシリンナトリウム・1水和物の注射用製剤を得た。
製剤例2
実施例7で得たピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)をプラスチック製ダブルバッグ(複室容器)に小分け充填(2g/bag)し、ヒートシール溶着にて密封し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の注射用キット製剤を得た。
製剤例3
実施例7で得たピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)4g及びタゾバクタムナトリウム0.5gをガラス製バイアルに小分け充填(4.5g/vial)し、減圧下、ゴム栓にて密封し、更にアルミキャップで巻き締めし、ピペラシリンナトリウム・1水和物及びタゾバクタムナトリウムの注射用製剤を得た。
製剤例4
実施例7で得たピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)4g及びタゾバクタムナトリウム0.5gをプラスチック製ダブルバッグ(複室容器)に小分け充填(4.5g/bag)し、ヒートシール溶着にて密封し、ピペラシリンナトリウム・1水和物及びタゾバクタムナトリウムの注射用キット製剤を得た。
ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(I型結晶)の偏光顕微鏡写真(倍率1060倍)である。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)の偏光顕微鏡写真(倍率265倍)である。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(I型結晶)の走査型電子顕微鏡写真(倍率3000倍)である。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)の走査型電子顕微鏡写真(倍率1000倍)である。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)の走査型電子顕微鏡写真(倍率3000倍)である。 ピペラシリンナトリウム(非晶質)の走査型電子顕微鏡写真(倍率200倍)である。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(I型結晶)の湿結晶の下面照射粉末X線回折パターンである。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(I型結晶)の粉末X線回折パターンである。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)の粉末X線回折パターンである。 ピペラシリンナトリウム(非晶質)の粉末X線回折パターンである。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(I型結晶)の赤外吸収スペクトル(ATR法)である。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(II型結晶)の赤外吸収スペクトル(ATR法)である。 ピペラシリンナトリウム(非晶質)の赤外吸収スペクトル(ATR法)である。

Claims (4)

  1. 粉末X線回折において、2θで表される3.9、4.6、5.6、6.7、7.6及び9.8°の回折角度を有する(2S,5R,6R)−6−((2R)−2−((4−エチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−カルボニル)アミノ)−2−フェニルアセチルアミノ)−3,3−ジメチル−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸ナトリウム・1水和物の結晶。
  2. 粉末X線回折において、2θで表される7.3及び7.9°の回折角度を有する(2S,5R,6R)−6−((2R)−2−((4−エチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−カルボニル)アミノ)−2−フェニルアセチルアミノ)−3,3−ジメチル−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸ナトリウム・1水和物の結晶。
  3. (2S,5R,6R)−6−((2R)−2−((4−エチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−カルボニル)アミノ)−2−フェニルアセチルアミノ)−3,3−ジメチル−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸ナトリウムのアルキルケトン及びエーテルから選ばれる少なくとも1種の溶媒、低級アルコール並びに水からなる溶液に、有機酸を添加して結晶化することを特徴とする、粉末X線回折において、2θで表される3.9、4.6、5.6、6.7、7.6及び9.8°の回折角度を有する(2S,5R,6R)−6−((2R)−2−((4−エチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−カルボニル)アミノ)−2−フェニルアセチルアミノ)−3,3−ジメチル−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸ナトリウム・1水和物の結晶の製造方法。
  4. (2S,5R,6R)−6−((2R)−2−((4−エチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−カルボニル)アミノ)−2−フェニルアセチルアミノ)−3,3−ジメチル−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸塩の低級アルコール及び水からなる溶液に、有機塩基を添加して結晶化することを特徴とする、粉末X線回折において、2θで表される7.3及び7.9°の回折角度を有する(2S,5R,6R)−6−((2R)−2−((4−エチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−カルボニル)アミノ)−2−フェニルアセチルアミノ)−3,3−ジメチル−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸ナトリウム・1水和物の結晶の製造方法。
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