JP2007098399A - 複合鋼材の製造方法,複合鋼材および該複合鋼材を用いて得られる軌条鋼 - Google Patents

複合鋼材の製造方法,複合鋼材および該複合鋼材を用いて得られる軌条鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】 安定して炭素を添加し,かつ,効率の良い加熱を行うことができるようにして,鋼材の表層部の強度や耐磨耗性に優れるとともに,生産性を向上させることが可能な,新規かつ改良された複合鋼材の製造方法,複合鋼材および該複合鋼材を用いて得られる軌条鋼を提供する。
【解決手段】 本発明に係る複合鋼材1の製造方法は,鋳片2の一部にプラズマを用いて炭素を溶融アロイングさせることにより鋳片2の一部に炭素の濃化領域3を形成する改質工程において,プラズマによる溶融アロイングの前に,鋳片2の一部を炭素飽和時の溶融温度以上に予熱する工程を含む。
【選択図】 図2

Description

本発明は,表層と内層とが異なる成分を有することにより複合された機能を有する複合鋼材の製造方法,複合鋼材および該複合鋼材を用いて得られる軌条鋼に関する。
一般に,炭素は,鋼材に添加されることにより,鋼材の硬度を上げる機能を有することが知られている。かかる炭素の機能を利用すれば,鋼の表層のみに炭素を添加することにより,鋼材内部の加工性は維持したままで表層のみの強度を上げ,加工性に優れる性質と強度に優れる性質の双方を兼ね備える複合鋼材を製造することが可能となる。
このような複合鋼材を製造する方法として,本発明者らは,鋼の連続鋳造鋳片の表層を,誘導加熱またはプラズマ加熱のいずれか一方または双方により溶融させ,溶融した鋼鋳片の表層部分に,添加元素もしくはその合金を添加する溶融改質方法を提案している(例えば,特許文献1を参照)。この方法によれば,鋼の連続鋳造鋳片表層を安価かつ確実に改質し,複合鋼材を製造することができる。
上記特許文献1に記載の方法では,表層部分を溶融するための加熱は,誘導加熱またはプラズマ加熱のいずれか一方または双方により行われているが,この場合,炭素のように軽い元素を添加する方法としては,以下の2つの方法を用いることができる。第1の方法は,添加歩留まりを安定させるためにワイヤー状(例えば,カーボンファイバー等)やシート状に加工した炭素を,誘導加熱やプラズマ加熱により加熱された加熱溶融部に直接添加する方法である。
ところが,この場合に使用されるカーボンファイバー等の加工した炭素は非常に高価であるため,工業的に大量生産するという観点からは,コストが高くなり過ぎるため現実的でない。
これに対して,第2の方法,すなわち,粉末状あるいは塊状の炭素を鋳片の処理方向の加熱溶融部前に載置する方法を採用すれば,コストを低く抑えることができる。
しかしながら,粉末状の炭素を加熱部前に載置した場合には,プラズマを用いて加熱すると,プラズマのガス圧力により軽い粉末状あるいは塊状の炭素は吹き飛ばされてしまうため,安定して所望量の炭素を添加することができず,確実に鋼材の表層部の強度や耐摩耗性を向上させることができないという問題があった。また,誘導加熱によれば炭素が吹き飛ばされることはないが,添加された炭素を確実に溶着させるためには,鋼片が完全に溶融状態となる温度まで加熱する必要がある。この場合,誘導加熱の出力を上げる必要があるが,誘導を強くすることは電磁力が強くなることと等価であり,溶融した鋼のプール(溶融部)が強く押し付けられ,鋼の表面を凹凸がひどい状態にしてしまうという問題もあった。
また,従来の製造技術として,連続鋳造する際に,鋳型内の潤滑剤内に元素を混入させる方法(例えば,特許文献2を参照)がある。しかしながら,この方法で製造すると,炭素含有量が高い領域(炭素の濃化領域)は,鋳片の全周に存在することとなる。そのために,この方法の場合に,鋳片の一部に炭素含有量が高い領域を有するものを得るためには,周囲の他の辺をわざわざ切削切除することとなり損失となる,という問題があった。すなわち,例えば,軌条鋼では車輪と接触する部分のみ炭素濃度が高く,耐磨耗性が高く,その他の部分はむしろ炭素濃度は低めで加工性や疲労に強いことが望まれるが,特許文献2に記載の方法で製造する場合には,炭素含有量が高い領域が全周に存在するので,材料としての複合特性をより明確に発揮させるためには,車輪と接触する部分以外の部分に相当する辺を切削削除する必要があるため,削除した材料が無駄になってしまう。
また,圧延加工後の製品に浸炭を行う方法が知られている(例えば,非特許文献1を参照)。しかしながら,例えば,非特許文献1に記載の方法によると,3mm程度の浸炭を行うのに,圧延加工した上で,900℃程度で30時間程度と非常に時間がかかる,という問題があった。さらに,表面から浸炭させるために表面ほど炭素濃度が高く,必要な処理深さ内で均一な炭素含有率が得られず,例えば軌条の場合には摩耗の進行により材料特性が異なる時系列変化を示すことになる,という問題もあった。
特開2004−195512号公報 特開平7−290195号公報 鉄鋼製造法第4分冊 処理・品質 日本鉄鋼協会編 丸善(昭和54年)p89〜91
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的は,安定して炭素を添加し,かつ,効率の良い加熱を行うことができるようにして,鋼材の表層部の強度や耐磨耗性に優れるとともに,生産性を向上させることが可能な,新規かつ改良された複合鋼材の製造方法,複合鋼材および該複合鋼材を用いて得られる軌条鋼を提供することにある。
本発明者らは,上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果,熱効率の高いプラズマ加熱を用いて鋼鋳片の表層部を溶融させる前に予熱工程を設け,この予熱工程において粉末状あるいは塊状の炭素(グラファイト)を添加して溶着させておくことにより,安定した炭素の添加および効率の良い加熱ができることを見出し,この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち,本発明によれば,鋼の連続鋳造鋳片または鋼片の一部にプラズマを用いて炭素を溶融アロイングさせることにより鋳片または鋼片の一部に炭素の濃化領域を形成する改質工程を含む複合鋼材の製造方法において,上記改質工程は,鋳片または鋼片の一部を炭素飽和時の溶融温度以上に予熱する工程と,予熱された鋳片または鋼片の一部に炭素を添加することにより,該添加された炭素を鋳片または鋼片の一部に溶着させる工程と,鋳片または鋼片の一部をプラズマにより加熱溶融することにより,溶着された炭素を鋳片または鋼片の一部に溶融アロイングさせ,鋳片または鋼片の一部に炭素の濃化領域を形成する工程と,を含むことを特徴とする複合鋼材の製造方法が提供される。
ここで,「鋳片または鋼片の一部」,すなわち,鋳片等の一部を部分的に改質して炭素の濃化領域を形成する位置は,鋳片等における任意の位置であって,本発明に係る複合鋼材が最終的に加工される加工製品に合わせて選択される。例えば,鋳片の表層部の一部とすることができる。
また,本明細書において,「鋳片」とは,溶鋼を連続鋳造した後,圧延前のものをいい,「鋼片」とは,溶鋼を連続鋳造した後,圧延して得られる半製品のことをいう。
また,「炭素飽和時の溶融温度」とは,炭素を鉄に溶解させることができる限界量(約4質量%)含む鋼の溶融温度(他の合金成分によっても変化するが,Fe−C系の場合は約1153℃)のことをいう。
このような本発明に係る複合鋼材の製造方法によれば,熱効率の高いプラズマ加熱を用いて鋼鋳片の表層部を溶融させる前に予熱工程を設け,この予熱工程において粉末状あるいは塊状の炭素(グラファイト)を添加して溶着させておくことにより,安定した炭素の添加および効率の良い加熱を行うことができる。したがって,鋼材の表層部の強度や耐磨耗性に優れる複合鋼材を製造できるとともに,生産性を向上させることが可能となる。
また,上記課題を解決するために,本発明によれば,鋼の連続鋳造鋳片または鋼片の一部に炭素を溶融アロイングさせることにより,鋳片または鋼片の一部に炭素の濃化領域が形成された複合鋼材において,炭素の濃化領域における炭素濃度のばらつきが,該炭素の濃化領域の炭素濃度の平均値の±25%以内であることを特徴とする複合鋼材が提供される。
このような本発明に係る複合鋼材は,鋼材内部の加工性は維持したままで表層部のみの強度を上げ,加工性に優れる性質と強度に優れる性質の双方を兼ね備える。また,上述したように,カーボンファイバー等の高価な原料を使用する必要もなく,熱効率も良いため,低コスト鋼材である。
また,上記課題を解決するために,本発明によれば,上述した製造方法により製造された複合鋼材を圧延して製造される軌条鋼であって,上記複合鋼材は,圧延後に車輪と接触する部位となる位置に,炭素の濃化領域が形成されていることを特徴とする軌条鋼が提供される。
このような本発明に係る軌条鋼は,上述したような複合鋼材を利用して製造することにより,車輪に接する部分は高い耐摩耗性を有すると共に,その固定する下部は,高い靭性・延性を有するような鋼材を製造することが可能となる。
本発明に係る複合鋼材の製造方法によれば,熱効率の高いプラズマ加熱を用いて鋼鋳片の表層部を溶融させる前に予熱工程を設け,この予熱工程において粉末状あるいは塊状の炭素を添加して溶着させておくことにより,安定した炭素の添加および効率の良い加熱を行うことができる。したがって,本発明によれば,鋼材の表層部の強度や耐磨耗性に優れる複合鋼材およびこれを用いた軌条鋼を製造できるとともに,生産性を向上させることが可能な複合鋼材の製造方法を提供することができる。
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本発明に係る複合鋼材の製造方法は,鋼の連続鋳造鋳片または鋼片の一部にプラズマを用いて炭素を溶融アロイングさせることにより,鋳片または鋼片の一部に炭素の濃化領域を形成する改質工程を含むものである。
上記複合鋼材の製造方法において,上記改質工程は,鋳片または鋼片の一部を炭素飽和時の溶融温度以上に予熱する工程と,予熱された鋳片または鋼片の一部に炭素を添加することにより,該添加された炭素を鋳片または鋼片の一部に溶着させる工程と,鋳片または鋼片の一部をプラズマにより加熱溶融することにより,溶着された炭素を鋳片または鋼片の一部に溶融アロイングさせ,鋳片または鋼片の一部に炭素の濃化領域を形成する工程と,を含むことを特徴とする。
すなわち,本発明の一実施形態に係る複合鋼材の製造方法においては,鋼の連続鋳造鋳片または圧延加工途上の鋼片の一部,例えば鋳片または鋼片の表層部の少なくとも一部を,熱効率の良いプラズマ加熱を用いて効率良く加熱溶融する前に,誘導加熱等による予熱工程を設けている。この予熱工程において,粉末状あるいは塊状の炭素(グラファイト)等の添加が行われる。また,予熱温度を鋼の炭素飽和時の溶融温度(固層線温度)以上とすることにより,鋳片または鋼片の表層部の少なくとも一部を半溶融状態にして炭素を溶着させる。次いで,プラズマ加熱を用いて鋳片または鋼片の表層部の少なくとも一部を加熱溶融させることにより,予熱工程で溶着させた炭素を表層部中の必要な深さに対して均一に分散させる。
(本発明の一実施形態に係る複合鋼材の製造方法)
以下,図1および図2に基づいて,本実施形態に係る複合鋼材の製造方法について詳細に説明する。なお,図1は,本発明の一実施形態に係る表層部に炭素の濃化領域3を有する複合鋼材1の例を示す斜視図であり,図2は,本実施形態に係る表層部に炭素の濃化領域3を有する複合鋼材1の製造方法を説明するための模式的な断面図である。
本発明においては,鋳片等の一部を部分的に改質して炭素の濃化領域を形成する位置は,鋳片等における任意の位置であって,本発明に係る複合鋼材が最終的に加工される加工製品に合わせて選択されるものである。例えば,本実施形態においては,図1に示すように,鋳片2の表層部の一部,具体的には,鋳片2の両端を除く一定の幅および厚みを有する領域を炭素の濃化領域3(炭素の添加部)としている。
以下,図2に基づいて,鋳片2の表層部の一部に炭素の濃化領域3が形成された本実施形態に係る複合鋼材1の製造方法について説明する。
図2に示すように,連続鋳造機で得られた鋳片2は,切断後,溶融処理場に輸送される。鋳片2の輸送後,予め定められた溶融対象となる鋳片2の表層部の一部,すなわち,炭素の濃化領域3を形成するための予熱部4を加熱可能なように配置された電磁誘導コイル11により予熱する(電磁誘導コイル11は,例えば,数〜数十kHzの周波数の高周波を発生させている)。このとき,電磁誘導コイル11は,予熱部4を鋼の炭素飽和時の溶融温度(他の合金成分によっても変化するが,Fe−C系の場合は約1153℃)以上に加熱する。ここで,「炭素飽和時」とは,炭素を鋼に含有させることができる限界量,具体的には約4質量%の炭素が鋼に含まれた状態のことをいう。
次に,電磁誘導コイル11により加熱された予熱部4に,粉末状あるいは塊状の炭素13,例えば,数mm程度の粒径を有する塊状のグラファイト片を添加する。粉末状あるいは塊状の炭素13の予熱部4への供給は,例えば,上記グラファイト片を処理面(すなわち,予熱部4)全体に機械的に振動して定量的に供給可能なフィーダー12を用いて行う。このようにして予熱部4に添加された炭素13は,電磁誘導コイル11が鋳片2の予熱部4を誘導加熱することにより,鋳片2の表面に溶着される(図2において,符号5は,鋳片2の表面に溶着した炭素を示している)。
ここで,鋳片2の表層の一部を鋼の炭素飽和時の溶融温度以上に予熱する方法として,本実施形態では誘導加熱を使用しているが,上記予熱方法は,誘導加熱に限られず,炭素が吹き飛ばない程度に高温ガスの流速を抑えたプラズマ加熱,ガスバーナー加熱を使用してもよく,さらには,誘導加熱,プラズマ加熱,ガスバーナー加熱の2種以上を併用してもよい。なお,予熱の際にプラズマ加熱を使用する場合には,鋳片2を完全に溶融させる必要はないので,低い出力で足り,そのため,比重が小さい粉末状あるいは塊状の炭素13が吹き飛ばされることはない。
次に,図示しない鋳片移動手段により,鋳片2を図のF方向に移動させ,プラズマ15を用いて溶融アロイング処理を行う。溶融アロイング処理が行われる溶融部6は,プラズマトーチ14により発生させたプラズマ15を用いて加熱され,これにより鋳片2の表面が加熱溶融される。溶着された炭素13が,鋳片移動手段により移動して溶融部6に位置すると,炭素13が溶融部6内に均一に分散される。
また,プラズマ加熱時には,プラズマは一般に軸対称な形をしているため,連続的に鋳片2の表面を処理するには,プラズマトーチを鋳片の幅方向にスキャンさせる方法か,あるいは,特開昭54−142154号公報に記載されたようなプラズマを鋳片の幅方向に電磁力を使って扁平な往復運動させる方法等を用いることができる。また,複数本のプラズマトーチを鋳片または鋼片の長手方向に配置しておき,鋳片の幅方向にプラズマトーチを移動させることにより,鋳片または鋼片の一面を一括して溶融処理することも可能である。その方式の選択は,鋳片または鋼材の必要処理速度と溶融処理能力との関係により決まる。本実施形態においては,プラズマを鋳片の幅方向に電磁力を使って扁平な往復運動をさせる方法を使用しており,図2に示すように,2対のプラズマ扁平化コイル16を用いて,プラズマ15を鋳片2の幅方向に電磁力を使って扁平な往復運動をさせている。
次に,鋳片2をさらに図のF方向に移動させ,鋳片2を冷却して再び凝固させる。上記溶融部6は,鋳片2のF方向への移動により,徐々に凝固して安定した炭素の濃化領域3を形成する。
なお,鋳片2の溶融部6に炭素13またはその合金を添加して溶融アロイングさせる場合,鋳片2の酸化を防止することが好ましいため,図2に示すように,予熱用の電磁誘導コイル11およびプラズマトーチ14は,雰囲気ガス容器17内で不活性なガス雰囲気18(例えば,アルゴン,窒素等の雰囲気)で溶融改質するのが好ましく,さらに,より確実に酸化を防止するためには,不活性なガス雰囲気18中に約2モル%程度の水素を含んで溶融改質することが好ましい。
また,本実施形態に係る複合鋼材1の製造方法は,連続鋳造機端,すなわち連続鋳造後の鋳片が水平に移動している際に適用することができる。
また,本実施形態では,改質部分(炭素の濃化領域)を鋳片の片面の表層の一部に形成しているが,この場合に限定されず,片面の表層の全部,または,両面の表層の一部もしくは全部に改質部分を形成する場合にも本発明を適用することができる。
以上説明したように,本実施形態に係る複合鋼材1の製造方法によれば,熱効率の高いプラズマ加熱を用いて鋳片2の表層部を溶融させる前に予熱工程を設け,この予熱工程において粉末状の炭素(グラファイト)13を添加して溶着させておくことにより,安定した炭素の添加および効率の良い加熱を行うことができる。特に,炭素を添加していない通常の鋼の溶融温度が1530℃程度であるのに対し,炭素が飽和状態の鋼の溶融温度は,他の合金成分によっても変化するが,Fe−C系の場合は約1153℃であることから,プラズマ加熱により鋳片2の表面を溶融させる際に必要なエネルギーが著しく低下することとなる。したがって,鋼材の内部の加工性を維持したまま,鋼材の表層部の強度や耐磨耗性に優れる複合鋼材を製造できるとともに,生産性を向上させることが可能となる。
また,本実施形態に係る複合鋼材1の製造方法によれば,溶融処理+圧延加工によるため,その炭素富化処理時間は数分から10分程度であり,圧延加工後の製品に浸炭を行う方法に比べて生産性が著しく異なる上,処理部分内では炭素含有量がほぼ均一となり,上記浸炭を行う方法に問題となるような摩耗時の時間経過による材料特性の変化がほとんどない。
(本発明の一実施形態に係る複合鋼材)
次に,図1および図3に基づいて,上述したような製造方法により得られる本実施形態に係る複合鋼材1およびこれを用いて製造される軌条鋼100について詳細に説明する。なお,図3は,本実施形態に係る軌条鋼100を示し,(a)は,軌条鋼100の正面図であり,(b)は,複合鋼材1を圧延して軌条鋼100を製造する方法を概略的に示す説明図である。
図1に示すように,本実施形態に係る複合鋼材1は,鋳片2の表層の一部,具体的には,鋳片2の両端を除く一定の幅および厚みを有する領域に炭素が添加されて改質されることにより,炭素の濃化領域3が形成されたものである。
本実施形態に係る複合鋼材1は,上述したような製造方法により製造されるため,炭素が濃化領域3において均一に分散されている。具体的には,炭素の濃化領域3における炭素濃度のばらつきが,当該領域の炭素濃度の平均値の±25%以内となる。ここで,炭素の濃度の平均値は,表層部の表面から内部にかけてほぼ均等な間隔で3点以上測定したものの平均とすることが望ましい。また,炭素濃度は,例えば電子線プローブマイクロアナライザ(Electron Probe Micro−Analyzer,EPMA)により測定することができる。
また,複合鋼材1において,その表層部分の一部に形成された炭素の濃化領域3の厚みは,特に規定するものではないが,通常は0.5〜20mm程度である。濃化領域3の厚みが0.5mm未満の場合には,通常の加熱・圧延工程で表面が酸化して失われてしまうため好ましくない。一方,濃化領域3の厚みが20mmを超える場合には,一般に目的とする複合鋼材の製造において,特に要求が無いことや,上述したような方法により溶融処理をする上で,溶融処理コストが増大するため好ましくない。なお,鋳片2は,通常,連続鋳造により製造される。
本実施形態に係る複合鋼材1は,以上のような構成を有することにより,その一部が他の部分とは異なる性質を有する。すなわち,複合鋼材1は,鋼材内部の加工性は維持したままで表層部のみの強度を上げ,加工性に優れる性質と強度に優れる性質の双方を兼ね備える。また,上述したように,カーボンファイバー等の高価な原料を使用する必要もなく,熱効率も良いため,低コスト鋼材である。
したがって,このような複合鋼材1を加工することにより,部分的に性質が異なる鋼の特性を併せ持つ加工製品を低コストで得ることができる。より具体的には,表層の一部が他の部分よりも高い炭素含有量であることにより,鋼材内部の加工性を維持したまま,表層部のみが強度や耐磨耗性に優れる複合鋼材1を加工することにより,例えば,図3(a)に示すように,軌条鋼100のような車輪に接する部分102は高い耐摩耗性を有すると共に,その固定する下部104は,高い靭性・延性を有するような鋼材を安価に製造することが可能となる。本発明の鋼の炭素含有量は特に規定するものではないが,通常は母材0.7〜1.1質量%に対して表層の一部が母材よりも0.1〜0.4質量%高いものが例示される。また,好ましくは,母材0.7〜0.9質量%に対して母材よりも0.3〜0.6質量%高いものである。
ここで,図3(b)に概略的に示すように,軌条鋼100は,複合鋼材1を上下左右から圧延することにより製造することができる。さらに詳細には,例えば,『鉄鋼製造法』第2分冊加工(1) 日本鉄鋼協会編 丸善(昭和54年)p.342に記載されているようなユニバーサル圧延法により,本実施形態に係る軌条鋼100を製造することができるが,本発明に係る軌条鋼の加工方法としては,上記方法には限られず,公知の文献等に記載されている一般的加工法を使用することができる。
なお,ここでいう加工製品とは,軌条鋼等が挙げられるが,通常の鉄鋼プロセスで鋳片を加工して得られる鉄鋼製品すべてが対象となる。また,半製品も含まれる。
次に,実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが,本発明が下記実施例に限定されるものではない。
(複合鋼材およびこれを用いた軌条鋼の製造)
連続鋳造を完了した鋳片を切断後,図2に示す装置を用いて,誘導加熱の出力を20kHz,800kWとして,1200℃に予熱するとともに,炭素を添加して,添加した炭素を溶着させた。その後,プラズマ加熱溶融によりプラズマの出力を30kW/本,送り速度を1m/minとして溶融改質処理(溶融アロイング)を行った。上記炭素の溶着および溶融改質処理を行う際のガス雰囲気は,アルゴンとした。このような方法により,幅250mm,厚さ350mm,長さ10mの0.5%C鋼(単位は質量%)の連続鋳造鋳片の表層部の一部,具体的には,該鋳片の両端から10mmを除く中央部に,幅230mm,厚み20mmの炭素の濃化領域が形成された複合鋼材を製造した。本実施例の複合鋼材における炭素の濃化領域の炭素濃度は,炭素の添加量を調整して,1.0質量%となるようにした。
得られた鋳片の断面を分析したところ,炭素の濃化領域の鋳片深さ方向のばらつきは,±1mm,炭素濃度のばらつきは±10%であった。なお,炭素濃度はEPMAにより測定した。
さらに,上述のようにして得られた複合鋼材を圧延加工することにより,車輪と接触する部位の耐磨耗性および当該部位を固定する下部の靭性・延性が良好な軌条鋼を得ることができた。
ここで,本実施例における軌条鋼の加工方法としては,例えば,『鉄鋼製造法』第2分冊加工(1) 日本鉄鋼協会編 丸善(昭和54年)p.342に記載されているようなユニバーサル圧延法を採用した。加工前後の寸法(mm)は,図4に示すとおりである。
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は,表層と内層とが異なる成分を有することにより複合された機能を有する複合鋼材の製造方法,複合鋼材および該複合鋼材を用いて得られる軌条鋼に適用可能である。
本発明の一実施形態に係る表層部に炭素の濃化領域を有する複合鋼材の例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る表層部に炭素の濃化領域を有する複合鋼材の製造方法を説明するための模式的な断面図である。 本発明の一実施形態に係る軌条鋼を示し,(a)は,軌条鋼の正面図であり,(b)は,複合鋼材を圧延して軌条鋼を製造する方法を概略的に示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る軌条鋼の寸法の一例を示す説明図である。
符号の説明
1 複合鋼材
2 鋳片
3 炭素の濃化領域
4 予熱部
5 溶着した炭素
6 溶融部
11 (予熱用)電磁誘導コイル
12 フィーダー
13 粉末状炭素
14 プラズマトーチ
15 プラズマ
16 プラズマ扁平化コイル
17 雰囲気ガス容器
18 不活性なガス雰囲気
F 鋳片移動方向

Claims (3)

  1. 鋼の連続鋳造鋳片または鋼片の一部にプラズマを用いて炭素を溶融アロイングさせることにより前記鋳片または前記鋼片の一部に炭素の濃化領域を形成する改質工程を含む複合鋼材の製造方法において,
    前記改質工程は,
    前記鋳片または前記鋼片の一部を炭素飽和時の溶融温度以上に予熱する工程と,
    前記予熱された前記鋳片または前記鋼片の一部に炭素を添加することにより,該添加された炭素を前記鋳片または前記鋼片の一部に溶着させる工程と,
    前記鋳片または前記鋼片の一部をプラズマにより加熱溶融することにより,前記溶着された炭素を前記鋳片または前記鋼片の一部に溶融アロイングさせ,前記鋳片または前記鋼片の一部に炭素の濃化領域を形成する工程と,
    を含むことを特徴とする,複合鋼材の製造方法。
  2. 鋼の連続鋳造鋳片または鋼片の一部に炭素を溶融アロイングさせることにより,前記鋳片または前記鋼片の一部に炭素の濃化領域が形成された複合鋼材において,
    前記炭素の濃化領域における炭素濃度のばらつきが,前記炭素の濃化領域の炭素濃度の平均値の±25%以内であることを特徴とする,複合鋼材。
  3. 請求項2に記載の複合鋼材を圧延して製造される軌条鋼であって,
    前記複合鋼材は,前記圧延後に車輪と接触する部位となる位置に,前記炭素の濃化領域が形成されていることを特徴とする,軌条鋼。


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